特許第6483969号(P6483969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483969
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   H01F37/00 A
   H01F37/00 M
   H01F37/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-149157(P2014-149157)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-25251(P2016-25251A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】武田 次夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 有希
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】山家 孝志
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−187109(JP,A)
【文献】 特開2010−225839(JP,A)
【文献】 特開2010−267768(JP,A)
【文献】 実開昭58−114012(JP,U)
【文献】 特開2003−092214(JP,A)
【文献】 特開2009−088212(JP,A)
【文献】 特開2013−030623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回するように巻回された筒状のコイルと、
前記コイルの周囲を覆うように配され、金属磁性粉と結合体を含み構成されたコアを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、内周面と、外周面と、上面と、底面とからなり、
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記コイルの周回の中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの外周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh2、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11、
前記コイルの外周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh21としたとき、
h1>h2
および
h11>h21満たすことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
周回するように巻回された筒状のコイルと、
前記コイルの周囲を覆うように配され、金属磁性粉と結合体を含み構成されたコアを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、内周面と、外周面と、上面と、底面とからなり、
前記コアは、前記コイルの周回の中心軸から前記コイルの内周面までの最短長をR1、
前記中心軸から前記コイルの外周面までの最短長をR2、
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの外周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh2、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11、
前記コイルの外周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh21としたとき、
h1>h2≧(R1/R2)×h1
および
h11>h21≧(R1/R2)×h11満たすことを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
周回するように巻回された筒状のコイルと、
前記コイルの周囲を覆うように配され、金属磁性粉と結合体を含み構成されたコアを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、内周面と、外周面と、上面と、底面とからなり、
前記コアは、前記コイルの周回の中心軸から前記コイルの内周面までの最短長をR1、
前記中心軸から前記コイルの外周面までの最短長をR2、
前記中心軸に直交する方向における、前記コイルの外周面から前記コアの表面までの最短長をh3、
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11としたとき
h1>h3≧(R1/R2)×h1
および
h11>h3≧(R1/R2)×h11満たすことを特徴とするリアクトル。
【請求項4】
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11、
前記コイルの外周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh2、
前記コイルの外周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh21としたとき、
h1=h11かつh2=h21を満たすことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項5】
前記コアは、前記中心軸の少なくとも一部を含むように形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項6】
