【文献】
ALEKSENSKII,A.E. et al,Effect of Hydrogen on the Structure of Ultradisperse Diamond,Physics of the Solid State,2000年,Vol.42, No.8,p.1575-1578
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ナノダイヤモンド粒子は高い機械的強度、熱伝導性、光学的透明性、低屈折率、高電気絶縁性、低誘電率性、低い摩擦係数等の特性を有することから、潤滑剤、表面改質剤、研磨剤、半導体や回路基板の絶縁材料等として利用されている。また、ガラス代替用途や、電気電子分野、エネルギー分野、バイオ医療分野等への応用研究も進められている。
【0003】
ナノダイヤモンド粒子は静的高圧法又は爆轟法により製造されている。爆轟法によるナノダイヤモンド粒子は、爆薬を密閉した状態で爆発させて得られる爆射煤を化学処理に付して精製し、水に分散した状態でビーズミルや超音波ホモジナイザー等の分散機で粉砕して得られる水分散体から、超遠心分離法、濃縮乾燥法、凍結乾燥法、スプレードライヤー法等により水分を除去して製造される。
【0004】
特許文献1には、爆発法ナノダイヤモンド凝膠体粉末を純水に分散させ、ビーズミルによって凝膠構造を解膠することにより、直径5〜6nmの一次粒子コロイド[ゼータ電位:−39.2mV(25℃)]を得たことが記載されている(実施例1)。しかし、この一次粒子コロイド(スラリー)は、室温で長時間放置すると徐々に凝集が進み、数週間後には平均粒径105nmまで成長する(実施例1)。
【0005】
特許文献2には、爆轟法ナノダイヤモンド凝膠体の10%水性スラリーをビーズミルにより解膠すると、真黒色透明なコロイド溶液が得られ、数時間放置すると柔らかいゲルとなり、このゲルに水を加えて濃度を2%まで下げ、400ミクロンPTFEフィルターで濾過すると、安定な保存用コロイド母液が得られたこと、及び、このコロイド溶液には、一桁ナノサイズである4.6±0.7nmの直径を持つ極超微粒子が圧倒的な割合を占め、残りは二桁ナノの大きさを持つ、分布幅の広い粒子群であったことが記載されている(実施例1)。しかし、この微小ナノダイヤモンド分散液は濃度が低い。
【0006】
特許文献3には、爆射法で生成したダイヤモンド粒子に前処理精製を施したもの(平均粒径D50:89nm)を用いてスラリー[10重量%、pH10(アンモニア水により調整)]とし、ボールミルで分散処理を施した後、濃度を調整して微小ダイヤモンド粒子分散液(2.0重量%、pH8)を得、これを分級に付し、さらに純水を加えて1.0重量%の微小ダイヤモンド分散液[平均粒径D50:21.2nm、ゼータ電位:−40.5mV(25℃)]を得たことが記載されている(実施例1)。しかし、この微小ダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンドの粒径が大きく、しかも濃度が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、濃度が高くても分散安定性に優れたナノダイヤモンド一桁ナノ分散液とその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記のような優れた特性を有するナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を得る上で有用な、精製されたナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、爆轟法で合成された人工ダイヤモンドを含む爆轟煤から一桁ナノ分散を阻害する要因(金属不純物、グラファイトカーボン等)を除去する工程について詳細に検討を加えた結果、塩化ナトリウム等の電解質がナノダイヤモンドの一桁ナノ分散を阻害することを見いだし、それに基づいて電気伝導度を指標とした洗浄方法を見いだした。より具体的には、爆轟法ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を特定のpH及び電気伝導度に調整するという分散前処理(洗浄処理)を施した後、これを分散処理(解砕処理)に付すと、例えば4重量%以上という高い濃度であっても、長時間保存した場合にも凝集が生じにくい分散安定性に優れたナノダイヤモンド一桁ナノ分散液が得られることを見いだした。本発明はこれらの知見をもとに、さらに検討を重ねて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、爆轟法ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液であって、懸濁液のpH及び電気伝導度が下記(1)又は(2)の条件を充足するナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を提供する。
(1)pH4〜7で、固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が50μS/cm以下である
(2)pH8〜10.5で、固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が300μS/cm以下である
【0011】
前記ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液において、固形分濃度は4重量%以上であることが好ましい。
【0012】
前記爆轟法ナノダイヤモンド凝集体は空冷爆轟法ナノダイヤモンド凝集体であることが好ましい。
【0013】
