特許第6483840号(P6483840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483840複合部材およびこの複合部材を有する空気バネ構成モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483840
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】複合部材およびこの複合部材を有する空気バネ構成モジュール
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20190304BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20190304BHJP
   B60G 15/12 20060101ALI20190304BHJP
   F16F 9/06 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   F16F9/54
   B29C65/02
   B60G15/12
   F16F9/06
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-536326(P2017-536326)
(86)(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公表番号】特表2018-504562(P2018-504562A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2015076984
(87)【国際公開番号】WO2016110357
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】102015100281.7
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516171768
【氏名又は名称】ビブラコースティック ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフトゥング
【氏名又は名称原語表記】VIBRACOUSTIC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ,デア
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ,ヘッヒェンブライクナー
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−127682(JP,A)
【文献】 特開2010−090989(JP,A)
【文献】 特開2010−281433(JP,A)
【文献】 米国特許第06386524(US,B1)
【文献】 特開平10−196700(JP,A)
【文献】 特開2002−364469(JP,A)
【文献】 特開2004−316468(JP,A)
【文献】 特開2007−111926(JP,A)
【文献】 実開平09−000382(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
B29C 65/02
B60G 15/12
F16F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機付車両の空気バネ構成モジュール(12)であって、
第一材料で形成される第一要素(14)と、熱可塑性樹脂を含む第二材料で形成される第二要素(16)とを備え複合部材としての第一部材(10)であって、前記第二要素(16)は前記第一要素(14)を少なくとも部分的に取り囲むものと、
少なくとも部分的に熱可塑性樹脂を含む第二部材(28,42,50)とを含むか、
または、前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)と、中間部材(28,50)とを含み、ここで中間部材(28,50)は、少なくとも部分的に熱可塑性樹脂を含むスプリング・リテーナであって前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)の相互間に配置されてこれらを接続するものであり、
溶着接合領域(22a,44a,54a)が、前記第二要素(16)の箇所での前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)の相互の境界、または、前記中間部材(28,50)と前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)との境界に形成されており、
前記溶着接合領域(22a,44a,54a)のいずれもが、または、前記溶着接合領域の少なくとも一部についてのいずれもが、前記境界にある接合隙間(72)を覆い隠す溶着継ぎ目カバー(68)を備えており、
