【文献】
倉田聖,冠動脈CTAを用いた冠動脈狭窄とその心筋リスク領域の自動抽出と定量評価,循環器専門医,日本,2015年 9月,第23巻第2号,217〜222頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。なお、以下の説明はあくまでも好ましい態様の一例を示したものであり、本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0014】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る心筋画像処理装置100及びその周辺装置を示す機能構成図である。ここでは周辺装置として、撮像装置110、操作受付部120、表示装置130(表示部)及びデータベース140を例示するが、これに限られない。
【0015】
撮像装置110は、被験者の核医学画像を撮像し、これを心筋画像処理装置100に提供する。このような撮像装置110としては、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置又はPET(Positron Emission Tomography)装置等の核医学撮像装置がある。これらの装置により撮像された核医学画像は、特定の放射性同位元素でラベルされた薬剤(以下、放射性医薬品)を投与し、放射性医薬品より直接的または間接的に放出されたγ線を専用のカメラによって検出し、再構築することによって取得される。
【0016】
なお、放射性医薬品としては、SPECT用製剤として塩化タリウム(
201TlCl)注射液、テトロホスミンテクネチウム(
99mTc Tetrofosmin)注射液、ヘキサキス(2−メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム(
99mTc MIBI)注射液、15-(4-ヨードフェニル)- 3(R,S)-メチルペンタデカン酸(
123I)注射液や、PET用製剤として
13N−アンモニアや塩化ルビジウム(
82RbCl)注射液などがある。また、単一の検査において、異なる2核種からなる放射性医薬品を投与してもよい。
【0017】
心筋画像処理装置100は、画像取得部102、第1の分割処理部103、境界線極座標展開部104、心臓核医学画像正規化部105、第2の分割処理部106、指標値算出部107及び表示処理部108を備える。
【0018】
画像取得部102は、被験者における三次元冠動脈画像、少なくとも左心室の三次元形態画像及び三次元心臓核医学画像を取得、生成する。ここでの取得には、予め生成されデータベース140に保持されている画像をデータベース140から読み出すことが含まれる。三次元冠動脈画像とは、好ましくは、CTや造影又は非造影のMRIといった、撮像装置110とは別のモダリティ(図示せず)を使用した検査法で冠動脈を撮像して得られた冠動脈画像に対して三次元画像処理を施した画像のことをいうが、これに限定されない。つまり、被験者の冠動脈が描出されている画像であれば良い。なお、三次元冠動脈画像は、後述する三次元形態画像と別に撮像したものであっても良いが、冠動脈が描出されている三次元形態画像上で冠動脈を抽出して三次元画像処理を施したものであっても良い。後者の場合には、三次元冠動脈画像は、三次元形態画像と合わせて一つの画像として生成される。三次元画像処理としては、MPR(Multi Planar Reconstruction)処理、三次元冠動脈抽出処理、三次元左心室抽出処理等を挙げることができる。
【0019】
「少なくとも左心室」には、左心室の他に、左心室及び右心室の組み合わせが含まれる。「少なくとも左心室の三次元形態画像」には、左心室のみを撮像して得られた形態画像に対して三次元画像処理を施した画像と、左心室及び右心室の双方を撮像して得られた形態画像に対して三次元画像処理を施した画像とが含まれる。なお、形態画像は、心臓の形態を認識できる画像であれば、特に限定されない。形態画像としては、例えば、CTや造影又は非造影のMRIといった、撮像装置110とは別のモダリティ(図示せず)を使用した検査法で撮像された画像を三次元画像処理した画像の他、撮像装置110で得られた核医学画像に対して三次元画像処理を施した画像を、用いることができる。
