(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6483796
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】電動車
(51)【国際特許分類】
B60L 7/14 20060101AFI20190304BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20190304BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B60L7/14
B60L3/00 S
B60L1/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-245853(P2017-245853)
(22)【出願日】2017年12月22日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 真基
(72)【発明者】
【氏名】木村 治和
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−234807(JP,A)
【文献】
特開2015−133801(JP,A)
【文献】
特開2004−196110(JP,A)
【文献】
特開2011−223663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/14
B60L 1/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能なバッテリと、
走行輪を駆動する走行モータと、
前記バッテリと前記走行モータとの間で双方向の電力変換を行う走行インバータと、
油圧式の操舵装置に作動油を供給するための操舵モータと、
前記バッテリから前記操舵モータへの一方向の電力変換を行う操舵インバータと、
前記バッテリの電圧に関するバッテリ電圧値を出力するバッテリ監視部と、
出力された前記バッテリ電圧値に基づいて前記走行インバータおよび前記操舵インバータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記走行輪の回転に伴って前記走行モータが発電した電力が前記バッテリに供給される回生時のうち、(1)前記バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも低い第1回生時においては、前記走行モータの滑り量が予め設定された第1目標滑り量となるように前記走行インバータを制御するとともに、前記操舵モータの滑り量が予め設定された第3目標滑り量となるように前記操舵インバータを制御し、(2)前記バッテリ電圧値が前記閾値よりも高い第2回生時においては、前記走行モータの滑り量が予め設定された第2目標滑り量となるように前記走行インバータを制御するとともに、前記操舵モータの滑り量が予め設定された第4目標滑り量となるように前記操舵インバータを制御するよう構成され、
滑り量が前記第2目標滑り量とされた前記走行モータの効率は、滑り量が前記第1目標滑り量とされた前記走行モータの効率よりも低く、
滑り量が前記第2目標滑り量とされた前記走行モータのトルクは、滑り量が前記第1目標滑り量とされた前記走行モータのトルクと実質的に同一であり、
滑り量が前記第4目標滑り量とされた前記操舵モータの効率は、滑り量が前記第3目標滑り量とされた前記操舵モータの効率よりも低い、
ことを特徴とする電動車。
【請求項2】
充放電可能なバッテリと、
走行輪を駆動する走行モータと、
前記バッテリと前記走行モータとの間で双方向の電力変換を行う走行インバータと、
油圧式の荷役装置に作動油を供給するための荷役モータと、
前記バッテリから前記荷役モータへの一方向の電力変換を行う荷役インバータと、
前記バッテリの電圧に関するバッテリ電圧値を出力するバッテリ監視部と、
出力された前記バッテリ電圧値に基づいて前記走行インバータおよび前記荷役インバータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記走行輪の回転に伴って前記走行モータが発電した電力が前記バッテリに供給される回生時のうち、(1)前記バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも低い第1回生時においては、前記走行モータの滑り量が予め設定された第1目標滑り量となるように前記走行インバータを制御するとともに、前記荷役モータの滑り量が予め設定された第5目標滑り量となるように前記荷役インバータを制御し、(2)前記バッテリ電圧値が前記閾値よりも高い第2回生時においては、前記走行モータの滑り量が予め設定された第2目標滑り量となるように前記走行インバータを制御するとともに、前記荷役モータの滑り量が予め設定された第6目標滑り量となるように前記荷役インバータを制御するよう構成され、
