特許第6484101号(P6484101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6484101-温水燃焼ガス燻煙供給設備 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484101
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】温水燃焼ガス燻煙供給設備
(51)【国際特許分類】
   A01M 13/00 20060101AFI20190304BHJP
   A01N 25/20 20060101ALI20190304BHJP
   A01N 65/12 20090101ALI20190304BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A01M13/00
   A01N25/20 101
   A01N65/12
   A01P7/04
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-91182(P2015-91182)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-146821(P2015-146821A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591202889
【氏名又は名称】横山 琢
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(72)【発明者】
【氏名】横山 琢
【審査官】 後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−159949(JP,A)
【文献】 特開2011−120527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性植物チップよりなる廃材(C)と除虫菊等の害虫駆除成分及び必要に応じ更にハーブ等の芳香成分を含む殺虫材料(P)を,燃焼させて、燃焼ガス(G)と,温水(W)を,生成する多用途炉(10)と、前記多用途炉で生成した燃焼ガスを,農作物を栽培する農業用ハウス(H)に害虫駆除のために供給する燃焼ガス供給装置(20)と、前記多用途炉で生成した温水を,前記農業用ハウスに加温のために供給する温水供給装置(30)と、前記多用途炉に隣接して設けられた燻製室(40)と,開閉手段(52)を備え且つ前記多用途炉で生成した燻煙(E)を前記燻製室に供給する燻煙供給装置(50)と、を備えた温水燃焼ガス燻煙供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスに加温のための温水と害虫駆除のための燃焼ガスを供給すると共に、燻製室に燻製製品を製造するための燻煙を供給することのできる温水燃焼ガス燻煙供給設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野菜や果物などの農産物を温暖な環境で栽培するために農業用ハウス(例えば、ビニールハウス)が多く使用されている。この農業用ハウスを使用することによって、農産物を、年間を通じて効率的に栽培することが可能となっている。また、燃焼炉の熱を農業用ハウスに供給することも考えられるが、通常、従来の燃焼炉(例えば、特許文献1参照)はその目的に添う構成とはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−180891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した農業用ハウスの内部は温暖であるため農作物の栽培には適しているが、農作物に悪影響を与える害虫が発生し易く、その駆除に多大な労力を必要としている。
【0005】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、農業用ハウスを加温すると共に、害虫を効果的に駆除することのできる設備を提供することを課題とする。同時に、燻製製品の製造にも使用することのできる優れた設備を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図1を参照して説明する。