図14に、形態画像の一例である三次元CT画像から得られた画像を示す。この画像では、CT画像から抽出された左心室の三次元形態画像上に、同じくCT画像から抽出された左心室の三次元冠動脈画像が重ね合わせて表示されている。
【0020】
心臓核医学画像は、心臓を検査対象として遂行される核医学測定により得られる画像であり、核医学測定の方法としてSPECT又はPETを用いて得られた画像である。三次元心臓核医学画像とは、心臓核医学画像データに対して三次元画像処理を施した画像のことをいう。三次元冠動脈画像、三次元形態画像及び三次元心臓核医学画像は、データベース140に予め格納しておき、必要に応じてデータベース140から読み出せるようにしておいても良いし、心筋画像処理装置100の外部からネットワーク等を介して読み出せるようにしておいても良い。
【0021】
第1の分割処理部103は、三次元冠動脈画像に基づいて、少なくとも左心室の三次元形態画像を複数の領域に分割する。好ましい態様において、この分割はボロノイ分割の手法により行う事ができる(詳細についてはhttp://gihyo.jp/dev/serial/01/geometry/0011を参照)。ボロノイ分割とは、与えられた点の近傍をその点の勢力圏と定義する分割方法であり、物理学、生態学、地域問題など様々な分野で用いられている主要な概念である。例えば、空間内にn個の点が与えられたとき、各点の勢力圏を定義し、これをボロノイ多角形で表すといった手法が用いられる。
【0022】
分割の対象となる点は母点と呼ばれる。ボロノイ多角形の頂点はボロノイ点、辺はボロノイ辺と呼ばれる。ボロノイ辺はその両側にある母点から等距離にある点の軌跡、すなわち、その母点を結ぶ線分の垂直二等分線の一部である。また、ボロノイ点は三つの母点を頂点とする三角形の外心である。
図2〜
図5に示した例において、ボロノイ分割の対象となる直線A,Bは冠動脈を模式的に示している(
図2)。
【0023】
直線Aでは、所定の間隔で4つの母点A1,A2,A3,A4が特定される(
図3〜
図5)。同様に、直線Bでは、所定の間隔で4つの母点B1,B2,B3,B4が特定される(
図3〜
図5)。以下、本実施形態によって行われる画像処理の手順の一例を
図3〜
図5を参照しつつ列記する。
【0024】
まず、
図3に示すように、母点A1,B1,B2を頂点とする三角形を形成する。そして、辺A1B1の中点を点M1と定義し、辺A1B2の中点を点M2と定義する。
次に、母点A2,B1,B2を頂点とする三角形を形成する。そして、辺A2B1の中点を点M3と定義し、辺A2B2の中点を点M4と定義する。
次に、母点A2,B2,B3を頂点とする三角形を形成する。そして、辺A2B2の中点を点M4と定義し、辺A2B3の中点を点M5と定義する。
次に、母点A3,B2,B3を頂点とする三角形を形成する。そして、辺A3B2の中点を点M6と定義し、辺A3B3の中点を点M7と定義する。
次に、母点A3,B3,B4を頂点とする三角形を形成する。そして、辺A3B3の中点を点M7と定義し、辺A3B4の中点を点M8と定義する。
次に、母点A4,B3,B4を頂点とする三角形を形成する。そして、辺A4B3の中点を点M9と定義し、辺A4B4の中点を点M10と定義する。
【0025】
続いて、
図4に示すように、母点B1,A1,B2を頂点とする三角形を形成する。そして、辺B1A1の中点を点N1と定義し、辺B2A1の中点を点N2と定義する。
次に、母点B1,A2,B2を頂点とする三角形を形成する。そして、辺B1A2の中点を点N3と定義し、辺B2A2の中点を点N4と定義する。
次に、母点B2,A2,B3を頂点とする三角形を形成する。そして、辺B2A2の中点を点N4と定義し、辺B3A2の中点を点N5と定義する。
次に、母点B2,A3,B3を頂点とする三角形を形成する。そして、辺B2A3の中点を点N6と定義し、辺B3A3の中点を点N7と定義する。
次に、母点B3,A3,B4を頂点とする三角形を形成する。そして、辺B3A3の中点を点N7と定義し、辺B4A3の中点を点N8と定義する。
次に、母点B3,A4,B4を頂点とする三角形を形成する。そして、辺B3A4の中点を点N9と定義し、辺B4A4の中点を点N10と定義する。
次に、母点B3,A4,B4を頂点とする三角形を形成する。そして、辺B3A4の中点を点N9と定義し、辺A4B4の中点を点N10と定義する。
