【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、
ハウジング内において、点火器本体の周囲が点火器カラーで包囲された点火器と伝火薬が収容された点火手段室を有しているガス発生器であって、
前記点火手段室が、前記伝火薬が充填された点火手段室カップの開口部側の内周壁面が前記点火器の点火器カラーの外周壁面に密着した状態になるように圧入されて形成されたものであり、
前記点火器カラーの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh1)と前記点火手段室カップの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh2)の比(Vh2/Vh1)が0.25〜0.65の範囲である、ガス発生器を提供する。
【0010】
本発明のガス発生器は、点火器の点火器カラーと点火手段室カップの組み合わせを有している。
点火器は、ガス発生器用の電気式点火器として汎用されている周知のものであり、着火部と導電ピンを有する点火器本体の周囲が、必要に応じて使用される樹脂を介して点火器カラーで包囲されたものである。
点火手段室カップは、その内部が点火手段室となるものであり、前記点火器と伝火薬(エンハンサ剤)が収容される。
点火器カラーと点火手段室カップは、炭素鋼、炭素鋼にニッケル、クロム、タングステン、マンガン、ケイ素、モリブデンなどの合金元素を添加した合金鋼などからなるものが好ましい。
【0011】
前記のVh2/Vh1は0.25〜0.65の範囲であり、好ましくは0.30〜0.60、より好ましくは0.35〜0.55の範囲である。
Vh2/Vh1が1.0以上である場合には、圧入作業自体の困難性が非常に高く、Vh2/Vh1が1.0よりも小さいが、1.0に近似する数値(例えば0.8以上、1.0未満)である場合には、点火器カラーと点火手段室カップの硬度差が小さいため、圧入作業が難しく、点火器カラーと点火手段室カップの接触部分の密着度も十分に高めることができなくなる。
【0012】
前記点火器カラーの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh1)は160〜210が好ましく、170〜200がより好ましく、175〜195がさらに好ましい。
前記点火手段室カップの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh2)は、55〜105が好ましく、60〜100がより好ましく、65〜95がさらに好ましい。
Vh1とVh2は、Vh2/Vh1が上記範囲を満たすように調整されるものである。
【0013】
点火手段室カップのビッカース硬度は、スタンピング、鍛造などの公知の金属成形法を適用して所定のカップ形状に成形した後、焼鈍処理することで調整することができる。
焼鈍処理は、好ましくは600〜900℃、より好ましくは700〜800℃で2時間程度保持する方法を適用することができる。
なお、点火器カラーのビッカース硬度は、使用する金属自体のものであるが、必要に応じて上記焼鈍処理をしてビッカース硬度を調整してもよい。
【0014】
点火手段室カップと点火器を組み立てるときは、
内部に所定量の伝火薬(または伝火薬として機能するガス発生剤)が充填された点火手段室カップを下にして、その開口部に対して点火器の点火器カラーを圧入して取り付ける方法、
点火器の点火器カラーを上方に固定した状態で、所要量の伝火薬が充填された点火手段室カップを開口部側から圧入して取り付ける方法、
点火手段室カップとして筒状部と蓋部(底部)の2つからなるものを使用し、点火器の点火器カラーに筒状部の一端側の開口部から圧入した後、他端開口部から伝火薬を充填し、その後、開放状態の他端開口部に蓋部を取り付けたあと、レーザー溶接などで固定する方法、
を適用することができる。
【0015】
本発明では、点火器カラーと点火手段室カップのビッカース硬度の比(Vh2/Vh1)が所定範囲を満たすように調整されている。
このため、例えば、点火手段室カップの開口部から点火器カラーを圧入するとき、前記開口部壁が外側に拡張変形するため、点火器カラーの圧入が容易になり、圧入後には前記開口部壁が内側に縮小変形して元の形状に戻るため、点火手段室カップと点火器カラーの接触部分の密着度も高められる。
【0016】
請求項3の発明は、
ハウジング内において、第1点火器本体の周囲が第1点火器カラーで包囲された第1点火器と伝火薬が収容された点火手段室と、第2点火器本体の周囲が第2点火器カラーで包囲された第2点火器とガス発生剤が収容された燃焼室を有しているガス発生器であって、
前記点火手段室が、
前記伝火薬が充填された点火手段室カップの開口部側の内周壁面が前記第1点火器の第1点火器カラーの外周壁面に密着した状態になるように圧入されて形成されたものであり、
