【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年11月20日 公益社団法人日本船舶海洋工学会発行の「日本船舶海洋工学会講演会論文集 第19号」の2014A−GS1−5にて公開した。 平成26年11月20日 平成26年秋季講演会2014A−GS1−5にて公開した。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)経済産業省 平成24年度補正ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金による特許出願である。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
GPSと3軸デジタルコンパスが設けられ、該GPSと3軸デジタルコンパスにより前記受信部のx−y−z座標系方位を、地球の座標系方位に補正する補正部を有する請求項1または2記載の音響観測装置。
前記受信部から離れた位置に2つの受信器を有した第2受信部を設け、該第2受信部と前記受信部とにより得られたデータを基にして、音源までの距離を推定する距離推定部を有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の音響観測装置。
前記比較評価は、前記理論値時間差データと実測値時間差データとを比較してその誤差の総和が最も小さくなる前記点を音源方位と推定する請求項5記載の音源方位推定方法。
GPSと3軸デジタルコンパスが設けられ、該GPSと3軸デジタルコンパスにより前記推定したx−y−z座標系方位を、地球の座標系方位に補正する請求項5または6記載の音源方位推定方法。
前記受信部から離れた位置に2つの受信器を有した第2受信部を設け、該第2受信部と前記受信部とにより得られたデータを基にして、音源までの距離を推定する請求項5〜7のいずれか一つに記載の音源方位推定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術に基づけば、4つのマイクロフォンを用いて音源方位を特定することは可能である。しかし、4つのマイクロフォンの内、2つの組み合わせで、マイクロフォン間の到達時間差の組み合わせは6通りができることになる。音源方位の特定は、この6つの連立方程式を同時に満たす解を求めることであるが、実測データの到達時間差には誤差等が含まれ、この連立方程式の解を得ることは極めて困難で、「解なし」となる場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、連立方程式を解くことなく、音源方位を推定できる音響観測装置及び音源方位の推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、次の手段を講じた。即ち、本発明の音響観測装置は、受信器がx−y−z座標系の任意の位置に少なくとも4つ配置された受信部と、音源から前記各受信器に到達する時間差を実測値時間差データとして求める測定部と、前記座標系の原点を中心とする仮想球面上の任意の点の接平面からの音波が、前記各受信器に到達する時間差を理論値時間差データとして全方位において予め求めておいた記憶部と、該記憶部の理論値時間差データと前記測定部の実測値時間差データとの比較評価により音源の方位を推定する推定部とを有する。
【0008】
前記推定部は、前記理論値時間差データと実測値時間差データとを比較してその誤差の総和が最も小さくなる前記点を音源方位と推定するものとするのが好ましい。
【0009】
GPSと3軸デジタルコンパスが設けられ、該GPSと3軸デジタルコンパスにより前記受信部のx−y−z座標系方位を、地球の座標系方位に補正する補正部を有するものとするのが好ましい。
【0010】
前記受信部から離れた位置に2つの受信器を有した第2受信部を設け、該第2受信部と前記受信部とにより得られたデータを基にして、音源までの距離を推定する距離推定部を有するものとするのが好ましい。
【0011】
本発明の音源方位推定方法は、受信器がx−y−z座標系の任意の位置に少なくとも4つ配置された受信部を有し、音源から前記各受信器に到達する時間差を実測値時間差データとして求め、前記座標系の原点を中心とする仮想球面上の任意の点の接平面からの音波が、前記各受信器に到達する時間差を理論値時間差データとして全方位において予め求めておき、該理論値時間差データと前記実測値時間差データとの比較評価により音源の方位を推定する。
【0012】
