特許第6483990号(P6483990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483990
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ミキサ車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/16 20060101AFI20190304BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B60P3/16 A
   B28C5/42
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-203630(P2014-203630)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-68535(P2016-68535A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 和徳
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−118415(JP,A)
【文献】 特開2013−052566(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/140960(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0171595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
B28C 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備え、前記ミキサドラムの内側に生コンクリートを押し出すブレードを備えるミキサ車において、
前記ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、
前記ミキサドラムの回転位置に応じて信号を出力する回転スイッチと、
前記ミキサドラムの回転速度を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記回転スイッチからの前記信号に基づいて前記ブレードが所定の回転位置に来たことを判定する回転位置判定部と、
前記回転位置判定部の判定結果に基づいて前記ミキサドラムの回転速度を通常回転速度より低くする回転速度制御部と、を備え
前記ミキサドラムの回転速度が高くなるにつれて、前記回転スイッチからの前記信号を受信してから前記回転速度制御部への前記ミキサドラムの回転速度を通常回転速度より低くする信号の出力タイミングを早めることを特徴とするミキサ車。
【請求項2】
生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備え、前記ミキサドラムの内側に生コンクリートを押し出すブレードを備えるミキサ車において、
作動流体を吐出する流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプが吐出した作動流体によって駆動され、前記ミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、
前記流体圧モータを駆動する流体圧を検知する流体圧検知器と、
前記ミキサドラムの回転速度を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記流体圧検知器からの信号に基づいて前記ブレードが所定の回転位置に来たことを判定する回転位置判定部と、
前記回転位置判定部の判定結果に基づいて前記ミキサドラムの回転速度を通常回転速度より低くする回転速度制御部と、を備えることを特徴とするミキサ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートを搭載可能なミキサ車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体上に回転可能に搭載された回転ドラムと、回転ドラムの出入口に投入される生コンクリートを導くホッパーと、回転ドラムの出入口より排出される生コンクリートを受けて外部へ排出する排出シュートと、を備えるミキサ車が開示されている。
【0003】
上記ミキサ車は、回転ドラムの内壁から突出する螺旋状のブレードを有する。生コンクリートを排出する際に、回転ドラムが一方に回転し、ブレードが生コンクリートを出入口へと押し出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−228830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のミキサ車にあっては、回転ドラムの開口部から生コンクリートを排出する排出作動時に、回転するブレードによって押し出される生コンクリートの排出量が周期的に増減するという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、生コンクリートの排出量が周期的に増減することを抑えられるミキサ車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備え、ミキサドラムの内側に生コンクリートを押し出すブレードを備えるミキサ車において、ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、ミキサドラムの回転位置に応じて信号を出力する回転スイッチと、ミキサドラムの回転速度を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、回転スイッチからの信号に基づいてブレードが所定の回転位置に来たことを判定する回転位置判定部と、回転位置判定部の判定結果に基づいてミキサドラムの回転速度を通常回転速度より低くする回転速度制御部と、を備え、ミキサドラムの回転速度が高くなるにつれて、回転スイッチからの信号を受信してから回転速度制御部へのミキサドラムの回転速度を通常回転速度より低くする信号の出力タイミングを早めることを特徴とする。
