特許第6483758号(P6483758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483758患者特有の器具を使用した関節窩インプラント術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483758
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】患者特有の器具を使用した関節窩インプラント術
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20190304BHJP
   A61B 17/17 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A61B17/16
   A61B17/17
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-122421(P2017-122421)
(22)【出願日】2017年6月22日
(62)【分割の表示】特願2015-502026(P2015-502026)の分割
【原出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-159151(P2017-159151A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2017年7月12日
(31)【優先権主張番号】61/616,623
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/659,272
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/675,955
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513034866
【氏名又は名称】オーソソフト インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ピエール クチュール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−セバスチャン メレット
(72)【発明者】
【氏名】アラン リシャール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ギヨーム アブフベン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス グルゴン
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−511301(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150223(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/060536(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/110374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に対して既知の患者特有の位置に配置された一対のピン(40)を有する骨に、インプラントを設置するための器具のアセンブリであって、
前記ピン(40)の一方にスライドしてかぶさって前記ピン(40)に沿ってスライドされるように構成された第1のチューブ(61)と、前記ピン(40)の他方と配列されるように前記第1のチューブから離間した第2のチューブ(65)と、を有する、リーマ処理器具(60)と、
前記骨をリーマ処理するように構成されたリーマ端部(81)と、前記リーマ端部(81)を支持し且つ駆動されるように構成された中空のシャフト(82)と、を有するカニューレ挿入リーマ(80)であって、前記骨をリーマ処理するときに前記リーマ処理器具(60)が当該カニューレ挿入リーマ(80)の動きを案内するために、前記中空のシャフト(82)が、前記リーマ処理器具(60)の前記第2のチューブ(65)に受け入れられると共に前記ピン(40)の他方上に取り付けられる、カニューレ挿入リーマ(80)と、
を備える、器具のアセンブリ。
【請求項2】
前記リーマ処理器具(60)の前記第2のチューブ(65)が、前記カニューレ挿入リーマ(80)の前記中空のシャフト(82)を受け入れるための側方シャフトスロット(66)を有する、請求項1に記載の器具のアセンブリ。
【請求項3】
