(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
〔第1の態様に係る光拡散性樹脂組成物の成形体〕
本発明の第1の態様に係る光拡散性樹脂組成物の成形体は、熱可塑性樹脂と、その中に分散している体積平均粒子径が1〜100μmの透明粒子とを含む光拡散性樹脂組成物の成形体(以下、単に「成形体」と称する)であって、全光線透過率が85%以上であり、前記成形体表面に対してその法線方向から光を当てたときに、光透過率が直進光透過率の50%になる透過角として定義される分散度が20°以下であり、波長410nm〜500nmの平均直進光透過率が、波長500nm〜600nmの平均直進光透過率よりも大きい。
【0023】
前記成形体は、410nm〜500nmの平均直進光透過率が500nm〜600nmの平均直進光透過率よりも大きければよいが、410nm〜500nmの平均直進光透過率をT1、500nm〜600nmの平均直進光透過率をT2とすると、T1−T2は、0.5%以上であることが好ましく、0.9%以上であることがより好ましい。
【0024】
後述の算出方法により測定された波長435〜480nm(青色領域)、波長500〜560nm(緑色領域)、及び波長610〜750nm(赤色領域)における平均直進光透過率をそれぞれB、G、及びRとし、
後述の算出方法により測定された波長580〜595nm(黄色領域)における平均直進光透過率をYとすると、Yに対するB、G、及びRの大きさは、B>Yであることが好ましく、B>YかつG>Yであることがより好ましい。これにより、透過光を青色又は緑色に着色することができる。
【0025】
前記成形体の全光線透過率は、85%以上であればよいが、90%以上であることが好ましく、91.5%以上であることがより好ましい。これにより、光源からの出射光のより多くが成形体を透過する。従って、光源の光路に配設されたときの光源光の明るさの低下をさらに抑制できる。従って、前記成形体を用いて、さらに明るい光源光を出力可能な、光源を備える装置(照明等)を実現できる。
【0026】
前記成形体の分散度は、20°以下であればよいが、16°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましく、7°以下であることがさらに好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。前記成形体の分散度は、1°以上であることが好ましく、1.5°以上であることがより好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。
【0027】
前記成形体は、波長380〜800nmの分光透過率の極大点が波長380〜500nmの範囲内にあることが好ましい。これにより、透過光を青紫色〜黄緑色に着色する効果をより高めることができる。
【0028】
前記成形体は、本願発明の光学効果を発現する条件であれば、その形状及び厚みに特に制限はないが、0.5〜3mmの範囲内の厚みを有する光拡散板(板状の成形体)であることが好ましく、1〜3mmの範囲内の厚みを有することがより好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。前記成形体がLED電球や直管型LED等のLED照明に使用される板状のLED照明用光拡散カバー(光拡散板の1種)である場合、LED電球や直管型LEDの軽量化が望まれていることから、前記板状のLED照明用光拡散カバーの厚み(板厚)は1〜2mmの範囲内であることがより好ましい。
【0029】
前記LED照明用光拡散カバーの大きさ及び形状は、特に制限されず、例えば、LED電球、直管型LED照明、LEDデスクスタンド、LEDシーリングライト等のLED照明の発光部(LED照明用光拡散カバー以外の部分)の大きさ及び形状に合わせればよい。
【0030】
〔透明粒子〕
前記透明粒子は、光透過性を有する粒子であればよい。前記透明粒子は、均一な屈折率を有する粒子(例えば、単一の材質からなる粒子や、同一の屈折率を有するコア及びシェルからなるコア・シェル型粒子)であってもよいし、屈折率が異なる複数の部分から構成される粒子(例えば、異なる屈折率を有するコア及びシェルからなるコア・シェル型粒子)であってもよい。
【0031】
前記透明粒子の体積平均粒子径は、1〜100μmであればよいが、2〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。また、前記透明粒子の体積平均粒子径は、4.5〜9μmであることが特に好ましい。これにより、透過光を青紫色〜黄緑色に着色できる。また、前記透明粒子の体積平均粒子径は、4.5μm以上7μm以下であってもよい。これにより、透過光を青色に着色できる。また、前記透明粒子の体積平均粒子径は、
7μm超9μm以下であってもよい。これにより、透過光を黄緑色に着色できる。
【0032】
また、前記透明粒子が均一な屈折率を有する粒子である場合、前記透明粒子の体積平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。前記透明粒子の体積平均粒子径を上記範囲内に制御することで、全光線透過率がさらに高く、かつ光拡散性にさらに優れた成形体を実現できる。また、前記透明粒子が均一な屈折率を有する粒子である場合、前記透明粒子の体積平均粒子径は、4.5〜9μmであることが特に好ましい。これにより、透過光を青紫色〜黄緑色に着色できる。
【0033】
また、前記透明粒子が異なる屈折率を有するコア及びシェルからなるコア・シェル型粒子であり、前記シェルの屈折率が前記熱可塑性樹脂の屈折率とほぼ等しい場合、前記コアの体積平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。前記コアの体積平均粒子径を上記範囲内に制御することで、全光線透過率がさらに高く、かつ光拡散性にさらに優れた成形体を実現できる。また、前記コアの体積平均粒子径は、4.5〜9μmであることが特に好ましい。これにより、透過光を青紫色〜黄緑色に着色できる。
【0034】
前記透明粒子の屈折率は、熱可塑性樹脂の屈折率と異なっていればよいが、熱可塑性樹脂の屈折率との屈折率差が0.01〜0.2の範囲内であることが好ましく、熱可塑性樹脂の屈折率との屈折率差が0.02〜0.1の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