本発明は、また、前記ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を解砕して得られるナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(以下、「一桁ナノ分散液I」と称する場合がある)を提供する。
【0014】
前記一桁ナノ分散液Iにおいて、固形分濃度は4重量%以上であるのが好ましい。
【0015】
本発明は、さらに、前記のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を解砕する工程を含むナノダイヤモンド一桁ナノ分散液の製造方法を提供する。
【0016】
このダイヤモンド一桁ナノ分散液の製造方法において、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液のpHを8以上とした状態で該懸濁液を解砕処理に付すのが好ましい。
【0017】
また、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液の解砕処理をビーズミル又は超音波を用いて行うことが好ましい。
【0018】
本発明は、さらにまた、固形分濃度が5.2重量%以上で、且つ固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が300μS/cm以下であるナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(以下、「一桁ナノ分散液II」と称する場合がある)を提供する。
【0019】
この一桁ナノ分散液IIにおいて、固形分濃度は5.5重量%以上であるのが好ましい。
【0020】
また、この一桁ナノ分散液IIにおいて、pHは8以上であることが好ましい。
【0021】
さらに、この一桁ナノ分散液IIにおいて、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃)が−42mV以下であることが好ましい。
【0022】
また、この一桁ナノ分散液IIは、空冷爆轟法で合成されたダイヤモンド由来のものであることが好ましい。
【0023】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]爆轟法ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液であって、懸濁液のpH及び電気伝導度が下記(1)又は(2)の条件を充足するナノダイヤモンド凝集体の懸濁液。
(1)pH4〜7で、固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が50μS/cm以下である
(2)pH8〜10.5で、固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が300μS/cm以下である
[2]固形分濃度が4重量%以上である上記[1]記載のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液。
[3]爆轟法ナノダイヤモンド凝集体が空冷爆轟法ナノダイヤモンド凝集体である上記[1]又は[2]記載のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液。
[4]爆轟法ナノダイヤモンド凝集体が爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子を酸処理及び/又は酸化処理に付したものである上記[1]〜[3]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液。
[5]前記ナノダイヤモンド凝集体のD50が20nm〜10μmである上記[1]〜[4]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液。
[6]懸濁液の分散媒が水を50重量%以上含む水性溶媒である上記[1]〜[5]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液。
[7]上記[1]〜[6]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を解砕して得られるナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[8]固形分濃度が4重量%以上である上記[7]記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[9]ナノダイヤモンド粒子のD50が3.5〜9nmである上記[7]又は[8]記載のナノダイヤモンド一桁分散液。
[10]分散液の分散媒が水を50重量%以上含む水性溶媒である上記[7]〜[9]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[11]上記[1]〜[6]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を解砕する工程を含むナノダイヤモンド一桁ナノ分散液の製造方法。
[12]ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液のpHを8以上とした状態で該懸濁液を解砕処理に付す上記[11]記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液の製造方法。
[13]ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液の解砕処理をビーズミル又は超音波を用いて行う上記[11]又は[12]記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液の製造方法。