また、本発明は、生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備え、ミキサドラムの内側に生コンクリートを押し出すブレードを備えるミキサ車において、作動流体を吐出する流体圧ポンプと、流体圧ポンプが吐出した作動流体によって駆動され、ミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、流体圧モータを駆動する流体圧を検知する流体圧検知器と、ミキサドラムの回転速度を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、流体圧検知器からの信号に基づいてブレードが所定の回転位置に来たことを判定する回転位置判定部と、回転位置判定部の判定結果に基づいてミキサドラムの回転速度を通常回転速度より低くする回転速度制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ミキサドラムから生コンクリートを排出する作動時に、コントローラがブレードの回転位置に応じてミキサドラムの回転速度を通常回転速度より低くすることにより、回転するブレードによって押し出される生コンクリートの排出量が周期的に増減することを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1実施形態に係るミキサ車の平面図である。
図1B】ミキサ車の側面図である。
図2】ミキサ車の構成を示す制御ブロック図である。
図3A】比較例としてのミキサ車に係るミキサドラムの回転角度と生コンクリートの排出量との関係を示す特性図である。
図3B】本発明の第1実施形態に係るコントローラの制御内容を示すタイミングチャートである。
図4】本発明の第2実施形態に係るミキサ車の構成を示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1A図1Bを参照して、ミキサ車100の全体構成について説明する。
【0012】
ミキサ車100は、運転室11と架台1とを備える車両である。ミキサ車100は、架台1に搭載されて生コンクリートを搭載可能なミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、ミキサドラム2の回転を制御するコントローラ10と、を備える。ミキサ車100は、ミキサドラム2内に生コンクリートを搭載して運搬するものである。なお、図1Bでは、駆動装置4などの図示を省略している。
【0013】
ミキサドラム2は、架台1に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端に開口部2Aを有する。ミキサドラム2は、その回転軸Oが車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。
【0014】
ミキサドラム2の開口部2Aの後方上部には、ホッパ16が設けられる。開口部2Aから投入される生コンクリートは、ホッパ16によって開口部2Aへと導かれる。ミキサドラム2の開口部2Aの後方下部には、フローガイド17及びシュート18が設けられる。開口部2Aから排出される生コンクリートは、フローガイド17によってシュート18に導かれ、シュート18によって所定の方向に排出される。
【0015】
ミキサドラム2の内側には、その内壁から突出して螺旋状に延びる帯状の第一、第二ブレード13、14が設けられる。第一、第二ブレード13、14は、回転中心軸Oについて互いに180度の位相差をもつように配置されている。
【0016】
ミキサドラム2に対する生コンクリートの投入及び攪拌、混練時には、ミキサドラム2を後方(図1Bの右端側)から見て時計回り方向に回転させる正転駆動が行われる。ミキサドラム2内の生コンクリートは、回転する第一、第二ブレード13、14によりミキサドラム2の後方から前方(図1Bの右方から左方)へ送られる。これにより、生コンクリートの攪拌、混練が行われ、その固化が防止される。
【0017】
ミキサドラム2に対する生コンクリートの排出時には、ミキサドラム2を後方から見て反時計回り方向に回転させる逆転駆動が行われる。ミキサドラム2内の生コンクリートは、回転する第一、第二ブレード13、14によりミキサドラム2の前方から後方(図1Bの左方から右方)へ送られ、ミキサドラム2の開口部2Aから排出される。
【0018】
ミキサドラム2は、ミキサ車100に搭載された走行用のエンジン3を動力源として回転駆動される。駆動装置4は、エンジン3の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動するものである。
【0019】
エンジン3におけるクランクシャフトの回転運動は、エンジン3から動力を常時取り出すための動力取り出し機構9(PTO:Power take−off)と、動力取り出し機構9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8(図2参照)と、によって駆動装置4に伝達される。
【0020】
図2に示すように、動力取り出し機構9には、エンジン3の回転速度を検知し、検知した回転速度に応じた回転速度信号をコントローラ10に出力する回転センサ9aが設けられる。回転センサ9aを用いて、ドライブシャフト8の回転速度を検知するような構成としてもよい。
