(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ラッチボルトと同動可能なラッチボルトシャフトを前方へ移動可能に付勢し、該ラッチボルトシャフトの後部にレバーカムのカムアームを係合可能に配置し、前記レバーカムをレバーハンドルに連係して回動可能に設け、前記レバーカムに設けた張出カムにバネ受けを係合可能に配置し、該バネ受けを後方へ移動可能に付勢するとともに、レバ−カムの解錠回動時、前記バネ受けを前方へ移動可能に設け、ラッチボルトシャフトの後端部周辺にラッチボルトの施錠状態をロック可能なロック機構を設け、該ロック機構のロックスライドの下端部をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能に配置したドア錠において、前記バネ受けの先端部外面に係合爪と係合溝を前後位置に形成するとともに、錠ケースおよび/または錠カバーの内面に前記係合爪と係合溝に係合可能な係合爪を形成し、レバーハンドルの非常解錠時、前記バネ受けの係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの係合爪に係合可能に設け、バネ受けの後退動を阻止し、レバーハンドルの非常解錠角度を保持可能にしたことを特徴とするドア錠。
ラッチボルトと同動可能なラッチボルトシャフトを前方へ移動可能に付勢し、該ラッチボルトシャフトの後部にレバーカムのカムアームを係合可能に配置し、前記レバーカムをレバーハンドルに連係して回動可能に設け、前記レバーカムに設けた張出カムにバネ受けを係合可能に配置し、該バネ受けを後方へ移動可能に付勢するとともに、レバーカムの解錠回動時、前記バネ受けを前方へ移動可能に設け、ラッチボルトシャフトの後端部周辺にラッチボルトの施錠状態をロック可能なロック機構を設け、該ロック機構のロックスライドの下端部をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能に配置したドア錠において、前記バネ受けの先端部外面に係合爪と係合溝を前後位置に形成するとともに、錠ケースおよび/または錠カバーの内面に前記係合爪と係合溝に係合可能な係合爪を形成し、レバーハンドルの非常解錠時、前記バネ受けの係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの係合爪に係合可能に設け、バネ受けの後退動を阻止し、レバーハンドルの非常解錠角度を保持可能にする一方、前記ラッチボルトシャフトの中間部にカムフランジを突設し、該ラッチボルトシャフトの移動方向に沿ってスライド板を前後に移動可能に配置し、該スライド板の離間位置に揺動アームを有するラッチカムを回動可能に支持し、前記揺動アームをスライド板の通孔を貫通して前記カムフランジに係合可能に配置するとともに、前記カムアームの先端部をスライド板の係合孔に係合可能に挿入したことを特徴とするドア錠。
前記レバーカムの解錠回動時、前記揺動アームをカムフランジに係合可能に設け、ラッチボルトシャフトを後退動可能にするとともに、前記スライド板を後退動可能に設け、該スライド板の後端部をロックスライドに当接し、かつラッチボルトシャフトをロックスライドに設けた貫通孔に移動して、正常解錠可能に設けた請求項5記載のドア錠。
使用によって将来破損を予想される第1および第2の仮想破損部材を設定し、前記第1または第2の仮想破損部材の破損時、非常解錠可能に設けた請求項5記載のドア錠。
前記破損設定部の破断または折損時にカムアームの先端部をラッチボルトシャフトの後部に係合し、該ラッチボルトシャフトを後退動して非常解錠可能に設けた請求項9記載のドア錠。
ロック機構を構成するロックカムとロックスライドとを係脱可能に付勢するロックスプリングを第2の仮想破損部材として設定し、該第2の仮想破損部材を前記第1の仮想破損部材の非破損を条件に使用可能にした請求項8記載のドア錠。
前記ロックスプリングの破断または折損時、ロックスライドを自重によって下動可能に設け、ロックスライドに設けた貫通穴をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能にした請求項14記載のドア錠。
【背景技術】
【0002】
錠前を長期間使用すると、構成部材が磨耗若しくは変形し、または疲労して破断または折損し、機能低下や施解錠不能に陥り、例えば室内の閉じ込め事故の発生が懸念され、予てよりその改善が望まれていた。
出願人はこのような要請に応ずるものとして、種々のドア錠を開発し既に提案している
【0003】
例えば錠ケースにラッチボルトと一体のラッチシャフトを進退動可能に設け、該ラッチシャフトの後端部にスペーサを配置し、該スペーサにレバーハンドルと同動可能なメインカムを係合し、この他側のサブカムにバネ受けを係合可能に配置するとともに、錠ケースの後端部の一側にラッチボルトの施錠をロック可能なロック機構を配置し、ラッチボルトの施錠時にロック機構に連係するスライドカムをラッチシャフトの後端部に係合可能に配置したドア錠において、錠カバーと錠ケースの対向位置に矩形の操作窓を設け、これらの操作窓に対応するドアに大径の切欠穴を形成し、前記操作窓に前記スペーサとラッチシャフトの後端部とスライドカムの下端部内面を露出可能に配置している。
【0004】
そして、施錠時に前記ロック機構が故障した場合、ドアの一側のレバーハンドルを取外し、丸座とそのカバーを取り外してドアの切欠穴を表出し、該切欠穴に表出した操作窓にスペーサと、ラッチシャフトの後端部とスライドカムの下端部内面を露出させ、これらにドライバー等の非常解錠具を差し込み、スライドカムを押し上げてロック機能を解除し、この後スペーサを後退させてラッチシャフトを同動させ、解錠かつ開扉するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、前記ドア錠は非常解錠時に種々の構成部材の取り外しと作業を要して煩雑で手間が掛かる問題がある。しかも、前記ドア錠は事故発生後の対処法であるから、なるべくなら事故の発生を未然に防止し、通常使用時の安全性を確保することが望ましい。
このような事故の発生を未然に防止する手段として、例えばドア錠の経年的な使用によって、磨耗や変形、疲労等による破断や折損を生じ易い構成部材を想定し、その想定部材の異状を監視することによって、閉じ込め等の事故の発生を未然に防止することが可能になる。
このような観点から、出願人は使用上の安全性を更に向上した新規なドア錠を種々開発し、既に提案している。
【0006】
