特許第6484103号(P6484103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484103
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】樹脂モールド金型
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20190304BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20190304BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20190304BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H01L21/56 T
   B29C33/42
   B29C45/37
   B29C45/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-93069(P2015-93069)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-213239(P2016-213239A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 和美
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−006549(JP,A)
【文献】 特開2000−158493(JP,A)
【文献】 特開平06−260584(JP,A)
【文献】 特開平10−270627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28
B29C 33/42
B29C 45/02
B29C 45/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のキャビティおよび第2のキャビティが形成されるとともに、前記第1および第2のキャビティに樹脂を供給するポットを有し、
前記第1のキャビティの形状は、第2のキャビティの形状と異なり、
前記ポットと前記第1のキャビティとの間に前記第1のキャビティに対応する第1の樹脂路、および前記ポットと前記第2のキャビティとの間に前記第2のキャビティに対応する第2の樹脂路が形成され、
前記第1のキャビティ、前記第2のキャビティ、前記第1の樹脂路及び前記第2の樹脂路は、前記ポットの中心を挟んで点対称に配置され、
前記樹脂は、前記ポットを挟んで両側に配置された2つのワークに設けられた前記第1のキャビティと前記第2のキャビティに供給され、
前記第1の樹脂路と前記第2の樹脂路は、前記第1のキャビティと前記第2のキャビティの充填量に応じて異なることを特徴とする樹脂モールド金型。
【請求項2】
前記第1の樹脂路及び前記第2の樹脂路は、途中まで一体に延在し、前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとの間で分岐して前記第1のキャビティと前記第2のキャビティにそれぞれ接続されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールド金型。
【請求項3】
前記ポットから前記2つのワークのうち一方の前記ワークにおける前記第1のキャビティに対応する前記第1の樹脂路と他方の前記ワークにおける前記第2のキャビティに対応する前記第2の樹脂路とに前記樹脂を供給することを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールド金型。
【請求項4】
前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとを含む第1のキャビティグループと、前記第1のキャビティグループに隣接した前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとを含む第2のキャビティグループと、の間において、前記第1の樹脂路及び前記第2の樹脂路は、途中まで一体に延在し、
2つの前記キャビティグループに分岐した後に、前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとの間で分岐して前記第1のキャビティと前記第2のキャビティにそれぞれ接続されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールド金型。
