特許第6484112号(P6484112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6484112-金型、押出成形装置及び押出成形方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484112
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】金型、押出成形装置及び押出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/90 20190101AFI20190304BHJP
【FI】
   B29C47/90
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-113254(P2015-113254)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-221928(P2016-221928A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】熊野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】内田 富士雄
(72)【発明者】
【氏名】植木 希
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 孝幸
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形工程の上流側から下流側の流れに沿って順次に配置された、押出機、押出金型、成形機を含んで構成され、
前記成形機は金型を有し、
前記金型は、
前記成形工程の流れの上流側に設けられ熱伝導率が100W/(mK)以上の材料により構成された上流側金型部と、
前記上流側金型部の下流側に設けられた下流側金型部と、を備え、
前記上流側金型部の前記成形工程の流れに沿う方向の寸法は、5mm〜50mmであり、
前記上流側金型部と前記下流側金型部との前記成形工程の流れに沿う方向の間隔は、0mm〜50mmである窓枠用押出成形装置
【請求項2】
前記上流側金型部は、ビッカース硬度が200HV未満でありかつ加工性が良い物質で構成される請求項記載の窓枠用押出成形装置
【請求項3】
前記上流側金型部は、ビッカース硬度が200HV以上でありかつ耐摩耗性が良い物質で構成される請求項記載の窓枠用押出成形装置
【請求項4】
前記上流側金型部と前記下流側金型部との前記成形工程の流れに沿う方向の間隔は、0mmである請求項1からいずれかに記載の窓枠用押出成形装置
【請求項5】
請求項1からいずれかに記載の窓枠用押出成形装置を用いる押出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型、押出成形装置及び押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窓の気密性の確保のため、窓枠用部材の製造工程における穴開け・溶着・部品取り付け等の加工性の向上が求められている。特に、アルミ−樹脂複合サッシについては、アルミとの組立の面から、窓枠用の樹脂成形体には非常に高い寸法精度が要求されている。
【0003】
一般に、押出成形により樹脂成形体を成形加工するについては、形状・寸法に関する加工精度が要求され、この要求に応えるための技術も種々提案されている。
例えば、所望する横断面形状に対応する押出金型から押し出された樹脂成形体の表面部にヒケ(sink mark)と呼ばれる不所望な凹陥が生じることが知られており、このようなヒケを防止するための技術も特許文献1及び特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−117955号公報
【特許文献2】特開2000−158514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2には、ダイから押し出された樹脂成形体を均一に冷却するための金型が提案されている。金型の材質としては、耐久性・価格・金型の加工法等の視点から、鉄鋼・真鍮等が適用されるのが一般的である。
しかしながら、鉄鋼は熱伝導率が低いため、金型の入口部において十分な冷却ができず、金型入口寸法に対する転写性が悪くなる結果、成形品の断面寸法精度が低下して十分な歩留まり率を確保できなかった。
一方、真鍮は熱伝導率が高いため金型の寸法転写性は良好であるが、硬度が低いため樹脂との接触摩擦によって金型入口部の寸法変化が発生しやすいという問題が生じていた。
【0006】
また、金型の鋼材のうち、高熱伝導率・高硬度を満たす材料としては、タングステン銅、モリブデン銅、ベリリウム銅等も考えられるが、これらは非常に高価な材質であるとともに金型加工性が悪いため、金型の製造コストが大幅に増加してしまうという課題があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、従来よりも成形品の寸法精度及び歩留まり率を向上できかつ金型コストを低減できる金型、該金型を備える押出成形装置、及び、該金型を用いる押出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、ここに次のような技術を提案する。