前記透明粒子の屈折率を前記熱可塑性樹脂の屈折率との屈折率差が0.02〜0.1の範囲内となるようにするには、前記熱可塑性樹脂としてのポリカーボネート樹脂(典型的には屈折率が1.58)を用いた場合、前記透明粒子として、架橋(メタ)アクリル系樹脂(典型的には屈折率が1.49)や架橋(メタ)アクリル−スチレン共重合体(典型的には屈折率が1.50〜1.58)等からなる透明粒子を用いればよい。前記透明粒子の屈折率を前記熱可塑性樹脂の屈折率との屈折率差が0.02〜0.1の範囲内となるようにするには、前記熱可塑性樹脂としての(メタ)アクリル系樹脂(典型的には屈折率が1.49)を用いた場合、前記透明粒子として、架橋スチレン系樹脂(典型的には屈折率が1.59)や架橋(メタ)アクリル−スチレン共重合体(典型的には屈折率が1.50〜1.58)、シリコーン系樹脂(典型的には屈折率が1.43)、シリカ粒子(典型的には屈折率が1.43)等からなる透明粒子を用いればよい。
【0036】
前記透明粒子の体積平均粒子径をD(μm)、前記透明粒子の屈折率をn
P、前記熱可塑性樹脂の屈折率をn
Aとすると、D×(n
P−n
A)が、0.3以上であることが好ましく、0.35以上であることがより好ましい。これにより、透過光を青紫色〜黄緑色に着色する効果をより高めることができる。D×(n
P−n
A)は、0.4以上であることがさらに好ましく、0.45以上であることが特に好ましい。これにより、透過光を青色〜黄緑色に着色することができる。また、D×(n
P−n
A)は、D×(n
P−n
A)は、2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。これにより、透過光の着色効果をより高めることができる。
【0037】
また、前記透明粒子の粒子径の変動係数は、15%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。また、前記透明粒子の粒子径の変動係数は、
5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましい。これにより、効率的に製造可能な成形体を実現できる。
【0038】
前記透明粒子の材質(透明粒子を構成する物質)としては、例えば、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、これらの共重合体等の合成樹脂;シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機物等が挙げられる。これらの材質のうち、合成樹脂が好適であり、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂、及びこれらの共重合体(架橋(メタ)アクリル−スチレン共重合体)、並びにシリコーン系樹脂がさらに好適であり、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂、及びこれらの共重合体がより一層好適である。架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂、及びこれらの共重合体のうちで、紫外線による変色を回避できることから、単官能スチレン系単量体に由来する構造単位を含まない架橋(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。前記熱可塑性樹脂がポリカーボネートである場合には、架橋(メタ)アクリル系樹脂が最も好適である。これら透明粒子は、1種のみを用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」はメタクリル又はアクリルを意味するものとする。
【0039】
前記透明粒子が、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂、これらの共重合体等のような、架橋性単量体(2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物)を含むビニル系単量体(少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物)の重合体からなる場合、前記重合体は、架橋性単量体に由来する構造単位を、1〜50重量%含むことが好ましく、5〜30重量%含むことがより好ましい。前記の範囲である場合、透明粒子中に高いレベルで3次元的な網目構造を構築することができ、その結果、光拡散性により優れた成形体を実現できる。
【0040】
前記架橋性単量体としては、例えば、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリス
リトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系多官能単量体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンおよびこれらの誘導体である芳香族ビニル系多官能単量体が挙げられる。これら架橋性単量体は2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はメタクリレート又はアクリレートを意味するものとする。
【0041】
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂は、単官能(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の重合体である。上記単官能(メタ)アクリル系単量体としては、1つのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。これら単官能(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
前記
架橋スチレン系樹脂は、単官能スチレン系単量体を含む単量体混合物の重合体である。上記単官能スチレン系単量体としては、1つのエチレン性不飽和基を有するスチレン類であれば特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これら単官能スチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、架橋(メタ)アクリル系樹脂及び架橋スチレン系樹脂の共重合体は、上記単官能(メタ)アクリル系単量体及び上記単官能スチレン系単量体を含んでいる。
【0043】
