(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483806
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ファイバーオプティクスを用いて行うパイプラインの完全性の監視
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20190304BHJP
G01K 11/32 20060101ALI20190304BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20190304BHJP
G01M 3/38 20060101ALI20190304BHJP
F17D 5/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
G01L1/24 A
G01K11/32 A
G01D5/353 B
G01M3/38 B
G01M3/38 G
F17D5/02
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-506255(P2017-506255)
(86)(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公表番号】特表2017-523427(P2017-523427A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】US2015025402
(87)【国際公開番号】WO2015160667
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年4月6日
(31)【優先権主張番号】14/255,343
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(72)【発明者】
【氏名】アル−ワライエ,ソリマン エー.
(72)【発明者】
【氏名】アル−サイクハン,サレハ エム.
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0176606(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0132183(US,A1)
【文献】
特開2005−91320(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19509129(DE,A1)
【文献】
米国特許第5026141(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00− 1/26
G01D 5/26− 5/38
G01K11/32
G01M 3/38
F17D 1/00− 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインを監視する方法であって:
流体を輸送するためのパイプライン近傍に配置された光ファイバを通って伝送される光信号の減衰を表す第1の組の値と、前記光ファイバを通って伝送される前記光信号の分散を表す第2の組の値と、を処理回路によって受信する工程と;
前記光ファイバを通る前記光信号の減衰プロフィルを前記第1の組の値に基づいて前記処理回路によって生成すると共に、前記光ファイバを通る前記光信号の分散プロフィルを前記第2の組の値に基づいて前記処理回路によって生成する工程と;
前記光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を、前記処理回路によって前記減衰プロフィル及び前記分散プロフィルを用いて生成する工程と;
前記光ファイバ周辺の前記環境を表す前記光ベースプロフィル特性を、正常運転状態下での前記光ファイバ周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と、前記処理回路によって比較する工程と;
前記光ベースプロフィル特性と前記基準光ベースプロフィル特性とを比較することの結果によって、前記パイプラインの作動を表す通知を前記処理回路によって提供する工程とを備え;
前記光信号の前記減衰プロフィルを生成する工程は、光信号減衰の三次元プロットを生成することを含み、前記三次元プロットは、前記三次元プロットの3つの軸上の、前記光信号の源からの距離、光信号減衰、及び測定時間を含み、
前記光信号の前記分散プロフィルを生成する工程は、光信号分散の三次元プロットを生成することを含み、前記三次元プロットは、前記三次元プロットの3つの軸上の、前記光信号の波長、分散、及び測定時間を含む、
方法。
【請求項2】
前記減衰プロフィルは前記第1の組の値を受信する時に、前記分散プロフィルは前記第2の組の値を受信する時に、前記光ファイバ周辺の環境によって部分的に影響を受ける、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光ベースプロフィル特性が前記基準光ベースプロフィル特性と実質的に一致することを判定する工程をさらに備え、前記通知は前記パイプラインの前記作動が正常であるとして特定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光ベースプロフィル特性が、前記基準光ベースプロフィル特性とは実質的に異なることを判定する工程をさらに備え、前記通知は前記パイプラインの前記作動における障害を特定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光ベースプロフィル特性と前記基準光ベースプロフィル特性との比較に基づいて、前記パイプライン上の障害の場所を判定する工程をさらに備える、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記減衰プロフィル及び前記分散プロフィルを用いて前記光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を生成することは、前記減衰プロフィルと前記分散プロフィルとを相関させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光ベースプロフィル特性は、生成時の前記光ファイバ周辺の温度及び応力のうちの少なくとも1つを表し、前記基準光ベースプロフィル特性は、正常なパイプライン運転中の前記光ファイバ周辺の温度及び応力のうちの少なくとも1つを表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光ファイバを通して前記光信号を伝送する光源を操作する工程と;
