(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記摺動部は、前記第2回転子の回転に伴って、前記第1位置から前記第2位置へ移動する場合の旋回方向とは逆の方向へ旋回することによって、前記地板に対して、前記第2位置から、前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置に移動し、
さらに前記摺動部は、前記第2位置から前記第3位置へ移動するとき、前記摺動孔部の両端部のうち、前記第2位置に位置付けられた場合に近くに位置する一方の端部へさらに近づくように前記摺動孔部の内部を移動し、
前記摺動孔部は、前記第1曲壁に対面する第2曲壁のうち前記第3位置に位置付けられた前記摺動部が接触するロック面を含み、
前記ロック面は、前記第2軸に向かう力が前記摺動部に加わる方向へ前記第3位置に位置付けられた前記摺動部を押圧するように形成される
請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレーンシャッタ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るカメラ用フォーカルプレーンシャッタは、ディジタルカメラやスチルカメラ等のカメラに搭載される。
【0011】
<構成>
図1に示すように、カメラ用フォーカルプレーンシャッタシステム1は、カメラ用フォーカルプレーンシャッタ(以下、単に「シャッタ」ともいう。)2と、シャッタ2を制御する制御装置3と、を備える。本実施の形態では、シャッタ2が、単幕式シャッタである例により説明する。
【0012】
図2および
図3に示すように、シャッタ2は、いわゆるスクエア型シャッタであって、開口211を有する地板210と、開口211を開閉するシャッタ幕150と、地板210およびシャッタ幕150を動作可能に連結する第1アーム141および第2アーム142と、シャッタ幕150に動作力を加えるメインアクチュエータ110と、そのメインアクチュエータ110を補助するためシャッタ幕150に動作力を加えるサブアクチュエータ120とを備える。
【0013】
地板210は、略長方形板状に形成され、地板210の中央には、地板210の厚さ方向に貫通した長方形の開口211が形成されている。
図4に示すように、地板210の上面には、開口211の短手方向に沿うように、直方形状のホルダ220が設けられている。ホルダ220は、上方が開放した箱状のホルダ本体220aと、ホルダ本体220aの上面に装着される蓋部220bとから構成されている。地板210の下面には、図示しない補助板が地板210と隙間を有するように重ねられている。
【0014】
図4に示すように、ホルダ本体220aの内部には、メインアクチュエータ110に対応した直方体をなす第1収納空間220eと、サブアクチュエータ120に対応した直方体をなす第2収納空間220fとが形成されている。第1収納空間220eおよび第2収納空間220fは、ホルダ本体220aの長手方向に沿って配置されている。
【0015】
第1収納空間220eにおけるホルダ本体220aの内底面には、円柱状の軸部222が挿通する貫通孔220gが設けられ、第2収納空間220fにおけるホルダ本体220aの内底面には、円柱状の軸部223が挿通する貫通孔220hが設けられている。これら軸部222,223は、地板210の上面に固定されている。
【0016】
ホルダ本体220aの側壁の下端は、地板210の上面に固定されており、ホルダ本体220aの内底板は、地板210の上面に対して離間するように、これら側壁によって支持されている。ホルダ本体220aは、メインアクチュエータ110およびサブアクチュエータ120を収容した状態で、その上方から蓋部220bが嵌め合わされる。
【0017】
図4に示すように、メインアクチュエータ110は、第1収納空間220eに収納されるとともに、U字状の第1ヨーク112と、第1ヨーク112の一部に挿通された第1コイル111と、第1コイル111で発生する磁力により、軸部222を中心に回転する第1回転子113とを備える。
【0018】
図3および
図4に示すように、第1回転子113は、軸部222に挿通される円筒状の磁石から構成される。第1回転子113は、その周方向に沿って交互にN極およびS極が着磁されるとともに、第1コイル111が形成する磁場の変化によって回転軸J21を中心に回転する。この回転軸J21は、軸部222の中心を通過する。
【0019】
