(54)【発明の名称】2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールブロック化ポリイソシアネートに基づく架橋剤を含む、陰極電着材料用の水性バインダー分散液
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陰極電着材料用の水性バインダー分散液であって、バインダーとして、少なくとも1種の、アミン変性の、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂を含み、架橋剤として、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールで少なくとも部分的にブロック化された、少なくとも1種の完全にブロック化されたポリイソシアネートを含むことを特徴とする水性バインダー分散液。
前記完全にブロック化されたポリイソシアネート中のブロック化されたイソシアネート基の50〜100モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロックされている、請求項1に記載の水性バインダー分散液。
前記完全にブロック化されたポリイソシアネート中のブロック化されたイソシアネート基の90〜100モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロックされている、請求項2に記載の水性バインダー分散液。
前記完全にブロック化されたポリイソシアネート中のブロック化されたイソシアネート基の100モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロックされている、請求項3に記載の水性バインダー分散液。
架橋剤として、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートに基づくポリイソシアネートを使用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性バインダー分散液。
ポリイソシアネートとして、2.4〜4のNCO官能価を有するオリゴマー4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを使用する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性バインダー分散液。
アミン変性の、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂をバインダーとして含む陰極電着材料用の水性バインダー分散液に、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールで少なくとも部分的にブロック化された、完全にブロック化されたポリイソシアネートを使用する方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
水性バインダー分散液とは、溶媒として主に水を含み、好ましくは、有機溶媒を実質的に含まない分散液を意味する。水性分散液は、全組成物に対して50質量%を超える水を含有することが好ましい。有機溶媒の割合が、全組成物を基準にして5質量%未満、好ましくは2質量%未満であることが格別好適である。
【0009】
陰極堆積可能な(cathodically depositable)電着材料用の水性バインダー分散液中に存在するバインダーは、少なくとも1種の変性エポキシ樹脂である。原則的には、全ての既知の変性エポキシ樹脂が適している。エポキシ樹脂は、それ自体公知の重縮合樹脂であり、ポリエポキシド化合物とアルコールとからなる主鎖を有する樹脂である。
【0010】
適切なポリエポキシド化合物としては、ポリフェノール及びエピハロヒドリンから製造するポリフェノールジグリシジルエーテルである。使用可能なポリフェノールには、例えば、好ましいビスフェノールA及びビスフェノールFが含まれる。同様に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、及びフェノールノボラック樹脂が適切なものとして挙げられる。また同様に、好適なエポキシド化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、グリセロール及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのような多価アルコールのジグリシジルエーテルがある。また、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び二量化リノレン酸などのようなポリカルボン酸のジグリシジルエステルの使用も可能である。典型的な例にはアジピン酸グリシジル、及びフタル酸グリシジルがある。更に、ヒダントインエポキシド、エポキシ化ポリブタジエン、及びオレフィン性不飽和脂環式化合物のエポキシ化により得られるジエポキシド化合物が好適である。ヒドロキシ−官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノールA及び/又はビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合によって調製されるエポキシ樹脂であることが好ましい。これらの化合物は、鎖に沿ってヒドロキシル基を、また、末端にエポキシド基を含むことが好ましい。
【0011】
ヒドロキシ−官能性エポキシ樹脂は、ヒドロキシル、カルボキシル、フェノール基若しくはチオール基を含有する芳香族又は脂肪族化合物、又はこのような化合物の混合物であって、エポキシ樹脂製造の間に支配的な反応条件の下でエポキシド基に対して単官能的に反応するものを使用して製造することが好ましい。また、例えば、ドデシルフェノール、フェノール、又はブトキシプロパノールを使用してヒドロキシ官能性エポキシ樹脂を製造することが好ましい。したがって、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂は、好ましくは、ドデシルフェノール、フェノール及び/又はブトキシプロパノールをコポリマーの形態で含むものである。
