【文献】
技術資料,信越シリコーン シリコーンオイル KF−96 性能試験結果,信越化学工業株式会社,2014年 5月,p1-36,URL,http://www.silicone.jp/catalog/pdf/kf96_j.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
(成分(A))
成分(A)は、炭素数14〜22のアルキル基を有する4級塩型カチオン界面活性剤である。
成分(A)のカチオン界面活性剤としては、たとえば、(i)炭素数14〜22のアルキルトリメチルアンモニウム塩、(ii)炭素数14〜22のジアルキルジメチルアンモニウム塩、(iii)アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。成分(A)は、1種または2種以上を用いてもよい。
【0014】
(i)炭素数14〜22のアルキルトリメチルアンモニウム塩
炭素数14〜22のアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、たとえば下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
R
1−N
+(CH
3)
3 X
− (1)
〔上記一般式(1)中、R
1は炭素数14〜22のアルキル基を示し、X
−はハロゲン化物イオンまたはメチル硫酸イオンを示す。〕
一般式(1)で表されるものとして、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0015】
(ii)炭素数14〜22のジアルキルジメチルアンモニウム塩
炭素数14〜22のジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、例えば下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
(R
2)
2N
+(CH
3)
2 X
− (2)
〔上記一般式(2)中、R
2はそれぞれ独立して炭素数14〜22のアルキル基又はベンジル基を示し、R
2の少なくとも1つは14〜22のアルキル基であり、X
−は一般式(1)におけるX
−と同じである。〕
一般式(2)で表されるものとして、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0016】
(iii)アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩
アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。
R
3−O−R
4−N
+(CH
3)
3 X- (3)
〔上記一般式(3)中、R
3は炭素数14〜22のアルキル基を示し、R
4はヒドロキシ基が置換していてもよいエチレン基又はプロピレン基を示し、X
-は上記と同じである。〕
【0017】
一般式(3)で表されるものとして、ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアロキシヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0018】
成分(A)のアルキル鎖の炭素数としては、濡れた毛髪の絡みの抑制および速乾性の各効果を向上させる観点から、炭素数16〜18が好ましく、炭素数16がより好ましい。
また、同様の観点から、成分(A)としては、上記一般式(1)で表される(i)炭素数14〜22のアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく;ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトルメチルアンモニウムクロライド等の、炭素数16〜18のアルキルトリメチルアンモニウム塩がより好ましく;ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等の、炭素数16のアルキル基を有する4級アンモニウム塩がさらに好ましい。
また、上記一般式(1)から(3)におけるX
−すなわちハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオンまたは臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0019】
毛髪化粧料中の成分(A)の含有量は、濡れた毛髪の絡みの抑制および速乾性の各効果を付与する観点から、毛髪化粧料全体に対して0.5質量%以上であり、1.0質量%以上が好ましい。
また、同様の観点から、毛髪化粧料中の成分(A)の含有量は、毛髪化粧料全体に対して10質量%以下であり、5.0質量%以下が好ましい。
【0020】
(成分(B))
成分(B)は、炭素数14〜22のアルキル基を有する高級アルコールであり、好ましくは直鎖アルコールである。成分(B)として、1種又は2種以上を用いてもよい。成分(B)は、好ましくは炭素数16以上22以下の直鎖アルコールであり、より好ましくは炭素数16以上18以下の直鎖アルコールであり、更に好ましくは炭素数18の直鎖アルコールである。
成分(B)として、具体的には、セチルアルコール(炭素数16)、ステアリルアルコール(炭素数18)、アラキルアルコール(炭素数20)、ベヘニルアルコール(炭素数22)等が挙げられ、セチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましく、ステアリルアルコールがより好ましい。
