(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483924
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6571 20140101AFI20190304BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20190304BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20190304BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20190304BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20190304BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20190304BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20190304BHJP
B60K 11/04 20060101ALN20190304BHJP
B60K 1/04 20190101ALN20190304BHJP
【FI】
H01M10/6571
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M2/10 S
B60W10/26 900
B60K6/28
!B60K11/04 GZHV
!B60K1/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-515380(P2018-515380)
(86)(22)【出願日】2016年5月2日
(86)【国際出願番号】JP2016063596
(87)【国際公開番号】WO2017191679
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2018年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】カトリコ クラレンス ジョイ ヴィリアモア
(72)【発明者】
【氏名】石和 浩次
【審査官】
赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−039523(JP,A)
【文献】
特開2013−027084(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/147137(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60−10/667
H01M 2/10
B60K 1/04
B60K 6/28
B60K 11/04
B60W 10/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載されるリチウムイオン電池パックにおいて、
1以上のリチウムイオン電池で構成されている第1の電池モジュールと、
前記第1の電池モジュールと並列接続され、1以上のリチウムイオン電池で構成されている第2の電池モジュールと、
前記第2の電池モジュールと電気的に接続され、前記第1の電池モジュールに近接して配置され、前記第1の電池モジュールを加熱するヒータと、
前記第1の電池モジュールによる外部への電力供給をオンまたはオフに切り替え、エンジン始動のために前記第1の電池モジュールによる外部への電力供給をオンにする第1のスイッチと、
前記第2の電池モジュールによる外部への電力供給をオンまたはオフに切り替える第2のスイッチと、
前記第2の電池モジュールによる前記ヒータへの電力供給をオンまたはオフにし、エンジン始動前に前記ヒータへの電力供給をオンにする第3のスイッチと、
を備えるリチウムイオン電池パック。
【請求項2】
前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールは同じ電圧特性の電池モジュールで構成され、
前記第1の電池モジュールは、前記第2の電池モジュールよりも高出力密度である、
請求項1に記載のリチウムイオン電池パック。
【請求項3】
前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールは同じ電圧特性の電池モジュールで構成され、
前記第2の電池モジュールは、前記第1の電池モジュールよりも高エネルギー密度である、
請求項1に記載のリチウムイオン電池パック。
