特許第6484094号(P6484094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484094
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ガスセンサ素子およびガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/419 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   G01N27/419 327H
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-83981(P2015-83981)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-205848(P2016-205848A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正樹
(72)【発明者】
【氏名】古田 暢雄
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−115618(JP,A)
【文献】 特開2006−250925(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0074582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406−27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる板状のガスセンサ素子であり、
第1固体電解質体、並びに前記第1固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられた第1電極部及び第2電極部を有する第1セルと、
第2固体電解質体、並びに前記第2固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられた第3電極部及び第4電極部を有する第2セルと、
前記第1セル及び前記第2セルとの間に設けられ、前記第1セルの前記第2電極部及び前記第2セルの前記第3電極部が露出する測定室と、
を備え、
前記第1電極部に電気的に接続し、前記第1電極部から前記長手方向に延びる第1リード部と、
前記第2電極部に電気的に接続し、前記第2電極部から前記長手方向に延びる第2リード部と、
前記第3電極部に電気的に接続し、前記第3電極部から前記長手方向に延びる第3リード部と、
前記第4電極部に電気的に接続し、前記第4電極部から前記長手方向に延びる第4リード部と、を有する、
ガスセンサ素子であって、
前記長手方向に垂直な断面であり、且つ前記第1リード部から前記第4リード部までの全てのリード部が通る所定の断面を見たときに、
前記所定の断面を前記ガスセンサ素子の幅方向に二等分すると、前記第1リード部及び前記第4リード部が配置されている領域は、前記第2リード部及び前記第3リード部が配置されている領域と異なり、
前記第2リード部と前記第3リード部とは、前記ガスセンサ素子の積層方向に重なることなく前記幅方向にずれて配置されている、ガスセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサ素子であって、
前記第1リード部から前記第4リード部までの全てのリード部は、それぞれ前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面から0.4mm以上離れて配置されている、ガスセンサ素子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ素子であって、
前記第2リード部と前記第3リード部との積層方向における距離が、前記第1リード部と前記第4リード部との積層方向における距離よりも短い、ガスセンサ素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスセンサ素子であって、
前記第1固体電解質体の周囲を取り囲むと共に、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成する板状の第1絶縁層を備え、前記第1リード部及び前記第2リード部は、前記第1絶縁層の両主面上にそれぞれ設けられてなり、
前記第2固体電解質体の周囲を取り囲むと共に、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成する板状の第2絶縁層を備え、前記第3リード部及び前記第4リード部は、前記第2絶縁層の両主面上にそれぞれ設けられてなる、ガスセンサ素子。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスセンサ素子であって、
前記第1固体電解質体は、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成すると共に、前記第1リード部及び前記第2リード部は、前記第1固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられてなり、
前記第2固体電解質体は、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成すると共に、前記第3リード部及び前記第4リード部は、前記第固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられてなる、ガスセンサ素子。
【請求項6】
長手方向に延びる板状のガスセンサ素子と、
前記ガスセンサ素子の周囲を包囲する筒状の主体金具と、
前記ガスセンサ素子と前記主体金具との間に配置され、前記主体金具に前記ガスセンサ素子を固定する充填粉末と、を備えるガスセンサであって、
前記ガスセンサ素子は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガスセンサ素子である、ガスセンサ。