例えばチューブラ型のドア錠として、レバーハンドルと同動する回動カムに第1および第2係合カムを突設し、このカムの何れか一方の回動域に前記カムと係合可能な過負荷変形手段を配置し、解錠ないし開扉時に回動カムが正常な開扉角度を越えて異状に回動した際、係合カムを介して過負荷変形手段を変形可能に設け、前記過負荷変形手段の変形に連係して変形可能なシフトロッカーを設け、該シフトロッカーの端部を、ラッチボルトとスライド板とを連係するシフターに係脱可能に配置し、解錠ないし開扉時にレバーハンドルの異状な操作を過負荷変形手段が感知した際、ラッチボルトないしスライド板の後退変位を拘束して、使用上の安全性を確保するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、箱形のドア錠として、ラッチボルトの延設部に連結板の後部と係合可能な係合突起を設け、ドア錠の施錠時にラッチボルトの延設部が破断した際、連結板を残置し、連結板の後部にカムアームを係合し、係合ピンを係合孔に係合してラッチボルトを後方へ移動し解錠可能にする一方、前記破断後、ハンドル軸と同動可能なカムアームと連結板の後部との係合を解除し、連結板を介しラッチボルトを前方へ移動可能にし、係合孔の前後方向の長さ相当分、ラッチボルトの突出変位を増加可能に設け、開扉時におけるドアからのラッチボルトの突出変位を、ラッチボルトの破断の前後で相違させ、施錠時にラッチボルトの延設部が破断した際の施解錠を実現し、ドア錠の応急的な使用を確保するようにしている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
更に、別の箱形のドア錠として、レバーハンドルと同期回動可能な第1レバーカムの枢支部に係合カムを突設した第2レバーカムを回動可能に設け、前記係合カムを第1レバーカムの枢支部に係合可能に配置し、常時は第1および第2レバーカムを同期回動可能に設け、前記係合カムの逆転回動域にロックピンと連動リンクの一端を配置し、これらを係合カムの逆転回動に係合可能に配置し、前記ロックピンを係合カムの係合を介して折損可能に設ける一方、連動リンクの他端をラッチボルトに係合可能に配置し、係合カムの逆転回動時に係合カムを連動リンクの一端に係合し、ラッチボルトを後退させて開扉可能に設け、開扉または閉扉操作時に必要以上に負荷や衝撃を掛け、または経年変化や高頻度の使用によって構成部品が磨耗し或いは機能が低下して、開扉が不可能になった場合に、レバーハンドルの逆転回動操作によってラッチボルトを後退させ強制的に開扉するようにしている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
このように前記ドア錠は、構成部品の過負荷作動時に変形可能な過負荷変形手段や、ラッチボルトの破断時にラッチボルトの後退動を支援可能な非常用解錠部材を要し、または開扉不可能な非常時に関係部材と係合して折損可能な非常用解錠部材を要して、非常時に開扉可能にしている。
そこで、新規の構成部品を可及的に抑制し、構成を簡潔にするとともに、使用上、最も負荷が掛かり、磨耗や変形、破損し易い構成部品と部位を設定し、上記部品の破損に対応してレバーハンドルを回動可能に設け、該レバーハンドルの回動変位によって異状事態を視認可能にし、非常事態の発生を未然に防止することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決し、錠前の使用によって構成部材が磨耗し、変形または疲労して破断または折損し、機能低下や使用不能に陥った際、その非常事態を視覚的に確認可能にして、室内の閉じ込め事故を未然に防止し、使用上の安全性を確保するとともに、非常解錠機能を備えた錠前の合理的な構成と使用を図れるようにしたドア錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、ラッチボルトと同動可能なラッチボルトシャフトを前方へ移動可能に付勢し、該ラッチボルトシャフトの後部にレバーカムのカムアームを係合可能に配置し、前記レバーカムをレバーハンドルに連係して回動可能に設け、前記レバーカムに設けた張出カムにバネ受けを係合可能に配置し、該バネ受けを後方へ移動可能に付勢するとともに、レバ−カムの解錠回動時、前記バネ受けを前方へ移動可能に設け、ラッチボルトシャフトの後端部周辺にラッチボルトの施錠状態をロック可能なロック機構を設け、該ロック機構のロックスライドの下端部をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能に配
置したドア錠において、前記バネ受けの先端部外面に係合爪と係合溝を前後位置に形成するとともに、錠ケースおよび/または錠カバーの内面に前記係合爪と係合溝に係合可能な係合爪を形成し、レバーハンドル
の非常解錠時、前記バネ受けの係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの係合爪に係合可能に設け、バネ受けの後退動を阻止し、レバーハンドルの非常解錠角度を保持可能に
し、レバーハンドルの非常解錠状態を視認可能にしている。
【0013】
請求項2の発明は、レバーカムの解錠回動時、前記バネ受け
の係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの内面の係合爪に
密着可能に配置し、解錠時におけるバネ受けとレバーカムとレバーハンドルの変位を
保持し得るようにしている。
請求項3の発明は、解錠時のレバーハンドルの回動角度を非常解錠時の回動角度と同一に形成し、前記レバーカムとラッチボルトシャフト、バネ受け、係合爪または係合溝、錠ケースと錠カバー、ロック機構を非常解錠用に利用可能にし、構成の合理化を図るようにしている。
請求項4の発明は、レバーカムの解錠回動時、ロック機構のロックスライドに設けた貫通孔をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能にし、レバーカムの解錠操作に備えロック機構のロック状態を解除し得るようにしている。
【0014】
請求項5の発明は、ラッチボルトと同動可能なラッチボルトシャフトを前方へ移動可能に付勢し、該ラッチボルトシャフトの後部にレバーカムのカムアームを係合可能に配置し、前記レバーカムをレバーハンドルに連係して回動可能に設け、前記レバーカムに設けた張出カムにバネ受けを係合可能に配置し、該バネ受けを後方へ移動可能に付勢するとともに、レバーカムの解錠回動時、前記バネ受けを前方へ移動可能に設け、ラッチボルトシャフトの後端部周辺にラッチボルトの施錠状態をロック可能なロック機構を設け、該ロック機構のロックスライドの下端部をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能に配
置したドア錠において、前記バネ受けの先端部外面に係合爪と係合溝を前後位置に形成するとともに、錠ケースおよび/または錠カバーの内面に前記係合爪と係合溝に係合可能な係合爪を形成し、レバーハンドル
の非常解錠時、前記バネ受けの係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの係合爪に係合可能に設け、バネ受けの後退動を阻止し、レバーハンドルの非常解錠角度を保持可能にする一方、前記ラッチボルトシャフトの中間部にカムフランジを突設し、該ラッチボルトシャフトの移動方向に沿ってスライド板を前後に移動可能に配置し、該スライド板の離間位置に揺動アームを有するラッチカムを回動可能に支持し、前記揺動アームをスライド板の通孔を貫通して前記カムフランジに係合可能に配置するとともに、前記カムアームの先端部をスライド板の係合孔に係合可能に挿入し、スライド板とカムフランジによって、揺動アームの揺動角度とレバーカムおよびレバーハンドルの回動角度を抑制するとともに、バネ受けの係合爪と係合溝によって、非常解錠時におけるレバーハンドルの異常状態を保持して視認可能にし、その応急の処置と復旧を促すようにしている。