【請求項5】
前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとにはオーバーフローキャビティが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールド金型。
【請求項6】
前記第1のキャビティのオーバーフローキャビティと前記第2のキャビティのオーバーフローキャビティとが連通していることを特徴とする請求項5に記載の樹脂モールド金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂モールド金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から同一形状の複数のキャビティが形成された樹脂モールド金型を用いて、同一形状の複数の樹脂成形品を一度に成形する樹脂モールドが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の樹脂モールド装置は、同一種類の樹脂成形品を成形しているが、1個のモールド装置内において異なる種類の樹脂成形品を一度に成形することは行われていない。この場合例えば複数の異なる種類の樹脂成形品を組み合わせて使用するような用途を想定した場合には、特許文献1の樹脂モールド装置を用いて異なる種類の樹脂成形品を別途の工程において製造し、それらを組み合わせて半導体装置を製造する必要がある。すなわち、各樹脂成形品を異なる装置を用いて成形した後それらを組み合わせる必要がある。そのため、成形時間が長くなるとともに、コストも増加してしまう。
【0005】
このような課題を鑑みて、本発明は、異なる種類の樹脂成形品を成形可能な樹脂モールド金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、本発明の他の側面としての樹脂モールド金型は、第1のキャビティおよび第2のキャビティが形成されるとともに、前記第1および第2のキャビティに樹脂を供給するポットを有し、前記第1のキャビティの形状は、第2のキャビティの形状と異なり、前記ポットと前記第1のキャビティとの間に前記第1のキャビティに対応する第1の樹脂路、および前記ポットと前記第2のキャビティとの間に前記第2のキャビティに対応する第2の樹脂路が形成され、前記第1のキャビティ、前記第2のキャビティ、前記第1の樹脂路及び前記第2の樹脂路は、前記ポットの中心を挟んで点対称に配置され、前記樹脂は、前記ポットを挟んで両側に配置された2つのワークに設けられた前記第1のキャビティと前記第2のキャビティに供給され、前記第1の樹脂路と前記第2の樹脂路は、前記第1のキャビティと前記第2のキャビティの充填量に応じて異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異なる種類の樹脂成形品を成形可能であり、成形品質を向上可能な樹脂モールド金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るリードフレームの平面図である。
図2】半導体素子が実装されたリードフレームの平面図である。
図3】実施例1の樹脂モールド金型がセットされたリードフレームの平面図である。
図4】樹脂モールド金型がセットされた、図3のリードフレームとは異なるリードフレームの平面図である。
図5】実施例2の樹脂モールド金型がセットされたリードフレームの平面図である。
図6】実施例3の樹脂モールド金型がセットされたリードフレームの平面図である。
図7】実施例4の樹脂モールド金型がセットされたリードフレームの平面図である。
図8】実施例5の樹脂モールド金型がセットされたリードフレームの平面図である。
図9】半導体装置の製造方法のフローチャートである。
図10A】半導体装置の製造方法の説明図である。
図10B】半導体装置の製造方法の説明図である。
図10C】半導体装置の製造方法の説明図である。
図10D】半導体装置の製造方法の説明図である。
図10E】半導体装置の製造方法の説明図である。
図10F】半導体装置の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施形態に係るリードフレーム100の平面図である。本実施形態では、1個のリードフレーム100において、複数種類の形状の樹脂成形品を一回の樹脂成形の工程で製造可能とするために、樹脂封止のための領域が異なる形状で複数設けられている点が主な特徴部分となる。なお、同様の構成のリードフレーム100を用いて複数回の樹脂成形工程に分けて製造することも可能である。リードフレーム100には、第一の樹脂成形がなされるダイパッド101a〜101dと、第二の樹脂成形がなされるダイパッド102a〜102dとをそれぞれ1個ずつ備える領域グループを有する。