滑り量が前記第2目標滑り量とされた前記走行モータの効率は、滑り量が前記第1目標滑り量とされた前記走行モータの効率よりも低く、
滑り量が前記第2目標滑り量とされた前記走行モータのトルクは、滑り量が前記第1目標滑り量とされた前記走行モータのトルクと実質的に同一であり、
滑り量が前記第6目標滑り量とされた前記荷役モータの効率は、滑り量が前記第5目標滑り量とされた前記荷役モータの効率よりも低い、
ことを特徴とする電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生制動機能を有する電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトのような荷役車には、ガソリン式のものとバッテリ式のものとがあり、これらは、用途(荷役作業内容)および使用環境に応じて使い分けられている。例えば、建屋内では、静粛性に優れ、比較的小型で、かつ排気ガスを排出しないバッテリ式の荷役車が好んで使われている。なお、以下では、荷役車を含むバッテリ式の車両を「電動車」と呼ぶこととする。
【0003】
特許文献1等にみられるように、電動車は、通常、降坂時の速度上昇を抑制するための回生制動機能を有している。回生制動機能とは、降坂時の走行輪の回転に伴って走行モータが発電した電力をバッテリに回生し、該バッテリを充電する機能である。この機能によれば、電動車の稼働時間を延ばすこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−139295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電動車は、1階に荷役作業場所があり、2階に充電場所があり、かつ1階と2階がスロープで接続された建屋内で使用される場合、2階から1階への移動の際に充電済みのバッテリが回生制動機能によってさらに充電され、過充電状態となるという問題があった。これを解決するための手段としては、バッテリが過充電状態に近づいたことを検知して回生制動機能の制動トルクを低下させることが考えられるが、このような手段をとると、スロープを下る際に速度を十分に抑制することができなくなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、降坂時に速度を十分に抑制しつつ過充電を防ぐことができる電動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る
第1の電動車は、充放電可能なバッテリと、走行輪を駆動する走行モータと、バッテリと走行モータとの間で双方向の電力変換を行う走行インバータと、
油圧式の操舵装置に作動油を供給するための操舵モータと、バッテリから操舵モータへの一方向の電力変換を行う操舵インバータと、バッテリの電圧に関するバッテリ電圧値を出力するバッテリ監視部と、出力されたバッテリ電圧値に基づいて走行インバータ
および操舵インバータを制御する制御部とを備え、制御部は、走行輪の回転に伴って走行モータが発電した電力がバッテリに供給される回生時のうち、(1)バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも低い第1回生時においては、走行モータの滑り量が予め設定された第1目標滑り量となるように走行インバータを制御
するとともに、操舵モータの滑り量が予め設定された第3目標滑り量となるように操舵インバータを制御し、(2)バッテリ電圧値が
上記閾値よりも高い第2回生時においては、
走行モータの滑り量が予め設定された第2目標滑り量となるように走行インバータを制御する
とともに、操舵モータの滑り量が予め設定された第4目標滑り量となるように操舵インバータを制御するよう構成され、滑り量が第2目標滑り量とされた走行モータの効率は、滑り量が第1目標滑り量とされた走行モータの効率よりも低く、滑り量が第2目標滑り量とされた走行モータのトルクは、滑り量が第1目標滑り量とされた走行モータのトルクと実質的に同一であ