【0009】
本発明では、成形工程の流れの上流側に設けられた高熱伝導率の上流側金型部(例えば、後述する上流側金型部31a)と、前記上流側金型部の下流側に設けられた下流側金型部(例えば、後述する下流側金型部31b)と、を備え、前記上流側金型部の前記成形工程の流れに沿う方向の寸法は、5mm〜50mmであり、前記上流側金型部と前記下流側金型部との前記成形工程の流れに沿う方向の間隔は、0mm〜50mmである金型(例えば、後述する金型31)を提供する。
【0010】
上記の金型において、前記上流側金型部は、熱伝導率が100W/(mK)以上であるであることが好ましい。
【0011】
また、上記の金型において、前記上流側金型部は、相対的に硬度が低くかつ加工性が良い物質で構成されることが好ましい。
【0012】
また、上記の金型において、前記上流側金型部は、相対的に硬度が高くかつ耐摩耗性が良い物質で構成されることが好ましい。
【0013】
また、上記の金型において、前記上流側金型部と前記下流側金型部との前記成形工程の流れに沿う方向の間隔は、0mmであることが好ましい。
【0014】
更にまた、上述の何れかの金型を備える押出成形装置を提案する。
【0015】
更にまた、上述の何れかの金型を用いる押出成形方法を提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも成形品の寸法精度及び歩留まり率を向上できかつ金型コストを低減できる金型、該金型を備える押出成形装置、及び、該金型を用いる押出成形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る金型を備える押出成形装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳述する。
図1は、本発明の一実施形態としての金型を備える押出成形装置を示す図である。
図1に示すように、押出成形装置1は、成形工程の上流側から下流側の流れに沿って、押出機10、押出金型20、成形機30、引取機40、切断機50、及び、払出機60を備えて構成される。
【0019】
押出機10は、原料ホッパ11、原料フィーダ12、加熱シリンダ13、及び、スクリュー14を含む。
原料ホッパ11から投入された原料樹脂及び添加剤等は、原料フィーダ12により加熱シリンダ13に供給され、加熱シリンダ13内で加熱溶融されて混練され、溶融樹脂となる。この溶融樹脂は、スクリュー14により加圧されてノズル(不図示)から高圧で押出金型20に向けて押出され、所定形状に賦形される。
【0020】
押出金型20から押し出され賦形された樹脂成形体100は、次いで、成形機30にかけられる。
成形機30は、金型31と冷却水槽32を備えて構成される。金型31は、成形工程の流れに係る上流側に設けられ、熱伝導率が高いA群又はB群に属する物質で構成される上流側金型部31aと、上流側金型部31aの下流側の直下に(接して、又は、後述する間隔を空けて)連なって設けられた下流側金型部31bとに分割して構成される。
押出金型20から押し出され賦形された樹脂成形体100は、金型31の上流側金型部31a及び下流側金型部31bを上述の順に通って金型31の形が転写される。
【0021】
金型31を通った樹脂成形体100は、後段の冷却水槽32で冷却される。樹脂成形体100が中空形状等の内部熱を吸収しにくい形状である場合には、冷却水槽32として、冷却水が貯められた内部をある程度の真空圧(例えば、30〜40mmHg)とした真空冷却水槽を用いることが推奨される。
【0022】
成形機30の冷却水槽32を通った樹脂成形体100は、引取機40の上ベルト41と下ベルト42とによって挟持されて搬送され、後段の切断機50に供給されて、所定の長さに切断される。
所定の長さに切断された樹脂成形体100は、製品として、払出機60上部の払出テーブル61から払い出される。
【0023】
上述のような構成の本実施形態に係る押出成形装置1では、成形機30に設けられた金型31自体が、本発明の一実施形態である。
【0024】
本発明の一実施形態としての金型31について、更に詳述する。
金型31は、既述のように、上流側金型部31aと、上流側金型部31aの下流側の直下に(接して、又は、後述する間隔を空けて)連なって設けられた下流側金型部31bとに分割して構成される。
【0025】
ここで、上流側金型部31aと下流側金型部31bとの間の、上記成形工程の流れに沿う方向の間隔dは、0mm〜50mmの範囲内に設定される。特に、これら金型の間隔dは、0mmであることが好ましい。即ち、上流側金型部31aと下流側金型部31bは接していることが好ましい。両金型が接していることにより、樹脂成形体の内部熱による収縮が発生せず、成形品の高い寸法精度が確保されるようになっている。
【0026】