前記溶着継ぎ目カバー(68)は、前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)及び前記中間部材(28,50)のうちの、一つから延びており、これら部材(10,28,42,50)の他の一つに接触することで前記接合隙間(72)を覆い隠し、これにより、前記溶着接合領域(22a,44a,54a)には、滑らかな表面が外側に形成されるのであり、
前記溶着継ぎ目カバー(68)は、前記各溶着接合領域(22a,44a,54a)の外側にのみ形成されることで、溶着接合の際に、溶融樹脂の一部を、前記溶着接合領域の内側へと、または前記溶着接合領域の内側に逃がすことができることを特徴とする空気バネ構成モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の空気バネ構成モジュール(12)であって、インサート(26)をさらに含み、前記第一要素(14)は、このインサート(26)を受け入れて、振動ダンパのダンパ・ロッドを案内するための受入部(24)を有する空気バネ構成モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の空気バネ構成モジュール(12)であって、
前記インサート(26)は、
前記ダンパ・ロッドを案内するための案内要素(34)と、
前記受入部(24)に圧入されるフランジ要素(36)と、
前記案内要素(34)と前記フランジ要素(36)とを互いに接続する隔膜(38)と、を備える空気バネ構成モジュール。
【請求項4】
原動機付車両の空気バネ構成モジュール(12)であって、
第一材料で形成される第一要素(14)と、熱可塑性樹脂を含む第二材料で形成される第二要素(16)とを備える複合部材としての第一部材(10)であって、前記第二要素(16)は前記第一要素(14)を少なくとも部分的に取り囲むものと、
少なくとも部分的に熱可塑性樹脂を含む第二部材(28,42,50)とを含むか、
または、前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)と、中間部材(28,50)とを含み、ここで中間部材(28,50)は、少なくとも部分的に熱可塑性樹脂を含むスプリング・リテーナであって前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)の相互間に配置されてこれらを接続するものであり、
溶着接合領域(22a,44a,54a)が、前記第二要素(16)の箇所での前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)の相互の境界、または、前記中間部材(28,50)と前記第一及び第二部材(10及び28,42,50)との境界に形成されており、
前記溶着接合領域(22a,44a,54a)のいずれもが、または、前記溶着接合領域の少なくとも一部についてのいずれもが、前記境界にある接合隙間(72)を覆い隠す溶着継ぎ目カバー(68)を備えており、
インサート(26)をさらに含み、前記第一要素(14)は、このインサート(26)を受け入れて、振動ダンパのダンパ・ロッドを案内するための受入部(24)を有し、
前記インサート(26)は、
前記ダンパ・ロッドを案内するための案内要素(34)と、
前記受入部(24)に圧入されるフランジ要素(36)と、
前記案内要素(34)と前記フランジ要素(36)とを互いに接続する隔膜(38)と、を備えることを特徴とする空気バネ構成モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の空気バネ構成モジュールであって、前記第二要素(16)は、接着接合および/または噛み合せによって前記第一要素(14)に接続される空気バネ構成モジュール
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の空気バネ構成モジュールであって、前記第二要素(16)は、被覆材(20)および/または閉じ止め要素(40)として形成される空気バネ構成モジュール
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の空気バネ構成モジュールであって、前記第一要素(14)は、原動機付車両構成部分に取り付けられるフランジ部材(18)として形成される空気バネ構成モジュール
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の空気バネ構成モジュールであって、前記第一材料は、ダイカスト製アルミニウムまたはその他の金属である空気バネ構成モジュール
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の空気バネ構成モジュールであって、前記第二材料は、射出成形可能な熱可塑性樹脂材料であって、ガラス繊維またはその他の強化繊維が添加されている空気バネ構成モジュール
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の空気バネ構成モジュールであって、前記複合部材(10)は、上方部材(10,40)として形成され、接着接合によって下方部材(30,42,52)に接続されて、スプリング・リテーナ(13)を形成する空気バネ構成モジュール(12)。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の空気バネ構成モジュールであって、前記上方部材(10,40)と前記下方部材(30,52)とを接着接合によって接続する中間部材(28,50)は、前記上方部材(10,40)と前記下方部材(30,52)との間に配置される空気バネ構成モジュール(12)。