【0015】
請求項6の発明は、
レバーカムの解錠回動時、前記揺動アームをカムフランジに係合
可能に設け、ラッチボルトシャフトを後退動可能にするとともに、前記スライド板を後退動可能に設け、該スライド板の後端部をロックスライドに当接し、かつラッチボルトシャフトをロックスライドに設けた貫通孔に移動して、正常解錠可能に設け、正常解錠時におけるレバーハンドルの回動変位を抑制し得るようにしている。
請求項7の発明は、正常解錠時におけるレバーハンドルを水平位置より
下方へ変位可能に
設け、レバーハンドルの回動位置によって正常状態を視認し得るようにしている。
請求項8の発明は、使用によって将来破損を予想される第1および第2の仮想破損部材を設定し、前記第1または第2の仮想破損部材の破損時、非常解錠可能に設け、第1の仮想破損部材または第2の仮想破損部材の破損時においても解錠可能にし、室内の閉じ込め事故の発生を
未然に防止し、使用上の安
全を確保するようにしている。
【0016】
請求項9の発明は、レバーカムを第1の仮想破損部材として設定し、そのカムアームの先端部に破損設定部を設け、レバーカムの破損を監視して破損時に速やかに対応し、室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止し得るようにしている。
請求項10の発明は、破損設定部は、カムアームの先端部を縮径して形成し、カムアームの先端部の強度を低下し、破損設定部を設けない場合に比べ、その破断または折損時期を僅かに早めて事前に対応し、突然の室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止し得るようにしている。
請求項11の発明は、破損設定部の破断または折損時にカムアームの先端部をラッチボルトシャフトの後部に係合し、該ラッチボルトシャフトを後退動して非常解錠可能に設け、カムアームの先端部が破断または折損した場合、その直下のカムアームをラッチボルトシャフトの後部に係合して、室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止し得るようにしている。
請求項12の発明は、破損設定部の破断または折損時における非常解錠時、レバーハンドルを
正常解錠時の変位よりも下方へ変位可能に
設け、レバーハンドルないしドア錠の異常状態を容易に視認させ、その応急の処置と復旧を促すようにしている。
【0017】
請求項13の発明は、非常解錠時のレバーカムとバネ受け、およびレバーハンドルの各変位を保持可能にし、レバーハンドルないしドア錠の異常状態を確実に視認させ、その応急の処置と復旧を促すようにしている。
請求項14の発明は、ロック機構を構成するロックカムとロックスライドとを係脱可能に付勢するロックスプリングを第2の仮想破損部材として設定し、該第2の仮想破損部材を前記第1の仮想破損部材の非破損を条件に
使用可能にし、第2の仮想破損部材によって第1の仮想破損部材の機能を補完し、室内の閉じ込め事故等の発生を確実かつ強固に防止し、使用上の安全性を確保し得るようにしている。
請求項15の発明は、ロックスプリングの破断または折損時、ロックスライドを自重によって下動可能に設け、ロックスライドに設けた貫通穴をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能にし、ロックスプリングの破断または折損時における室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止し得るようにしている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明は、バネ受けの先端部外面に係合爪と係合溝を前後位置に形成するとともに、錠ケースおよび/または錠カバーの内面に前記係合爪と係合溝に係合可能な係合爪を形成し、レバーハンドル
の非常解錠時、前記バネ受けの係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの係合爪に係合可能に設け、バネ受けの後退動を阻止し、レバーハンドルの非常解錠角度を保持可能にしたから、レバーハンドルの非常解錠状態を視認することができる。
請求項2の発明は、レバーカムの解錠回動時、前記バネ受けの係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの内面の係合爪に密着可能に配置したから、解錠時におけるバネ受けとレバーカムとレバーハンドルの変位を保持することができる。
請求項3の発明は、解錠時のレバーハンドルの回動角度を非常解錠時の回動角度と同一に形成したから、前記レバーカムとラッチボルトシャフト、バネ受け、係合爪または係合溝、錠ケースと錠カバー、ロック機構を非常解錠用に利用でき、構成の合理化を図ることができる。
請求項4の発明は、レバーカムの解錠回動時、ロック機構のロックスライドに設けた貫通孔をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能にしたから、レバーカムの解錠操作に備えロック機構のロック状態を解除することができる。
【0019】
請求項5の発明は、バネ受けの先端部外面に係合爪と係合溝を前後位置に形成するとともに、錠ケースおよび/または錠カバーの内面に前記係合爪と係合溝に係合可能な係合爪を形成し、レバーハンドル
の非常解錠時、前記バネ受けの係合爪と係合溝を、錠ケースおよび/または錠カバーの係合爪に係合可能に設け、バネ受けの後退動を阻止し、レバーハンドルの非常解錠角度を保持可能にする一方、前記ラッチボルトシャフトの中間部にカムフランジを突設し、該ラッチボルトシャフトの移動方向に沿ってスライド板を前後に移動可能に配置し、該スライド板の離間位置に揺動アームを有するラッチカムを回動可能に支持し、前記揺動アームをスライド板の通孔を貫通して前記カムフランジに係合可能に配置するとともに、前記カムアームの先端部をスライド板の係合孔に係合可能に挿入したから、スライド板とカムフランジによって、揺動アームの揺動角度とレバーカムおよびレバーハンドルの回動角度を抑制するとともに、バネ受けの係合爪と係合溝によって、非常解錠時におけるレバーハンドルの異常状態を保持して視認可能にし、その応急の処置と復旧を促すことができる。
【0020】
請求項6の発明は、
レバーカムの解錠回動時、前記揺動アームをカムフランジに係合
可能に設け、ラッチボルトシャフトを後退動可能にするとともに、前記スライド板を後退動可能に設け、該スライド板の後端部をロックスライドに当接し、かつラッチボルトシャフトをロックスライドに設けた貫通孔に移動して、正常解錠可能に設けたから、正常解錠時におけるレバーハンドルの回動変位を抑制することができる。
請求項7の発明は、正常解錠時におけるレバーハンドルを水平位置より
下方へ変位可能に設けたから、レバーハンドルの回動位置によって正常状態を視認することができる。
