【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年9月17日〜19日 2014年ジャパンゴルフツアーチャレンジトーナメント seven dreamers challenge in YoneharaGC(米原ゴルフ倶楽部)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の装置では、シャフトの軸が水平方向または略水平方向に沿う状態とされ、シャフトの片端部が把持されている。このため、シャフトの自由端が振動させられる際、その振動にはシャフトの自重が影響している。このため、この装置では、シャフトの自重が重くなればなるほど、その高剛性箇所特定精度が低下してしまう。
【0005】
本発明の課題は、シャフトの自重の影響を限りなく低減することができるシャフトの特定位置の変位記憶装置およびシャフトの高剛性部位特定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置は、保持部、変位観測部および情報記憶部を備える。保持部は、シャフトまたはシャフトを有する道具(以下、単に「道具」と称する)を、シャフトの軸が鉛直方向または略鉛直方向に沿うように保持する。なお、この装置の使用者は、シャフトまたは道具の片端が自由端となるように、シャフトまたは道具の片端部のみを保持部で保持させる必要がある。また、保持部の変位観測部配設側の反対側にはクラブヘッドの収容空間が存在することが好ましい。クラブヘッドを取り外すことなく、特定位置の変位記憶を実行することができるからである。変位観測部は、シャフトまたは道具の上端または下端が振動させられた際において、シャフトまたは道具の上端または下端の特定位置の変位を観測するものであって、保持部の鉛直方向または略鉛直方向の上方または下方に所定の空間を介して配設される。なお、変位観測部は撮像器であることが好ましい。また、この装置では、シャフトまたは道具が保持部に保持されたときに、シャフトまたは道具がこの所定の空間に収容される。情報記憶部は、変位観測部により取得される変位の情報を記憶する。
【0007】
上述の通り、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、保持部が、シャフトまたは道具を、シャフトの軸が鉛直方向または略鉛直方向に沿うように保持する。このため、この装置では、シャフトまたは道具の自由端を振動させる際、シャフトまたは道具の自重の影響を限りなく低減することができる。
【0008】
本発明の第2局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置は、第1局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置であって、昇降機構をさらに備える。昇降機構は、変位観測部を鉛直方向または略鉛直方向に沿って昇降させる。
【0009】
上述の通り、このシャフトの特定位置の変位記憶装置には昇降機構が配設される。このため、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、長さが異なるシャフトまたは道具の特定位置の変位を好適な位置で観測することができる。
【0010】
本発明の第3局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置は、第1局面または第2局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置であって、変位観測部は、撮像器である。なお、ここにいう「撮像器」とは、例えば、CCDカメラ等のカメラ等である。
【0011】
上述の通り、このシャフトの特定位置の変位記憶装置において、変位観測部は、撮像器である。このため、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、シャフトの特定位置の変位を正確に追跡することができる。
【0012】
本発明の第4局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置は、第1局面から第3局面のいずれかに係るシャフトの特定位置の変位記憶装置であって、強制変位開放機構をさらに備える。この強制変位開放機構は、シャフトまたは道具の変位観測部側の端部(すなわち自由端)を強制的に変位させた後、シャフトまたは道具を開放する。なお、この強制変位開放機構は、例えば、ハンド機構によりシャフトまたは道具を掴んで引っ張った後にシャフトまたは道具を放すものであってもよいし、押し具によりシャフトまたは道具を押した後に押し具をシャフトまたは道具からずらしてシャフトまたは道具を開放するものであってもよい。
【0013】