[14]固形分濃度が5.2重量%以上で、且つ固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が300μS/cm以下であるナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[15]固形分濃度が5.5重量%以上である上記[14]記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[16]pHが8以上である上記[14]又は[15]記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[17]ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃)が−42mV以下である上記[14]〜[16]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[18]空冷爆轟法で合成されたダイヤモンド由来の上記[14]〜[17]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[19]ナノダイヤモンド粒子のD50が3.5〜9nmである上記[14]〜[18]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
[20]分散液の分散媒が水を50重量%以上含む水性溶媒である上記[14]〜[19]のいずれか1に記載のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液。
【発明の効果】
【0024】
本発明のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液によれば、解砕処理することにより、高い濃度でも分散安定性に優れたナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を容易に得ることができる。
本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液は、高い濃度であっても凝集しにくく、分散安定性に優れる。
本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液の製造方法によれば、高い濃度であっても凝集しにくい分散安定性に優れるナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を簡易な操作で容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液]
本発明のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液は、爆轟法ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液であって、該懸濁液のpH及び電気伝導度が下記(1)又は(2)の条件を充足する。
(1)pH4〜7で、固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が50μS/cm以下である
(2)pH8〜10.5で、固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が300μS/cm以下である
【0026】
以下、前記(1)の条件を充足するナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を、「ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液A」と称する場合がある。また、前記(2)の条件を充足するナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を、「ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液B」と称する場合がある。
【0027】
ナノダイヤモンド粒子は炭素からなる元素鉱物(例えば、グラファイト等)を原料として、例えば、爆轟法、フラックス法、静的高圧法、高温高圧法等により製造することができる。本発明では、一次粒子の平均粒子径が極めて小さいナノダイヤモンド粒子を得ることができることから、爆轟法(特に、酸素欠乏爆轟法)で生成したナノダイヤモンドを用いる。
【0028】
前記爆轟法は爆薬を爆発させることによって動的な衝撃を加え、炭素からなる元素鉱物をダイヤモンド構造の粒子に直接変換する方法である。前記爆薬としては、特に制限されることがなく、例えば、シクロトリメチレントリニトロアミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、トリニトロトルエン(TNT)、トリニトロフェニルメチルニトロアミン、四硝酸ペンタエリトリット、テトラニトロメタン、及びこれらの混合物(例えば、TNT/HMX、TNT/RDX等)を使用することができる。
【0029】
なお、爆轟法には、除熱法の違いから水冷爆轟法と空冷爆轟法とがある。従来、空冷爆轟法により合成された爆轟煤からナノダイヤモンド一桁ナノ分散液が得られた例はないことから、本発明は、空冷爆轟法により合成された爆轟煤を原料とする場合に特に有用である。なお、空冷爆轟法ナノダイヤモンドと水冷爆轟法ナノダイヤモンドとは、表面官能基の種類や量、平均一次粒子径などが異なる。空冷爆轟法ナノダイヤモンドは、水冷爆轟法ナノダイヤモンドと比較して、酸性官能基が多く、親水性が高いため、水への濡れ性が高いという利点がある。また、平均一次粒子径が、水冷爆轟法では5〜6nmであるのに対し、空冷爆轟法では4〜5nmと小さい点も、空冷爆轟法ナノダイヤモンドの利点である。
【0030】
上記方法で得られるナノダイヤモンド粒子(ナノダイヤモンド煤)には、製造装置等に含まれるFe、Co、Ni等の金属の酸化物(例えば、Fe