前記光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信する工程と;
部分的に、前記後方散乱光に基づいて、前記光信号の前記減衰を表す前記第1の組の値と、前記光信号の前記分散を表す前記第2の組の値と、を測定する工程とをさらに備える;
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記減衰プロフィル、前記分散プロフィル、及び前記光ベースプロフィル特性のうちの少なくとも1つを格納する工程をさらに備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記パイプラインの正常運転中に前記基準光ベースプロフィル特性を生成する工程をさらに備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記光ベースプロフィル特性における変化を用いてパイプラインに沿う洩れを測定し及び相関させる工程を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記光ファイバは、前記パイプラインに対する変化の結果としての物理的影響を前記光ファイバが受けるように、前記パイプラインの外面から離間して位置している、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記プロフィル特性変化と変化の期間とに基づいて、前記パイプラインから洩れ出た産品の容積を見積もる工程をさらに備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記光ファイバは、ネットワークの接続性を提供するように前記パイプラインに沿って設置された光ファイバケーブル内の素線である、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
パイプラインを監視するシステムであって:
流体を輸送するためのパイプラインの近傍に配置された光ファイバを通して光信号を発信する光源と;
前記光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信する受信機と;
前記光源及び前記受信機に接続された処理回路であって、請求項1に記載の方法を有する運転を実行する処理回路とを備える;
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年4月17日に出願された米国特許出願第14/255,343号に基づく優先権を主張し、当該米国特許出願のすべての記載内容を援用する。
【0002】
本開示は、流体、例えばオイル、ガス、水、その他の流体が流れて通過するパイプラインの監視に関する。
【背景技術】
【0003】
パイプライン(例えば埋設されたパイプライン又はその他のパイプライン)は、流体(例えばオイル、ガス、水、その他の流体)を地点間で輸送するために用いられることが多い。パイプラインの障害(例えばパイプラインの破損又はその他の理由による障害)は、パイプラインを通って流れる流体の損失だけでなく、パイプラインが置かれている環境への被害をもたらす可能性もある。したがって、完全性(例えばパイプラインの構造上の完全性)を監視することが重要である。
【発明の概要】
【0004】
この開示は、ファイバーオプティクスを用いて行うパイプラインの完全性の監視を説明する。
【0005】
ここに記載された主題のある態様は、パイプライン
(100)を監視する方法として実施できる。方法は、処理回路
(110)を使用して実施される。第1の組の値(組の値とは一群の値のこと)及び第2の組の値が受信される。第1の組の値は、流体を輸送するためのパイプライン近傍に配置された光ファイバ
(102)を通って伝送される光信号の減衰を表す。第2の組の値は、光ファイバを通って伝送される光信号の分散を表す。光ファイバを通る光信号の減衰プロフィル
(400)は、第1の組の値に基づいて生成される。光ファイバを通る光信号の分散プロフィル
(300)は、第2の組の値に基づいて生成される。減衰プロフィル及び分散プロフィルを用いて、光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性が生成される
(206)。光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性が、正常運転状態下での光ファイバ周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と比較される
(208)。パイプラインの作動を表す通知が、光ベースプロフィル特性と基準光ベースプロフィル特性とを比較することの結果によって提供される
(214)。
【0006】
この態様及び他の態様は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。減衰プロフィルは第1の組の値を受信する時に、分散プロフィルは第2の組の値を受信する時に、光ファイバ周辺の環境によって部分的に影響を受ける。光ベースプロフィル特性が基準光ベースプロフィル特性と実質的に一致することを判定することができる。例として、通知は、パイプラインの作動が正常であるとして特定することができる。光ベースプロフィル特性が、基準光ベースプロフィル特性とは実質的に異なることを判定することができる。例として、通知はパイプラインの作動における障害を特定することができる。パイプライン上の障害の場所を、光ベースプロフィル特性と基準光ベースプロフィル特性との比較に基づいて判定することができる。光信号の減衰プロフィルを生成することにより、光信号減衰の三次元プロット
(402)を生成することができる。三次元プロットは、三次元プロットの3つの軸上の、光信号の源からの距離、光信号減衰、及び測定時間を含むことができる。光信号の分散プロフィルを生成することにより、光信号分散の三次元プロットを生成することができる。三次元プロットは、三次元プロットの3つの軸上の、光信号の波長、分散、及び測定時間を含むことができる。減衰プロフィル及び分散プロフィルを用いて光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を生成することにより、減衰プロフィルと分散プロフィルとを相関させることができる。光ベースプロフィル特性は、生成時の光ファイバ周辺の温度及び応力のうちの少なくとも1つを表すことができる。基準光ベースプロフィル特性は、正常なパイプライン運転中の光ファイバ周辺の温度及び応力のうちの少なくとも1つを表すことができる。光ファイバを通して光信号を伝送する光源を操作することができる。光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信することができる。光信号の減衰を表す第1の組の値及び光信号の分散を表す第2の組の値を、部分的に、後方散乱光に基づくものとすることができる。減衰プロフィル、分散プロフィル、及び光ベースプロフィル特性のうちの少なくとも1つを格納することができる。パイプラインの正常運転中に基準光ベースプロフィル特性を生成することができる。