前記透明粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状であることが好ましい。前記透明粒子は、成形体全体にわたって均一に熱可塑性樹脂中に分散させてもよく、熱可塑性樹脂の入光面側及び/又は出光面側に透明粒子の層として設けてもよい。
【0044】
前記成形体における透明粒子の含有量は、本願発明の光学効果を発現する条件であれば特に限定されないが、0.1〜1.8重量%の範囲内であることが好ましく、0.2〜1.5重量%の範囲内であることがより好ましい。前記成形体における透明粒子の含有量は、0.1〜1重量%の範囲内であることがさらに好ましい。これらにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。
【0045】
〔熱可塑性樹脂〕
前記熱可塑性樹脂は、全光線透過率が85%以上の成形体を実現できる程度の透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂;アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルの単独重合体又は共重合体、塩化ビニルの単独重合体又は共重合体、塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂(ポリアクリル酸エステル)及びその共重合樹脂、メタクリル樹脂(ポリメタクリル酸エステル)及びその共重合樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂);ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;線状ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0046】
前記成形体は、色素を含まないことが好ましい。これにより、全光線透過率の高い成形体を実現できる。
【0047】
〔第2及び第3の態様に係る光拡散性樹脂組成物の成形体〕
本発明の第2の態様に係る光拡散性樹脂組成物の成形体は、熱可塑性樹脂と、その中に分散している体積平均粒子径が1〜100μmの透明粒子とを含む光拡散性樹脂組成物の成形体であって、前記透明粒子の体積平均粒子径が4.5μm以上7μm以下であり、前記透明粒子の粒子径の変動係数が5〜15%であり、前記熱可塑性樹脂の屈折率と前記透明粒子の屈折率との差が0.02〜0.1であり、前記成形体における透明粒子の含有量が0.1〜1重量%であり、前記成形体の厚みが1〜3mmである。
【0048】
本発明の第3の態様に係る光拡散性樹脂組成物の成形体は、熱可塑性樹脂と、その中に分散している体積平均粒子径が1〜100μmの透明粒子とを含む光拡散性樹脂組成物の成形体であって、前記透明粒子の体積平均粒子径が7μm超9μm以下であり、前記透明粒子の粒子径の変動係数が5〜15%であり、前記熱可塑性樹脂の屈折率と前記透明粒子の屈折率との差が0.02〜0.1であり、前記成形体における透明粒子の含有量が0.1〜1重量%であり、前記成形体の厚みが1〜3mmである。
【0049】
本発明の第2及び第3の態様に係る成形体は、410nm〜500nmの平均直進光透過率が500nm〜600nmの平均直進光透過率よりも大きいことが好ましく、410nm〜500nmの平均直進光透過率をT1、500nm〜600nmの平均直進光透過率をT2とすると、T1−T2は、0.5%以上であることがより好ましく、0.9%以上であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の第2及び第3の態様に係る成形体の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、91.5%以上であることがさらに好ましい。これにより、光源からの出射光のより多くが成形体を透過する。従って、光源の光路に配設されたときの光源光の明るさの低下をさらに抑制できる。従って、前記成形体を用いて、さらに明るい光源光を出力可能な、光源を備える装置(照明等)を実現できる。
【0051】
本発明の第2及び第3の態様に係る成形体の分散度は、20°以下であることが好ましく、16°以下であることがより好ましく、10°以下であることがさらに好ましく、7°以下であることが最も好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。本発明の第2及び第3の態様に係る成形体の分散度は、1°以上であることが好ましく、1.5°以上であることがより好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。
【0052】
また、本発明の第2及び第3の態様に係る成形体における前記透明粒子の粒子径の変動係数は、13%以下であることが好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。また、前記透明粒子の粒子径の変動係数は、7%以上であることが好ましい。これにより、効率的に製造可能な成形体を実現できる。
【0053】
本発明の第2及び第3の態様に係る成形体における透明粒子の含有量は、0.2〜1重量%の範囲内であることが好ましい。これにより、透過光の着色効果にさらに優れた成形体を実現できる。本発明の第2及び第3の態様に係る成形体は、他の点については本発明の第1の態様に係る成形体と同様である。
【0054】
〔照明カバー〕
本発明の照明カバーは、本発明の光拡散性樹脂組成物の成形体からなるものである。本発明の照明カバーは、照明カバーが取り付けられた照明器具により物体を照らしたときに色くすみを抑制することができる。
【0055】
本発明の成形体は、例えば、蛍光灯、発光ダイオード(LED)等の各種光源を用いた照明器具における光源を覆う照明カバーであって、透過光を着色して意匠性を照明器具に付与できる照明カバーとして使用することができる。本発明の成形体の形状は、特に限定されず、その用途により種々の形状とすることができる。例えば、本発明の成形体が照明カバーとして使用される場合、その成形体の形状は、半円筒形状、円筒状、平板形状、ドーム形状(半球形状)、洋梨形状、蝋燭の炎の形に類似した形状等とされ得る。前記照明カバーと共に照明器具に使用される光源については、その光量は特に限定されず、自動車内壁面に設置される車内用照明のような小光量光源から、水銀灯や水銀灯代替LEDのような大光量光源まで幅広く使用できる。
【0056】
