(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のヒータは、ヒータの基板となるセラミック基板にスルーホールを設けているために、長期間使用すると定着時の圧力と熱疲労によって割れやすく、さらに、スルーホールの数が多くなると強度が低下してさらに割れやすくなるという問題がある。また、セラミック基板は、断熱性が低いため、表面の発熱体の熱が裏面へ逃げやすいことから、熱効率が低くなり、ヒータとしての加熱性能を高めることが難しい。
【0006】
そこで本発明は、多チャンネル化した場合の面積の増大を抑え、定着時の圧力と熱疲労に対する高い耐久性を備え、さらに高い熱効率を備えた定着機用加熱ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の定着機用加熱ヒータは、基板と、基板上に形成された断熱絶縁層と、断熱絶縁層上に形成された保護層とを備え、基板上に少なくとも共通電極が形成され、断熱絶縁層上に、個別に発熱可能な複数の発熱領域を有する発熱体と、発熱領域に各々接続される複数の導体線とが形成され、複数の導体線は、複数の個別配線と、断熱絶縁層を貫通する第1スルーホールを介して共通電極に接続された、複数のコモン配線とからなることを特徴としている。
【0008】
発熱体と共通電極を別の部材上に形成したため、多チャンネル化したとしてもヒータの面積の増大を抑えることができる。また、共通電極の面積を広くとれるため、配線抵抗を下げることができることから、多チャンネル化した場合でも、配線による電圧ドロップの影響を抑えることができる。さらに、発熱体と共通電極が断熱絶縁層と基板に分かれて形成されているため、高い熱効率を備えつつ、定着時の圧力や熱疲労に対する耐久性を確保することができる。また、基板にスルーホールを設けていないため、従来のヒータのように、多チャンネル化するほどスルーホールが増え、これを小型化すればスルーホールの間隔が狭くなるということがないため、一定の強度を確保することができる。さらに、スルーホールを設けた従来のヒータに対して、長期間の使用に対する耐久性を高めることができる。
【0009】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、基板の熱膨張係数は、断熱絶縁層の熱膨張係数より大きいことが好ましい。
【0010】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、基板、断熱絶縁層、及び保護層は焼成によってそれぞれ硬化させており、基板の焼成温度は、断熱絶縁層の焼成温度より高いことが好ましい。
【0011】
熱膨張係数及び焼成温度をこのようにしたことにより、後から形成する層の製造工程において、先に形成された層が受ける影響を小さくすることができ、所望の形状の加熱ヒータを製造することができる。
【0012】
本発明の定着機用加熱ヒータ
の第1の態様は、上記基本的構成に加え、共通電極は、基板上に発熱体を投影した領域を全て含む範囲に形成されていること
をさらなる特徴とする。
【0013】
このような構成により、少なくとも発熱体を形成する範囲では共通電極が一定の厚みで形成されており、途中に段差等がないため、発熱体が平滑化されやすくなることから、発熱体からの熱が被加熱体に均一に伝わりやすくなる。
【0014】
本発明の定着機用加熱ヒータの第2の態様は、上記基本的構成に加え、共通電極は、
発熱体によって加熱される被加熱体の進行方向に対応する方向において、発熱体よりも幅が広いことをさらなる特徴とする。
【0015】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、断熱絶縁層、共通電極、導体線、及び、保護層は、それぞれ印刷で形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の定着機用加熱ヒータ
の第3の態様は、上記基本的構成に加え、基板と断熱絶縁層の間に、絶縁性の中間層が形成され、断熱絶縁層上の複数の個別配線は、断熱絶縁層を貫通する第2スルーホールを介して、中間層上に形成された複数の第2導体線にそれぞれ接続され、複数のコモン配線は、第1スルーホール、及び、中間層を貫通する第3スルーホールを介して、共通電極に接続されていること
をさらなる特徴とする。
【0017】
発熱体、第2導体線、及び共通電極を別の部材上に形成したため、多チャンネル化したとしてもヒータの面積の増大を抑えることができる。また、共通電極の面積を広くとれるため、配線抵抗値を下げることができることから、多チャンネル化した場合でも、配線による電圧ドロップの影響を抑えることができる。さらに、発熱体、第2導体線、及び共通電極が別の部材に形成されているため、高い熱効率を備えつつ、定着時の圧力や熱疲労に対する耐久性を確保することができる。