【請求項7】
請求項6に記載のガスセンサであって、
前記ガスセンサ素子の前記長手方向に垂直な断面であり、且つ前記充填粉末と前記ガスセンサ素子とが接する部分の断面を見たときに、
前記断面を前記ガスセンサ素子の幅方向に二等分すると、前記第1リード部及び前記第4リード部が配置されている領域は、前記第2リード部及び前記第3リード部が配置されている領域と異なり、
前記第2リード部と前記第3リード部とは、前記積層方向に重なることなく前記幅方向にずれて配置されている、ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子およびガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス中の特定のガスの濃度を検出するガスセンサとして、固体電解質体の外表面に一対の電極を配置したセルを備えるガスセンサ素子が知られている。特に、排ガス中に含まれる特定のガスの濃度を全領域にわたって検出するガスセンサとしては、2つのセルを、測定室を挟んで積層させた積層型のガスセンサ素子が知られている(例えば、特許文献1)。この積層型のガスセンサ素子では、一方のセルにかかる電圧を一定電圧となるように、他方のセルが、制御回路から入力される電流に応じて測定室内へ酸素を汲み入れ/汲み出しを実行する。これら一対の電極は、ガスセンサ素子の先端側に設けられた電極部と、ガスセンサ素子の後端側に設けられた電極パッドと電極部とを電気的に接続するためのリード部を備える。
【0003】
図7は、特許文献1に記載されたガスセンサ素子10の断面図である。図7は、ガスセンサ素子10の先端側から後端側を見たときの断面であり、図7では、ガスセンサ素子10の断面におけるリード部の配置を示す。ガスセンサ素子10は、第1セル20と、絶縁層30と、第2セル40と、保護層50と、ヒータ60とを備える。第1セル20は、固体電解質体22と、固体電解質体22上にそれぞれ配置された一対の電極部(図示せず)に電気的に接続される、第1のリード部24と第2のリード部26とを備える。第2セル40は、固体電解質体42と、固体電解質体42上にそれぞれ配置された一対の電極部(図示せず)に電気的に接続される、第3のリード部44と第4のリード部46とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−185865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、対になる電極のリード部同士は、ガスセンサ素子の幅方向距離が離れているほうが、セルとして正確な値を検知・検出できるため好ましい。例えば、図7に示されるように、第2セル40において、第4のリード部46はガスセンサ素子10の左側端部に配されているが、第3のリード部44はガスセンサ素子10の中央部に配されている。このため、より正確な値を検知・検出するためには、第3のリード部44と第4のリード部46の幅方向距離を離すことが好ましく、例えば、第3のリード部44と第4のリード部46とをガスセンサ素子10の左右の端部に配置することが好ましい。これは、第2セル40だけでなく、第1セル20についても同様である。
【0006】
他方、ガスセンサ素子10において、第2のリード部26と接続する電極パッドと第3のリード部44と接続する電極パッドとは、共通の電極パッドを用いることが通常であるため、電極パッドに接続するスルーホールの形成などを考慮すると、積層方向において、第2のリード部26と第3のリード部44を幅方向において略同位置に配置することが好ましい。
【0007】
図8は、上記課題を考慮したガスセンサ素子10Aの断面図である。図8に示されるように、第2のリード部26Aと第3のリード部44Aとをガスセンサ素子10Aの左側端部に配置し、第1のリード部24Aと第4のリード部46Aとをガスセンサ素子10Aの右側端部に配置することで、第1のリード部24Aと第2のリード部26A、及び第3のリード部44Aと第4のリード部46Aとのそれぞれの距離を離すことができ、ガスセンサ素子10Aは、より正確な値を検知・検出することができる。また、第2のリード部26Aと第3のリード部44Aとを積層方向に重ねて配置することで、第2のリード部26A及び第3のリード部44Aに対応する電極パッドに接続するスルーホールの形成などを容易にすることができる。
【0008】
しかしながら、図7図8においては、それぞれ、第2のリード部26、26Aと第3のリード部44、44Aが積層方向に重なっている。このため、第2のリード部26、26Aと第3のリード部44、44Aが重なっているガスセンサ素子10、10Aの部分が、他の部分と比較して厚くなる。この結果として、例えば、ガスセンサ素子の焼結時に、固体電解質体22と絶縁層30との間や、固体電解質体42と絶縁層30との間に空隙が発生する虞があった。この空隙の発生は、ガスセンサ素子10、10Aの強度の低下の原因となり得る。
【0009】
つまり、ガスセンサ素子10、10Aは、第1のリード部24、24Aから第4のリード部46、46Aの配置に際し、上述のような、ガスセンサ素子の強度の低下の抑制、スルーホールの形成等の容易性、測定精度の向上のすべてを考慮する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することができる。
【0011】
