(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484219
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】細胞ベースの薬物スクリーニングアッセイの方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20190304BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20190304BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20190304BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/68
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-509438(P2016-509438)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2016-518129(P2016-518129A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2014058152
(87)【国際公開番号】WO2014173907
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】13165419.6
(32)【優先日】2013年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】312013974
【氏名又は名称】キュー・ジェル・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】QGEL SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッツィ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコー,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】リュートルフ,マティアス
【審査官】
関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−501609(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0004414(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/131642(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/039087(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0120070(US,A1)
【文献】
特表2004−533500(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/046797(WO,A1)
【文献】
Nature Protocols,2009年,Vol.4, No.3,pp.309-324
【文献】
Biomaterials,2010年,Vol.31,pp.8494-8506
【文献】
再生歯誌,2005年,Vol.2, No.3,pp.166-181
【文献】
Journal of Biomolecular Screening,2004年,Vol.9, No.4,pp.273-285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1
G01N33
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞ベースの薬物スクリーニングアッセイの方法であって、
−培養環境において細胞集団を培養するステップと、
−細胞の経時的な生理学的変化及び挙動を確認するために、前記細胞型、前記細胞の生理学的特性、形成組織の生理学的特性、原薬の作用様式、及び前記培養環境のうちの少なくとも1つに依存して少なくとも2つの監視時点を定義する、プロファイル決定ステップと、
−プロファイル決定した生理学的特性に基づいて、少なくとも1つの処理時点で同じ細胞型の培養細胞に原薬を適用する、スクリーニングステップと、
−少なくとも前記2つの監視時点で細胞または形成組織に対する前記原薬の効果を監視するステップと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記監視時点が、
−特定の細胞の早期の時点である、前記環境において前記細胞を培養してから4〜7日後、
−進行期の時点である、前記環境において前記細胞を培養してから14〜17日後、
かつ
選択された生理学的特性の有無によって定義される時点、
及び
−予め定められた薬物不使用の回復期後に薬物有効性を測定する時点、からなる群から選択される、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
細胞増殖の監視が、前記薬物適用の終了後1〜7日以上続く、請求項1または2に記載の前記方法。
【請求項4】
細胞が、ある環境において培養され、前記環境が、三次元マトリックスへの重合を可能にする、構造化合物及びリンカー化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項5】