【0018】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、中間層の熱膨張係数は、基板の熱膨張係数より小さく、断熱絶縁層の熱膨張係数より大きいことが好ましい。
【0019】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、断熱絶縁層はガラス材料からなり、中間層はアルミナ・ガラス材料からなり、基板はアルミナ材料からなることが好ましい。
【0020】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、基板、中間層、断熱絶縁層、及び保護層は焼成によって硬化させており、基板と中間層の焼成は同時に行い、断熱絶縁層の焼成温度は、基板及び中間層の焼成温度より低いことが好ましい。
【0021】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、中間層上の第2導体線の位置は、被加熱体の進行方向に対応する方向において、断熱絶縁層上の発熱体の位置とずれていることが好ましい。
【0022】
本発明の定着機用加熱ヒータにおいて、中間層は印刷で形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明の定着機用加熱ヒータの別の態様においては、基板と、基板上に形成された絶縁性の中間層と、中間層上に形成された断熱絶縁層と、断熱絶縁層上に形成された保護層とを備え、中間層上に少なくとも共通電極が形成され、断熱絶縁層上に、個別に発熱可能な複数の発熱領域を有する発熱体と、発熱領域に各々接続される複数の導体線とが形成され、複数の導体線は、複数の個別配線と、断熱絶縁層を貫通する第1スルーホールを介して共通電極に接続された、複数のコモン配線とからなり、断熱絶縁層上の複数の個別配線は、断熱絶縁層を貫通する第2スルーホール、及び、中間層を貫通する第4スルーホールを介して、基板上に形成された複数の第2導体線にそれぞれ接続されたことを特徴としている。
【0024】
発熱体、第2導体線、及び共通電極を別の部材上に形成したため、多チャンネル化したとしてもヒータの面積の増大を抑えることができる。また、共通電極の面積を広くとれるため、配線抵抗値を下げることができることから、多チャンネル化した場合でも、配線による電圧ドロップの影響を抑えることができる。さらに、発熱体、第2導体線、及び共通電極が別の部材に形成されているため、高い熱効率を備えつつ、定着時の圧力や熱疲労に対する耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、多様な用紙に対応するために多数の発熱領域を形成して多チャンネル化した場合にも面積の増大を抑えることができ、また、定着時の圧力と熱疲労に対する高い耐久性を備え、さらに高い熱効率を備えている、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る定着機用加熱ヒータについて図面を参照しつつ詳しく説明する。本発明に係る定着機用加熱ヒータは、複写機・プリンタ・ファックス・複合機その他の画像形成装置に用いることができ、電子写真・静電記録・磁気記録などの画像形成プロセスによって形成されたトナー像を、被加熱体としての記録材に加熱定着するプロセスで用いる。記録材としては、例えば、印刷用紙、エレクトロファックスシート、静電記録シート、転写材シートが挙げられる。定着機用加熱ヒータを用いた加熱定着プロセスは、記録材上に形成されたトナー像を加熱するタイプや、中間転写材に形成されたトナー像を記録材上に転写する際又は転写に先立って加熱するタイプを含む。中間転写材は、例えば、ベルト、フィルム、ドラムなどの形態をとることができる。
【0028】
<第1実施形態>
第1実施形態では、記録材上に形成されたトナー像を加熱ヒータによってベルトを介して加熱して溶融させ、溶融したトナー像を記録材上へ定着させる定着機を例に挙げるが、本発明に係る定着機用加熱ヒータはこれに限定されるものではない。
【0029】
図1は、第1実施形態に係る加熱ヒータ30を備えた定着機の構成を示す側面図である。
【0030】
図1に示す定着機は、ベルト20と、ベルト20を所定の方向(
図1のR1方向)に移動させる駆動ローラ21と、ベルト20を加熱する加熱ヒータ30(定着機用加熱ヒータ)と、所定の圧力で記録材10をベルト20に接触させ、ベルト20の進行に従って回転する加圧ローラ22とを備える。用紙10は、不図示の搬送手段によって