上述の通り、このシャフトの特定位置の変位記憶装置には強制変位開放機構が配設される。このため、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、手動でシャフトの振動のきっかけをつくる手間を省くことができると共に、シャフトまたは道具の初期変位方向を正確にすることができ、延いてはシャフトの高剛性箇所をより正確に特定することができる。
【0014】
本発明の第5局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置は、第4局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置であって、強制変位開放機構は、シャフトまたは道具を静止させる機能をさらに有する。
【0015】
上述の通り、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、強制変位開放機構が、シャフトまたは道具を静止させる機能を有する。このため、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、シャフトまたは道具の振動が止まるのを待つ必要がなく、作業時間を短縮化することができる。
【0016】
本発明の第6局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置は、第4局面または第5局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置であって、水平回転機構をさらに備える。水平回転機構は、保持部および強制変位開放機構の少なくとも一方を、水平または略水平な面に沿って回転または旋回させる。なお、かかる場合、シャフトの軸が水平回転機構の回転軸に一致するようにシャフトまたは道具を保持部に保持させるのが好ましい。また、強制変位開放機構が固定的に配設される場合、すなわち水平回転機構が保持部のみを回転させる場合、水平回転機構は保持部を所定角度、例えば、数°,数十°刻みで180°、回転させることが好ましい。一方、保持部が固定的に配設される場合、すなわち水平回転機構が強制変位開放機構のみを旋回させる場合、水平回転機構は強制変位開放機構を所定角度、例えば、数°,数十°刻みで180°、旋回させることが好ましい。なお、かかる場合、水平回転機構を水平旋回機構と称し直す。また、水平回転機構が保持部を回転させると共に強制変位開放機構を旋回させる場合、水平回転機構は、保持部の回転方向と、強制変位開放機構の旋回方向とを逆にし、保持部を所定角度、例えば、数°,数十°刻みで90°、回転させると共に、強制変位開放機構を所定角度、例えば、数°,数十°刻みで90°、旋回させるのが好ましい。なお、かかる場合、水平回転機構を水平回転旋回機構と称する。
【0017】
上述の通り、このシャフトの特定位置の変位記憶装置には水平回転機構が配設される。このため、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、手動でシャフトもしくは道具または強制変位開放機構を回転または旋回させる手間を省くことができると共に、シャフトの高剛性箇所をより正確に特定することができる。
【0018】
本発明の第7局面に係るシャフトの特定位置の変位記憶装置は、第1局面から第3局面のいずれかに係るシャフトの特定位置の変位記憶装置であって、水平回転機構をさらに備える。水平回転機構は、保持部を水平または略水平な面に沿って回転させる。なお、かかる場合、シャフトの軸が水平回転機構の回転軸に一致するようにシャフトまたは道具を保持部に保持させるのが好ましい。また、かかる場合、振動のきかっけを与える際にシャフトまたは道具の自由端を変位させる方向は一定とされる。水平回転機構は保持部を所定角度、例えば、数°,数十°刻みで180°、回転させることが好ましい。
【0019】
上述の通り、このシャフトの特定位置の変位記憶装置には水平回転機構が配設される。このため、このシャフトの特定位置の変位記憶装置では、手動でシャフトまたは道具を回転させる手間を省くことができると共に、シャフトの高剛性箇所をより正確に特定することができる。
【0020】
本発明の第8局面に係るシャフトの高剛性部位特定システムは、第1局面から第6局面のいずれかに係るシャフトの特定位置の変位記憶装置および高剛性部位特定装置を備える。高剛性部位特定装置は、変位の情報に基づいてシャフトの高剛性部位を特定する。
【0021】
上述の通り、この高剛性部位特定システムには、上述のシャフトの特定位置の変位記憶装置が組み込まれている。このため、この高剛性部位特定システムでは、シャフトまたは道具の自由端を振動させる際、シャフトまたは道具の自重の影響を限りなく低減することができ、延いてはシャフトの高剛性箇所をより正確に特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システムの構成概要>