図3に示すように、第1ヨーク112は、鉄等の磁性材料で形成される。第1ヨーク112は、第1回転子113の回転軸J21に直交する方向に延びる一対の延出部112a,112bと、一対の延出部112a,112bを連結する連結部112cとにより全体がU字状に構成される。一対の延出部112a,112bは、第1回転子113の回転軸J21に直交する方向に離間する。一対の延出部112a,112bの先端側内面には、第1回転子113の外周に対応する円弧状の凹部が形成されている。一対の延出部112a,112bの先端部の間には、第1回転子113が設けられている。
【0020】
図3および
図4に示すように、第1コイル111は、矩形筒状のボビン111aと、そのボビン111aの外周に巻き付けられる銅等の導電性材料の巻き線111bとを備える。
図1に示すように、巻き線111bから第1コイル111の外側に2本の導電線L11、L12が延出し、導電線L11、L12は、制御装置3に接続されている。第1コイル111は、第1ヨーク112におけるシャッタ幕150と遠い方の延出部112aに挿通されている。
【0021】
図4に示すように、第1回転子113の下端には、第1回転子113と一体回転し、シャッタ幕150に回転力を付与する回動部116が装着されている。回動部116は、第1回転子113と一体回転可能に、第1回転子113の径方向に延出している。詳しくは、回動部116は、第1回転子113をその下端から保持する保持部116aと、第1回転子113の径方向に延び、その先端から地板210に向かって直角に屈曲した先端部116bとを備える。
図4に示すように、回動部116は、ホルダ本体220aの内底板に形成される貫通孔220gを通じて、ホルダ本体220aの下側に延出する。回動部116の保持部116aは、ホルダ本体220aと地板210との間を、第1回転子113の回転軸J21を中心に回動する。
【0022】
図3および
図4に示すように、サブアクチュエータ120は、第2収納空間220fに収納されるとともに、メインアクチュエータ110と同様に、U字状の第2ヨーク122と、第2ヨーク122の一部に挿通された第2コイル121と、第2コイル121で発生する磁力により、軸部223を中心に回転する第2回転子123とを備える。サブアクチュエータ120とメインアクチュエータ110とは、第1収納空間220eおよび第2収納空間220fの間を第1回転子113の回転軸J21に直交する方向に延びる対称軸を中心に線対称に構成されている。サブアクチュエータ120の各部の構成は、メインアクチュエータ110と同様であるため、共通する部分についてはその説明を省略し、メインアクチュエータ110と異なる箇所についてのみ説明する。
【0023】
図4に示すように、第2回転子123の下端には、第2回転子123と一体回転し、シャッタ幕150に回転力を付与する回動部126が装着されている。回動部126は、第2回転子123の下端に装着される保持部126aと、第2回転子123の径方向に延出するとともにその先端部が地板210に向かって直角に屈曲した円柱状の摺動部126bとを備える。保持部126aは、第2回転子123を下側から保持可能に円筒状に形成されている。摺動部126bは、保持部126aと一体で樹脂成形されてもよいし、保持部126aと別体で金属で形成されてもよい。摺動部126bは、保持部126aと別体で形成される場合、摺動部126bは、ねじまたは接着剤等によって保持部126aに固定される。回動部126は、ホルダ本体220aの内底板に形成される貫通孔220h(を通じて、ホルダ本体220a下側に延出し、回動部126の保持部126aはホルダ本体220aと地板210との間を回動する。
【0024】
図4に示すように、地板210には、地板210の厚さ方向に貫通する第1長孔213および第2長孔214が形成されている。第1長孔213は、回動部116の先端部116bが上方から挿通可能に形成されるとともに、第1回転子113の回転に伴う先端部116bの移動軌跡に応じた円弧状をなしている。また、第2長孔214は、回動部126の摺動部126bが上方から挿通可能に形成されるとともに、第2回転子123の回転時における第2アーム142に対する摺動部126bの相対的移動軌跡に応じた円弧状をなしている。なお、本実施形態では、この第2長孔214の開口211側の端部214aがストッパ部の一例である。
【0025】
図3および