前記三次元環境が、前記被包された細胞の三次元成長を促進する、請求項4に記載の前記方法。
【請求項6】
前記三次元環境が、ゲル鋳込デバイスまたは標準細胞培養デバイスである受容器において鋳込される、請求項4または5に記載の前記方法。
【請求項7】
前記細胞が、任意の細胞型、細胞株、分化細胞、ならびに癌細胞からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項8】
前記細胞が、前記成長が前記薬物処理によって促進される細胞である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項9】
前記原薬が、
(i)任意の化学、天然、または合成物質、及び既知の薬物スクリーンの任意の物質、または
(ii)(i)に従う物質の任意の組み合わせ、
(iii)溶液中の、または任意の担体、ナノ粒子、もしくは送達デバイスと組み合わされるかいずれかの、(i)または(ii)に従う任意の物質(複数可)、からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項10】
細胞特性の監視が、
代謝活性、
及び/またはフローサイトメトリー、
及び/またはDNA量、
及び/またはタンパク質定量、
及び/または細胞計数、
及び/または画像に基づく分析、
及び/または低酸素及び血管形成マーカのレベル、
及び/またはリボ核酸(RNA)レベル、
及び/またはタンパク質発現レベル、
及び/または質量分析法、
及び/または免疫組織化学的検査によってアッセイされる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項11】
原薬の最大耐量が、所与の細胞型に対して決定される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項12】
原薬の最小有効量が、所与の細胞型に対して決定される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項13】
(i)適用された物質に関する分化細胞の初期化と、
(ii)適用された物質に関する幹細胞の分化と、を評価するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の前記方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前提部に従う培養環境において培養された細胞における薬物スクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞ベースのスクリーニング方法は、前臨床薬物開発の早期において、例えば、新抗癌剤である新たな化合物の有効性及び毒性等の作用様式を評価するための意思決定プロセスにおける情報の重要な供給源を表わす(Michelini,Cevenini et al.,(2010)"Cell−based assays:fuelling drug discovery."Anal Bioanal Chem 398(1):227−238.;An and Tolliday(2010),"Cell−based assays for high−throughput screening."Mol Biotechnol 45(2):180−186;Sharma,Haber et al.,(2010)"Cell line−based platforms to evaluate the therapeutic efficacy of candidate anticancer agents."Nature Reviews Cancer 10:241−253。)。
【0003】
薬物開発におけるこれらの重要な役割を考慮すると、過去10年間により生理学的に関連性のある細胞ベースのアッセイの開発に向けた多数の新規手法が研究された(Yamada and Cukierman(2007),"Modeling tissue morphogenesis and cancer in 3D."Cell 130(4):601−610;Pampaloni, Reynaud et al.(2007);"The third dimension bridges the gap between cell culture and live tissue."Nat Rev Mol Cell Biol 8(10):839−845)。例えば、癌細胞生物学及び抗腫瘍薬物開発において、相次ぐ科学的根拠は、三次元構造(三次元培養モデル)において癌細胞の器質化及び成長を可能にする方法が、平坦な可塑性表面の従来型培養(二次元培養モデル)と比較して、特に、細胞成長、細胞情報伝達、及び遺伝子発現に関してインビボで観察される挙動をより密接に反映することを提案している(Abbott(2003)."Cell culture:Biology’s new dimension."Nature 424(6951):870−872,Kunz−Schughart,Freyer et al.(2004),"The use of 3−D cultures for high−throughput screening:the multicellular spheroid model."J Biomol Screen 9(4):273−285;Bissell(2007),"Modelling molecular mechanisms of breast cancer and invasion:lessons from the normal gland."Biochem Soc Trans 35(Pt 1):18−22.;Friedrich,Seidel et al.(2009)."Spheroid−based drug screen:considerations and practical approach."Nat Protoc 4(3):309−324;Debnath and Brugge(2005),"Modelling glandular epithelial cancers in three−dimensional cultures."Nat Rev Cancer 5(9):675−688)。