(1)本発明の一形態によれば、ガスセンサ素子が提供される。ガスセンサ素子は、長手方向に延びる板状のガスセンサ素子であり、第1固体電解質体、並びに前記第1固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられた第1電極部及び第2電極部を有する第1セルと、第2固体電解質体、並びに前記第2固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられた第3電極部及び第4電極部を有する第2セルと、前記第1セル及び前記第2セルとの間に設けられ、前記第1セルの前記第2電極部及び前記第2セルの前記第3電極部が露出する測定室と、を備え、前記第1電極部に電気的に接続し、前記第1電極部から前記長手方向に延びる第1リード部と、前記第2電極部に電気的に接続し、前記第2電極部から前記長手方向に延びる第2リード部と、前記第3電極部に電気的に接続し、前記第3電極部から前記長手方向に延びる第3リード部と、前記第4電極部に電気的に接続し、前記第4電極部から前記長手方向に延びる第4リード部と、を有する、ガスセンサ素子であって、前記長手方向に垂直な断面であり、且つ前記第1リード部から前記第4リード部までの全てのリード部が通る所定の断面を見たときに、前記所定の断面を前記ガスセンサ素子の幅方向に二等分すると、前記第1リード部及び前記第4リード部が配置されている領域は、前記第2リード部及び前記第3リード部が配置されている領域と異なり、前記第2リード部と前記第3リード部とは、前記ガスセンサ素子の積層方向に重なることなく前記幅方向にずれて配置されている。この形態のガスセンサ素子によれば、所定の断面を幅方向に二等分したときに、第1リード部が配置されている領域と第2リード部とが配置されている領域、及び第3リード部が配置されている領域と第4リード部とが配置されている領域とがそれぞれ異なるため、幅方向距離を離すことができ、セルとして正確な値を検知・検出できる。また、この形態のガスセンサ素子によれば、第2リード部と第3リード部とを同じ領域に配置しているため、第2リード部と第3リード部とを共通の電極パッドを用いる際に、電極パッドに接続するスルーホールの形成などを容易にすることができる。さらに、この形態のガスセンサ素子によれば、所定の断面において、第2リード部と第3リード部とは、ガスセンサ素子の積層方向に重なることなく幅方向にずれて配置されているため、ガスセンサ素子内の空隙の発生を抑制でき、ガスセンサ素子の強度の低下を抑制できる。
【0012】
(2)上記形態のガスセンサ素子において、前記第1リード部から前記第4リード部までの全てのリード部は、それぞれ前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面から0.4mm以上離れて配置されていてもよい。この形態のガスセンサ素子によれば、第1リード部から第4リード部までの全てのリード部は、ガスセンサ素子の側面から0.4mm以上離れて配置されているため、電極厚みの影響によるガスセンサ素子の側面における微小な空隙の発生をも抑制でき、ガスセンサ素子の強度をさらに維持することができる。
【0013】
(3)上記形態のガスセンサ素子において、前記第2リード部と前記第3リード部との積層方向における距離が、前記第1リード部と前記第4リード部との積層方向における距離よりも短くてもよい。この形態のガスセンサ素子によれば、第2リード部と第3リード部の積層距離が短いため、第2リード部と第3リード部とを積層方向に重ねて配置すると、ガスセンサ素子内の微小な空隙の発生が顕著に発生するが、本実施形態のように、第2リード部と第3リード部とを積層方向に重なることなく幅方向にずれて配置されているため、ガスセンサ素子内の空隙の発生を抑制できる。
【0014】
(4)上記形態のガスセンサ素子において、前記第1固体電解質体の周囲を取り囲むと共に、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成する板状の第1絶縁層を備え、前記第1リード部及び第2リード部は、前記第1絶縁層の両主面上にそれぞれ設けられてなり、前記第2固体電解質体の周囲を取り囲むと共に、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成する板状の第2絶縁層を備え、前記第3リード部及び第4リード部は、前記第2絶縁層の両主面上にそれぞれ設けられてなるとしてもよい。このような、第1固体電解質体の周囲を取り囲む第1絶縁層上や、第2固体電解質体の周囲を取り囲む第2絶縁層上に第1リード部から第4リード部を配置したガスセンサ素子においても、本形態を適用することで、ガスセンサ素子の強度の低下の抑制や、スルーホールの形成等の容易性、測定精度の向上のすべてを達成することができる。
【0015】
(5)上記形態のガスセンサ素子において、前記第1固体電解質体は、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成すると共に、前記第1リード部及び前記第2リード部は、前記第1固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられてなり、前記第2固体電解質体は、前記ガスセンサ素子の前記幅方向の側面の一部を構成すると共に、前記第3リード部及び前記第4リード部は、前記第固体電解質体の両主面上にそれぞれ設けられてなるとしてもよい。このような、板状の第1固体電解質体上や、板状の第2固体電解質体上に第1リード部から第4リード部を配置したガスセンサ素子においても、本形態を適用することで、ガスセンサ素子の強度の低下の抑制や、スルーホールの形成等の容易性、測定精度の向上のすべてを達成することができる。
【0016】
(6)本発明の他の形態によれば、ガスセンサが提供される。ガスセンサは、長手方向に延びる板状のガスセンサ素子と、前記ガスセンサ素子の周囲を包囲する筒状の主体金具と、前記ガスセンサ素子と前記主体金具との間に配置され、前記主体金具に前記ガスセンサ素子を固定する充填粉末と、を備えるガスセンサであって、前記ガスセンサ素子は、上記形態のガスセンサ素子である。この形態のガスセンサによれば、所定の断面を幅方向に二等分したときに、第1リード部が配置されている領域と第2リード部とが配置されている領域、及び第3リード部が配置されている領域と第4リード部とが配置されている領域とがそれぞれ異なるため、幅方向距離を離すことができ、セルとして正確な値を検知・検出できる。また、この形態のガスセンサによれば、第2リード部と第3リード部とを同じ領域に配置しているため、第2リード部と第3リード部とを共通の電極パッドを用いる際に、電極パッドに接続するスルーホールの形成などを容易にすることができる。さらに、この形態のガスセンサによれば、所定の断面において、第2リード部と第3リード部とは、ガスセンサ素子の積層方向に重なることなく幅方向にずれて配置されているため、ガスセンサ素子内の空隙の発生を抑制でき、ガスセンサ素子の強度の低下を抑制できる。