請求項8の発明は、使用によって将来破損を予想される第1および第2の仮想破損部材を設定し、前記第1または第2の仮想破損部材の破損時、非常解錠可能に設けたから、第1の仮想破損部材または第2の仮想破損部材の破損時においても非常解錠でき、室内の閉じ込め事故の発生を強力に防止し、使用上の安
全を確保することができる。
【0021】
請求項9の発明は、レバーカムを第1の仮想破損部材として設定し、そのカムアームの先端部に破損設定部を設けたから、レバーカムの破損を監視して破損時に速やかに対応し、室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止することができる。
請求項10の発明は、破損設定部は、カムアームの先端部を縮径して形成したから、カムアームの先端部の強度を低下し、破損設定部を設けない場合に比べ、その破断または折損時期を僅かに早めて事前に対応し、突然の室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止することができる。
請求項11の発明は、破損設定部の破断または折損時にカムアームの先端部をラッチボルトシャフトの後部に係合し、該ラッチボルトシャフトを後退動して非常解錠可能に設けたから、カムアームの先端部が破断または折損した場合、その直下のカムアームをラッチボルトシャフトの後部に係合して、室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止することができる。
【0022】
請求項12の発明は、破損設定部の破断または折損時における非常解錠時、レバーハンドルを
正常解錠時の変位よりも下方へ変位可能に
設けたから、レバーハンドルないしドア錠の異常状態を容易に視認させ、その応急の処置と復旧を促すことができる。
請求項13の発明は、非常解錠時のレバーカムとバネ受け、およびレバーハンドルの各変位を保持可能にしたから、レバーハンドルないしドア錠の異常状態を確実に視認でき、その応急の処置と復旧を促すことができる。
【0023】
請求項14の発明は、ロック機構を構成するロックカムとロックスライドとを係脱可能に付勢するロックスプリングを第2の仮想破損部材として設定し、該第2の仮想破損部材を前記第1の仮想破損部材の非破損を条件に
使用可能にしたから、第2の仮想破損部材によって第1の仮想破損部材の機能を補完し、室内の閉じ込め事故等の発生を確実かつ強固に防止し、使用上の安全性を確保することができる。
請求項15の発明は、ロックスプリングの破断または折損時、ロックスライドを自重によって下動可能に設け、ロックスライドに設けた貫通穴をラッチボルトシャフトの後退域に移動可能にしたから、ロックスプリングの破断または折損時における室内の閉じ込め事故等の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図示の実施形態について説明すると、
図1乃至
図11において1は縦長矩形のドアで、その吊元側の基端部を蝶番(図示略)を介して縦枠(図示略)に回動可能に取付けられている。前記ドア1の他端部に錠取付穴2が形成され、この錠取付穴2に箱形のドア錠3が取付けられている。
前記ドア錠3は合成樹脂製の錠ケース4と錠カバー5とを備え、これらにビス6をねじ込んで固定している。
【0029】
前記錠ケース4は周囲に側片7を突設して外郭を仕切り、その底面の一端部側に異形の補強段部8,9が突設され、この他側端部に異形の補強段部10が突設され、これらの周囲と中間部に補強リブを配置して構成している。
このうち、補強段部8の略中央に中空円筒状のラッチカムガイド11が設けられ、その中央にガイドロッド(図示略)が突設され、このガイドロッドに後述するラッチカムを回動可能に支持している。
【0030】
前記ラッチガイド11の両側に軸筒部12,13が設けられ、該軸筒部12,13に錠カバー5の外側からビス6がねじ込まれ、この軸筒部13の近接位置に後述するロックスプリングの一端を掛け止め可能なピン14が突設されている。
前記補強段部9,10の端部側に軸筒部15,16が設けられ、これらに錠カバー5の外側からビス6がねじ込まれている。
【0031】
前記錠ケース4の底面の端部側に大小異径の通孔17,18が設けられ、また補強段部8,9の間にガイド溝19が前後方向に形成され、該ガイド溝19の近接位置にガイド溝20が上下方向に形成され、前記補強段部9と側片7との間にバネ受け設置スペース21が設けられている。
【0032】
前記錠ケース4の前端部に縦長矩形のフロント板受け22が一体成形され、その両端部にビス孔23が設けられ、その中間位置に矩形のラッチボルト挿通穴24が形成され、該挿通穴24に合成樹脂製の消音ボックス25の端縁が取付けられている。
前記フロント板受け22の前部にステンレス鋼板製のフロント板26が重合して取付けられ、その両端部にビス孔27が設けられ、その中間位置に矩形のラッチボルト挿通穴28が形成されている。
図中、29は閉扉時のドア1の端部に対向して設置された縦枠で、その中高位置に箱形のトロヨケ30が埋め込まれ、その内部に亜鉛合金ダイカスト製のラッチボルト31の頭部が出入り可能に収容されている。
【0033】
前記ラッチボルト31の頭部は三角柱状に形成され、その一端にラッチボルトシャフト32が突設されている。前記ラッチボルトシャフト32の中間部にカムフランジ33が突設され、その後端部にエンドフランジ34が突設されている。
図中、35はラッチボルト31の頭部に形成した取付溝で、この溝35に緩衝用の合成樹脂製のラッチショック36が装着されている。
【0034】
前記ラッチガイド11に合成樹脂製のラッチカム37の軸筒部37aが回動可能に挿入され、その揺動アーム38の先端部にU字形状の係合溝39が形成されている。
前記係合溝39に、ラッチボルトシャフト32の係合フランジ33と、ラッチボルト31の頭部との間の軸部が摺動可能に挿入され、前記シャフト32は補強段部9のU字状の支持部40に摺動可能に支持されていて、その前部に介挿したラッチスプリング41の弾性によって、前方へ移動可能に付勢されている。
【0035】
前記揺動アーム38の中間部は合成樹脂製のスライド板42の通孔43に挿入され、該スライド板42は両側部にビード状のガイド44を突設していて、該ガイド44を前記ガイド溝19に摺動可能に挿入している。
前記揺動アーム38はラッチボルト31の進退動に同動して揺動可能に支持され、その揺動変位にスライド板42を同動可能に構成している。
図中、45はスライド板42の他側端部に設けた一対の係合孔で、該係合孔42に第1の仮想破損部材である、レバーカム46の先端部に設けた後述の破損設定部を挿入している。
【0036】
前記レバーカム46は、ドア錠3の使用を通じて将来、破断または折損が予想される第1の仮想破損部材として設定され、そのカムアーム48の先端部に角状の破損設定部49を設けている。
前記レバーカム46は亜鉛合金ダイカストによって正面が緩やかなS字形状に成形され、その軸筒部46aの両端に円板状のボス47を突設し、該ボス47を前記通孔18に回動可能に挿入している。
前記軸筒部46aの周面に一対のカムアーム48が離間して突設され、該アーム48の先端部の間にU字状の凹溝48aが形成され、該凹溝48aにラッチシャフト32の後部が摺動可能に収容されている。