図5に示すように、第1アーム141は、地板210の内面に位置し、回動部116の先端部116bと羽根151,152,153,154との間を動作可能に連結している。第2アーム142は、地板210の内面に位置し、回動部126の摺動部126bと羽根151,152,153,154との間を動作可能に連結している。第1アーム141および第2アーム142は、その厚さ方向からみて、その先端が屈曲した形状を有する。なお、第1アーム141と回動部116との連結部分および第2アーム142と回動部126との連結部分の構成については後で詳述する。
【0026】
図3に示すように、シャッタ幕150は、4枚の羽根151,152,153,154から構成される。各羽根151,152,153,154は、略長方板状に形成されている。
図2および
図5に示すように、シャッタ幕150は、地板210の内面側に配置され、開口211を開閉可能に構成される。具体的には、
図8に示すように、4枚の羽根151,152,153,154は、第1アーム141および第2アーム142にピン141a,141b,141c,141d,142a,142b,142c,142dを通じて回転可能に連結されている。第1アーム141に関する4つのピン141a,141b,141c,141dは、第1アーム141の先端側から順に配列され、同様に、第2アーム142に関する4つのピン141a,141b,141c,141dは、第2アーム142の先端側から順に配列されている。
【0027】
図8に示すように、羽根151は、2つのピン141a,142aを介して各第1アーム141および第2アーム142に回転可能に連結されている。羽根152は、2つのピン141b,142bを介して第1アーム141および第2アーム142に回転可能に連結されている。羽根153は、2つのピン141c,142cを介して第1アーム141および第2アーム142に回転可能に連結されている。羽根154は、2つのピン141d,142dを介して第1アーム141および第2アーム142に回転可能に連結されている。
【0028】
シャッタ幕150は、メインアクチュエータ110およびサブアクチュエータ120の駆動により、第1アーム141および第2アーム142を介して地板210の開口211に対して全開状態と全閉状態との間で変化する。シャッタ幕150が全開状態にあるとき、複数の羽根151,152,153,154は全開位置に存在し、シャッタ幕150が全閉状態にあるとき、複数の羽根151,152,153,154は全閉位置に存在する。
図2および
図6に示すように、全開位置においては、複数の羽根151,152,153,154は、地板210の厚さ方向からみて地板210の開口211の下側縁部(メインアクチュエータ110側の縁部)に退避した状態で互いに重なり合っている。複数の羽根151,152,153,154が全開位置にあるとき、開口211の全域が外部に露出している。
【0029】
羽根151,152,153,154は、全開位置から順に、地板210の開口211の上側縁部(サブアクチュエータ120側の縁部)に向かって移動する。これにより、開口211が羽根151,152,153,154によって閉じられていく。
図8に示すように、羽根151が地板210の開口211の上側縁部に当接すると、シャッタ幕150は全閉位置となる。全閉位置においては、複数の羽根151,152,153,154が地板210の開口211の全域を覆う。
【0030】
次に、第1アーム141と回動部116との連結部分および第2アーム142と回動部126との連結部分の構成について説明する。
【0031】
図7に示すように、第1アーム141の基端部には、第1アーム141の厚さ方向に貫通する長方形状の嵌合孔141eが形成されている。嵌合孔141eには、回動部116の先端部116bが嵌合されている。
【0032】
第2アーム142の基端部には、軸部143が挿通される軸通孔142eが形成されている。第2アーム142の回転軸J23(第1軸)は、第2回転子123の回転軸J22(第2軸)と異なる位置、本実施形態では、第2回転子123の回転軸J22に対して第2アーム142と離間する方向に位置する。
【0033】
図6に示すように、第2アーム142の基端部には、上記軸通孔142eとは別に第2アーム142の厚さ方向に貫通した長孔を有する摺動孔部145が形成されている。摺動孔部145は、第2アーム142の厚さ方向からみて、概ね円弧状に延びる長孔を形成する。摺動孔部145は、第2アーム142と第2回転子123の摺動部126bとの連動を可能にするために、第2アーム142に対する摺動部126bの相対移動の軌跡に沿うように形成されている。詳しくは、摺動孔部145は、互いに離間して位置する第1曲壁145aおよび第2曲壁145bと、これら第1曲壁145aおよび第2曲壁145bをそれらの両端で連結する第1端壁145cおよび第2端壁145dとから構成される。第1曲壁145aおよび第2曲壁145bは、それぞれ湾曲した壁面からなるとともに、回動部126の摺動部126bの直径より大きい距離だけ離間しつつ対面している。各端壁145c,145dは、回動部126の摺動部126bの外周に対応した半円状の壁面をなす。第1端壁145cは、摺動孔部145における第2回転子123の径方向の外側に向かう側の端部に位置し、第2端壁145dは、摺動孔部145における第2アーム142が延出する側の端部に位置する。摺動孔部145には、地板210の内側に位置する摺動部126bが挿通されている。