【0013】
このように、リードフレーム100は、複数種類の形状の樹脂成形がされるリード部を複数有する。例えば、図1において、左端の領域グループは、第一の樹脂成形がなされるダイパッド101aを含むリード部と、第二の樹脂成形がなされるダイパッド102aを含むリード部とをそれぞれ1個ずつ備える。なお、各領域グループにおいて、それぞれの樹脂成形がなされるリード部の形状が異なることにより、異なる機能を有する樹脂成形品を1個のリードフレーム100上に成形可能となる。
【0014】
図2は、ダイパッド101a〜101dにそれぞれ半導体素子1a〜1d、ダイパッド102a〜102dにそれぞれ半導体素子2a〜2dが実装されたリードフレーム100の平面図である。図2に示されるように、各半導体素子の電極はワイヤ3で内部接続端子103に接続することができ、ダイボンドすることで接続されてもよい。なお、半導体素子の大きさ、形状、および数等は、図中に示したものに限定されず、用途に応じて変更可能である。
【0015】
図3は、半導体素子が実装されたリードフレーム100A,100Bに対して、樹脂モールド金型Mがセットされた状態における金型の各部との位置関係を示している。図3(a)はキャビティ内に樹脂が充填される前の状態、図3(b)はキャビティ内に樹脂が充填された状態を示している。樹脂モールド金型Mは、例えば上金型と下金型によって構成される。また、樹脂モールド金型Mは、樹脂を供給可能に筒状に形成されたポット201と、ポット201内を摺動して樹脂に加圧するプランジャ202とを有する。また、樹脂モールド金型Mは、ポット201から供給された樹脂をランナ203へ分配するカル200が形成されている。なお、以下において、ランナという用語の意味として、ポットからキャビティまでの樹脂の供給経路を指し、キャビティの直前で狭めて樹脂の流入状態を制御するゲートを含むものとして説明する場合がある。
【0016】
樹脂モールド時、ポット201に収容された樹脂を溶融し、プランジャ202で押圧する。また、樹脂モールド金型Mには、ランナ203〜205、ゲート206,207およびキャビティ208a〜208d,209a〜209dが形成される。キャビティ208a〜208d,209a〜209dにはそれぞれ、樹脂路を介して溶融された樹脂が充填され、その樹脂によりリードフレーム100に対して樹脂成形が可能となっている。ダムバー104は、例えば各キャビティの周囲を取り囲むように形成され、樹脂モールド金型Mでリードフレーム100が型閉じされたときに樹脂が各キャビティから外部へ流出することを防止する。樹脂路は、上金型と下金型とを型閉じしたときに形成されるカル200、ランナ203〜205、およびゲート206,207が連通されて構成される。各キャビティに樹脂が充填された後、樹脂を硬化させることで、図3(b)に示されるように、半導体素子を封入するパッケージ10a,20aが成形される。パッケージ10a,20aは、半導体素子、ワイヤ、および内部接続端子を覆うことで、半導体素子を外部環境から保護する。なお、パッケージ10a,20aとしては、半導体素子やワイヤのようなリードフレーム100への実装品を設けない場合であってもよく、複数種類の形状の樹脂成形部分が構成されるような構成であってもよい。また、これらを組み合わせたような構成とする場合であってもよい。
【0017】
本実施例では、キャビティグループごとに共通のランナを用いて樹脂路における途中まで樹脂が供給される。本実施形態において、キャビティグループとは、複数種類の成形を同時並行的に行うために設けられた異なる形状のキャビティをそれぞれ1個ずつ組み合わせて構成される単位をいう。すなわち、以下において共通する概念として、キャビティグループとは、複数種類のパッケージの成形を一括して実施可能にするために設けられた複数のキャビティを組み合わせて構成されるグループ(単位)をいう。また、製造された半導体装置が有する全てのパッケージ(パッケージグループ)を成形する際に使用するキャビティの集合ということもできる。図3において、対になるように設けられたキャビティ208a,209a、キャビティ208b,209b、キャビティ208c,209c、およびキャビティ208d,209dが、それぞれキャビティグループを形成している。なお、キャビティ208a〜208dの形状は同一であり,キャビティ209a〜209dの形状は同一である。