【0037】
前記破損設定部49はカムアーム48と同質部材で一体に成形され、その横断面積はカムアーム48の上端部の横断面積よりも狭小な小片に形成され、この破損設定部49を前記係合孔45に挿入している。
前記破損設定部49は、使用による磨耗若しくは変形または疲労によって破断または折損可能にされ、その破断または折損前は、ラッチボルト31の後退変位に伴い、破損設定部49をレバーカム46と同動してスライド板42を後退させ、スライド板42の後端部が後述するロック機構のロックスライドに当接した際、ラッチボルト31の後退を完了させて解錠かつ開扉可能にしている。
この場合、レバーハンドル50はレバーカム46と同動し、正常の操作角度θ
1回動して、開扉可能にしている。実施形態ではレバーハンドル50の正常の操作角度θ
1を約10°に設定している。
【0038】
一方、例えばスライド板42が後退し、その後端部が後述するロック機構のロックスライドに当接し、破損設定部49が破断または折損した際は、破損設定部49が係合孔45との係合を解除し、カムアーム48との同動を解消する。
このため、レバーカム46はスライド板42の停止位置に拘束されることなく、前記正常の操作角度θ
1を越えて異常に回動し、これにレバーハンドル50を同動可能にしている。図中、49aは破損設定部49の破断または折損片で、ドア錠3内に落下可能にされている。
【0039】
実施形態では前記カムアーム48ないし同動するレバーハンドル50の異常な操作角度θ
2(θ
1<θ
2)は約30°に設定され、異常回動後、レバーハンドル50は自重によって前記異常な操作角度θ
2を保持可能にされている。したがって、使用者は前記ドア錠3の異常状態を視覚的に視認可能にされている。
【0040】
図中、51はボス47に貫通形成した角穴で、レバーハンドル50の基端部に設けた角芯棒52が係合している。前記角穴51の各辺の中央部にV字形の係合溝51aが形成され、該係合溝51aに角芯棒52よりも若干小径の角芯棒52aを係合可能にしている。
このように角穴51に大小二種類の角芯棒52,52aを係合可能にし、それらの使用上の互換性を図っている。
この他、図中、53はレバーカム46の基部側周面に突設した張出カムで、その一端にバネ受け54の一端が係合可能に配置されている。
【0041】
前記バネ受け54はバネ受け設置スペ−ス21に前後に摺動可能に配置され、これは合成樹脂によって平面視略コ字形状に成形され、その一端は前記軸筒部46aの周面に係合可能な凹状曲面54aと、張出カム53に係合可能な平坦面54bとを備え、その内部にセットスプリング55を収容している。
前記セットスプリング55の他端は補強段部9の端面に係合して配置され、該スプリング55の弾性を介してレバーカム46を原位置へ復帰回動可能に付勢している。
【0042】
前記バネ受け54の両側に二つの脚片56が対向して形成され、その脚片56の先端部の外面に鋸歯状の係合爪57と係合溝58が前後位置に形成され、これらが錠ケース4の底面と錠カバー5の内面に対向して突設した係合爪59,60に係脱可能に配置されている。
この場合、脚片56に係合爪57または係合溝58の何れか一方を形成しても良く、これに応じて錠ケース4または錠カバー5に係合爪59,60または係合溝を形成することも可能である。
【0043】
前記係合爪57と係合溝58は、バネ受け54が前方移動前の施錠時は、
図4のように係合爪57,57が係合爪59,60の後方に位置して双方の係合が解除され、バネ受け54が前方へ若干移動する解錠時は、
図6のように係合爪57,57の前部の傾斜面が係合爪59,60の背面の傾斜面に密着している。
また、バネ受け54が前方へ移動する非常時は、
図8のように係合爪57,57が係合爪59,60の前部へ移動し、係合溝58,58が係合爪59,60に係合して、バネ受け54の後退動を阻止し、レバーハンドル50の非常姿勢を保持可能にしている。
【0044】
一方、前記ドア錠3内の後部の一側にロック機構61が設けられ、該機構61はドア錠3の施錠状態をロック或いはロック解除する際に使用されている。
すなわち、前記ロック機構61は、前記破損設定部49が破損されずドア錠3が施解錠可能な状況において使用され、該機構61はロックカム62とロックスライド63、およびロックスプリング64から構成され、このうちロックスプリング64は、破断または折損が将来予想される第2の仮想破損部材として設定されている。
前記ロックカム62は合成樹脂によって正面が略逆L字形状に成形され、これは角孔65を貫通形成した軸筒部66を備え、該軸筒部66の一端の小径部を前記通孔17に回動可能に挿入している。
【0045】
前記軸筒部66の周面の両端部に、第1カム67と第2カム68とが直角位置に突設され、該第2カム68にピン69が突設され、該ピン69と前記ピン14とにロックスプリング64の両端に形成した捲回部64a,64bの一方が掛け止められ、該スプリング64の捩り弾性によって軸筒部66をスナップ回動可能に設けている。
【0046】
前記第1カム67の裏面に係合ピン70が突設され、該ピン70がロックスライド63の凹部71に係合可能に配置されている。
前記ロックスライド63は合成樹脂によって異形のブロック状に成形され、その一端に前記凹部71を形成した係合ブロック72が成形されている。
【0047】
前記係合ブロック72に箱状のスライドブロック73が連結され、該ブロック73の中央に縦長の貫通穴74が形成され、該貫通穴74に前記ラッチシャフト32ないしエンドフランジ34を出入り可能に収容している。
図中、75はスライドブロック73の両側面に突設したスライドリブで、それらは錠ケース4に形成したガイド溝20と、錠カバー5に形成した後述のガイド溝に摺動可能に挿入され、76は前記角孔65に嵌合したロックシャフトで、室内側の操作摘み(図示略)に連係している。
【0048】
前記ロック機構61は、ドア錠3の施錠時は
図1および
図9のように、ロックスプリング64の弾性によって、ロックカム62の第1カム67が側片7の内面に押し付けられ、その下方に突設した係合ピン70が、ロックスライド63の凹部71に係合して、ロックスライド63を引き上げ、スライドブロック73の上端面を第1カム67に係合している
このため、ロックスライド63の下端部内面が、エンドフランジ34の外側に係合可能に近接し、ラッチシャフト32の後退を阻止して、ドア錠3の施錠状態をロック可能にしている。
【0049】
次に、前記ロック状態を解除する場合は、ロックスプリング64の弾性に抗してロックシャフト76を時計方向へ回動し、これに第1カム67を同動させてスライドブロック73を押し下げ、かつこれにロックスライド63を同動させて最下位置へ移動させ、第1カム67とスライドブロック73との係合を解除可能にしている。
【0050】
このため、ロックスプリング64がスナップ作動し、その弾性によってロックカム62を時計方向へ回動し、第2カム68が側片7の内面に当接して静止するようにしている。
この状況は
図10のようで、スライドブロック73の貫通穴74がエンドフランジ34の外側へ移動し、ラッチボルトシャフト32の後退域を開放して、前記ドア錠3の施錠状態のロックを解除可能にしている。