【0021】
また、成分(A)および(B)の組み合わせについて、好ましくは成分(A)が、炭素数16のアルキル基を有する4級アンモニウム塩であり、成分(B)が、ステアリルアルコールである組み合わせである。
【0022】
毛髪化粧料中の成分(B)の含有量は、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点から、毛髪化粧料全体に対してたとえば0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましい。一方、毛髪化粧料中の成分(B)の含有量は、適度な粘度を得る観点から、毛髪化粧料全体に対してたとえば20質量%以下であり、10質量%以下が好ましい。
【0023】
本実施形態において、毛髪化粧料中の成分(A)に対する成分(B)のモル比((B)/(A))は、成分(A)と成分(B)、および水とで作るゲル構造を形成し、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点から、0.2以上であり、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上である。
また、濡れた毛髪の絡みを抑制するとともに毛髪への残留性を少なくする観点から、((B)/(A))で表される上記モル比は、2.5以下であり、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.0以下である。成分(A)と成分(B)は、毛髪表面に適度に残留し、必要以上に残さないことが、毛髪の乾燥時間を短縮するのに効果的である。
【0024】
(成分(C))
成分(C)は、25℃での粘度(動粘度)が300万cSt〜1500万cStのシリコーンであり、さらに具体的には、上記粘度を有する高重合ジメチルポリシロキサンである。
成分(C)としては、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点から、25℃での粘度が300万cSt以上であり、350万cSt以上であるものが好ましい。また、製剤中への分散を容易にし、毛髪に均一に被覆し、毛髪の速乾性を向上させる観点からは、成分(C)の粘度は1500万cSt以下であり、1000万cSt以下のものが好ましく、800万cSt以下のものがより好ましい。
【0025】
なお、25℃での粘度(動粘度)が300万cStのジメチルポリシロキサン(ジメチコン)の重量平均分子量MWは、20万に相当し、400万cStのジメチルポリシロキサンの重量平均分子量MWは、21万に相当し、800万cStのジメチルポリシロキサンの重量平均分子量MWは23万に相当し、1000万cStのジメチルポリシロキサンの重量平均分子量MWは24万に相当し、1500万cStのジメチルポリシロキサンの重量平均分子量MWは25万に相当する。
【0026】
成分(C)のシリコーンの重量平均分子量MWは、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点、および、製剤中への分散を容易にし、毛髪に均一に被覆し、毛髪の速乾性を向上させる観点から、好ましくは重量平均分子量MW20万〜25万である。
【0027】
毛髪化粧料中の成分(C)の含有量は、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点から、毛髪化粧料全体に対してたとえば0.001質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましい。また、毛髪化粧料中の成分(C)の含有量は、毛髪の速乾性を向上させる観点から、毛髪化粧料全体に対してたとえば10質量%以下であり、5質量%以下が好ましい。
【0028】
(成分(D))
成分(D)は、25℃での粘度(動粘度)が5cSt〜200cStのシリコーンであり、さらに具体的には低分子量ジメチルポリシロキサンである。
成分(D)としては、成分(C)のシリコーンを希釈し、成分(C)を毛髪表面に薄く均一に塗布し、滑らかさを付与する観点、および、塗布時から乾燥時の揮発し易さの観点から、25℃での粘度が5〜50cSt以下であるものが好ましく、5〜20cStのものがより好ましく、5〜15cStであるものがさらに好ましい。また、成分(D)のシリコーンとして、上記粘度を示すジメチルポリシロキサン(ジメチコン)等が好ましい。
【0029】
なお、25℃での粘度(動粘度)が5cStのジメチルポリシロキサン(ジメチコン)の重量平均分子量MWは、700に相当し、20cStのジメチルポリシロキサンの重量平均分子量MWは2000に相当し、50cStのジメチルポリシロキサンの重量平均分子量MWは3500に相当し、200cStのジメチルポリシロキサンの重量平均分子量MWは11000に相当する。
【0030】
成分(D)のシリコーンの重量平均分子量MWは、成分(C)のシリコーンを希釈し、成分(C)を毛髪表面に薄く均一に塗布し、滑らかさを付与する観点、および、塗布時から乾燥時の揮発し易さの観点から、好ましくは重量平均分子量MW700〜11000である。
【0031】