〔スポットライトの前面板〕
本発明のスポットライトの前面板は、本発明の光拡散性樹脂組成物の成形体からなるものである。本発明のスポットライトの前面板は、スポットライトにより物体を照らしたときに色くすみを抑制することができる。
【0057】
以下、
図3を参照して、本発明の実施の一形態に係るスポットライトの前面板について説明する。
図3は、本発明の実施の一形態に係る前面板を利用したスポットライトの一実施形態を示す断面図である。
スポットライト10は、
図3に示すように、凹面鏡12と、LEDユニット14と、本発明の実施の一形態に係る前面板16と、口金22と、給電回路24とを備えている。
【0058】
凹面鏡12は、その内側表面に光反射面26が形成された椀状の部材であり、LEDユニット14から放射された光を外部へ放出する出光開口27を有している。光反射面26の形状は特に限定されるものではないが、回転楕円面を含む回転面、とりわけ凹面鏡12の内側に焦点Fを有する回転放物面(パラボラ)にするのが好適である。また、凹面鏡12の材質も特に限定されるものではないが、LEDユニット14からの熱を効率的に放熱する観点から、熱伝導率の高い材質(例えば、アルミニウム)を用いるのが好適である。さらに言えば、凹面鏡12は、その外形状も光反射面26と同様に湾曲したものになっているが、凹面鏡12の外形状は特に限定されるものではなく、例えば、凹所を有する直方体(ブロック)を使用し、その凹所を光反射面26としてもよい。また、ファセットを用いて光反射面26を多面形成してもよい。
【0059】
LEDユニット14は、LED28と、LED保持部材30と、マウント部材32とを備えている。
【0060】
LED28は、給電回路24からの電力を受けて光を放射する半導体であり、本実施形態では、凹面鏡12の内側に収容されているとともに、LED保持部材30に取り付けられている。また、本実施形態では、LED素子が直接基板上のパターンに実装されたCOB(=Chip On Board)タイプのLEDが使用されているが、LED保持部材30の表面に回路パターンを形成してLED素子を実装してもよい。また、1つのスポットライト10に使用されるLED28の数は、
図3の例では1個であるが、特に限定されるものではなく、ハロゲン照明の代替として用いることができる程度の光束を放射するのに適した数が選択される。
【0061】
LED保持部材30は、矩形の板状材であり、当該LED保持部材30の
表面に取り付けられたLED28を所定の位置で保持する役割を有している。また、当該LED保持部材30を熱伝導率の良い材料(例えばアルミニウム)で構成することにより、LED28で生じた熱を効率よく放熱できる点で好適である。
【0062】
マウント部材32は、LED保持部材30の一端部に取り付けられた部材である。このマウント部材32も熱伝導率の良い材料で構成するのが好適である。なお、LED保持部材30とマウンド部
材32とを本実施形態のように別個ではなく、一体的に形成してもよい。
【0063】
前面板16は、凹面鏡12の出光開口27に配設された部材であり、本実施形態では、出光開口27の全体を覆うようになっているが、出光開口27の一部を占めるだけの前面板16であってもよい。前面板16は、LED28からの光を拡散させつつ透過させるようになっている。前面板16の拡散特性は、スポットライト10からの光を所望の配光特性にするための重要な要素であることから、LED28から放射され、光反射面26で反射した光の配光特性を考慮して適切な拡散特性の前面板16が使用される。
【0064】
口金22は、前面板16とは反対側の端に取り付けられた部材であり、E17やE11といった所定の形式/形状にて形成されており、既存の照明器具にねじ込まれる。
【0065】
給電回路24は、口金22に供給された一般電力をLED28に適した電圧/電流に変換した上でLED28に供給するための回路であり、口金22およびLED28との間は、図示しないリード線等によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0066】
〔成形体の他の用途〕
また、本発明の成形体は、透過光を着色できるので、意匠性が付与された採光材(例えば窓ガラス)、意匠性が付与された棚板、意匠性が付与された(透光性の)パーティション、植物栽培用温室の窓材などとしても使用できる。
【0067】
〔パーティション〕
本発明のパーティションは、本発明の成形体を含んでいる。本発明のパーティションは、透過光を青色や黄緑色に着色できるため、落ち着いた雰囲気の空間を演出することができる。
【0068】
本発明のパーティションは、本発明に係る光拡散性樹脂組成物の板状の成形体(光拡散板)を備えている。板状の成形体を製造する方法としては、射出成形により比較的小型の板状の成形体を製造する方法の他、Tダイ押出成形などの押出成形により大型の板状の成形体を製造する方法等も用いることができる。
【0069】
以下、
図4を参照して本発明の実施の一形態について説明する。
図4は、本発明の実施の一形態に係るパーティションを示す斜視図である。
本実施形態のパーティション51は、室内の床面と天井との間に垂直に設置される2本の支柱52a及び52bと、支柱52a及び52bの天井よりもやや下の位置及び床面よりもやや上の位置にそれぞれ水平に掛け渡された2本のバー53a及び53bと、支柱52a及び52bの間に、かつバー53a及び53bの間に嵌め込まれた、格子状に配された本発明の成形体からなる複数枚の光拡散板54を備えている。
図4の例では、光拡散板54は、縦方向に4枚並び、横方向に2枚並ぶように計8枚配されているが、光拡散板54の枚数は、特に限定されるものでなく、適宜変更すればよい。
【0070】
〔採光材〕
本発明の採光材は、本発明の成形体を含んでいる。本発明の採光材は、採光性が良好で、かつ適度な光拡散性を持つため、例えば、テラス、ベランダ、カーポート、植物栽培用温室の屋根材や側板として用いた場合、曇天時や降雨時でも、充分な明るさを確保でき、かつ光拡散性を有しているので、採光材を介して太陽を直視しても眩しくなく、さらに透過光を青色や黄緑色に着色できるため、落ち着いた雰囲気の空間を演出することができる。従って、本発明の採光材は、テラス、ベランダ、カーポート等の屋根材や側板として好適に使用することができる。
【0071】