請求項1に記載の温水燃焼ガス燻煙供給設備1は、可燃性植物チップよりなる廃材Cと除虫菊等の害虫駆除成分及び必要に応じ更にハーブ等の芳香成分を含む殺虫材料Pとを燃焼させて燃焼ガスGを生成する多用途炉10と、該多用途炉10で生成した燃焼ガスGを、農作物を栽培する農業用ハウスHに害虫駆除のために供給する燃焼ガス供給装置20と、前記多用途炉10で生成した温水Wを、前記農業用ハウスHに加温のために供給する温水供給装置30と、前記多用途炉10に隣接して設けられた燻製室40と、開閉手段52を備え且つ前記多用途炉10で生成した燻煙Eを前記燻製室40に供給する燻煙供給装置50とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の温水燃焼ガス燻煙供給設備1は、多用途炉10で除虫菊等の害虫駆除成分及び必要に応じ更に芳香成分を含む殺虫材料Pを燃焼させて生成した燃焼ガスGを、燃焼ガス供給装置20によって農業用ハウスHに供給するので、その燃焼ガスGによって廉価かつ効率的に害虫を駆除することができる。特に、害虫駆除成分を含む殺虫材料Pを燃焼させた場合にその効果が顕著である。
【0008】
た、多用途炉10に隣接して燻製室40を設け、この燻製室40に燻煙供給装置50によって燻煙Eを供給することができるので、当該燻製室40であらゆる燻製製品Fを製造することができる。なお、この場合は、燻煙材料Dのみを燃焼させることもある。
【0009】
更に、多用途炉10で生成した温水Wを、温水供給装置30によって農業用ハウスHに供給するので、当該ハウスH内を農産物の栽培に適した温度に維持することができる。
【0010】
なお、廃材Cと殺虫材料Pを燃焼させる場合は、燻煙供給装置50の開閉手段52を閉状態として、燃焼ガスGを農業用ハウスHのみに供給する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明係る温水燃焼ガス燻煙供給設備の実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る温水燃焼ガス燻煙供給設備1の一実施形態を、図1に示す。この供給設備1は、多用途炉10、燃焼ガス供給装置20、温水供給装置30、燻製室40および燻煙供給装置50を備える。
【0013】
多用途炉10は、間伐材を小さく切断したチップ等の可燃植物チップよりなる廃材Cと除虫菊等の害虫駆除成分と更に必要に応じやハーブ等の芳香成分を含む殺虫材料Pを燃焼させ、燃焼ガスGと温水Wを生成する。なお、本実施形態では、廃材Cとして廃植物よりなる木材チップを使用し、殺虫材料として除虫菊を使用し、芳香材としてハーブを使用している。燃焼室11の上端には煙突14を、煙突には切換弁15を設けている。また、この多用途炉10の下端部にはロストル(火格子)12を設け、その直上に燃焼室11を設けている。この燃焼室11に廃材Cと害虫駆除及び更に必要に応じ芳香成分を含む殺虫材料Pを装入して燃焼させる。
【0014】
また、多用途炉10の上部で煙突14の周囲には水槽13を設けている。この水槽13に水を蓄えて燃焼室11で燃焼させた廃材Cと殺虫材料Pとで加熱して温水Wを生成する。
【0015】
燃焼ガス供給装置20は、多用途炉10で生成した燃焼ガスGを、農作物を栽培する農業用ハウス(ビニールハウス)Hに供給して害虫を駆除する。この燃焼ガス供給装置20は送気管21と排気管26を備える。送気管21は、その上流側端部が煙突14の上部に連通して設けられ、下流側部分が農業用ハウス(ビニールハウス)Hの下部のほぼ全域に水平方向に沿って配置される。送気管21には、その上流側に気体ポンプ24が設けられ、この気体ポンプ24によって燃焼ガスGを上流から下流に移動させる。
【0016】
また、送気管21には一つまたは複数の吹出孔22が穿設され、燃焼ガスGがこの吹出孔22から農業用ハウスHに供給される。吹出孔22には燃焼ガスGの供給量を調節することのできる調節弁23を設けることができる。なお、送気管21の上流側端部にダンパー25を設けて、自在に、燃焼ガスGの供給を停止し、あるいはその供給量を調整することができる。
【0017】
排気管26は、農業用ハウスHの上部に設けられ、一つまたは複数の吸込孔27を有し、送気管21から供給された燃焼ガスGを、この吸込孔27で吸い込んで外部に排出する。この排気管26には排気ファン29を設けることができる。また、吸込孔27に調整弁28を設けて、燃焼ガスGの吸込量(排出量)を調整することもできる。
【0018】
温水供給装置30は略U字状の送湯管31を備え、その上流側端部(U字状部分)が水槽13に連通し、下流側部分が農業用ハウスHの底部の全域に水平に配置されている。水槽13の温水Wがこの送湯管31を循環し、農業用ハウスHを加温する。温水Wの循環は、送湯管31に設けられた液体ポンプ32によって行うことができる。
【0019】
燻製室40は、多用途炉10に隣接して設けられる。この燻製室40には、燻煙が自在に出入りできる構造の燻製容器41が取り出し自在に装入される。この燻製容器41の上端部には吊下げ棒42が設けられ、この吊下げ棒42に燻製処理に供される燻製製品Fが吊り下げられる。また、燻製室40の上端部には、燻煙を外部に排出するための排気筒43が設けられている。