2O
3、Fe
3O
4、Co
2O
3、Co
3O
4、NiO、Ni
2O
3等)が混入し易い。そのため、上記方法で得られたナノダイヤモンド粒子(ナノダイヤモンド煤)は、強酸を使用して前記金属の酸化物(=金属酸化物)を溶解・除去することが好ましい(酸処理)。
【0031】
酸処理に用いる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、王水などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
酸処理は、通常、水中で行われる。酸処理における強酸(鉱酸等)の濃度は、例えば、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。酸処理時間は、例えば、0.1〜24時間、好ましくは0.2〜10時間、さらに好ましくは0.3〜5時間である。酸処理温度は、例えば、70〜150℃、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは100〜125℃である。酸処理は減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、操作性や設備等の点で、常圧下で行うのが好ましい。
【0033】
前記ナノダイヤモンド煤には、上記金属成分のほか、グラファイト(黒鉛)が含まれている。このグラファイトを除去するため、ナノダイヤモンド煤(好ましくは、該ナノダイヤモンド煤を前記酸処理に付したもの)を酸化処理に付すのが好ましい。
【0034】
酸化処理に用いる酸化剤としては、例えば、濃硝酸、発煙硝酸、発煙硫酸;クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸又はこれらの塩;過酸化水素などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、酸化剤として、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸若しくはこれらの塩、及び過酸化水素からなる群より選択された少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0035】
前記酸化処理は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、水が好ましい。酸化処理における酸化剤の濃度は、例えば、3〜50重量%、好ましくは6〜30重量%である。また、酸化剤の使用量は、ナノダイヤモンド100重量部に対して、例えば、300〜5000重量部、好ましくは500〜3000重量部、さらに好ましくは800〜2000重量部である。
【0036】
上記酸化処理は、グラファイトの除去効率の点から、鉱酸の共存下で行うのが好ましい。鉱酸としては、前記例示のものが挙げられる。好ましい鉱酸は硫酸である。酸化処理に鉱酸を用いる場合、鉱酸(例えば硫酸)の濃度は、例えば、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。
【0037】
酸化処理における処理時間は、例えば、1時間以上(例えば1〜24時間)、好ましくは2時間以上(例えば2〜15時間)、さらに好ましくは3時間以上(例えば3〜10時間)である。また、処理温度は、例えば、100℃以上(例えば100〜200℃)、好ましくは120℃以上(例えば120〜180℃)、さらに好ましくは130℃以上(例えば130〜160℃)、特に好ましくは135℃以上(例えば135〜150℃)である。酸化処理は減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、操作性や設備等の点で、常圧下で行うのが好ましく、加圧下で行う場合も、5MPa以下が好ましい。したがって、上記圧力は、好ましくは0.1〜5MPa、より好ましくは0.1〜1MPa、さらに好ましくは0.1〜0.5MPaである。
【0038】
なお、上記ナノダイヤモンド煤を酸処理に付して得られるナノダイヤモンド粒子は、一般に、ナノダイヤモンド一次粒子表面に黒鉛層が沈降付着し、該黒鉛層が複数の一次粒子を巻き込んでいわゆるアグリゲート構造を生成し、ファンデルワールス凝集よりも強固な集合状態を示す集合体(凝膠体)として存在する。また、上記ナノダイヤモンド煤又はこの酸処理品を酸化処理に付して得られるナノダイヤモンド粒子は、一般に、ナノダイヤモンド一次粒子が粒子間凝集(ファンデルワールス凝集)した凝集体として存在する。本明細書においては、上記凝膠体と上記ファンデルワールス凝集した凝集体とをまとめて、「ナノダイヤモンド凝集体」と称する場合がある。ナノダイヤモンド凝集体のD50(メディアン径)は、通常20nm以上であり、一般には100nm〜10μmの範囲である。
【0039】
上記酸化処理の後、水(純水、イオン交換水等)で洗浄することにより、ナノダイヤモンド粒子(凝集体)を得ることができる。こうして得られるナノダイヤモンド粒子の表面には、通常、カルボキシル基等の酸性官能基が存在する。
【0040】
なお、酸化処理後のナノダイヤモンド粒子(凝集体)をアルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)で処理することにより、ナノダイヤモンド粒子表面の酸性官能基(例えば、カルボキシル基)を塩(例えば、カルボン酸塩)に変換することができる。アルカリ処理する際のアルカリの濃度は、例えば、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。アルカリ処理の温度は、例えば、70〜150℃、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは100〜125℃である。アルカリ処理の時間は、例えば、0.1〜24時間、好ましくは0.2〜10時間、さらに好ましくは0.3〜5時間である。さらに、上記アルカリ処理したナノダイヤモンド粒子を酸(例えば、塩酸など)で処理することにより、ナノダイヤモンド粒子表面を再度、遊離の酸性官能基とすることができる。酸処理は、室温で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。