図5は、中点群M1〜M10,N1〜N10を結んだ折れ線(ボロノイ辺)を基に得られた直線であって、直線A,B間に仮想的に引かれた近似直線Lを示す。近似直線Lは、例えば、公知の最小二乗法により導き出される。冠動脈の様に蛇行している線の間に境界線を引く場合は、その境界線も蛇行した形となる。この場合、好ましい態様として、各中点(本例におけるM1〜M10、N1〜N10に相当)を結んだ線を作成し、必要に応じてスムージング処理を行う事によって得る事ができる。スムージングは公知の方法を用いることができ、例えば3点スムージングや5点スムージングの手法を用いることができる。
また、境界線の位置は、冠動脈の太さを考慮した補正を行っても良い。例えば、左右の冠動脈の直径が6:4の関係となっている場合は、上記の手法により得られる分割点を、母点間の中点ではなく、母点を結んだ線分を6:4に分割する点として定義することができる。
【0026】
境界線極座標展開部104は、第1の分割処理部103で左心室の三次元形態画像を分割した複数の領域を仕切る境界線を抽出し、当該境界線を極座標展開する。心臓核医学画像正規化部105は、三次元心臓核医学画像を極座標展開する。なお、このような極座標展開する方法は、例えば特開2017−62213号公報等で開示されているなど、既に周知であるため、詳細な説明は省略するが、例えば、撮像装置110により心臓を撮像して得られた断層画像に基づき、その断層画像から得られた画素の最大カウントを、心尖部を中心として心基部に向かって同心円上に放射状に展開する方法がある。
【0027】
第2の分割処理部106は、極座標展開された三次元心臓核医学画像に同じく極座標展開された境界線を重畳した合成画像を生成する。第2の分割処理部106は、その生成した合成画像に基づいて極座標展開された三次元心臓核医学画像を複数の領域に分割する。ここで分割された各領域を、その領域内に走行している冠動脈の支配領域とする。
【0028】
指標値算出部107は、第2の分割処理部106で分割された支配領域毎に被験者の状態を表す指標値を算出する。指標値は、例えば、Washout rate、Subtraction Score、Mismatch Score、Severity Score、Extent Score、Wall Motion及びWall Thickeningから選択された指標値とする事ができる。
【0029】
Washout rateは、下記の式(1)で表される。Washout rateは、運動負荷によってどの程度信号強度が増加したかを示す指標として%で導出される。例えば放射性医薬品として
201TlClを用いた場合、正常時には50%程度の値を示す。
【0031】
Subtraction Score及びMismatch Scoreは、薬剤の分布の差異を示す指標値である(詳細についてはhttp://nucmed.w3.kanazawa-u.ac.jp/lectures/detail.php?d_no=43、http://nucmed.w3.kanazawa-u.ac.jp/lectures/detail.php?d_no=44を参照)。
【0032】
Subtraction Scoreは、全ての放射性医薬品を用いた画像について算出可能な指標値であり、単純に、二つの画像間における対応する画素間での信号強度の差である。具体的には、例えば、負荷画像と安静画像との間における対応する画素間での信号強度(%uptake)の差として得る事ができる。%uptakeは、下記の式(2)で表される。
【数2】
【0033】
Mismatch Scoreは、例えば塩化タリウムと15-(4-ヨードフェニル)- 3(R,S)-メチルペンタデカン酸(
123I)注射液等のように、評価対象が異なる2種類の薬剤の集積の差異を算出することで導き出される。その算出に使用される単位は%uptakeである。
【0034】
Severity Scoreは、下記の式(3)で表され、正常群との乖離度合を表す指標値である。Severity Scoreは、画素毎に算出され、マップ上に表示される。その算出に使用される単位は%uptakeである。
【数3】
【0035】
Extent Scoreは、下記の式(4)で表され、正常群と有意差を持って乖離している領域の面積を表す指標値である。Extent Scoreの算出に使用される単位は%uptakeである。
【数4】
【0036】