図1のF1方向(搬送方向)に進行し、この用紙10に形成されたトナー像Tは、加熱ヒータ30によって加熱されたベルト20と加圧ローラ22との間を通過するときに、熱と圧力によって用紙10に溶融定着される。
【0031】
図2は、第1実施形態に係る加熱ヒータ30の構成を示す分解斜視図である。
図3は、
図2のIII−III’線における断面図である。
図2においては、各構成の構造を簡略化して表示している。
【0032】
図2に示すように、加熱ヒータ30は、積層方向(
図2のZ方向)上側から順に、保護層40と、断熱絶縁層50と、中間層60と、基板70とを備える。
【0033】
基板70は、記録材10の搬送方向(進行方向、Y方向)に直交する方向(X方向)に延びる長板状をなしており、絶縁性材料、例えばアルミナAl
2O
3やガラスで形成する。また、基板70上には、共通電極76と複数の導線77が形成される。導線77は、断熱絶縁層50上に形成する複数のコモン配線57に対応する複数の位置において共通電極76からY方向にそれぞれ延びるように形成されている。共通電極76及び導線77は、例えば溶剤中にガラス粉と導電性材料(例えば、銀、銀・白金、銀・パラジウム、金、白金)を分散させたインク(導電性インク)を印刷、焼成することによって形成する。
【0034】
ここで、基板70には、コネクタ等によって、共通電極76を外部へ電気的に引き出すための引き出し部(不図示)が設けられている。基板70においては、共通電極76から引き出し部に配線するための領域が確保されている。また、引き出し部は、ベルト20による干渉を避けるために、長手方向の端部に設けることが好ましい。
【0035】
共通電極76と導線77が形成された基板70上には、基板70を覆うように中間層60が積層される。中間層60は、絶縁性を備え、熱膨張係数が基板70より小さな材料、例えばアルミナ・ガラス材料やガラス材料等を印刷、焼成することによって形成する。中間層60には、基板70上の複数の導線77及び断熱絶縁層50上の複数のコモン配線57にそれぞれ対応する位置に、中間層60を厚さ方向(Z方向)に貫通する複数のスルーホール61(第3スルーホール)が形成される。
【0036】
中間層60上には、複数の第2導体線66が形成される。第2導体線66は、例えば溶剤中にガラス粉と導電性材料(例えば、銀、銀・白金、銀・パラジウム、金、白金)を分散させたインクを印刷、焼成することによって形成する。第2導体線66の印刷時には、スルーホール61内にもインクが流入される。
【0037】
ここで、中間層60には、コネクタ等によって、第2導体線66を外部へ電気的に引き出すための引き出し部(不図示)が設けられている。中間層60においては、第2導体線66から引き出し部に配線するための領域が確保されている。また、引き出し部は、ベルト20による干渉を避けるために、長手方向の端部に設けることが好ましい。
【0038】
基板70上の共通電極76、中間層60、及び、中間層60上の第2導体線66は、同時に焼成することができる。この焼成の温度は、中間層60にアルミナ・ガラス材料を用い、基板70にアルミナを用いた場合は、例えば800〜900°C程度で設定されることが好ましい。
【0039】
なお、中間層60と基板70の双方をアルミナ・ガラス材料等による低温焼成セラミックスで構成する場合は、中間層60、基板70、共通電極76、及び第2導体線66を同時に焼成することができる。
【0040】
第2導体線66が形成された中間層60上には、中間層60を覆うように断熱絶縁層50が形成される。断熱絶縁層50は、断熱性と絶縁性を備え、熱膨張係数が中間層60より小さな材料、例えばガラス材料などが用いられ、溶剤中にガラス粉を分散したインクを印刷、焼成することによって形成する。断熱絶縁層50には、中間層60上の複数のスルーホール61及び複数のコモン配線57にそれぞれ対応する位置に、断熱絶縁層50を厚さ方向(Z方向)に貫通する複数のスルーホール51(第1スルーホール)が形成される。さらに、断熱絶縁層50には、中間層60上の複数の第2導体線66及び複数の個別配線58にそれぞれ対応する位置に、断熱絶縁層50を厚さ方向(Z方向)に貫通する複数のスルーホール52(第2スルーホール)が形成される。スルーホール51とスルーホール52は、Y方向において、発熱体56を挟んで反対側に配置されている。断熱絶縁層50のスルーホール51、52、及び、中間層60のスルーホール61は、例えば、断熱絶縁層50や中間層60をスクリーン印刷で形成する際に印刷パターンをスルーホールに対応するように作成することによって形成することができる。
【0041】