【0041】
酸化処理後のナノダイヤモンド凝集体、酸化処理後のナノダイヤモンド凝集体をアルカリ処理したもの、或いはこれをさらに酸処理に付したものに対し、水洗を繰り返すことで、不純物である電解質(NaCl等)を除去できる。電解質を除去することにより、ナノダイヤモンドの分散性及び分散安定性を向上できる。
【0042】
本発明において、前記爆轟法ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液は、上記方法で得られたナノダイヤモンド(凝集体)(表面の酸性官能基の少なくとも一部は塩を形成していてもよい、また、必要に応じて分級処理が施されたものであってもよい)を分散媒に懸濁したものである。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール、アセトン等のケトン、N−メチルピロリドン等のラクタム又はアミドなどの極性有機溶媒;これらの混合溶媒などが挙げられる。これらのなかでも、水を少なくとも含む(例えば、水を50重量%以上含む)分散媒が好ましく、特に水が好ましい。
【0043】
本発明において、上記(1)の場合において、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液AのpHは4〜7である。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液AのpHは、好ましくは4〜6、さらに好ましくは4.1〜5.5である。また、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Aの固形分濃度(ナノダイヤモンドの濃度)1重量%あたりの電気伝導度は50μS/cm以下である。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Aの固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度は、好ましくは30μS/cm以下、さらに好ましくは20μS/cm以下、特に好ましくは10μS/cm以下である。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Aの固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度は低い方が好ましい。前記電気伝導度の下限は0.5μS/cm程度であってもよい。pH及び電気伝導度が上記の範囲であると、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を解砕することにより、高い濃度であっても分散安定性に優れたナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を得ることができる。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液のpHが4未満或いは7を超え9.5未満である場合、及びpHが4〜7の範囲内であっても固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が50μS/cmを超える場合は、高い濃度であっても分散安定性に優れたナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を得ることが困難となる。
【0044】
また、上記(2)の場合において、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液BのpHは8〜10.5である。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液BのpHは、好ましくは9〜10.3、さらに好ましくは9.5〜10.2である。また、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Bの固形分濃度(ナノダイヤモンドの濃度)1重量%あたりの電気伝導度は300μS/cm以下である。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Bの固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度は、好ましくは200μS/cm以下、さらに好ましくは150μS/cm以下、特に好ましくは100μS/cm以下である。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Bの固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度は低い方が好ましい。前記電気伝導度の下限は5μS/cm程度であってもよい。pH及び電気伝導度が上記の範囲であると、ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を解砕することにより、高い濃度であっても分散安定性に優れたナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を得ることができる。ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液のpHが7を超え8未満或いは10.5を超える場合、及びpHが8〜10.5の範囲内であっても固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が300μS/cmを超える場合は、高い濃度であっても分散安定性に優れたナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を得ることが困難となる。