【0004】
いくつかの技術を用いてこれらのより生理学的三次元培養モデルを生成して抗癌剤を試験した(Nyga 2011,Cheema et al.(2011),"3D tumour models:novel in vitro approaches to cancer studies"J.Cell Commun.Signal.5,239−248)。最も一般的な三次元技術は、(i)細胞被包のための天然(Weaver,Petersen et al.(1997),"Reversion of the malignant phenotype of human breast cells in three−dimensional culture and in vivo by integrin blocking antibodies."J Cell Biol 137(1):231−245.;Fiebig,Maier et al.(2004),"Clonogenic assay with established human tumour xenografts:correlation of in vitro to in vivo activity as a basis for anticancer drug discovery."Eur J Cancer 40(6):802−820;Krausz,de Hoogt et al.(2013),"Translation of a tumor microenvironment mimicking 3D tumor growth co−culture assay platform to high−content screening."J Biomol Screen 18(1):54−66)または合成(Loessner,Stok et al.(2010)."Bioengineered 3D platform to explore cell−ECM interactions and drug resistance of epithelial ovarian cancer cells."Biomaterials 31(32):8494−8506;Sieh,Taubenberger et al.(2012),"Phenotypic characterization of prostate cancer LNCaP cells cultured within a bioengineered microenvironment."PLoS One7(9):e40217.;Yang and Zhao (2011)."A 3D model of ovarian cancer cell lines on peptide nanofiber scaffold to explore the cell−scaffold interaction and chemotherapeutic resistance of anticancer drugs."Int J Nanomedicine 6:303−310)由来のゲルマトリックス、(ii)細胞播種のための剛性高分子三次元足場(Fischbach,Chen et al.(2007),"Engineering tumors with 3D scaffolds."Nat Methods 4(10):855−860;Knight,Murray et al.(2011)."Alvetex(R):polystyrene scaffold technology for routine three dimensional cell culture."Methods Mol Biol 695:323−340)、または(iii)三次元癌細胞構造(例えば、スフェロイド、組織)を成長させるためのマトリックス不使用の細胞集合プロセス(国際公開第2010/031194 Al号;(Friedrich,Seidel et al.(2009),"Spheroid−based drug screen:considerations and practical approach."Nat Protoc4(3):309−324;Karlsson,Fryknas et al.(2012)."Loss of cancer drug activity in colon cancer HCT−116 cells during spheroid formation in a new 3−D spheroid cell culture system."Exp Cell Res 318(13):1577−1585;Tung,Hsiao et al.(2011)."High−throughput 3D spheroid culture and drug testing using a 384 hanging drop array."Analyst 136(3):473−478;Lama,Zhang et al.(2013)."Development,validation and pilot screening of an in vitro multi−cellular three−dimensional cancer spheroid assay for anti−cancer drug testing."Bioorg Med Chem 21(4):922−931)のいずれかを使用する。