【0034】
図1に示すように、制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)からなる制御回路3aと、メモリからなる記憶部3bと、ハードウェアタイマまたはソフトウェアタイマから構成されるタイマ3cとを備える。制御回路3aには、ユーザの押し操作に基づき操作信号を出力する入力部5が接続されている。
【0035】
<制御手順>
制御回路3aは、入力部5から操作信号を受けると、記憶部3bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、シャッタ2を動作させる。以下、このプログラムについて、
図11のフローチャートを参照しつつ説明する。このプログラムは、シャッタ幕150を全開位置から全閉位置に変位させるために実行される。
【0036】
シャッタ幕150が全開位置にあるとき、制御回路3aは、入力部5から操作信号を受けると、導電線L11、L12を介して第1コイル111へ第1方向の電流を供給するとともに、導電線L21、L22を介して第2コイル121へ第1方向の電流を供給する(ステップS101)。このとき、
図11に示すように、第1コイル111および第2コイル121が電磁石として第1回転子113および第2回転子123の周囲に磁極を形成する。これにより、第1回転子113および第2回転子123は、対応する第1コイル111および第2コイル121が形成する磁極との間で生じる反発力または吸引力を受けて
図7の時計回りの第1方向B1で回転する。
【0037】
図11に示すように、制御回路3aは、タイマ3cを通じて、第1コイル111および第2コイル121への通電開始から一定時間T1が経過するのを待つ(ステップS102でNO)。この一定時間T1は、シャッタ幕150が全開位置から全閉位置に達するまでに要する時間に予め設定される。制御回路3aは、一定時間T1が経過した旨判断すると(ステップS102でYES)、第1コイル111への通電を停止するとともに、第2コイル121への通電方向を切り替える(ステップS103)。すなわち、第2コイル121へ上記第1方向とは反対の第2方向の電流を供給する。そして、制御回路3aは、第2コイル121への第2方向への通電開始から一定時間T2が経過するのを待つ(ステップS104でNO)。この一定時間T2は、
図8を参照しつつ後述するように、回動部126の摺動部126bが摺動孔部145内で第2位置Pbから第3位置Pcに移動するまでに要する時間に設定されている。制御回路3aは、一定時間T2が経過した旨判断すると(ステップS104でYES)、第2コイル121への通電を停止する(ステップS105)。以上で、制御回路3aは、シャッタ幕150を全開位置から全閉位置に変位させ、さらに、その全閉位置においてシャッタ幕150をロックすることができる。
【0038】
今度は反対にシャッタ幕150を全閉位置から全開位置に移動させるため、制御回路3aは、まず一定時間T2に亘って第2コイル121へ第1方向の電流を供給し、その後、第1コイル111および第2コイル121へ一定時間T1に亘って第2方向の電流を供給する。これにより、回動部126の摺動部126bが摺動孔部145内で第3位置Pcから第2位置Pbに移動した後に第1位置Paに向かって移動する。このため、シャッタ幕150が全閉位置から全開位置に移動する。なお、制御回路3aは、シャッタ幕150を全閉位置から全開位置に移動させる際、第2コイル121への通電を行わなくてもよい。
【0039】
<動作>
ここでは、まず、シャッタ幕150が移動する際の摺動孔部145の動きについて説明し、その後に上記プログラムが実行される際のシャッタ2の動作について説明する。
【0040】
図6〜
図8に示すように、摺動孔部145は、その摺動孔部145が形成される第2アーム142とともにその回転軸J23を中心に回転し、回動部126の摺動部126bは、第2回転子123とともにその回転軸J22を中心に回転する。このため、第2アーム142および第2回転子123の回転位置に応じて、摺動孔部145は第2回転子123に対する姿勢を変化させるように構成されている。