前記コアは、前記中心軸を含む空隙部を有し、前記空隙部の少なくとも一部に中芯部材が配されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関し、特に車両用のインバータ等に好適なリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂といった樹脂材料に磁性粉末を分散・硬化させて得たコアと、このコアの中にコイル部材と中芯部材を埋設してなる、電気自動車やハイブリッド車等の車両用のインバータに用いられるリアクトルが知られている。
【0003】
特許文献1には、絶縁性樹脂の中に磁性体の粉末が分散した磁性粉末混合樹脂からなるコアと、コアに埋設され、通電により磁束が発生する筒状のコイルと、コイルの中心に配置され、コイルの軸線方向を向く柱状に形成された金属製の中芯部材を備え、軸線方向において、コイルの両端面は、中芯部材の一方の端部と他方の端部との間に各々位置し、中芯部材の軸線方向における中央部と一方の端部との間の部分と、中央部と他方の端部との間の部分に、拡径部が形成されており、コイルの軸線を含む断面において、拡径部の表面を円弧状にすることで、拡径部の分だけコアの使用量を減少でき、かつ拡径部を大きく形成することにより中芯部材とコアの接触面積を増やすことができ、放熱性を向上できるとともに磁束が通過するコアの断面の面積が、拡径部とコイルの間で最小とならないためインダクタンスの低下を防止できるリアクトルに関する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、筒状のコイルと、磁性粉末混合樹脂からなり、コイルの周囲を覆うように配置されたコアであって、コイルの軸方向両端面と外周面との間に形成される一対のコイル外周角部を覆う一対のコア外周被覆部を有し、コア外周被覆部には、コイルの軸線を含む断面において凸状曲線となる形状の外周曲面部を形成することにより、磁気特性に影響を与えることなくコア材料を削減することができるリアクトルに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−129937号公報
【特許文献2】特開2011−198970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成によれば、たとえばコアの外周部の一部に依然として磁気回路として利用されない部分が存在するという課題がある。
【0007】
特許文献2の構成によれば、コアの外周被覆部に凸状曲線を形成することで、磁気回路として利用されない部分の材料費削減を図っているものの、凸状曲線として、たとえば曲率半径が1mm以上7mm以下の円弧を好ましいと例示しているにすぎず、小型化および放熱性向上の効果を充分に奏するに至っていないという課題がある。
【0008】
すなわち、従来のリアクトルにおいては、コア形状における磁気回路有効利用およびリアクトルに必要な放熱構造に関する考察が充分に行われておらず、コア形状の小型化および放熱対策が十分でないという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決したリアクトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のリアクトルは、
周回するように巻回された筒状のコイルと、
前記コイルの周囲を覆うように配され、金属磁性粉と結合体を含み構成されたコアを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、内周面と、外周面と、上面と、底面とからなり、
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記コイルの周回の中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの外周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh2、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11、
前記コイルの外周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長さをh21としたとき、
h1>h2
または
h11>h21の少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする。
【0011】
本発明のリアクトルは、
周回するように巻回された筒状のコイルと、
前記コイルの周囲を覆うように配され、金属磁性粉と結合体を含み構成されたコアを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、内周面と、外周面と、上面と、底面とからなり、
前記コアは、前記コイルの周回の中心軸から前記コイルの内周面までの最短長をR1、
前記中心軸から前記コイルの外周面までの最短長をR2、
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの外周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh2、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11、
前記コイルの外周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh21としたとき、
h1>h2≧(R1/R2)×h1
または
h11>h21≧(R1/R2)×h11の少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする。
【0012】
本発明のリアクトルは、
周回するように巻回された筒状のコイルと、
前記コイルの周囲を覆うように配され、金属磁性粉と結合体を含み構成されたコアを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、内周面と、外周面と、上面と、底面とからなり、