断熱絶縁層50は、焼成することによって硬化させる。これらの焼成の温度は、中間層60及び基板70の焼成温度よりも低い温度であって、中間層60にガラスを用いた場合は例えば750〜850°C程度で設定されることが好ましい。この硬化処理により複数のスルーホール61のそれぞれと対応する導線77が導通する。
【0042】
焼成された断熱絶縁層50上には、複数のコモン配線57(導体線)及び複数の個別配線58(導体線)が形成・焼成され、その後に、発熱体56がX方向に延びるように形成される。コモン配線57及び個別配線58は、発熱体56をY方向に交差し、X方向において交互に配置される。発熱体56においては、隣り合うコモン配線57と個別配線58によって発熱領域59が形成される。コモン配線57、及び個別配線58は、例えば溶剤中に導電性材料(例えば、銀、銀・白金、銀・パラジウム、金、白金)を分散させたインクを印刷、焼成することによって形成する。スルーホール51、52内には、コモン配線57、個別配線58の形成時に、これらを形成するインクが流入される。発熱体56は、例えば溶剤中にガラス粉と導電性材料(酸化ルテニウム、銀、銀・パラジウム等)を分散させたインクを印刷、焼成することによって形成する。
【0043】
コモン配線57、個別配線58、及び、スルーホール51とスルーホール52の内部のインクは同時に焼成させることによって硬化させる。この焼成の温度は、断熱絶縁層50の焼成温度より低い温度であって、例えば650〜750°C程度で設定されることが好ましい。この硬化処理により、対応する、コモン配線57、スルーホール51、61、及び導線77が互いに導通し、また、対応する、個別配線58、スルーホール52、及び第2導体線66が互いに導通する。
【0044】
コモン配線57、個別配線58の焼成後、発熱体56が印刷され、発熱体56はコモン配線57、個別配線58の焼成温度よりも低い温度、例えば600〜700°C程度の設定温度で焼成・硬化されることが好ましい。
【0045】
発熱体56、コモン配線57、個別配線58が焼成された断熱絶縁層50上には、断熱絶縁層50を覆うように保護層40が形成される。保護層40は、絶縁性を備えた材料、例えば、ガラス材料が用いられ、印刷によって形成する。保護層40は、コモン配線57、個別配線58の焼成温度よりも低い温度、例えば600〜700°C程度の設定温度で焼成され硬化されることが好ましい。
【0046】
図2又は
図3に示すように、共通電極76は、基板70の上面に発熱体56を投影した領域を全て含む範囲に形成されている。別言すると、基板70の上面に発熱体56を投影したとき、その投影像は共通電極76の範囲内に収まっている。したがって、共通電極76は、X方向及びY方向において、発熱体56よりも幅が広くなっている。このような構成により、XY面において、少なくとも発熱体56を形成する範囲では共通電極76が一定の厚みでほぼ平滑に形成されているため、その上方の発熱体56が下地の凹凸の影響なく、厚みのばらつきが小さくほぼ平滑に形成される。それにより、各発熱領域の発熱ばらつきが少なくなるため、発熱体56からの熱が記録材10に均一に伝わりやすくなる。
【0047】
また、基板70上に第2導体線66を投影した像についても共通電極76の範囲内に収まっている。このため、その上方の第2導体線66が下地の凹凸の影響がなく、厚みのばらつきが小さく形成されることから、個別配線58から各発熱領域59への一定量の通電を配線毎のばらつきが小さく行うことができる。
【0048】
さらに、中間層60上の第2導体線66の位置は、記録材10の進行方向に対応するY方向において、断熱絶縁層50上の発熱体56の位置とずれている。これにより、発熱体56が第2導体線66の厚みによる凹凸の影響を受けず、厚みばらつきが小さく、ほぼ平滑に形成されることから、発熱体56からの熱が記録材10に均一に伝わりやすくなる。
【0049】
以上のように形成した加熱ヒータ30において、第2導体線66と共通電極76は、図示しない外部電源にそれぞれ接続されている。外部電源から、第2導体線66又は共通電極76を経て、コモン配線57及び個別配線58へ通電することにより、隣り合うコモン配線57と個別配線58によって形成される発熱領域59の発熱体がそれぞれ発熱する。ここで、複数の個別配線58の一部に通電し、残りの個別配線58に通電しないようにすると、通電した個別配線58と、これに隣り合うコモン配線57との間の発熱領域59のみが発熱するため、記録材10のサイズに合わせて適切な発熱範囲を設定できる。
【0050】
加熱ヒータ30においては、発熱体56、第2導体線66、及び共通電極76を別の部材上に形成したため、多チャンネル化したとしても、XY面におけるヒータの面積の増大を抑えることができる。また、共通電極76の面積を広くとれるため、配線抵抗値を下げることができることから、多チャンネル化した場合でも、配線による電圧ドロップの影響を抑えることができる。