【0051】
そして、例えば前記ロック解除後、または解除移行時、ロックスプリング64が内部応力または疲れ等によって折損した場合は、ロックスプリング64の弾性が消失するため、ロックカム62とロックスライド63が前記折損時の状況を維持するようにしている。
すなわち、スライドブロック73の貫通穴74がエンドフランジ34の外側に位置し、ラッチボルトシャフト32の後退域を開放して、前記ドア錠3の施錠状態のロック解除状態を維持し、ラッチボルト31の後退動を可能にしてドア錠3を解錠可能にしている。
【0052】
この他、図中、77,78は錠カバー5の中間部に形成した大小異径の通孔で、前記通孔17,18と対向位置に形成され、軸筒部66の他端の小径部またはボス47を挿入可能にしている。
また、79,80は錠カバー5の中間部と後端部に形成した横長または縦長のガイド溝で、前記ガイド溝19,20と対向して形成され、前記ガイド44またはスライドリブ75を挿入可能にしている。
【0053】
図中、81は錠カバー5の複数個所に形成したビス孔で、前記軸筒部12,13,15,16の対向位置に形成されている。82は前記ボス47の周囲に装着するワッシャ−リング、83,84は錠ケース4および錠カバー5の後端部に形成した切欠溝で、これらに位置決め部材(図示略)が挿入され、ドア1の定位置にドア錠3を取付け可能にしている
この他、図中、85は側片7とフロント板受け22との交差部に形成した補強板である
【0054】
このように構成した本発明のドア錠は既設のドア錠に比べて、錠ケース4や錠カバー5、ラッチシャフト32、カムアーム48、バネ受け56に新規な構成を備え、またスライド板42やラッチカム37の新設部品を要する。
このうち、錠ケース4は、底面の片側端部に鋸歯状の係合爪59を突設し、また錠カバー5の内面の前記係合爪59と対向位置に鋸歯状の係合爪60を突設する。
更に、ラッチシャフト32の中間部周面にカムフランジ33を突設し、第1の仮想破損部材であるレバーカム46のカムアーム48の先端部に、角状の破損設定部49を突設する。
【0055】
前記ラッチカム37を軸筒状に成形し、その軸筒部37aの周面に板状の揺動アーム38を突設し、この揺動アーム38の先端部にU字形状の係合溝39を形成する。
前記バネ受け56を合成樹脂によって平面略コ字形状に成形し、その一端に前記軸筒部46aの周面に係合可能な凹状曲面54aと、張出カム53に係合可能な平坦面54bとを備え、その内部にリセットスプリング55を収容可能にする。
前記バネ受け54の両側に二つの脚片56を対向して形成し、その脚片56の先端部の外面に鋸歯状の係合爪57と係合溝58を前後位置に形成し、これらを錠ケース4の底面と錠カバー5の内面に突設した前記係合爪59,60に係脱可能に配置する。
【0056】
これらの構成部品を使用してドア錠3を組み立てる場合は、錠ケース4と一体のフロント板受け22のラッチボルト挿通穴24に消音ボックス25を装着し、該ボックス25にラッチスプリング41を装着したラッチシャフト32を挿入し、該シャフト32を後方に配置する。
また、ラッチガイド11にラッチカム37の軸筒部37aを挿入し、その揺動アーム38をスライド板42の前部側の通孔43に挿入し、先端の係合溝39にラッチシャフト32を挿入し、揺動アーム38を背後のカムフランジ33に係合可能に配置する。
【0057】
その際、スライド板42のガイド44を錠ケース4のガイド溝19に挿入し、スライド板42をラッチシャフト32と平行に配置して置く。
前記錠ケース4の通孔18にレバーカム46のボス47を挿入し、その一対のカムアーム48の先端の凹溝48aをラッチシャフト32の後部に挿入し、カムアーム48の先端の破損設定部49をスライド板42の係合孔45に挿入する。
【0058】
一方、補強段部9と側片7との間のバネ受け設置スペ−ス21にバネ受け54を収容し、その一対の脚片56を錠ケース4の底面と錠カバー5の内面に摺動可能に配置し、その一端を張出カム53に係合可能に配置する。
また、前記脚片56の外面に形成した係合爪57と係合溝58を、錠ケース4の底面と錠カバー5の内面に突設した係合爪59,60に係脱可能に配置する。
前記バネ受け54の内部にセットスプリング55を収容し、該スプリング55の外端部を補強段部9に係合可能に配置し、該スプリング55の弾性によってレバーカム46を反時計方向へ回動可能に付勢し、ラッチボルト31を外側へ突出可能に付勢する。
【0059】
次に、錠ケース4内の後部の一側にロック機構61を組み付ける。
すなわち、ロック機構61を構成するロックカム62の軸筒部66を、錠ケース4の通孔17に回動可能に挿入し、その第2カム68の軸筒部69にロックスプリング64の一方の捲回部64bを掛け止め、他方の捲回部64aを補強段部8に設けた軸筒部14に掛け止め、ドア錠3の施錠時はロックスプリング64の弾性によって、ロックカム62の第1カム67を側片7の内面に押圧させる。
【0060】
前記第1カム67の裏面に突設したピン69に、ロック機構61を構成するロックスライド63の凹部71を係合可能に配置し、該ロックスライド63を錠ケース4の底面に上下に滑動可能に配置し、その下端部をドア錠3の施錠時に補強段部10の上端部に係合可能に配置する。
前記凹部71を形成したスライドブロック73に貫通穴74を形成し、該貫通穴74をドア錠3の施錠時にスライドシャフト32の後方に係入可能に位置付ける。
【0061】
こうして構成部品を組み付けた錠ケース4の開口側に錠カバー5を取付け、該錠カバー5の外側からビス6を各軸筒部12,13,15,16にねじ込み、錠ケース4に錠カバー5を取付けて閉塞し、ドア錠3を組み付ける。
【0062】
次に、前記組み付けたドア錠3をドア1に組み付ける場合は、ドア1の吊元側と反対側端部に錠取付穴2を形成し、該錠取付穴2にドア錠3を収容する。
そして、フロント板受け22の前部にフロント板26を重合し、それらのビス孔27,23にビス(図示略)を挿入し、これをドア1の端部にねじ込んで、ドア錠3をドア1に固定する。
この後、外側のレバーハンドル50に連係する角芯棒52を角穴51に挿入し、その貫通部に内側のレバーハンドル(図示略)の軸筒部を係合し、それらをビス止めして内外のレバーハンドルを同期回動可能に連結する。
【0063】
一方、ドア1の端部に対向する縦枠29の中高位置にトロヨケ取付穴を形成し、該取付穴にトロヨケ30を収容し、このトロヨケ30の開口側の屈曲片を縦枠29の表面と同一面上に配置し、この外側からビス(図示略)を屈曲片のビス孔に挿入し、これを縦枠29にねじ込んでトロヨケ30を固定する。
【0064】
こうしてドア1に取付けたドア錠3の施錠時は
図1のようで、ラッチボルト31がトロヨケ30内に突出して、ドア1の開扉を阻止している。その際、室外側のレバーハンドル50は水平状態に置かれ、正常な施錠状態を視認することができる。
このようなドア錠3の正常な施錠時に、室内側から操作摘み(図示略)を操作しロック機構61を作動させると、ロックカム62の第1カム67が、室外側から見て通孔17を中心に上向きに回動して側片7の内面に係合し、これに第1カム67に設けた係合ピン70と係合する係合ブロック72を同動させて、ロックスライド63を上動させる。