前記比較評価は、前記理論値時間差データと実測値時間差データとを比較してその誤差の総和が最も小さくなる前記点を音源方位と推定するのが好ましい。
【0013】
GPSと3軸デジタルコンパスが設けられ、該GPSと3軸デジタルコンパスにより前記推定したx−y−z座標系方位を、地球の座標系方位に補正するのが好ましい。
【0014】
前記受信部から離れた位置に2つの受信器を有した第2受信部を設け、該第2受信部と前記受信部とにより得られたデータを基にして、音源までの距離を推定するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連立方程式を解くことなく、音源の方位を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すものは、シャチやイルカなど、鯨類に代表される海棲哺乳類が発する音を水中において観測する海中音響観測装置である。
【0018】
この音響観測装置は、受信部1を有し、この受信部1には、4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4がx−y−z座標系の任意の位置に配置されている。この受信器CH1,CH2,CH3,CH4は、水中の音波を受信するハイドロフォンである。
【0019】
前記受信部1は、保持部2の下部に設けられている。保持部2は、船や海中ロボットなどの母船(図示省略)に、チェーンやロープなどの固定部材3を介して保持されている。また保持部2と母船とはケーブル4で接続されている。このケーブル4はヘッドホン(図示省略)を接続するためのものであり、取外し自在であるが、後で説明する制御部を母船側に設ける場合の信号ケーブルとして利用できる。
【0020】
前記受信部1の4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4は、制御部5に電気的に接続され、制御部5は表示部(図示省略)にも接続されている。
【0021】
前記制御部5は、音源からの音波が前記各受信器CH1,CH2,CH3,CH4に到達する時間差を実測値時間差データとして求める測定部6を有する。制御部5は、前記座標系の原点oを中心とする仮想球面上の任意の点Pの接平面からの音波が、前記各受信器CH1,CH2,CH3,CH4に到達する時間差を理論値時間差データとして全方位において予め求めておいた記憶部7を有する。該記憶部7の理論値時間差データと前記測定部6の実測値時間差データとの比較評価により音源の方位を推定する推定部8を有する。
【0022】
図1においては、前記制御部5は保持部2に設けられているように表示されているが、制御部5の全部または一部は、母船側に設けられていてもよい。
【0023】
前記保持部2は、円筒状体に形成されたアルミ製の容器であり、その内部に気密室が設けられ、この気密室に前記制御部5の一部または全部が収納されている。
【0024】
図2に前記受信部1の詳細を示すように、前記受信部1は、前記保持部2の下端面に取り付けられた上部アーム9を有する。該上部アーム9に連結部材10を介してその下方に下部アーム11が連結されている。上部アーム9の両端部に2つの受信器CH1,CH2が設けられ、下部アーム11の両端部に2つの受信器CH3、CH4が設けられている。これら4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4を有する海中音響観測装置を4ch−UPAMS(Underwater Passive Acoustic Monitoring System)と呼ぶ。
【0025】
前記円筒状体の保持部2の軸心をz軸とし、このz軸に直交する平面内の直交座標軸をx軸、y軸とする。このx−y−z座標系の原点oは、上部アーム9と下部アーム11の中間点に設けられ、上部アーム9は、x軸に平行に、下部アーム11は、y軸に平行に設けられている。
【0026】
4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4のx−y−z座標位置は、表1に示すとおりである。表中の単位はメートル(m)である。なお、z軸は
図1における下方をプラス方向としている。
【0028】
図2における太い矢印が音源方向である。音源方向角は仰角αと方位角βで表される。仰角αは、z軸に対する角度であり、緯度と呼ばれることがある。方位角βはx軸に対する角度であり、経度と呼ばれることがある。
【0029】
前記測定部6における実測時間差データにつき説明する。