り、滑り量が第4目標滑り量とされた操舵モータの効率は、滑り量が第3目標滑り量とされた操舵モータの効率よりも低い、ことを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る第2の電動車は、充放電可能なバッテリと、走行輪を駆動する走行モータと、バッテリと走行モータとの間で双方向の電力変換を行う走行インバータと、油圧式の荷役装置に作動油を供給するための荷役モータと、バッテリから荷役モータへの一方向の電力変換を行う荷役インバータと、バッテリの電圧に関するバッテリ電圧値を出力するバッテリ監視部と、出力されたバッテリ電圧値に基づいて走行インバータおよび荷役インバータを制御する制御部とを備え、制御部は、走行輪の回転に伴って走行モータが発電した電力がバッテリに供給される回生時のうち、(1)バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも低い第1回生時においては、走行モータの滑り量が予め設定された第1目標滑り量となるように走行インバータを制御するとともに、荷役モータの滑り量が予め設定された第5目標滑り量となるように荷役インバータを制御し、(2)バッテリ電圧値が上記閾値よりも高い第2回生時においては、走行モータの滑り量が予め設定された第2目標滑り量となるように走行インバータを制御するとともに、荷役モータの滑り量が予め設定された第6目標滑り量となるように荷役インバータを制御するよう構成され、滑り量が第2目標滑り量とされた走行モータの効率は、滑り量が第1目標滑り量とされた走行モータの効率よりも低く、滑り量が第2目標滑り量とされた走行モータのトルクは、滑り量が第1目標滑り量とされた走行モータのトルクと実質的に同一であり、滑り量が第6目標滑り量とされた荷役モータの効率は、滑り量が第5目標滑り量とされた荷役モータの効率よりも低い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、降坂時に速度を十分に抑制しつつ過充電を防ぐことができる電動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る電動車のブロック図である。
【
図2】
図1に示された各モータの滑り量と効率の関係を示すグラフである。
【
図3】
図1に示された制御部の制御フロー図である。
【
図4】本発明の変形例に係る電動車のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る電動車の実施例について説明する。
【0014】
図1に、本発明の実施例に係る電動車1Aを示す。同図に示すように、電動車1Aは、バッテリ2と、走行輪3、走行モータ4および走行インバータ5からなる走行系と、操舵装置6、操舵モータ7および操舵インバータ8からなる操舵系と、荷役装置9、荷役モータ10および荷役インバータ11からなる荷役系と、バッテリ監視部12、速度監視部13および制御部14からなる制御系と、アクセルペダル15、ステアリング16および荷役レバー17からなる操作系とを備えている。
【0015】
バッテリ2は、充放電可能な大容量のリチウムイオン電池または鉛電池からなる。
【0016】
走行モータ4は、誘導モータである。走行モータ4は、その出力軸がギアボックス等を介して走行輪3に連結されている。すなわち、走行モータ4および走行輪3は、相互にトルクを伝達することができる。
【0017】
走行インバータ5は、バッテリ2と走行モータ4との間で双方向の電力変換を行う。より詳しくは、走行インバータ5は、走行モータ4を走行輪3の動力源として使用する「力行時」に、バッテリ2が出力する直流電力を所望の交流電力に変換して走行モータ4に供給する。一方、走行インバータ5は、走行モータ4を発電機として使用する「回生時」に、走行モータ4が発電した交流電力を所望の直流電力に変換してバッテリ2に回生する。
【0018】
操舵装置6は、電動車1Aの進行方向を決定づける操舵輪と、伸縮することにより操舵輪の操舵角を変化させる操舵用油圧シリンダと、操舵用油圧シリンダに接続されたオービットロールとを含んでいる。
【0019】
操舵モータ7は、誘導モータである。操舵モータ7は、タンクに蓄えられた作動油を操舵装置6のオービットロールに送る。なお、ステアリング16が中立位置にある場合、オービットロールに送られた作動油は操舵用油圧シリンダに送られることなく回収される。一方、ステアリング16が中立位置にない場合、オービットロールに送られた作動油は操舵用油圧シリンダに送られ、これにより操舵輪の操舵角が変化する。
【0020】
操舵インバータ8は、バッテリ2から操舵モータ7への一方向の電力変換を行う。より詳しくは、操舵インバータ8は、バッテリ2が出力する直流電力を所望の交流電力に変換して操舵モータ7に供給する。この電力変換は、ステアリング16が操作されているか否かに関わらず、常に行われている。
【0021】
荷役装置9は、フォークと、フォークを支持するマスト装置と、フォークをマスト装置に沿って昇降させる昇降用油圧シリンダと、車両本体に対してマスト装置を傾動させるティルト用油圧シリンダと、各油圧シリンダへの作動油の流れを制御する制御バルブとを含んでいる。
【0022】