【請求項12】
原動機付車両の空気バネ構成モジュール(12)の複合部材(10)であって、
第一材料で形成される第一要素(14)と第二材料で形成される第二要素(16)とを備え、前記第二要素(16)は前記第一要素(14)を少なくとも部分的に取り囲み、
前記第二要素(16)は、第二部材(28,42,50)に接続するための少なくとも一の接合領域(22a,44a,54a)を有し、
前記接合領域(22a,44a,54a)のいずれもが、または、前記接合領域の少なくとも一部についてのいずれもが、少なくとも一の可融性突出部(66)を有し、また、前記複合部材(10)と前記第二部材(28,42,50)との境界にある接合隙間(72)を覆い隠す溶着継ぎ目カバー(68)を有しており、
前記溶着継ぎ目カバー(68)は、前記第二部材(28,42,50)へと向かって延びており、前記第二部材(28,42,50)と接合された際に、前記接合隙間(72)を覆い隠すとともに、前記第二部材(28,42,50)と噛み合い、これにより、前記接合領域(22a,44a,54a)の外側に、滑らかな表面が形成されるようにするのであり、
前記溶着継ぎ目カバー(68)は、前記各接合領域(22a,44a,54a)の外側にのみ形成されることで、溶着接合の際に、溶融樹脂の一部を、前記溶着接合領域の内側へと、または前記溶着接合領域の内側に逃がすことができることを特徴とする複合部材。
【請求項13】
請求項12に記載の複合部材(10)であって、
インサート(26)をさらに含み、前記第一要素(14)は、このインサート(26)を受け入れて、振動ダンパのダンパ・ロッドを案内するための受入部(24)を有し、
前記インサート(26)は、
前記ダンパ・ロッドを案内するための案内要素(34)と、
前記受入部(24)に圧入されるフランジ要素(36)と、
前記案内要素(34)と前記フランジ要素(36)とを互いに接続する隔膜(38)と、を備えることを特徴とする複合部材。
【請求項14】
請求項12または13に記載の複合部材(10)であって、前記第一材料は、ダイカスト製アルミニウムまたはその他の金属であり、前記第二材料は、ガラス繊維またはその他の強化繊維をさらに含むことを特徴とする複合部材。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載の複合部材(10)であって、前記第一要素(14)は、原動機付車両構成部分に取り付けられるフランジ部材(18)として形成される複合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機付車両(motor vehicle)の空気バネ構成モジュールのための複合部材に関し、特に原動機付車両の空気バネ式支持部(air spring strut)におけるスプリング・リテーナの複合部材に関する。また、本発明はこのような複合部材を有する空気バネ構成モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
空気バネは、互いに動くことのできる二つの車両構成部分間の緩衝(スプリングサスペンション)のためだけでなく、車両の高さを変更するためにも用いられる。空気バネは、ゴムで形成され、空気が充填される筒状などのゴム膜(空気バネ・ベロー)を有する。空気バネ・ベローは、上方の閉じ止め要素とピストンとを用いて気密に閉じられている。閉じ止め要素およびピストンを、一つの空気バネ構成モジュールともいうこととする。例えば車両のボディおよび/またはシャーシ(すなわち、これらの少なくとも一方)といった原動機付車両構成部分への空気バネの取り付けは、空気バネ構成モジュールを用いて行われる。なお、空気バネ構成モジュールは、互いに接合された複数の部材から構成することができる。
【0003】
また、空気バネは、空気バネ式支持部における振動ダンパと組み合わせて用いられる。したがって、空気バネはバネの機能を担い、振動ダンパは減衰器(ダンパ)の機能を担う。振動ダンパには、多くの場合、オイルが充填されたシリンダを有するテレスコピック・ショックアブソーバ(伸縮式衝撃吸収器)が用いられる。ピストンロッドは、シリンダ内へ移動し、オイルによって減衰を受ける。空気バネの端部が、振動ダンパのところに配置され、ピストンロッドに接続される。そのために、空気バネの上方の閉じ止め要素は、スプリング・リテーナとして形成されており、接続器を通じてコンプレッサに接続されている。車両構成部分への接続は、スプリング・リテーナを介して行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、空気バネ構成モジュールとその構成要素は、力の伝達のための十分な強度を有するとともに、十分な密封性を有する必要がある。
【0005】