毛髪化粧料中の成分(D)の含有量は、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点から、毛髪化粧料全体に対してたとえば0.05質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましい。また、毛髪化粧料中の成分(D)の含有量は、毛髪の速乾性を向上させる観点から、毛髪化粧料全体に対してたとえば20質量%未満であり、10質量%以下が好ましい。
【0032】
本実施形態においては、シリコーン類として、成分(C)の高重合シリコーンおよび成分(D)の低分子量シリコーンを特定の割合で組み合わせて用いることにより、成分(C)および(D)が毛髪にわずかに吸着し、濡れた毛髪の絡みが好適に抑制される。また、塗布時の毛髪への伸びやなじみが良く、そのため塗布後に毛髪表面に薄い皮膜を形成することができるので、毛髪の滑らかさや柔らかさを損なうことなく、かつべたつき感を低減し、速乾性を向上させることができる。
【0033】
ここで、成分(C)および(D)の粘度は、たとえば、化粧品原料基準(粧原基)一般試験法などに記載されている粘度測定法第1法を用いて測定される。なお、成分(C)または(D)の粘度によっては、第2法を用い、密度で除することで求めることも可能である。
【0034】
また、対応する粘度のシリコーンの分子量は、このものの分子量Mw(重量平均分子量)はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)により測定した値で表わしている。GPCによる試料(ジメチルシリコーンオイル)の重量平均分子量の測定法は、たとえば次のとおりである。まず、温度25℃において、溶媒(具体的には、テトラヒドロフラン)を毎分1mLの流速で流し、濃度0.4g/dLのテトラヒドロフラン試料溶液を試料として8mg注入し、測定を行なう。試料の分子量測定にあたっては、その試料の有する分子量分布が数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。
【0035】
毛髪化粧料中の成分(C)および成分(D)の含有量の合計すなわち((C)+(D))で表される質量割合は、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点から、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、毛髪の速乾性を向上させる観点から、((C)+(D))で表される上記質量割合は、20質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0036】
また、成分(D)に対する成分(C)の質量比すなわち((C)/(D))は、濡れた毛髪の絡みを抑制する観点、および毛髪の速乾性を向上させる観点から、0.01〜1.0であり、好ましくは0.05〜0.9、より好ましくは0.1〜0.8、さらに好ましくは0.2〜0.7である。
【0037】
(水)
本実施形態における毛髪化粧料は、水を含む。水としては、イオン交換水や蒸留水等を用いることができる。
毛髪化粧料中の水の含有量は、たとえば毛髪外用剤中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。また、水の含有量は、毛髪化粧料全体に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0038】
本実施形態においては、毛髪化粧料中に、成分(E)上述した成分(B)〜(D)以外の油剤を含んでもよいが、毛髪化粧料全体に対する成分(E)の含有量は、毛髪の速乾性を向上させる観点から、0.3質量%以下である。
成分(B)〜(D)以外の油剤として、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン及びアルキル変性シリコーン等の上述したもの以外のシリコーン化合物;ヒマワリ油、ヒマシ油などの植物油、それらの水素添加物や混合物、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸およびパルミチン酸イソプロピル等の高級脂肪酸のエステル類、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等の多価アルコール縮合物の有機酸エステル等の油性成分が挙げられ、中でも、エステル油、炭化水素油等が挙げられる。
毛髪化粧料全体に対する成分(E)の含有量は、毛髪の速乾性を向上させる観点から、0.3質量%以下が好ましく、実質的に含まない、すなわち、製造工程上不可避的に含まれるもの以外の意図的に添加されるものを含まないことがより好ましい。
【0039】
また、本実施形態においては、毛髪化粧料中に、多価アルコール等の溶剤を含んでもよいが、溶剤の含有量は、毛髪の絡まりを抑制する観点から、たとえば5質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0040】
また、本実施形態の毛髪化粧料において、良好な乳化物が得られ、塗布時にコク感、伸ばしやすさを付与できる観点から、水で20重量倍に希釈した際の25℃でのpHが1〜6であることが好ましく、2〜5.5がより好ましく、コク感を付与する観点から、2.5〜5がさらに好ましい。pHの調整には、炭素数1以上10以下の有機酸、無機酸や水酸化ナトリウム等の塩基性物質など、通常pH調整剤として使用されるものを用いてもよい。
【0041】