【0005】
疾患進行における変動を考慮に入れることができないと、偽陽性薬物候補(ヒトにおいて奏功しないであろう薬物)を選択し、偽陰性薬物候補(ヒトにおいて奏功していたであろう薬物)を廃棄する確率を増加させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、既知の薬物スクリーニング方法の不利点を回避し、具体的に、異なる重要な生理学的インビボ疾患状態を示すプロファイル決定した細胞で試験された薬物活性のデータを提供することが、本発明の目的である。本目的は、請求項1に従う薬物スクリーニング方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従うと、細胞ベースの薬物スクリーニングアッセイは、薬物の作用様式を理解するために、細胞ならびにその経時的な生理学的変化及び挙動を考慮に入れる。このことは、細胞型、培養環境、細胞の生理学的特性、細胞集団の生理学的特性、形成組織の生理学的特性、または原薬の種類、例えば、原薬の作用の標的とする機構、に依存して少なくとも2つの監視時点を決定することを含む。原薬は、少なくとも1つの処理時点で培養細胞に適用される。細胞成長動態、挙動、及び/または生理学的特性における薬物の種類の効果は、少なくとも2つの当該監視時点で監視される。本時点は、具体的な瞬間だけではなく特定の期間でもあり得る。
【0008】
培養環境は、特定の細胞及び/または形成組織に対する細胞と細胞及び細胞とマトリックスの相互作用を含む、具体的な物理的、生物学的、及び生化学的特徴を考慮に入れる生理学的に関連性のある微小環境を含む。
【0009】
少なくとも2つの時点、例えば「早期」及び「進行期」時点での細胞増殖の監視は、細胞成長及び/もしくは生理学的特徴の発達中の2つの段階、ならびに/または薬物処理の効果の比較を可能にし得る。細胞成長環境及び生理学的特徴は、所与の細胞型または薬物に調整される必要があり得る。監視の時点は、したがって、好ましくは、薬物の作用モードの観点から、例えば癌の早期または進行期に関連性のある情報を提供するように等で選択され、特定の癌では、好ましくは、生理学的に関連性のある環境で培養してから4〜7日後を「早期」、及び好ましくは、生理学的に関連性のある環境で培養してから14〜17日後を「進行期」と見なしてもよい。「進行期」はまた、特徴の具体的な生理学的特性、例えば、低酸素または細胞成長動態もしくは細胞構成の変化の有無によっても定義され得る。
【0010】
細胞の監視は、薬物適用の終了後1〜7日以上続いてもよい。薬物不使用の期間の開始時及び終了時は、特定の細胞型及び薬物に対して決定されなければならない。細胞が薬物処理から回復できるため、本期間は、「回復期」と名付けられる。第1及び/または第2の薬物適用後の回復に関連性のある時点を含むことは、効果的な薬物または細胞に即時効果を有しない薬物の特定のために必要不可欠であり得る。
【0011】
好ましい実施形態は、「早期」の処理及び「回復期」を含むまたは含まない少なくとも2つの関連する時点の監視、または「進行期」の処理及び「回復期」を含むまたは含まない少なくとも2つの関連する時点の監視、または「早期」及び「進行期」の処理及び「回復期」を含むまたは含まない少なくとも2つの関連する時点の監視を含むプロセスを指し得る。
【0012】
細胞培養に使用される環境は、細胞の微小環境を模倣する基質マトリックスまたは培地、好ましくは、構造化合物及び重合を容易にするリンカー化合物からなる三次元マトリックスを含み得る。構造化合物は、不飽和末端基、好ましくは、ビニル基を含む多分岐状ポリエチレングリコールであり得る。リンカー化合物は、このリンカー化合物によって架橋される構造化合物の重合を可能にする少なくとも2つのシステインまたはチオール基を有する、ペプチドを含む。三次元マトリックスは、好ましくは、欧州公開第2 561 005号に記載されるマトリックス組成物を含む。
【0013】
細胞培養に使用される環境は、細胞が当該環境に播種された場合、(i)多細胞性エンティティを形成する単一細胞、または(ii)多細胞性エンティティを形成する多細胞の三次元成長を促進し得る。優先的に、細胞は、成長して細胞コロニーまたは細胞集団を形成する。例えば、癌細胞のコロニー配列は、外部細胞が容易に到達可能であるのと同時に、そのコアにある細胞を隠蔽する、腫瘍の三次元配列を模倣する、スフェロイドを形成する。
【0014】
確定された硬化度及び適切な生理学的及び生物学的特性を有する三次元環境を生成するために、受容器または標準細胞培養デバイス、好ましくは、384ウェルプレートが使用され得る。当該環境及び細胞は、次いで細胞培養インキュベータに設置され得る細胞培養培地を有するデバイス内に分注され得る。細胞増殖及び活性の監視は、受容器またはデバイスと互換性のある画像及び知覚性設備、好ましくは、自動化された設備を用いて測定されてもよく、出力監視データの再現性を最大化し得る。
【0015】
当該環境において培養するために使用される細胞は、任意の生物の任意の細胞型、インビトロで培養された細胞または細胞株、生物及び優先的に結腸癌細胞、膵臓癌細胞、及び卵巣癌細胞等の生物の癌細胞に由来する分化または幹細胞だけではなく、成長が促進される健康な細胞であってもよい。