本発明の根底をなす課題は、力の伝達のための向上した強度とともに、向上した密封性を備える、空気バネ構成モジュール用の複合部材、および空気バネ構成モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、独立請求項の特徴を有する複合部材および空気バネ構成モジュールを提案する。
【0007】
各従属請求項の対象は、複合部材および空気バネ構成モジュールについての好ましい態様である。
【0008】
原動機付車両の空気バネ構成モジュールの複合部材、特には、原動機付車両の空気バネ式支持部におけるスプリング・リテーナの複合部材は、第一材料で形成される第一要素と、第二材料で形成される第二要素とを備える。第二要素は、第一要素を少なくとも部分的に取り囲む。第一材料で形成される第一要素は、十分な強度を有しており、したがって、車両のボディーまたはシャーシなどの車両構成部分への取り付けおよび力の伝達を行うよう機能する。第二材料で形成されており、第一要素を少なくとも部分的に取り囲む第二要素は、十分な密封性を、確実に提供する。特には、複合部材についての気体漏れに対する密封性を、確実に提供する。これにより、本複合部材は空気バネの用途に好適である。複合部材は、ハイブリッド部材と呼ぶこともできる。好ましくは、複合部材は、空気バネ構成モジュールを形成するように、特にスプリング・リテーナを形成するように、他の構成部品に接続することができる。第一要素は、一体に、または、複数の別体の部分から形成されうる。
【0009】
好ましい態様において、第二要素は、接着接合によって、及び/または、噛み合い・嵌め合わせによって第一要素に接続される。好ましくは、第二要素は、第一要素を局部的および/または全体的に被覆するインサート成形によって、第一要素に接続される。このために、第一要素を、射出成形用金型中に挿入し、そして第二要素を局部的に、および/または、全体的に被覆するように射出成形を行い、接着接合によって第二要素を第一要素に接続することができる。また、第二要素を、別個の部品として製造することもでき、力を加えての摩擦による接合、噛み合せ・嵌合による接合、および/または接着接合によって、第一要素に接続することもできる。このように、第二要素は、第一要素に、押し合わせ、及び/または溶着(融着、溶接を含む)により組み合わせることができる。
【0010】
さらなる好ましい態様において、第二要素は、被覆材および/または閉じ止め要素として形成される。第二要素として形成される被覆材は、主として、第一要素上への射出によってあてがわれて、第一要素に接続される。さらに、被覆材として形成される第二要素を、第一要素上にコーティングとしてあてがうこともできる。閉じ止め要素として形成される第二要素は、好ましくは、第一要素を射出成形金型へ挿入し、そしてその周囲に第二要素を射出成形して第二要素を用いて閉じ止め要素を形成する射出成形によって製造される。こうして、第二要素は、スプリング・リテーナを閉じるカバー要素の機能を担う。
【0011】
第二要素は、第二部材への取り付けのための少なくとも一の接合領域を備えることもできる。空気バネ構成モジュールを形成するために、特にはスプリング・リテーナを形成するために、下方部材、中間部材および/または間にある部材などの第二部材は、接合領域を介して複合部材に接続される。好適には、複合部材は接着接合によって第二部材に接続される。さらに好適には、複合部材は第二部材に溶着される。溶着は、好適には、不活性雰囲気において実行される。このために、複合部材および第二部材の接合領域がまず不活性雰囲気において加熱され、次に、押し合わされる。
【0012】
好ましい態様において、接合領域は少なくとも一の可融性突出部を有する。接合領域は、第一要素の周囲への射出による第二要素の射出成形の際(インサート成形の際)に直接製造することができる。さらに、接合領域は平坦であってもよいが、三次元的であってもよい。可融性突出部には、高温気体、赤外線、集点加熱(mirror heating)および/または誘導加熱のいずれかを用いて、加熱、及び/または可塑化もしくは溶融がなされ、その後、他方の加熱及び/または可塑化がなされた接合領域と、押し合わされて固化することによって、溶着継ぎ目を形成する。
【0013】
接合領域は、好適には、第二要素および/または第一要素における、縁部、突出部、リブ、および/またはフランジその他の板状張り出し部の少なくとも一つから構成される。好ましくは、接合領域は、複数の縁部、突出部、リブ、および/または板状張り出し部から構成される。リブおよび/または板状張り出し部により、複合部材の十分な安定性と剛性が確保される。さらに、好適には、リブおよび/または板状張り出し部は、筐体壁から径方向内側および/または外側へ突出する。こうして、接合領域と接続箇所とが、いずれも、部材の外周および内周上に配置されるよう、部材を形成することができる。板状張り出し部および/またはリブは、基本的に略T字形状を有することができる。これにより、接合領域の表面積を大きくできる。
【0014】
好ましい態様において、第一要素は、原動機付車両部品への取り付けのためのフランジ部材として設計される。力は、フランジ部材を介して原動機付車両構成部分に伝達される。