本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1は、ゴルフクラブGC等のシャフトSHの高剛性箇所を特定するためのシステムであって、
図1、
図2および
図7に示されるように、主に、フレーム10、垂直チャック機構20、脚台29、ターンテーブル機構30、ハンド機構40、ハンド移動機構49、撮像器50、昇降機構60、電装品ボックス70および解析装置80(
図7参照)から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。なお、本実施の形態において、解析装置80の中央処理演算装置82(後述)を除いたもの、すなわち解析機能を除いたものを「シャフト特定位置変位記憶装置」と称することがある。図中、シャフト特定位置変位記憶装置には符号2を付している。
【0024】
(1)フレーム
フレーム10は、
図1および
図2に示されるように、略直方体状の枠体であって、主に、左前垂直柱11、左奥垂直柱12、右奥垂直柱13、右前垂直柱14、上側枠体15、下側枠体16、左上側梁17a、奥上側梁17b、右上側梁17c、左下側梁18a、奥下側梁18bおよび右下側梁18cから構成されている。
【0025】
左前垂直柱11は、
図1および
図2に示されるように、下側枠体16の左前角部から上方に向かって延びており、上側枠体15の左前角部に接合されている。左奥垂直柱12は、
図1および
図2に示されるように、下側枠体16の左奥角部から上方に向かって延びており、上側枠体15の左奥角部に接合されている。右奥垂直柱13は、
図1および
図2に示されるように、下側枠体16の右奥角部から上方に向かって延びており、上側枠体15の右奥角部に接合されている。右前垂直柱14は、
図1および
図2に示されるように、下側枠体16の右前角部から上方に向かって延びており、上側枠体15の右前角部に接合されている。左上側梁17aは、
図1および
図2に示されるように、左前垂直柱11の上端から4分の1程度下がった位置から左奥垂直柱12に向かって水平に延びており、左奥垂直柱12に接合されている。奥上側梁17bは、
図1および
図2に示されるように、左奥垂直柱12の上端から4分の1程度下がった位置から右奥垂直柱13に向かって水平に延びており、右奥垂直柱13に接合されている。右上側梁17cは、
図1および
図2に示されるように、右前垂直柱14の上端から4分の1程度下がった位置から右奥垂直柱13に向かって水平に延びており、右奥垂直柱13に接合されている。左下側梁18aは、
図1および
図2に示されるように、左前垂直柱11の上端から5分の3程度下がった位置から左奥垂直柱12に向かって水平に延びており、左奥垂直柱12に接合されている。奥下側梁18bは、
図1および
図2に示されるように、左奥垂直柱12の上端から5分の3程度下がった位置から右奥垂直柱13に向かって水平に延びており、右奥垂直柱13に接合されている。右下側梁18cは、
図1および
図2に示されるように、右前垂直柱14の上端から5分の3程度下がった位置から右奥垂直柱13に向かって水平に延びており、右奥垂直柱13に接合されている。
【0026】
(2)垂直チャック機構
垂直チャック機構20は、シャフトまたはゴルフクラブGCを鉛直方向または略鉛直方向に沿って設置させるための機構であって、
図3および
図4に示されるように、主に、支持体21、固定チャック22a、可動チャック22bおよびハンドル機構23から構成されている。なお、この垂直チャック機構20は、
図1〜
図4に示されるように、脚台29に接合されている。なお、この垂直チャック機構20の上方、撮像器50の下方の空間は、シャフトSHの収容空間SSpとして機能する。
【0027】
支持体21は、
図3および
図4に示されるように、脚台29の天板部29a(後述)の左側部分に接合されている。そして、
図3および
図4に示されるように、この支持体21の右側面に固定チャック22aが装着されている。可動チャック22bは、
図3および
図4に示されるように、固定チャック22aに対向するように配設されており、ハンドル機構23の移動プレート23a(後述)に装着されている。ハンドル機構23は、
図3および
図4に示されるように、主に、移動プレート23a、ネジ機構23bおよびハンドル23cから構成されている。移動プレート23aには、
図3および
図4に示されるように、固定チャック22aと対向する側の面に可動チャック22bが装着されている。また、この移動プレート23aには、ネジ機構23bを介してハンドル23cが取り付けられている。このハンドル23cは時計方向に回されると、ネジ機構23bにより移動プレート23aが支持体側に向かって平行移動する。一方、ハンドル23cが反時計回りに回されると、ネジ機構23bにより移動プレート23aが支持体21から遠のく側に向かって平行移動する。