【0018】
キャビティ208a,209aで構成される各キャビティグループにおける樹脂封止について説明する。ランナ203は、その中途において配置される分岐部210で分岐路204,205に分岐する。分岐路204,205はそれぞれ、ゲート206,207に連通している。そのため、ポット201から供給された樹脂は分岐部210までランナ203を通過し、分岐された樹脂のうち分岐路204を通過する樹脂はキャビティ208aに充填され、分岐路205を通過する樹脂はキャビティ209aに充填される。共通のポット201で形状の異なるキャビティ208a,209aに一括して樹脂を供給するため、異なる装置を用いて成形する場合に比べて成形時間が短縮する。なお、分岐路210の位置は、図中に示した位置に限らないが、ゲートに近い領域に設けるほうがランナを共通化できる。このため、型全体として見たときにランナの距離を短縮できるため、破棄される樹脂部分を削減することができるため、コストを削減することができる。
【0019】
また、キャビティ208aはキャビティ209aよりも充填量が多くなるように構成されているため、分岐路204を通る樹脂の流量が分岐路205を通る樹脂の流量よりも多くなるように各分岐路の断面積や距離などが設計されている。そうすることで、例えば各キャビティへの充填が同時に完了することも可能となる。すなわち、樹脂がキャビティに充填されるときに、各キャビティにおいて充填状態や樹脂圧を均一にするために、同時に充填が完了することが好ましい。このため、各分岐路の断面積などによる流量の調整を行うことが好ましいが、同一の設計としてもよい。このように、効率的かつ確実に充填されるため、キャビティに応じた分岐路を設計しない場合に比べて成形品質が向上する。
【0020】
各パッケージに相当するキャビティへ充填された樹脂が硬化することで成形が完了した後、この成形品を金型から取り出し成形品から成形カルや成形ランナなどの不要樹脂が除去される。その後、成形品を任意の単位に切断することで、共通の装置を用いて異なるパッケージを成形する。この場合、リードフレーム100の領域グループごとに分割してもよい。すなわち、成形品をパッケージグループごとに切断することができる。この場合、パッケージグループにおいて各パッケージを接続する連結部を残した状態で切断する。そうすることで、共通の装置を用いて、異なるパッケージを電気的又は/及び構造的に連結された状態で備えた半導体装置を製造することが可能となる。また、各領域グループ(パッケージグループ)により構成される複数のパッケージを個片化してもよい。すなわち、上述の成形品においては、1個のパッケージグループから2個のパッケージを製造することができる。このように、1個のリードフレーム100から複数種類のパッケージをパッケージグループの数だけ製造することができる。これにより、1つの装置により任意の種類のパッケージを製造することができる。
【0021】
なお、上述の工程において、切断や個片化をするときには、いわゆる、回転するブレードにより直線的に切断するダイシング装置により切断してもよい。また、レーザーや切断用媒体を射出して切断する切断装置や、切断金型を用いて抜き加工や折り曲げ加工などをするリード成形装置を用いて、任意の形状に加工(切断)してもよい。
【0022】
図4は、上述の形態とは異なる領域グループ(パッケージグループ)として半導体素子が実装されたリードフレーム100Cに対して、樹脂モールド金型Mがセットされ、封止された状態について一部を示している。上述の形態のように、各領域グループが1行複数列のキャビティを有する構成とは異なり複数行複数列に配置されたキャビティ211〜215がキャビティグループを形成している。図3のリードフレーム100A,100Bとは異なる図4のリードフレーム100Cに対しても本発明を適用可能となっている。この場合、より多くの種類のパッケージを一括して成形することができる。また、共通のポットで形状の異なるキャビティ211〜215を含むキャビティグループに対して一括で樹脂を供給するため、異なる装置を用いて成形する場合に比べて成形時間が短縮することもできる。
【0023】
以上説明したように、本実施例では、各領域グループ及びキャビティグループに対して一括で樹脂を充填可能であるため、パッケージグループにおける異なるパッケージを一括して成形可能である。これによれば、複数の異なった製品を1個のワークに配置することができ、かつ、成形することができる。また、複数の成形を別途の部材や設備を用いることなく成形が可能となる。さらに、複数のパッケージを連結して一体的に成形する場合には、別に製造したパッケージを組み付ける必要がなく、生産性を向上させることもできる。