前記コアは、前記コイルの周回の中心軸から前記コイルの内周面までの最短長をR1、
前記中心軸から前記コイルの外周面までの最短長をR2、
前記中心軸に直交する方向における、前記コイルの外周面から前記コアの表面までの最短長をh3、
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11、
h1>h3≧(R1/R2)×h1
または
h11>h3≧(R1/R2)×h11の少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする。
【0013】
本発明のリアクトルは、
前記コイルの内周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh1、
前記コイルの内周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh11、
前記コイルの外周面と前記コイルの上面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh2、
前記コイルの外周面と前記コイルの底面の接合部から、前記中心軸方向の前記コアの表面までの最短長をh21としたとき、
h1=h11かつh2=h21を満たすことを特徴とする。
【0014】
本発明のリアクトルにおいて、
前記コアは、前記中心軸の少なくとも一部を含むように形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のリアクトルにおいて、
前記コアは、前記中心軸を含む空隙部を有し、前記空隙部の少なくとも一部に中芯部材が配されてなることを特徴とする。
【0016】
公知のリアクトルは、周回するように巻回し略筒状にしたコイルを、金属磁性粉と、たとえば絶縁性樹脂のような結合体を混練したものを主材料としたコアで覆って構成している。
【0017】
一般的に、リアクトルには、小型であること、たとえば車載目的の場合には、その放熱性が優れていること、さらには、所望のインダクタンス値を確実に得られることが求められる。
【0018】
本発明は、上述の要求を満たすべく、コアの内部の磁束密度分布に注目し成し得たものである。
【0019】
コア内部の磁束密度が疎となるコアの表面近傍、特に角部を削ることにより、インダクタンス値を維持したまま、コアの小型化を図る技術思想は公知である。しかしながら、コア内部の磁束密度分布は複雑であり、コアの小型化のみならず放熱性の向上を加味すれば、単にコアの角部を削るのみでは、市場要求を満たすことはできない。
【0020】
本発明は、コイルの内周面の、コイル周回の中心軸方向に延長したコア内部を通過する磁束のほとんどが、コイル外周面の、コイル周回の中心軸方向に延長したコア内部を通過することに着目し、コイルの上面または底面から、コア表面までの最短長さを定めることで、磁気特性を維持しつつ、コイルの放熱性の向上を図ったものである。
【0021】
すなわち、コイルの上面と底面を覆い、コイルの内周面側から外周面側を貫く磁束に必要なコアの形状は、内周面側と外周面側のコアの断面積をほぼ同一とするのが好ましく、また、コイルの外周面側のコアの厚みは、内周面側のコアの厚みよりも薄く構成したリアクトルとする。
【0022】
また、コイルの上面または底面に接する部分は、コイル周回の中心軸近傍で厚く、コイルの外周面側に向かって薄くなり、外見上は傾斜面を有するコア形状としたリアクトルとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、インダクタンス値を低下させることなく、小型化を実現するとともに、傾斜面によってコアの一部を薄くすることにより、放熱性にも優れたリアクトルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のリアクトルにおける第1の実施の形態を示す図で、(a)は高さ方向の断面斜視図、(b)は磁束密度分布を示す説明図である。
図2】本発明のリアクトルにおける第1の実施の形態を示す図で、(a)は高さ方向の透視断面斜視図、(b)は磁束密度分布およびコイル位置を示す説明図である。
図3】本発明のリアクトルにおける第2の実施の形態を示す図で、(a)は高さ方向の断面図、(b)は構成部品を説明する斜視図である。
図4】本発明のリアクトルにおける第3の実施の形態を示す図で、高さ方向の断面図である。
図5】本発明のリアクトルにおける第4の実施の形態を示す図で、高さ方向の断面図である。
図6】従来のリアクトルを示す図で、(a)は高さ方向の断面斜視図、(b)は磁束密度分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は本発明のリアクトルにおける第1の実施の形態を示す図で、(a)は高さ方向の断面斜視図、(b)は磁束密度分布を示す説明図である。
図2は本発明のリアクトルにおける第1の実施の形態を示す図で、(a)は高さ方向の透視断面斜視図、(b)は磁束密度分布およびコイル位置を示す説明図である。
【0027】
周回するように巻回してなる公知の材料からなるコイル2と、金属磁性粉としてたとえばFe−Si系磁性粒子を用い、主な結合体としてたとえば未硬化エポキシ樹脂を混練して得た複合磁性体および図示しない注型用の、アルミニウム製の上部ケースと下部ケースからなるケースを用意する。
【0028】
下部ケースには、複合磁性体を注ぎ、あらかじめ上部ケースに所定の位置決めを行い配していたコイル1とともに、上部ケースを被せ、密閉後、加熱・硬化させて、内部に筒状のコイル2を配したコア1および入出力端子部3を上部から引き出してなるリアクトル100を得る。
【0029】
コイル2は、内周面と、外周面と、これらに両端で接する上面および底面からなる断面矩形の略円筒状をしている。
