(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483821
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】内燃機関、副室インサート及び燃料インジェクタ
(51)【国際特許分類】
F02B 19/16 20060101AFI20190304BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
F02B19/16 A
F02B19/16 F
F02B19/16 J
F02M21/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-523382(P2017-523382)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公表番号】特表2017-534016(P2017-534016A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2015072637
(87)【国際公開番号】WO2016066365
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年6月27日
(31)【優先権主張番号】102014016127.7
(32)【優先日】2014年10月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ベーア
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−185595(JP,A)
【文献】
特表2005−511967(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/074273(WO,A1)
【文献】
特開2010−150983(JP,A)
【文献】
特開2006−348788(JP,A)
【文献】
特開2002−266644(JP,A)
【文献】
特開2002−266643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 19/16
F02M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダ(11)を有する内燃機関(10)であって、
1つ以上の前記シリンダ(11)が、それぞれの前記シリンダ(11)内で燃料を燃やすための主燃焼室(14)を備え、
それぞれの前記シリンダ(11)のシリンダヘッド(12)には、燃料供給及び/又は燃料点火に役立つ組立体(15)が、前記組立体(15)がそれぞれの前記シリンダ(11)の前記シリンダヘッド(12)の切欠部(19)内に挿入されて前記シリンダヘッドに対してシールされるように、それぞれの前記シリンダ(11)のガス交換バルブ(13)の間に取り付けられている、内燃機関において、
それぞれの前記シリンダ(11)の前記シリンダヘッド(12)の前記切欠部(19)内に挿入された、それぞれの前記組立体(15)のセクション(20)が、断面が卵形の外形とされ、
シール領域に位置づけられた、それぞれの前記組立体(15)の前記セクション(20)の境界面(21)が、周方向において外側で連続的に凸状に湾曲した外形とされており、
それぞれの前記組立体(15)が、前記シール領域に位置づけられた前記境界面(21)上で、軸方向にオフセットされたシール(23,24)、すなわち前記主燃焼室(14)に面する下方シール(24)と、前記主燃焼室(14)から離れる方向に面する上方シール(23)と、を支持しており、
前記内燃機関(10)が、ガスエンジンとして構成され、それぞれの前記組立体(15)が、副室インサートとして構成され、
前記副室インサート(15)におけるガス誘導に役立つ逆流防止バルブ(17)が、それぞれの前記副室インサート(15)の副室(16)の上側で、前記逆流防止バルブ(17)と前記副室(16)との間の距離を最小化するために前記逆流防止バルブ(17)が前記下方シール(24)の下側に位置させられるように、前記副室インサート(15)におけるガス点火に役立つスパークプラグ(18)と横方向に隣り合って受容されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記上方シール(23)及び前記下方シール(24)がOリングシールとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