【0007】
ここに記載された主題のある態様は、パイプラインを監視するシステムとして実施できる。システムは、流体を輸送するためのパイプラインの近傍に配置された光ファイバを通して光信号を発信する光源を含む。システムは、光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信する受信機を含む。システムは、光源及び受信機に接続された処理回路を含み、動作を実行する処理回路はここに記載されている。
【0008】
ここに記載された主題のある態様は、パイプラインを監視するシステムとして実施できる。システムは、流体を輸送するためのパイプラインの近傍に配置された光ファイバを通して光信号を発信する光源を含む。システムは、光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信する受信機を含む。システムは、光源及び受信機に接続された処理回路を含む。処理回路は、光ファイバを通る光信号の減衰プロフィルと、光ファイバを通る光信号の分散プロフィルと、を部分的に後方散乱光に基づいて生成するように構成されている。処理回路は、光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を、正常運転状態下での光ファイバ周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と比較するように構成されている。光ベースプロフィル特性は、減衰プロフィル及び分散プロフィルに部分的に基づいて生成される。処理回路は、光ベースプロフィル特性と基準光ベースプロフィル特性とを比較することの結果によって、パイプラインの作動を表す通知を提供するように構成されている。
【0009】
この態様及び他の態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。通知を提供することは、光ファイバ周辺の環境条件の変化の通知を提供することを含むことができる。環境条件は、温度及び応力のうちの少なくとも一方を含むことができる。処理回路は、減衰プロフィル及び分散プロフィルを用いて、光ファイバ周辺の環境条件の変化の場所を判定するように構成することができる。
【0010】
この開示で説明される主題の一つ以上の実施の詳細を、添付する図面及び以下の説明に記載する。その主題の他の特徴、態様及び利点は、かかる説明及び図面並びに請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本特許又は本出願のファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を有する本特許公報又は本公開特許公報の写しは、申請して所定の料金を納付すれば管轄官庁から手に入れることができる。
【0012】
【
図1A】正常運転中のパイプラインの一例を監視している監視システムの一例を示す模式的正面図である。
【
図1B】正常運転中のパイプラインの一例を監視している監視システムの一例を示す模式的側面図である。
【0013】
【
図1C】不安定になっているパイプラインを監視している監視システムの模式的正面図である。
【
図1D】不安定になっているパイプラインを監視している監視システムの模式的側面図である。
【0014】
【
図2】パイプラインを監視する手順の一例を示すフロー図である。
【0015】
【
図3】監視システムによって判定された分散プロフィルを示す例示の特性画像である。
【0016】
【
図4A】光ファイバ中を伝送される光信号の例示の減衰プロフィルの図である。
【0017】
【
図4B】監視システムによって判定された減衰プロフィルを示す例示の特性画像である。
【0018】
種々の図面における同様の符号及び記号は同様の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、ファイバーオプティクスを用いて行うパイプライン(流体を輸送するための管)の完全性を監視するシステムについて述べる。従来のパイプライン完全性監視システム、例えば大口径スプライシング(LDS)システム(大口径継ぎシステム)は、数か所の測定点を利用することがしばしばである。かかるシステムは、距離の制限があり、独立したスタンドアロンシステムであるので、パイプラインの不安定を正確に突き止めることができない可能性がある。ここで説明するシステムは、かかる従来のパイプライン完全性監視システムの代替として実施することができる。実施によっては、ここで説明するシステムは、光信号分散と、パイプラインの近傍を通る光ファイバを通って伝送される光信号の減衰プロフィルとを測定し、解析し、相関させるように実施できる。このシステムは、光信号パラメータ、例えば、偏波モード分散(PMD)、微分群遅延(DGD)、減衰、色分散(CD)他の光信号パラメータ、又はそれらの組み合わせにおける変化を用いて、パイプラインに沿う応力又は洩れを測定し、相関させることができる。減衰及び分散(例えば、PMD、DGD、CD他の分散)は、環境要因、及び、光ファイバの何らかの曲げ又は応力に対し敏感であり得る。PMD/DGDを、波長又は群又は光線について測定することができる。この測定法は、異なるプロフィルを特定することにより、光ファイバに沿うリアルタイムX線として用いることができる。
【0020】
ここで説明するシステムに実装される光ファイバは、スタンドアロンシステムであってもよく、又は、例えばネットワークの接続性を提供するよう、通常はパイプラインに沿って設置された光ファイバケーブル内に含まれていてもよい。例えば、24本の光ファイバ素線を有する光ファイバケーブルを、異なる施設に、例えば、バルクプラントを有する製油所や、別の製油所につながる製油所や、他の施設に接続するために、パイプラインの近傍に設けることができる。パイプラインの完全性監視のベースとなる光信号を搬送するために、光ファイバケーブルの24本の光ファイバ素線のうちの1本以上を実装することができる。通信用器具、例えばスイッチ、マルチプレクサ他の通信用器具を、かかる光ファイバケーブルの一端に接続してもよい。光ファイバケーブルにより得られるネットワーク接続性を活用することにより、後方散乱光を表す信号を監視システム又は他の受信システムへ伝送することができる。
【0021】
