(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記いずれの公報所載の従来のプリント配線板にあっても、高周波領域においては伝送損失を十分に小さくすることができるものと言えない。特に、誘電体層の両面に一対の導電体層を積層し、この一方の導電体層が配線を構成する場合、この配線の幅を大きくすると、誘電正接tanδが大きくなり、これに伴い伝送損失が大きくなるという不都合を有している。このため、従来のプリント配線板は、幅の狭い配線を形成することを要するが、幅の狭い配線にあっては形成誤差の許容範囲が小さいため、配線の形成が困難になり、ひいては製造コストの増大を招来するおそれがある。
【0008】
上記事情に基づいて本発明はなされたものであり、本発明は、高周波領域においても伝送損失が十分に小さく、しかも配線の形成を容易かつ確実に行い得る高周波用プリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このように課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討したところ、配線の幅と誘電体層の厚みとの関係を一定条件の範囲とすることで、伝送損失の増大を抑制しつつ配線の幅を大きくすることができることを見出した。
【0010】
その結果得られた上記課題を解決する本発明は、
フッ素樹脂製の誘電体層と、
この誘電体層の両面に積層される一対の導電体層とを備え、
上記一対の導電体層のうち少なくとも一方が配線パターンを構成し、
上記配線の平均幅が25μm以上300μm以下であり、
上記配線が積層される領域の誘電体層の平均厚みが5μm以上125μm以下であり、
上記誘電体層の平均厚みに対する上記配線の平均幅の比が2.4倍以上30倍以下である
高周波用プリント配線板である。
【0011】
当該高周波用プリント配線板は、配線の平均幅が上記範囲内にあるので、配線の形成誤差の許容範囲を大きく設定することができ、このため配線の形成を容易かつ確実に行うことができる。また、当該高周波用プリント配線板は、誘電体の厚み及び配線の平均幅に対する比を上記範囲内とすることで、配線の平均幅が上記範囲内であるにもかかわらず、誘電正接を十分に小さくすることができ、高周波領域においても伝送損失を十分に小さくすることができる。
【0012】
当該高周波用プリント配線板は、周波数10GHzにおいて配線パターンの伝送損失が0.23dB/cm以下であるとよく、これにより高周波領域の伝送に好適に用いることができる。
【0013】
また当該高周波用プリント配線板は、周波数100GHzにおいて上記配線パターンの伝送損失が3.1dB/cm以下であるとよく、これによりさらに高い高周波領域の伝送に好適に用いることができる。
【0014】
上記導電体層の十点平均粗さ(Rz)としては4μm以下が好ましいが、表皮効果から2μm以下が特に好ましい。これにより、伝送損失を十分に小さくできるとともに伝送速度も十分な大きさとすることができる。つまり、高周波領域においては表皮効果によって電流が導体の表面部分を流れるため、十点平均粗さ(Rz)が大きいと、伝搬距離が長くなり伝送遅延が生じ、また抵抗減衰等によって伝送損失が大きくなるおそれがあり、これに対して上記のように十点平均粗さ(Rz)を上記の範囲内とすることで好適な伝送速度及び伝送損失とすることができる。
【0015】
当該高周波用プリント配線板は、上記誘電体層のフッ素樹脂が架橋され、かつ導電体層と化学結合していることが好ましい。このように誘電体層のフッ素樹脂が架橋するとともに導電体層と化学結合していることで、誘電体層と導電体層との密着性が向上し、剥離強度にも優れる。このため、例えば回路形成中において誘電体層と導電体層との剥離が生じにくく、特に当該高周波用プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である場合には使用中における誘電体層と導電体層との剥離も生じにくい。フッ素を架橋することにより、フッ素のTg以上の領域での変形を低下させることができるため、精密実装のために有益である。
【0016】
上記フッ素樹脂の架橋及び化学結合を電離放射線の照射により行うとよい。これにより、電離放射線の照射によってフッ素樹脂の架橋及びフッ素樹脂と導電体層との化学結合を容易かつ確実に行わせることができる。
【0017】
更に、上記導体層の、誘電体層との界面にシランカップリング剤を含む防錆層が形成され、シランカップリング剤とフッ素樹脂とが化学結合していることが好ましい。これにより、所望の接着力によって誘電体層と導体層とを容易かつ確実に接着することができる。