前記リーマ処理器具(60)の前記第2のチューブ(65)が、前記骨から所与の距離に突き合わせ部を形成し、前記カニューレ挿入リーマ(80)の前記中空のシャフト(82)が、ストッパー(83)を有し、これにより、前記ストッパー(83)及び突き合わせ部が、リーマ処理の深さを制限するために共に作用する、請求項1又は2に記載の器具のアセンブリ。
【請求項4】
前記リーマ処理器具(60)の前記第1のチューブ(61)及び前記第2のチューブ(65)が、互いに平行である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【請求項5】
前記ピン(40)をさらに備え、前記ピン(40)の第1のピンが、関節窩インプラントの所定の中心に配置され、前記ピン(40)の第2のピンが、関節窩から離れて配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【請求項6】
前記リーマ端部(81)が、所定の関節窩インプラントサイズに応じたサイズにされている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【請求項7】
前記ピン(40)の一方にスライドしてかぶさって、リーマ処理の後の前記リーマ処理器具(60)の除去の後に前記ピン(40)に沿ってスライドされるように構成されたガイドチューブ(101)と、前記骨のリーマ処理された表面と整列されるように前記ガイドチューブ(101)から離間されたガイドブラケット(105)と、を有する打ち込みガイド(100)をさらに備え、前記ガイドブラケット(105)が、インパクターツール(110)のシャフト(111)を受け入れるように構成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【請求項8】
前記ガイドブラケット(105)が、前記インパクターツール(110)の前記シャフト(111)を受け入れるように構成された側方開口部を有する、請求項7に記載の器具のアセンブリ。
【請求項9】
前記ガイドチューブ(101)が、前記骨及びピン(40)に対する前記打ち込みガイド(100)の回転を防止するために、前記骨に接触するように構成された突き合わせ端部(103)を有する、請求項7又は8に記載の器具のアセンブリ。
【請求項10】
前記突き合わせ端部(103)が、患者の解剖学的モデルに基づいた少なくとも1つの患者特有の表面を有する、請求項9に記載の器具のアセンブリ。
【請求項11】
前記インパクターツール(110)をさらに備え、前記インパクターツール(110)が、前記ガイドブラケット(105)に案内可能に係合するための前記シャフト(111)と、インプラントを支持するための端部と、を有する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【請求項12】
前記ピン(40)を配置するためのピン配置の器具(30)をさらに備え、前記ピン配置の器具(30)が、所定の位置で骨を中に受け入れるために前記器具(30)の側方に開かれているフックのような部分を有する解剖学的接触面(31)と、前記解剖学的接触面(31)に接続され、前記器具(30)の長手方向に複数のガイドスロット(34)を形成するドリルガイド(33)であって、前記ガイドスロット(34)の各々が、当該ガイドスロットの全長に亘り当該ドリルガイド(33)内に側方開口部(35)を有し、前記骨の中に配置された前記ピン(40)を前記側方開口部(35)から通過させて、前記側方への前記器具(30)の側方引き出しを可能とするドリルガイド(33)と、前記長手方向に所定のはめあいで各前記ガイドスロット(33)内に取り外し可能に配置されたブッシュ(41)であって、前記ブッシュ(41)がピン配置のため前記ガイドスロット(34)内にあるときに、前記ガイドスロット(34)と共に配列された貫通穴を形成し、且つ、前記長手方向に延びる前記ピン(40)を受け入れるように構成されたブッシュ(41)と、を具備する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【請求項13】
フックのような部分を有する前記解剖学的接触面(31)が、患者の解剖学的モデルに基づく少なくとも1つの患者特有の表面(32)を有する、請求項12に記載の器具のアセンブリ。
【請求項14】
前記ピン(40)の1つが、予測される再表面化済み関節窩の中心と共に長手方向に配列され、前記ピン(40)のもう1つが、烏口と共に配列された上方関節窩縁に隣接して配置される、又は、前記烏口のベースに配置される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【請求項15】