実施によっては、監視システムを、光ファイバの一端へ光信号を伝送するように光源に接続することができる。光ファイバを通って伝送される光信号は、散乱/反射される。監視システムは、反射され及び/又は伝送された信号の、例えば減衰(すなわち、光信号がファイバ中を移動する際の衰弱)、偏波モード分散(つまり、一般的には分散)、又は、反射され及び/又は伝送された信号の他のパラメータを測定できる。例えば、監視システムは、減衰及び/又は分散プロフィルを展開するための光パルス試験器(OTDR)と、コンピュータシステムとを含むことができる。コンピュータシステムは、減衰プロフィルを偏波モード分散プロフィルに相関させて特性画像、例えばヒートマップ、を生成できる。監視システムは、パイプラインの正常運転中に基準特性画像を作成し、これを格納することができる。光ファイバは、置かれた環境の変化(例えば温度、応力、両者の組合せ、その他、に起因する)に敏感であるため、監視システムは、かかる変化が光信号に及ぼす影響を検出し、作動特性画像を生成できる。監視システムは、作動特性画像を基準特性画像と比較して、パイプラインにおける破損の有無を判定するとともに、破損の場所を判定することができる。この方法において、監視システムは、光ファイバ作動係数のプロフィル変化を利用して、パイプラインにおける不安定、破損、洩れ、それらの組み合わせを識別しその位置を正確に特定できる。加えて、監視システムは、プロフィル特性変化及び変化の期間に基づいて、洩れ出た産品(例えば、オイル、ガス、水、その組み合わせ、その他の産品)の容積を見積もることができる。
【0022】
ここで説明する監視システムを実施することによって、パイプラインの完全性は、例えば、光信号分散と、ファイバーオプティクスにより搬送される光信号の減衰プロフィルとを相関させることによって、通信光ファイバを用いてリアルタイムでオンライン監視することができる。ここで説明する主題を実施することにより、パイプラインの信頼性を高め及び/又は向上させることができ、及び/又は運転実績を最適化できる。さらに、運転上の安全性を高め、環境を保護することができる。監視システムは、パイプラインの障害を事前に監視して回避し、パイプラインの洩れを早期に検出し、パイプラインの漏出場所を正確に特定し、それにより適時に修復作業に着手できるように支援し、運転時の安全性と環境保護とを強化することによって運転及び保守コストを低減する、又はそれらの効果を組み合わせるように実施することができる。監視システムは、光ファイバ信号分析器(時間及び周波数領域)に接続されたわずか1本の光ファイバを用いて実施することができる。光ファイバは、長さ100km以上にもなるパイプラインの全長に設けることができる。スタンドアロンの光ファイバを解析及びプロファイリングプロセス専用とすることができる一方、もう一つの光ファイバを用いて時間及び周波数のプロフィル、傾向及びアーカイブのデータを相関させ、パイプライン異常に対する早期の警告を提供することができる。光信号を搬送する光ファイバをパイプラインに固定する必要もなく、パイプラインの傍らを通るような何らかの特別な配置も必要としない。
【0023】
図1A及び
図1Bは、正常運転中のパイプラインの一例を監視している監視システムの一例を示す図であり、
図1Aは模式的正面図、
図1Bは模式的側面図である。実施によっては、流体(例えば、オイル、ガス、水、その他の流体)を輸送するためのパイプライン100は、2つの施設間の、例えば地下又は地上に位置する。光ファイバケーブル102は、パイプライン100の外側近傍に位置する。実施によっては、光ファイバケーブル102は、パイプライン100の略全長に及ぶ。光ファイバケーブル102は、パイプライン100に対する変化の結果としての物理的影響を光ファイバケーブル102が受けるように、パイプライン100の外面から離間して位置することができる。例えば、パイプライン100を取り囲む影響範囲を決めてもよい。パイプライン100に対する変化、例えば、温度変化、破損、応力、不安定性、その他の変化を、決められた影響範囲内で感知することができる。影響範囲の直径は、パイプライン100のいずれか所与の断面においてパイプライン100の直径より大きくすることができる。光ファイバケーブル102は、影響範囲内でパイプライン100と並行に通すことができる。
【0024】
光ファイバケーブル102は、一端で監視システム104に接続されてパイプライン100の完全性を監視することができる。監視システム104は、光ファイバケーブル102に含まれる光ファイバ112へ光信号を伝送するよう、光源105を含むか光源105に接続することができる。他端において、光ファイバケーブル102は、反射体108に接続されて監視システム104へ光信号を反射して戻すことができる。監視システム104は、光ファイバ112を通して光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受けるために受信機106を含むことができる。監視システム104は、光源105及び受信機106に接続された処理回路110を含むことができる。処理回路110は、パイプライン100の完全性を評価するために後方散乱光を解析することができる。例えば、監視システム104は、処理回路110を実装する光信号分析器を含むことができる。監視システム104は、代替として、又は、加えて、光信号を送受信するため、通信用器具、例えば、スイッチ、マルチプレクサ、エクステンダ(延長器)、又は他の通信用器具を含むことができる。
【0025】
実施によっては、処理回路110は、後方散乱光に基づいて第1の組の値及び第2の組の値を判定できる。第1の組の値は、光ファイバ112を通って伝送される光信号の減衰を表す。第2の組の値は、光ファイバ112を通して伝送される光信号の分散を表す。処理回路110は、第1の組の値に基づいて、光ファイバ112を通る光信号の減衰プロフィルを生成できる。処理回路110は、また、第2の組の値に基づいて、光ファイバ112を通る光信号の分散プロフィルも生成できる。減衰プロフィル及び分散プロフィルを用いて、処理回路110は、光ファイバ112周辺の環境を表す光ベースのプロフィル特性を生成できる。パイプライン100が正常状態下で稼動しているため、光ベースのプロフィル特性は、基準プロフィル特性を表すことができる。すなわち、基準プロフィル特性は、正常運転下でパイプライン100の予想される運転を示すことができる。言い換えれば、基準プロフィル特性からの光ベースのプロフィル特性の大幅なズレは、パイプライン100における不安定又は破損又は洩れを示すことができる。
【0026】
実施によっては、処理回路110は、時間期間、例えば一年間、の基準プロフィル特性を展開できる。その年の間に、パイプライン100が置かれた環境は変化する可能性がある。例えば、パイプライン100は冬場に比べて夏場に高温にさらされる可能性がある。パイプライン100は、その年の特定の時期に雨や雪にさらされる可能性がある。パイプライン100が置かれた環境の変化は、その期間中の各時刻において、減衰プロフィル及び分散プロフィルの対応する変動の原因となる可能性がある。処理回路110は、後方散乱光に基づいて、多数の第1の組の値及び第2の組の値を判定でき、各組は期間中の各時刻に得られる。多数の第1の組の値及び第2の組の値に基づき、処理回路110は、その期間の基準プロフィル特性を展開できる。