【0030】
コア1は、コイル2を覆う略トーラス形状をしており、コイル2の周回の中心軸を、その中心軸としている。
【0031】
図2(b)に示すように、コイル2の内周面と上面の接合部から、コイル2の周回の中心軸(以下、中心軸と表記)方向の、コア1の表面までの最短長をh1、コイル2の外周面と上面の接合部から、中心軸方向のコア1の表面までの最短長をh2としたとき、コイル2の上面を覆う、コア1の厚さであるh1はh2よりも大きく、コア1はコイル2の外周面側に向かって、細くなるように傾斜している。
【0032】
また、コイル2の内周面と底面の接合部から、中心軸方向のコア1の表面までの最短長をh11、コイル2の外周面と底面の接合部から、中心軸方向のコア1の表面までの最短長さをh21としたとき、コイル2の底面を覆う、コア1の厚さであるh11はh21よりも大きく、コア1はコイル2の外周面側に向かって、細くなるように傾斜している。
【0033】
コイル2に通電した際に、コア1の内部に生じる磁束について考察する。たとえばコア1の外周部近傍の断面積S2を通過する磁束は、コア1の内周部近傍の断面積S1を通過すると考えることができる。
ここで、断面積S1、S2は磁束の向きに垂直な面とする。
【0034】
コア1の、コイル2の中心軸から内周面までの最短長をR1、コイル2の中心軸から外周面までの最短長をR2としたとき、断面積S1=2×R1×π×h1であり、断面積S2=2×R2×π×h2となる。
【0035】
図2に示すように、R2>R1であり、S2>S1であるが、上述のようにコア1の内部において、コイル2の内周面の延長線上を通過するコア1の内周部近傍の磁束のほとんどが、コイル2の外周面の延長線上にあるコア1の外周部近傍に流れ込むため、S2=S1を満たせば、h1>h2としてもリアクトル100のインダクタンス値はほとんど低下しない。
【0036】
本発明は、ここに着目し、コイル2に通電した際に生じる磁束が通過するコア1内部の断面積を磁路のいずれの部分でもほぼ等しくなるように構成する。
【0037】
断面積S1と断面積S2が等しいとすると、S1=2×R1×π×h1、S2=2×R2×π×h2であるから、2×R1×π×h1=2×R2×π×h2となり、この式をh2について整理すると、h2=(R1/R2)×h1となる。
【0038】
コイル2の周囲のコア1の内部は一般的にコイル2よりも熱抵抗が高く、放熱性を高める上ではコア1の厚さを薄くすることが望ましい。上記のように、h2をh1よりも小さくすることで、コイル2の角部を含む外周面の端部近傍のコア2の厚さを薄くすることができ、コイル2からの放熱性がより向上する。
【0039】
したがって、S1=S2となるまでh2を小さくすることがより好ましい。しかしながら、コア2の厚さを薄くしすぎると、インダクタンス値が低下し、所望の値を得ることができなくなるため、S2をS1よりも必要以上に小さくするのは好ましくない。
【0040】
以上より、h1>h2≧(R1/R2)×h1、またはh11>h21≧(R1/R2)×h11の少なくともいずれか一方を満たすようにコア1を設計するのが好ましい。
【0041】
中心軸に直交する方向における、コイル2の外周面からコア1の表面までの最短長をh3、すなわち、コア1の外周部表面の厚さをh3とする。
【0042】
上述と同様の技術思想により、コア1の外周部近傍の厚みを薄くすることができ、コイル2からの放熱性を向上させるために、h1>h3≧(R1/R2)×h1、またはh11>h3≧(R1/R2)×h11の少なくともいずれか一方を満たすように、コア1の形状を設計するのが好ましい。
【0043】
コア1の厚みを薄くし、傾斜させる部分を、コア1の上面または底面近傍の少なくともいずれか一方に設ければ上述の効果を奏するが、両方に設けるのはより好ましい。
【0044】
コア1の上面および底面が非対称形状であっても、上述の効果を奏するが、h1=h11かつh2=h21とし、上面と底面の形状が対称となるようにコア1を設計するのは、量産上、より好ましい。
【0045】
コア1を、中心軸の少なくとも一部を含むように形成する、すなわち閉じた略トーラス形状に形成することにより、中芯部材を用いず、リアクトルを構成することが可能となり、部品点数削減の上でも、好ましい。
【0046】
コア1を、中心軸を含む空隙部を有するように形成する、すなわち開いた略トーラス形状に形成することにより、空隙部の少なくとも一部に中芯部材または中芯部を配してリアクトルを構成することが可能となり、放熱性をより向上できる点で好ましい。
【0047】
中芯部材は、コア1の内周部をほぼ満たすように配置してもよいが、量産を考慮して、コア1の底面近傍に中芯部を設ける構成とするのが、より好ましい。
【0048】
コア1、コイル2、入出力端子部3、ケース、中芯部材については、公知の材料を公知の方法で用いてよい。以下に説明する第2ないし第4の実施の形態においても同様である。
【0049】
(従来例との比較)
図6は、従来のリアクトルを示す図で、(a)は高さ方向の断面斜視図、(b)は磁束密度分布を示す説明図である。
【0050】
円柱状のコア13に、コイル23を埋設し、入出力端子部33を引き出して、リアクトル300を構成している。
【0051】
図6(b)に示した従来のリアクトル300の相対的な磁束密度分布によれば、コア13の端部近傍には、磁束密度の低い領域、すなわち磁束密度B35、B36が存在し、コア13全体に占める割合は少なくはない。
【0052】
図2(b)に示した本発明のリアクトル100の相対的な磁束密度分布によれば、磁束密度の高い部分、すなわち磁束密度が高い順に、磁束密度B11、B12、B13およびB14が観察されている。
【0053】
これらの高い磁束密度部分は、従来のリアクトル300の磁束密度の高い部分、すなわち磁束密度B31、B32、B33、B34に相当し、磁束密度の低い部分である磁束密度B35およびB36に相当する部分は存在しない。