【0012】
アミン−変性の、ヒドロキシ−官能性エポキシ樹脂は、未反応エポキシド基とアミンとの反応によってヒドロキシ官能性エポキシ樹脂から得られる。アミンは、好ましくは水に可溶な化合物であるべきである。このようなアミンの具体例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミンなどのモノ及びジアルキルアミンがある。また、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンも同様に適している。さらに、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどのジアルキルアミノアルキルアミンも好ましい。比較的高分子量のモノアミン類を使用することも可能であるが、大部分の場合、低分子量アミンが使用される。また、第1級及び第2級アミノ基を有するポリアミンは、エポキシド基をもつケチミンの形態で、例えばジエチレントリアミンのビスメチルイソブチルジケチミンの形態で反応させることができる。ケチミンは既知の方法でポリアミンから製造される。アミンは、また、他の基も含むことができるが、その基はアミンとエポキシ基との反応を妨害するものであってはならず、また、反応混合物をゲル化させるものであってはならない。また、変性エポキシ樹脂は、第1級、第2級及び第3級アミン基を有することができる。さらに、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂は、別異のアミンで変性したものであってもよい。
【0013】
ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂は、モノ及びジアルキルアミン、アルカノールアミン、ジアルキルアミノアルキルアミン、及び第1級及び第2級アミノ基を有するポリアミンのケチミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミンと反応させることが好ましい。上記の少なくとも1種のアミンとしては、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、及びビスメチルイソブチルジケチミンからなる群から選択することが極めて好ましい。より好ましいのは、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂をジエタノールアミンと反応させることである。
【0014】
アミン変性ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂は、触媒を添加することによって、好ましくは第3級アミン、第4級アンモニウム塩、ホスフィン又はホスフィン誘導体及び/又はホスフィン塩を添加することによって製造することができる。使用するホスフィンとしては、破壊的な基を含まない任意のホスフィンであることができる。このようなホスフィンの例は、脂肪族、芳香族又は脂環式ホスフィンであり、具体例として、以下のホスフィン類:トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン及びトリブチルホスフィンなどの低級トリアルキルホスフィン;フェニルジメチルホスフィン、フェニルジエチルホスフィン、フェニルジプロピルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィンなどの混合低級アルキルフェニルホスフィン;トリフェニルホスフィン;テトラメチレン−エチルホスフィンなどの脂環式ホスフィンが挙げられる。触媒として特に好ましいのは、トリフェニルホスフィン又はN、N−ジメチルベンジルアミンである。
【0015】
水希釈性及び電着に必要な電荷は、水溶性酸(例えば、ギ酸、乳酸及び酢酸)によるプロトン化、又はオキシラン基とアミンの塩との反応、又はスルフィド/酸又はホスフィン/酸の混合物との反応により発生させることができる。アミンの塩としては、第3級アミンの塩を好んで用いることができる。アミン−酸付加物のアミン部位は、ヒドロキシルアミンの場合のように、非置換であっても置換されていてもよいアミンである。ただし、これらの置換基は、アミン−酸付加物とポリエポキシドとの反応を妨害するものであってはならず、また、その反応混合物はゲル化するものであってはならない。好適なアミンとしては、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミンなどのような第3級アミンである。アミン−酸混合物は、既知の方法でアミンを酸と反応させることによって得られる。
【0016】
中和度(MEQ酸対MEQ塩基の比として測定)は、好ましくは30%〜50%、より好ましくは35%〜45%である。
【0017】
使用する架橋剤は、少なくとも1種の完全にブロック化されたポリイソシアネートであって、少なくとも部分的に2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを用いてブロック化されたものである。ここで「完全にブロック化された」とは、ポリイソシアネートが遊離イソシアネート基をもはや有しておらず、したがってポリイソシアネート中に最初から存在するイソシアネート基の100モル%がブロック化されていることを意味する。2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを用いて「少なくとも部分的にブロック化する」とは、ポリイソシアネート中に最初から存在するイソシアネート基の少なくともいくつかが2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロック化され、ポリイソシアネート中に最初から存在するいずれの残存イソシアネート基も2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール以外の1種以上のブロッキング剤でブロック化されることを意味する。