【0027】
監視システム104は、ある期間の基準プロフィル特性を格納できるコンピュータ読取可能記憶媒体107を含むことができる。コンピュータ読取可能記憶媒体107は、代替として、又は、加えて、減衰プロフィル及び分散プロフィルを格納できる。上で説明したように、光信号の減衰プロフィル及び分散プロフィルは、第1の組の値及び第2の組の値をそれぞれ受信する時に、光ファイバ112周辺の環境の影響を部分的に受ける。例えば、コンピュータ読取可能記憶媒体107は、多数の時刻を格納し、各時刻に判定された基準プロフィル特性を格納できる。処理回路110は、上で説明したような後方散乱光信号に基づいて、例えばリアルタイムでプロフィル特性を生成できる。処理回路110は、ある時刻に生成されたリアルタイムのプロフィル特性を、対応する時刻に前もって生成した基準プロフィル特性と比較できる。リアルタイムのプロフィル特性と、対応する時刻に生成された基準プロフィル特性との間のズレが大きくなければ、パイプライン100は正常に稼動していると結論づけることができる。
【0028】
実施によっては、処理回路110は、時刻に基づいて相関させる代わりに、又は、それに加えて、基準プロフィル特性をパイプライン100の運転及び/又は環境パラメータと相関させることができる。例えば、処理回路110は、時間及び周波数プロフィルを相関させ、それに応じて、相関させた時間及び周波数プロフィルに基づく、ある時刻におけるプロフィル特性を判定できる。処理回路110は、信号を受信するセンサ(不図示)の1つ以上に接続することができ、受信する信号は、パイプライン100の運転パラメータ(例えば、パイプライン圧力、パイプライン温度、その他の運転パラメータ)、流体パラメータ(例えば、流体圧、流体温度、流体流量、他の流体パラメータ)、環境パラメータ(例えば、表面温度及び/又は圧力、地下温度及び/又は圧力、他の環境パラメータ)、又はそれらの組み合わせを示す。処理回路110は、ある時刻の運転パラメータ、流体パラメータ、及び環境パラメータの対応する組み合わせに対応する基準プロフィル特性を判定できる。リアルタイムプロフィル特性を展開する場合、処理回路110は、ある時刻の運転パラメータ、流体パラメータ、及び環境パラメータの対応する組み合わせを特定できる。処理回路110が、その時刻のパラメータの組み合わせに対して展開されたリアルタイムプロフィル特性の間のズレが、対応する時刻のパラメータの同じ、又は、実質的に類似する組み合わせに対して展開された基準プロフィル特性に関する予め設定された閾値よりも下であると判定した場合、パイプライン100は正常に稼動していると結論づけることができる。監視システムのオペレータは、異なるマッピング(要素間の対応付け)及び比較の原因を明らかにするよう、基準プロフィル特性を変更できる。例えば、パイプラインの周辺で発掘作業があった場合、オペレータは、かかる発掘作業中に現れる時間周波数プロフィルの原因を明らかにするよう、基準プロフィル特性を修正できる。加えて、処理回路110は、プロフィル特性変化と変化の期間とに基づいて、洩れ出た産品(例えば、オイル、ガス、水、それらの組み合わせ、他の産品)の容積を見積もることができる。
【0029】
図1C及び
図1Dは、不安定になっているパイプライン100を監視している監視システム104の図であり、
図1Cは模式的正面図、
図1Dは模式的側面図である。
図1C及び
図1Dに示すように、パイプライン100は不安定114(例えば、破損、洩れ、他の不安定)になっている。不安定114の影響は、光ファイバ112を含む光ファイバケーブル102が位置するパイプライン100周辺の影響範囲まで延びている。例えば、パイプライン100から洩れた流体は、光ファイバに接触し得る。代替として、又は、加えて、不安定114の場所の近傍の地面温度は、変化(例えば、上昇又は低下)する可能性がある。光ファイバ112が不安定114の場所の近傍に位置するので、光ファイバ112の温度も変化する可能性がある。
【0030】
光ファイバ112によって搬送される光信号は、結果として減衰プロフィル及び分散プロフィルの変化を生じる光ファイバ112上の不安定114の効果により変調し得る。例えば、温度、応力、振動の変化(又は他の変化)は、結果としてPMD値全体を変化させるDGDプロフィルに影響を与える可能性がある一方で、減衰プロフィルは応力により影響を受ける。この状況において、処理回路110によって展開される光ベースのプロフィル特性は、光ファイバ112上の不安定114の影響の原因を明らかにするだろう。例えば、DGD/PMD及び減衰プロフィル間の相関性は、不安定114の性質及びプロフィルを提供できる。処理回路110は、光ファイバ112周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を、正常運転状態下での光ファイバ112周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と比較できる。光ベースプロフィル特性を基準光ベースプロフィル特性と比較することに応じて、処理回路110は、パイプライン100の運転を表す通知を提供できる。このようにして、監視システム104はパイプライン100を監視できる。例えば、処理回路110は、光ベースプロフィル特性が基準光ベースプロフィル特性とは実質的に異なることを判定できる。それに応じて、処理回路110は、パイプライン100の運転における障害を示す通知を送信できる。
【0031】
実施によっては、処理回路110は、送信される光信号の強度、後方散乱及び伝達光信号の強度を解析でき、強度プロフィル/強度値を相関させて不安定性114、例えば、パイプライン100の一区間における応力又はパイプライン100の別の区間における不連続性又はそれらの組み合わせを判定できる。実施によっては、処理回路110は、光ベースプロフィル特性と基準光ベースプロフィル特性との比較に基づいて、パイプライン100上の不安定114の場所を判定できる。例えば、処理回路110は、光の速度及び光信号を受信するまでにかかった時間を用いて、偏光感受型光パルス試験器(p−OTDR)により光ファイバ112に沿った応力点から不安定114の場所を測定できる。
【0032】