【0015】
さらに好適には、第一要素は、振動ダンパのダンパ・ロッドを案内するためのインサートを受け入れるための受入部を有する。好適には、インサートは、受入部に圧入可能なフランジ部材と、ダンパ・ロッドを案内する案内要素と、フランジ部材と案内部分とを互いに接続する隔壁と、を備える。第二要素は、好ましくは、受入部を封止する目的のために配置される。さらに、好適には、第二要素は、第一要素と、受入部に圧入されるインサートとの間に配置される。
【0016】
第一材料を、金属で、特にアルミニウム・ダイカストで構成できる。アルミニウム・ダイカストで構成されるフランジ部材は、力の伝達のための十分な強度を有する。さらに、第一材料を鋼とすることもできる。第一要素は、深絞り品または旋盤加工品であってもよい。
【0017】
好ましい態様において、第二材料は、熱可塑性樹脂材料である、特に射出可能な熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂により、金属から、特にはダイカスト製アルミニウムから製造された第一要素に、十分な密封性を確保できる。好ましくは、PA 66 GF 30(ナイロン66,30%ガラス繊維)が熱可塑性樹脂材料として用いられる。
【0018】
本発明はさらに、互いに接着接合によって接続される、上述の複合部材と、少なくとも一の第二部材とを有する空気バネ構成モジュールに関する。これにより、車両構成部分への力の伝達のために、十分な密封性とともに十分な剛性を有する空気バネ構成モジュールが、特には原動機付車両のエアサスペンション式支持部における空気バネのためのスプリング・リテーナが提供される。エアサスペンション式支持部は好ましくは、空気バネと、振動ダンパとを備える。こうして、空気バネはバネの機能を担い、振動ダンパはダンパの機能を担う。伸縮式振動ダンパには、多くの場合、オイルが充填されたシリンダを有する振動ダンパが用いられる。ピストンロッドは、シリンダ内へ移動し、オイルによって減衰を受ける。空気バネの端部が、振動ダンパのところに配置され、ピストンロッドに接続される。車両構成材への接続は、空気バネを介して、特にはスプリング・リテーナを介して行われる。
【0019】
好ましい態様において、接着接合は、不活性雰囲気にて、部材の接合領域について加熱および/または溶融を行い、その後押し合わせることによって行われる。不活性雰囲気にて二つの部品の接着接合を行うことにより、圧力を保持する空気バネ構成モジュールが、十分な密封性、強度、および接続領域または接合領域の部分における温度安定性ならびに耐経年劣化性を有しうる。さらに、不活性雰囲気にて接着接合を行うことにより、接合領域または接続領域の設計に大きな自由度を確保できる。接合領域を、部材の外周側、特には縁部と、部材の内側との両方に配置することができる。なお、接合領域は、平坦に構成されてもよく、三次元的な形状を有してもよい。また、接合領域についての後処理を不要にできるという利点がある。さらに、不活性雰囲気により、接合領域を汚染から保護することができる。接合される領域の酸化および/または反応が防止されるからである。これにより、溶着継ぎ目は高い強度と密封性を有する。
【0020】
好ましい態様において、加熱は、高温気体、赤外線、集点加熱および/または誘導加熱を用いて行われる。好適には、加熱は、対応する密閉ケーシング中にて、真空で行われるか、または不活性作業気体、特には窒素を用いて行われる。
【0021】
好ましい態様において、部材の少なくとも一方は、接合隙間を覆う溶着継ぎ目カバーを有する。さらに、好適には、溶着継ぎ目カバーは、複合部材および/または第二部材から突出するとともに、複合部材および/または第二部材の対応する凹部内に配置される。
【0022】
溶着継ぎ目カバーは、好適には、周方向に延びる被覆リップとして形成される。ここで、被覆リップは、部材の一方から、好ましくはその筐体壁から突出する。二つの部材を押し合わせる際に、被覆リップは他方の部材またはその筐体壁と接触し、その結果、接合の際の隙間を覆う。このように、被覆リップにより、押圧の際に、可塑化されたまたは溶融された接合領域が漏れ出るのを防止する。その結果、費用のかかる溶着継ぎ目の後処理を行う必要がなくなる。空気バネ構成モジュールの外面がきれいに仕上がるからである。さらに、好適には、溶着継ぎ目カバーは、先端に向かって先細りになるとともに、押し合わせの際に、他方の部材上の対応する面取り部と噛み合わされる被覆リップとして構成される。このように、できるだけ広範囲に滑らかな外面が形成されるという利点がある。
【0023】
好ましい態様において、複合部材は、上方部材として形成され、接着接合によって下方部材に接続されて、スプリング・リテーナを構成する。さらに、好適には、中間部材が、上方部材と下方部材との間に配置され、スプリング・リテーナを形成するよう接着接合によって上方部材と下方部材とに接続される。これにより、切り替え可能な空気バネを実現できる。好適には、下方部材および/または中間部材は、金属で、または熱可塑性樹脂材料で、特にはガラス繊維強化プラスチックで、形成される。好ましくはPA66 GF30が熱可塑性樹脂材料として用いられる。プラスチックで形成される部材は、軽量化に貢献でき、その結果、燃費向上に寄与できる。また金属としては、比較的軽量なアルミニウムが好ましくは用いられる。