【0017】
(7)上記形態のガスセンサにおいて、前記ガスセンサ素子の前記長手方向に垂直な断面であり、且つ前記充填粉末と前記ガスセンサ素子とが接する部分の断面を見たときに、前記断面を前記ガスセンサ素子の幅方向に二等分すると、前記第1リード部及び前記第4リード部が配置されている領域は、前記第2リード部及び前記第3リード部が配置されている領域と異なり、前記第2リード部と前記第3リード部とは、前記積層方向に重なることなく前記幅方向にずれて配置されていてもよい。この形態のガスセンサによれば、ガスセンサ素子において特に強度が要求される部分である充填粉末と接する部分において、ガスセンサ素子内の空隙の発生を抑制できる。この結果、この形態のガスセンサによれば、ガスセンサ素子の強度の低下を抑制させることができる。
【0018】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ガスセンサ素子の製造方法等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態としてのガスセンサ100の内部構造を示す断面図。
図2】ガスセンサ素子120の構成を示す概略斜視図。
図3】ガスセンサ素子120を分解して示す分解斜視図。
図4図3のY−Y断面におけるガスセンサ素子120の断面図。
図5】リード部と側面との距離Xと、側面における空隙の発生の有無の結果を示す図。
図6】ガスセンサ素子120Aを分解して示す分解斜視図。
図7】特許文献1に記載されたガスセンサ素子10の断面図。
図8】第1のリード部24Aと第2のリード部26Aの幅方向距離を離したガスセンサ素子10Aの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態としてのガスセンサ100の内部構造を示す断面図である。図1には、ガスセンサ100の仮想中心軸AX(以下、単に「軸線AX」とも呼ぶ)を一点鎖線で図示してある。このガスセンサ100は、内燃機関の排気管などに装着され、測定ガスである排気ガス中の特定のガス(例えば、酸素)の濃度を、リッチ領域からリーン領域に渡ってリニアに検知する、いわゆる全領域空燃比センサである。
【0021】
ガスセンサ100は、軸線AX方向に沿って延伸された形状を有している。ガスセンサ100は、その先端側(紙面下側)が排気管の内部に挿入され、後端側(紙面上側)が排気管の外部に突出するように排気管の外表面に固定的に取り付けられる。なお、図1には、ガスセンサ100が取り付けられたときの排気管の外表面の位置が二点鎖線PSで図示してある。
【0022】
ガスセンサ100は、自身を排気管に対して固定的に取り付けるための主体金具110を備える。主体金具110は、軸線AX方向に沿った貫通孔110cを有し、ガスセンサ素子120の周囲を包囲する筒状の金属部材である。主体金具110の外側には、排気管に設けられたガスセンサ100の取り付けのためのネジ溝に螺合するねじ部110aや、ガスセンサ100の取り付けの際にスパナやレンチなどの工具を係合させるための工具係合部110bが形成されている。
【0023】
主体金具110の先端側には、二重の有底筒状のプロテクタ101が、レーザ溶接により固設されている。二重のプロテクタ101には、ガスセンサ100を排気管に取り付けたときに、排ガスを内部に導入できるように、内側および外側の壁部のそれぞれに、複数の導入孔101cが形成されている。
【0024】
主体金具110の後端側には、筒状の金属製の外筒103がレーザ溶接により固設されている。ガスセンサ100の内部には、外筒103の後端側端部から、ガスセンサ100と外部の制御回路(図示せず)とを電気的に接続するための3本のセンサ用リード線193,194,195と、2本のヒータ用リード線196,197とが挿通されている。なお、外筒103の後端側端部には、外筒103の内部を封止するためのフッ素ゴム製のグロメット191が取り付けられており、5種類のリード線193〜197は、グロメット191を貫通して、外筒103の内部に挿入されている。
【0025】
ガスセンサ100は、特定のガス(例えば、酸素)の濃度に応じた信号を出力するガスセンサ素子120を備える。ガスセンサ素子120は、長手方向に延びる板状の構造を有しており、長手方向に垂直な断面が略矩形形状となる四角柱形状を有している(詳細は後述)。なお、図1に示すように、ガスセンサ素子120の長手方向と、ガスセンサ100の軸線AX方向とは同方向をなしている。ガスセンサ素子120は、主体金具110の貫通孔110c内に固定的に保持されており、ガスセンサ100の内部において、軸線AX方向に沿って収容される。なお、図1では、ガスセンサ素子120の積層方向に沿って互いに対向し合う第1と第2の面120a,120bがそれぞれ紙面左側および紙面右側に向いている。
【0026】
ガスセンサ素子120の先端側(紙面下側)の端部には、排気ガス中の特定のガスの濃度を検出可能に構成されたガス検出部121が設けられている。ガス検出部121は、プロテクタ101の内部に収容・配置されている。これによって、ガスセンサ100が排気管に取り付けられたときに、ガス検出部121は、導入孔101cから導入された排ガスに曝される。
【0027】
ここで、主体金具110の後端側(紙面上側)の外筒103内には、軸線AX方向に沿った貫通孔181cを有する筒状の絶縁部材であるセパレータ181が固定的に保持されている。具体的には、セパレータ181は、外周に配置された略筒状の付勢金具190によって、グロメット191に向かって付勢された状態で、外筒103内に保持されている。ガスセンサ素子120の後端側の端部は、そのセパレータ181の貫通孔181c内に収容されている。
【0028】