【0054】
なお、磁束密度B11とB31、B12とB32、B13とB33、B14とB34は等しい値の領域を示し、磁束密度B35はB34より低く、磁束密度B35はB34より低い値の領域を示す。
【0055】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、インダクタンス値を低下させることなく、かつ、コアの厚みを部分的に薄くすることにより放熱性を向上させたリアクトルが得られる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明のリアクトルにおける第2の実施の形態を示す図で、(a)は高さ方向の断面図、(b)は構成部品を説明する斜視図である。
【0057】
周回するように巻回してなる公知の材料からなるコイル2と、金属磁性粉としてたとえばFe−Si系磁性粒子を用い、主な結合体としてたとえば未硬化エポキシ樹脂を混練して得た複合磁性体およびアルミニウム製のケース4、アルミニウム製のリング状の蓋部41を用意する。
【0058】
蓋部41は、複合磁性体と接する部分に所望の傾斜を設け、複合磁性体を加熱・硬化して得たコア1の上面に傾斜を形成する。
【0059】
ケース4の底面にも所望の傾斜を設け、コア1の底面に傾斜を形成する。
【0060】
ケース4にコイル2を収納し、蓋部41をケース4の上部に固定し、蓋部41の中央部に設けられた穴から複合磁性体を注入し、加熱・硬化させて、内部に筒状のコイル2を配したコア1および入出力端子部(図示せず)を上部から引き出してなるリアクトル100を得る。
【0061】
複合磁性体を加熱・硬化して得たコア1は、h1>h2≧(R1/R2)×h1、h11>h21≧(R1/R2)×h11、h1=h11およびh2=h21をすべて満たしている。
【0062】
中芯部材を不要とする構成により、蓋部41の中央部に穴を設けて、複合磁性体を注入するという、簡便な製造方法を採用することが可能となり、量産上好ましい。
【0063】
さらに、蓋部41とコア1の厚さが薄い部分が接触する構成により、放熱性もより向上する。
【0064】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明のリアクトルにおける第3の実施の形態を示す図で、高さ方向の断面図である。
【0065】
周回するように巻回してなる公知の材料からなるコイル2と、金属磁性粉としてたとえばFe−Si系磁性粒子を用い、主な結合体としてたとえば未硬化エポキシ樹脂を混練して得た複合磁性体およびアルミニウム製のケース4を用意する。
【0066】
ケース4の底面には所望の傾斜を設け、コア1の底面に傾斜を形成する。
【0067】
ケース4にコイル2を収納し、上面の開口部から複合磁性体を注入し、加熱・硬化させて、内部に筒状のコイル2を配したコア1および入出力端子部(図示せず)を上部から引き出してなるリアクトル100を得る。
【0068】
複合磁性体を加熱・硬化して得たコア1は、h11>h3>h21≧(R1/R2)×h11を満たしている。
【0069】
部品点数を少なくすることで、より製造を簡便にするとともに、コスト削減にも寄与する。
【0070】
(第4の実施の形態)
図5は、本発明のリアクトルにおける第4の実施の形態を示す図で、高さ方向の断面図である。
【0071】
周回するように巻回してなる公知の材料からなるコイル2と、金属磁性粉としてたとえばFe−Si系磁性粒子を用い、主な結合体としてたとえば未硬化エポキシ樹脂を混練して得た複合磁性体、アルミニウム製のケース4、およびアルミニウム製のリング状の蓋部41を用意する。
【0072】
蓋部41は、複合磁性体と接する部分に所望の傾斜を設け、コア1の上面に傾斜を形成する。
【0073】
ケース4の底面には所望の傾斜を設け、コア1の底面に傾斜を形成するとともに、コイル2の周回の中心軸を含む部分に、コア1を貫通するように中芯部11を設ける。
【0074】
ケース4にコイル2を収納し、蓋部41に設けた開口部から複合磁性体を注入し、加熱・硬化させて、内部に筒状のコイル2を配したコア1および入出力端子部(図示せず)を上部から引き出してなるリアクトル100を得る。
【0075】
複合磁性体は、中芯部11を避けるように蓋部41の内周部近傍から注入するのが好ましい。
【0076】
複合磁性体を注入する位置の自由度を増すことができるので、中芯部11の上面を、拡径状に設計しないのが、量産上、好ましい。
【0077】
複合磁性体を注入する位置の自由度を増すことができるので、中芯部11を、コア1を貫通せず埋没する程度の高さに設計するのが、量産上、好ましい。
【0078】
複合磁性体を加熱・硬化して得たコア1は、h1>h3≧(R1/R2)×h1およびh11>h3≧(R1/R2)×h11を満たしている。
【0079】
蓋部41および中芯部11により、簡便な製造方法が採用できるとともに、放熱性を向上させることができる。
【0080】
上記より、コアの形状を最適化することにより、インダクタンス値を低下させることなく、小型化を実現するとともに、放熱性にも優れたリアクトルが得られた。
【0081】
以上、本発明の実施の形態および実施例を説明したが、本発明は、上記に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正が可能である。すなわち、当業者であれば成し得る各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1,13 コア
2,23 コイル
3,33 入出力端子部
4 ケース
41 蓋部
11 中芯部
100,300 リアクトル
h1,h11,h2,h21,h3 コアの表面までの最短長
R1,R2 中心軸からの最短長
S1,S2 断面積
B11,B12,B13,B14,B31,B32,B33,B34,B35,B36 磁束密度
図1
図2
図3
図4
図5
図6