本発明の採光材は、本発明に係る光拡散性樹脂組成物の板状の成形体(光拡散板)を備えている。板状の成形体を製造する方法としては、射出成形により比較的小型の板状の成形体を製造する方法の他、Tダイ押出成形などの押出成形により大型の板状の成形体を製造する方法等も用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
まず、以下の実施例及び比較例で使用する透明粒子の体積平均粒子径、粒子径の変動係数、及び屈折率の測定方法と、以下の実施例及び比較例で得られた成形体に関する各種特性の評価又は測定の方法を説明する。
【0074】
〔透明粒子の体積平均粒子径の測定方法〕
透明粒子の体積平均粒子径は、孔径20〜400μmの細孔に電解質溶液を満たし、当該電解質溶液を粒子が通過する際の電解質溶液の導電率変化から体積を求めることによって、計算した。具体的には、透明粒子の体積平均粒子径は、コールター方式精密粒度分布測定装置「マルチサイザーIII」(ベックマンコールター株式会社製)を用いて測定した体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)である。なお、測定に際しては、Coulter Electronics Limited発行の「
REFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER」(1987)に従って、測定する粒子の粒子径に適合したアパチャーを用いて「マルチサイザーIII」のキャリブレーションを行い、測定する。
【0075】
具体的には、透明粒子0.1gを0.1重量%ノニオン系界面活性剤溶液10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて分散させて分散液とする。「マルチサイザーIII」本体に備え付けの、測定用電解液「ISOTON(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)を満たしたビーカー中に、前記分散液を緩く攪拌しながらスポイトで滴下して、「マルチサイザーIII」本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次に、「マルチサイザーIII」本体に、アパチャーサイズ(径)、Current(アパチャー電流)、Gain(ゲイン)、Polarity(内側電極の極性)をCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って入力し、manual(手動モード)で体積基準の粒度分布を測定する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、透明粒子10万個の粒度分布を測定した時点で測定を終了する。透明粒子の体積平均粒子径は、測定した10万個の透明粒子の粒子径の平均値であり、体積基準の粒度分布における算術平均径を意味する。
【0076】
〔透明粒子の粒子径の変動係数の算出方法〕
透明粒子の粒子径の変動係数(以下「CV値」と称する)を、前述の体積基準の粒度分布の測定を行った際の標準偏差(σ)および体積平均粒子径(x)から、以下の式により算出する。
【0077】
CV値(%)=(σ/x)×100
【0078】
〔透明粒子の屈折率の測定方法〕
透明粒子の屈折率の測定はベッケ法により行う。このベッケ法による屈折率の測定においては、スライドガラス上に透明粒子を載せ、屈折液(予想される屈折率辺りの範囲、例えば1.480〜1.596の範囲の屈折率を有するCARGILLE社製のカーギル標準
屈折液を、屈折率差0.002刻みで複数準備する)を滴下する。そして、透明粒子と屈折液をよく混ぜた後、下方から岩崎電気株式会社製の高圧ナトリウムランプ(型番「NX35」、中心波長589nm)の光を照射しながら、上方から光学顕微鏡により透明粒子の輪郭を観察する。
【0079】
なお、光学顕微鏡による観察は、透明粒子の輪郭が確認できる倍率での観察であれば特に問題ないが、粒子径5μmの透明粒子であれば、500倍程度の倍率で観察することが適当である。上記操作により、透明粒子の屈折率と屈折液の屈折率とが近いほど透明粒子の輪郭が見えにくくなることから、屈折液中の透明粒子の輪郭が見えない、あるいは屈折液中の透明粒子の輪郭が最も判りにくい屈折液の屈折率をその透明粒子の屈折率と等しいと判断する。また、屈折率差が0.002である2種類の屈折液の間で透明粒子の見え方に違いがない場合は、これら2種類の屈折液の中間の値を当該透明粒子の屈折率と判断する。例えば、屈折率1.554及び1.556の屈折液それぞれで試験をしたときに、両屈折液で透明粒子の見え方に違いがない場合は、これら屈折液の中間値1.555を透明粒子の屈折率と判定する。上記の測定は、試験室気温23℃〜27℃の環境下で実施する。
【0080】
〔成形体に関する透過光の色の評価方法〕
直管LEDランプ 昼白色 40形(アイリスオーヤマ株式会社製、商品名「ECOLUX(登録商標) HE LDFL2000NF−H50」)を透過した透過光の色を目視で評価した。
【0081】
〔成形体に関する全光線透過率及びヘイズの測定方法〕
成形体の全光線透過率は、JIS K 7361−1に従って測定する。具体的には、成形体の全光線透過率及びヘイズを、日本電色工業株式会社製のヘイズメーター「NDH−4000」を使用して測定する。測定サンプル数n=10として、これら10個の測定サンプルの全光線透過率(%)の平均値及びヘイズ(%)の平均値をそれぞれ算出し、算出された平均値を成形体の全光線透過率(%)及びヘイズ(%)とする。
【0082】
〔成形体に関する分散度(D50)の測定方法〕
成形体表面に対してその法線方向から光を当てたときに、光透過率が直進光透過率の50%になる透過角として定義される成形体の分散度(D50)は、自動変角光度計(株式会社村上色彩技術研究所製「ゴニオフォトメータGP−200」)を用いて以下の手順で求める。
【0083】
自動変角光度計の光源からの直進光を、光源から75cmの距離に設置した成形体に対して成形体表面の法線方向から当てる。成形体を透過した光の強度を可動式受光器にて受光角度を変化させながら測定する。測定された強度を透過率に換算し、成形体表面の法線方向に対する受光方向の角度(透過角)に対応させて透過率をグラフにプロットする。このグラフから、光透過率が成形体表面の法線方向の光の透過率(直進光透過率;透過角が0度のときの光透過率)の50%になるところの角度(透過角)を求める。この角度(透過角)を分散度(D50)と称する。この分散度(D50)の単位は「°(度)」である。また、分散度(D50)は、大きいほど光拡散性に優れていることを意味する。