本実施形態における毛髪化粧料には、他のカチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムス等のカチオン性ポリマー;その他、パール化剤、色素、香料、噴射剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、清涼剤、抗フケ剤、酸化防止剤等を本発明の目的を損なわない範囲内で適宜配合することができる。
【0042】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、グリセリルエーテル、成分(C)を除くポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリンアルキルエーテル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド類等が挙げられる。このうち、アルキルグリコシド類、ポリオキシアルキレン(炭素数8〜20)脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミドが好ましい。例えば、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミドが挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン系界面活性剤が挙げられる。具体的には、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを使用できる。
【0044】
次に、毛髪化粧料の製造方法を説明する。
本実施形態において、毛髪化粧料は、たとえば、成分(A)および(B)を含有する油相を準備し、成分(B)の融点以上に加熱する工程と、
成分(B)の融点以上に加熱した水相に、上記油相を均一混合し、乳化物を得る工程と、
成分(C)および(D)を、当該乳化物が室温まで冷却する過程で混合し、分散する工程と、
当該乳化物を室温まで冷却する工程と、
を含む。
【0045】
また、成分(C)および(D)は、あらかじめ混合して、乳化物に分散させてもよい。このとき、たとえば成分(C)および成分(D)を界面活性剤と混合して分散して配合することができる。界面活性剤として、成分(A)の一部を用いてもよく、他の界面活性剤を用いてもよい。
【0046】
以上の手順により得られる毛髪化粧料においては、成分(A)のカチオン界面活性剤が毛髪に効率よく残留するとともに、成分(C)および(D)のシリコーンにより滑り性が向上する。
【0047】
そして、本実施形態においては、成分(A)〜(D)および水を組み合わせて用いるとともに、成分(A)および(E)の含有量、((B)/(A))で表されるモル比、((C)+(D))で表される質量割合、および、((C)/(D))で表される質量比についていずれも特定の条件を満たす構成を有する。これにより、水で濡れた毛髪がタオルドライから乾燥の間絡まず、乾燥時間が短い毛髪化粧料を得ることができる。
【0048】
ここで、コンディショナー等の毛髪化粧料において、コンディショニング成分を配合することにより、毛髪の潤滑性を向上させることができるため、毛髪の交叉やもつれ等を抑制し、絡まないようにする効果が向上する。一方、コンディショニング成分の添加により、毛髪間の粘着性が向上するため、毛髪同士が離れてばらばらになることも抑制されて、毛髪の乾燥し易さは抑えられる。
つまり、毛髪化粧料に配合される潤滑成分は粘着性を有するため、潤滑成分による毛髪への潤滑性の付与と、毛髪間の粘着性の抑制とは、トレードオフの関係にあった。
これに対し、本実施形態により、毛髪への潤滑性の付与と非粘着性の付与とを両立させることができる。さらに具体的には、成分(A)に対する(B)のモル比を特定の範囲に設定して毛髪同士が離れやすいようにしつつ、成分(C)および(D)を毛髪にわずかに吸着させることにより、タオルドライ時やドライヤーによる乾燥中等の濡れた毛髪の絡みを効果的に抑制することができるとともに、毛髪同士の粘着を好適に抑制して毛髪同士のばらけ性を向上させることができる。このため、たとえば使用者が実感できる速乾性と絡まり防止効果とを得ることが可能となる。
また、本実施形態における毛髪化粧料を用いることより、乾燥後の髪にふんわりとしたボリューム感、さらさら感を付与することもできる。
【0049】
本実施形態における毛髪化粧料は、へアリンス、へアコンディショナー、へアトリートメント、へアパック、へアクリーム、コンディショニングムース、へアムース、シャンプー、リーブオントリートメント等に用いることができる。
また、本実施形態における毛髪化粧料の組成物を上記以外の他の毛髪化粧料に加えて使用してもよい。
【0050】
本実施形態における毛髪化粧料の剤型として、たとえば室温で液体、ペースト、ワックスのものが挙げられる。また、本実施形態における毛髪化粧料をスポンジ状の多孔質担体、繊維、紙等に含浸させて使用してもかまわない。
また、本実施形態における毛髪化粧料は、スプレー、ローション、ポンプ、チューブ、ジャー等の形態であってもよい。
【0051】
また、本実施形態における毛髪化粧料が洗い流すタイプの毛髪化粧料であることが好ましい。
また、本実施形態における毛髪化粧料の使用方法が、たとえば、本実施形態における毛髪化粧料を毛髪に適用するステップと、毛髪に適用された毛髪化粧料を洗い流すステップと、毛髪化粧料を洗い流すステップの後毛髪を乾燥させるステップと、を含んでもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0053】