【実施例2】
【0024】
図5は、半導体素子が実装されたリードフレーム100D,100Eに対して、樹脂モールド金型300がセットされ、キャビティ内に樹脂が充填された状態を示している。図5において、キャビティ308a,309a、およびキャビティ308b,309bがキャビティグループを形成している。キャビティ308a,309aの形状はそれぞれ、キャビティ308b,309bの形状と同一である。
【0025】
本実施例では、図5(a)に示されるように、樹脂モールド金型Mにはキャビティごとにランナが形成されている。具体的には、キャビティ308a,308bはゲートをそれぞれ含むランナ303a,303dを介して樹脂が充填され、キャビティ309a,309bはゲートをそれぞれ含むランナ303b,303cを介して樹脂が充填される。キャビティ308a,308bはキャビティ309a,309bよりも充填量が多くなるように構成されているため、ランナ303a,303dはランナ303b,303cよりも樹脂が流れ易くなるように構成することができる。ただし、必ずしもこのような差を設ける必要も無い。ランナを上述したように形成することでポットから樹脂が適切な状態に充填されるため、成形品質が向上できる。なお、本実施例では、1つのポットから複数のキャビティグループに対して樹脂を供給しているが、キャビティグループごとに用意された1つのポットから樹脂を供給してもよい。
【0026】
また、図5(b)に示されるように、ランナ303a〜303dの中途にそれぞれ開閉機構316a〜316dを設けてもよい。これによれば、選択的にパッケージを成形することが可能となる。例えば、キャビティ309a,309bにおいて成形されるパッケージの歩留まりが何らかの理由で悪化したり、必要数が相違したりして、キャビティ309a,309bにおいて成形されるパッケージの数が足りない場合について説明する。この場合、図5(b)に示されるように、開閉機構316a,316dを閉状態とし、開閉機構316b,316cを開状態にする。そうすることで、キャビティ309a,309bにのみ樹脂が供給され、キャビティ308a,308bへの樹脂の供給が止められる。したがって、キャビティ309a,309bではパッケージが成形され、キャビティ308a,308bではパッケージは成形されない。すなわち、必要なパッケージだけを成形し、不要なパッケージを成形しないようにすることが可能である。なお、開閉機構316a〜316dが設けられる位置は、キャビティへの樹脂の供給を制御可能な位置であればよく、図5(b)に示されるような位置に限定されない。
【0027】
以上説明したように、本実施例では、実施例1と同様の効果を奏するほか、キャビティグループにおける任意のキャビティに対して選択的かつ一括して樹脂を充填可能であるため、異なるパッケージを一括して成形可能な構成において、生産量の調整などを行うこともできる。
【実施例3】
【0028】
本実施例は、ポット毎に接続するキャビティの種類を相違させる構成について説明する。図6は、半導体素子が実装されたリードフレーム100F,100Gに対して、樹脂モールド金型Mがセットされ、キャビティ内に樹脂が充填された状態を示している。図6において、一対のキャビティ408a,409a、一対のキャビティ408b,409b、一対のキャビティ408c,409c、および一対のキャビティ408d,409dのそれぞれがリードフレーム100Fにおける4組のキャビティグループ(パッケージグループ)を形成している。また、リードフレーム100Gにおいても、キャビティ408e,409e、キャビティ408f,409f、キャビティ408g,409g、およびキャビティ408h,409hが4組のキャビティグループを形成している。キャビティ408a〜408hの形状は同一であり、キャビティ409a〜409hの形状は同一であり、1個のキャビティグループでは、2種類のキャビティを含んで構成される。
【0029】