【請求項4】
駐車モードにおいて、前記第1のスイッチはオンまたはオフであり、前記第2のスイッチはオンであり、前記第3のスイッチはオフであり、
加熱モードにおいて、前記第1のスイッチはオンであり、前記第2のスイッチはオフであり、前記第3のスイッチはオンであり、
始動モードにおいて、前記第1のスイッチはオンであり、前記第2のスイッチはオンまたはオフであり、前記第3のスイッチはオフであり、
通常運転モードにおいて、前記第1のスイッチはオンであり、前記第2のスイッチはオンであり、前記第3のスイッチはオフである、
請求項1に記載のリチウムイオン電池パック。
【請求項5】
前記第2の電池モジュールの容量は、前記ヒータが前記第1の電池モジュールの温度を所定の温度まで上昇させるために予め定められた時間期間、前記ヒータへ電力を供給するのに十分な容量である、
請求項1に記載のリチウムイオン電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エンジン始動用のリチウムイオン電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が廃棄された時の廃棄物の量を減らすこと及び有害物質の使用を制限するため、2000年9月制定の2000/53/EC(ELV指令)が発行された。その中に、鉛は使用禁止材料に指定されていたが、同時に、鉛電池は例外製品に指定された。鉛電池の機能を完全に置き換えることができるものがないため、鉛電池は未だに車両に一般的に使用されている。その一方で、最近、リチウムイオン電池(以下、LiBという)に切り替える動きが少しずつ見えている。
【0003】
鉛電池をLiBに代替するメリットは、有害金属の廃止だけではなく、それ以外のメリットも挙げられる。現在、欧州、米国等で車両の許容CO
2の排出量が制限されているため、様々な電動化及び車両の燃費改善が行われている。一例として、従来の燃焼エンジンを使用しているマイクロハイブリッドである。マイクロハイブリッドでは、頻繁にエンジンを再始動するため、深い放電に強い電池が求められている。また、車両減速時のブレーキエネルギーを電池に貯める時、高い充電受入性能の電池が必要になってくる。深い放電への耐性と充電受入性能の観点で、鉛電池よりLiBの方が優れている。更に、常温ではLiBの方が鉛電池よりも出力が高いため、鉛電池をLiBに切り替えることによって、車両システムの軽量化と小型化も可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−063397号公報
【特許文献2】特開2008−021569号公報
【特許文献3】特開2003−223938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LiBの課題は、LiB全体の性質として、電解液に有機溶媒を使っていることにより、低温では電解液の粘度が増加し、内部抵抗が大きく上昇することである。その結果、LiBは、鉛電池に比べて低温での出力が低下し、エンジンのコールドクランク性能が弱くなる。これを防ぐためにLiBの容量を増大すると、LiBは小型軽量のメリットがなくなり、これがLiBの普及への課題になっている。
【0006】
このように、今後、車両内で鉛電池を完全に無くす場合、LiBのみのシステムで低温出力性能を改善することが技術的な課題になっている。解決する手段として、電池を自らのエネルギーを使って加熱し、温度を上げることで出力を上げる方法は考案されている。しかしながら、その場合、LiBのSOC(State of Charge)が低下し、LiBの出力が下がる課題がある。
【0007】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、低温出力性能を向上させるエンジン始動用のリチウムイオン電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係るリチウムイオン電池パックは車両(自動車)に搭載されるものである。リチウムイオン電池パックは、第1の電池モジュールと、第2の電池モジュールと、ヒータと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、第3のスイッチとを備える。前記第1の電池モジュールは、1以上のリチウムイオン電池で構成されている。前記第2の電池モジュールは、前記第1の電池モジュールと並列接続され、1以上のリチウムイオン電池で構成されている。前記ヒータは、前記第2の電池モジュールと電気的に接続され、前記第1の電池モジュールに近接して配置され、前記第1の電池モジュールを加熱する。