【0018】
なお、「配線の平均幅」とは、配線の直線部における配線の積層面積を配線の直線部の長さで割った値を意味する。「十点平均粗さ(Rz)」は、JIS B 0601−1994に準拠して測定される値であり、評価長さ(l)を3.2mmとし、カットオフ値(λc)を0.8mmとした値である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の高周波用プリント配線板は、高周波領域においても伝送損失が十分に小さく、しかも配線の形成を容易かつ確実に行うことができる。また、銅膜と誘電体層とは、例えば260℃、1分間の熱衝撃を負荷しても剥離しないよう設けることも可能であるため、例えば表面実装に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る高周波用プリント配線板の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0022】
[高周波用プリント配線板]
図1の高周波用プリント配線板1は、フッ素樹脂製の誘電体層3と、この誘電体層3の両面に積層される一対の導電体層2,4とからなる三層構造を有する。当該高周波用プリント配線板1は例えばフレキシブルプリント配線板として用いられる。
【0023】
上記一対の導電体層2,4のうち一方(表面側)の導電体層2は配線2aを有する配線パターンを構成している。また、他方の導電体層4は、一方の面(表面)に上記誘電体層3が積層されるベース層を構成している。なお、この一対の導電体層2,4は、金属から構成され、一般的には銅から構成されている。
【0024】
(配線パターン)
上記配線パターン2は、複数の配線2aを有している。各配線2aは、高周波用プリント配線板1の仕様によって適宜設定される。この配線パターン2は、金属膜のエッチングや切削、あるいは印刷等の手法によって形成することができる。なお、配線2aは、誘電体層3との界面に形成された防錆層(図示省略)を有することが好ましく、この防錆層はシランカップリング剤を含むとよい。また、この防錆層のシランカップリング剤が、誘電体層3のフッ素樹脂と化学結合しているとよい。なお、この防錆層は、後述するように誘電体層3との化学結合前にシランカップリング剤で表面処理することにより形成することができる。
【0025】
また、上記配線パターン2によって構成される回路のインピーダンスは、高周波用プリント配線板1の仕様によって適宜設定されるが、例えば10Ω以上100Ω以下とすることができ、また30Ω以上80Ω以下とすることが好ましい。
【0026】
上記配線パターン2の配線2aは、帯状の直線部、この直線部を他の配線に電気的に接続するため接続部、種々の素子を実装するためのランド部等を有している。この配線2a(直線部)の平均幅は、25μm以上300μm以下であり、好ましくは30μm以上200μm以下、より好ましくは60μm以上100μm以下である。上記配線2aの平均幅が上記下限値未満であると、配線2aの形成誤差の許容範囲が小さくなるので、配線2aの形成作業が煩雑となるおそれがある。一方、上記配線2aの平均幅が上記上限値を超えると、不必要に配線2a幅が大きくなり、後述するように誘電体層3の平均厚さとの比を調節しても伝送損失が不要に増加するおそれがあるとともに、配線パターン2の設計の自由度が少なくなる。
【0027】
上記配線2a(直線部)の平均厚みとしては、1μm以上2000μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下がさらに好ましい。この配線2aの平均厚みが上記範囲内にあることによって、配線2aの形成作業が煩雑となるおそれが少ないとともに、所望のインピーダンスを容易に得ることができる。
【0028】
なお、上記配線パターン2の周波数10GHzにおける伝送損失としては、0.230dB/cm以下が好ましく、0.228dB/cm以下がより好ましい。これにより、高周波領域の伝送に好適に用いることができる。
【0029】
また、上記配線パターン2の周波数100GHzにおける伝送損失としては、3.10dB/cm以下が好ましく、3.05dB/cm以下がより好ましく、3.00dB/cm以下がさらに好ましい。これにより、100GHz以上のより高い高周波領域の伝送にも好適に用いることができる。
【0030】
(ベース層)