ポット401aは、ランナ403aを介してキャビティ408aに樹脂を供給し、ランナ403bを介してキャビティ408eに樹脂を供給する。ポット401bは、ランナ403cを介してキャビティ409a,409bに樹脂を供給し、ランナ403dを介してキャビティ409e,409fに樹脂を供給する。ポット401cは、ランナ403eを介してキャビティ408b,408cに樹脂を供給し、ランナ403fを介してキャビティ408f,408gに樹脂を供給する。ポット401dは、ランナ403gを介してキャビティ409c,409dに樹脂を供給し、ランナ403hを介してキャビティ409g,409hに樹脂を供給する。ポット401eは、ランナ403iを介してキャビティ408dに樹脂を供給し、ランナ403jを介してキャビティ408hに樹脂を供給する。すなわち、本実施例では、各ポットは形状の同じキャビティに対して樹脂を供給する。本実施例のような構成にすることで、実施例2で説明した開閉機構を設けることなく、選択的にパッケージを成形することが可能となる。この場合、例えば円柱(タブレット)状の樹脂において直径や長さが異なり分量が相違する樹脂をポット毎に供給したり、異なる種類の樹脂を供給したりすることで、別種の成形を行うことができる。また、例えば、特定のパッケージの数が足りない場合、該当するキャビティに対して樹脂を供給することで、必要なパッケージだけを成形可能である。また、ポットごとに供給する樹脂を異ならせることで、形状が同一であっても材質等が異なるパッケージを成形することが可能となる。
【0030】
以上説明したように、本実施例では、実施例1と同様の効果を奏するほか、各ポットは同一形状のキャビティに樹脂を供給しているため、異なるパッケージを一括して成形可能であるとともに、選択的にパッケージを成形可能である。
【実施例4】
【0031】
本実施例は、1個のリードフレームにおいて設けられた複数のキャビティグループに対して、ランナを共用する構成について説明する。図7は、半導体素子が実装されたリードフレーム100H,100Iに対して、樹脂モールド金型Mがセットされ、キャビティ内に樹脂が充填された状態を示している。図7において、キャビティ508a,509a、キャビティ508b,509b、キャビティ508c,509c、およびキャビティ508d,509dがキャビティグループを形成している。キャビティ508a〜508dの形状は同一であり、キャビティ509a〜509dの形状は同一である。
【0032】
本実施例では、ポット500に接続されたランナ503aが各キャビティのゲートの近傍まで延在して分岐部510aで分岐した分岐路のうち、一方の分岐路は分岐部510bで分岐し、他方の分岐路は分岐部510cで分岐する。これにより、リードフレーム100H,100Iにおいて隣接して設けられた各領域グループに相当する一対のキャビティグループに対して樹脂を供給することができる。この場合、分岐部510bで分岐した分岐路はキャビティ508a,509aに接続され、分岐部510cで分岐した分岐路はキャビティ508b,509bに接続される。このように、分岐路を複数設けて分岐させることも可能である。
【0033】
リードフレーム100Iでは、同様に、ランナ503bが分岐部510dで分岐した分岐路のうち、一方の分岐路は分岐部510eで分岐し、他方の分岐路は分岐部510fで分岐する。分岐部510eで分岐した分岐路はキャビティ508c,509cに接続され、分岐部510fで分岐した分岐路はキャビティ508d,509dに接続される。本実施例では、複数のキャビティグループのランナを共通化することで、実施例1に比べて不要なランナを削減している。そのため、樹脂モールド金型の製造コストを低減させることが可能となる。
【0034】
以上説明したように、本実施例では、実施例1と同様の効果を奏するほか、キャビティグループに対して一括して樹脂を充填可能であるため、異なるパッケージを一括して成形可能であるとともに、ランナを共通化することで樹脂モールド金型の製造コストを低減させることが可能となる。
【実施例5】
【0035】
本実施例では、キャビティに連通するオーバーフローキャビティを形成した場合について説明する。樹脂をキャビティ内に充填する際に、オーバーフローキャビティに溢れさせることで、キャビティ内に未充填領域をなくすことを目的としている。すなわち、上述の各実施例に示すように、例えば形状の異なるキャビティに対して樹脂を供給するときには、ランナの形状などを調整してもキャビティへの樹脂の充填状態、樹脂圧を均一にすることが困難となることが想定される。例えば、1個のキャビティグループを構成する、一方のキャビティにおいて樹脂の充填が完了し、他方のキャビティにおいて樹脂の充填が途中である場合を想定した場合に、未充填となっているキャビティに樹脂を充填させて樹脂圧を加えるまで、充填完了したキャビティではオーバーフローキャビティに樹脂を流すことで樹脂圧が必要以上に加えられてしまうことを防止できる。また、一方のキャビティにおいて樹脂圧を適切に加えることができるため、ボイドが発生するのを防止することもできる。なお、オーバーフローキャビティは、図8に示すように、全てのキャビティに連通するように形成する必要はなく、例えば他のキャビティに比べて充填が早く完了するキャビティにだけ連通するように形成してもよい。そうすることで、充填が完了しているキャビティ内に高圧力が加わることを防止することが可能となる。