前記第1のスイッチは、前記第1の電池モジュールによる外部への電力供給をオンまたはオフに切り替え、エンジン始動のために前記第1の電池モジュールによる外部への電力供給をオンにする。前記第2のスイッチは、前記第2の電池モジュールによる外部への電力供給をオンまたはオフに切り替える。前記第3のスイッチは、前記第2の電池モジュールによる前記ヒータへの電力供給をオンまたはオフにし、エンジン始動前に前記ヒータへの電力供給をオンにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るリチウムイオン電池パックの一例を示す概略図。
【
図2】
図2は、実施形態に係るリチウムイオン電池パックの一例となる動作を示す表。
【
図3】
図3は、実施形態に係るリチウムイオン電池パックの別の例となる動作を示す表。
【
図4】
図4は、実施形態に係るリチウムイオン電池パックのさらに別の例となる動作を示す表。
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るリチウムイオン電池パック1の一例を示す概略図である。
リチウムイオン電池パック1は、主として、エンジン始動及び車載補機類への電力供給を目的として車両に搭載される。
【0011】
リチウムイオン電池パック1の正極端子10は、車両に搭載されている各要素を電気的に接続するネットワークに接続されている。これにより、リチウムイオン電池パック1は、オルタネータ2、スタータ3及び一般負荷4に電気的に接続されている。オルタネータ2は、発電機である。スタータ3は、エンジン始動時に用いられるモータである。一般負荷4は、例えば、電気によって動作する車両に備え付けの設備及び外付けのアクセサリーのうちの少なくとも何れか一方を含む車載補機である。
【0012】
リチウムイオン電池パック1は、第1の電池モジュール11、第2の電池モジュール12、ヒータ13、第1のスイッチ14、第2のスイッチ15、第3のスイッチ16、温度センサ17及び制御部18を有する。これらの要素は、電気的に接続されている。リチウムイオン電池パック1は、これらの要素をケース内に収容する。
【0013】
第1の電池モジュール11は、1以上のリチウムイオン電池(セル)で構成されている。第1の電池モジュールは例えば12Vである。第1の電池モジュール11の正極は、後述する第1のスイッチ14を介して正極端子10と電気的に接続されている。他方、第1の電池モジュール11の負極は、接地されている。
【0014】
第2の電池モジュール12は、1以上のリチウムイオン電池で構成されている。第2の電池モジュール12の出力密度またはエネルギー密度は、第1の電池モジュール11の出力密度またはエネルギー密度と同じであっても異なっていてもよく特に限定されない。第2の電池モジュール12は、例えば12Vである。第2の電池モジュール12は、第1の電池モジュール11と並列接続されている。第2の電池モジュール12の正極は、後述する第2のスイッチ15を介して正極端子10と電気的に接続されている。他方、第2の電池モジュール12の負極は、接地されている。
【0015】
ヒータ13は、第2の電池モジュール12と電気的に接続されている。例えば、ヒータ13の一端は、後述する第3のスイッチ16を介して第2の電池モジュール12の正極と電気的に接続されている。ヒータ13の他端は、接地されている。ヒータ13は、第1の電池モジュール11に近接して配置されている。これにより、ヒータ13は、第1の電池モジュール11を加熱する。なお、第1の電池モジュール11に対するヒータ13の位置関係は、ヒータ13が第1の電池モジュール11を加熱できる範囲に適宜調整することができる。
【0016】
第1のスイッチ(リレー)14は、第1の電池モジュール11の正極と正極端子10との間に配置されている。第1のスイッチ14は、第1の電池モジュール11の正極と正極端子10との間の電気的な接続状態をオン(有効)またはオフ(無効)に切り替える。これにより、第1のスイッチ14は、第1の電池モジュール11による外部への電力供給をオンまたはオフに切り替える。第1のスイッチ14のオンまたはオフの切り替えについては後述するが、一例として、第1のスイッチ14は、エンジン始動のために第1の電池モジュール11による外部への電力供給をオンにする。
【0017】
第2のスイッチ(リレー)15は、第2の電池モジュール12の正極と正極端子10との間に配置されている。第2のスイッチ15は、第2の電池モジュール12の正極と正極端子10との間の電気的な接続状態をオンまたはオフに切り替える。これにより、第2のスイッチ15は、第2の電池モジュール12による外部への電力供給をオンまたはオフに切り替える。第2のスイッチ15のオンまたはオフの切り替えについては後述する。