荷役モータ10は、誘導モータである。荷役モータ10は、タンクに蓄えられた作動油を荷役装置9の制御バルブを介して各油圧シリンダに送る。
【0023】
荷役インバータ11は、バッテリ2から荷役モータ10への一方向の電力変換を行う。より詳しくは、荷役インバータ11は、バッテリ2が出力する直流電力を所望の交流電力に変換して荷役モータ10に供給する。この電力変換は、フォークの昇降やマスト装置の傾動に関する荷役レバー17が操作されたときに行われる。
【0024】
バッテリ監視部12は、バッテリ2の電圧を監視し、該電圧に関するバッテリ電圧値を制御部14に向けて出力する。
【0025】
速度監視部13は、走行輪3および走行モータ4のいずれか一方または両方の回転数を監視し、該回転数から算出した電動車1Aの走行速度に関する走行速度値を制御部14に向けて出力する。
【0026】
制御部14は、バッテリ監視部12から出力されたバッテリ電圧値、速度監視部13から出力された走行速度値、および操作系(15,16,17)の操作量に基づいて、走行インバータ5、操舵インバータ8および荷役インバータ11を制御する。
【0027】
[走行インバータ5の制御]
制御部14は、アクセルペダル15が操作されている場合は、その操作量に応じた速度で電動車1Aが走行するように走行インバータ5を制御し、走行モータ4を動作させる。このとき、制御部14は、走行モータ4の滑り量が予め設定された第1目標滑り量となるように走行インバータ5を制御する。
【0028】
また、制御部14は、アクセルペダル15が未操作で、かつ走行速度値がゼロではないとき、すなわち降坂時に、走行輪3の回転に伴って走行モータ4が発電した電力がバッテリ2に回生されるように走行インバータ5を制御する。このとき、制御部14は、バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも低い場合(以下、この場合を「第1回生時」という)は、力行時と同様、走行モータ4の滑り量が予め設定された第1目標滑り量となるように走行インバータ5を制御する。一方、制御部14は、バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも高い場合(以下、この場合を「第2回生時」という)は、走行モータ4の滑り量が予め設定された第2目標滑り量となるように走行インバータ5を制御する。
【0029】
滑り量が第1目標滑り量とされているとき、走行モータ4の効率は最大のη1となり、滑り量が第2目標滑り量とされているとき、走行モータ4の効率はη1よりも低いη2となる(
図2(A)参照)。したがって、バッテリ電圧値が過電圧状態であること(または、過電圧状態に近づいていること)を示している場合に、滑り量を第1目標滑り量から第2目標滑り量に変化させると、走行モータ4の発電量が低下し、過電圧状態の悪化が防がれる。
【0030】
効率η2が効率η1よりも低い限りにおいて、第2目標滑り量は任意に設定することができる。ただし、滑り量が第2目標滑り量とされた走行モータ4のトルクは、滑り量が第1目標滑り量とされた走行モータ4のトルクと実質的に同一でなければならない。降坂中に、搭乗者が意図しないタイミングで制動力が変化するのは好ましくないからである。
【0031】
なお、トルクを維持しながら効率を低下させるためには、例えば、走行モータ4の励磁電流やトルク電流を増大させればよい。
【0032】
[操舵インバータ8の制御]
制御部14は、力行時および第1回生時に、操舵モータ7の滑り量が予め設定された第3目標滑り量となるように操舵インバータ8を制御する。一方、制御部14は、第2回生時に、操舵モータ7の滑り量が予め設定された第4目標滑り量となるように操舵インバータ8を制御する。
【0033】
滑り量が第3目標滑り量とされているとき、操舵モータ7の効率は最大のη3となり、滑り量が第4目標滑り量とされているとき、操舵モータ7の効率はη3よりも低いη4となる(
図2(B)参照)。したがって、バッテリ2が過電圧状態になっている(または、過電圧状態に近づいている)第2回生時において、滑り量を第3目標滑り量から第4目標滑り量に変化させると、操舵モータ7の電力消費量が増大し、過電圧状態が解消されやすくなる。
【0034】
効率η4が効率η3よりも低い限りにおいて、第4目標滑り量は任意に設定することができる。
【0035】
[荷役インバータ11の制御]
制御部14は、荷役レバー17が操作されている場合は、フォーク等がその操作量に応じた動きをするように荷役インバータ11を制御し、荷役モータ10を動作させる。ただし、制御部14は、力行時および第1回生時に、荷役モータ10の滑り量が予め設定された第5目標滑り量となるように荷役インバータ11を制御する。一方、制御部14は、第2回生時に、荷役モータ10の滑り量が予め設定された第6目標滑り量となるように荷役インバータ11を制御する。