【0065】
このため、スライドブロック73の下端部内面が、ラッチシャフト32のエンドフランジ34の外側に係合可能に位置し、この状況をロックスプリング64の弾性が維持する。
したがって、ラッチシャフト32の後退動が阻止され、ドア錠3の施錠状態がロックされる。この状況は
図1のようである。
【0066】
前記ドア錠3の施錠時には、レバーカム46のカムアーム48は垂直上向きに置かれ、その下端部の張出カム53が垂直下向きに置かれ、その側端面にバネ受け54の一端が当接し、その最後退位置に置かれている。
この状況は
図2,4のようで、上下一対の脚片56,56に設けた係合爪57と係合溝58が、錠ケース4と錠カバー4にそれぞれ設けた係合爪59,60の後方に位置し、それらの係合を解除している。
【0067】
このような状況の下でドア錠3を解錠し、ドア1を開放する場合は、先ずロック機構61のロック状態を解除する。
その場合は、室内側から操作摘み(図示略)を操作してロック機構61を作動し、ロックカム62の第1カム67を通孔17を中心に下向きに回動し、これに係合ブロック72を同動させてロックスライド63を下動させ、第1カム67と係合ブロック72との係合を解除する。
【0068】
このため、スライドブロック73の下端部が補強段部10に係合し、貫通穴74がエンドフランジ34の外側へ移動して、ラッチボルトシャフト32の後退域を開放し、ロック機構61のロック状態を解除する。この状況は
図2のようである。
そこで、レバーハンドル50を保持して下方へ押し回し、角芯棒52を中心に
図2上時計方向へ回動する。
【0069】
このようにすると、カムアーム48が同方向へ回動してエンドフランジ34に係合し、ラッチシャフト32がラッチスプリング41の弾性に抗して後方へ移動する。
また、破損設定部49がカムアーム48と同動してスライド板42の係合孔45の内面に係合し、該スライド板42を後方へ引き動かし、スライド板42の通孔43に係合したラッチカム38を同方向へ引き動かす。
このため、ラッチカム38が軸筒部37aを中心に反時計方向へ引き回され、その先端部がカムフランジ33に係合して回動角度を規制される。
【0070】
この後、レバーハンドル50を更に下方へ押し回すと、ラッチシャフト32の後端部がロックスライド63の貫通穴74へ移動し、エンドフランジ34が側片7の内面に当接するとともに、ラッチボルト31がトロヨケ30から引き抜かれてドア錠3内へ移動し、解錠する。
また、スライド板42がレバーハンドル50に同動して後方へ引き動かされ、その後端部が貫通穴74の開口縁部に係合して静止する。
【0071】
一方、レバーハンドル50の前記回動に伴って張出カム53が更に同方向へ回動し、バネ受け54をセットスプリング55の弾性に抗して前方へ移動する。
このため、上下の脚片56,56に設けた係合爪57,57の斜面が、錠ケース4と錠カバー4にそれぞれ設けた係合爪59,60の斜面に係合ないし重合し、バネ受け54の当該位置を維持する。
このようにして、レバーハンドル50は施錠時の水平位置から下方へθ
1、実施形態では10°回動したところで解錠する。この状況は
図5のようで、使用者はレバーハンドル50が水平位置から僅かに下方に回動した状態を視認して、通常の正常な解錠状態を確認する。
【0072】
このようなドア錠3の使用に伴い、その構成部品は徐々に磨耗し変形または疲労する。
そして、例えばロック機構61のロックを解除しドア錠3を解錠する際、第1の仮想破損部材であるカムアーム48の先端部、つまり破損設定部49を係合孔45に係合してスライド板42を後退させ、その後端部を貫通穴74の開口縁部に当接させると、破損設定部49に曲げモ−メントが作用し、この曲げモ−メントによって破損設定部49が破断する惧れがある。
【0073】
すなわち、前記破損設定部49に曲げモ−メントやその断面係数に由来する応力が発生し、その応力が破損設定部49に形成された磨耗や変形、クラック、疲労等に助長されて、破損設定部49の許容応力を越えると、破損設定部49が破断する。
その際、スライド板42の後端部は貫通穴74の開口縁部に当接した状態を維持する。この状況は
図7のようである。
実施形態では破損設定部49の横断面の面積は、カムアーム48の上端部の横断面の面積よりも狭小に設定され、破損設定部49はカムアーム48の上端部よりも大きな応力が発生して、破断し易い状況に置かれている。
【0074】
こうして、破損設定部49が破断すると、破断片がドア錠3内に落下し、また破損設定部49を消失したカムアーム48が、スライド板42の直下を擦り抜けて時計方向へ回動し、その上端部がエンドフランジ34に当接して回動を停止する。
この場合、レバーハンドル50は施錠時の水平位置から下方へθ
2、実施形態では30°回動したところで停止する。
この状況は
図7のようで、使用者はレバーハンドル50が水平位置からかなり下方に回動した状態を視認して、レバーハンドル50の非常な位置と非常解錠状態を視認する。
【0075】
一方、レバーハンドル50の前記非常回動に伴って、張出カム53が更に同方向へ回動し、バネ受け54をセットスプリング55の弾性に抗して更に前方へ移動させる。
このため、上下の脚片56,56に設けた係合爪57,57が、錠ケース4と錠カバー4にそれぞれ設けた係合爪59,60の斜面を越えて前方へ移動し、前記係合爪57,57の後端部が前記係合爪59,60の前端に係合し、脚片56,56に設けた係合溝58,58に前記係合爪59,60が係合して、バネ受け54の移動を阻止し、かつその停止位置を保持する。この状況は
図8のようである。
【0076】
したがって、レバーハンドル50は前記非常回動位置を維持し、カムアーム48の破断部の先端部とエンドフランジ34との当接状態が維持され、ラッチシャフト32ないしラッチボルト31の後退変位を維持し、非常解錠状態を保持する。この状況は
図7のようである。
この場合、レバーハンドル50を強制的に押し上げて回動し、カムアーム48をカムフランジ33に係合してラッチシャフト32を前進させない限り、ラッチボルト31はフロント板26から突出し得ない。
【0077】
一方、ドア錠3の使用によっても、前述した第1の仮想破損部材であるカムアーム48の破損設定部49が破断せず、ドア錠3の使用が続行され、その施錠時にロック機構61が操作されて、ロック機構61によるロックとロック解除が形成される。
例えばドア錠3の施錠時に、室内側から操作摘み(図示略)を操作しロック機構61を作動させると、ロックカム62の第1カム67が、室外側から見て通孔17を中心に上向きに回動して側片7の内面に係合し、これに第1カム67に設けた係合ピン70と係合する係合ブロック72を同動させて、ロックスライド63を上動させる。
【0078】
このため、スライドブロック73の下端部内面がラッチシャフト32のエンドフランジ34の外側に係合可能に位置し、この状況をロックスプリング64の弾性が維持する。
したがって、ラッチシャフト32の後退動が阻止され、ドア錠3の施錠状態がロックされる。この状況は
図1および
図9のようである。
【0079】