【0041】
具体的には、
図6に示すように、シャッタ幕150が全開位置にあるとき、摺動孔部145は、第2回転子123を挟んで第2アーム142の回転軸J23と対向するように位置する。このとき、第1端壁145c側の第1曲壁145aおよび第2曲壁145bは第2アーム142の旋回方向A1に直交し、第2端壁145d側の第1曲壁145aおよび第2曲壁145bは第2アーム142の旋回方向A1に沿う。
【0042】
図7に示すように、シャッタ幕150が全開位置から全閉位置に向かって所定距離だけ移動したときには、摺動孔部145は、第2回転子123を挟んで第1回転子113と対向するように位置する。そして、
図8に示すように、シャッタ幕150が全閉位置に達したとき、摺動孔部145は、第2アーム142の回転軸J23を挟んで第1回転子113と対向するように位置する。シャッタ幕150が全閉位置に向かって移動するにつれて、摺動孔部145は、時計回りに自転しつつ、第2アーム142の回転軸J23を中心に公転する。
【0043】
次に、上記プログラムが実行される際のシャッタ2の機械的な動作について説明する。
【0044】
図6に示すように、シャッタ幕150が全開位置にあるとき、第1コイル111および第2コイル121への通電により、第1回転子113および第2回転子123が
図6の時計回りの第1方向B1に回転する。第1回転子113の回転力は、回動部116を通じて第1アーム141および各羽根151,152,153,154に伝達される。第2回転子123の回転力は、第1回転子113の回転力を補助するため、回動部126の摺動部126bを介して第1アーム141、各羽根151,152,153,154に伝達される。各羽根151,152,153,154は、第1アーム141および第2アーム142の回転に伴い、全開状態と全閉状態との間で変化する。
【0045】
例えば、
図6に示すように、シャッタ幕150が全開位置にあるとき、回動部126の摺動部126bは、摺動孔部145内における第1端壁145cに当接した第1位置Paに位置する。このとき、第1端壁145c側の第1曲壁145aおよび第2曲壁145bは第2アーム142の旋回方向A1に直交するように位置する。よって、回動部126が第2回転子123とともに第1方向B1に回転したとき、回動部126の摺動部126bが、第1曲壁145aに、摺動部126bが当接する位置における壁面の接線方向に直交する方向へ力F1を加える。この力F1は、第2アーム142の旋回方向A1と一致した方向に作用する。このため、
図10に示すように、シャッタ幕150が全開状態にある時刻t0においては、第2回転子123の回転力が、第2アーム142の回転力として最大の伝達効率Emで第2アーム142に伝達される。
【0046】
図7に示すように、第2アーム142が回転軸J23を中心に回転し、かつ第1アーム141が回転軸J21を中心に回転するにつれて、羽根151,152,153,154が展開していく。ここで、第2アーム142の回転軸J23と、回動部126の回転軸J22とが異なるため、第2アーム142の回動に伴い、第2アーム142の摺動孔部145内で、回動部126の摺動部126bが移動する。言い換えると、摺動孔部145内で回動部126の摺動部126bが移動することで、回転軸の異なる第2アーム142と回動部126との連動が可能となる。
【0047】
図7に示すように、第2コイル121への通電により回動部126の摺動部126bが第1位置Paから第1方向B1に回転したとき、第1アーム141および第2アーム142の回転とともに、回動部126の摺動部126bが摺動孔部145内における第1端壁145c(第1端部)に当接した第1位置Paから、第2端壁145d(第2端部)に向かって第1曲壁145aに沿って摺動する。第1曲壁145aおよび第2曲壁145bは、それぞれ第2端壁145dに向かうにつれて、第2アーム142の旋回方向A1に沿う方向に傾斜していくように形成されている。よって、摺動部126bが第1位置Paからその第2端壁145d側に位置する第2位置Pbに移動するにつれて、摺動部126bが接触する位置における第1曲壁145aの接線方向と第2アーム142の旋回方向A1とがなす角度が小さくなっていく。これに伴い、回動部126の摺動部126bが第1曲壁145aに加える力F1のベクトルは、第2アーム142の回転軸J23に向かう方向に回転していく。このため、摺動部126bが第1曲壁145aに加える力F1を成分分解したとき、第2アーム142の旋回方向A1に作用する分力F2が減少し、第2アーム142の回転軸J23の方向に作用する分力F3が増加していく。したがって、