【0018】
第3のスイッチ(リレー)16は、ヒータ13の一端と第2の電池モジュール12の正極との間に配置されている。第3のスイッチ16は、ヒータ13の一端と第2の電池モジュール12の正極との間の電気的な接続状態をオンまたはオフに切り替える。これにより、第3のスイッチ16は、第2の電池モジュール12によるヒータ13への電力供給をオンまたはオフにする。第3のスイッチ16のオンまたはオフの切り替えについては後述するが、一例として、第3のスイッチ16は、エンジン始動前にヒータ13への電力供給をオンにする。
【0019】
温度センサ17は、第1の電池モジュール11の近傍に配置されている。温度センサ17は、第1の電池モジュール11に接触していても、接触していなくてもよい。温度センサ17は、第1の電池モジュール11の温度を計測する。
【0020】
制御部18は、リチウムイオン電池パック1を構成する各要素を制御する。例えば、制御部18は、第1のスイッチ14をオンまたはオフに切り替える。制御部18は、第2のスイッチ15をオンまたはオフに切り替える。制御部18は、第3のスイッチ16をオンまたはオフに切り替える。制御部18は、温度センサ17が計測した温度の情報(以下、温度情報という)を受信する。制御部18は、温度情報に基づいて各スイッチの状態を切り替える。制御部18による温度情報に基づいた制御については後述する。
【0021】
次に、第1のスイッチ14、第2のスイッチ15及び第3のスイッチ16それぞれのオンまたはオフの切り替えについて説明する。
図2は、リチウムイオン電池パック1の一例となる動作を示す表である。
図2は、車両の各モードにおける各スイッチの状態を示している。
【0022】
車両が駐車状態から走行状態まで遷移する際、車両のモードは、
図2に示す駐車モード、加熱モード、始動モード、通常運転モードの順で遷移する。
駐車モードは、エンジンが停止しているモードである。
加熱モードは、エンジン始動前にヒータ13を加熱するモードである。加熱モードは、例えばエンジン始動のトリガーが入力された後のモードである。
始動モードは、エンジン始動時のモードである。
通常運転モードは、エンジン始動後の車両が走行しているモードである。
【0023】
駐車モードにおける各スイッチの状態について説明する。
駐車モードでは、第1のスイッチ14はオフであり、第2のスイッチ15はオンであり、第3のスイッチ16はオフである。これにより、第1の電池モジュール11は、一般負荷4へ電力を供給することはないが、第2の電池モジュール12は、一般負荷4へ電力を供給することができる。そのため、エンジンが停止していても、一般負荷4は利用可能である。
【0024】
加熱モードにおける各スイッチの状態について説明する。
駐車モードから加熱モードへ遷移する際に、各スイッチの状態は、制御部18の制御に基づいて以下のように切り替わる。
第1のスイッチ14は、制御部18の制御に基づいて、オフからオンへ切り替わる。これにより、第1の電池モジュール11は、外部へ電力を供給することができる。第2のスイッチ15は、制御部18の制御に基づいて、オンからオフへ切り替える。第3のスイッチ16は、制御部18の制御に基づいて、オフからオンへ切り替える。これにより、第2の電池モジュール12は、外部へ電力を供給することなく、ヒータ13へ電力を供給することができる。そのため、第1の電池モジュール11は、ヒータ13によって加熱される。
【0025】
始動モードにおける各スイッチの状態について説明する。
加熱モードから始動モードへ遷移する際に、各スイッチの状態は、制御部18の制御に基づいて以下のように切り替わる。
制御部18は、温度情報を参照して、第1の電池モジュール11の温度が閾値以上か否かを判断する。閾値は、第1の電池モジュール11がスタータ3を起動可能な電力を供給できる出力特性を得られる温度である。これは、第1の電池モジュール11の出力特性が温度上昇に応じて上昇するからである。閾値は、適宜変更可能である。
【0026】