上記ベース層4は、上述のように誘電体層3の裏面全面に亘って配設される金属層からなる層である。このベース層4は、配線パターン2と閉回路を構成する。例えば、一方で、上記配線パターン2とは独立した回路の一部としても利用される。このベース層4の平均厚みとしては、1μm以上2000μm以下が好ましく、10μm以上300μm以下がより好ましい。これにより、誘電体層3の形成に際して等においてベース層4が十分な強度を有するとともに、適切な厚みで表皮効果を利用することができる。
【0031】
上記ベース層4の表面(誘電体層3との界面)は、粗面化処理およびプライマー処理がなされず、後述するように電離放射線の照射によって誘電体層3の表面と化学結合をしている。また、上記ベース層4の表面の十点平均粗さ(Rz)としては4μm以下が好ましいが、2μm以下が特に好ましい。また、ベース層4の表面の算術平均粗さ(Ra)としては0.2μm以下が好ましい。このようにベース層4の表面粗さを設定することで、好適な伝送速度及び伝送損失としつつ上記フッ素樹脂との化学結合等により接合強度を確保することができる。なお、上記誘電体層3のフッ素樹脂は上記配線パターン2の裏面とも化学結合をしており、この配線パターン2の裏面も、上記のような表面粗さとすることが好ましく、これにより好適な伝送速度及び伝送損失とすることができる。なお、ここで上記「平均算術粗さ(Ra)」とは、JIS B 0601−1994に準拠して測定される値であり、評価長さ(l)を3.2mmとし、カットオフ値(λc)を0.8mmとした値である。
【0032】
(誘電体層)
上記誘電体層3は、主成分がフッ素樹脂である樹脂層から形成されている。この誘電体層3の主成分のフッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビリニデン(PVdF)等を挙げることができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。このフッ素樹脂層に、反り防止や寸法安定性向上のために、フィラーやクロス、フィルムを挿入または混合させてもよい。また、着色、放熱性、反射性を付与するために、フィラーや添加剤を混合することもできる。
【0033】
誘電体層3のフッ素樹脂は架橋させることが好ましく、具体的には、フッ素樹脂のポリマーの主鎖の炭素原子同士が共有結合している。また、このフッ素樹脂は上記ベース層4の材料と化学結合している。具体的には、フッ素樹脂のポリマーの主鎖の炭素原子とベース層4の表面に存在する原子とが共有結合している。この誘電体層3のフッ素樹脂を架橋させ、さらにベース層4と化学結合させる方法として、例えば無酸素及びフッ素樹脂の溶融状態下で電離放射線を照射する方法等によりフッ素ラジカルを発生させることで実施できる。この照射方法については、後述の当該高周波用プリント配線板1の製造方法の説明において詳説する。
【0034】
上記誘電体層3の比誘電率としては、1.2以上2.7以下が好ましく、1.4以上2.5以下がより好ましく、1.6以上2.3以下がさらに好ましく、2.25程度であることが最も好ましい。この比誘電率が上記下限値未満であると、誘電体層3の寸法安定度の確保が難しくなる。特に発泡により非誘電率を低下させた場合には、弾性率が低下しすぎて加工、搬送が困難になりかつ高額化するおそれがある。一方、上記比誘電率が上記上限値を超えると誘電正接が大きくなり伝送損失を十分に小さくできないおそれが生ずるとともに、十分な伝送速度が得られないおそれが生ずる。
【0035】
上記誘電体層3の平均厚み(上記配線2aが積層されている領域の平均厚み)は、5μm以上125μm以下であり、好ましくは7μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。この誘電体層3の平均厚みが上記下限値未満であると、誘電正接が大きくなり伝送損失を十分に小さくできないおそれが生ずるとともに、十分な伝送速度が得られないおそれが生じ、また当該高周波用プリント配線板1の形成作業が困難となるおそれがある。一方、上記誘電体層3の平均厚みが上記上限値を超えると、誘電体層3が不必要に厚くなり、高周波用プリント配線板1の薄型化の要請に反するおそれがあるとともに、誘電体層3の材料費が嵩むおそれがあり、またフレキシブル性が求められる場合において誘電体層3が可撓性に欠けるおそれがある。
【0036】
また、上記誘電体層3の平均厚み(上記配線2aが積層されている領域の平均厚み)に対する配線2aの平均幅の比は、2.4倍以上30倍以下であり、好ましくは2.6倍以上5倍以下、より好ましくは2.8倍以上3.5倍以下である。上記比が上記下限値未満であると、配線2aの幅が狭くなり過ぎ、又は誘電体層3が不必要に厚くなり過ぎることで、上述したデメリットの生ずるおそれがある。一方、上記比が上記上限値を超えると、配線2aの幅が不必要に広くなり過ぎる、又は誘電体層3が薄くなり過ぎることで、上述したデメリットの生ずるおそれがある。