【0045】
上記(1)の場合のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Aは、例えば、上記強酸等で処理した後のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで処理(好ましくは、加熱処理)し、好ましくはデカンテーション等で上澄みを除いた後、塩酸等の酸を加えてpHを調整し、水洗を繰り返すことで電気伝導度を調整し、必要に応じて超純水等を添加して所定の濃度に調整することにより製造できる。水洗の回数、水洗に用いる水の使用量を増やすことにより、イオン成分がより完全に除去され、電気伝導度を低下させることができる。
【0046】
また、上記(2)の場合のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液Bは、例えば、上記強酸等で処理した後のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで処理(好ましくは、加熱処理)し、アルカリ性のまま水洗を繰り返すことでpH及び電気伝導度を調整し、必要に応じて超純水等を添加して所定の濃度に調整することにより製造できる。水洗の回数や水洗に用いる水の使用量によって、pH及び電気伝導度を所望の値に調整できる。
【0047】
本発明のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液において、固形分濃度(ナノダイヤモンドの濃度)は、分散処理により高濃度のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を得るという観点から、4重量%以上(例えば、4〜20重量%)が好ましく、より好ましくは5.5重量%以上(例えば、5.5〜15重量%)、さらに好ましくは7重量%以上(例えば、7〜12重量%)である。
【0048】
[ナノダイヤモンド一桁ナノ分散液]
本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(一桁ナノ分散液I)は、上記本発明のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を解砕処理(以下、分散処理と称する場合がある)に付して得られる分散液である。ナノダイヤモンド一桁ナノ分散液とは、ダイヤモンドが一桁ナノサイズに分散した分散液であり、より具体的には、分散液中のダイヤモンド粒子のD50が1〜9nmである分散液である。なお、本発明では、「解砕」を解膠をも含めた広い意味に用いる。この一桁ナノ分散液Iは、固形分濃度が高くても、分散安定性に優れるという特徴を有する。一桁ナノ分散液Iにおける固形分濃度は、例えば、4重量%以上(例えば、4〜15重量%)である。
【0049】
前記分散処理は、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、湿式ジェットミル等の分散機を使用することにより行うことができる。これらのなかでも、効率の点で、ビーズミル、超音波ホモジナイザーを用いて分散する方法が好ましい。
【0050】
ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を分散処理に付す際、分散性及び分散安定性を向上させる点から、該懸濁液のpHを8以上(例えば、8〜12)、好ましくは9以上(例えば、9〜11)、さらに好ましくは9.5〜10.5とした状態で分散処理に付すことが望ましい。分散処理の後、必要に応じて分級処理を施してもよい。
【0051】
本発明は、また、固形分濃度(ナノダイヤモンドの濃度)が5.2重量%以上(例えば、5.2〜15重量%)で、且つ固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が300μS/cm以下(例えば、50〜300μS/cm)であるナノダイヤモンド一桁分散液(一桁ナノ分散液II)を提供する。このようなナノダイヤモンド一桁ナノ分散液は、上記本発明のナノダイヤモンド凝集体の懸濁液を分散処理に付すことで容易に製造できる。該ナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(一桁ナノ分散液II)は、固形分濃度が高くても、分散安定性に優れるという特徴を有する。
【0052】
本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(一桁ナノ分散液I、一桁ナノ分散液II)において、ナノダイヤモンド粒子のD50は、例えば3.5〜9nm、好ましくは4〜7nmである。
【0053】
分散液の分散媒としては、前記爆轟法ナノダイヤモンド凝集体の懸濁液の分散媒として例示したものが挙げられる。なかでも、水を少なくとも含む(例えば、水を50重量%以上含む)分散媒が好ましく、特に水が好ましい。
【0054】
本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(一桁ナノ分散液I、一桁ナノ分散液II)において、固形分濃度は、好ましくは5.5重量%以上(例えば、5.5〜12重量%)、より好ましくは6重量%以上(例えば、6〜10重量%)である。また、固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度は、好ましくは250μS/cm以下(例えば、120〜250μS/cm)、さらに好ましくは210μS/cm以下(例えば、160〜210μS/cm)である。