図2は、パイプライン100を監視する手順200の一例を示すフロー図である。実施によっては、手順200は、監視システム104の構成要素、例えば処理回路110、によって実施できる。代替として、又は、加えて、手順200は、監視システム104に含まれるデータ処理装置(不図示)によって実施できる。データ処理装置(例えば、1つ以上のプロセッサ)は、例えば、コンピュータ読取可能記憶媒体107上に格納されたコンピュータ命令を実行して手順200の操作(オペレーション)を実行できる。
【0033】
202では、光ファイバを通して光信号が伝送される。例えば、処理回路110は、制御信号を光源105に提供することで、光ファイバ112を通して光信号を伝送する。光信号は、光ファイバ112を通り反射体108により反射することができる。監視システム104は、後方散乱光信号を受信することができる。
【0034】
204において、後方散乱光信号を、減衰及び分散のために測定し、解析することができる。そのために、実施によっては、処理回路110は、光ファイバ112を通って伝送された光信号の減衰を表す第1の組の値及び分散を表す第2の組の値を受信できる。処理回路110は、第1の組の値に基づいて減衰プロフィルを生成することができ、第2の組の値に基づいて分散プロフィルを生成することができる。
図3は、監視システム104によって判定された分散プロフィルを示す例示の特性画像300である。実施によっては、分散プロフィルは、三次元プロット(座標における位置決め)の3つの軸上の、光信号の波長、分散、及び測定時間を含む、光信号分散の三次元プロットである。
図4Aは、光ファイバ中を伝送される光信号の例示の減衰プロフィル400である。
図4Bは、監視システムによって判定された減衰プロフィルを示す例示の特性画像402である。実施によっては、減衰プロフィルは、三次元プロットの3つの軸上の、光源105からの距離、光信号減衰、及び測定時間を含む、光信号減衰の三次元プロットである。
【0035】
分散プロフィル及び減衰プロフィルの微分変化を表す色が、部分的に、光ファイバ112を通って伝送される光の波長、並びに、後方散乱及び送信光信号に含まれる光の波長から得られる。光ファイバ112上の不安定114の影響は、後方散乱光の波長を変化させることである。したがって、不安定114がある中で生成される分散プロフィル及び減衰プロフィル内の色は、パイプライン100の正常運転中に生成される分散プロフィル及び減衰プロフィル内の色とは異なる。処理回路110は、部分的に、不安定114がある中で又は無い中で生成される分散プロフィル及び減衰プロフィルの色の類似又は相違(及び相違レベル)に基づいて、不安定114の有無を判定できる。
【0036】
206において、減衰及び分散は、光ベースプロフィル特性を生成するよう相関させられる。実施によっては、処理回路110は、例えば、減衰プロフィル及び分散プロフィルを相関させることによって、両プロフィルを用いて、光ファイバ周辺の環境を説明する光ベースプロフィル特性を生成できる。例えば、影響範囲内に高温のガス又は流体の洩れがある場合、分散プロフィル(すなわち分散変化率)は、減衰プロフィル(例えば信号損失率)よりも高い。応力下のパイプラインにとって、減衰プロフィルは、分散プロフィルよりも影響が大きい。かかる相関は、システムの不安定源の性質及び分類を特定することを可能にする。
【0037】
208では、光ファイバ112周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を、正常運転状態下での光ファイバ112周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と比較することができる。例えば、処理回路110は、上で説明したように基準光ベースプロフィル特性を生成することができ、基準光ベースプロフィル特性を、206で生成された光ベースプロフィル特性と比較することができる。例えば、
図4Bにおいて、時間t=4時間、距離D=6kmの時、応力に因り信号の高い減衰損失が生じた。同様に、ガス又は流体が洩れた場合、分散ヒートマップは、処理回路110が捕捉して、比較し、解析できるより濃い赤色を示すことになる。
【0038】
処理回路110は、基準光ベースプロフィル特性が、206で生成された光ベースプロフィル特性と同じであるか異なっているかを判定するよう、チェックを実行できる。処理回路110が、基準光ベースプロフィル特性と206で生成された光ベースプロフィル特性との間の差が統計的に有意ではないと判定すれば、処理回路110は、基準光ベースプロフィル特性が、206で生成された光ベースプロフィル特性と同じである、と判定できる。それに応じて、210において、206で生成された光ベースプロフィル特性及び基準光ベースプロフィル特性との比較は、例えば、処理回路110によって文書化され、アーカイブに記録することができる。測定された光信号及び関連する属性は、ヒートマップとして表現できる。測定値(例えば、減衰、分散、PMD、DGD、CD、及び/又は他の測定値)のための各行列のヒストグラムは、ヒートマップの経時変化のための視覚的表現を提供できる。計算及び統計的解析ツール及びアルゴリズム(例えば、MathWorks、MatLab、SSPS、又は他のツール)は、経時変化率を考慮して異なるヒートマップ間で比較するために用いることができる。比較アルゴリズムは、基準ヒートマップ/特性及び様々なパイプライン条件に対する異なる特性を構築するようにカスタマイズすることができる。
【0039】
処理回路110が、基準光ベースプロフィル特性と206で生成された光ベースプロフィル特性との間の差が統計的に有意であると判定すれば、処理回路110は、基準光ベースプロフィル特性が206で生成された光ベースプロフィル特性とは異なる、と判定できる。それに応じて、212において、光ファイバ112周辺の温度及び応力を操作して導き出すことができる。例えば、上で説明したように、処理回路110は、光の速度及び光信号を受信するまでにかかった時間を用いて、偏光感受型光パルス試験器(p−OTDR)により、光ファイバ112に沿った応力点から不安定114の場所を測定できる。処理回路110は、代替として、又は、加えて、不安定114がある場所での温度又は応力(例えば、圧力、力、又は他の応力パラメータ)を判定できる。
【0040】
214では、警告を提供でき、この不安定問題が増大する可能性がある。例えば、処理回路110は、不安定性114を示す通知をパイプライン100のオペレータ(操作者)に提供できる。216において、この問題を文書化して、アーカイブに記録することができる。例えば、処理回路110は、不安定114に関連するパラメータ(例えば、場所、温度、応力、発生時間、又は不安定114に関連する他の詳細)を格納できる。
【0041】