第1の電池モジュール11の温度が閾値未満である場合、制御部18は加熱モードを維持する。つまり、第3のスイッチ16はオンの状態を維持する。第1の電池モジュール11の温度が閾値以上である場合、第3のスイッチ16は、制御部18の制御に基づいて、オンからオフへ切り替わる。これにより、第2の電池モジュール12は、ヒータ13へ電力を供給することはない。第3のスイッチ16をオンからオフへ切り替えるのは、第1の電池モジュール11の出力特性がスタータ3を起動するのに十分であれば第1の電池モジュール11をこれ以上加熱する必要がないからである。なお、第1のスイッチ14はオンの状態を維持し、第2のスイッチ15はオフの状態を維持する。これにより、始動モードにおいて、第1の電池モジュール11は、スタータ3へ電力を供給する。これにより、スタータ3が起動し、スタータ3の動作に従ってエンジンが始動する。なお、第1の電池モジュール11は、一般負荷4へ電力を供給することもできる。
【0027】
通常運転モードにおける各スイッチの状態について説明する。
始動モードから通常運転モードへ遷移する際に、各スイッチの状態は、制御部18の制御に基づいて以下のように切り替わる。
第2のスイッチ15は、制御部18の制御に基づいて、オフからオンへ切り替わる。なお、第1のスイッチ14はオンの状態を維持し、第3のスイッチ16はオフの状態を維持する。これにより、第1の電池モジュール11及び第2の電池モジュール12は、一般負荷4へ電力を供給する。そのため、通常運転モード中に一般負荷4は利用可能である。
【0028】
次に、リチウムイオン電池パック1の別の例となる動作について説明する。
図3は、リチウムイオン電池パック1の別の例となる動作を示す表である。ここでは、
図2に示す例と異なる点について説明する。
駐車モードにおいて、
図2に示す例では第1のスイッチ14はオフであったが、
図3に示す例では第1のスイッチ14はオンである。これにより、駐車モードにおいて、第2の電池モジュール12が一般負荷4へ電力を供給することができるだけでなく、第1の電池モジュール11も一般負荷4へ電力を供給することができる。そのため、
図3に示す例のリチウムイオン電池パック1は、
図2に示す例のリチウムイオン電池パック1よりも一般負荷4へ長時間電力を供給することができる。
【0029】
始動モードにおいて、
図2に示す例では第2のスイッチ15はオフであったが、
図3に示す例では第2のスイッチ15はオンである。これにより、始動モードにおいて、第2の電池モジュール12は一般負荷4へ電力を供給することができる。そのため、一般負荷4は、リチウムイオン電池パック1から安定して電力が供給される。
【0030】
図4は、リチウムイオン電池パック1のさらに別の例となる動作を示す表である。ここでは、
図2に示す例と異なる点について説明する。
始動モードにおいて、
図2に示す例では第2のスイッチ15はオフであったが、
図4に示す例では
図3に示す例と同様に第2のスイッチ15はオンである。
【0031】
本実施形態によれば、リチウムイオン電池パック1は、低温下であっても出力性能が低下することはない。そのため、リチウムイオン電池パック1は、エンジンのコールドクランク性能の低下を防ぐことができる。このように、本実施形態によれば、低温出力性能を向上させるエンジン始動用のリチウムイオン電池パック1を提供することができる。
【0032】
なお、第2の電池モジュール12の容量は、ヒータ13が第1の電池モジュール11の温度を閾値(所定温度)まで上昇させるために予め定められた時間期間、ヒータ13へ電力を供給するのに十分な容量である。これにより、ヒータ13は、第1の電池モジュール11を加熱するための電力を第2の電池モジュール12から安定して供給される。
【0033】
次に、本実施形態のいくつかの変形例について説明する。
第1の変形例について説明する。
第1の電池モジュール11及び第2の電池モジュール12は同じ電圧特性の電池モジュールで構成されている。また、第1の電池モジュール11の出力密度は、第2の電池モジュール12の出力密度と異なる。具体的には、第1の電池モジュール11は、第2の電池モジュール12よりも高出力密度である。高出力密度とは、エネルギーの瞬間的な出力能力が高いことを意味している。この例では、第1の電池モジュール11の抵抗値は、第2の電池モジュール12の抵抗値よりも低い。
【0034】
エンジン始動時にスタータ3へ電力を供給する電池モジュールは、例えば1秒以下の短時間に瞬間的な出力が要求されている。上述のように構成されている第1の電池モジュール11は、第2の電池モジュール12よりも短時間に瞬間的な出力を供給することができる。
【0035】
第1の変形例によれば、リチウムイオン電池パック1は、低温下であっても効率的にエンジンを始動することができる。
【0036】
第2の変形例について説明する。