図10に示すように、時刻t0からシャッタ幕150の展開が進むにつれて、第2回転子123の回転力が、第2アーム142の回転力として第2アーム142に伝達される伝達効率Eが序々に低下する。この伝達効率Eの低下に伴い、第1アーム141および第2アーム142、ひいてはシャッタ幕150の過度な増速が抑制される。
【0048】
図8に示すように、シャッタ幕150が全閉位置に達したとき、回動部126の摺動部126bは、摺動孔部145の延出方向の中央やや第2端壁145d寄りの第2位置Pbに位置する。摺動部126bが第2位置Pbにあるとき、摺動部126bと摺動孔部145の第2曲壁145bとの間には隙間があるため、摺動部126bは、反時計回りの第2方向B2に回転可能である。言い換えると、摺動孔部145は、第2位置Pbから第2方向B2に向かって、第2端部145d側に延出している。摺動部126bが第2位置Pbから第2方向B2に回転すると、回動部126の摺動部126bは、摺動孔部145内を第2端壁145d側に移動しながら、第1曲壁145aに接する位置から第2曲壁145bに接する第3位置Pcに移動する。このとき、摺動部126bのみが停止した第2アーム142の摺動孔部145内を移動しているため、回動部126は、第2アーム142に何らの力も与えない。第2回転子123の回転軸J22からみると、第3位置Pcは、第1位置Paと第2位置Pbとの間に位置する。
【0049】
図9に拡大して示すように、第3位置Pcにおいて、回動部126の摺動部126bは、摺動孔部145のロック面145eに当接するとともに、
図4に示すストッパ部の一例として地板210に形成される第2長孔214の端部214aに当接する。ロック面145eは、第2端壁145d側の第1曲壁145aの一部である。摺動部126bが第3位置Pcに達したとき、ロック面145eの垂線(
図9の力Faの線上に延びる線)は、第2回転子123の回転軸J22よりもシャッタ幕150側を通過する。第2長孔214の端部214aは、第3位置Pcにおける摺動部126bが第2方向B2(第2回転子123の回転軸J22からみて第1位置Paへの方向)へ移動することを、摺動部126bとの接触を通じて規制する。摺動部126bが第3位置Pcにあるとき、摺動部126bと摺動孔部145の第2端壁145dとの間には隙間が形成されている。
ここで、羽根151,152,153,154が全閉位置に達したとき、羽根151は所定の速度で開口211の縁部に衝突する。これにより、羽根151,152,153,154、第1アーム141および第2アーム142には全開位置に向かってバウンド力F4が作用する。回動部126の摺動部126bが第3位置Pcにあるときに、このバウンド力F4が第2アーム142に加わると、第2アーム142の回転力を、ロック面145eを介して回動部126の摺動部126bが受ける。このとき、ロック面145eは、摺動部126bを第2回転子123の回転軸J22よりもシャッタ幕150側に力Faで押圧する。この摺動部126bに加わる力Faは、第2回転子123の回転軸J22に向かう分力Fbと、摺動孔部145の第2端壁145dに向かう分力Fcとに分解される。分力Fbによっては第2回転子123を回転させる力は生じず、分力Fcによっては摺動部126bがより地板210に形成される第2長孔214の端部214aに強く押し当てられる。よって、バウンド力F4が加わった場合であっても、摺動部126bが第3位置Pcに維持される。
【0050】
<効果>
上記実施形態にかかるカメラ用フォーカルプレーンシャッタは、以下のような効果を奏する。
【0051】
(1)第1曲壁145aは、摺動部126bが第1位置Paから第2位置Pbに向かうにつれて、摺動部126bが接触する位置における第1曲壁145aの接線方向と第2アーム142の旋回方向A1とがなす角度が小さくなるように湾曲する。例えば、シャッタ幕150が全開位置にあるとき、摺動部126bが接触する位置における第1曲壁145aの接線方向と第2アーム142の旋回方向A1とがなす角度は90°である。このとき、第2アーム142の旋回方向A1と、摺動部126bが第2アーム142へ伝える力F1の方向とが一致する。このため、第1曲壁145aは、サブアクチュエータ120による摺動部126bの回転力を、第2アーム142の回転力として第2アーム142に高効率で伝達できる。よって、サブアクチュエータ120は、羽根151,152,153,154が動き出した直後におけるシャッタ幕150を迅速に増速することができる。