関節窩インプラント(20)をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の器具のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、肩関節置換術(shoulder replacement)に関し、より具体的には、例えば肩関節全置換術(total shoulder replacement)における関節窩インプラント肩関節術、及び当該手術で使われる患者特有の器具(patient specific instrumentation)(PSI)に関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節術におけるインプラントの使用はよく知られている。このような肩関節術では、肩関節を再現するために、肩甲骨(すなわちショルダーブレード)の関節窩(glenoid)部分及び/又は上腕骨にインプラントコンポーネントを設置する。肩甲骨にインプラントを設置する場合、通常は、関節窩(glenoid cavity)(英語ではglenoid又はglenoid fossaとも呼ばれる)にインプラントを設置する。関節窩とは、解剖学的肩部において上腕骨頭部を受け入れる窪みである。関節窩でインプラントを使用する場合、インプラントのベース部は関節窩内に位置し、ねじ等の留め具、又はセメント及び/又は固定ペグ若しくはキール(keel)を使用してインプラントベース部を関節窩に固定できる。
【0003】
関節窩にインプラントを設置する際の難題の1つは、インプラントの位置決めに関連する。靱帯及び同様の軟組織が存在することから、肩甲骨に対する上腕骨の正常な生体力学的運動を最大限に再現するように、インプラントの位置決めを計画しなければならない。別の難題の1つは、インプラントを肩甲骨に固定する留め具の位置決めに関連する。実際、肩甲骨は薄い骨であり、周囲は軟組織に囲まれている。インプラントを肩甲骨にしっかり固定するには、ねじが骨材料内の充分奥深くに存在しなければならない。しかし、外科医が望まない限り、軟組織(例えば神経、靱帯、腱等)を損傷しないようにするため、ねじは、骨面を貫通してはならない。
【0004】
患者特有の器具(以下「PSI」)は、各患者専用に作られる器具の作成に関する。通常、画像を用いたデータからPSIを製造して、骨の幾何学的配置をモデル化する。したがって、PSIは、予測可能な形で骨と接触し得る表面を有するので、骨の表面と一致する接触面が個別に製造される。したがって、肩関節術においてPSI技術を使用することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本開示の目的は、患者特有の器具を使って関節窩インプラント術を実施する方法を提供することである。
【0006】
本開示のさらなる目的は、関節窩インプラント術のための患者特有の器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の一態様によれば、骨の中にピンを配置するためのピン配置器具が提供され、このピン配置器具は、計画された位置に骨を受け入れるために器具の側面方向に開いているフックのような部分を有する解剖学的接触面と、解剖学的接触面に接続し、器具の長手方向に少なくとも1つのガイドスロットを形成するドリルガイドと(この少なくとも1つのガイドスロットは、その全長に渡ってドリルガイド内に側方開口部を有し、側方開口部を通過したピンが骨内に配置された状態で、器具を上記側面方向へと側方に引き抜くことを可能にする)、上記長手方向を通じて、計画されたはめあいで上記ガイドスロットに取り外し可能に配置された少なくとも1つのブッシュと(このブッシュは、ガイドスロットと共に配列された(aligned with)貫通穴を形成し、ピン配置のためブッシュがガイドスロット内にある時に上記長手方向に伸びるピンを受け入れるようになっている)、を備える。
【0008】
さらに、本開示の態様によれば、ドリルガイドは2つの上記ガイドスロットを備える。
【0009】
さらに追加して、本開示の態様によれば、上記2つのガイドスロットは互いに平行である。
【0010】
さらに追加して、本開示の態様によれば、上記少なくとも1つのブッシュは、ガイドスロット内に配置されている時に長手方向の動きを制限するための突き合わせ端部を有する。
【0011】
さらに追加して、本開示の態様によれば、ドリルガイド内にソケットがあり、遠位操作のためのハンドルを受け入れるようになっている。
【0012】
さらに追加して、本開示の態様によれば、ガイドスロットとブッシュのそれぞれの組に少なくとも1つの上記ピンが提供され、このブッシュはピン上でスライド係合する。