【0037】
[製造方法]
当該高周波用プリント配線板1は、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、以下の工程を有する製造方法により容易かつ確実に製造することができる。
(1)誘電体層形成組成物3を用い、ベース層4の表面に誘電体層3を積層する工程
(2)誘電体層3に電離放射線を照射する工程
(3)上記誘電体層3の表面に配線パターン2を形成する工程
【0038】
<(1)誘電体層積層工程>
上記積層工程は、金属層であるベース層4に誘電体層形成組成物3をディスパーションとして
図2(A)に示すように供給する手順と、この供給された誘電体層形成組成物3をスピンコート法やキャスティング法などを用いてベース層4の表面に
図2(B)に示すように均一に塗布し、乾燥し、その後加熱により焼成する手順とを有している。なお、ベース層4と、誘電体形成材料組成物からなるフィルムとを積層してもよい。この誘電体層形成組成物は、上述のフッ素樹脂を主成分とするが、その他のフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱伝導剤、中空粒子、メッキ付与剤、接着付与剤、接着架橋助剤などの任意成分を添加することもできる。
【0039】
<(2)電離放射線照射工程>
上記電離放射線照射工程は、誘電体層3に
図2(C)に示すように電離放射線を照射することで、誘電体層3中のフッ素樹脂を架橋し、ベース層4の表面と化学結合させる工程である。なお、この電離放射線照射工程としては、(1)誘電体層積層工程後に後述の(3)配線パターン形成工程を行い、その後に配線パターン2の表面に電離放射線を照射することもできる。
【0040】
この電離放射線照射に際して、無酸素雰囲気、具体的には酸素濃度が100ppm以下の雰囲気で、かつフッ素樹脂が溶融した状態に保ちながら電離放射線を照射し、フッ素樹脂を架橋させ、さらにベース層4と化学結合させる。
【0041】
上記無酸素雰囲気としては、酸素濃度を5ppm以下とすることがより好ましい。酸素濃度が高いと電離放射線の照射によってフッ素樹脂の主鎖が切断されるおそれがある。また、フッ素樹脂を溶融させる温度としては、フッ素樹脂の融点より0℃以上30℃未満高い温度が好ましい。フッ素樹脂を融点より30℃以上高い温度に加熱すると、フッ素樹脂の熱分解が促進されて材料特性が低下するおそれがある。
【0042】
上記電離放射線としては、例えばγ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオン線等を用いることができる。また、電離放射線の照射線量としては、0.01kGy以上1000kGy以下が好ましく、1kGy以上500kGy以下がより好ましい。照射線量が上記下限未満の場合、フッ素樹脂の架橋反応が十分進行しないおそれがある。逆に、上記上限を超える場合、フッ素樹脂の分解が生じやすくなるおそれがある。
【0043】
<(3)配線パターン形成工程>
上記配線パターン形成工程は、誘電体層3の表面に所定パターンの導電体層を形成する工程である。この形成方法は特に限定されず、例えば金属箔を積層後にエッチングする、打ち抜いた金属箔を積層する、金属線を配列するなどによりパターン化することが採用される。
【0044】
[利点]
当該高周波用プリント配線板1は、配線2aの形成誤差の許容範囲を大きく設定することができ、このため配線2aの形成が容易かつ確実に行い得る。また、フッ素樹脂製の誘電体層3の厚み及びこの配線2aの平均幅に対する比が上記範囲内とすることで、配線2aの平均幅が上述のような範囲内であるにもかかわらず、誘電正接を十分に小さくすることができ、高周波領域においても伝送損失を十分に小さくすることができる。
【0045】
また、所定環境下において電離放射線を照射することで誘電体層3のフッ素樹脂が導電体層2と化学結合しているため、誘電体層3と導電体層4との密着性が向上し、剥離強度にも優れる。このため、例えば回路形成中において誘電体層3と導電体層4との剥離が生じにくく、また特にフレキシブル性が求められるフレキシブルプリント配線板の場合には使用中における誘電体層3と導電体層4との剥離が生じにくい。なお、(1)誘電体層積層工程後に(3)配線パターン形成工程を行い、その後に照射工程を行う場合、つまりは誘電体層3の表面に導電パターン2を積層した後に、上述のように電離放射線を照射する場合には、誘電体層3のフッ素樹脂と配線パターン2とが化学結合するため、誘電体層3と配線パターン2との密着性を向上させることができる。