【0052】
また、シャッタ幕150が展開するにつれて、サブアクチュエータ120の摺動部126bが摺動孔部145内を第1端壁145c側の第1位置Paから第2端壁145d側の第2位置Pbに向かって移動する。これにより、摺動部126bが接触する位置における第1曲壁145aの接線方向と第2アーム142の旋回方向A1とがなす角度は次第に小さくなる。したがって、サブアクチュエータ120の摺動部126bが第2アーム142に加える力F1のうち、第2アーム142の旋回方向に作用する分力F2が小さくなっていく。よって、シャッタ幕150が展開して、羽根151,152,153,154が増速するにつれて、サブアクチュエータ120が第2アーム142に加える回転力は序々に小さくなる。このため、シャッタ幕150が所望の速度を超えて移動することが抑制される。
【0053】
以上のように、サブアクチュエータ120から第2アーム142へ伝達される回動力をシャッタ幕150の展開位置に応じて変化させることで、羽根151,152,153,154の移動中の速度変化を抑制することが可能となる。
さらに、シャッタ幕150が全閉位置に近づいた際、シャッタ幕150の過度な増速が抑制されるため、シャッタ幕150が全閉位置に達したときにシャッタ幕150が開口211の縁部に衝突することによりシャッタ幕150に加わるバウンド力F4を低減させることもできる。
【0054】
(2)第1曲壁145aは、シャッタ幕150が全閉位置にあるとき、第2回転子123の第2方向B2(
図9の反時計回り)への回転に伴い摺動部126bが当接するロック面145eを含む。摺動部126bがロック面145eに当接した状態において、上記バウンド力F4によって第2アーム142へ回転力が加わった場合、ロック面145eは、第2回転子123の回転軸J22の方向に分力Fbが作用するように、摺動部126bを押圧する。このため、摺動部126bが第2回転子123の回転軸J22を中心に回転することが抑制され、バウンド力F4が羽根151,152,153,154を介して、第2アーム142に加わった場合であっても、第2アーム142の回転が規制され、その第2アーム142に連結される羽根151,152,153,154のバウンドを抑制することができる。
【0055】
(3)ストッパ部の一例である第2長孔214の端部214aは、第3位置Pcにおける摺動部126bが第2方向B2へ移動することを、摺動部126bとの接触を通じて規制する。摺動部126bがロック面145eに当接した状態において、上記バウンド力F4によって第2アーム142へ回転力が加わった場合、ロック面145eは、第2回転子123の回転軸J22と第2長孔214の端部214aとにそれぞれ分力Fb,Fcが加わるように摺動部126bを力Faで押圧する。分力Fbによっては第2回転子123を回転させる力は生じず、分力Fcによって摺動部126bがより地板210に強く押し当てられる。このため、バウンド力F4が加わった場合であっても、摺動部126bが第3位置Pcに維持され、その摺動部126bによって第2アーム142の回転が規制される。
【0056】
(4)第2長孔214の端部214aは、第3位置Pcにおける摺動部126bが第2方向B2に向かって移動することを、摺動部126bとの接触を通じて規制するストッパ部の一例として構成される。このように、地板210にストッパ部を設けることで、より高い精度で、摺動部126bを第3位置Pcに停止させることができる。
【0057】
また、摺動部126bが第3位置Pcに達したとき、摺動部126bが摺動孔部145の第2端壁145dより先に第2長孔214の端部214aに当接する。このため、摺動部126bを第3位置Pcに停止させるために、第2アーム142の摺動孔部145に高い形状精度および組み付け精度が要求されず、製造容易性が向上する。
【0058】
(5)本実施形態では、機械的構成、例えば摺動部126bおよび摺動孔部145の形状および配置によって、サブアクチュエータ120から第2アーム142へ伝達される回動力の調整が行われている。よって、制御装置3の制御が複雑になることはない。
【0059】