【0036】
図8は、半導体素子が実装されたリードフレーム100J,100Kに対して、樹脂モールド金型Mがセットされ、キャビティ内に樹脂が充填された状態を示している。図8において、キャビティ608a,609a、およびキャビティ608b,609bがキャビティグループを形成している。ポット601から供給された樹脂は、第1のゲート606,607を通って、それぞれキャビティ608a,609aに充填される。オーバーフローキャビティ619,620はそれぞれ、第2のゲート617,618を介してキャビティ608a,609aに連通している。そのため、キャビティ608a,609aに充填された樹脂がキャビティ608a,609aに溢れだす。オーバーフローキャビティ619,620を設けることで、キャビティ内に未充填領域をなくすことが可能となる。また、本実施例では、オーバーフローキャビティ619,620は、合流部621を介して連通している。合流部621により、各キャビティの圧力を平衡させることで、樹脂モールド金型600内の圧力を均一にさせることも可能となる。
【0037】
以上説明したように、実施例1と同様の効果を奏するほか、オーバーフローキャビティを設けることで、確実にキャビティを充填させることが可能となり、歩留まりを改善することが可能となる。また、キャビティ同士を連通させるようにオーバーフローキャビティを設けることでキャビティにおける樹脂の圧力を平衡させて、成形品質を均一化することもできる。
【実施例6】
【0038】
本実施例では、図9のフローチャートおよび図10A図10Hを参照して、半導体装置の製造方法について説明する。本実施例では、本発明の一形態として、例えばインバータなどのパワー半導体を含むパッケージと、これを制御する制御素子を含むパッケージとを接続した構成とする例について説明する。
【0039】
図10Aに示されるように、リードフレーム100Lは、ダイパッド101l,102lによって構成された領域グループを備えている。本実施例では、簡単のために、図中に1つの領域グループだけを示しているが、複数の領域グループを備えていてもよい。
【0040】
半導体装置の製造の開始後、ステップS1000では、ダイパッド101lを図10Bに示されるように押し下げる。ダイパッド101lを押し下げることで、後述するように、ダイパッドをパッケージの側面に露出させ、放熱効果を高めることが可能となる。ステップS1001では、ダイパッド101lにダイオード素子801及びIGBT素子802,ダイパッド102lに制御用の半導体素子803が固定され、各半導体素子は内部接続端子103lにワイヤボンディング実装される(図10C)。ステップS1002では、リードフレーム100Lが樹脂モールド金型にクランプされる。ステップS1003では、樹脂モールド金型のポット(不図示)からキャビティ708,709に樹脂が供給される(図10D)。このとき、型閉じした上下型のパーティング面で挟まれることで、キャビティを構成する凹部とダムバー104Iとで閉塞空間を構成する。これにより、図10Cに示されるダムバー104lは、各キャビティから樹脂が外部へ流出することを防止する。また、リードフレーム100Lでは、ランナの通過する位置に設けられた貫通孔105にも樹脂が充填される。キャビティ内に樹脂が充填され、樹脂が硬化した後、ステップS1004で、貫通孔105においてディゲート装置(図示せず)においてピン等で突き上げることでランナを含む不要な樹脂を除去するディゲードが実施される(図10E)。ステップS1005でパッケージ10l,20lで構成されるパッケージグループごとにトリミング/フォーミングが行われる(図10F)。この場合、トリミング/フォーミングによるリードの加工により、連結部30が個別の端子に加工される。また、パワー半導体を含むパッケージ(キャビティ708に相当)では、電源に接続される端子や図外の駆動部(モータ等)に接続される端子(図示せず)などが成形される。このように、キャビティ708,709によりそれぞれ成形されるパッケージを電気的にのみ接続された半導体装置が完成する。図10F(a)〜(c)はそれぞれ、半導体装置の平面図、側面図、および断面図である。