Wall Motion及びWall Thickeningは、核種を問わず、心電図同期核医学画像に基づいて算出される指標値である(詳細についてはhttp://www.jsnc.org/p-jsnc-seminar/005/2010/0720-1を参照)。Wall Motionは、心筋壁の動きを示す指標値である。Wall Thickeningは、心筋壁の厚みの変化を示す指標値である。心電図同期収集が行われることで、心臓の拍動に連動した画像を得ることができる。
【0037】
表示処理部108は、指標値算出部107で算出された指標値を、第2の分割処理部106で生成された合成画像に対応付けて表示装置130に表示する。例えば、それぞれの画素について算出された指標値を、輝度や色彩といった形で対応する画素に配するといった方法をとる事ができる。また、例えばExtent Scoreの様に、領域ごとに一つの値を求める様な指標の場合は、画像上の各領域上に直接数値を表示しても良いし、各領域を番号等で区別し、それぞれの領域における指標値として、例えば、表形式の様な形で表示しても良い。
【0038】
(心筋画像処理装置100及びその周辺装置で行われる全体処理の流れ)
まず、画像取得部102(
図1)は、被験者における三次元冠動脈画像、左心室の三次元形態画像及び三次元心臓核医学画像を取得する(ステップS101)。三次元冠動脈画像、左心室の三次元形態画像及び三次元心臓核医学画像は、それぞれ対応する機器を用いて生成された画像である。それぞれの画像は、ネットワークを通じて各機器から直接取り込まれるものであっても良いし、ハードディスクや半導体メモリといった記憶媒体に記憶されたものを、周辺機器インターフェース(図示せず)等を介して取り込むものであっても良い。
【0039】
次に、第1の分割処理部103(
図1)は、三次元冠動脈画像に基づいて、左心室の三次元形態画像を複数の支配領域(
図7)にボロノイ分割する(ステップS102)。ボロノイ分割処理で行われる一連の流れを
図9,
図10,
図11に示す。
図9は、冠動脈と左室心筋とを抽出する操作に供される画面構成を示す画面構成図である。
図10は、冠動脈から領域分割の起点となる部位を選択する操作に供される画面構成を示す画面構成図である。
図11は、三次元形態画像上で支配領域の境界線の計算操作に供される画面構成を示す画面構成図である。境界線の作成方法は、上述した通りである。
【0040】
次に、境界線極座標展開部104(
図1)は、第1の分割処理部103で左心室の三次元形態画像を分割した複数の支配領域を仕切る境界線を抽出し、当該境界線を公知の方法を用いて極座標展開する(ステップS103)。
【0041】
次に、心臓核医学画像正規化部105(
図1)は、三次元心臓核医学画像を公知の方法を用いて極座標展開する(ステップS104)。
【0042】
次に、第2の分割処理部106は、心臓核医学画像正規化部105で極座標展開された三次元心臓核医学画像に、境界線極座標展開部104で極座標展開された境界線を重畳した合成画像(
図8)を生成する(ステップS105)。ここで、
図8に示されているSep,Ant,Latは、それぞれ、中隔、前壁、側壁を示している。第2の分割処理部106は、その生成した合成画像に基づいて、心臓核医学画像正規化部105で極座標展開された三次元心臓核医学画像を複数の支配領域(
図8)に分割する。
【0043】
図8の上段には、心尖部を中心として心基部に向かって同心円上に放射状に極座標展開した画像を示している。
図8の下段には、複数の支配領域に仕切られた左心室の各部位に対応させるように、三次元心臓核医学画像に境界線を重畳した画像を示している。
【0044】
次に、指標値算出部107は、第2の分割処理部106で分割された支配領域毎に被験者の状態を表す指標値を算出する(ステップS106)。ここで算出される指標値の具体例については、上述した通りである。
【0045】
次に、表示処理部108は、指標値算出部107で算出された指標値を、第2の分割処理部106で生成された合成画像(
図8)に対応付けて表示装置130に表示する(ステップS107)。ここで、
図8に示されている項目Stress、Delay、Subtractionは、それぞれ負荷、安静、差分画像を示している。
図8の例では、上部にSubtractionと表示された画像上において、各画素で算出された指標値(Subtraction)を、対応する画素に輝度の違いにより表示している。