ガスセンサ素子120の後端部には、第1の面120a側に、3つのセンサ用の電極パッド125、126、127が紙面奥行き方向に並列に配列され、第2の面120b側に、2つのヒータ用の電極パッド128,129が紙面奥行き方向に並列に配列されている。さらに、セパレータ181の貫通孔181c内には、3つのセンサ用の接続端子182,183,184と、2つのヒータ用の接続端子185,186とが、ガスセンサ素子120の対応する各電極パッド125〜129と接触するように設けられている。なお、各センサ用接続端子182〜186は、グロメット191を介してガスセンサ100内に挿通された5本のリード線193〜197に電気的に接続されている。
【0029】
主体金具110の貫通孔110cの先端側には、径方向内側に突出する段部111が形成されている。そして、主体金具110の貫通孔110c内には、底面に貫通孔116cを有する金属カップ116が、その底面の外周端部が段部111と係合した状態で配置される。
【0030】
金属カップ116の底面側の内部空間には、セラミックホルダ113が配置される。セラミックホルダ113は、アルミナ(Al23)によって構成され、中央に、ガスセンサ素子120を挿通するための矩形状の貫通孔113cが形成されている。
【0031】
金属カップ116の内部には、金属カップ116の貫通孔116cと、セラミックホルダ113の貫通孔113cとに挿通されたガスセンサ素子120を気密に保持するための第1粉末充填層114(タルク)が形成されている。第1粉末充填層114は、セラミックホルダ113の上に滑石粉末を充填することにより形成される。このように、ガスセンサ素子120は、金属カップ116と、セラミックホルダ113と、第1粉末充填層114と、一体化された状態で、主体金具110の貫通孔110c内に保持される。
【0032】
主体金具110の貫通孔110c内には、第1粉末充填層114の上に、さらに、主体金具110の後端側とガスセンサ素子120のガス検出部121との間の気密性を確保するための第2粉末充填層115(タルク)が、滑石粉末を充填することにより形成されている。そして、第2粉末充填層115の上にはセラミックスリーブ170が配置されている。第2粉末充填層115に配された充填粉末により、主体金具110にガスセンサ素子120を固定している。
【0033】
セラミックスリーブ170は、ガスセンサ素子120を挿通するための、軸線AX方向に沿った矩形状の軸孔170cを有する筒状体である。セラミックスリーブ170は、アルミナによって構成することができる。セラミックスリーブ170は、主体金具110の後端側の端部110kを径方向内側に屈曲させて加締めることにより、第2粉末充填層115側に押圧された状態で、主体金具110に固定される。なお、主体金具110の後端側の端部110kとセラミックスリーブ170との間には、加締リング117が配置される。
【0034】
図2は、ガスセンサ素子120の構成を示す概略斜視図である。図2には、ガスセンサ素子120の第1の面120a側を紙面上側とし、第2の面120b側を紙面下側として図示してある。また、軸線AX方向(図1)を紙面左右方向とし、先端側を紙面左側とし、後端側を紙面右側として図示してある。ガスセンサ素子120は、板状の検出素子130(紙面上側)と、板状のヒータ160(紙面下側)とが積層されて焼成一体化されることによって構成されている。
【0035】
なお、図1においても説明したように、ガスセンサ素子120の先端側には、ガス検出部121が形成されている。そして、後端側の第1の面120a側には、3つの電極パッド125〜127が配列されている。なお、図示はされていないが、後端側の第2の面120b側には、2つの電極パッド128,129が配列されている。
【0036】
図3は、ガスセンサ素子120を分解して示す分解斜視図である。図3には、積層方向(紙面上下方向)に分解されたガスセンサ素子120の各構成部が、紙面左側を先端側とし、紙面右側を後端側として図示してある。なお、図中の一点鎖線は、一点鎖線で結ばれた各構成部が電気的に導通していることを示している。ガスセンサ100の検出素子130は、保護層131と、第1セルとしての酸素ポンプセル135と、絶縁層145と、第2セルとしての酸素濃度検知セル150とが、第1の面120a側から、この順序で積層されている。
【0037】
保護層131は、アルミナを主成分として形成された板状部材であり、ガスセンサ素子120の第1の面120a側を保護する。保護層131の先端側には、保護層131の積層方向(紙面上下方向)に通気性を有する多孔質部132が形成されており、多孔質部132の周囲を取り囲むように基体部133が設けられている。多孔質部132は、ガスセンサ素子120を、その積層方向に沿って見たときに、後述する第1電極部137Mと重なる領域に形成されている。多孔質部132は、ガス検出部121の排ガスの汲み入れ/汲み出しのためのガス流路部として機能する。
【0038】
保護層131の基体部133の外側面131aの後端側には、3つの電極パッド125〜127が、ガスセンサ素子120の幅方向(紙面奥行き方向)に並列に配列される。そして、基体部133には、第1〜第3のスルーホール導体11〜13が、第1〜第3の電極パッド125〜127に対応させて、貫通形成されている。
【0039】
酸素ポンプセル135は、板状の第1固体電解質体136と、第1固体電解質体136の周囲を取り囲む第1絶縁層139と、第1固体電解質体136及び第1絶縁層139の両主面上にそれぞれ設けられた電極(第1電極137,第2電極138)とを備える。第1固体電解質体136は、ジルコニア(ZrO2)を主成分として形成されており、第1電極部137Mと第2電極部138Mよりも若干大きい面積を有するように形成された板状部材である。第1絶縁層139は、アルミナを主成分として形成されており、第1固体電解質体136の外周を囲み、その周囲を覆うように設けられた、保護層131と略同様なサイズを有し、ガスセンサ素子120の側面の一部を構成する板状部材である。第1絶縁層139の後端側には、保護層131に形成された第2と第3のスルーホール導体12,13と電気的に導通する第4と第5のスルーホール導体14,15が貫通形成されている。
【0040】