【0046】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0047】
つまり、上記実施形態においては、誘電体層3と一対の導電体層2,4との三層構造のものについて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、例えば一対の誘電体層と、この一対の誘電体の間の導電体層と、上記一対の誘電体層の外面にそれぞれ配設される一対の導電体層とを備える五層構造や、さらなる多層構造の高周波用プリント配線板も特許請求の範囲内にある。
【0048】
また、上記実施形態においては、フレキシブル性を有するものを主として説明したが、当該高周波用プリント配線板は、フレキシブル性を有さないものであってもよい。
【実施例1】
【0049】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[高周波用プリント配線板の概要]
銅膜からなるベース層の表面に樹脂製の誘電体層を設け、この誘電体層の表面に一本の帯状の配線を配設することで実施例1〜6、比較例1〜12の高周波用プリント配線板を得る。なお、銅膜の平均厚みが10μm以上50μm以下、表面粗度が1.5μmのものを用いる。また、銅膜には防錆処理層が施されている。銅膜と誘電体層とは、化学結合させるため300g/cm以上の強度で接着しており、屈曲させても剥離しない。また、銅膜と誘電体層とは260℃、1分間の熱衝撃を負荷しても剥離しない。
【0051】
[実施例1〜6]
実施例1〜6においては、主成分をテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)とするフッ素樹脂材料を銅膜の表面に積層し、実施形態で説明したように電離放射線を照射することで誘電体層を形成する。この誘電体層の比誘電率εrは、2.1である。誘電体層の平均厚みは、実施例1及び4では12.5μm、実施例2及び5では25μm、実施例3及び6では40μmである。
【0052】
配線の平均厚みを、実施例1〜3では12μmとし、実施例4〜6では20μmとした。その上でインピーダンスが50Ωとなるよう配線の平均幅を調節すると、各配線の平均幅は、実施例1では32.2μm、実施例2では69.7μm、実施例3では115.9μm、実施例4では29.8μm、実施例5では65.9μm、実施例6では111.0μmとなる。
【0053】
[比較例1〜6]
比較例1〜6においては、上記実施例1〜6のようなフッ素樹脂製の誘電体層ではなく、液晶ポリマー(LCP)製の誘電体層を形成する。この誘電体層の比誘電率εrは、3.0である。誘電体層の平均厚みは、比較例1及び4では12.5μm、比較例2及び5では25μm、比較例3及び6では40μmである。
【0054】
配線の平均厚みを、比較例1〜3では12μmとし、比較例4〜6では20μmとした。その上でインピーダンスが50Ωとなるよう配線の平均幅を調節すると、各配線の平均幅は、比較例1では24.7μm、比較例2では54.2μm、比較例3では90.6μm、比較例4では22.6μm、比較例5では50.8μm、比較例6では86.3μmとなる。
【0055】
[比較例7〜12]
比較例7〜12においては、上記実施例1〜6のようなフッ素樹脂製の誘電体層ではなく、ポリイミド製の誘電体層を形成する。この誘電体層の比誘電率εrは、3.4である。誘電体層の平均厚みは、比較例7及び10では12.5μm、比較例8及び11では25μm、比較例9及び12では40μmである。
【0056】
配線の平均厚みを、比較例7〜9では12μmとし、比較例10〜12では20μmとした。その上でインピーダンスが50Ωとなるよう配線の平均幅を調節すると、各配線の平均幅は、比較例7では22.3μm、比較例8では49.3μm、比較例9では82.6μm、比較例10では20.3μm、比較例11では46.0μm、比較例12では78.5μmとなる。
【0057】
[伝送損失(単位:dB/cm)]
上記実施例1〜6及び比較例1〜12について周波数10GHz及び100GHzにおける伝送損失を測定すると、表1の通りとなる。この表1からも明らかなように、各実施例のものは対応する各比較例のものに比して高周波数帯域での伝送損失が小さいことが分かる。この伝送損失は、校正されたネットワークアナライザに実施例1〜12及び比較例1〜12を各々接続し、SパラメータのS21とS12との特性を計測することで得られる。
【0058】
【表1】