【0028】
(3)脚台
脚台29は、
図3および
図4に示されるように、主に、上側枠体FL、4本の脚部LGおよび天板部29aから構成されており、
図1〜
図4に示されるようにターンテーブル機構30の回転テーブル32(後述)に固定されている。すなわち、垂直チャック機構20は、脚台29を介してターンテーブル機構30に接合されている。上側枠体FLは、略正方形の枠体である。脚部LGは、
図3および
図4に示されるように、上側枠体FLの四つの角部から下方に向かって延びており、ターンテーブル機構30の回転テーブル32の上に接合されている。天板部29aは、
図3および
図4に示されるように、上側枠体FLの上に接合されている。なお、
図3に示されるように、上側枠体FLの正面側中央部分が切り欠かれており、天板部29aには、正面側中央部分から奥側に向かって中央部分まで延びるスリットSLが形成されている。なお、上側枠体FLの切欠きRcおよび天板部29aのスリットSLは、
図3および
図4に示されるように、ゴルフクラブGCのネック部分Pn等を通すために形成されている。また、
図3および
図4に示されるように、脚台29の天板部29a、ターンテーブル機構30の回転テーブル32および4本の脚部LGに囲まれた箇所には、収容空間HSpが形成されている。この収容空間HSpには、例えば、ゴルフクラブGCのクラブヘッドHD(
図4参照)が収容される。
【0029】
(4)ターンテーブル機構
ターンテーブル機構30は、
図1〜
図4に示されるように、主に、回転駆動部31(
図7参照)および回転テーブル32から構成されている。回転駆動部31は、回転テーブル32を回転させる動力源であって、例えば、ステッピングモータ等である。この回転駆動部31は、制御線Lc1(
図7参照)を介して電装品ボックス70に接続されている。なお、本実施の形態に係るターンテーブル機構30では、回転駆動部31は、回転テーブル32を15°刻みで回転駆動させる。回転テーブル32は、ベルト伝達機構(図示せず)を介して回転駆動部31に連結されている。また、上述の通り、この回転テーブル32には、脚台29を介して垂直チャック機構20が接合されている。このため、回転駆動部31によって回転テーブル32が回転駆動されると、それに伴って垂直チャック機構20も回転する。なお、垂直チャック機構20とターンテーブル機構30とは、回転テーブル32の回転軸がゴルフクラブGCのシャフトSHの軸と一致するように軸合せされている。
【0030】
(5)ハンド機構
ハンド機構40は、
図5、
図6および
図7に示されるように、主に、一対の爪部41、開閉機構42および開閉機構駆動部43(
図7参照)から構成されている。この一対の爪部41は、開閉機構42によって開閉される。開閉機構42は、開閉機構駆動部43によって駆動される。開閉機構駆動部43は、例えば、モータ等である。そして、この開閉機構駆動部43は、制御線Lc2(
図7参照)を介して電装品ボックス70に接続されている。
【0031】
(6)ハンド移動機構
ハンド移動機構49は、
図1、
図2、
図5および
図6に示されるように、主に、水平スライダー(図示せず)、水平レール49aおよび水平スライダー駆動部49bから構成されている。水平スライダーには、ハンド機構40が装着されている。水平レール49aには、水平スライダーが左右方向移動自在に嵌合されている。水平スライダー駆動部49bは、例えば、モータ等であって、ボールネジ等を介して水平スライダーに連結されている。そして、この水平スライダー駆動部49bは、制御線Lc3(
図7参照)を介して電装品ボックス70に接続されている。
【0032】
(7)撮像器
撮像器50は、例えば、デジタルカメラ、CCDカメラ等であって、
図1および
図2に示されるように、ハンド機構40およびハンド移動機構49の上方において昇降機構60を介して配設されている。この撮像器50は、レンズが鉛直方向下方を向いており、下方を撮像範囲としている。また、撮像器50は、光軸がターンテーブル機構30の回転軸に一致するように配設されている。そして、この撮像器50は、制御線Lc4(
図7参照)を介して電装品ボックス70に接続されている。なお、後に詳述するが、この撮像器50は、シャフトSHが振動している間、シャフトSHの上端の中心点の変位を追跡する。
【0033】
(8)昇降機構
昇降機構60は、上述の通り、撮像器50を昇降させるための機構であって、
図1および
図2に示されるように、主に、垂直スライダー61、垂直レール62および垂直スライダー駆動部63から構成されている。垂直スライダー61には、水平支持体61aを介して撮像器50が装着されている。垂直レール62には、垂直スライダー61が上下方向移動自在に嵌合されている。垂直スライダー駆動部63は、例えば、モータ等であって、ボールネジ等を介して垂直スライダーに連結されている。そして、この垂直スライダー駆動部63は、制御線Lc5(