(実施例1〜11、比較例1〜6)
表1および表2に示すヘアコンディショナーを調製し、以下の方法および基準に従って、その評価を行った。
【0054】
(コンディショナーの調製方法)
成分(A)の一部、成分(B)および成分(E)を用いる場合には成分(E)を80℃で溶融混合し、油相を調製した。
80℃に加温したイオン交換水に得られた油相を加えて均一混合し、乳化物を得た。
この乳化物を室温まで冷却する過程で、成分(C)および(D)を成分(A)の残部に分散させた。
さらに、この乳化物を室温まで冷却し、ヘアコンディショナー組成物を得た。
【0055】
(評価)
(毛束のバラけやすさ)
6cm×6cm角の範囲に200本/cm
2の密度、生え角60°で、長さ30cmの毛髪を植毛した毛髪トレス(毛髪乾燥重量約10g)を、市販のブリーチ剤(花王社製、泡カラーハイブリーチ)でブリーチ処理(毛髪の5質量倍のブリーチ剤を塗布し、30分間室温で処理)を2回行い、毛束のバラけやすさの評価に用いた。作製した毛髪トレスを後述する組成のプレーンシャンプーで2回洗ってから、表1および表2に記載のコンディショナー1gを塗布し、水道水ですすいだ。すすぎ後、毛髪トレスの含水量が10gとなるように調整し、毛髪トレスの上下をペーパータオル(大王製紙社製、エリエールプロワイプ)で挟み、更に、アクリル板、錘(アクリル板と錘の総重量1.3kg)を順に乗せ、10秒間放置し、余分な水分を除去した。
得られたトレスに指を通したときの毛髪束の絡まりにくさ(表1および表2では、「タオルドライ時の毛髪の絡みのなさ」という。)、続いてドライヤー乾燥中の毛髪束の絡まりにくさ(表1および表2では、「乾燥中の毛髪の絡みのなさ」という。)について、専門評価研究員5名による官能評価を実施した。評価は以下の4段階で行い、5名の合計点を算出した。
4:絡まない
3:ほとんど絡まない
2:少し絡む
1:絡む
【0056】
(乾いたと感じられるまでの時間)
上述したトレスを用い、毛束のバラけやすさの評価方法に準じてサンプル処理してペーパータオルにて余分な水分を除去した。
次に、毛髪トレスを下向きに設置し、ドライヤー(National社製 TURBODRY1300)の吹き出し口から毛髪中心部までの距離が25cmになるよう、ドライヤー(温風モード、風量:最弱)と毛髪トレスを固定し、4秒に1回ずつ指を通しながらドライヤー乾燥を行った。この際、ドライヤー乾燥開始から、毛髪が乾いたと研究員が判断できるまでの時間を計測し、速乾性評価とした。
コンディショナーによる処理をおこなっていない未処理ダメージ毛を基準とし、基準毛の乾燥時間は250秒であった。表1および表2に記載のコンディショナーで処理した毛髪について、乾燥時間が220秒以下を合格(優位差あり)とした。
【0057】
・標準シャンプーの処方(pH7.0)(プレーンシャンプー)
25%ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩 62.0質量%
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3質量%
エデト酸二ナトリウム 0.15質量%
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
塩化ナトリウム 0.8質量%
75%リン酸 適量
香料、メチルパラベン 微量
精製水 残量
合計 100質量%
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1および表2中、各成分として以下のものを用いた。
*1 ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド:コータミン60W(花王社製、分子量320)
*2 ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド:試薬(和光純薬工業社製、分子量365)
*3 オクタデシルトルメチルアンモニウムクロライド:コータミン86W(花王社製、分子量348)
*4 ステアリルアルコール:カルコール8098(花王社製、分子量270)
*5 セチルアルコール:カルコール6098(花王社製、分子量242)
*6 ジメチコン 2000万cSt:(信越化学工業社製)
*7 ジメチコン 400万cSt:(信越化学工業社製)
*8 ジメチコン 100万cSt:KF-96H-100万cSt(信越化学工業社製)
*9 ジメチコン 500cSt:KF-96H-500cSt(信越化学工業社製)
*10 ジメチコン 5cSt:KF-96H-5cSt(信越化学工業社製)
*11 パルミチン酸イソプロピル:エキセパールIPP(花王社製)
【0061】
表1および表2に示したように、各実施例においては、成分(A)〜(D)を組み合わせて用いるとともに、成分(A)および(E)の含有量、((B)/(A))で表されるモル比、((C)+(D))で表される質量割合、および、((C)/(D))で表される質量比についていずれも特定の条件を満たすため、各比較例のものに比べて、タオルドライ時およびドライヤーによる乾燥中の毛髪の絡みを抑制するとともに、ドライヤーで乾くまでの時間を短縮することができた。
また、各実施例におけるコンディショナーを用いた場合、乾燥後の髪にふんわりとしたボリューム感およびさらさら感を付与することができた。