【0013】
さらに追加して、本開示の態様によれば、フックのような部分の表面は、概して上記長手方向に対して横断している(transverse)。
【0014】
さらに追加して、本開示の態様によれば、フックのような部分は、患者の解剖学的モデル(anatomical model)に基づく当該患者特有の表面を少なくとも1つ有する。
【0015】
さらに追加して、本開示の態様によれば、患者の解剖学的モデルは肩甲骨の解剖学的モデルであり、上記少なくとも1つの患者固有の表面は、肩甲骨ヘッド(scapula head)及び関節窩ネック(glenoid neck)のうちの少なくとも1つの形状に対して相補的である。
【0016】
さらに追加して、本開示の態様によれば、上記少なくとも1つのガイドスロットは、インプラントの所定の中心(planned center)と、烏口(coracoid)と共に配列された関節窩縁に隣接する位置と、烏口のベース部と、のうちの少なくとも1つと長手方向に共に配列される。
【0017】
したがって、本開示の別の一態様によれば、関節窩を再表面化する方法も提供され、この方法は、少なくとも2つのピンスロットを有する患者特有の器具を得ることと、患者特有の器具のピンスロットを、肩甲骨に固定された第1ピンに亘り(over)設置することと、カニューレ挿入リーマ(cannulated reamer)を、関節窩に固定された第2ピンに亘り設置することと、患者特有の器具のシャフトスロットを、カニューレ挿入リーマのシャフトに亘り設置して、シャフトスロットとカニューレ挿入リーマのシャフトの間に結合部を形成し、カニューレ挿入リーマが第2ピンに沿って並進運動するのを可能にすることと、患者特有の器具及びピンに案内されたカニューレ挿入リーマを用いて関節窩をリーマ処理することと、を含む。
【0018】
さらに、本開示のこの別の態様によれば、患者特有の器具を得ることは、関節窩から患者特有の距離に関節窩から遠位のシャフトスロットの端部を有する個別器具を得ることを含み、カニューレ挿入リーマのシャフト上のストッパーがシャフトスロットの端部に当たったら、リーマ処理を停止することをさらに含む。
【0019】
さらに追加して、本開示の態様によれば、上記方法は、計画上のリーマ処理深さに応じた患者特有の距離にシャフト上ストッパーを備えたカニューレ挿入リーマを得ることを含む。
【0020】
さらに追加して、本開示の態様によれば、患者特有の器具のシャフトスロットをカニューレ挿入リーマのシャフトに亘り設置することは、カニューレ挿入リーマのシャフトがシャフトスロットの側方開口部を介してシャフトスロットに受け入れられるように、患者特有の器具を第1ピンの周りで回転させることを含む。
【0021】
本開示のさらに別の一態様によれば、再表面化された関節窩内にインプラントを位置決めする方法が提供され、この方法は、少なくとも1つのピンスロットを有する患者特有の器具を得ることと、患者特有の器具のピンスロットを、肩甲骨に固定されたピンに亘り設置することと、インパクターのシャフトが再表面化済み関節窩と共に配列されるように、患者特有の器具のガイドブラケットにインパクターのシャフトを設置し、シャフトとガイドブラケットの間に並進結合部が形成されて、シャフトがガイドブラケットに沿って並進運動することを可能にすることと、インパクターの自由端にインプラントを設置することと、患者特有の器具及びピンに案内されてインプラントを再表面化済み関節窩に押し込むことと、を含む。
【0022】
さらに追加して、本開示の態様によれば、患者特有の器具を得ることは、再表面化済み関節窩に対するインプラント内の貫通穴の向きが、インプラントの貫通穴に受け入れられるねじの計画上の位置決めに応じた向きになるように、ガイドブラケットの患者特有の向きを得ることを含む。
【0023】
さらに追加して、本開示の態様によれば、上記方法は、再表面化済み関節窩に押し込まれたインプラントにおいてドリルガイドを位置決めすることをさらに含み、このドリルガイドは、ピンの方向を指す位置に置かれた視覚ポインターを含む。
【0024】
さらに追加して、本開示の態様によれば、患者特有の器具及びピンに案内されてインプラントを再表面化済み関節窩に押し込むことは、単一の並進自由度でインプラントを動かすことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】患者特有の器具を用いて関節窩インプラントを肩甲骨に固定する方法のフローチャートである。
図2】仮想計画における、関節窩インプラントの付いた肩甲骨の斜視図である。
図3】本開示の一実施形態によるピン配置PSIの一対の斜視図である。