218では、不安定が解消されたかどうかを判定するよう、チェックを実行できる。実施によっては、処理回路110は、不安定114が正されたか否かを示す入力を、パイプライン100のオペレータから受信したかどうかをチェックすることができる。代替として、又は、加えて、処理回路110は、(214において)警告を発した後、閾時間にて光ベースプロフィル特性を生成することができ、生成したこの光ベースプロフィル特性を基準光ベースプロフィル特性と比較して不安定性が解消されたか否かを判定することもできる。実施によっては、処理回路110は、不安定114がある場所におけるパラメータが、正常運転中のパラメータの通常範囲内で戻されたか否かを判定できる。処理回路110が不安定性は解消されたと判定すると、処理回路110は、206にて、減衰及び分散を相関させることを再開して光ベースプロフィルを生成することができる。処理回路110が不安定性は解消されていないと判定すると、処理回路110は、212にて、光ファイバ周辺の温度及び応力を操作して導き出し、不安定が解消されるまで、引き続き214及び216での操作を繰り返す。
【0042】
処理回路110を含む監視システム104は、連続して手順200を実行するように実施できる。そうすることにより、監視システム104は、パイプライン100の運転状況を示す光ベースプロフィル特性をリアルタイムで生成できる。「リアルタイムでの生成」とは、光ファイバ112がパイプライン100のパラメータ及び周辺の場所を感知する時間と、感知されたパラメータに基づいて処理回路110が光ベースプロフィル特性を生成する時間とが、処理回路110が許容する時間と同じぐらい小さいことを意味する。実施によっては、監視システム104は、以前に生成された基準光ベースプロフィル特性を、正常運転下で生成されたその時点での生成された光ベースプロフィル特性と置き換えることができる。
【0043】
本明細書で説明する主題及び操作の実現は、デジタル電子回路で、又は本明細書に開示する構造及びそれらの構造的な均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアで、又はそれらのうちの1つ以上の組み合わせで実施することができる。本明細書で説明する主題の実現は、データ処理装置による実行のために、又は、その操作を制御するために、コンピュータ記憶媒体上でエンコード(符号化)された、1つ以上のコンピュータプログラムとして、すなわちコンピュータプログラム命令の1つ以上のモジュールとして実施することができる。代替として、又は、加えて、プログラム命令を、人工的に生成される伝搬信号上でエンコード(符号化)することができる。人工的に生成される伝搬信号は、例えば、機械生成される電気的、光学的又は電磁的な信号であって、データ処理装置による実行のために、適切な受信機装置へ伝送する情報をエンコード(符号化)するように生成される。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読取可能記憶装置、コンピュータ読取可能記憶基板、ランダム又はシリアルアクセスメモリーアレイ(配列)もしくはデバイス(装置)、又はそれらのうちの1つ以上の組み合わせであってもよく、それらに含まれてもよい。さらに、コンピュータ記憶媒体は、伝搬信号ではなく、人工的に生成された伝搬信号でエンコード(符号化)されたコンピュータプログラム命令のソース(起源)又は送り先であってもよい。コンピュータ記憶媒体は、別々な1つ以上の物理的構成要素又は媒体(例えば、多枚(マルチ)CD、ディスク又は他の記憶装置)であってもよく、それらに含まれてもよい。
【0044】
本明細書は多くの具体的な実施詳細を含むが、それらはあらゆる発明又は請求され得る事項の範囲を制限するものではなく、むしろ特定の発明の特定の実施における特有な特徴の記載であると理解すべきである。別々の実施の文脈において本明細書に記載される特定の特徴を単一の実施における組み合わせにおいて実施することもできる。それとは逆に、単一の実施の文脈において記載された様々な特徴は、複数の実施を別々で、又は任意で適切なサブコンビネーション(下位の結合)で、実施することもできる。さらに、これらの特徴は、特定の組み合わせで機能してそのように最初は請求するように上では説明しているかもしれないが、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴を、場合によっては、その組み合わせから削除してもよく、請求された組み合わせをサブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に導いてもよい。
【0045】
同様に、操作(オペレーション)は特定の順序で図面に示されているが、これは、かかる操作が図示の特定の順序又は一連の順序で実行されること、又は、図示のすべての操作を、所望の結果を達成するよう実行する必要があると理解すべきではない。ある特定の状況において、マルチタスク及び並列処理が有利な場合がある。さらに、上で説明した実施における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施において、かかる分離が必要であると理解すべきではなく、説明したプログラム構成要素及びシステムは、一般に、単一のソフトウェアプロダクトに共に統合されてもよく、多数のソフトウェアプロダクトにパッケージ化されてもよいと理解すべきである。
1. 第1の態様の方法は;
パイプラインを監視する方法であって:
流体を輸送するためのパイプライン近傍に配置された光ファイバを通って伝送される光信号の減衰を表す第1の組の値と、前記光ファイバを通って伝送される前記光信号の分散を表す第2の組の値と、を処理回路によって受信する工程と;
前記光ファイバを通る前記光信号の減衰プロフィルを前記第1の組の値に基づいて前記処理回路によって生成すると共に、前記光ファイバを通る前記光信号の分散プロフィルを前記第2の組の値に基づいて前記処理回路によって生成する工程と;
前記光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を、前記処理回路によって前記減衰プロフィル及び前記分散プロフィルを用いて生成する工程と;
前記光ファイバ周辺の前記環境を表す前記光ベースプロフィル特性を、正常運転状態下での前記光ファイバ周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と、前記処理回路によって比較する工程と;
前記光ベースプロフィル特性と前記基準光ベースプロフィル特性とを比較することの結果によって、前記パイプラインの作動を表す通知を前記処理回路によって提供する工程とを備える。
2. 第2の態様の方法は、上記第1の態様において、前記減衰プロフィルは前記第1の組の値を受信する時に、前記分散プロフィルは前記第2の組の値を受信する時に、前記光ファイバ周辺の環境によって部分的に影響を受ける。