【0051】
さらに、共通電極76の面積を広く取れることから、例えばヒータの発熱量を大きくするために、大きな電流を流す必要がある場合でも、配線の電流容量を確保することができる。
【0052】
また、基板70をアルミナ等の絶縁性材料で、中間層60をアルミナ・ガラス材料等の断熱絶縁材料で、断熱絶縁層50をガラス等の断熱絶縁材料でそれぞれ形成し、発熱体56は銀等の熱効率のよい導電性材料で構成しているため、高い熱効率を備えつつ、定着時の圧力や熱疲労に対する耐久性を確保することができる。
【0053】
なお、保護層40、断熱絶縁層50、発熱体56、コモン配線57、個別配線58、中間層60、第2導体線66、基板70、共通電極76、導線77などを形成する印刷方法としては、スクリーン印刷が好ましい。
【0054】
<第2実施形態>
つづいて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、中間層を設けていない点が第1実施形態と異なる。保護層140と基板170の構成及びその形成過程は第1実施形態の保護層40と基板70と同様であるため詳細な説明は省略する。また、定着機の構成についても、第1実施形態と同様である。
【0055】
図4は、第2実施形態に係る加熱ヒータ130の構成を示す分解斜視図である。
図5は、
図4のV−V’線における断面図である。
図4においては、各構成の構造を簡略化して表示している。
【0056】
図4に示すように、加熱ヒータ130は、積層方向(
図4のZ方向)上側から順に、保護層140と、断熱絶縁層150と、基板170とを備える。
【0057】
基板170には、第1実施形態の基板70の共通電極76と導線77と同様に、共通電極176と導線177が形成されている。この焼成の温度は、基板170にアルミナを用いた場合は、800〜900°C程度で設定されることが好ましい。
基板170上には、基板170を覆うように断熱絶縁層150が形成される。断熱絶縁層150は、断熱性と絶縁性を備え、熱膨張係数が基板170より小さな材料、例えばガラス材料が用いられ、溶剤中にガラス粉を分散したインクの印刷、焼成によって形成することができる。断熱絶縁層150には、複数のコモン配線157にそれぞれ対応する位置に、断熱絶縁層150を厚さ方向(Z方向)に貫通する複数のスルーホール151(第1スルーホール)が形成される。
【0058】
断熱絶縁層150は、基板170の焼成温度よりも低い温度であって、ガラスを用いた場合は例えば750〜850°C程度の中の設定温度で焼成することによって硬化させる。焼成された断熱絶縁層150上には、複数のコモン配線157(導体線)、複数の個別配線158(導体線)、及び複数の第2導体線166が形成・焼成され、その後に、X方向に延びる発熱体156が形成される。コモン配線157及び個別配線158は、発熱体156をY方向に交差し、X方向において交互に配置される。発熱体156においては、隣り合うコモン配線157と個別配線158によって発熱領域159が形成される。発熱体156、コモン配線157、個別配線158、及び第2導体線166は、例えば溶剤中に導電性材料(例えば、銀、銀・白金、銀・パラジウム、金、白金)を分散させたインクを印刷、焼成することによって形成する。コモン配線157、個別配線158、及び第2導体線166の印刷時には、スルーホール151内にもインクが流入される。
【0059】
コモン配線157、個別配線158、第2導体線166、及び、スルーホール151の内部のインクは同時に焼成させることによって硬化させる。この焼成の温度は、断熱絶縁層150の焼成温度より低い温度であって、例えば650〜750°C程度の中で設定されることが好ましい。この硬化処理により、コモン配線157は、対応するスルーホール151、導線177を介して共通電極176と導通する。また、158は、対応する第2導体線166と導通する。
【0060】
コモン配線157、個別配線158、及び第2導体線166の焼成後、発熱体156が印刷され、発熱体156はコモン配線157及び個別配線158の焼成温度よりも低い温度、例えば600〜700°C程度の設定温度で焼成され、硬化される。
【0061】
発熱体156、コモン配線157、個別配線158、及び第2導体線166が焼成された断熱絶縁層150上には、断熱絶縁層150を覆うように保護層140が形成される。
【0062】
図4又は
図5に示すように、第1実施形態と同様に、共通電極176は、基板170の上面に発熱体156を投影した領域を全て含む範囲に形成されている。また、基板170上に第2導体線166を投影した像についても共通電極176の範囲内に収まっている点も第1実施形態と同様である。