第1電極137と第2電極138はそれぞれ、白金(Pt)を主成分として多孔質に構成されている。第1電極137は、第1電極部137Mと、第1電極部137Mに電気的に接続し、第1電極部137Mから長手方向に延びる第1リード部137Lとを有している。第2電極138は、第2電極部138Mと、第2電極部138Mに電気的に接続し、第2電極部138Mから長手方向に延びる第2リード部138Lとを有している。
【0041】
第1電極部137Mと第2電極部138Mはそれぞれ、第1固体電解質体136の第1の面136a(紙面上側の面)と、第2の面136b(紙面下側の面)にそれぞれ配置されている。一方、第1の面136a側に配置された第1電極部137Mは、ガスセンサ100が排気管に装着されたときに、保護層131に設けられた多孔質部132を介して排気ガスに晒される。
【0042】
また、第1電極137の第1リード部137Lは、第1絶縁層139上に配置され、保護層131の第1のスルーホール導体11を介して、第1の電極パッド125と電気的に導通する。一方、第2電極138の第2リード部138Lは、第1絶縁層139上に配置され、第1絶縁層139に設けられた第5のスルーホール導体15および保護層131に設けられた第3のスルーホール導体13を介して、第3の電極パッド127と電気的に導通する。
【0043】
絶縁層145は、アルミナを主成分として形成された、酸素ポンプセル135の第1絶縁層139と略同様なサイズを有する板状の絶縁部材である。絶縁層145は、酸素ポンプセル135と酸素濃度検知セル150との間に積層され、酸素ポンプセル135と酸素濃度検知セル150と絶縁する。絶縁層145の先端側には、開口部が形成されている。この開口部は、絶縁層145が、酸素ポンプセル135と、酸素濃度検知セル150とに狭持されたときに、測定ガスである排ガスが導入される測定室145cを構成する。測定室145cは、酸素ポンプセル135と酸素濃度検知セル150との間に設けられ、酸素ポンプセル135の第2電極部138M及び酸素濃度検知セル150の第3電極部152M(後述する)が露出する。
【0044】
絶縁層145において、開口部を挟んで、絶縁層145の幅方向に互いに対向し合う2つの側壁部には、拡散律速部146が形成されている。拡散律速部146は、通気性を有する多孔質のアルミナによって構成されている。ガスセンサ素子120では、拡散律速部146の通気度に応じた量の排ガスが、測定室145cに導入される。即ち、拡散律速部146は、ガス検出部121のガス導入部として機能する。
【0045】
絶縁層145の後端側には、酸素ポンプセル135の第2電極138の第2リード部138Lと電気的に導通する第7のスルーホール導体17が貫通形成されている。また、第7のスルーホール導体17と隣り合う位置には、酸素ポンプセル135の第1絶縁層139に設けられた第4のスルーホール導体14と電気的に導通する第6のスルーホール導体16が貫通形成されている。
【0046】
酸素濃度検知セル150は、板状の第2固体電解質体151と、第2固体電解質体151の周囲を取り囲む第2絶縁層154と、第2固体電解質体151及び第2絶縁層154の両主面上にそれぞれ設けられた電極(第3電極152,第4電極153)とを備える。第2固体電解質体151は、ジルコニアを主体に形成された、一対の電極部(第3電極部152M,第4電極部153M)よりも若干大きな面積を有するように形成された板状部材である。第2絶縁層154は、アルミナを主成分として形成されており、第2固体電解質体151の外周を囲み、その周囲を覆うように形成され、絶縁層145と略同様なサイズを有し、ガスセンサ素子120の側面の一部を構成する板状部材である。第2絶縁層154の後端側には、第8のスルーホール導体18が貫通形成されている。第8のスルーホール導体18は、絶縁層145に形成された第6のスルーホール導体16と電気的に導通する。
【0047】
第3電極152と第4電極153はそれぞれ、白金(Pt)を主成分として多孔質に構成されている。第3電極152は、第3電極部152Mと、第3電極部152Mに電気的に接続し、第3電極部152Mから長手方向に延びる第3リード部152Lとを有している。第4電極153は、第4電極部153Mと、第4電極部153Mに電気的に接続し、第4電極部153Mから長手方向に延びる第4リード部153Lとを有している。第3電極部152M,153Mは、第2固体電解質体151の第1の面151a(紙面上側の面)と第2の面151b(紙面下側の面)とにそれぞれ配置されている。このうち、第1の面151a側に配置された第3電極部152Mは、測定室145cに露出する。
【0048】
なお、第3電極152の第3リード部152Lは、第2絶縁層154上に配置され、絶縁層145に設けられた第7のスルーホール導体17を介して、酸素ポンプセル135の第2電極138および第3の電極パッド127と電気的に導通する。一方、第4電極153の第4リード部153Lは、第2絶縁層154上に配置され、第2絶縁層154に設けられた第8のスルーホール導体18、絶縁層145に設けられた第4のスルーホール導体14および保護層131に設けられた第2のスルーホール導体12を介して、第2の電極パッド126と電気的に導通する。つまり、第3電極152と第2電極138とは共通電位となっている。
【0049】
ヒータ160は、第1と第2の絶縁体161,162と、発熱抵抗体163と、第1と第2のヒータリード部164,165と、を備える。第1と第2の絶縁体161,162は、アルミナによって構成された、検出素子130と同様なサイズを有する板状部材である。第1と第2の絶縁体161,162は、発熱抵抗体163及びヒータリード部164,165を狭持する。
【0050】
発熱抵抗体163は、白金を主成分とする発熱線によって構成され、蛇行形状を有する発熱体である。2つのヒータリード部164,165はそれぞれ、発熱抵抗体163の両端に接続されており、発熱抵抗体163から後端側に向かって延伸している。
【0051】