(6)サブアクチュエータ120によってシャッタ幕150の移動速度が制御される。このため、シャッタ幕150の移動速度を制御するために、メインアクチュエータ110の出力を抑制する必要がなく、シャッタ幕150の移動速度を高めることができる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態では、バウンド抑制のため、摺動孔部145にはロック面145eが形成されていたが、このロック面145eを省略してもよい。この場合、摺動孔部145は、その第2端壁145d側の一部が省略された形状となる。この構成では、制御回路3aは、
図11のステップS101,S102の後、ステップS103に代えて第1コイル111および第2コイル121への通電を停止する。その後、ステップS104,S105の処理を実行することなく、シャッタ幕150を展開するためのプログラムを終了する。
【0061】
上記実施形態では、カメラ用フォーカルプレーンシャッタは、1枚のシャッタ幕を備える単幕式シャッタであったが、例えば、カメラ用フォーカルプレーンシャッタは、2枚のシャッタ幕を備える二幕式のフォーカルプレーンシャッタであってもよい。
【0062】
例えば、
図12に示すように、二幕式のフォーカルプレーンシャッタは、1つの地板210に対して後幕装置300および先幕装置400が配置されている。後幕装置300および先幕装置400は、それぞれ同一の構成を有しており、具体的には、上記実施形態のシャッタ2と同様の構成である。先幕装置400は、後幕装置300に対して、第2回転子123の回転軸J22を回転中心として180°回転させた向きに配置されている。先幕装置400のシャッタ幕150と後幕装置300のシャッタ幕150とは、開口211を挟んで対向するように配置される。この構成において、制御回路は、まず、先幕装置400のシャッタ幕150を全開状態から全閉状態にし、その後再び全開状態にする。その後、制御回路は、予め設定された時間が経過すると、後幕装置300のシャッタ幕150を全開状態から全閉状態にし、その後再び全開状態にする。例えばカメラ用フォーカルプレーンシャッタの開口211に撮像装置を対向配置した場合、撮像装置は、先幕装置400のシャッタ幕150が全閉状態から全開状態になった後、後幕装置300のシャッタ幕150が全閉状態になるまでの間の時間に画像を取り込むことができる。
【0063】
上記実施形態では、シャッタ幕150が4枚の羽根151,152,153,154から構成される例について説明したが、シャッタ幕を構成する羽根の枚数は4枚に限定されるものではなく、例えば4枚よりも少なくてもよいし、4枚よりも多くてもよい。
【0064】
上記実施形態では、1つのシャッタ幕150が後幕として機能する例について説明したが、例えば、1つのシャッタ幕150を先幕として駆動させた後、後幕として駆動させるものであってもよい。
【0065】
上記実施形態では、制御回路3aは、全開位置にあるシャッタ幕150の移動開始から一定時間T1の経過により、シャッタ幕150が全閉位置に達した旨判断していたが、その他の方法によりシャッタ幕150が全閉位置に達した旨判断してもよい。例えば、シャッタ幕150が全閉位置に達したとき、そのシャッタ幕150により押圧される検出スイッチをシャッタ2に新たに設ける。制御回路3aは、その検出スイッチの検出結果に基づき、シャッタ幕150が全閉位置に達した旨判断してもよい。
【0066】
上記実施形態では、2つのアームが設けられていたが、アームの数はこれに限定されず、単数であってもよいし、3つ以上であってもよい。アームが単数の場合、メインアクチュエータ110およびサブアクチュエータ120は、それぞれ単一のアームに回転力を付与するように構成される。
【0067】
上記実施形態では、第2長孔214の端部214aが第3位置Pcの摺動部126bからの力の一部を受けて、摺動部126bの第2方向B2への移動を規制するストッパ部の一例を構成していたが、この第2長孔214の端部214aに代えて、またはこの端部214aとともに摺動孔部145の第2端壁145dがストッパ部を構成してもよい。さらに、このストッパ部を省略してもよい。この場合であっても、ロック面145eは、第3位置Pcの摺動部126bを、第2回転子123に向かって押圧する。これにより、摺動部126bの回転が抑制される。
上記実施形態では、シャッタ幕150が全開位置から全閉位置に移動する際に、サブアクチュエータ120によって第2アーム142への回転力を補助可能に構成されていた。しかし、反対に、シャッタ幕150が全閉位置から全開位置に移動する際に、サブアクチュエータ120によって第2アーム142への回転力を補助可能に構成されてもよい。この場合、
図7のアームの位置でシャッタ幕150が全閉状態となり、
図8のアームの位置でシャッタ幕150が全開状態となるように構成される。