本実施例の半導体装置では、パッケージ10l,20lが連結部30により接続されている。本実施例では、従来のように異なるパッケージを組み合わせることなく、共通のリードフレームから異なる形状のパッケージを備えた半導体装置を製造するため、別途のパッケージを組み合わせる構成を不要として、製造時間を削減し、製造コストを削減することが可能となる。なお、炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といったパワー半導体を用いるときには、このようなパワー半導体を含むパッケージには、半導体の発する高温に耐える耐熱温度の高い樹脂や、放熱性の高い樹脂を使用して封止し、制御素子を含むパッケージには電磁波シールド性の高い樹脂を用いるといった樹脂を異ならせる構成も考えられる。このような構成によれば、効率的にパワー半導体を含む高機能の半導体装置を効率的に製造することができる。
【0041】
また、前述したようにダイパッド101lを押し下げているため、図10F(c)に示されるように半導体装置においてダイパッド101lが外部に露出する。そのため、半導体素子801l,802lから発生する熱を効果的に放熱することが可能である。また、搭載される装置に応じて、図10F(d)に示されるように、連結部30に曲げ加工を施してもよい。
【0042】
なお、本実施例に示すような製造方法によれば、パワー半導体と制御素子との組み合わせ以外であってもよい。すなわち、センサー用の半導体素子等と制御素子との組み合わせであってもよい。また、透光性の樹脂で発光素子を封止したパッケージと、これを制御する制御素子を有色の樹脂で封止したパッケージとの組み合わせとすることもできる。
【0043】
以上説明したように、共通のリードフレーム上で異なる形状のパッケージを備えた半導体装置を製造することが可能であるため、別に製造したパッケージを組み合わせるような工程が不要となり、製造コスト及び製造時間を削減することが可能となる。
【0044】
本実施例では大きさの異なるパッケージを製造した場合について説明したが、本発明はリードフレーム、樹脂モジュール金型、および供給する樹脂等に応じて封止条件が異なったとしても各条件に対して適用可能である。すなわち、本発明は、パッケージの形状や材質、および実装される半導体素子の数、大きさ、形状等が異なる場合についても、他の実施例で説明したようなリードフレームや樹脂モジュール金型を組み合わせることで本実施例の効果を得ることが可能である。なお、他の実施例で説明した実施形態に限らず、条件に応じた装置を使用すればよい。例えば、条件に応じて、各キャビティに対応するランナを形成すればいい。
【0045】
したがって、実施例1〜5で説明したように、キャビティグループに対して一括して樹脂を充填可能であるため、異なるパッケージを一括して成形可能である。さらに、実施例6で説明したように、共通のリードフレーム上で異なる形状のパッケージを備えた半導体装置を製造可能である。
【0046】
なお、各実施例のワークとしてリードフレームを用いて説明したが、本発明における金型等や製造方法に用いるワークはリードフレームに限定されず、プリント基板、セラミック基板又は金属基板といった各種基板やウェハや、インターポーザとして機能しないテンポラリキャリア等の板状部材に対する封止においても適用可能である。
【0047】
また、各実施例において使用される樹脂は、いかなる形状のタブレット型の樹脂でもよいし、樹脂を粉末化した粉末樹脂や液状の樹脂等であってもよい。また、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂といった各種の熱硬化性樹脂等を使用してもよい。また、通常の黒色の樹脂や、蛍光体などを有色透明や、無色透明といった透光性のある樹脂であってもよい。
【0048】
また、各実施例の構成のように各キャビティグループにおける複数個のキャビティに対して一度の樹脂充填工程(1ショット)で成形を完了してもよいし、その個数に相当する回数(ショット数)だけ成形を行うことで、ワークにおける成形を完了するようにしてもよい。また、カル、ランナ、ゲート、ポットは、キャビティ(製品)ごとに適切となるように、1個の金型において相違するような構成とすることもできる。例えば、ポット(プランジャ)の径を異ならせることもできる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
708 キャビティ
709 キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F