ここで、第2の絶縁体162の外側面162bの後端側には、第1と第2のヒータ用電極パッド128,129が、ヒータ160の幅方向に、並列に配列されている。そして、第2の絶縁体162には、第1と第2のヒータ用電極パッド128,129に対応する第1と第2のヒータ用スルーホール導体21,22が貫通形成されている。発熱抵抗体163に接続された第1と第2のヒータリード部164,165はそれぞれ、第1と第2のヒータ用スルーホール導体21,22を介して、第1と第2のヒータ用電極パッド128,129と電気的に導通する。
【0052】
ヒータ160は、ガスセンサ100の駆動の際には、外部のヒータ制御回路(図示せず)によって、発熱温度が制御される。そして、検出素子130を、数百℃(例えば、700〜800℃)に加熱して酸素ポンプセル135と酸素濃度検知セル150とを活性化させる。
【0053】
図4は、図3のY−Y断面におけるガスセンサ素子の断面図である。Y−Y断面は、ガスセンサ素子120の長手方向に垂直な面であって、第1リード部137Lから第4リード部153Lまでの全てのリード部(第1リード部137L、第2リード部138L、第3リード部152L、第4リード部153L)が通る所定の断面である。
【0054】
Y−Y断面を見たとき、酸素ポンプセル135と酸素濃度検知セル150とが積層される積層方向Uに垂直なガスセンサ素子120の幅方向Vについて、Y−Y断面の領域を二等分すると、第1リード部137L及び第4リード部153Lが配置されている領域は、第2リード部138L及び第3リード部152Lが配置されている領域と異なる。なお、理解を容易とするため、幅方向Vにおいて、ガスセンサ素子120を二等分する線を一点鎖線Sとして図4に示す。つまり、第1リード部137L及び第4リード部153Lが配置されている領域とは、一点鎖線Sよりも幅方向右側(紙面右側)の領域であり、第2リード部138L及び第3リード部152Lが配置されている領域とは、一点鎖線Sよりも幅方向左側(紙面左側)の領域である。
【0055】
上記のように第1リード部137Lから第4リード部153Lを配置することにより、第1リード部137Lと第2リード部138Lとの幅方向距離、及び第3リード部152Lと第4リード部153Lとの幅方向距離をそれぞれ離すことができ、セルとして正確な値を検知・検出できる。測定精度を向上させる観点から、第1リード部137Lと第2リード部138Lとの幅方向距離、及び第3リード部152Lと第4リード部153Lとの幅方向距離は、それぞれ、ガスセンサ素子120の幅の3分の1以上が好ましく、2分の1以上がより好ましい。なお、第1リード部137Lと第2リード部138Lとの距離とは、第1リード部137Lの第2リード部138L側の端点から、第2リード部138Lの第1リード部137L側の端点までの距離をいう。また、第3リード部152Lと第4リード部153Lとの距離とは、第3リード部152Lの第4リード部153L側の端点から、第4リード部153Lの第3リード部152L側の端点までの距離をいう。
【0056】
また、第2リード部138Lと接続する電極パッドと第3リード部152Lと接続する電極パッドとは、共通の電極パッドである第3の電極パッド127を用いることが通常であるため、第3の電極パッド127に接続するスルーホール導体(第3のスルーホール導体13、第5のスルーホール導体15、第7のスルーホール導体17)の形成やこれらのスルーホールの形成などを考慮すると、積層方向において、第2リード部138Lと第3リード部152Lを幅方向において略同位置に配置することが好ましい。
【0057】
本実施形態において、第2リード部138Lと第3リード部152Lとの積層方向における距離が、第1リード部137Lと第4リード部153Lとの積層方向における距離よりも短い。このため、第2リード部138Lと第3リード部152Lとが、積層方向に重なって配置される場合、第2リード部138Lと第3リード部152Lとが重なる部分が、他の部分よりも厚くなる。この結果として、例えば、ガスセンサ素子の焼結時に、第1絶縁層139と絶縁層145との間や、絶縁層145と第2絶縁層154との間に空隙が発生する虞がある。空隙の発生は、センサ素子120の強度の低下の原因となる。しかし、本実施形態のガスセンサ素子120では、第2リード部138Lと第3リード部152Lとは、積層方向Uに重なることなく幅方向Vにずれて配置されている。このため、ガスセンサ素子120内に空隙が発生することを抑制できる。また、空隙の発生に伴ってガスセンサ素子120の強度が低下することを抑制できる。
【0058】
なお、Y−Y断面は、ガスセンサ100において、ガスセンサ素子120と充填粉末とが接する部分の断面である。換言すると、Y−Y断面は、ガスセンサ素子120が粉末充填層(第1粉末充填層114、第2粉末充填層115)と接する部分t(図1参照)における断面である。部分tは、他の部分と比較して、ガスセンサ素子120に圧力がかかる。このため、部分tにおいて、空隙の発生を抑制することにより、ガスセンサ素子において特に強度が要求される部分の強度を向上させることができる。なお、ガスセンサ素子120と充填粉末とが接する部分ではない断面において、上記要件を満たすガスセンサ素子120としてもよい。
【0059】
また、第1リード部137Lから第4リード部153Lまでの全てのリード部は、ガスセンサ素子120の側面から0.4mm以上離れて配置されている。ガスセンサ素子120において、側面から最も近いリード部は、第3リード部152Lであるが、第3リード部152Lと側面との距離Xは、0.4mm以上である。このようにすることにより、電極厚みの影響によるガスセンサ素子120の側面における微小な空隙の発生をより抑制できる。
【0060】
図5は、リード部と側面との距離Xと、側面における微小な空隙の発生の有無の結果を示す図である。微小な空隙の発生の有無は、浸透探傷試験により行った。具体的には、赤色検査液をガスセンサ素子120の側面に塗布することにより、赤色検査液が側壁内に浸透した場合は、微小な空隙があると判断し、赤色検査液が側壁内に浸透しない場合は、微小な空隙がないと判断した。ガスセンサ素子は、距離Xを異ならせた以外は、実施形態のガスセンサ素子を作製する方法と同じ方法で作製した。図4の結果から、距離Xが0.4mm未満の場合に微小な空隙が発生するのに対して、距離Xが0.4mm以上の場合に微小な空隙が発生しないことが分かる。