【0018】
ポリイソシアネート中に最初に存在するイソシアネート基の50〜100モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロック化され、ポリイソシアネート中に最初に存在するイソシアネート基の0〜50モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール以外の1種以上のブロッキング剤でブロック化されていることが好ましい。
【0019】
ポリイソシアネート中に最初に存在するイソシアネート基の75〜100モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロック化され、ポリイソシアネート中に最初に存在するイソシアネート基の0〜25モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール以外の1種以上のブロッキング剤でブロック化されていることがより好ましい。
【0020】
ポリイソシアネート中に最初に存在するイソシアネート基の90〜100モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロック化され、ポリイソシアネート中に最初に存在するイソシアネート基の0〜10モル%が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール以外の1種以上のブロッキング剤でブロック化されていることが極めて好ましい。
【0021】
1つの非常に好適な実施形態において、完全にブロック化されたポリイソシアネートは、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールで完全にブロック化されたものである。これは、この種の場合、ポリイソシアネート上に最初に存在する全てのイソシアネート基が2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロック化されることを意味する。
【0022】
使用することが必須であるブロッキング剤である2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールは、2,3−O−イソプロピリデングリセロールの名称でも知られており、例えば、Solketal(登録商標)の下でGlaconchemie GmbH社から入手可能である。
【0023】
完全にブロック化されたポリイソシアネートを製造するための2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール以外の適切なブロッキング剤の具体例としては下記のものがある:
i)フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、tert−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、この酸のエステル、又は2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンのような、フェノール類;
ii)ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、又はβ−プロピオラクタムのような、ラクタム類;
iii)マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル又はメチル、又はアセチルアセトンなどの活性メチレン化合物;
iv)メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロモヒドリン、1,4−シクロヘキシルジメタノール又はアセトシアノヒドリンのような、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール以外のアルコール類;
v)ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、又はエチルチオフェノールのような、メルカプタン類;
vi)アセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセトアミド、ステアルアミド、又はベンズアミドのような、酸アミド類;
vii)スクシンイミド、フタルイミド、又はマレイミドのような、イミド類;
viii)ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、又はブチルフェニルアミンのような、アミン類;
ix)イミダゾール又は2−エチルイミダゾールのような、イミダゾール類;
x)尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、又は1,3−ジフェニル尿素のような、尿素類;
xi)フェニルN−フェニルカルバメート又は2−オキサゾリドンのような、カーバメート類;
xii)エチレンイミンのようなイミン類;
xiii)アセトンオキシム、ホルムアルデオキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、又はベンゾフェノンオキシムのような、オキシム類;
xiv)重亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸カリウムのような、亜硫酸の塩類;
xv)ベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)又はアリルメタクリロヒドロキサメートのような、ヒドロキサム酸エステル類;又は
xvi)置換ピラゾール、イミダゾール、又はトリアゾール;また、
xvii)エチレングリコール、プロピレングリコール、又は1,2−ブタンジオールのような、1,2−ポリオール類;
xviii)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレートのような、2−ヒドロキシエステル類;