上流側金型部31aには、図示しない冷却手段が設けられ、樹脂成形体100を急速に冷却固化するとともに、金型31の入口形状を精度よく転写することにより樹脂成形体100に所定の形状を付与する。所定の形状が付与された樹脂成形体100は、下流側金型部31b以降において、内部熱が吸収され、熱収縮によるヒケや反りといった現象が生じない程度まで冷却される。
【0027】
上流側金型部31aの成形工程の流れに沿う方向の寸法は、5mm〜50mmである。即ち、上流側金型部31aの成形工程の流れに沿う方向の寸法は、短く設定されている。かかる寸法が5mm〜50mmの範囲内であることにより、高い寸法精度が確保されるとともに金型コストが低減される。
【0028】
上流側金型部31aは、高い冷却効果を得るべく、熱伝導率が高い材料で構成される。具体的には、熱伝導率が100W/(mK)以上の材料により構成されることが好ましい。中でも、以下に示すA群又はB群に属する物質で構成されることが好ましい。
【0029】
具体的には、A群に属する物質として、真鍮、青銅、アルミニウム合金、銅、クロム銅、ジルコニウム銅、亜鉛合金、マグネシウム合金、金、銀、ロジウム、アルミニウム等が挙げられる。
また、B群に属する物質として、ベリリウム銅、タングステン銅、タングステン銀、モリブデン銅、チタン銅、ニッケルシリコン銅、イリジウム、ルテニウム等が挙げられる。
【0030】
上掲のA群の物質は、相対的に硬度が低くかつ加工性が良い物質である。また、上掲のB群の物質は、相対的に硬度が高くかつ耐摩耗性が良い物質である。
ここに、相対的に硬度が低いとは、ビッカース硬度で200HV未満であることを意味し、相対的に硬度が高いとは、ビッカース硬度で200HV以上であることを意味する。
ここに「加工性が良い」とは、金型を所定の形状・寸法に仕上げるために、切削加工・放電加工・研削加工などを施す際に、硬度が低いことによって短時間で容易に精度良く加工ができることをいう。
また、「耐摩耗性が良い」とは、金型と樹脂形材の接触摩耗に対して、硬度が高いことによって長時間の成形でも摩耗による金型入口部の寸法変化を発生することがなく、寸法精度の良い樹脂形材を成形することができることをいう。
【0031】
一方、下流側金型部31bは、上流側金型部31aと異なり、従来から金型の材料として一般的な材料で構成される。即ち、上述のA群やB群に分類される高熱伝導率の物質の他、従来一般的な鉄鋼等を用いることができる。
【0032】
また、下流側金型部31bの成形工程の流れに沿う方向の寸法は特に限定されない。例えば、下流側金型部31bの成形工程の流れに沿う方向の寸法は、400mm以下の範囲内で設定される。
【0033】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、金型31を、成形工程の流れの上流側に設けられた高熱伝導率の上流側金型部31aと、上流側金型部31aの下流側に設けられた下流側金型部31bとにより構成した。また、上流側金型部31aの成形工程の流れに沿う方向の寸法を5mm〜50mmとし、上流側金型部31aと下流側金型部31bとの成形工程の流れに沿う方向の間隔dを0mm〜50mmとした。
上流側金型部31aの成形工程の流れに沿う方向の寸法が5mm〜50mmであることにより、上流側金型部31aを比較的安価で一定期間で交換するように構成した場合においても、交換コストは小規模に留まり、金型コストを上昇させるものとはならない。また、上流側金型部31aを比較的高価で交換しないように構成した場合においても、交換コストを計上する頻度が極小となり、結果的にこの部分が金型コストを上昇させるには至らない。従って、総じて、金型コストを低減できる。
また、上流側金型部31aと下流側金型部31bとの成形工程の流れに沿う方向の間隔dが0mm〜50mmであることにより、上流側金型部31aと下流側金型部31bとの間で成形品である樹脂成形体100の冷却が進み難い。従って、樹脂成形体の内部熱による収縮が生じ難く、従来よりも成形品の寸法精度及び歩留まり率を向上させることができる。
【0034】
また本実施形態では、好ましくは、上流側金型部31aの熱伝導率を100W/(mK)以上とする。これにより、上流側金型部31aにおいて、成形品である樹脂成形体100の冷却を促進させることができ、従来よりも成形品の寸法精度及び歩留まり率を向上させることができる。
【0035】
また本実施形態では、一の態様として、上流側金型部31aを、相対的に硬度が低くかつ加工性が良い上掲のA群の物質で構成する。これにより、高い寸法精度を維持するためには上流側金型部31aを一定期間で交換する必要性が生じるところ、上流側金型部31aを構成するA群の物質自体が安価であるため、総じて、金型コストを低減できる。
【0036】
また本実施形態では、他の態様として、上流側金型部31aを、相対的に硬度が高くかつ加工性が悪い上掲のB群の物質で構成する。これにより、上流側金型部31aを構成するB群の物資自体が高価となるが、交換頻度を大幅に低減できるため、総じて、金型コストを低減できる。
【0037】