前記第1点火器カラーの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh1)と前記点火手段室カップの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh2)の比(Vh2/Vh1)が0.25〜0.65の範囲であり、
前記燃焼室が、
前記ガス発生剤が充填された燃焼室カップの開口部側の内周壁面が前記第2点火器の第2点火器カラーの外周壁面に密着した状態になるように圧入されて形成されたものであり、
前記第2点火器カラーの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh1)と前記燃焼室カップの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh2)の比(Vh2/Vh1)が0.25〜0.65の範囲である、ガス発生器を提供する。
【0017】
本発明のガス発生器は、点火器の点火器カラーと点火手段室カップの組み合わせと、点火器の点火器カラーと燃焼室カップの組み合わせを有している。
第1点火器と第2点火器は、ガス発生器用の電気式点火器として汎用されている周知のものであり、着火部と導電ピンを有する点火器本体の周囲が必要に応じて使用される樹脂を介して点火器カラー(第1点火器カラー、第2点火器カラー)で包囲されたものである。
点火手段室カップは、その内部が点火手段室となるものであり、前記第1点火器と伝火薬(エンハンサ剤)が収容される。
燃焼室カップは、その内部が燃焼室となるものであり、前記第2点火器とガス発生剤が収容される。
点火器カラー、点火手段室カップ、燃焼室カップは、炭素鋼、炭素鋼にニッケル、クロム、タングステン、マンガン、ケイ素、モリブデンなどの合金元素を添加した合金鋼などからなるものが好ましい。
【0018】
前記のVh2/Vh1は0.25〜0.65の範囲であり、好ましくは0.30〜0.60、より好ましくは0.35〜0.55の範囲である。
Vh2/Vh1が1.0以上である場合には、圧入作業自体の困難性が非常に高く、Vh2/Vh1が1.0よりも小さいが、1.0に近似する数値(例えば0.8以上、1.0未満)である場合には、点火器カラーと点火手段室カップの硬度差が小さいため、圧入作業が難しく、点火器カラーと点火手段室カップの接触部分の密着度も十分に高めることができなくなる。
【0019】
前記点火器カラー(第1点火器カラー、第2点火器カラー)の実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh1)は160〜210が好ましく、170〜200がより好ましく、175〜195がさらに好ましい。
前記点火手段室カップおよび燃焼室カップの実施例に記載の方法により測定される平均ビッカース硬度(Vh2)は、55〜105が好ましく、60〜100がより好ましく、65〜95がさらに好ましい。
Vh1とVh2は、Vh2/Vh1が上記範囲を満たすように調整されるものである。
【0020】
点火手段室カップと第1点火器を組み立てるときは、
内部に所定量の伝火薬(または伝火薬として機能するガス発生剤)が充填された点火手段室カップを下にして、その開口部に対して第1点火器の第1点火器カラーを圧入して取り付ける方法、または
第1点火器の第1点火器カラーを上方に固定した状態で、所要量の伝火薬が充填された点火手段室カップを開口部側から圧入して取り付ける方法、
点火手段室カップとして筒状部と蓋部(底部)の2つからなるものを使用し、第1点火器の第1点火器カラーに筒状部の一端側の開口部から圧入した後、他端開口部から伝火薬を充填し、その後、開放状態の他端開口部に蓋部を取り付けたあと、レーザー溶接などで固定する方法、
を適用することができる。
【0021】
燃焼室カップと第2点火器を組み立てるときは、
内部に所定量のガス発生剤が充填された燃焼室カップを下にして、その開口部に対して第2点火器の第2点火器カラーを圧入して取り付ける方法、または
第2点火器の第2点火器カラーを上方に固定した状態で、所要量のガス発生剤が充填された燃焼室カップを開口部側から圧入して取り付ける方法、
燃焼室カップとして筒状部と底部となる蓋部の2つからなるものを使用し、第2点火器の第2点火器カラーに筒状部の一端側の開口部から圧入した後、他端開口部からガス発生剤を充填し、その後、開放状態の他端開口部に蓋部を取り付けたあと、レーザー溶接などで固定する方法、
を適用することができる。
【0022】
本発明では、点火器カラー(第1点火器カラー、第2点火器カラー)と点火手段室カップおよび燃焼室カップのビッカース硬度の比(Vh2/Vh1)が所定範囲を満たすように調整されている。
このため、例えば、点火手段室カップの開口部または燃焼室カップの開口部から点火器カラー(第1点火器カラー、第2点火器カラー)を圧入するとき、前記開口部壁が外側に拡張変形するため、点火器カラーの圧入(第1点火器カラー、第2点火器カラー)が容易になり、圧入後には前記開口部壁が内側に縮小変形して元の形状に戻るため、点火手段室カップまたは燃焼室カップと点火器カラー(第1点火器カラー、第2点火器カラー)の接触部分の密着度も高められる。