xix)前記ブロッキング剤の混合物。
【0024】
本発明に従って完全にブロック化されたポリイソシアネートを製造するために使用することができるポリイソシアネートは、全て既知のポリイソシアネートであり、脂肪族ポリイソシアネートだけでなく芳香族ポリイソシアネート、又は芳香族及び脂肪族ポリイソシアネートの混合物である。ここでは、モノマーのポリイソシアネートだけでなく、ポリイソシアネートの二量体又は三量体も、オリゴマー又はポリマーのポリイソシアネートも使用することが可能である。好適なイソシアネートは、そのモノマー成分が約3個〜約36個の、より特定的には約8個〜約15個の炭素原子を含むものである。かかるモノマーポリイソシアネートの適切な具体例として、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、メチルトリメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トルエン2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンなどのジイソシアネートが挙げられる。より高級なイソシアネート官能性のポリイソシアネートも使用することができ、例えば、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4,4’−トリイソシアナトジフェニルメタン、又はビス(2,5−ジイソシアナト−4−メチルフェニル)メタンなどがある。これらのポリイソシアネートは、二量体又は三量体の形態で使用することもできるし、又はオリゴマー又はポリマーポリイソシアネートの構成要素としての機能を果たすこともできる。さらに、ポリイソシアネートの混合物も利用することができる。オリゴマー又はポリマーのポリイソシアネートを用いるのが好ましく、なかでも、NCO官能価が好ましくは2.4〜4のオリゴマーポリイソシアネートがより好ましい。
【0025】
芳香族ポリイソシアネートを用いることが好適であるが、NCO官能価が好ましくは2.4〜4の芳香族ポリイソシアネートのオリゴマーを使用することがより好ましい。BASF社製のLupranat M20Sとして入手可能なオリゴマー4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が特に好ましい。
【0026】
本発明に従いブロック化された芳香族ポリイソシアネートは、特に、反応性が高く、そのため焼付け不足を防止することができ、ブロック化された4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートオリゴマーが格別である。
【0027】
本発明に従いブロック化され、架橋剤として使用するポリイソシアネートは、一般的には、水性バインダー分散液中のバインダー画分に対して10〜50質量%、好ましくは25〜40質量%の量で使用する。これは、本発明に従って完全にブロック化されたポリイソシアネート画分が、水性バインダー分散液の総バインダー画分のそれぞれ10〜50質量%又は25〜40質量%であることを意味する。
【0028】
水性バインダー分散液は、バインダー及び架橋剤を水中で混合することによって調製することができる。ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂のアミンによる変性は、少なくとも1種の、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールでブロック化したポリイソシアネート架橋剤の存在下で行うことが好ましい。
【0029】
水性バインダー分散物は、平均サイズ50〜200nm、より好ましくは60〜160nmのバインダー粒子を有することが好ましい。
【0030】
水性バインダー分散液は、20%〜50%、より好ましくは32%〜42%の固形分を有することが好ましい。
【0031】
電着塗装材料は、勿論、関連する先行技術から公知である種類の更なる電着塗料に特有の成分を含むことができる。電着塗装材料は、本発明のバインダー分散液に加えて、顔料及び/又は充填剤を含むことが好ましい。使用することができる顔料及び充填剤には、原則としてすべての有機及び無機顔料及び充填剤が含まれる。
【0032】
典型的な無機顔料としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄及び酸化クロムのような酸化物及びオキシ水酸化物顔料、例えばビスマスモリブデンバナジウム酸化物イエロー、クロムチタンイエロー、スピネルブルー、鉄マンガンブラウン、亜鉛鉄ブラウン、鉄マンガンブラック及びスピネルブラックのような混合相酸化物顔料、硫化亜鉛のような硫化物顔料及び硫化セレン顔料、例えばリトポン、カドミウムイエロー及びカドミウムレッド、炭酸カルシウム(上述したように塗布の際技術的制限を伴う)のような炭酸塩顔料、例えばクロムイエロー、モリブデンオレンジ及びモリブデンレッドのような混合相クロム酸塩及びクロム酸塩−モリブデン顔料、例えば鉄ブルーのような錯塩顔料、例えばケイ酸アルミニウム及びウルトラマリン(ブルー、バイオレット及びレッド)のようなケイ酸塩顔料、例えばアルミニウムのような化学元素からなる顔料、銅−亜鉛合金、及び顔料カーボンブラック、例えば硫酸バリウムのような他の顔料が挙げられる。低溶解度ビスマス化合物の典型的な代表例には、例えば次硝酸ビスマス及び次サリチル酸ビスマスがあり、これらは、例えば架橋触媒として触媒的に作用することもできる。
【0033】
典型的な有機顔料には、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、並びに、例えばペリレン顔料及びフタロシアニン顔料のような多環式顔料がある。
【0034】
典型的な無機充填剤には、例えばタルク及びカオリンのようなケイ酸塩、例えば沈降シリカ又はヒュームドシリカのようなシリカ、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムのような酸化物、例えば沈降硫酸バリウム及び硫酸カルシウムのような硫酸塩、例えば、各種の炭酸塩がある。