【0063】
加熱ヒータ130においても、発熱体156と共通電極176を別の部材上に形成したため、多チャンネル化したとしても、XY面におけるヒータの面積の増大を抑えることができる。また、共通電極176の面積を広くとれるため、配線抵抗値を下げることができることから、多チャンネル化した場合でも、配線による電圧ドロップの影響を抑えることができる。
なお、その他の作用、効果、変形例は第1実施形態と同様である。
【0064】
<第3実施形態>
つづいて、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、第2実施形態と同様に中間層を設けていない点が第1実施形態と異なる。保護層の構成及びその形成過程は第1実施形態の保護層40と同様であるため、図示及び詳細な説明は省略する。また、定着機の構成についても、第1実施形態と同様である。
【0065】
図6は、第3実施形態に係る加熱ヒータ230の構成を示す平面図であって、(A)は断熱絶縁層250の平面図、(B)は基板270の平面図である。
図6においては、各構成の構造を簡略化して表示している。
【0066】
加熱ヒータ230は、第2実施形態と同様に、積層方向上側から順に、保護層(不図示)と、断熱絶縁層250と、基板270とを備える。
【0067】
基板270は、第1実施形態の基板70と同様の材料・形状で構成される。基板270には、第1実施形態の共通電極76と第2導体線66と同様の材料・製法で、共通電極276と第2導体線266が形成されている。次に、共通電極276と第2導体線266は焼成されて硬化される。この焼成の温度は、基板270にアルミナを用いた場合は、例えば800〜900°C程度の中で設定されることが好ましい。
【0068】
基板270上には、基板270を覆うように断熱絶縁層250が形成される。断熱絶縁層250は、断熱性と絶縁性を備え、熱膨張係数が基板270より小さな材料、例えばガラスが用いられ、溶剤中にガラス粉を分散したインクを印刷、焼成することによって形成することができる。断熱絶縁層250には、複数のコモン配線257にそれぞれ対応する位置に、断熱絶縁層250を厚さ方向(Z方向)に貫通する複数のスルーホール251(第1スルーホール)が形成される。さらに、断熱絶縁層250には、基板270上の第2導体線266及び複数の個別配線258にそれぞれ対応する位置に、断熱絶縁層250を厚さ方向(Z方向)に貫通する複数のスルーホール252(第2スルーホール)が形成される。スルーホール251とスルーホール252は、Y方向において、発熱体256を挟んで反対側に配置される。
【0069】
断熱絶縁層250は、基板270の焼成温度よりも低い温度であって、ガラスを用いた場合は例えば750〜850°C程度の設定温度で焼成することによって硬化させる。
【0070】
焼成された断熱絶縁層250上には、複数のコモン配線257(導体線)、及び、複数の個別配線258(導体線)が形成・焼成された後に、X方向に延びる発熱体256が形成される。コモン配線257及び個別配線258は、発熱体256をY方向に交差し、X方向において交互に配置される。発熱体256においては、隣り合うコモン配線257と個別配線258によって発熱領域259が形成される。発熱体256、コモン配線257、及び、個別配線258は、例えば溶剤中に導電性材料(例えば、銀、銀・白金、銀・パラジウム、金、白金)を分散させたインクを印刷することによって形成する。コモン配線257及び個別配線258の印刷時には、スルーホール251、252内にもインクが流入される。
【0071】
コモン配線257、個別配線258、及び、スルーホール251、252の内部のインクは同時に焼成させることによって硬化させる。この焼成の温度は、断熱絶縁層250の焼成温度より低い温度であって、例えば650〜750°C程度の中で設定されることが好ましい。この硬化処理により、コモン配線257は、対応するスルーホール251を介して共通電極276と導通する。また、個別配線258は、対応するスルーホール252を介して第2導体線266と導通する。コモン配線257及び個別配線258の焼成後、発熱体256が印刷され、発熱体256はコモン配線257及び個別配線258の焼成温度よりも低い温度、例えば600〜700°C程度の中の設定温度で焼成され硬化されることが好ましい。
【0072】
発熱体256、コモン配線257、及び個別配線258が焼成された断熱絶縁層250上には、断熱絶縁層250を覆うように保護層が形成される。
【0073】