音源方向の推定原理は、前記特許文献1(特開2006‐194700号公報)の段落0030に示されている。しかし、本実施の形態では、このような原理を用いて音源方位を推定するものではない。
【0030】
本実施の形態では、以下の方法で推定する。
すなわち、前記受信部1の4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4に対して所定の角度で音波が到達する場合、各受信器CH1,CH2,CH3,CH4における到達時間差が生じる。測定部6において、各受信器CH1,CH2,CH3,CH4が受信する受信波を、4チャンネルレコーダ(H6,ZOOMコーポレイション製)でサンプリングする。サンプリング周波数は96kHzであり、解像度は24ビットである。
【0031】
即ち、各受信器CH1,CH2,CH3,CH4の受信波形を、データ点の間隔が1/96000秒でサンプリングし、到達時間差(TDOA)を整数値(サンプリング番号)で与える。
【0032】
表2は、到達時間差(TDOA)の例である。
【0034】
前記表2の例では、受信器CH1に最初に音波が到達し、次いで4サンプリング遅れて受信器CH3及びCH4に到達し、10サンプリング遅れて受信器CH2に音波が到達していることを示している。1サンプリングは1/96000秒である。
【0035】
前記測定部6の実測値時間差データとは、前記表2に示すものである。
前記記憶部7は、ある方向から来る音に対し、4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4に到達する時間差を、全方位にわたって予め求めておき、この時間差を理論値時間差データとして記憶しておく部分である。
【0036】
図3は理論値時間差データを求めるための原理を示す図面である。
前記受信部1におけるx−y−z座標系の原点oを中心とする仮想球面Bを描く。この球面座標系で点Pは、P(1,α,β)と表現することができる。1(イチ)は仮想球面の単位半径(単位はメートル(m))である。
【0037】
前記仮想球面B上の任意の点Pの方向(無限遠)から飛んできた水中の音波は、
図2の太い矢印として4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4に到達する。この矢印(音波)は、任意の点Pが与えられたとき、その点Pにおける接平面Sに直交するように到達する。4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4のx−y−z座標系における位置は(x
i,y
i,z
i)で表現できる。ここで添え字のiは、受信器CH1,CH2,CH3,CH4の番号(1〜4)である。(x
i,y
i,z
i)は表1に示すように既知である。したがって、接平面Sの方程式が求まれば、幾何学的な関係によって4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4から接平面におろした足Lの長さが求まる。
【0038】
表3は、4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4から接平面Sにおろした足Lの長さを示している。即ち、各受信器CH1,CH2,CH3,CH4から接平面Sまでの距離テーブルである。
【0039】
表3は、点Pとして仰角αが0度から3度まで、方位角βが0度と1度が示されているのみであるが、実際は、仰角αは180度まで方位角βは360度までの全方位にわたって求められている。
【0041】
表4は、音波が4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4に到達する距離の差を示すテーブルの一部である。
【0042】
例えば、前記表3における仰角α=1度、方位角β=3度の場合、距離が一番短いのは、CH3の0.9422であるので、一番最初に音波が到達するのはCH3となる。したがって、表4においては、仰角α=1度、方位角β=3度の場合、CH3に対する距離差となり、CH1:0.1134、CH2:0.1176、CH3:0.0000、CH4:0.0002となる。単位はmである。
【0044】
表5は、理論値時間差データのテーブルの一部である。
前記表4における仰角α=1度、方位角β=3度の場合のCH1を例にとって、表5のデータにつき説明する。
【0045】