前記ドア錠3の施錠時には、レバーカム46のカムアーム48が垂直上向きに置かれ、その下端部の張出カム53が垂直下向きに置かれ、その側端面にバネ受け54の一端が当接し、該バネ受け54が最後退位置に置かれる。
この状況は
図2,4のようで、上下一対の脚片56,56に設けた係合爪57と係合溝58は、錠ケース4と錠カバー4にそれぞれ設けた係合爪59,60の後方に位置し、それらの係合を解除している。
【0080】
次に、前記ロック機構61のロック状態を解除する場合は、ロックスプリング64の弾性に抗してロックシャフト76を
図1上時計方向へ回動し、これに第1カム67を同動させてスライドブロック73を押し下げ、ロックスライド63を同動させて最下位置へ移動し、第1カム67とスライドブロック73との係合を解除する。
【0081】
このため、ロックスプリング64がスナップ作動し、その弾性によってロックカム62を時計方向へ回動し、第2カム68を同方向へ回動させて側片7の内面に当接する。
この状況は
図10のようで、スライドブロック73の貫通穴74がエンドフランジ34の外側へ移動し、ラッチボルトシャフト32の後退域を開放して、前記ドア錠3の施錠状態のロックを解除可能にする。
【0082】
そして、例えば前記ロック解除後、または解除移行時にロックスプリング64が内部応力または疲れによって折損した場合、ロックスプリング64の弾性が消失するため、第2カム68が自重によってずり下がり、
図10上反時計方向へ回動して、第1カム67がこれに追従する。
この状況は
図11のようで、この場合においてもロックスライド63の最下位置が維持され、ラッチボルトシャフト32の後退域が開放されて、ドア錠3の解錠状態が維持されている。
【0083】
そして、このようなロックスプリング64の折損時は、レバーカム46が
図11のように解錠時の状態に置かれ、バネ受け56も同様な状態に置かれ、ロック機構61は実質的に解除されているから、ドア錠3の解錠状態が維持され、レバーハンドル50による開扉操作が可能になり、室内の閉じ込めが回避される。
【0084】
一方、例えばドア錠3の施錠時にロック機構61がロックされ、この後ロックスプリング64が折損した場合は、前述のようにロックシャフト76を
図1上時計方向へ回動し、これに第1カム67を同動させてスライドブロック73を押し下げ、ロックスライド63を同動させて最下位置へ移動する。
そして、スライドブロック73の貫通穴74をエンドフランジ34の外側へ移動し、ラッチボルトシャフト32の後退域を開放して、前記ロック機構61のロック状態を解除する。
この場合、バネ受け56は
図4の状態を維持し、レバーハンドル50を回動し得るから、この後レバーハンドル50を回動してドア錠3を解錠すれば開扉可能になる。
【0085】
このように、第1の仮想破損部材であるカムアーム48の破損設定部49が破断せず、ドア錠3を継続して使用し、第2の仮想破損部材であるロックスプリング64がロック時またはロック解除時に折損した場合、前述のようにロックカム62を操作することによってロック解除可能になり、室内の閉じ込めを回避し得る。
【0086】
図12および
図13は前述したドア錠3の基本形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部分に同一の符号を用いている。この基本形態は前述のラッチカム37とスライド板42、およびレバーカム46の破損設定部49を省略し、部品点数の低減とレバーカム46の構成および製作の容易化を図り、構成の簡潔化と組み立ての容易化、並びに製作コストの低減を図っている。
【0087】
この基本形態におけるドア錠3の施錠時は、ラッチボルト31がラッチスプリング41によって前方へ付勢され、ラッチシャフト32が前方へ突出していて、ラッチボルト31がトロヨケ(図示略)内に突出しドア1の閉鎖状態を維持している。
そして、ラッチシャフト32の後端部のエンドフランジ34に、破損設定部49を有しないカムアーム48の先端部が係合し、レバーカム46の角孔51に角芯棒52を嵌合したレバーハンドル50が水平に位置し、レバーカム46と一体の張出カム53にバネ受け54の一端が係合している。
【0088】
この状況は
図12のようで、ラッチカム37とスライド板42を有し、レバーカム46の破損設定部49を備えた
図2の場合と同様である。また、バネ受け54の内部は
図12のようで
図4と同様であり、バネ受け54が前方へ移動可能に形成される。
また、ロック機構61のロック解除時は前述と同様で、スライドブロック73の貫通穴74がエンドフランジ34の外側へ移動し、ラッチボルトシャフト32の後退域を開放して、前記ドア錠3の施錠状態のロックを解除している。
【0089】
なお、ロック機構61のロック時は前述と同様で、スライドブロック73の下端部内面がエンドフランジ34の外側に係合可能に位置し、ラッチボルトシャフト32の後退域を占有して、前記ドア錠3の施錠状態をロックしている。この場合もラッチカム37とスライド板42を有し、レバーカム46の破損設定部49を備えた
図1の場合と同様である。
【0090】
このような
図12の状況からドア1を開放する場合は、レバーハンドル50を保持してラッチスプリング41の弾性に抗して同図上時計方向へ回動し、ラッチボルト31をトロヨケ(図示略)から引き抜いてドア錠3の内部へ移動し、ラッチボルトシャフト32を後退させてエンドフランジ34を側片7の内面に当接させる。
【0091】
この場合のラッチボルトシャフト32の後退ストロ−クは、ラッチカム37とスライド板42を有し、破損設定部49を破断したレバーカム46の後退ストロ−クと同様である
したがって、レバーハンドル50の回動角度は、ラッチカム37とスライド板42を有し、破損設定部49を破断したレバーカム46の操作角度θ
2、すなわち前記非常解錠角度と同様である。
【0092】
こうしてレバーハンドル50を回動すると、張出カム54が同方向へ回動し、バネ受け54がセットスプリング55の弾性に抗して前方へ移動する。
このため、上下の脚片56,56に設けた係合爪57,57が、錠ケース4と錠カバー4にそれぞれ設けた係合爪59,60の斜面を越えて前方へ移動し、前記係合爪57,57の後端部が前記係合爪59,60の前端に係合し、脚片56,56に設けた係合溝58,58に前記係合爪59,60が係合して、バネ受け54の移動を阻止し、かつその停止位置を保持する。
【0093】
この状況は前記
図8と同様で、レバーハンドル50は前記回動位置を維持し、ラッチシャフト32ないしラッチボルト31の後退変位を維持し、解錠状態を保持する。
この場合、レバーハンドル50を強制的に押し上げて回動し、カムアーム48をカムフランジ33に係合してラッチシャフト32を前進させない限り、ラッチボルト31はフロント板26から突出し得ない。
【0094】
このように前記基本形態は、前述の実施形態のレバーカム46やレバーハンドル50、バネ受け54、およびその係合爪57と係合溝58、錠ケース4と錠カバー5を共用しており、これにスライド板42やラッチカム37、レバーカム46の先端部の破損設定部49を新設することで、前述の実施形態に対応して転用し得るから、双方の構成を合理的かつ容易に利用することができ、双方の構成を選択的に利用し得る。