ガス誘導に役立つガス供給孔(25)が、前記下方シール(24)と前記上方シール(23)との間の前記シール領域において前記境界面(21)で開いており、ガスが、前記ガス供給孔(25)を介して前記副室(16)に向かって導かれることができることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書き部に記載の内燃機関に関する。本発明は、請求項7のおいて書き部に記載のガスエンジンのための副室インサート、及び請求項10のおいて書き部に記載のディーゼルエンジンのための燃料インジェクタにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、少なくとも1つのシリンダを有するガスエンジンとして構成された内燃機関が、公知である。ガスエンジンのそれぞれのシリンダは、主燃焼室及び副室を備え、副室は、副室インサートによって設けられている。副室インサートは、副室保持器としても説明されている。特許文献1によれば、副室は、インサートを提供し、且つガス供給及びガス点火に関連する組立体をさらに収容する。ガス供給に役立つ組立体は、逆流防止バルブを含み、ガス点火に関連する組立体は、スパークプラグを含んでいる。特許文献1による副室インサートは、それぞれのシリンダのガス交換バルブの間で、それぞれのシリンダのシリンダヘッドに取り付けられており、副室インサートは、それぞれのシリンダのシリンダヘッドの切欠部内に挿入されてシリンダヘッドに対してシールされている。実施から公知のガスエンジンでは、副室インサートは、シリンダ形状を有し、従って、断面が円形の外形を有している。
【0003】
特に、ガス交換バルブの間で利用可能な設置空間が制限される場合、シリンダヘッド上での副室インサートの配置は、困難を引き起こす。特に、副室から最小距離で逆流防止バルブを配置することができず、このため、逆流防止バルブは、副室からより大きい距離に位置させられなければならず、この結果として、逆流防止バルブと副室との間には、比較的長いガス誘導孔が必要になる。これに起因して、振動が、この孔のガス柱内で生じる可能性があり、これは、ガスを副室内に正確に計量供給することを困難に又は不可能にさせる。
【0004】
同様の問題が、他の内燃機関、特にディーゼルエンジンにも存在し、ディーゼルエンジンの場合には、燃料供給及び/又は燃料点火に役立つ組立体、特に燃料インジェクタが、シリンダのシリンダヘッドに取り付けられなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2012 203 700号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここから出発して、本発明は、新たなタイプの内燃機関、例えばガスエンジン、ガスエンジンのための新たなタイプの副室インサート及びディーゼルエンジンのための新たなタイプの燃料インジェクタを作り出すという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の内燃機関を通じて解決される。本発明によれば、それぞれのシリンダのシリンダヘッドの切欠部内に挿入された、燃料供給及び/又は燃料点火に役立つそれぞれの組立体のセクションが、断面が卵形の外形とされており、シール領域内に位置づけられた、それぞれの組立体のこのセクションの境界面が、周方向において外側で連続的に凸状に湾曲した外形とされている。
【0008】
本発明により、まず、セクションで燃料供給及び/又は燃料点火に役立つ組立体を、断面が円形ではなく本発明により卵形とし、組立体が、このセクションを介してシリンダヘッドの切欠部内に挿入されることが提案される。これに起因して、シリンダヘッド上で利用可能な設置空間をより良好に利用することが可能になる。燃料供給及び/又は燃料点火に役立つ組立体のシール領域では、断面が卵形の外形とされた境界面が周方向において外側で連続的に凸状に湾曲した外形とされているという事実に起因して、シリンダヘッドに対する組立体の制限されないシールが実現されることができる。
【0009】
組立体が、燃料供給及び燃料点火に役立つ副室インサートとして構成される場合には、副室から最小距離に逆流防止バルブを位置させることが可能であり、このため、逆流防止バルブと副室との間で延びる燃料誘導ラインが、最小長さで、従って最小体積で実現されることができる。これに起因して、より正確に燃料を計量供給することを達成することが可能になる。
【0010】
有利なさらなる発展によれば、燃料供給及び/又は燃料点火に役立つそれぞれの組立体が、シール領域に位置づけられた境界面上で、軸方向にオフセットされたシール、すなわち、主燃焼室に面する下方シールと、主燃焼室から離れる方向に面する上方シールと、を支持している。シールは、シリンダヘッド内での、燃料供給及び/又は燃料点火に役立つ組立体の良好なシールを可能にする。
【0011】
特に、内燃機関がガスエンジンとして構成され且つそれぞれの組立体が副室インサートとして構成される場合、ガス誘導に役立つ、副室インサートの逆流防止バルブは、逆流防止バルブが下方シールの下側に位置させられるように、副室インサート内で副室インサートの副室の上側で、副室インサートにおけるガス点火に役立つスパークプラグと横方向に隣り合って受容される。さらに有利なさらなる発展によれば、ガス誘導に役立つガス供給孔が、下方シールと上方シールとの間のシール領域において境界面で開いており、ガスが、ガス供給孔を介して、それぞれの副室インサートの副室に向かって導かれることができる。従って、シリンダヘッドに対する副室インサートの最適なシールと、シリンダヘッド上で利用可能である設置空間の最適な利用と、が保証される。
【0012】
本発明による副室インサートは、請求項7で規定され、本発明による燃料インジェクタは、請求項10で規定される。
【0013】
本発明の好ましいさらなる発展は、従属請求項及び以下の説明から得られる。本発明の例示的な実施形態は、図面に限定されることなく図面を用いてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】シリンダの副室インサートの領域での、ガスエンジンとして構成された内燃機関のシリンダの断面図である。