【0024】
次に、複合部材および空気バネ構成モジュールを添付の図面を参照しながら説明する。以下に図面を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】スプリング・リテーナとして形成された空気バネ構成モジュールの第一実施形態にかかる複合部材の縦断面図である。
図2図1に示した複合部材を有する第一実施形態にかかるスプリング・リテーナとして形成された空気バネ構成モジュールの縦断面図である。
図3】複合部材の第一要素の斜視図である。
図4図3に示した第一要素を有する、第二実施形態にかかる複合部材の斜視図である。
図5図4に示した複合部材を有する、第二実施形態にかかるスプリング・リテーナとして形成された空気バネ構成モジュールの個々の部材の斜視図である。
図6図5に示した空気バネ構成モジュールについての、それぞれ接合領域を有する部材の斜視図である。
図7図4に示した複合部材を有する、第三実施形態にかかるスプリング・リテーナとして形成された空気バネ構成モジュールの個々の部材の斜視図である。
図8】それぞれ接合領域を有する、図5に示した複合部材および中間部材の斜視図である。
図9】それぞれ接合領域を有する、図5に示した中間部材および下方部材の斜視図である。
図10】第一実施形態にかかる接合領域を通る縦断面についての拡大断面図である。
図11】第二実施形態にかかる接合領域を通る縦断面についての拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、第一実施形態にかかる複合部材10を縦断面図で示す。複合部材10は、図2に示す空気バネ構成モジュール12にて用いられる。空気バネ構成モジュール12は、原動機付車両の空気バネ支持部の空気バネのためのスプリング・リテーナ13として形成される。
【0027】
ハイブリッド部材とも呼ばれている複合部材10は、第一材料で形成された第一要素14と第二材料で形成された第二要素16とを有する。
【0028】
第一要素14は、原動機付車両部品(図示せず)への取り付けのために構成されたフランジ部材18であり、金属で特にアルミニウム・ダイカストで形成されている。さらに、第一要素14は、原動機付車両部品(図示せず)への取り付けのための取り付け部23と、図2に示すインサート26を受け入れるための受入部24と、を有する。
【0029】
第二要素18は、第一要素14を部分的に取り囲む被覆材20として形成される。第二要素18は、PA 66 GF 30(ナイロン66,30%ガラス繊維)などの熱可塑性樹脂で形成されている。被覆材20は、接着接合によってフランジ部材18に接続される。このために、フランジ部材18は射出成形金型(図示せず)に挿入され、熱可塑性樹脂が射出成形される。被覆材20により、フランジ部材18の十分な密封性が確保される。したがって、複合部材10は空気バネの用途に適している。さらに、第二要素18は、第二部材への取り付けのための接合領域22aを有する。接合領域22aは、第二要素16を射出成形する際に、第一要素14の周りに形成される。接合領域22aは、平坦であってもよく、また三次元的であってもよい。
【0030】
図2に示す空気バネ構成モジュール12は、複合部材10と、中間部材28と、下方部材30とを有する。これらは、接着接合によって、スプリング・リテーナ13をなすように接続される。中間部材28および下方部材30は、樹脂材料により、特には、例えばPA 66 GF 30など熱可塑性樹脂材料により形成されている。中間部材28は、第二接合領域22bに対応する接合領域22aを有する。さらに、中間部材28は、下方部材30の対応する接合領域32bに接続される他の接合領域32aを有する。空気バネ構成モジュール12の部材10,28,30の接着接合による接続は、接合領域22a,22b,32a,32bを介して行われる。このように、部材10,28,30は、接合領域22a,22b,32a,32bに加熱および/または溶融もしくは可塑化を行い、その後一押し合わせることによって、互いに接合される。接合領域22a,22b,32a,32bが固まった後に、部材10,28,30は、溶着継ぎ目(図示せず)を形成することによって、接着接合により互いに接続される。高温気体溶着においては、高温気体によって、接合領域22a,22b,32a,32bに加熱および/または溶融もしくは可塑化が行われる。その場合、好ましくは窒素が作用気体として用いられる。
【0031】
さらに、インサート26が受入部24に圧入される。受入部24には、適切な密封性を確保するために被覆材20が配置される。インサート26は、ダンパ・ロッド(図示せず)を案内するための案内要素34と、受入部24に圧入されるフランジ要素36と、案内要素34とフランジ要素36とを互いに接続する隔壁32と、を備える。
【0032】