図4】ピン配置時の、図3のピン配置PSIが付いた肩甲骨の斜視図である。
図5】ピン配置PSI除去時の、図4の肩甲骨の斜視図である。
図6】本開示の別の一実施形態による、深部穴開けPSIの斜視図である。
図7図6の深部穴開けPSIが付いた肩甲骨の斜視図である。
図8】カニューレ挿入リーマの付いた、肩甲骨及び深部穴開けPSIの斜視図である。
図9】リーマ処理後の関節窩を有する肩甲骨の斜視図である。
図10】本開示のさらに別の一実施形態による、インパクターガイドPSIの斜視図である。
図11】インパクターガイドPSI及びインパクターツールの付いた肩甲骨の斜視図である。
図12】本開示のさらに別の一実施形態による、穴開けガイドPSIの斜視図である。
図13】穴開けガイドPSI及びドリルビットの付いた肩甲骨の斜視図である。
図14】関節窩半球形インプラントの組立図である。
図15】関節窩インプラント及びグラフトの付いた肩甲骨の斜視図である。
図16】肩甲骨に設置された図4のピン配置PSIの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面類、より特定的には図1を参照すると、10に、肩甲骨に関節窩インプラントを固定する方法が示されている(すなわち肩甲骨)。この方法を実施するには、図2〜13を参照して、種々の患者特有の器具(以下PSIと称する)を使用する。例として、図2は、リバース型肩関節全形成術における、関節窩半球状ヘッドインプラントのベース部の位置決めを描いている。しかし、代わりに方法10を使用して、解剖肩関節全置換術で行われているように関節窩にカップインプラントを固定してもよい。
【0027】
図1のステップ11に従って、仮想肩関節形成術の計画を作成する。この計画作成ステップでは、モデルインプラントとそのコンポーネント群と共に、種々の肩関節構造を三次元モデルとして示す。これらの3Dモデルは通常、手術前画像(例えばCTスキャン、MRI等)の処理結果であるため、患者の骨を精密かつ正確に表す。
【0028】
計画作成ステップ中、オペレーターは、様々な種類及び寸法のインプラントを選択でき、インプラントとそのコンポーネントを肩甲骨と上腕骨のどこに配置するかを対話形式で計画できる。関節窩インプラントの場合、その位置と向きには、関節窩インプラントを肩甲骨に固定するねじの位置と向きの仮想提示が含まれ得る。ねじは縦長であり、関節窩の内側の肩甲骨が薄いことから、関節窩インプラントの位置に関する仮想計画は、通常、骨材料を貫通しないねじの向きと深さを見出すことを目的とする。
【0029】
例えば、図2は、ボールヘッド型(すなわち半球状ヘッド20A)のインプラント20の部品群(図14にも同部品が示されている)を有する患者の肩甲骨Aのモデルを示している。インプラント20はベースプレート21を備える。ベースプレート21は金属製のタイプであり、再表面化後の関節窩C(図9)に接着され、装着される。例えば、骨梁のような(trabecular-like)医療グレード金属をベースプレート21に使用してよい。ベースプレート21の下側からペグ22が突き出て、関節窩Bに開けられた穴に収容される。ねじ23もベースプレート21の下側から突き出て、インプラント20を肩甲骨Aに繋止する。これらの部品は概して一体式であるため、本体25はベースプレート21に固定されている。本体25は、インプラント20と半球状ボールヘッドの間のインターフェースであり、この半球状ボールヘッドは、上腕骨又は上腕骨上のインプラントに接する表面を形成する。したがって、ねじ23が貫通穴26を通過している状態で、本体25及びベースプレート21内で貫通穴26が同時に形成される。
【0030】
方法10のステップ12〜17は、ステップ11の仮想肩関節形成術計画を再現するように、外科医又はオペレーターを手引きして骨組織変更を実施するのに使われる。ゆえに、方法10のステップ12〜17は、仮想計画と実質的に同様に関節窩インプラントを設置させる目的で実施する。
【0031】
ステップ12に従い、仮想計画作成から得たデータを用いてPSIを作成する。PSIについては下記でさらに詳しく述べる。仮想計画作成の結果として求められるPSIを精密かつ正確に表現する限り、PSIには任意の適切な製造方法及び材料を用いてよい。ステップ12のPSI作成は、仮想肩関節形成術の計画作成ステップ11でも使用した画像データを用いて、手術前に実施する。解剖学的データの他の供給源(例えば、手術前に得た手動骨測定値)も使用してよい。計画作成ステップを通じて取得できる他の情報の1つとして、必要なグラフトの生成がある。インプラントと肩甲骨の間にグラフトウェッジ(graft wedge)が必要とされる場合があり、したがって計画作成ステップにより、図15に示すような必要なグラフトのモデルを定義でき、加えて、仮想計画作成において計算される所定の幾何学的配置のグラフトウェッジB1を形成するためのPSIツールを定義できる。グラフトウェッジB1は、インプラント20と機械処理後の関節窩Cの間の位置に置かれることになる。浅い関節窩C(すなわち完全なカウンターボア形状を持たない関節窩C)に制限された肩甲骨では、グラフトの使用が必要とされ得る。ゆえにグラフトウェッジB1は、図15に示される通り、関節窩Cと共に、インプラント20に対する取付面を形成することになる。