【0055】
また、本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(一桁ナノ分散液I、一桁ナノ分散液II)のpHは、分散安定性の点から、好ましくは8以上(例えば、8〜12)、好ましくは8.3以上(例えば、8.3〜11)、さらに好ましくは8.6以上(例えば、8.6〜10)である。
【0056】
さらに、本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(一桁ナノ分散液I、一桁ナノ分散液II)におけるナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃)は、分散安定性の点から、例えば、−30mV以下(例えば、−70mV〜−30mV)、好ましくは−42mV以下(例えば、−65mV〜−42mV)、さらに好ましくは−45mV以下(例えば、−60mV〜−45mV)である。ナノダイヤモンド一桁ナノ分散液におけるナノダイヤモンド粒子のゼータ電位とは、ナノダイヤモンド濃度が0.2重量%で25℃のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液について測定される値とする。ナノダイヤモンド濃度0.2重量%のナノダイヤモンド一桁分散液の調製のためにナノダイヤモンド分散液の原液を希釈する必要がある場合には、希釈液として超純水を用いる。
【0057】
本発明のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液(一桁ナノ分散液I、一桁ナノ分散液II)は、空冷爆轟法で合成されたダイヤモンド由来であることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。「%」は重量%である。
【0059】
懸濁液、分散液、ナノダイヤモンドの物性は以下の方法により測定した。
【0060】
<pH>
懸濁液、分散液のpHの測定は、HORIBA社製の商品名「pH METER D−51」を用いて行った。
【0061】
<電気伝導度>
懸濁液、分散液の電気伝導度の測定は、HORIBA社製の商品名「LAQUAtwin」を用いて行った。
【0062】
<固形分濃度>
懸濁液、分散液の固形分は、正確に秤量した3〜5gの液を100℃以上に加熱して水分を蒸発させ、乾燥物を精密天秤により正確に秤量して求めた。
【0063】
<D50(メディアン径)およびゼータ電位>
ナノダイヤモンド粒子のD50、及び、分散液中のナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は、スペクトリス社製の商品名「ゼータサイザー ナノZS」[D50:動的光散乱法(非接触後方散乱法)、ゼータ電位:レーザードップラー式電気泳動法]により求めた。
【0064】
調製例1(空冷爆轟ナノダイヤモンド煤の酸化処理)
ナノダイヤモンドの一次粒子径が4−6nmである空冷式爆轟ナノダイヤモンド煤(チェコ ALIT社製)を200g秤量し、10%塩酸水溶液2Lを加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより水洗を行い、沈殿液のpHが2になるまで洗浄を行い、上澄みをできるだけ除いた。
次に、その沈殿液に、60%硫酸水溶液2L、50%クロム酸水溶液を2L加えた後、還流下で5時間加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより水洗を行い、上澄みの着色が消えるまで洗浄を行い、上澄みをできるだけ除いた。この酸化処理で得られたナノダイヤモンド凝集体のD50は2μmであった。
【0065】
実施例1(空冷爆轟ナノダイヤモンドの分散前処理−1)
調製例1で得られた沈殿液に、10%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより上澄みを除いた後、6N塩酸を加えてpHを2.5に調整した後、遠心沈降法により水洗を行った。最終の遠心沈殿物に超純水を加えて、固形分濃度が8%になるように調整した。この状態での電気伝導度は64μS/cm、pHは4.3であった。
【0066】
実施例2(空冷爆轟ナノダイヤモンドの分散前処理−2)
調製例1で得られた沈殿液に、10%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、アルカリ性のまま遠心沈降法によりpHが10になるまで水洗を行った。最終の遠心沈殿物に超純水を加えて、固形分濃度が8%になるように調整した。この状態での電気伝導度は400μS/cm、pHは10.3であった。
【0067】
実施例3(空冷爆轟ナノダイヤモンドの分散前処理−3)
調製例1で得られた沈殿液に、10%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより上澄みを除いた後、塩酸を加えてpHを2.5に調整した後、限外ろ過膜により水洗を行った。最終濃縮液に超純水を加えて、固形分濃度が8%になるように調整した。この状態での電気伝導度は50μS/cm、pHは5.2であった。
【0068】
実施例4(空冷爆轟ナノダイヤモンドの分散前処理−4)
調製例1で得られた沈殿液に、10%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、アルカリ性のまま限外ろ過膜によりpH10になるまで水洗を行った。最終濃縮液に超純水を加えて、固形分濃度が8%になるように調整した。この状態での電気伝導度は511μS/cm、pHは9.8であった。
【0069】
実施例5(空冷爆轟ナノダイヤモンドの一桁ナノ分散−1)