【0084】
図2は、成形体の透過光強度を、自動変角光度計を用いて測定した例である。縦軸は透過光強度の相対値で、この値が50%時のグラフのプロット点から垂線を引き、横軸との交点を求める。この横軸の値は角度(°)であり、分散度(D50)と呼ぶ。この
図2に示す測定結果では、分散度(D50)は57.3°となる。なお、分散度(D50)は、横軸の原点0°の左右2つの値(透過光強度が50%のときの角度の値)の絶対値の相加平均とする。
【0085】
〔成形体の分光直進光透過率の測定方法〕
まず、成形体の測定試料を、気温20℃、相対湿度65%に設定した恒温恒湿室に1時間以上静置することによって状態調整した後、測定試料の分光光度測定を行う。
気温20℃、相対湿度65%に設定した恒温恒湿室内で、積分球を装着していない紫外可視光分光光度計(UV−VISIBLE SPECTROPHOTOMETER)(株式会社島津製作所製、型番「UV−2450」)に前記測定試料をセットして波長300nm〜800nmの光の直進光透過率を測定する。具体的には、まず、前記紫外可視光分光光度計に対して、前記紫外可視光分光光度計に付属のフィルムホルダをセットする。次に、波長500nmの光の透過率(透過光強度)が100%となるように前記紫外可視光分光光度計を補正した上で、前記紫外可視光分光光度計により波長300nm〜800nmの分光直進光透過率を測定する。
【0086】
測定条件及び紫外可視光分光光度計のパラメーター(装置パラメーター)は、以下の通りとする。
(測定条件)
・測定波長範囲:300nm〜800nm
・スキャンスピード:中速
・サンプリングピッチ:1nm
・測定モード:シングル
(装置パラメーター)
・測光値:透過
・スリット巾:2.0mm
・光源切替波長:360nm
・S/R切替:標準
【0087】
〔成形体の特定波長領域における平均直進光透過率及びT1−T2の算出方法〕
成形体の特定波長領域における平均直進光透過率の測定方法は、前記測定方法により測定された分光透過率における特定波長領域に含まれる各波長で測定された直進光透過率の値の相加平均を演算することにより算出した。上記方法により、波長410〜500nmの平均直進光透過率、波長500〜600nmの平均直進光透過率、波長435〜480nm(青色領域)の平均直進光透過率、波長500〜560nm(緑色領域)の平均直進光透過率、波長580〜595nm(黄色領域)の平均直進光透過率、及び波長610〜750nm(赤色領域)の平均直進光透過率を算出した。また、波長410〜500nmの平均直進光透過率をT1、波長500〜600nmの平均直進光透過率をT2とし、前者から後者を減算することで、T1−T2を算出した。
【0088】
〔成形体の青色領域、緑色領域、及び赤色領域における平均直進光透過率の評価方法〕
前記算出方法により測定された波長435〜480nm(青色領域)、波長500〜560nm(緑色領域)、及び波長610〜750nm(赤色領域)における平均直進光透過率をそれぞれB(%)、G(%)、及びR(%)とし、前記算出方法により測定された波長580〜595nm(黄色領域)における平均直進光透過率をY(%)とし、Yに対するB、G、及びRの大きさを以下の3段階で評価した。
「>Y」:(Y+0.1)より大きい
「≒Y」:Yとの差が0.1以内
「<Y」:(Y−0.1)より小さい
【0089】
〔実施例1〕
熱可塑性樹脂としてのポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、商品名「ユーピロンS2000UR」、屈折率:1.58)に、透明粒子としての体積平均粒子径5.1μm、粒子径の変動係数(CV値)11.8%、屈折率1.49の架橋メタクリル樹脂粒子(メタクリル酸メチル70重量%及びエチレングリコールジメタクリレート30重量%からなる単量体混合物の重合体)を、ポリカーボネート樹脂と架橋メタクリル樹脂粒子との合計量を100重量%に対する架橋メタクリル樹脂粒子の割合(以下、「粒子濃度」と称する)0.25重量%配合したものを押出機で混練することによって、架橋メタクリル樹脂粒子を含むペレット状の光拡散性樹脂組成物を得た。
【0090】
次に、光拡散性樹脂組成物を射出成形機により成形することで、平面サイズ50mm×50mmで厚み1mmの平板状の成形体を作製した。得られた成形体について、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定を行った。目視評価及び測定の結果を、使用した透明粒子の体積平均粒子径、使用した透明粒子と熱可塑性樹脂との屈折率差、粒子濃度、及び成形体の厚みと共に、表1に示す。また、得られた成形体の分光透過率(直線透過率)を
図1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持ち、透過光を青色に着色するフィルタ材として機能するものであった。
【0091】
〔実施例2,3〕
粒子濃度及び成形体の厚みを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持ち、透過光を青色に着色するフィルタ材として機能するものであった。
【0092】
〔実施例4〕
透明粒子として、体積平均粒子径5.1μmの架橋メタクリル樹脂粒子に代えて、体積平均粒子径6.0μm、粒子径の変動係数(CV値)12.8%、屈折率1.49の架橋メタクリル樹脂粒子(メタクリル酸メチル95重量%及びエチレングリコールジメタクリレート5重量%からなる単量体混合物の重合体)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。
【0093】
得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。また、得られた成形体の分光透過率(直線透過率)を
図1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持ち、透過光を青色に着色するフィルタ材として機能するものであった。
【0094】
〔実施例5〜8〕
粒子濃度及び成形体の厚みを表1に示すように変更したこと以外は、実施例4と同様にして、平板状の成形体を作製した。得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持ち、透過光を青色に着色するフィルタ材として機能するものであった。
【0095】
〔実施例9〕