また本実施形態では、金型31は、上流側金型部31aと下流側金型部31bとの成形工程の流れに沿う方向の間隔dが0mmになるように(即ち、上流側金型部31aと下流側金型部31bとが接するように)配置する態様を採り得る。これにより、樹脂成形体の内部熱による収縮が発生するのを抑制でき、成形品の寸法精度をより向上できる。特に、樹脂成形体100がホロー形状である場合には、一般的には比較的急速に冷却が進むことから成形品の寸法精度の確保が難しいところ、間隔dを0mmにすることにより、成形品の寸法精度を十分に確保できるようになる。
【0038】
また本実施形態では、金型31を備える押出成形装置及び金型31を用いる押出成形方法を提供する。これにより、上述の金型31の効果と同様の効果が奏される。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1〜実施例36]
本発明の実施例1〜36に係る金型を、表1に示す条件に従って、それぞれ作製した。即ち、上流側金型の材質をA群又はB群としてその長さLaを5mm〜50mmの範囲内とし、下流側金型との間隔dを0mm〜50mmの範囲内とした他、下流側金型の材質及び長さLbを表1に示す通りとした実施例1〜36の金型を作製した。
【0042】
[比較例1]
金型を上流側金型と下流側金型に分離せず、本発明の上流側金型に該当する部分のみで構成した金型を、比較例1として作製した。この比較例1では、金型を鉄鋼で構成し、その長さLaを200mmとした。
【0043】
[比較例2]
比較例1と同様に、金型を上流側金型と下流側金型に分離せず、本発明の上流側金型に該当する部分のみで構成した金型を、比較例2として作製した。この比較例2では、金型を真鍮で構成し、その長さLaを200mmとした。
【0044】
[比較例3]
比較例1及び2と同様に、金型を上流側金型と下流側金型に分離せず、本発明の上流側金型に該当する部分のみで構成した金型を、比較例3として作製した。この比較例3では、金型をベリリウム銅で構成し、その長さLaを200mmとした。
【0045】
[比較例4〜比較例15]
実施例1〜実施例24に対して、両金型の間隔dを100mmとしたものを、比較例4〜比較例15の金型として作製した。
【0046】
[寸法精度の評価]
各実施例及び比較例で作製した各金型について、寸法精度(転写性)の評価を実施した。寸法精度の評価は、押出成形により得られた樹脂成形体の寸法が、金型の入口寸法に対して±5%未満を3、±5%以上かつ±10%未満を2、±10%以上を1として評価した。結果を表1に示す。
【0047】
[金型コストの評価]
各実施例及び比較例で作製した各金型について、金型コストの評価を実施した。金型コストの評価は、上流側金型部のコストの評価基準を、材質が鉄鋼で長さ200mm(後述の表1における「比較例1」)のものについて、材料価格、金型の加工費(A群は摩耗による1年間の交換費)を試算した結果の値(金額)とし、上記の評価基準と比較して、+20%未満を3、+20%以上かつ+50%未満を2、+50%以上を1として評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1において、「長さLa」は、上流側金型部の成形工程の流れに沿う方向の寸法を表し、「長さLb」は、下流側金型部の成形工程の流れに沿う方向の寸法を表している。
【0050】
比較例1のように、金型を上流側金型と下流側金型に分離せずに鉄鋼を用いて構成した場合には、金型コストは低減できるものの、熱伝導率が低いために金型の入口寸法に対して形状断面寸法が悪くなり、寸法精度が悪くなることが確認された。
【0051】
また比較例2及び3のように、金型を上流側金型と下流側金型に分離せずに真鍮やベリリウム銅を用いて構成した場合には、摩耗によって金型の入口の寸法が徐々に拡大して耐久性が不足するところ、交換することにより高い寸法精度を維持できるものの、金型コストが増加することが確認された。
【0052】
また比較例4〜比較例15のように、両金型の間隔dを100mmとした場合には、上流側金型の材質をA群又はB群としてその長さLaを5mm〜50mmの範囲内としても、高い寸法精度が得られないことが確認された。これは、上流側金型部と下流側金型部との間の間隔dが大きくなると、樹脂成形体の内部熱による収縮が発生してしまい、寸法精度が悪くなるためである。
尚、長さLaを5mm未満とした場合には、総じて寸法精度が悪化することが確認された。
【0053】
これに対して実施例1〜36のように、金型を上流側金型と下流側金型に分離し、上流側金型部を例えばA群やB群のような高熱伝導率の物質で構成するとともに、上流側金型部の成形工程の流れに沿う方向の寸法Laを5mm〜50mmとし、上流側金型部と下流側金型部との成形工程の流れに沿う方向の間隔dを0mm〜50mmとすることにより、高い寸法精度が得られるとともに、金型コストを低減できることが確認された。
特に、両金型の間隔dを0mmとすることにより、より高い寸法精度が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0054】
1…押出成形装置
10…押出機
20…押出金型
30…成形機
31…金型
31a…上流側金型部
31b…下流側金型部
40…引取機
50…切断機
60…払出機
100…樹脂成形体
図1