第1の電池モジュール11及び第2の電池モジュール12は同じ電圧特性の電池モジュールで構成されている。また、第1の電池モジュール11のエネルギー密度は、第2の電池モジュール12のエネルギー密度と異なる。具体的には、第2の電池モジュール12は、第1の電池モジュール11よりも高エネルギー密度である。高エネルギー密度とは、エネルギーの連続的な出力能力が高いことを意味している。
【0037】
ヒータ13へ電力を供給する電池モジュールは、第1の電池モジュール11が所定の温度になるまでの間、連続的な出力が要求されている。上述のように構成されている第2の電池モジュール12は、高エネルギー密度でヒータ13へ電力を供給することができる。これにより、ヒータ13は、安定して第1の電池モジュール11を加熱することができる。
【0038】
第2の変形例によれば、リチウムイオン電池パック1は、低温下であっても効率的にエンジンを始動することができる。
【0039】
なお、第2の変形例は、第1の変形例と組み合わせてもよい。つまり、第1の電池モジュール11は第2の電池モジュール12よりも高出力密度となるように構成され、かつ、第2の電池モジュール12は第1の電池モジュール11よりも高エネルギー密度となるように構成されてもよい。この場合、リチウムイオン電池パック1は、第1の変形例で説明した効果と第2の変形例で説明した作用及び効果の両方を得ることができる。
【0040】
第3の変形例について説明する。
第1のスイッチ14、第2のスイッチ15及び第3のスイッチ16は、リチウムイオン電池パック1に含まれる制御部18とは異なる制御部によって制御されてもよい。例えば、第1のスイッチ14、第2のスイッチ15及び第3のスイッチ16は、車両に搭載されている要素を制御する別の制御部(図示せず)によって制御されてもよい。例えば、第1のスイッチ14、第2のスイッチ15及び第3のスイッチ16のうちの1つまたは2つのスイッチは制御部18によって制御されてもよい。他方、第1のスイッチ14、第2のスイッチ15及び第3のスイッチ16のうち制御部18によって制御されない1つまたは2つのスイッチは別の制御部によって制御されてもよい。
【0041】
(実施例)
次に、本実施形態で説明したリチウム電池モジュール(電池)1の実施例について説明する。
高出力タイプのセルa(10Ah、2.4V)と高容量タイプのセルb(40Ah、2.4V)を使い、セルaを5個直列接続した第1の電池モジュール11(10Ah)と、セルbを5個直列に接続した第2の電池モジュール11(40Ah)を用意した。
【0042】
第1の電池モジュール11には第1のスイッチ(リレー)14を接続し、第2の電池モジュール12には第2のスイッチ(リレー)15を接続し、第1の電池モジュール11と第2の電池モジュール12を並列接続した。
【0043】
1000Wの平板のヒータ13の表面で第1の電池モジュール11のセル表面を覆うようにヒータ13を配置した。さらに、ヒータ13は、電源を第2の電池モジュール12からとれるように第3のスイッチ(リレー)16を介して第2の電池モジュール12と接続した。上述のように構成したリチウムイオン電池パック1を検討した。
リチウムイオン電池パック1は、オルタネータ2、スタータ3及び一般負荷4に繋がるネットワークに接続し、エンジン始動を行う。
【0044】
比較例として、総容量の等しい50Ah、2.4Vの高容量タイプのセルcを5個直列に接続した電池Cを検討した。
両電池が満充電、−30℃の状態から、エンジン始動のための放電する場合を考える。
初期状態(上述の駐車モード)において、第1のスイッチ14はオフであり、第2のスイッチ15はオンであり、第3のスイッチ16はオフである。まず、加熱のために、第1のスイッチ14をオンにし、一般負荷4に電力を供給できるようにし、第2のスイッチ15をオフ、第3のスイッチ16をオンして、第1の電池モジュール11を60秒間加熱する。加熱により、第1の電池モジュール11の温度は−30℃から−10℃となると計算できた。そこで、第3のスイッチ16をオフして、第1のスイッチ14をオンし、エンジンのスタータ3を起動させると、第1の電池モジュール11から500Aで約5秒間の放電が可能となり、エンジンが始動する。
一方、比較例の電池Cは、−30℃の状態から放電できる電流は、200−300A程度であり、エンジン始動には不足の状態である。
【0045】
このように、同様のエネルギー量(50Ah、12V)を持つ電池であっても、上記説明のとおり、高エネルギー密度の第2の電池モジュール12が高出力密度の第1の電池モジュール11を温めることが可能な構成とすることで、コールドクランキングが可能となる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。