透明粒子として、体積平均粒子径5.1μmの架橋メタクリル樹脂粒子に代えて、体積平均粒子径8.1μm、粒子径の変動係数(CV値)7.7%、屈折率1.49の架橋メタクリル樹脂粒子(メタクリル酸メチル90重量%及びエチレングリコールジメタクリレート10重量%からなる単量体混合物の重合体)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。
【0096】
得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。また、得られた成形体の分光透過率(直線透過率)を
図1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持ち、透過光を黄緑色に着色するフィルタ材として機能するものであった。
【0097】
〔実施例10〜12〕
粒子濃度及び成形体の厚みを表1に示すように変更したこと以外は、実施例9と同様にして、平板状の成形体を作製した。得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持ち、透過光を黄緑色に着色するフィルタ材として機能するものであった。
【0098】
〔比較例1〕
透明粒子として、体積平均粒子径5.1μmの架橋メタクリル樹脂粒子に代えて、体積平均粒子径2.5μm、粒子径の変動係数(CV値)12.3%、屈折率1.49の架橋メタクリル樹脂粒子(メタクリル酸メチル70重量%及びエチレングリコールジメタクリレート30重量%からなる単量体混合物の重合体)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。
【0099】
得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。また、得られた成形体の分光透過率(直線透過率)を
図1に示す。得られた成形体は、全光線透過率が92.88%、ヘイズが65.8%、分散度が1.85°であり、透過光を橙色に着色するものであった。
【0100】
〔比較例2〕
透明粒子として、体積平均粒子径5.1μmの架橋メタクリル樹脂粒子に代えて、体積平均粒子径3.1μm、粒子径の変動係数(CV値)11.5%、屈折率1.49の架橋メタクリル樹脂粒子(メタクリル酸メチル70重量%及びエチレングリコールジメタクリレート30重量%からなる単量体混合物の重合体)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。
【0101】
得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。また、得られた成形体の分光透過率(直線透過率)を
図1に示す。得られた成形体は、透過光をピンク色に着色するものであった。
【0102】
〔比較例3〕
透明粒子として、体積平均粒子径5.1μmの架橋メタクリル樹脂粒子に代えて、体積平均粒子径4.5μm、粒子径の変動係数(CV値)10.2%、屈折率1.49の架橋メタクリル樹脂粒子(メタクリル酸メチル90重量%及びエチレングリコールジメタクリレート10重量%からなる単量体混合物の重合体)を用い、透明粒子の粒子濃度を2.00重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。
【0103】
得られた成形体について、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定を行った。目視評価及び測定の結果を、使用した透明粒子の体積平均粒子径、使用した透明粒子と熱可塑性樹脂との屈折率差、粒子濃度、及び成形体の厚みと共に、表1に示す。
【0104】
得られた成形体は、全光線透過率が86.56%、ヘイズが98.8%、分散度が27.0°であり、十分な透過光量を持っていたが、透過光には着色が無かった。これは、得られた成形体の光拡散が強すぎて着色効果が出なかったためである。
【0105】
〔比較例4〕
透明粒子の粒子濃度を2.00
重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。得られた成形体について、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定を行った。目視評価及び測定の結果を、使用した透明粒子の体積平均粒子径、使用した透明粒子と熱可塑性樹脂との屈折率差、粒子濃度、及び成形体の厚みと共に、表1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持っていたが、透過光には着色が無かった。これは、得られた成形体の光拡散が強すぎて着色効果が出なかったためである。
【0106】
〔比較例5〕
透明粒子の粒子濃度を2.00重量%に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、平板状の成形体を作製した。得られた成形体について、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定を行った。目視評価及び測定の結果を、使用した透明粒子の体積平均粒子径、使用した透明粒子と熱可塑性樹脂との屈折率差、粒子濃度、及び成形体の厚みと共に、表1に示す。得られた成形体は、十分な透過光量を持っていたが、透過光には着色が無かった。これは、得られた成形体の光拡散が強すぎて着色効果が出なかったためである。
【0107】
〔比較例6〕
透明粒子の粒子濃度を2.00重量%に変更し、成形体の厚みを2mmに変更したこと以外は、実施例9と同様にして、平板状の成形体を作製した。得られた成形体について、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定を行った。目視評価及び測定の結果を、使用した透明粒子の体積平均粒子径、使用した透明粒子と熱可塑性樹脂との屈折率差、粒子濃度、及び成形体の厚みと共に、表1に示す。得られた成形体は、透過光量が不十分であり、透過光には着色が無かった。これは、得られた成形体の光拡散が強すぎて着色効果が出なかったためである。
〔比較例7〕
透明粒子として、体積平均粒子径5.1μm、粒子径の変動係数(CV値)11.8%の架橋メタクリル樹脂粒子に代えて、体積平均粒子径5.1μm、粒子径の変動係数(CV値)35.6%、屈折率1.49の架橋メタクリル樹脂粒子(メタクリル酸メチル95重量%及びエチレングリコールジメタクリレート5重量%からなる単量体混合物の重合体)を用い、透明粒子の粒子濃度を0.50重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、平板状の成形体を作製した。