【0036】
滑り量が第5目標滑り量とされているとき、荷役モータ10の効率は最大のη5となり、滑り量が第6目標滑り量とされているとき、荷役モータ10の効率はη5よりも低いη6となる(
図2(C)参照)。したがって、バッテリ2が過電圧状態になっている(または、過電圧状態に近づいている)第2回生時において、滑り量を第5目標滑り量から第6目標滑り量に変化させると、荷役モータ10の電力消費量が増大し、過電圧状態が解消されやすくなる。
【0037】
効率η6が効率η5よりも低い限りにおいて、第6目標滑り量は任意に設定することができる。
【0038】
上記制御部14の動作をまとめると、
図3に示したフロー図の通りとなる。
【0039】
ステップS1において、制御部14は、アクセルペダル15の操作量および走行速度値に基づいて、回生中であるか否かを判定する。その後、制御部14は、回生中であればステップS2を実行し、回生中でなければステップS3を実行する。
【0040】
ステップS2において、制御部14は、バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも高いか否かを判定する。その後、制御部14は、バッテリ電圧値が閾値よりも高ければステップS4を実行し、バッテリ電圧値が閾値よりも低ければステップS3を実行する。
【0041】
結局、制御部14は、力行時および第1回生時にステップS3を実行し、第2回生時にステップS4を実行する。
【0042】
ステップS3およびステップS5において、制御部14は、滑り量が第1目標滑り量となるように走行モータ4を制御し、滑り量が第3目標滑り量となるように操舵モータ7を制御し、さらに滑り量が第5目標滑り量となるように荷役モータ10を制御する。これにより、走行モータ4、操舵モータ7および荷役モータ10を少ない電力消費量で効率的に動作させることができるとともに、走行モータ4の発電量を増大させることができる。
【0043】
一方、ステップS4およびステップS5において、制御部14は、滑り量が第2目標滑り量となるように走行モータ4を制御し、滑り量が第4目標滑り量となるように操舵モータ7を制御し、さらに滑り量が第6目標滑り量となるように荷役モータ10を制御する。これにより、走行モータ4の発電量が低下して過電圧状態の悪化が防がれるとともに、操舵モータ7および荷役モータ10の電力消費量が増大して過電圧状態が解消されやすくなる。
【0044】
以上、本発明に係る電動車の実施例について説明してきたが、本発明はこれに限定されない。
【0045】
例えば、電動車1Aの制御部14は、第2回生時であると判定したときに、走行モータ4の滑り量のみを変更してもよいし、走行モータ4と操舵モータ7の滑り量を変更してもよいし、走行モータ4と荷役モータ10の滑り量を変更してもよい。
【0046】
また、本発明に係る電動車は、
図4に示す電動車1Bのように、荷役系(荷役装置9、荷役モータ10および荷役インバータ11)および荷役レバー17を備えていなくてもよい。この場合、制御部14は、第2回生時であると判定したときに、走行モータ4の滑り量のみを変更してもよいし、走行モータ4と操舵モータ7の滑り量を変更してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1A 電動車(実施例)
1B 電動車(変形例)
2 バッテリ
3 走行輪
4 走行モータ
5 走行インバータ
6 操舵装置
7 操舵モータ
8 操舵インバータ
9 荷役装置
10 荷役モータ
11 荷役インバータ
12 バッテリ監視部
13 速度監視部
14 制御部
15 アクセルペダル
16 ステアリング
17 荷役レバー
【要約】
【課題】降坂時に速度を十分に抑制しつつ過充電を防ぐことができる電動車を提供する。
【解決手段】電動車1Aは、バッテリ2と、走行輪3を駆動する走行モータ4と、双方向の電力変換を行う走行インバータ5と、バッテリ電圧値を出力するバッテリ監視部12と、バッテリ電圧値に基づいて走行インバータ5を制御する制御部14とを備える。制御部14は、(1)バッテリ電圧値が予め設定された閾値よりも低い第1回生時においては、走行モータ4の滑り量が予め設定された第1目標滑り量となるように走行インバータ5を制御し、(2)バッテリ電圧値が閾値よりも高い第2回生時においては、滑り量が予め設定された第2目標滑り量となるように走行インバータ5を制御する。また、滑り量が第2目標滑り量とされた走行モータ4の効率は、滑り量が第1目標滑り量とされた走行モータ4の効率よりも低く、滑り量が第2目標滑り量とされた走行モータ4のトルクは、滑り量が第1目標滑り量とされた走行モータ4のトルクと実質的に同一である。
【選択図】
図1