図7参照)を介して電装品ボックス70に接続されている。
【0034】
(9)電装品ボックス
電装品ボックス70は、
図7に示されるように、主に、筐体71、制御装置72および通信装置73から構成されている。そして、この制御装置72は、
図7に示されるように、制御線Lc1〜Lc5を介して回転駆動部31、開閉機構駆動部43、水平スライダー駆動部49b、撮像器50および垂直スライダー駆動部63に接続されている。そして、この制御装置72は、解析装置80から通信装置73を介して送信される情報に基づいて制御信号を生成し、その制御信号を回転駆動部31、開閉機構駆動部43、水平スライダー駆動部49b、撮像器50および垂直スライダー駆動部63に送信する。通信装置73は、
図7に示されるように、通信線Lmを介して解析装置80に通信接続されている。また、この通信装置73は、撮像器50から制御装置72を介して送信されてくる撮像情報を解析装置80に送信する。
【0035】
(10)解析装置
解析装置80は、例えば、コンピュータやワークステーション等であって、
図7に示されるように、主に通信インターフェイス(IF)81、中央処理演算装置82および記憶装置83から構成されている。通信インターフェイス81は、通信線Lmを介して電装品ボックス70の通信装置73に通信接続されており、通信装置73から通信線Lmを介して送信させてくる情報を、中央処理演算装置82が読取可能な形式に変換し、変換後の情報を中央処理演算装置82に送信する。また、この通信インターフェイス81は、中央処理演算装置82から送信される情報を電装品ボックス70の制御装置72が読取可能な形式に変換し、返還後の情報を、通信線Lmを介して電装品ボックス70の通信装置73に送信する。中央処理演算装置82は、記憶装置83中の解析プログラムに従って、撮像器50から制御ボックス70を介して送信されてくる撮像情報を解析してシャフトSHの高剛性部位を特定する。なお、この特定方法については、以下に詳述する。記憶装置83は、解析プログラムや、上記撮像情報、解析時の加工情報、解析結果情報等を記憶する。
【0036】
<シャフトの高剛性部位の特定方法>
以下、上述のシャフト高剛性部位特定システム1を用いたシャフトSHの高剛性部位の特定方法について詳述する。
【0037】
(1)前提説明
先ず、計測対象となるシャフトSHの横断面形状を
図8に示している。
図8に示されるように、シャフトSHの横断面において、その内周は真円に近い形状を呈しているが、外周が片側のみ真円形状(
図8の破線参照)よりも外方に膨らんだ形状となっている。すなわち、このシャフトSHでは、片側のみが肉厚となっている。そして、この肉厚部位の最も肉厚が厚い箇所が高剛性部位Psとなっている。なお、この高剛性部位Psは、シャフトSHの長手方向全体に亘って存在している。そして、本高剛性部位の特定方法では、ターンテーブル機構30ならびにハンド機構40およびハンド移動機構49を制御することによって、
図8に示されるように0°方向D0、15°方向D15、30°方向D30、45°方向D45、60°方向D60、75°方向D75、90°方向D90、105°方向D105、120°方向D120、135°方向D135、150°方向D150および165°方向D165の12方向から振動を加え、その振動パターンを解析することによって、高剛性部位Psを特定する。なお、
図8では、高剛性部分Psがたまたま0°方向D0上に存在するが、通常、高剛性部分Psは、いずれの方向に存在するかは不明である。
【0038】
(2)具体的手順
先ず、使用者は、
図1および
図2に示されるように、シャフトSHが鉛直方向に沿うようにシャフトSHを垂直チャック機構20に保持させる。かかる場合、水準器等の補助治具でシャフトのセット方向を確認するようにしてもよい。また、シャフトSHにクラブヘッドHDが装着されている場合、使用者は、クラブヘッドHDを脚台29の収容空間HSpに収容するように収容空間SSpにシャフトSHをセットする。
【0039】
次に、ハンド機構40およびハンド移動機構49が制御されて、爪部41でシャフトSHが挟み込まれてシャフトSHの揺れが止められる。なお、かかる場合、爪部41がターンテーブル機構30の回転軸を挟むように、予め、ハンド機構40およびハンド移動機構49の動作がプログラムされている。
【0040】
次いで、使用者は、撮像器50のモニター(例えば、解析装置80に付属のディスプレイ(図示せず))にてシャフトSHの揺れが完全に停止したのを確認して、その画像上のシャフトSHの上端の中心点Pc(
図9参照)を指定する。
【0041】