【
図2】本発明による、
図1のガスエンジンの副室インサートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、優先的にはガスエンジンとして構成された内燃機関、及びガスエンジンのための副室インサートに関する。本発明は、他の内燃機関にも利用され、例えば特にディーゼルエンジンの燃料インジェクタの領域においてディーゼルエンジンにも利用される。本発明は、ガスエンジンとガスエンジンのための副室インサートとの好ましい用途のために、
図1〜
図3を参照して説明される。
【0016】
図1は、ガスエンジン10のシリンダ11の領域でのガスエンジン10の断面図を示し、
図1では、シリンダ11のシリンダヘッド12が示されている。シリンダヘッド12の領域では、ガス交換バルブ13が形成され、ガス交換バルブ13は、カムシャフトから、開くこと及び閉じることができる。シリンダヘッド12は、底部において、少なくともいくつかのセクションで、それぞれのシリンダ11の主燃焼室14を画成している。ガスエンジン10のシリンダ11には、副室15が割り当てられ、副室15は、シリンダ11のための副室16を形成し、且つガス誘導及びガス点火に関連する組立体をさらに支持している。
図2及び
図3では、それぞれ、副室インサート15のみが示されている。ガス誘導に関連する、副室インサート15の組立体は、逆流防止バルブ17を含み、ガス点火に関連する、副室インサート15の組立体は、スパークプラグ18を含んでいる。
【0017】
副室インサート15は、副室インサート15がそれぞれのシリンダ11のシリンダヘッド12の切欠部19内に挿入されてシリンダヘッド12に対してシールされるように、ガスエンジン10のシリンダ11のシリンダヘッド12に取り付けられており、副室インサート15は、ガスエンジン10のそれぞれのシリンダ11のガス交換バルブ13の間の領域においてシリンダヘッド12上で収容されている。
【0018】
本発明に関して、シリンダヘッド12の切欠部19内に挿入された、副室インサート15のセクション20は、断面が卵形の外形とされており、副室インサート15とシリンダヘッド12との間のシール領域に位置づけられた、副室インサート15のこのセクション20の境界面21は、周方向において外側で連続的に凸状に湾曲した外形とされている(特に
図2参照)。
【0019】
シリンダヘッド12の切欠部19内に突出する、副室インサート15のセクション20の卵形の外形を通じて、シリンダヘッド12上で利用可能な設置空間は、最適に利用され、特に、副室インサート15の逆流防止バルブ17は、副室インサート15の副室16からより小さい距離に位置させられ、このため、逆流防止バルブ17と副室16との間で延在する、ガス誘導に役立つ副室インサート15の孔22は、最小長さで、従って最小体積で実現することができる。これに起因して、高い精度で、副室インサート15の副室16内にガスを導入することが可能になる。
【0020】
特に
図3から分かるように、副室インサート15は、副室インサート15とシリンダヘッド12との間のシール領域に位置づけられた境界面21上で、軸方向にオフセットされたシール23及び24、すなわち、主燃焼室14に面する下方シール24と、主燃焼室14から離れる方向に面する上方シール23と、を支持している。それにより、シリンダヘッド12の切欠部19内での副室インサート15の最適なシールが可能である。
【0021】
これらシール23及び24は、優先的にはOリングシールであり、あるいは成形シールである。
【0022】
副室インサート15におけるガス誘導に役立つ逆流防止バルブ17は、
図3によれば、副室インサート15におけるガス点火に役立つスパークプラグ18と横方向において隣り合って、且つ副室インサート15の副室16の上側で、すなわち下方シール24の下側で副室インサート15内に受容されている。
【0023】
ガス誘導に役立つガス供給孔25は、2つのシール23及び24の間のシール領域に位置づけられた副室インサート15の境界面21において切欠部又は開口部26により開いている。
【0024】
ディーゼルエンジン上では、燃料インジェクタは、類似して構成することができる。
【0025】
このような燃料インジェクタは、燃料インジェクタ、特に燃料インジェクタのインジェクタスリーブがシリンダのシリンダヘッドの切欠部内に挿入されてシリンダヘッドに対してシールされるように、ディーゼルエンジンのシリンダのシリンダヘッドに取り付け可能である。ここで、シリンダのシリンダヘッドの切欠部内に導入することができる、燃料インジェクタのセクション、特にインジェクタスリーブのセクションは、断面が卵形の外形とされ、シール領域に位置づけられた、燃料インジェクタのこのセクション、特にインジェクタスリーブのこのセクションの境界面は、周方向において外側で連続的に凸状に湾曲した外形とされている。
【符号の説明】
【0026】
10 内燃機関/ガスエンジン、11 シリンダ、12 シリンダヘッド、13 ガス交換バルブ、14 主燃焼室、15 組立体/副室インサート、16 副室、17 逆流防止バルブ、18 スパークプラグ、19 切欠部、20 セクション、21 境界面、22 孔、23 シール、24シール、25 シール、26 開口部