【0035】
本発明では、顔料と充填剤とを明確に区別する必要はない。当技術分野では、屈折率を使用して区別することが多い。この指数が1.7を超える場合は、顔料である。この数字より低い指数の場合は、充填剤である。本発明の水性調製物は、着色されたコーティング材料組成物である場合が好ましく、特に、陰極堆積可能な電着塗装材料である場合が極めて好ましい。
【0036】
本発明のバインダー分散液は、その製造前、製造中及び/又は製造後に、少なくとも1種の通常のコーティング添加剤と混合することができる。当業者であれば、共通の一般知識に基づいて、コーティング添加物を同定識別することができる。上記コーティング添加剤は、当該分散液を製造した後に添加するのが好ましい。
【0037】
好適な添加剤の例には、熱硬化性反応性希釈剤、低沸点及び/又は高沸点有機溶媒、UV吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、熱不安定ラジカル開始剤、架橋触媒、例えばスズ含有触媒、脱気剤(deaerating agent)、滑剤、重合防止剤、消泡剤、乳化剤、湿潤剤、接着促進剤、流動制御剤、フィルム形成補助剤、レオロジー制御添加剤、又は難燃剤がある。その他の適切なコーティング添加剤の具体例は、Johan Bieleman、Wiley−VCH、Weinheim、ニューヨーク、1998年のLackadditive教科書に記載されている。
【0038】
カチオン電着材料に本発明のバインダー分散液を使用すると、顕著な特性を有する被膜を堆積させることができ、その被膜が被覆されるのに十分に役立つものである。
【0039】
本発明の更なる主題は、本発明の水性バインダー分散液を陰極電着塗装材料に使用する方法、及び本発明の水性バインダー分散液を用いて陰極電着塗装する方法にある。生成する本発明の陰極電着塗装材料は、陰極電着法による導電性基体又は生地の被覆に使用することができる。本発明の陰極電着材料は金属製基材の被覆に使用することが好ましい。適切な金属製基材には、例えば、スチール(鋼)製、アルミニウム製、銅製、異種金属の合金製の基材がある。鋼製の基材が優先して使用される。特に好ましいのは、リン酸塩処理した金属製基材の下地、より具体的にはリン酸塩処理した鋼製の基材を使用することである。リン酸塩処理した金属製基材は、その対応する化学的前処理の結果としてリン酸塩を含有する無機化コート(inorganic conversion coats)が付与された金属製基材である。特に好ましい基材は、自動車の車体(本体)又はその部品である。
【0040】
陰極電着塗装は、導電性基材を塗装するための方法であり、この方法では、
1)基材を、少なくとも1種の陰極堆積可能なバインダーを含む水性電着材料に浸漬し、
2)基材を陰極として接続し、
3)直流によって基材上に被膜を堆積させ、
4)基材を電着材料から取り出し、
5)堆積した塗膜の焼付けを行う。
【0041】
陰極電着塗装は、特に被塗物(ワークピース)の下塗りに使用する。
【0042】
電着浴の温度は、通例、15〜40℃、好ましくは25〜35℃である。印加電圧は、広い範囲内で変動してもよく、例えば、50〜500ボルトであることができる。しかし、典型的には、250〜400ボルトの電圧で実施するものである。堆積に続いて、被覆が施された加工物をリンスして焼付けの準備を整える。堆積した塗膜は、一般に130〜220℃の温度で8〜60分間、好ましくは150〜180℃の温度で12〜30分間焼き付ける。本発明のバインダー分散体を含む本発明の電着材料から得られる本発明の塗膜が有する利点は、塗膜が比較的低温でも完全に架橋することができ、それにより焼付け不足(生焼き)の危険性を低減することができることである。
【0043】
したがって、本発明の別の主題は、本発明のバインダー分散液を含む本発明の電着塗料材料で被覆した基材にあり、より具体的には、鋼、アルミニウム、銅、又は金属合金等の基材、例えば、好ましくはリン酸塩処理された金属基材、より詳しくはリン酸塩処理された鋼基材である。特に、それに応じて被覆された自動車車体又はその部品が非常に好適なものである。
【0044】
本発明の更なる主題は、本発明のバインダー分散液に基づく陰極電着
塗装物を含む多層
塗装物(paint system)にある。電着
塗装物及びそれに対応する多層
塗装物は、好ましくは自動車
塗装物である。
【0045】
本発明の更なる主題は、少なくとも1種のアミン変性ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂をバインダーとして含む水性バインダー分散液に、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールで少なくとも部分的にブロック化された、完全ブロック化ポリイソシアネートを架橋剤として使用する方法にある。
【0046】
このような文脈において、上記のポリイソシアネート及び上記のアミン変性ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【実施例】
【0047】
各種測定の方法:
ガラス転移温度Tgの測定:
ガラス転移温度Tgは、10K/分の加熱速度で、DIN53765(03.1994;プラスチック及びエラストマーの試験−熱分析−示差走査熱量測定(DSC))に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
【0048】
NCO含有量の測定:
NCO含有量は、NCO基(イソシアネート)を過剰のジブチルアミンと反応させて尿素誘導体を得、次いでその過剰のアミンをHClで逆滴定することによって定量的に測定する。NCO含有量は、イソシアネート含有量(質量%)を示すものであり、1モルのNCO基を含有する物質のグラム数を意味するNCO当量に変換することができる。
【0049】
固形分含有量の測定:
予め乾燥したアルミニウム製ボート型容器に約2gのサンプルを秤量し、130℃で、1時間乾燥キャビネット内で乾燥させ、デシケーター内で冷却した後、再度秤量する。残渣(すなわち、不揮発性分)が固形分又は固形分含有量に対応する。固体含有量をこれとは異なる手順で測定した場合には、それに応じて、例えば、時間及び温度を括弧内に付記する。
【0050】
バインダー分量の測定:
それぞれの場合のバインダー分量は、架橋前にテトラヒドロフラン(THF)に可溶なコーティング材料(塗料)の分量である。その測定の際には、少量のサンプルをTHFの50〜100倍量で溶解し、不溶性成分を濾過により除去し、続いて固形分含量を上記の説明に従い測定する。
【0051】
OH価及び酸価又は酸含有量の測定:
酸価(AN)はDIN53402に従って測定し、OH価(ヒドロキシル価)はDIN53240に従って測定する。酸価は酸含有量に変換することができる。
【0052】
MEQ酸及びMEQ塩基
MEQ(ミリ当量)数値は、塗料又はバインダーの不揮発分(固形分)100g中に存在する酸又は塩基のミリ当量の数を示す。測定の際には、秤量した試料(2〜5g、バインダーを基準にして)をメトキシプロパノール又はブチルグリコールのような適切な溶媒と混合し、水酸化カリウム溶液で滴定してMEQ酸の数値を求め、また、塩酸で滴定してMEQ塩基の数値を求める。その詳細はDIN EN ISO 15880に記載されている。
【0053】
エポキシ当量:
エポキシ当量の測定は、エポキシ官能性ポリマー中のエポキシ結合酸素の量を決定するのに役立つ。エポキシ当量は、16gのエポキシ結合した酸素、すなわち1モルのエポキシ基を含むエポキシ樹脂の量(g単位)であると理解される。樹脂をジクロロメタンと酢酸との混合物に溶解する。この溶液をN−セチル−N、N、N−トリメチルアンモニウムブロマイドと混合し、指示薬としてクリスタルバイオレットを用いて氷酢酸中の過塩素酸で滴定する。その臭化物塩と過塩素酸との反応により臭化水素(HBr)が生成し、この臭化水素はオキシラン環の開裂により分子上に付加する。1モルのエポキシ官能基は1モルの過塩素酸を必要とする。反応が進んで完了すると、指示薬は最終的に過剰なプロトンによってプロトン化し、青色を介して緑色に変色する。詳細は、DIN EN ISO 7142及びDIN 16945に記載されている。
【0054】
平均粒径の測定:
バインダー分散液中のバインダー粒子の平均サイズは、英国Malvern社製のZetasizer Nano S90光子相関分光計を用いて測定する。評価したパラメータは「体積平均」である。
【0055】
架橋剤1:
電着組成物用架橋剤の調製
撹拌機、還流冷却器、内部温度計、及び不活性ガス導入口を備えた反応器に、1053.5gの2,3−O−イソプロピリデングリセロール(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、Solketal(登録商標);Glaconchemie GmbH社製、D−06217 Merseburg)を窒素雰囲気下で加える。1.4gのジブチル錫ジラウレートを添加し、その混合物を50℃まで加熱し、NCO当量135g/eqを有する、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートに基づく878.4gの異性体及び高官能性オリゴマー(Lupranat M20S、BASF社製;NCO官能価約2.7;2,2’−及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの量5%未満)を、生成物温度が70℃未満に保たれるような速度で滴加する。添加の完了する少し前に、温度を100℃に上昇させ、続いてこの温度をさらに90分間維持する。その後の検査では、NCO基はもはや検出されない。冷却を開始し、175.0gのPluriol C 1651(ジブトキシエトキシホルマール、製造元:BASF SE社)及び66.7gのエタノールを添加して生成物を希釈し、続いて65℃に冷却する。固形分含有量は80%である。
【0056】
バインダー分散液1:
第1級アミノ基及びヒドロキシル基を有する陰極堆積可能な合成樹脂及び架橋剤1を含む低溶剤水性バインダー分散液の調製
熱媒油で加熱された実験室用反応器であって、撹拌機、還流冷却器、温度計及び不活性ガス導入管を備えたものに、エポキシ当量(EEW)が186g/eqである、ビスフェノールAを基にした市販のエポキシ樹脂961.2部、フェノール63.9部、ドデシルフェノール52.4部、ビスフェノールA218.9部、及びキシレン68.4部を添加、この最初の添加物を、攪拌しながら、かつ、窒素を導入しながら130℃まで加熱する。125℃に達した時、2.6部のN、N−ジメチルベンジルアミンを添加する。発熱反応をその後起こり、温度を146℃に上昇する。温度を137℃に低下した後、さらに1.2部のN、N−ジメチルベンジルアミンを添加する。温度をさらに低下させ、エポキシ当量(EEW)が870g/eqに達するまで130℃に保持する(約3時間)。
次いで、冷却しながら、実施例1の架橋剤967.1部及びブチルグリコール31.8部及びイソブタノール198.6部を添加する。温度を96℃に低下したら、メチルイソブチルケトン(MIBK)中のジエチレントリアミンのビスメチルイソブチルジケチミンの70%濃度溶液71.3部、及びN−メチルエタノールアミン79.2部を添加する。30分後、温度を100℃に上昇した時、19.3部のN、N−ジメチルアミノプロピルアミンを添加する。20分後、バッチを80℃に冷却し、その間にLoxanol PL 5060(BASF SE社製)152.4部及びフェノキシプロパノール100部で希釈し、排出する。
【0057】
続いて、別個の分散容器中で、2105.4部の樹脂混合物を完全脱塩した水1118.9部と88%濃度の乳酸69.2部との混合物中に撹拌しながら導入する。均質化したら、その混合物をさらに完全脱塩水1903.2部で徐々に希釈する。
【0058】
これにより水性カチオン分散液を得る。その後、この分散液から40℃で共沸真空蒸留によって揮発性溶媒を除去し、有機留出物を完全脱塩水で置換する。K900プレートフィルター(平面濾過器)(Seitz製)上で濾過して、以下の特性を有する分散液を得る:
固形分含有量: 32.4%
塩基含有量: 0.687meq/g樹脂固形分
*)
酸含有量: 0.328meq/g樹脂固形分
*)
平均粒径: 98nm
**)
沈降安定性: 室温で2ヶ月間保存した後の沈殿物なし
*) ミリ当量/グラム樹脂固体
**) Malvern社製のZetasizer Nano S90光子相関分光計を使用して測定
【0059】
架橋剤2:
比較用架橋剤の調製
EP 0961797 B1(第6頁第43〜52行)に記載の架橋剤を使用する。撹拌機、還流冷却器、内部温度計及び不活性ガス注入口を備えた反応器に、NCO当量135g/eqを有する4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートに基づく異性体及び高官能性オリゴマー(Lupranat M20S、BASF社製;NCO官能価約2.7;2,2’−及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの量5%未満)1084gを窒素雰囲気下で加える。ジブチル錫ラウレート2gを添加し、ブチルジグリコール1314gを、生成物温度が70℃より低くなるような速度で滴加する。場合によっては、冷却を行う必要がある。添加終了後、温度を70℃にさらに120分間維持する。その後の検査では、もはやNCO基は検出されない。65℃まで冷却を行う。
固形分含有量は97%を超える(>)。
【0060】
バインダー分散液2(比較用):
陰極堆積可能な合成樹脂及び比較例としての架橋剤2を含む低溶剤水性バインダー分散液の調製
バインダー分散液1の場合と同様の操作を行う。なお、ここでは、架橋剤1の代わりに、797.6部の架橋剤2(固形分含有量の点でバインダー分散液1の実施例中の架橋剤1の量に相当する)を使用する。
【0061】
40℃での共沸真空蒸留による揮発性溶媒の除去に続いて、生成物を完全脱塩水で32%の目標固形分含有量まで希釈する。
【0062】
K900プレートフィルター(平面濾過器)(Seitz製)上で濾過して、以下の特性を有する分散液を得る:
固形分含量: 32.2%
塩基含量: 0.684meq/g樹脂固形分
*)
酸含量: 0.323meq/g樹脂固形分
*)
平均粒径: 110nm
**)
沈降安定性: 室温で2ヶ月間保存した後の沈殿物なし
*) ミリ当量/グラム樹脂固形分
**) Malvern社製のZetasizer Nano S90光子相関分光計を使用して測定
【0063】
粉砕(grinding)樹脂Aの製造
EP 0961797(第9頁第17〜21行)に記載の粉砕樹脂Aを使用する。攪拌機構、内部温度計、窒素導入口、還流冷却器付き水分離器を具備する反応器に、ビスフェノールAに基づくエポキシ樹脂でエポキシ当量(EEW)が188g/eqである樹脂30.29部、ビスフェノールA9.18部、ドデシルフェノール7.04部、及びブチルグリコール2.37部を添加する。この最初の添加物を110℃まで加熱し、キシレン1.85部を添加し、そのキシレンを想定される痕跡量の水と共に穏やかな真空下で再度蒸留除去する。次いで、0.07部のトリフェニルホスフィンを加え混合物を130℃に加熱する。150℃まで発熱的(exothermic)熱生成の後、130℃でさらに1時間反応させる。反応混合物のEEWはその時点で860g/eqである。反応混合物を冷却し、その間にブチルグリコール9.91部及びEEWが333g/eqのポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(DER732、Dow Chemicals社製)17.88部を加える。90℃で、4.23部の2,2’−アミノエトキシエタノール(H
2N−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−OH)及び、10分後に1.37部のN、N−ジメチルアミノプロピルアミンを加える。しばらく発熱した後、粘度が一定になるまで反応混合物を90℃にさらに2時間維持し、次いでブチルグリコール17.66部で希釈する。この樹脂は、固形分含有量が69.8%であり、粘度(プロピレングリコールモノメチルエーテル(Solvenon PM、BASF社製)で希釈した40%樹脂溶液について、23℃でコーン/プレート粘度計で測定)が5.5dPasである。取り扱いを容易にするために、樹脂をさらに中和し、2.82部の氷酢酸及び13.84部の完全脱塩水で希釈する。その結果、最初の固形分含有量が60%に減少する。
【0064】
水性顔料ペーストの製造
EP0505445B1(第10頁第35〜42行)に記載の方法と同様にして、水性顔料ペーストを下記の表1に記載の出発材料から製造する。まず、脱イオン水と粉砕樹脂Aとを予め混合する。次に、残りの成分を表1に示す数字の量に従って加え、混合物を高速の溶解槽撹拌機で30分間混合する。次いで、この混合物を、小さな実験室用ミルで、1〜1.5時間、12未満のヘグマン微粉度(Hegmann fineness)まで分散させる。示す量は質量分率である。
【0065】
【表1】
【0066】
電着塗装材料A及びB:
本発明の及び従来の陰極電着塗装材料の本発明実施例及び比較例
従来の及び本発明の陰極電着塗装材料を製造するために、バインダー分散液1及び2並びに水性顔料ペーストAを表2に示す量(質量分率)の完全脱塩水と混合する。ここでの手順は、最初にバインダー分散液を導入すること、及びこれを完全脱塩水で希釈することである。次に、撹拌しながら顔料ペーストを導入する。これにより、本発明の電着塗装材料A及び従来の電着塗装材料Bを得る。
【0067】
【表2】
【0068】
電着浴を室温で3日間攪拌しながら熟成させる。前処理工程でCr(VI)によるすすぎ(リンス)をしないで、陰極に接続したリン酸亜鉛化鋼製スチール試験パネル上に、220〜270ボルトの堆積電圧及び350ボルトの破壊電圧(浴温32℃)で2分間かけて被膜を堆積させる。
【0069】
【表3】
【0070】
堆積した被膜を脱イオン水ですすぎ(リンス)、175℃(基材温度)で15分間(架橋の尺度としてガラス転移温度Tgを測定するため160℃でも)焼き付ける。