フランジ部材18としてアルミニウム・ダイカストで形成された第一要素14の第二実施形態を、図3に示す。第一要素14は、第二実施形態にかかる図4に示す複合部材10として用いられる。複合部材10の第二実施形態は、第二要素16の構成において、第一実施形態と異なる。第二要素16は、スプリング・リテーナ13の上方部材40として形成され、接着接合によってフランジ部材18に接続される。このために、フランジ部材18は射出成形金型(図示せず)に挿入され、上方部材40を形成するようプラスチックが射出成形される。
【0033】
図4に示す複合部材10と下方部材42とを有する第二実施形態にかかる空気バネ構成モジュール12を、図5に示す。複合部材10および下方部材42は、接着接合によって互いに接続される。図6に示す通り、複合部材10は第一接合領域44aを有する。また、下方部材42はそれに対応する第二接合領域44bを有する。両方の接合領域44a,44bは、縁部46a,46bと円形部48a,48bとから形成される。接合領域44a,44bは、高温気体溶着によって接着接合により互いに接続される。
【0034】
スプリング・リテーナ13として形成される空気バネ構成モジュール12の第三実施形態を、図7に示す。空気バネ構成モジュール12は、接着接合によって互いに接続される、図4に示す複合部材10と中間部材50と下方部材52とを有する。図8に示す通り、複合部材10は接合領域54aを有する。また、中間部材68はそれに対応する接合領域54bを有する。接合領域54a,54bのそれぞれは、縁部56a,56bと、円形部ないし丸形部58a,58bと、突出部60a,60bとから形成される。図9に示す通り、中間の部材50は、さらに他の接合領域62aを有する。また、下方部材52は、それに対応する接合領域62bを有する。接合領域62a,62bは、縁部64a,64bから形成される。
【0035】
縁部46a,46b,56a,56bの領域における接合領域22a,22b,32a,32b,44a,44b,54a,54b,62a,62bの第一実施形態を通る縦断面図の拡大断面図を図10に示す。接合領域22a,22b,32a,32b,44a,44b,54a,54b,62a,62bのそれぞれは、可融性突出部66(図10の左側に図示)を有する。さらに、溶着継ぎ目カバー68が、接合領域22a,22b,32a,32b,44a,44b,54a,54b,62a,62bの一つから突出する。可融性突出部66は、高温気体、赤外線、集点加熱(mirror heating)および/または誘導加熱(インダクション)によって加熱され、かつ/または溶融もしくは可塑化され、そして一体に押圧されて、これにより、溶着継ぎ目70(図10の右側に図示)が形成される。二つの部材を一体に押圧する際に、溶着継ぎ目カバー68は別の部品と接触し、その結果、接合隙間72を覆う。これにより、溶融物が漏れ出ることがなく、したがって、きれいな外面が形成される。
【0036】
接合領域22a,22b,32a,32b,44a,44b,54a,54b,62a,62bの第二実施形態を通る縦断面図の拡大断面図を図11に示す。第一実施形態と異なり、第二実施形態の接合領域22a,22b,32a,32b,44a,44b,54a,54b,62a,62bは、溶着継ぎ目カバー68がテーパ状被覆材リップ74(図11の左側に図示)として形成される。テーパ状被覆材リップ74は、押し合わされた後、第二部材の面取り部76と噛み合い、接合隙間72を覆う。これにより、滑らかな表面が外側に形成される。
【0037】
複合部材10は、アルミニウム・ダイカストで形成されるフランジ部材18と、熱可塑性樹脂材料で形成され、フランジ部材18を少なくとも部分的に取り囲む第二要素16と、の組み合わせを特徴とする。原動機付車両構成部分への取り付けおよび力の伝達は、フランジ部材18を介して実行される。また、第二要素16により、アルミニウム・ダイカストで形成されるフランジ部材18の十分な密封性が確保される。その結果、複合部材10を、空気バネ式支持部のスプリング・リテーナ13などの空気バネ構成モジュールに用いることができる。さらに、第二要素18は、スプリング・リテーナ13を形成するよう、複合部材10をさらに他の部品28,30,42,50,52に接着接合によって接続するための接合用の幾何学的形状を有する。
【符号の説明】
【0038】
10 複合部材
12 空気バネ構成モジュール
13 スプリング・リテーナ
14 第一要素
16 第二要素
18 フランジ部材
20 被覆材
22a 接合領域
22b 接合領域
23 取り付け部
24 受入部
26 インサート
28 中間部材
30 下方部材
32a 接合領域
32b 接合領域
34 案内要素
36 フランジ部材要素
38 隔壁
40 上方部材
42 下方部材
44a 接合領域
44b 接合領域
46a 縁部
46b 縁部
48a 円形部
48b 円形部
50 中間部材
52 下方部材
54a 接合領域
54b 接合領域
56a 縁部
56b 縁部
58a 円形部
58b 円形部
60a 突出部
60b 突出部
62a 接合領域
62b 接合領域
64a 縁部
64b 縁部
66 突出部
68 溶着継ぎ目カバー
70 溶着継ぎ目
72 接合の際の隙間
74 被覆リップ
76 面取り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11