【0032】
ステップ13〜17は手術中に実施する。肩関節を露出し、肩甲骨A(図2)から上腕骨を脱臼させ、切除し、及び/又は分離した後、ステップ13〜17を実施する。
【0033】
ステップ13(図1)に従い、PSIを用いて一対のピンを肩甲骨Aに配置する。図3及び4を共に参照すると、30にピン配置PSIの概要が示されている。ピン配置PSI 30は、解剖学的接触面31を備える。解剖学的接触面31は、肩甲骨ヘッドの両側及び/又は関節窩Bのネックを中に受け入れられるように、側方が開いたフックのような形状を有する。PSIに従って、解剖学的接触面31は、当該患者の対応する肩甲骨面と一致するように製造された接触面(複数可)32を有する。したがって、ピン配置PSI 30の位置決めは、肩甲骨A側の対応する一致面を見出す接触面32に案内される。
【0034】
ピン配置PSI 30は、ドリルガイド33をさらに備える。ドリルガイド33は、ステップ11の仮想計画(図1)に応じて、解剖学的接触面31に対して位置決めされる。ドリルガイド33は、一対の円筒形の切り抜き部すなわちスロット34を有し、スロット34は、特に、関節窩B内でのピンのドリリングを案内する位置及び向きにされる(すなわち、スロット34はPSI 30の長手方向に伸びる)。一実施形態によれば、側方開口部35により側方からスロット34にアクセスできるので、ピンを側方からスロット34に挿入することができる。ピン配置PSI 30の操作を容易にする目的で、ソケット36又は同様のコネクターをドリルガイド33内に形成してもよい。例えば、ピン配置PSI 30を遠位で操作するため、ソケット36を介して細長いツールをピン配置PSI 30に接続してよい。
【0035】
図4及び5に共に示されている通り、ピン40を差し込んで肩甲骨Aに穴開けする。ピン40に、計画されたはめあい(例えば精密なはめあい)で受け入れられるスリーブ41(別名ブッシュ)を設けてよく、この場合、スリーブ41はスロット34で中心に位置決めされた貫通穴を有するので、ピン40は、スロット34内で確実に軸方向の中心に置かれる。さらに、スリーブ41は、ピン40の関節窩内の挿入深さを制御するための突き合わせ端部42を備えてよい。また、ピン40に目盛りを付けるなど、ピン40の挿入深さを制御するための任意の適切な方法も考えられる。
【0036】
手術中、ハンドル43をソケット36に接続し(図3及び4)、ピン配置PSI 30を骨の計画上の位置へと側方に動かすことにより、解剖学的接触面31を用いてピン配置PSI 30を関節窩B上に設置して、ピン配置PSI 30を肩甲骨A上に確実に正しく位置付ける。スリーブ41の付いたピン40を、側方開口部35を介してピン配置PSIのスロット34に挿入し、ピン40を差し込んで関節窩Bに穴開けしてよく、又は、スロット34にスリーブ/ブッシュ41を配置してからピン40を中に通してもよい。ピン40が適切に肩甲骨Aに挿入されたら、スリーブ41をピン40の端部からスライドさせて外すことによりスリーブ41を引き抜いてよく(図5)、これにより、ピン配置PSI 30を側方に動かして肩甲骨Aから除去できる。解剖学的接触面31のフックのような部分の表面は、概してドリルガイド33の長手方向に対して横断する。側方開口部35が存在することにより、ピン40が側方開口部35を通過するので、PSI 30を側方に引き抜くのに困難を来すことなく、解剖学的接触面31のフックのような部分との間の良好な接触面が得られる。
【0037】
図示されている実施形態によれば、ピン40の一方は、予測される再表面化済み関節窩Cの中心にあり、他方のピン40は、烏口又は烏口ベース部と共に配列される関節窩縁に隣接する位置にある。他の位置も考えられる。例示目的で、図16に、肩甲骨Aに対するピン配置PSI 30の企図される位置を概略で示す。
【0038】