【0108】
得られた成形体についての、透過光の色の目視評価及び各種特性の測定の結果を表1に示す。得られた成形体は、透過光に着色が無かった。
【0109】
【表1】
【0110】
なお、実施例1〜12で得られた成形体は、波長380〜800nmの分光透過率の極大点の波長が波長380〜500nmの範囲内にあったのに対し、比較例1・2で得られた成形体は、波長380〜800nmの分光透過率の極大点の波長が800nmであった。
【0111】
以上のように、比較例1,2で得られた成形体は透過光を橙色又はピンク色に着色するものであり、比較例3〜7で得られた成形体は透過光に着色が無かったのに対し、実施例1〜12で得られた成形体は透過光を青色又は黄緑色に着色するものであった。
【0112】
また、以上のように、熱可塑性樹脂と、その中に分散している1〜100μmの透明粒子とを含み、前記熱可塑性樹脂及び透明粒子の屈折率差が0.02〜0.1であり、厚みが1〜3mmである実施例1〜12及び比較例1〜7の光拡散性樹脂組成物の成形体のうち、透明粒子の体積平均粒子径が4μm未満である比較例1,2の成形体は透過光を橙色又はピンク色に着色するものであり、透明粒子の含有量が1重量%超である比較例3〜6の成形体及び粒子径の変動係数(CV値)が15%超である比較例7の成形体は透過光に着色が無かったのに対し、透明粒子の体積平均粒子径が4.5μm以上7μm以下であり、粒子径の変動係数(CV値)が5〜15%であり、透明粒子の含有量が0.1〜1重量%である実施例1〜8の成形体は、透過光を青色に着色するものであり、透明粒子の体積平均粒子径が7μm超9μm以下であり、粒子径の変動係数(CV値)が5〜15%であり、透明粒子の含有量が0.1〜1重量%である実施例9〜12の成形体は、透過光を黄緑色に着色するものであった。
【0113】
〔実施例13〕(照明カバーの作製例)
実施例1における成形体の作製に用いたのと同様のペレット状の光拡散性樹脂組成物を用いて、
図5に示す円筒形状のLED照明カバー(厚み1mm)を押出成形法により作製した。市販の40W型直管型LED照明装置(株式会社エレバム製、型番「FWK40NSMSP5−72V」)の本体(カバーを除いた部分)に前記円筒形状のLED照明カバーを取り付けて、LED照明装置を作製した。
【0114】
次に、本実施例に係るLED照明カバーを取り付けたLED照明装置と、前記の市販のLED照明装置(株式会社エレバム製、型番「FWK40NSMSP5−72V」)とをそれぞれ発光させ、精肉及び野菜を照らしたときの色目を目視により評価した。その結果、本実施例のLED照明カバーを取り付けたLED照明装置は、市販のLED照明装置と比較して色くすみが抑制されることが確認された。これは、実施例1の成形体は、波長435〜480nm(青色領域)の平均直進光透過率及び波長500〜560nm(緑色領域)の平均直進光透過率が波長580〜595nm(黄色領域)の平均直進光透過率より高いために、中間色である黄色成分の光を減少させ、その結果として物体の色くすみを抑制できたものと考えられる。
【0115】
〔実施例14〕(スポットライトの前面板の作製例)
実施例1における成形体の作製に用いたのと同様のペレット状の光拡散性樹脂組成物を直径50mm、厚み1mmの円板状に射出成形し、スポットライトの前面板を作製した。この前面板を市販のLEDスポットライト(株式会社アップルツリー製、型番「HLA527S11」、全光束400lm、色温度2700K)の発光面に取り付けて、
図3に示すのと同様のスポットライトを作製した(
図6)。
【0116】
次に、
上記の市販のLEDスポットライトを、本実施例の前面板を取り付けた状態、本実施例の前面板を取り付けていない状態でそれぞれ発光させ、精肉及び野菜を照らしたときの色目を目視により評価した。その結果、本実施例の前面板を取り付けたときには、前面板を取り付けていないときと比較して色くすみが抑制されることが確認された。
【0117】
〔実施例15〕(パーティションの作製例)
実施例5における成形体の作製に用いたのと同様のペレット状の光拡散性樹脂組成物を射出成形することにより、縦150mm×横150mm、厚み3mmの光拡散板を45枚作製した。作製した45枚の光拡散板を、縦方向に9枚並び、横方向に5枚並ぶように格子状に配することにより、
図4に示すのと同様(光拡散板の枚数は異なる)の縦1500mm×横800mmのパーティションを作製した。
【0118】
このパーティションを居室の窓の前面に置き、外光を取り入れ観察したところ、外から内部の状況を確認することはできなかった。また、内部から見た外光は青色に着色し、落ち着いた雰囲気を醸し出した。
【0119】
〔実施例16〕(パーティションの作製例)
実施例10における成形体の作製に用いたのと同様のペレット状の光拡散性樹脂組成物を射出成形することにより、縦150mm×横150mm、厚み3mmの光拡散板を45枚作製した。作製した45枚の光拡散板を、縦方向に9枚並び、横方向に5枚並ぶように格子状に配することにより、
図4に示すのと同様(光拡散板の枚数は異なる)の縦1500mm×横800mmのパーティションを作製した。
【0120】
このパーティションを居室の窓の前面に置き、外光を取り入れ観察したところ、外から内部の状況を確認することはできなかった。また、内部から見た外光は黄緑色に着色し、落ち着いた雰囲気を醸し出した。
【0121】
〔実施例17〕(採光材の作製例)
実施例5における成形体の作製に用いたのと同様のペレット状の光拡散性樹脂組成物を射出成形することにより、縦150mm×横150mm、厚み3mmの光拡散板を作製した。作製した光拡散板を採光材としてテラスの天井に設置し、外光を取り入れて観察したところ、テラスの外からテラス内部の状況を確認することはできなかった。また、テラス内部から見た外光は青色に着色し、落ち着いた雰囲気を醸し出した。
【0122】
〔実施例18〕(採光材の作製例)
実施例10における成形体の作製に用いたのと同様のペレット状の光拡散性樹脂組成物を射出成形することにより、縦150mm×横150mm、厚み3mmの光拡散板を作製した。作製した光拡散板を採光材としてテラスの天井に設置し、外光を取り入れて観察したところ、テラスの外からテラス内部の状況を確認することはできなかった。また、テラス内部から見た外光は黄緑色に着色し、落ち着いた雰囲気を醸し出した。