中心点Pcの指定が完了すると、ハンド機構40がシャフトSHを挟んだ状態でハンド移動機構49により水平レール49aに沿って引き戻された後、ハンド機構40が開状態とされ、シャフトSHが開放される。すると、シャフトSHが振動し始める。このときのシャフトSHの動きが撮像器50で撮像され、その撮像情報が解析装置80に送信される。そして、解析装置80の解析プログラムによって以下の情報処理が行われる。
【0042】
先ず、
図9に示されるように、時間tにおけるシャフトSHの上端の中心点Pcの座標位置が特定され、その座標位置のx軸成分とy軸成分が導出される。なお、
図9中、時間t1におけるシャフトSHが実線で示されており、時間t2におけるシャフトSHが破線で示されている。ここで、時間t1における中心点Pcの座標位置のx軸成分はx(t1)であり、y軸成分はy(t1)である。また、時間t2における中心点Pcの座標位置のx軸成分はx(t2)であり、y軸成分はy(t2)である。なお、撮像情報の取得間隔である時間tは、解析の精度を十分なものとするため、1ミリ秒程度とするのが好ましい。そして、時間tを横軸とし、x軸成分x(t)およびy軸成分y(t)を縦軸とするグラフ上に、この情報群をプロットすると、
図10に示される通りとなる。
【0043】
上記情報の取得が完了されると、ターンテーブル機構30によりシャフト30が自体の軸を中心として15°だけ回転させられる。そして、再度、上述の操作が11回繰り返され、同様の情報が解析装置80に蓄積される(
図11参照)。
【0044】
12方向における上記情報が取得された後に、各方向D0,D15,D30,D45,D60,D75,D90,D105,D120,D135,D150,D165で得られた情報が、横軸をy軸成分とし、縦軸をx軸成分とするグラフにプロットされる(
図12参照)。そして、このグラフにおいて、最も幅が狭くなるプロット対が特定され、そのプロット対を結ぶ直線Lminがモニターに映し出されると共にそのプロット対の幅(以下「最狭幅」という。)の値が算出される(
図13および
図14参照)。
【0045】
そして、各方向D0,D15,D30,D45,D60,D75,D90,D105,D120,D135,D150,D165における最狭幅が方向角に対してプロットされて
図15のようなグラフが作成され、このグラフにおける曲線の極小点が特定される。なお、
図15では、8°と106°付近に極小点が認められる。
【0046】
続いて、8°と106°に最も近い方向である15°方向D15と105°方向D105における中心点Pcの動き周波数が、
図11のグラフから導出され、その平均周波数、最高周波数および最小周波数等が求められる。なお、このようにして求められた平均周波数、最高周波数および最小周波数等は、
図16に示されるようなかたちでモニターに映し出される。そして、
図16を参照すると、8°の方向の方が106°の方向におけるよりも、周波数が高くなっている。これは、8°方向のシャフト部位に高剛性部位Psが存在することを示している。剛性が高くなるほど、周波数が高くなるためである。
【0047】
最後に、8°に最も近い方向角である15°方向D15における正の半周期と負の半周期が、
図11のグラフから導出され、それらの平均半周期、最高半周期および最小半周期等が求められる。なお、このようにして求められた平均半周期、最高半周期および最小半周期等は、
図17に示されるようなかたちでモニターに映し出される。そして、
図17を参照すると、−165°側の方が15°側におけるよりも、半周期が高くなっている。これは、8°側の反対側の−172°側のシャフト部位が高剛性部位Psであることを示している。剛性が高くなるほど、半周期が高くなるためである。すなわち、ここで、シャフトSHの高剛性部位Psが特定されたことになる。
【0048】
<本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システムの特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1では、シャフトSHが鉛直方向に沿った状態で振動解析が行われる。このため、このシャフト高剛性部位特定システム1では、シャフトSHの自由端を振動させる際、シャフトSHの自重の影響を限りなく低減することができる。
【0049】
(2)
本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1には、昇降機構60が配設されている。このため、このシャフト高剛性部位特定システム1では、長さが異なるシャフトSHの上端の中心位置Pcの変位を好適な高さで観測することができる。
【0050】
(3)
本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1では、シャフトSHの上端の中心位置Pcの変位の観測に撮像器50が用いられている。このため、このシャフト高剛性部位特定システム1では、その変位を正確に追跡することができる。