図1を参照すると、ステップ14の深部穴開け及び/又は関節窩Bの表面リーマ処理は、ピン40及び適切なPSIを用いて行う。図6及び7を共に参照すると、60にリーマ処理PSIの概要が示されている。リーマ処理PSI 60は第1チューブ61を有し、この第1チューブ61は、ピン40の一方にスライドしてかぶさる寸法にされたピンスロット62を有し、これにより、共に円筒形結合部を形成する。第1チューブ61の一方の端は、肩甲骨Aと接する突き合わせ部63を形成する。スペーシングアーム64は、第1チューブ61から側方に伸びて、その自由端に第2チューブ65を有する。第2チューブもシャフトスロット66を備え、このシャフトスロット66は、側方開口部67を介してアクセス可能であり、側方開口部67を用いてリーマ処理PSI 60を回転させると、ピン40がシャフトスロット66に入る。リーマ処理PSI 60は各患者に固有であるため、ピンスロット62とシャフトスロット66の間は、ピン40同士の間隔に合うように所定の距離が空けられている。したがって、図7に示すように、第1チューブ61がスライドして一方のピン40にかぶさると、他方のピン40は、第2チューブ65のシャフトスロット66の中に入る向きにされ得る。
【0039】
ステップ14にピン40の位置の確認を含めてよいことが指摘される。リーマ処理PSI 60はピン40を受け入れるように製作されるので、中央に位置付けられたピン40は、第2チューブ65において軸方向の中心に位置するはずである。中心がずれていると、ピン40の位置決めが不適切であると指摘される場合があり、このような指摘の結果、ステップ13を見直し、ピン40の位置を変更することがあり得る。
【0040】
したがって、図8を参照すると、並進運動するピン40に同軸上に案内されるように、カニューレ挿入リーマ80を、シャフトスロット66の中にあるピン40に取り付けてよい。リーマ80は、関節窩Bに計画上の直径を再表面化するように選択されたリーマ端部81を有する。リーマ端部81はシャフト82の端に位置する。シャフト82は、リーマ処理PSI 60のシャフトスロット66に受け入れられるサイズにされて、並進結合部を形成する。さらに、リーマ端部81は、リーマ処理PSI 60との付き合わせにより形成される深さまで、インプラント20のペグ22(図2)を受け入れるのに充分な直径の穴を開けてもよい。あるいは、ペグ用の穴開けを別途行ってもよい。したがって、カニューレ挿入リーマ80に入ったピン40と、シャフト82及びシャフトスロット66間の協同作用との組み合わせにより、特定の所望の深さまで確実に関節窩Bがリーマ処理される。シャフト82は、スライドさせるかカチッとはめ込むことによりシャフトスロット66に入る。さらに図8を参照すると、シャフト82の端部にストッパー83を取り付けてよい。ストッパー83がリーマ処理PSI 60と協同することにより、関節窩Bへのリーマ80の貫通深さが制限され、その結果、表面リーマ処理及び任意の深部穴開け(図2のペグ22用に別途実施する場合)の深さが確実に計画通りの深さになる。
【0041】
両方のピン40を使用すると、リーマ処理PSI 60が支えられ、かつカニューレ挿入リーマ80の動きが案内されることが観察される。両方のピン40を使用することにより、単一のピン40よりも、ピン40/PSI 60アセンブリの構造的完全性が高まる。しかしながら、カニューレ挿入リーマ80、リーマ処理された関節窩Bと共に、例えば単一のピン40を使用するなど、他の構成を使用することも考えられる。
【0042】
図9に示す通り、関節窩Bのリーマ処理が完了して、ペグ穴Dを有する再表面化された関節窩Cが形成されたら、ピン40と一緒に深部穴開けPSI 60を除去してよい。図示していないが、下記で説明するように、再表面化された関節窩Cにない方のピン40を留置することが所望される場合もある。ウェッジグラフトB1を使用する場合は(図15)、再表面化済み関節窩Cに隣接する、関節窩Bの適切な位置にウェッジグラフトB1を取り付ける。オペレーターがウェッジグラフトB1を適切な向きにする上で、烏口側のピン40を用いて案内することができる。ウェッジグラフトB1を関節窩Bに融合させてもよく、その場合、ねじ23により、インプラント20とウェッジグラフトB1の両方を関節窩Bに固定する。
【0043】
図1を参照すると、ピンのいずれか一方と、インプラント20を正しい向きにするためのPSIを用いて、ステップ15のインプラント20の打ち込み(impact)を実施する。より具体的には、インプラント20の向きは、ねじ23の位置決めに影響を及ぼす(図2)。ゆえに、ステップ11の仮想計画を再現するには、貫通穴26がねじ23の計画上の挿入位置と共に配列されるように、インプラント20を正しい方向に向けなければならない。
【0044】