【0021】
駆動装置4では、作動流体として作動油が用いられる。なお、作動油ではなく、他の非圧縮性流体を作動流体として用いてもよい。駆動装置4は、エンジン3によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプとしての油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5によって駆動されてミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータとしての油圧モータ6と、を備える。駆動装置4は、ミキサドラム2を正逆転及び増減速させることが可能である。
【0022】
油圧ポンプ5は、動力取り出し機構9を介してエンジン3から常時取り出される動力によって回転駆動される。そのため、油圧ポンプ5の回転速度は、車両の走行状態に伴うエンジン3の回転速度の変化に、大きく影響を受ける。そこで、ミキサ車100では、エンジン3の回転速度に応じてミキサドラム2が目標回転状態となるように、コントローラ10によって油圧モータ6の回転速度を制御している。
【0023】
油圧ポンプ5は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。油圧ポンプ5は、コントローラ10からの制御信号を受信して斜板(図示省略)の傾転角を正転方向又は逆転方向に切り換える。油圧ポンプ5は、その傾転角を調整するための電磁弁(図示省略)を備える。油圧ポンプ5は、電磁弁が切り換えられることによって吐出方向と吐出容量が調整される。
【0024】
油圧ポンプ5から吐出された作動油は油圧モータ6に供給され、油圧モータ6が回転する。油圧モータ6の回転は、減速機7を介してミキサドラム2に伝達される。
【0025】
図2に示すように、油圧ポンプ5には、吐出される作動油の圧力を検知する圧力検知器としての圧力センサ5aが設けられる。圧力センサ5aは、検知した作動油の圧力に応じた負荷圧力信号をコントローラ10に出力する。なお、圧力センサ5aを油圧ポンプ5に設けるのではなく、油圧モータ6に設け、油圧モータ6における作動油の圧力を検知するようにしてもよい。このように、圧力センサ5aは、駆動装置4における作動油の圧力を検知するものである。
【0026】
油圧モータ6は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ6は、油圧ポンプ5から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ6は、コントローラ10からの二速切換信号を受信して斜板(図示省略)の傾転角を調整する電磁弁(図示省略)を備える。油圧モータ6の容量は、電磁弁が切り換えられることによって、高速回転用の小容量と通常回転用の大容量との二段階に切り換えられる。油圧モータ6には、その出力軸(図示省略)の回転速度Vを検知する回転速度検知器としての回転センサ6a(図2参照)が設けられる。
【0027】
コントローラ10は、駆動装置4の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)などを備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラムなどを予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって駆動装置4の制御が実現される。
【0028】
図2に示すように、コントローラ10には、運転者が運転室11内のイグニッションスイッチ(図示省略)を操作することによってエンジン3が始動すると、イグニッション電源が入力される。これにより、電源リレー21が切り換えられ、メインバッテリ23からのメイン電源がコントローラ10に供給され、コントローラ10が駆動される。
【0029】
運転室11内には、パーキングブレーキ31と、ミキサドラム2を操作するための操作装置32と、が配置される。
【0030】
パーキングブレーキ31には、パーキングブレーキ31のレバー位置を検知する検知器が設けられる。パーキングブレーキ31がかけられている場合には、検知器から停車信号がコントローラ10へと出力される。
【0031】
操作装置32には、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を切り換えるためのつまみ型の操作スイッチ32aと、ミキサドラム2の回転を非常停止させるための停止スイッチ32bと、ミキサドラム2を自動的に攪拌回転させるための自動攪拌スイッチ32cと、が設けられる。
【0032】
運転者が各操作スイッチ32a〜32dを操作することに基づいて、操作装置32からコントローラ10に対して指令信号が出力される。コントローラ10は、その指令信号に基づいて、ミキサドラム2の目標回転状態、具体的には回転方向と回転速度を決定する。
【0033】
ここで、ミキサドラム2の回転動作について説明する。自動攪拌スイッチ32cがオンである場合において、パーキングブレーキ31からの停車信号がなく、車速が所定速度以上である場合には、コントローラ10は、車両が走行中であると判定する。これにより、コントローラ10は、生コンクリートの排出を防止するとともに生コンクリートの品質を保つため、ミキサドラム2を自動的に攪拌回転させる。
【0034】
これに対して、自動攪拌スイッチ32cがオフである場合には、コントローラ10は、車両が走行中であっても、操作装置32を操作してミキサドラム2を逆回転させることを可能とする。これにより、例えば、細長い溝に生コンを供給するときなどに、車両を極低速で走行させながら、ミキサドラム2内の生コンを外部へと排出することが可能である。また、パーキングブレーキ31から停車信号が出力されている場合も、コントローラ10は、ミキサドラム2内の生コンクリートを外部へと排出できるように、操作装置32を操作してミキサドラム2を逆回転させることを可能とする。