加熱ヒータ230においても、発熱体256と共通電極276を別の部材上に形成したため、多チャンネル化したとしても、XY面におけるヒータの面積の増大を抑えることができる。
なお、その他の作用、効果、変形例は第2実施形態と同様である。
【0074】
<変形例1>
図7は、変形例1に係る加熱ヒータ330の構成を示す平面図であって、(A)は断熱絶縁層350の平面図、(B)は基板370の平面図である。
図7においては、各構成の構造を簡略化して表示している。
【0075】
上述の第3実施形態においては、スルーホール251とスルーホール252を、Y方向において、発熱体256を挟んで反対側に配置していたが、
図7に示すように、発熱体356の位置をずらし、スルーホール351(第1スルーホール)とスルーホール352(第2スルーホール)を、Y方向において、発熱体256に対して同じ側に配置してもよい。ここで、
図7に示す変形例1における、断熱絶縁層350、スルーホール351、352、発熱体356、コモン配線357、個別配線358、発熱領域359、第2導体線366、基板370、共通電極376は、
図6に示す第3実施形態の断熱絶縁層250、スルーホール251、252、発熱体256、コモン配線257、個別配線258、発熱領域259、第2導体線266、基板270、共通電極276にそれぞれ対応し、同様の材料・製法で形成される。
【0076】
<変形例2>
図8は、変形例2に係る加熱ヒータ430の構成を示す断面図である。
【0077】
変形例2においては、第1実施形態の中間層60に代えて、多層構造の中間層460を用いている。ここで、
図8に示す変形例2における、保護層440、断熱絶縁層450、スルーホール451、452、発熱体456、コモン配線457、不図示の個別配線、不図示の発熱領域、基板470、共通電極476、及び、基板470上の導線(不図示)は、
図3に示す第1実施形態の保護層40、断熱絶縁層50、スルーホール51、52、発熱体56、コモン配線57、個別配線58、発熱領域59、基板70、共通電極76、及び、導線77にそれぞれ対応し、同様の材料・製法で形成される。
【0078】
図8に示す例では、中間層460は、Z方向に積層された5つの個別層460a、460b、460c、460d、460eからなる。ここで、中間層460を構成する個別層の層数は5に限定されない。中間層460は、断熱性と絶縁性を備え、熱膨張係数が基板470より小さな材料が好ましい。または、中間層460及び基板470の双方をアルミナ・ガラス材料等による低温焼成セラミックス(LTCC)にて構成し、第2導体線466と合わせて同時焼成することも可能である。
【0079】
中間層460には、スルーホール461と、個別層にそれぞれ形成された複数の第2導体線466と、それぞれの第2導体線466に対応する複数のスルーホール462、463とが形成されている。第2導体線466は、第1実施形態の第2導体線66と同様の方法で形成する。
【0080】
複数のスルーホール461は、断熱絶縁層450に形成された複数のスルーホール451にそれぞれ連なるように、中間層460のすべての個別層を厚さ方向に貫通する。複数のスルーホール462は、断熱絶縁層450に形成された複数のスルーホール452にそれぞれ連なるように、個別層を厚さ方向に貫通する。スルーホール463は、全ての個別層の対応する第2導体線466を互いに導通させるように厚さ方向に貫通する。スルーホール461、462、463には第2導体線466を形成する導電性インクが充填される。このため、スルーホール451、461を介して断熱絶縁層450上のコモン配線457と共通電極476が導通し、スルーホール452、462、463を介して断熱絶縁層450上の複数の個別配線と対応する第2導体線466が導通する。
【0081】
このように、中間層460を多層化することにより、第2導体線466を配置する面積を広げることができるため、多チャンネル化したとしきのXY面におけるヒータの面積の増大を抑えることができる。
【0082】
<変形例3>
上記実施形態においては、基板70上に共通電極76が形成され、中間層60上に第2導体線66が形成されていたが、これに代えて、基板70上に第2導体線が形成され、中間層60上に共通電極が形成される構成も可能である。この構成においては、複数のコモン配線が、断熱絶縁層50を貫通する第1スルーホールを介して共通電極に接続され、断熱絶縁層50上の複数の個別配線は、断熱絶縁層50を貫通する第2スルーホール、及び、中間層60を貫通する第4スルーホールを介して、基板70上に形成された複数の第2導体線にそれぞれ接続される。
【0083】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。