【0020】
燻煙供給装置50は、多用途炉10の燃焼室11と燻製室40とを連通する連通部51を備え、この連通部51を介して多用途炉10の燻煙材料Dで生成した燻煙Eを燻製室40に供給する。連通部51には開閉手段(例えば、ダンパー)を設けており、これにより、多用途炉10で殺虫材料Pを燃焼させる際には閉状態とし、燃焼ガスGが燻製室40に侵入するのを阻止する。
【0021】
本実施形態に係る温水燃焼ガス燻煙供給設備1は、次のように使用することができる。最初に、農業用ハウスHの害虫を駆除すると共に、当該ハウスHを加温する場合(燻製室40を使用しない場合)について説明する。まず、ダンパー25を開き、切換弁15を閉じ且つ水槽13に水を蓄えた状態で、多用途炉10の燃焼室11に廃材Cと害虫駆除成分及び必要に応じ更にハーブ等の芳香成分を含む殺虫材料Pを投入し燃焼させる。
【0022】
次に、送気管21に設けた気体ポンプ24を稼働して、燃焼によって生成された燃焼ガスGを下流側に送り込み、吹出孔22を通して農業用ハウスHに供給する。この燃焼ガスGには殺虫材料Pの害虫駆除成分が含まれているので、害虫を効果的に駆除することができる。
【0023】
なお、農業用ハウスHに充満した燃焼ガスGは、排気管26から外部に排出する。この際、排気管26に設けた排気ファン29の回転数や調整弁28の開度を適宜調整することによって、燃焼ガスGの排気量を自在に調節して、農業用ハウスHに残留する燃焼ガスGの量を自在に調整することができる。これにより、害虫の駆除をさらに効果的に行うことができる。
【0024】
一方、水槽13に蓄えた水が加熱されて温水Wとなった状態で、液体ポンプ32を稼働し、その温水Wを送湯管31に供給して当該送湯管31と水槽13との間を連続的に循環させる。これにより、温水Wは送湯管31を介してその熱を農業用ハウスHの空気に供給し、当該ハウスH内の温度を農作物の栽培に適した温度まで上昇させる。その結果、農作物の生育を促すことができ、より効率的な栽培が可能となる。
【0025】
次に、燻製室40を使用する場合について説明する。切替弁15及びダンパー25を全開状態にして多用途炉10に燻煙材料Dを投入し燻煙Eを生成する。そして、連通部51の開閉手段52を開状態として、燻煙Eを連通部51を通して燻製室40に導く。
【0026】
なお、この燻製工程は単独でも行うことができ、また、上述したように農業用ハウスHに燃焼ガスGと温水Wを供給する工程と共に行うことも可能である。後者の場合、例えば、気体ポンプ24の回転数やダンパー25の開度を調整して、十分な量の燻煙Gが燻製室40に供給されるように調整することが好ましい。
【0027】
燻製室40に導かれた燻煙Eは、上昇しながら燻製容器41の内部を通過した後、排気筒43を通過して外部に排出される。これにより、燻製容器41内の燻製製品Fが燻煙Eによって良好に燻製処理される。
【0028】
なお、ダンパー25と開閉弁52をいずれも全開とし、切替弁15を全開とすれば、多用途炉10でごみの焼却をすることができる。この場合液体ポンプ32を作動させれば、温水供給装置30に温水を供給することが出来る。
【0029】
本実施形態に係る温水燃焼ガス燻煙供給設備1は、以下の効果を発揮する。
(イ)廃材Cまたは廃材Cと害虫駆除成分及び必要に応じ更にハーブ等の芳香成分を含む殺虫材料Pを燃焼させて、燃焼ガスGおよび温水Wを生成するので燃料費が廉価である。
(ロ)燃焼ガス供給装置20によって、農業用ハウスHの全体に燃焼ガスを供給するので害虫を効率的に駆除することができる。
(ハ)温水供給装置30によって、農業用ハウスHの全体に温水Wを循環させるので、当該ハウスHの温度を農産物を栽培するのに適した温度に効率的に上昇させることができる。
(ニ)燻煙材料Dを使用し、燻製製品Fを製造することができるので、きわめて実用性に優れる。
(ホ)多用途炉10、燃焼ガス供給装置20、温水供給装置30、燻製室40および燻煙供給装置50の構成は比較的簡易であるため容易に製造することができ、かつ製造コストを抑えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 温水燃焼ガス燻煙供給設備
10 多用途炉
11 燃焼室
12 ロストル
13 水槽
14 煙突
15 切換弁
20 燃焼ガス供給装置
21 送気管
22 吹出孔
23 調節弁
24 気体ポンプ
25 ダンパー
26 排気管
27 吸込孔
28 調整弁
29 排気ファン
30 温水供給装置
31 送湯管
32 液体ポンプ
40 燻製室
41 燻製容器
42 吊下げ棒
43 排気筒
50 燻煙供給装置
51 連通部
52 開閉手段
C 廃材
D 燻煙材料
E 燻煙
F 燻製製品
G 燃焼ガス
H 農業用ハウス
P 殺虫材料
W 温水
図1