【0051】
(4)
本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1には、ハンド機構40およびハンド移動機構49が配設されている。このため、このシャフト高剛性部位特定システム1では、手動で(使用者の指等を用いて)シャフトSHの振動のきっかけをつくる手間を省くことができると共に、シャフトSHの初期変位方向を正確にすることができ、延いてはシャフトSHの高剛性部位Psをより正確に特定することができる。また、これらの機構40,49によって、シャフトSHを振動させる前に一度、シャフトSHの揺れを止めることができる。このため、このシャフト高剛性部位特定システム1では、シャフトSHの振動が止まるのを待つ必要がなく、作業時間を短縮化することができる。
【0052】
(5)
本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1には、ターンテーブル機構30が配設されている。このため、このシャフト高剛性部位特定システム1では、手動で(使用者の手作業で)シャフトSHを回転させる手間を省くことができると共に、シャフトSHの高剛性部位Psをより正確に特定することができる。
【0053】
(6)
本発明の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1には、脚台29に収容空間HSpが形成されており、その収容空間HSpにクラブヘッドHDを収容することができる。このため、このシャフト高剛性部位特定システム1では、クラブヘッドHDを取り外すことなく、高剛性部位Psの特定を行うことができる。なお、このシャフト高剛性部位特定システム1では、クラブヘッドHDのみならずグリップを取り外す必要もない。
【0054】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1では下から順にターンテーブル機構30、脚台29、垂直チャック機構20、ハンド機構40およびハンド移動機構49、ならびに撮像器50が配設されていたが、上から順にターンテーブル機構30、脚台29、垂直チャック機構20、ハンド機構40およびハンド移動機構49、ならびに撮像器50が配設されてもよい。すなわち、
図1に示される装置を天地逆にしてもよい。
【0055】
(B)
先の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1ではシャフトSHに対して振動を与える際に、ハンド機構40がシャフトSHを挟んだ状態でハンド移動機構49により水平レール49aに沿って引き戻された後、ハンド機構40が開状態とされ、シャフトSHが開放されたが、これに代えて、ハンド移動機構49に押し棒を取り付けて、押し棒でシャフトSHを反対側に向かって押し込んだ後に、ハンド移動機構49または押し棒を水平方向に沿って回動移動させて、シャフトSHから押し棒を離間させることによって、シャフトSHが開放されるようにしてもよい。
【0056】
(C)
先の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1では垂直チャック機構20がターンテーブル機構30によって回転するように構成されていたが、垂直チャック機構20が固定化され、ハンド機構40およびハンド移動機構49が旋回機構によって旋回されてもよいし、ターンテーブル機構30によって垂直チャック機構20が回転させられると共に、ハンド機構40およびハンド移動機構49が逆方向に旋回させられてもよい。
【0057】
(D)
先の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1では爪部41がターンテーブル機構30の回転軸を挟むように、予め、ハンド機構40およびハンド移動機構49の動作がプログラムされていたが、爪部41の先に加圧センサ等を取り付ける等して揺れ止めを行ってもよい。
【0058】
(E)
先の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1ではターンテーブル機構30の回転角は15°刻みであったが、これはあくまでも例示であって、本発明を限定するものではない。すなわち、この回転角刻みは、10°であってもよいし、5℃であってもよいし、1°等であってもよい。なお、当然のことであるが、回転角刻みが小さい程、シャフトSHの高剛性部位Psの特定精度が高くなる。
【0059】
(F)
先の実施の形態に係るシャフト高剛性部位特定システム1ではシャフトSHの上端の中心位置Pcの変位の観測に撮像器50が用いられていたが、中心位置Pcの変位を観測できるものであれば、他の機器、例えば、レーザ計測器等を用いてもよい。