図10及び11を共に参照すると、打ち込みガイドPSIの概要が100に示されている。打ち込みガイドPSI 100は、ピンスロット102の付いたチューブ101を備える。ピンスロット102は、残っているピン40を受け入れて、共に円筒形結合部を形成するサイズにされる。チューブの(任意の形状/幾何学的配置との)突き合わせ端部は、周辺の骨面に寄り掛かるように成形された患者特有の接触面を有し得るので、チューブ101が骨に当たったときにPSIが回転するのを防止できる。チューブ101から側方にアーム104が突き出ている。アーム104の自由端にガイドブラケット105があり、このガイドブラケット105を使ってインパクターツール110の動きが案内される。より具体的には、ガイドブラケット105は、インパクターツール110のシャフト111を中に受け入れるための側方開口部を有し、共に滑り結合部を形成する。
【0045】
インパクターツール110は、インプラント20の貫通穴26(図2)に受け入れられる間隔の空いた一対のペグの付いた従来型のものでよい。インパクターツール110のシャフト111の端部にあるこれらのペグの位置に応じて、ガイドブラケット105を特定の方向に向け、これにより、仮想計画作成ステップ11(図1)に従ってインプラント20の貫通穴26の位置決めを制御する。
【0046】
ゆえに、図11のアセンブリを用いて、インプラント20を再表面化済み関節窩Cに挿入することができる。インプラント20と再表面化済み関節窩Cの形状が一致している結果、打ち込み中にインプラント20が自動的に中心に配置され得る(したがって、突き合わせ端部103位置で患者特有の面のアラインメントを実施する必要がない)。しかしながら、PSI 100及びインパクターツール110により、貫通穴26が計画通りに位置した状態で、インプラント20が再表面化済み関節窩Cに完全に挿入することが概ね確保される。この時点で、インプラント20を再表面化済み関節窩Cに残して、PSI 100をインパクターツール110と共に除去してよい。
【0047】
図1のステップ16に従い、後続のねじ23の挿入のため、計画通りに関節窩にアンカー穴を開けてよい。図12及び13を参照すると、ドリルガイドPSI 120は、インプラント本体25の対応する窪みに受け入れられるサイズにされた本体121を有する。ドリルガイドPSI 120の本体121内に、一対のドリルガイド穴122が形成されている。ドリルガイド穴122は、特に、案内シリンダー122Aがインプラント20内で貫通穴26の軸線上の延長に沿うような位置及び向きにされる(図2)。さらに、案内シリンダー122Aの直径は概ね先細りになり、その中心にドリルビット123が置かれ、その結果、ドリルビット123とドリルガイド穴122の間の潜在的な遊びを低減している。ドリルガイドPSI 120の本体121に使用する材料として、ドリルビット123による損傷を受けないような材料を選択してもよい。図13に示すように、穴開け深さを制御し計画通りのアンカー穴深さに達するようにするため、ドリルビット123にストッパー124を設けてよい。別の方法として、ドリルビット123に目盛りを付けて深さを制御するなどの方法も考えられる。アンカー穴を開ける作業が完了したら、ドリルガイドPSI 120を除去してよい。図12に示すように、ドリルガイドPSI 120は視覚ポインター125を備えていてもよい。視覚ポインター125は、残っているピンを指し示す目的で、ドリルガイドPSI 120内に患者ごとに個別に形成してよい。したがって、このポインターは、確実に所望の位置に穴開けするための追加の確認ステップを表す。
【0048】
図1のステップ17に従い、ねじ23(又は同様の留め具)でインプラント20を肩甲骨Aに固定してよく、これにより図2の仮想計画が再現される。次に、従来型のステップを実施して肩関節術を完成させる。
【0049】
方法10に図15のグラフトB1を作成するステップを含めてよいことが指摘される。上腕骨の表面を再建する必要があることから、方法10のこのステップに、例えば上腕骨から骨材料を除去するためのPSIツールを設けることを含めてよい。しかしながら、上腕骨又は他の骨から除去されるグラフトB1は、単に円筒形状であり得るので、適切な直径の標準の円筒形リーマを使用してよい。図15に示すグラフトB1は楔形であるため、グラフトB1の斜面を機械加工するための適切なPSIを作成してよい。
【0050】
上記の方法及びシステムは、特定の順序で実施される特定のステップを参照して説明し表示されているが、本開示の教示内容から逸脱することなしに、これらのステップを組み合わせ、細分し、又は順序変更して同等の方法を形成することができる。したがって、上記ステップの順序及びグループ化は本開示の制限事項ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16