【0035】
ミキサ車100の後部には、ミキサ車100の外部にてミキサドラム2の操作を可能とするための後部操作装置38が配置される。後部操作装置38には、操作装置32と同様に、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を切り換えるためのつまみ型の操作スイッチ38aと、ミキサドラム2の回転を非常停止させるための停止スイッチ38bと、が設けられる。運転者が後部操作装置38を操作することに基づいて、後部操作装置38からコントローラ10に対して指令信号が出力される。
【0036】
コントローラ10は、演算したエンジン3の回転速度に応じて、ミキサドラム2の回転方向と回転速度とが目標回転状態となるように、油圧ポンプ5と油圧モータ6との動作を制御する。具体的には、コントローラ10は、ミキサドラム2の回転方向と回転速度とが目標回転状態となるように、油圧ポンプ5の吐出方向と吐出容量を演算するとともに、油圧モータ6の容量を演算して、油圧ポンプ5に制御信号を出力し、油圧モータ6に二速切換信号を出力する。
【0037】
コントローラ10には、油圧ポンプ5から圧力センサ5aを通じて負荷圧力信号が入力されるとともに、油圧モータ6から回転センサ6aを通じて回転方向信号と回転速度信号が入力される。コントローラ10は、これらの入力信号に基づいて、油圧ポンプ5と油圧モータ6との動作を制御する。
【0038】
また、ミキサ車100には、ミキサ車100の外部にてミキサドラム2内部の自動洗浄、及び生コンクリートの混練操作を可能とするための自動洗浄・混練操作装置39が配置される。
【0039】
ところで、従来のミキサ車では、ミキサドラムの開口部から生コンクリートを排出する排出作動時に、回転するブレードによって押し出される生コンクリートの排出量が周期的に増減するという問題があった。図3Aは、比較例として、ミキサドラムが略一定の回転速度で駆動される排出作動時において、ミキサドラムの回転角度と生コンクリートの排出量との関係を示す特性図である。2枚のブレードが設けられるミキサドラムでは、ミキサドラムが1回転する間に生コンクリートの排出量が増加するピークが2回ある。
【0040】
この対処方法として、コントローラ10では、ミキサドラム2の排出作動時に、第一、第二ブレード13、14が所定の回転位置(回転角度)に来るごとにミキサドラム2の目標回転速度を低くして、生コンクリートの排出量(流量)が周期的に増減することを抑える制御が行われる。具体的には、以下のとおりである。
【0041】
コントローラ10は、第一、第二ブレード13、14が所定位置に来たことを判定する回転位置判定部10Aと、ミキサドラム2の排出作動時に回転位置判定部10Aの判定結果に基づいてミキサドラム2の目標回転速度を周期的に低く補正する回転速度制御部10Bと、を備える。
【0042】
ミキサ車100には、ミキサドラム2の回転位置に応じて信号を出力する回転スイッチ12を備える。回転スイッチ12は、ミキサドラム2の外周に取り付けられた第一、第二磁石33、34の磁力を検知し、回転スイッチ12に対して第一、第二磁石33、34が通過するのに伴って回転位置信号を出力する。
【0043】
第一、第二磁石33、34は、第一、第二ブレード13、14の位置に対応するように、回転中心軸Oについて互いに180度の位相差をもって配置される。
【0044】
なお、回転スイッチ12は、上述した構成に限らず、ミキサドラム2の外周に取り付けた突起に当接してオン、オフ作動するリミットスイッチなどを用いてもよい。
【0045】
回転位置判定部10Aは、回転スイッチ12の検知信号を受信するとともに、回転センサ6aによる油圧モータ6の回転速度Vの検知信号を受信する。回転位置判定部10Aは、回転スイッチ12及び回転センサ6aの検知信号に基づくミキサドラム2の回転位置及び回転速度に応じてミキサドラム2の排出作動時に第一、第二ブレード13、14によって開口部2Aから押し出される生コンクリートの排出量が増える前の回転位置にミキサドラム2が来たことを判定し、油圧モータ6の回転速度Vに応じて生コンクリートの排出量が増える前のタイミングでトリガ信号を出力する。
【0046】
回転位置判定部10Aは、油圧モータ6の回転速度Vが高い程、回転スイッチ12の検知信号を受信してからトリガ信号を出力するタイミングを駆動装置4の作動遅れ時間に対応して早めるように構成される。
【0047】
なお、油圧モータ6の回転速度Vを検知する方法は、上述した回転センサ6aの信号を受信する構成に限らず、ミキサドラム2の目標回転速度を切り換える操作スイッチ32a、38aの信号を受信する構成としてもよい。
【0048】
回転速度制御部10Bは、回転位置判定部10Aからのトリガ信号を受信し、ミキサドラム2の目標回転速度を通常回転速度より低く補正して生コンクリートの排出量が一定になるように油圧ポンプ5の吐出容量を演算する。
【0049】
コントローラ10は、回転速度制御部10Bにて演算された油圧ポンプ5の吐出容量が得られるように、油圧ポンプ5の作動を制御する制御信号を出力する。
【0050】
図3Bは、ミキサドラム2の回転角度に対する回転位置信号、トリガ信号、ミキサドラム2の目標回転速度、生コンクリートの排出量の関係を示すタイミングチャートである。ミキサドラム2の排出作動時にミキサドラム2が1回転する間に、回転位置信号、トリガ信号が2回立ち上がり、ミキサドラム2の回転速度が2回に低くなる。第一、第二ブレード13、14の回転位置に応じたタイミングでミキサドラム2の回転速度が周期的に低くなるように制御されることにより、生コンクリートの排出量が周期的に変動することを抑えられる。