表4においてはCH1のCH3に対する距離差は0.1134mである。この距離を水中での音速1,500m/sで割った値0.0000756secが時間差となる。しかし、前記表2に示す実測値時間差は、96kHzのサンプリングのコマ数なので、これに合わせるため、0.0000756を96,000倍して7.2576(単位:サンプリング)とする。この値が表5に示された数値である。なお、サンプリング数は整数値であるが、表5においては、計算値として小数点以下が表示されている。実際には、整数値とみなされる。
【0046】
この数値のテーブルが、全方位において予め求められ、理論値時間差データとして前記記憶部7に収納されている。
【0048】
前記推定部8は、前記記憶部7の理論値時間差データと前記測定部6の実測値時間差データとを比較評価することにより音源の方位を推定する。
【0049】
前記評価は、数1に示す式(1)の評価関数eを用いて評価する。
【0051】
具体例として、前記表2に示す実測値時間差データに基づき比較評価を説明する。
前記表2に示す実測値時間差データは、0,10,4,4(これは、音波がCH1に最初に到達して、その後4サンプリングだけ遅れてCH3とCH4に同時に到達し、最後に10サンプリングだけ遅れてCH2に到達したことを表している。)がエクセル(Excel)表計算の入力値欄に入れられると、前記式(1)に基づき、前記表5に示す理論値時間差データとの最小自乗法による誤差計算される。例えば,仰角α=1度、方位角β=3度の場合、前記式(1)のeの値を計算すると、
{(0-7.2576)^2+(10-7.5253)^2+(4-0)^2+(4-0.0140)^2}^(0.5)=9.6634
となる。
【0052】
この結果が表6に示されるように表示部の表示画面(図示省略)に表示される。なおこの表6は、一部を示すもので、実際は全方位にわたって表示される。
【0054】
前記表6の表の枠外の上側及び左側の数値は、その仰角、方位角における評価関数eの最小値が示され、その中での最小値が着色表示され、上記の例では「3.6062」が着色表示されるので、その交点の仰角59度、方位角0度が最小値であるということが分かる。
【0055】
すなわち、前記表2の入力値によれば、式(1)に示す評価関数eの値が最も小さくなる仰角と方位角は、仰角59度、方位角0度で、そのときのeの値が3.6062というものである。
【0056】
そして、表7に示すように表示画面(図示省略)に音源方位の推定結果が表示される。
【0058】
前記評価関数eの値が3.6と大きいので、推定結果は好ましいものではない。
前記式(1)に示すようにeの値が1以下の場合に推定誤差を許容できると考えるのが妥当である。
【0059】
すなわち、4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4への音波の到達時間差(TDOA)を整数値(サンプリング番号)で与えるとすると、誤差は±0.5サンプルと考えられる。理論値と実測値の最大許容誤差を1サンプルとすると、4つの総合評価は、前記式(1)のように1となり、この評価が1を超える場合は、推定精度に問題があることを表す。
【0060】
以上の説明から明らかのように、前記推定部8は、前記理論値時間差データと実測値時間差データとを比較してその誤差の総和が最も小さくなる前記点を音源方位と推定するものである。
【0061】
なお、鯨類の鳴音信号をスプライン補間などで疑似的にサンプリング周波数を高めてやることで、推定精度を高めることができる。
【0062】
上記実施の形態によれば、方程式を解いて方位を推定するのではなく、予期される到達時間差との誤差を最小にする方位を選択的に推定することで、瞬時に可能解を得ることができる。また、その誤差から推定精度を評価することもできる。さらに、従来のようにサンプリング周波数を高くする(500kHz)ものに比べ、96kHzの低い周波数でも推定可能となる。
【0063】
本実施の形態では、さらに、前記保持部2に、GPS12(GT−723F,CanMore Electronics社製)と3軸デジタルコンパス13(OS5000US,OceanServer Tecnology社製)が設けられている。このGPS12と3軸デジタルコンパス13は、保持部2の頂部に設けられたジュラコン(プラスチック)製のドーム14内に収納されている。保持部2はアルミ製であるので、GPSの信号を受信することができないので、ドーム14内にGPS受信機が収納されている。このGPS12と3軸コンパス13により前記受信部1のx−y−z座標系方位を、地球の座標系方位に補正する補正部15が形成されている。
【0064】
図4に示すものは、地球基準の座標系O
E―X
E,Y
E,Z