【実施例1】
【0046】
次に、
図12及び
図13を用いて、従来の3segmentや17segmentで冠動脈の支配領域を決める方法との比較により、本実施形態に係る心筋画像表示方法(以下、単に本法と略記する)の有用性を検討した実験結果について説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0047】
まず、
図12を参照しつつ、3segmentで支配領域を決める方法と本法との比較を行う。線BL1は、3segmentで使用される境界線である。線BL2は、本法によるボロノイ分割で得られた境界線である。
図12から明らかなように、3segmentで定めた支配領域は、本法で定めた境界線(BL2)によって画された支配領域と異なり複数の冠動脈の支配を受けていると言える。よって、本法で分割した複数の支配領域は、3segmentで支配領域を決める方法と比べてより患者の冠動脈走行を反映した結果を得る事ができると言える。
【0048】
次に、
図13を参照しつつ、17segmentで支配領域を決める方法と本法との比較を行う。線BL3は、17segmentで使用される境界線である。線BL4は、本法によるボロノイ分割で得られた境界線である。
図13から明らかなように、17segmentで定めた支配領域は、本法で定めた境界線(BL4)によって画された支配領域と異なり複数の冠動脈の支配を受けていると言える。よって、本法で分割した複数の支配領域は、17segmentで支配領域を決める方法と比べてより患者の冠動脈走行を反映した結果を得る事ができると言える。
【0049】
以上、本実施形態によれば、被験者の個人差の如何に関わらず、心臓核医学検査におけるより正しい診断をより容易に行うことのできる技術を提供することができる。
【0050】
ここまで実施形態を示して本発明を説明したが、これらは一例である。また、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0051】
また、上述した各種の構成要素は、必ずしも必須の構成要素ではなく、本発明の効果を阻害しない程度に省いても構わないし、同等に機能又は作用する他の構成要素に代えてもよい。
【0052】
また、上記実施形態において示すフローも本発明の実施の一例であって、ここに示した手順に限られない。従って、上記フローチャートに図示した一のステップが複数に分離されて実行される、複数のステップが一のステップとして実行される、複数のステップが並行して実行される等の態様を許容する。
【0053】
なお、上記実施形態では、第1の分割処理部103は、複数の三角形(
図5)の各辺の中点を検出しその中点を結んでボロノイ辺を形成する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、第1の分割処理部103は、線A(
図2)上の任意の点から線B(
図2)に向けて引いた直線のうち、最短となる直線の中点を結んでボロノイ辺を形成しても良い。また、そのように求めた中点につき、上述した方法により血管の太さの違いを反映した補正を行っても良い。
【0054】
なお、上記実施形態では、近似直線L(
図5)を公知の最小二乗法で導き出す例を示した。しかし、これに限られない。近似直線Lは、一次相関などの手法により統計解析して導き出しても良い。要するに、近似直線Lは、昨今、一般的に行われている何れの方法を用いて導出されても良い。
【0055】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)被験者における三次元冠動脈画像、少なくとも左心室の三次元形態画像及び左心室の三次元心臓核医学画像を取得する画像取得ステップと、
前記三次元冠動脈画像に基づいて、前記左心室の前記三次元形態画像を複数の領域に分割する第1の分割ステップと、
前記第1の分割ステップで前記左心室の前記三次元形態画像を分割した複数の前記領域を仕切る境界線を抽出し、当該境界線を極座標展開する境界線極座標展開ステップと、
前記左心室の前記三次元心臓核医学画像を極座標展開する心臓核医学画像正規化ステップと、
前記心臓核医学画像正規化ステップで極座標展開した前記三次元心臓核医学画像に、前記境界線極座標展開ステップで極座標展開した前記境界線を重畳した合成画像に基づいて、前記極座標展開した前記三次元心臓核医学画像を複数の支配領域に分割する第2の分割ステップと、