【0051】
回転位置判定部10Aにて、油圧モータ6の回転速度Vが高い程、回転スイッチ12の検知信号を受信してからトリガ信号を出力するタイミングを早めることにより、油圧モータ6の回転速度Vが変化しても生コンクリートの排出量が増加しようとする回転位置にてミキサドラム2の回転が減速される。これにより、第一、第二ブレード13、14によって開口部2Aから押し出される生コンクリートの排出量が周期的に変動することを抑えられる。
【0052】
以上の実施形態によれば、ミキサ車100は、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、ミキサドラム2の回転速度を制御するコントローラ10と、を備える。そして、コントローラ10は、ブレード13、14が所定の回転位置に来たことを判定する回転位置判定部10Aと、回転位置判定部10Aの判定結果に基づいてミキサドラム2の回転速度を通常回転速度より低くする回転速度制御部10Bと、を備える。
【0053】
ミキサ車100では、ミキサドラム2から生コンクリートが外部に排出される作動時に、コントローラ10がブレード13、14の回転位置に応じてミキサドラム2の回転速度を周期的に低く制御することにより、ブレード13、14によって押し出される生コンクリートの排出量が周期的に増減することを抑えられる。これにより、ミキサドラム2から略一定の流量の生コンクリートが排出されるため、例えばミキサドラム2の開口部2Aから排出される生コンクリートをバケットなどの容器に投入する場合に、生コンクリートの投入量にバラツキが生じることを抑えられる。
【0054】
第1実施形態では、ミキサ車100にミキサドラム2の回転位置に応じて信号を出力する回転スイッチ12が設けられる。そして、回転位置判定部10Aは、回転スイッチ12からの信号に基づいてブレード13、14が所定位置に来たことを判定するものとした。
【0055】
これにより、回転位置判定部10Aは、回転スイッチ12の信号に基づいてブレード13、14が所定の回転位置に来たことを的確に判定することができ、コントローラ10によって生コンクリートの排出量が精度よく制御される。
【0056】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のミキサ車と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
上記第1実施形態に係るミキサ車では、ミキサドラム2の回転位置に応じて信号を出力する回転スイッチ12を用いたが、第2実施形態に係るミキサ車では、圧力センサ5aを用いて同様の制御が実行される。
【0058】
圧力センサ5aは、油圧ポンプ5の吐出圧Pに応じた負荷圧力信号をコントローラ10に出力する。油圧ポンプ5の吐出圧Pは、ミキサドラム2が第一、第二ブレード13、14によって押し出される生コンクリート排出量が増加する回転位置に来る前に高まる。
【0059】
回転位置判定部10Cは、圧力センサ5aの検知信号を受信し、検知される吐出圧Pが予め設定されたしきい値以上に上昇したことを判定して、トリガ信号を出力する。これにより、第一、第二ブレード13、14によって開口部2Aから押し出される生コンクリートの排出量が増える前のタイミングでトリガ信号が出力される。また、回転位置判定部10Cは、検知される吐出圧Pの上昇率が予め設定されたしきい値以上に高まることを判定して、トリガ信号を出力するようにしてもよい。
【0060】
回転速度制御部10Bは、回転位置判定部10Cからのトリガ信号を受信し、ミキサドラム2の回転速度を通常回転速度より低くして生コンクリートの排出量が一定になるように油圧ポンプ5の吐出容量を演算する。
【0061】
コントローラ10は、回転速度制御部10Bにて演算された油圧ポンプ5の吐出容量が得られるように、油圧ポンプ5に制御信号を出力する。
【0062】
これにより、ミキサ車100では、ミキサドラム2の排出作動時に第一、第二ブレード13、14の回転位置に応じたタイミングでミキサドラム2の回転速度が低くなり、第一、第二ブレード13、14によって開口部2Aから押し出される生コンクリートの排出量が周期的に変動することを抑えられる。
【0063】
以上の第2実施形態によれば、ミキサ車100に油圧モータ6を駆動する油圧ポンプ5の吐出圧Pを検知する圧力センサ(流体圧検知器)5aが設けられる。そして、回転位置判定部10Cは、圧力センサ5aからの信号に基づいてブレード13、14が所定位置に来たことを判定する。これにより、回転位置判定部10Cは、油圧モータ6を駆動する吐出圧Pがミキサドラム2の回転位置に応じて増減する特性を利用して、生コンクリートの排出量が増えるミキサドラム2の回転位置を的確に判定することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0065】
上記実施形態では、回転スイッチ12または圧力センサ5aの信号に基づいてブレード13、14が所定の回転位置に来たこと判定する構成とした。これに限らず、ミキサドラム2の絶対回転角度を検知する回転角度検知器を設け、回転角度検知器の信号に基づいてミキサドラム2の回転速度を周期的に低くする制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0066】
2 ミキサドラム
4 駆動装置
5 油圧ポンプ(流体圧ポンプ)
5a 圧力センサ(流体圧検知器)
6 油圧モータ(流体圧モータ)
10 コントローラ
10A、10C 回転位置判定部
10B 回転速度制御部
12 回転スイッチ
13、14 ブレード
100 ミキサ車
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4