Eおよび4ch−UPAMSの固定座標系o―x,y,zの関係を示す図面である。
【0065】
固定座標系o
E―x
E,y
E,z
Eは、その原点o
Eが4ch−UPAMSの座標系o―x,y,zの原点oと完全に一致するように、地球基準の座標系O
E―X
E,Y
E,Z
Eに平行である。軸X
Eおよび軸x
Eは北を指し、軸Y
Eおよび軸y
Eは東を指し、軸Z
E及び軸z
Eは海底を垂直に指している。
【0066】
ヨー角ψ、ロール角φ、及びピッチ角θは、3軸デジタルコンパス13から得られた。音源方向の単位方向ベクトル[u,v,w]は、オイラー角を用いた数2に示す式(2)によって単位方向ベクトル[U,V,W]に変換される。
【0068】
表8は、小型鯨類の鳴音が4つの受信器CH1,CH2,CH3,CH4に到達する時間差から音源方向角(仰角α、方位角β)を推定し、それを補正部15で補正した結果を示す表である。
【0069】
すなわち、鳴音の最初の4秒間のクリックスの推定方位角と3軸デジタルコンパスで得られたヨー角、ロール各、ピッチ角及びオイラー角による座標変換で補正した音源方位角を示している。
【0071】
上記実施の形態によれば、GPS12と3軸デジタルコンパス13が搭載されているので、機材が風波によって流されたり、揺られたりしても、オイラー角による座標変換によって、正確な音源の位置と方位を求めることができる。
【0072】
更に本実施の形態では、前記受信部1から離れた位置に2つの受信器を有した第2受信部(図示省略)を設け、該第2受信部と前記受信部1とにより得られたデータを基にして音源までの距離を推定する距離推定部(図示省略)を有する。
【0073】
すなわち、4ch−UPAMSと、所定距離離れた場所に設けられた2ch−UPAMSとの組み合わせによって、音源の距離を求めるものである。
【0074】
上記実施の形態における4ch−UPAMSにより求めた音源の方位は,迎角と方位角であって、音源までの距離を求めることはできない。4つのハイドロフォンの相対位置を離すことで、音波の到達時間差を長くすることができ、音源方位の推定精度を高めることもでき、音源までの距離を求めることもできるが、実用上、音波は平行線としてハイドロフォンに届くので、上記実施の形態では、音源がせいぜい1m程度以内にないと距離を推定することはできない。したがって、音源までの距離を求めるためには、別のアイデアが必要となる。
【0075】
そこで、4ch−UPAMSと、所定距離離れた場所に設けられた2ch−UPAMSとの組み合わせによって、音源の距離を求めるものである。4ch−UPAMSと2ch−UPAMSの位置関係は、対象とする音源の動きに応じて、水平方向に離しても良いし、鉛直方向に離しても良い。この音源距離を求める方法は、三角測量の原理に基づく。
【0076】
次に本実施の形態における音源方位推定方法につき説明する。
音源方位推定方法は、受信器CH1,CH2,CH3,CH4がx−y−z座標系の任意の位置に少なくとも4つ配置された受信部1を有し、音源から前記各受信器CH1,CH2,CH3,CH4に到達する時間差を実測値時間差データとして求め、前記座標系の原点を中心とする仮想球面上の任意の点の接平面からの音波が、前記各受信器に到達する時間差を理論値時間差データとして全方位において予め求めておき、該理論値時間差データと前記実測値時間差データとの比較評価により音源の方位を推定する。
【0077】
前記比較評価は、前記理論値時間差データと実測値時間差データとを比較してその誤差の総和が最も小さくなる前記点を音源方位と推定する。
【0078】
GPS12と3軸コンパス13が設けられ、該GPS12と3軸コンパス13により前記推定したx−y−z座標系方位を、地球の座標系方位に補正する。
【0079】
前記受信部1から離れた位置に2つの受信器を有した第2受信部を設け、該第2受信部と前記受信部1とにより得られたデータを基にして、音源までの距離を推定する。
【0080】
具体的な推定方法については、上記音響観測装置における方法と同じであるので、その詳細説明を援用する。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0082】
例えば、音波とは、可聴音に限られず超音波や低周波音などの波動を意味する。また水中の音波に限らず、大気中の音源方位推定にも適用できる。4ch−UPAMSに限られず、16chや32ch、64chでも適用可能である。本実施の形態では、仰角αと方位角βをともに1度ずつの分解能で、解析・評価を行っているが、5度あるいは10度とすることも可能である。