3. 第3の態様の方法は、上記第1の態様において、前記光ベースプロフィル特性が前記基準光ベースプロフィル特性と実質的に一致することを判定する工程をさらに備え、前記通知は前記パイプラインの前記作動が正常であるとして特定する。
4. 第4の態様の方法は、上記第1の態様において、前記光ベースプロフィル特性が、前記基準光ベースプロフィル特性とは実質的に異なることを判定する工程をさらに備え、前記通知は前記パイプラインの前記作動における障害を特定する。
5. 第5の態様の方法は、上記第4の態様において、前記光ベースプロフィル特性と前記基準光ベースプロフィル特性との比較に基づいて、前記パイプライン上の障害の場所を判定する工程をさらに備える。
6. 第6の態様の方法は、上記第1の態様において、前記光信号の前記減衰プロフィルを生成する工程は、光信号減衰の三次元プロットを生成することを含み、前記三次元プロットは、前記三次元プロットの3つの軸上の、前記光信号の源からの距離、光信号減衰、及び測定時間を含む。
7. 第7の態様の方法は、上記第6の態様において、前記光信号の前記分散プロフィルを生成する工程は、光信号分散の三次元プロットを生成することを含み、前記三次元プロットは、前記三次元プロットの3つの軸上の、前記光信号の波長、分散、及び測定時間を含む。
8. 第8の態様の方法は、上記第1の態様において、前記減衰プロフィル及び前記分散プロフィルを用いて前記光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を生成することは、前記減衰プロフィルと前記分散プロフィルとを相関させることを含む。
9. 第9の態様の方法は、上記第1の態様において、前記光ベースプロフィル特性は、生成時の前記光ファイバ周辺の温度及び応力のうちの少なくとも1つを表し、前記基準光ベースプロフィル特性は、正常なパイプライン運転中の前記光ファイバ周辺の温度及び応力のうちの少なくとも1つを表す。
10. 第10の態様の方法は、上記第1の態様において、
前記光ファイバを通して前記光信号を伝送する光源を操作する工程と;
前記光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信する工程と;
部分的に、前記後方散乱光に基づいて、前記光信号の前記減衰を表す前記第1の組の値と、前記光信号の前記分散を表す前記第2の組の値と、を測定する工程とをさらに備える。
11. 第11の態様の方法は、上記第1の態様において、前記減衰プロフィル、前記分散プロフィル、及び前記光ベースプロフィル特性のうちの少なくとも1つを格納する工程をさらに備える。
12. 第12の態様の方法は、上記第1の態様において、前記パイプラインの正常運転中に前記基準光ベースプロフィル特性を生成する工程をさらに備える。
13. 第13の態様のシステムは;
パイプラインを監視するシステムであって:
流体を輸送するためのパイプラインの近傍に配置された光ファイバを通して光信号を発信する光源と;
前記光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信する受信機と;
前記光源及び前記受信機に接続された処理回路とを備え:
動作を実行する前記処理回路は、
前記光ファイバを通って伝送される光信号の減衰を表す第1の組の値と、前記光ファイバを通って伝送される前記光信号の分散を表す第2の組の値と、を判定し;
前記光ファイバを通る前記光信号の減衰プロフィルを前記第1の組の値に基づいて生成すると共に、前記光ファイバを通る前記光信号の分散プロフィルを前記第2の組の値に基づいて生成し;
前記光ファイバ周辺の環境を表す光ベースプロフィル特性を前記減衰プロフィル及び前記分散プロフィルを用いて生成し;
前記光ファイバ周辺の前記環境を表す前記光ベースプロフィル特性を、正常運転状態下での前記光ファイバ周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と比較し;
前記光ベースプロフィル特性と前記基準光ベースプロフィル特性とを比較することの結果によって、前記パイプラインの作動を表す通知を提供する。
14. 第14の態様のシステムは、上記第13の態様において、前記減衰プロフィル、前記分散プロフィル、及び前記光ベースプロフィル特性のうちの少なくとも1つを格納するコンピュータ読取可能記憶媒体をさらに備える。
15. 第15の態様のシステムは、上記第14の態様において、前記コンピュータ読取可能記憶媒体は、前記基準光ベースプロフィル特性を格納する。
16. 第16の態様のシステムは、上記第13の態様において、前記減衰プロフィルは前記第1の組の値を受信する時に、前記分散プロフィルは前記第2の組の値を受信する時に、前記光ファイバ周辺の環境によって部分的に影響を受ける。
17. 第17の態様のシステムは、上記第13の態様において、前記光ベースプロフィル特性が、前記基準光ベースプロフィル特性とは実質的に異なることを判定し、前記通知は前記パイプラインの前記作動における障害を特定し、前記光ベースプロフィル特性と前記基準光ベースプロフィル特性との比較に基づいて、前記パイプライン上の障害の場所を判定する。
18. 第18の態様のシステムは;
パイプラインを監視するシステムであって:
流体を輸送するためのパイプラインの近傍に配置された光ファイバを通して光信号を発信する光源と;
前記光信号を伝送することに応じて後方散乱光を受信する受信機と;
前記光源及び前記受信機に接続された処理回路とを備え:
動作を実行する前記処理回路は、
前記光ファイバを通る前記光信号の減衰プロフィルと、前記光ファイバを通る前記光信号の分散プロフィルと、を部分的に前記後方散乱光に基づいて生成し;
前記光ファイバ周辺の前記環境を表す光ベースプロフィル特性であって前記減衰プロフィル及び前記分散プロフィルに部分的に基づいて生成された前記光ベースプロフィル特性を、正常運転状態下での前記光ファイバ周辺の環境を表す基準光ベースプロフィル特性と比較し;
前記光ベースプロフィル特性と前記基準光ベースプロフィル特性とを比較することの結果によって、前記パイプラインの作動を表す通知を提供する。
19. 第19の態様のシステムは、上記第18の態様において、前記通知を提供することは、前記光ファイバ周辺の環境条件であって温度及び圧力のうちの少なくとも一方を含む環境条件の変化の通知を提供することを含む。
20. 第20の態様のシステムは、上記第19の態様において、前記作動は、さらに、前記減衰プロフィル及び前記分散プロフィルを用いて、前記光ファイバ周辺の前記環境条件の前記変化の場所を判定する。
【符号の説明】
【0046】
100 パイプライン
102 光ファイバケーブル
104 監視システム
105 光源
106 受信機
107 コンピュータ読取可能記憶媒体
108 反射体
110 処理回路
112 光ファイバ
114 不安定