前記第2の分割ステップで前記三次元心臓核医学画像を分割した前記支配領域毎に前記被験者の状態を表す指標値を算出する指標値算出ステップと、
前記指標値を前記合成画像に対応付けて表示部に表示する表示ステップとを含む心筋画像表示方法。
(2)前記指標値は、Washout rate、Subtraction Score、Mismatch Score、Severity Score、Extent Score、Wall Motion及びWall Thickeningのうちいずれか一つであることを特徴とする(1)に記載の心筋画像表示方法。
(3)コンピュータに、
被験者における三次元冠動脈画像、少なくとも左心室の三次元形態画像及び左心室の三次元心臓核医学画像を取得する処理と、
前記三次元冠動脈画像に基づいて、前記左心室の前記三次元形態画像を複数の領域に分割する処理と、
前記左心室の前記三次元形態画像を分割した複数の前記領域を仕切る境界線を抽出し、当該境界線を極座標展開する処理と、
前記左心室の前記三次元心臓核医学画像を極座標展開する処理と、
前記極座標展開した前記三次元心臓核医学画像に、前記極座標展開した前記境界線を重畳した合成画像に基づいて、前記極座標展開した前記三次元心臓核医学画像を複数の支配領域に分割する処理と、
前記極座標展開した前記三次元心臓核医学画像を分割した前記支配領域毎に前記被験者の状態を表す指標値を算出する処理と、
前記指標値を前記合成画像に対応付けて表示部に表示する処理を実行させるための心筋画像表示処理プログラム。
(4)前記指標値は、Washout rate、Subtraction Score、Mismatch Score、Severity Score、Extent Score、Wall Motion及びWall Thickeningのうちいずれか一つであることを特徴とする(3)に記載の心筋画像表示処理プログラム。
(5)被験者における三次元冠動脈画像、少なくとも左心室の三次元形態画像及び左心室の三次元心臓核医学画像を取得する画像取得部と、
前記三次元冠動脈画像に基づいて、前記左心室の前記三次元形態画像を複数の領域に分割する第1の分割処理部と、
前記第1の分割処理部で前記左心室の前記三次元形態画像を分割した複数の前記領域を仕切る境界線を抽出し、当該境界線を極座標展開する境界線極座標展開部と、
前記左心室の前記三次元心臓核医学画像を極座標展開する心臓核医学画像正規化部と、
前記心臓核医学画像正規化部で極座標展開された前記三次元心臓核医学画像に、前記境界線極座標展開部で前記極座標展開された前記境界線を重畳した合成画像に基づいて、前記極座標展開された前記三次元心臓核医学画像を複数の支配領域に分割する第2の分割処理部と、
前記第2の分割処理部で分割された前記支配領域毎に前記被験者の状態を表す指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値を前記合成画像に対応付けて表示部に表示する表示処理部とを備えることを特徴とする心筋画像表示処理装置。
(6)前記指標値は、Washout rate、Subtraction Score、Mismatch Score、Severity Score、Extent Score、Wall Motion及びWall Thickeningのうちいずれか一つであることを特徴とする(5)に記載の心筋画像表示処理装置。
【課題】被験者の個人差の如何に関わらず、冠動脈走行を反映した心臓の正しい診断をより容易に行うことのできる心筋画像表示方法、心筋画像表示処理プログラム及び心筋画像処理装置を提供する。
【解決手段】心筋画像処理装置100は、左心室の三次元形態画像を複数の領域に分割する第1の分割処理部103と、前記三次元形態画像を分割した複数の前記領域を仕切る前記境界線を極座標展開する境界線極座標展開部104と、前記左心室の前記三次元心臓核医学画像を極座標展開する心臓核医学画像正規化部105と、前記三次元心臓核医学画像に前記境界線を重畳した合成画像に基づいて、前記三次元心臓核医学画像を複数の支配領域に分割する第2の分割処理部106と、分割された前記支配領域毎に被験者の状態を表す指標値を算出する指標値算出部107と、指標値を合成画像に対応付けて表示部130に表示する表示処理部108とを備える。