【0071】
【表4】
【0072】
比較用塗料系Bに関して、160℃焼付け時のガラス転移温度Tgが72℃であることから、175℃焼付け時のガラス転移温度Tgの81℃と比較して、架橋がまだ不完全であることが示されている。対照的に、160℃で焼付けした場合のガラス転移温度Tgが79℃であったことから、本発明のE−コート系Aがほぼ最終状態(175℃での焼付けではTg=82℃)にあることが示されている。160℃でさえ、塗膜系Aの架橋密度は、比較用塗膜系Bの場合よりもさらに高まっており、したがって、従来技術と比較して焼付け不足に対する安全性が改善したことを示す。
【0073】
バインダー分散液3
ヒドロキシル基を有するが第1級アミノ基を有しない、陰極堆積可能な合成樹脂を含み、かつ、架橋剤1を含む低溶剤水性バインダー分散液の調製
バインダー分散液をEP0961797B1に従って調製する:
熱媒油で加熱した、撹拌機、還流冷却器、温度計及び不活性ガス導入管を備えた実験室用反応器に、エポキシ当量(EEW)186g/eqのビスフェノールAをベースとする市販のエポキシ樹脂1211.5部、95.7部のフェノール、47.5部のn−ブトキシプロパノール及び278.5部のビスフェノールAを添加し、この初期添加物を窒素下で127℃まで加熱する。撹拌しながら、1.6部のトリフェニルホスフィンを添加したところで、発熱反応が起こり、温度を170℃に上昇した。混合物を再び130℃に冷却し、次いでエポキシド含有量をチェックする。521g/eqのEEWは、全てのフェノール性OH基が反応したことを示す。次に、158.9部のPluriol P 900(MWが900のポリプロピレングリコール、BASF社製)を同時に冷却しながら添加する。5分後、さらに冷却しながら、120℃で、ジエタノールアミン117.7部を添加する。しばらく発熱(Tmaxは127℃)した後、温度が100℃に低下する(30分)とすぐに、57.2部のN、N−ジメチルアミノプロピルアミンを加える。しばらく発熱(Tmaxが145℃)した後、粘度が一定になるまで(1280mPas、Brookfield CAP200+粘度計、23℃、CAP03コーン、5000 1/s、Solvenon PM(BASF社製)中で51%)、バッチ混合物を130℃で2時間反応させる。続いて、1031.5部の架橋剤1を、同時に冷却しながら添加し、生成物を105℃で排出する。
【0074】
まだ熱い混合物2194.1部を、完全脱塩水1401.9部及び85%濃度のギ酸31.0部からなる初期仕込み混合物中に、激しく撹拌しながら直ちに分散させる。しばらく均質化させた後、さらに1247.1部の完全脱塩水で希釈し、希釈した分散液をK900プレートフィルター(Seitz社製)で濾過する。その分散液は既に低溶媒の形態で得られているので、溶媒の蒸留による除去は行わない。分散液が有する特性は以下のとおりである。
【0075】
固形分含有量: 40.5%
塩基含有量: 0.785meq/g樹脂固形分
*)
酸含有量: 0.308meq/g樹脂固形分
*)
平均粒径: 114nm
**)
沈降安定性: 室温で2ヶ月間保存した後の沈殿物なし
*) ミリ当量/グラム樹脂固形分
**) Malvern社製のZetasizer Nano S90光子相関分光計を使用して測定
【0076】
バインダー分散液4(比較例)
ヒドロキシル基を有するが第1級アミノ基を有しない、陰極堆積可能な合成樹脂を含み、かつ、架橋剤2を含む低溶剤水性バインダー分散液の調製
バインダー分散液3の実施例の手順を実施する。なお、ここでは、1031.5部の架橋剤1の代わりに、916.9部の比較用架橋剤2及び83.0部のPluriol C1651及び31.6部のエタノールからなる予備希釈液1031.5部を添加した(固形分含有量でバインダー分散液3の実施例における架橋剤1の量に相当する)。次いで分散液を105℃で排出し、その手順は実施例3と同様である。
【0077】
まだ熱い混合物2194.1部を、完全脱塩水1401.9部及び85%濃度のギ酸31.0部からなる初期添加の混合物中に、激しく撹拌しながら直ちに分散させる。しばらく均質化させた後、さらに1247.1部の完全脱塩水で希釈し、希釈した分散液をK900プレートフィルター(Seitz社製)で濾過する。その分散液は既に低溶媒の形態で得られているので、溶媒の蒸留による除去は行わない。分散液が有する特性は以下のとおりである。
【0078】
固形分含有量: 40.2%
塩基含有量: 0.761meq/g樹脂固形分
*)
酸含有量: 0.309meq/g樹脂固形分
*)
平均粒径: 120nm
**)
沈降安定性: 室温で2ヶ月間保存した後の沈殿物なし
*) ミリ当量/グラム樹脂固形分
**) Malvern社製のZetasizer Nano S90光子相関分光計を使用して測定
【0079】
電着塗装材料C及びD
電着塗装浴C及びDの調製及び塗膜の堆積
電着塗装浴を、電着塗装材料A及びBの調製について記載した手順及び表5に列挙した量(質量)に従って調製する。
【0080】
【表5】
【0081】
電着塗装材料A及びBについて特定した堆積条件に従って、前処理工程でCr(VI)によるすすぎ(リンス)を行わずに、陰極に接続したリン酸亜鉛化鋼製試験パネル上に被膜を作製する。すすぎをした後、この被覆したパネルに、表6に示す焼付け条件(160℃又は175℃で20分)に従って硬化処理を施して厚さ20μmの塗膜を得る。
【0082】
【表6】
【0083】
比較用塗料系Dに関して、160℃焼付け時のガラス転移温度Tgが67℃であることから、175℃焼付け時のガラス転移温度Tgの80℃と比較して、架橋がまだ不完全であることが示されている。対照的に、160℃で焼付けした場合のガラス転移温度Tgが78℃であったことから、本発明のE−コート系Cがほぼ最終状態(175℃での焼付けではTg=81℃)にあることが示されている。160℃でさえ、塗膜系Cの架橋密度は、比較用塗膜系Dの場合よりもさらに進んでおり、したがって、従来技術と比較して焼付け不足に対する安全性が改善したことを示す。