実施例1、実施例3で得られた分散前スラリーを用いて、超音波ホモジナイザーによる分散を行った。装置は、SMT製UH−300を使用した。実施例1および実施例3の各スラリーに水酸化ナトリウムを用いてpHを10に調整した液に、標準ホーンを浸漬させて超音波を30分間照射した。照射後、遠心分離による分級操作で粗大粒子を除去して、空冷爆轟ナノダイヤモンド分散液を得た。実施例1から得られた分散液の固形分濃度は6.4%、ナノダイヤモンド粒子のD50は8.7nm、電気伝導度は1,260μS/cm、pHは8.67、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−47mVであった。実施例3から得られた分散液の固形分濃度は6.2%、ナノダイヤモンド粒子のD50は7.4nm、電気伝導度は1,230μS/cm、pHは8.55、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−48mVであった。
【0070】
実施例6(空冷爆轟ナノダイヤモンドの一桁ナノ分散−2)
実施例2、実施例4で得られた分散前スラリーを用いて、pH調整を行わなかった以外は実施例5と同様の操作を行い、空冷爆轟ナノダイヤモンド分散液を得た。実施例2から得られた分散液の固形分濃度は6.6%、ナノダイヤモンド粒子のD50は6.8nm、電気伝導度は1,250μS/cm、pHは9.04、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−48mVであった。実施例4から得られた分散液の固形分濃度は6.4%、ナノダイヤモンド粒子のD50は6.4nm、電気伝導度は1,280μS/cm、pHは9.12、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−47mVであった。
【0071】
実施例7(空冷爆轟ナノダイヤモンドの一桁ナノ分散−3)
実施例1、実施例3で得られた分散前スラリーを用いて、ビーズミル分散を行った。装置は、寿工業株式会社製ウルトラアペックスミルUAM−015を使用した。解砕メディアである直径0.03mmのジルコニアビーズを粉砕容器体積の60%まで充填した後、pHを10に調整した実施例1及び実施例3の各スラリー300mLを流速10L/hで循環させ、周速を10m/sに設定して90分間の解砕を行った。解砕液を回収し、遠心分離による分級操作で粗大粒子を除去して、空冷爆轟ナノダイヤモンド分散液を得た。実施例1から得られた分散液の固形分濃度は7.4%、ナノダイヤモンド粒子のD50は5.4nm、電気伝導度は1,410μS/cm、pHは9.14、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−49mVであった。実施例3から得られた分散液の固形分濃度は7.2%、ナノダイヤモンド粒子のD50は5.8nm、電気伝導度は1,380μS/cm、pHは9.05、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−48mVであった。
【0072】
実施例8(空冷爆轟ナノダイヤモンドの一桁ナノ分散−4)
実施例2、実施例4で得られた分散前スラリーを用いて、ビーズミル分散を行った。pHを調整しなかった以外は、実施例7と同様の操作を行い、空冷爆轟ナノダイヤモンド分散液を得た。実施例2から得られた分散液の固形分濃度は7.3%、ナノダイヤモンド粒子のD50は5.2nm、電気伝導度は1,320μS/cm、pHは8.78、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−48mVであった。実施例3から得られた分散液の固形分濃度は7.2%、ナノダイヤモンド粒子のD50は5.5nm、電気伝導度は1,350μS/cm、pHは9.07、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃;濃度0.2重量%)は−48mVであった。
【0073】
比較例1
調製例1で得られた沈殿液に、10%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより上澄みを除いた後、塩酸を加えてpHを2.5に調整した後、遠心沈降法により水洗を行い、固形分濃度が8%で電気伝導度が800μS/cmになった時点で洗浄を終了した。得られたスラリーを用いて、実施例5と同様の操作で分散液を得た。分散液の固形分濃度は1.2%、粒子径を測定した結果、ナノダイヤモンド粒子のD50は22nmであった。電気伝導度が高い状態で分散処理すると、ナノダイヤモンドが一部しか分散しない(粗大粒子が多い)上、一次粒子で分散しなかった。
【0074】
比較例2
調製例1で得られた沈殿液に、10%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、アルカリ性のまま遠心沈降法によりpHが11になるまで水洗を行った。最終の遠心沈殿物に超純水を加えて、固形分濃度が8%になるように調整した。この状態での電気伝導度は2,000μS/cmだった。得られたスラリーを用いて、実施例5と同様の操作で分散液を得た。分散液の固形分濃度は2.2%、粒子径を測定した結果、ナノダイヤモンド粒子のD50は25nmであった。電気伝導度が高い状態で分散処理すると、ナノダイヤモンドが一部しか分散しない(粗大粒子が多い)上、一次粒子で分散しなかった。
【0075】
評価試験(分散安定性)
実施例及び比較例で得られた分散液の分散安定性を以下の方法で評価した。
分散液を調製した日より1ヶ月後にナノダイヤモンド粒子のD50を測定した。その結果、実施例の分散液は、分散液調製直後のナノダイヤモンド粒子のD50と同じで変化がなかった。これに対し、比較例の分散液は、凝集して沈殿を形成しており、明らかにナノサイズで分散していなかった。