【0061】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0062】
さらに、本実施形態のガスセンサ素子120は、第1固体電解質体136及び第1絶縁層139の両主面上に電極(第1電極137、第2電極138)を設け、また、第2固体電解質体151及び第2絶縁層154の両主面上に電極(第3電極152、第4電極153)を設けていた。これに対し、図6に示すような、ガスセンサ素子120Aであってもよい。このガスセンサ素子120Aは、第1固体電解質体136及び第1絶縁層139の構成、及び第2固体電解質体151及び第2絶縁層154の構成が、ガスセンサ素子120と異なる以外は、ガスセンサ素子120と同じであり、その部分に関しては、説明を省略する。
【0063】
図6は、ガスセンサ素子120Aを分解して示す分解斜視図である。図6には、積層方向(紙面上下方向)に分解されたガスセンサ素子120Aの各構成部が、紙面左側を先端側とし、紙面右側を後端側として図示してある。なお、図中の一点鎖線は、一点鎖線で結ばれた各構成部が電気的に導通していることを示している。
【0064】
酸素ポンプセル135は、板状の第1固体電解質体136Aと、第1固体電解質体136Aの両主面上にそれぞれ設けられた電極(第1電極137、第2電極138)とを備える。より詳細には、第1電極137の第1電極部137M及び第1リード部137Lと、第2電極138の第2電極部138M及び第2リード部138Lとが、第1固体電解質体136A上に配置されている。第1固体電解質体136Aは、ジルコニア(ZrO)を主成分として形成された板状部材である。第1固体電解質体136Aの後端側には、保護層131に形成された第2のスルーホール導体12、第3のスルーホール導体13と電気的にそれぞれ導通する第4のスルーホール導体14、第5のスルーホール導体15が貫通形成されている。
【0065】
酸素濃度検知セル150は、板状の第2固体電解質体151Aと、第2固体電解質体151Aの両主面上にそれぞれ設けられた電極(第3電極152、第4電極153)とを備える。より詳細には、第3電極152の第3電極部152M及び第3リード部152Lと、第4電極153の第4電極部153M及び第4リード部153Lとが、第2固体電解質体151A上に配置されている。第2固体電解質体151Aは、ジルコニア(ZrO)を主成分として形成された板状部材である。第2固体電解質体151Aの後端側には、第8のスルーホール導体18が貫通形成されている。第8のスルーホール導体18は、絶縁層145に形成された第6のスルーホール導体16と電気的に導通する。
【0066】
このガスセンサ素子120Aであっても、所定の断面を幅方向に二等分したときに、第1リード部137Lが配置されている領域と第2リード部138Lとが配置されている領域、及び第3リード部152Lが配置されている領域と第4リード部153Lが配置されている領域とがそれぞれ異なるため、幅方向距離を離すことができ、セルとして正確な値を検知・検出できる。また、このガスセンサ素子120Aによれば、第2リード部138Lと第3リード部152Lとが同じ領域に配置しているため、第2リード部138Lと第3リード部152Lとを共通の第3の電極パッド127を用いる際に、第3の電極パッド127に接続するスルーホール導体(第3のスルーホール導体13、第5のスルーホール導体15、第7のスルーホール導体17)の形成やこれらのスルーホールの形成などを容易にすることができる。さらに、このガスセンサ素子120Aによれば、所定の断面において、第2リード部138Lと第3リード部152Lとは、積層方向に重なることなく幅方向にずれて配置されているため、ガスセンサ素子120A内の空隙の発生を抑制でき、ガスセンサ素子120Aの強度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
11…第1のスルーホール導体
12…第2のスルーホール導体
13…第3のスルーホール導体
14…第4のスルーホール導体
15…第5のスルーホール導体
16…第6のスルーホール導体
17…第7のスルーホール導体
18…第8のスルーホール導体
100…ガスセンサ
101…プロテクタ
101c…導入孔
103…外筒
110…主体金具
110b…工具係合部
110c…貫通孔
110k…端部
111…段部
113…セラミックホルダ
113c…貫通孔
114…第1粉末充填層
115…第2粉末充填層
116…金属カップ
116c…貫通孔
117…加締リング
120…ガスセンサ素子
120a…第2の面
121…ガス検出部
125…第1の電極パッド
126…第2の電極パッド
127…第3の電極パッド
128…電極パッド
130…検出素子
131…保護層
131a…外側面
132…多孔質部
135…酸素ポンプセル
136…固体電解質体
136a…第1の面
136b…第2の面
137…第1電極
137L…第1リード部
137M…第1電極部
138…第2電極
138L…第2リード部
138M…第2電極部
139…第1絶縁層
145…絶縁層
145c…測定室
146…拡散律速部
150…酸素濃度検知セル
151…固体電解質体
151a…第1の面
151b…第2の面
152…第3電極
152L…第3リード部
152M…第3電極部
153…第4電極
153L…第4リード部
153M…第4電極部
154…第2絶縁層
160…ヒータ
161…第1の絶縁体
162…第2の絶縁体
162b…外側面
163…発熱抵抗体
164…ヒータリード部
170…セラミックスリーブ
170c…軸孔
181…セパレータ
181c…貫通孔
182…接続端子
185…接続端子
190…付勢金具
191…グロメット
193…センサ用リード線
196…ヒータ用リード線
AX…仮想中心軸
PS…二点鎖線
S…一点鎖線
X…距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8