【0016】
培養細胞に適用される原薬は、任意の化学、天然、または合成物質、既知の薬物スクリーンの任意の物質、及び以前に抗癌剤として認識された物質からなる群から選択される任意の物質であってもよい。原薬は、液体形態中に適用されてもよく、その液体は、粉末として、丸剤として、または担体中に被包されたもの、好ましくは、ナノ粒子として原薬を含む有機溶媒または水性緩衝液であり得る。
【0017】
細胞成長動態及び活性を監視するアッセイ読み出し様式は、好ましくは、(i)代謝活性、好ましくは、Alamar Blue(登録商標)、フローサイトメトリー、デオキシリボ核酸(DNA)含有量、タンパク質定量、細胞計数、画像に基づく分析、遺伝子発現レベル、質量分析法、ラベルベースの測定法(レポーター遺伝子技術、共鳴エネルギー転移、タンパク質断片またはスプリット相補性アッセイ等)からなる群から選択される任意のもの、またはラベルを含まないベースの測定法(電気バイオセンサ/インピーダンスシステム、光学的バイオセンサシステム、表面プラズモン共鳴システム、超音波バイオセンサシステム、及び電気活性の熱量測定、変化を活用するシステム等によって、または(ii)上述の監視アッセイの任意の組み合わせによって実行され得る。細胞増殖の監視は、細胞形状及び組成への薬物誘発性効果についての直接情報を提供する。
【0018】
他の生理学的及び生物学的特性(例えば、低酸素及び/または血管形成マーカ)を決定するためのアッセイ読み出し様式は、好ましくは、(i)リボ核酸(RNA)レベル、タンパク質発現レベル、質量分析法、免疫組織化学的検査、画像に基づく分析、プロテオミクス方法からなる群から選択される任意のものによって、または(ii)上述の監視アッセイの任意の組み合わせによって実行され得る。
【0019】
適用される原薬の最大耐量または濃度は、所与の細胞及び細胞型に対して決定され得る。細胞、細胞型、または組織の許容される薬物量を決定することは、疾患細胞、好ましくは、癌細胞を標的とする場合、適用される薬物量の調整を可能にする。
【0020】
適用される原薬の最小有効量は、所与の細胞及び細胞型に対して決定され得る。細胞、細胞型、または組織の最小有効量を決定することは、疾患細胞、好ましくは、癌細胞を標的とする場合、適用される薬物量の調整を可能にする。
【0021】
本発明の別の目的は、(i)疾患細胞を治癒または死滅させること、健康な細胞を維持すること、及び健康な細胞が薬物処理によって疾患の状態に入るように誘発すること、または(ii)細胞の初期化及び/または分化を監視する方法の使用を提供する。
【0022】
適用される原薬に関する幹細胞または前駆体細胞への分化細胞の初期化は、好ましくは、Alamar Blue(登録商標)、フローサイトメトリー、デオキシリボ核酸(DNA)量、タンパク質定量、細胞計数、画像に基づく分析、遺伝子発現レベル、質量分析法、レベルに基づく測定法(レポーター遺伝子技術、共鳴エネルギー転移、タンパク質断片またはスプリット相補性アッセイ等)の代謝活性からなる群から選択される任意のもの、またはレベルを含まないものに基づく測定法(電気バイオセンサ/インピーダンスシステム、光学的バイオセンサシステム、表面プラズモン共鳴システム、超音波バイオセンサシステム、及び電気活性の熱量測定、変化を活用するシステム等によって、または(ii)上述の監視アッセイの任意の組み合わせによってアッセイされ得る。分化細胞は、任意の細胞、細胞型、細胞培養由来の細胞、または特定の組織由来の細胞であり得る。ここで、適用される原薬は、初期化プロセスをトリガし得る。
【0023】
本方法は、(i)Alamar Blue(登録商標)、フローサイトメトリー、低酸素及び血管形成マーカ、リボ核酸(RNA)レベル、タンパク質発現レベル、質量分析法、DNA量、タンパク質定量、細胞計数、画像に基づく分析、及び免疫組織化学的検査を用いる代謝活性からなる群から選択される任意のものを含むか、または(ii)上述の監視アッセイの任意の組み合わせによって、細胞成長動態及び活性に従う、適用される原薬に関する分化細胞への幹細胞の分化を分析するために使用され得る。ここで、適用される原薬は、分化プロセスをトリガし得る。
【0024】
本発明の更なる態様及び詳細は、以下に提供される図及び実施例から明らかとなり、それらは、次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】細胞コロニープロファイル決定及び三次元マトリックスの結腸癌細胞(HCT116)の低酸素条件を示すグラフ及び画像である。
【
図1B】細胞コロニープロファイル決定及び三次元マトリックスの結腸癌細胞(HCT116)の低酸素条件を示すグラフである。
【
図1C】細胞コロニープロファイル決定及び三次元マトリックスの結腸癌細胞(HCT116)の低酸素条件を示す画像である。
【
図2】三次元生理学的微小環境ならびに従来の二次元単層培養の薬物処理スケジュールの決定を示す概略図である。
【
図3A-1】
図2の決定された薬物処理スケジュールを用いた薬物の二次元対三次元スクリーニングを比較するグラフである。
【
図3A-2】
図2の決定された薬物処理スケジュールを用いた薬物の二次元対三次元スクリーニングを比較するグラフである。
【
図3B】
図2の決定された薬物処理スケジュールを用いた薬物の二次元対三次元スクリーニングを比較するグラフである。
【
図4A】「早期」及び「進行期」処理後の用量依存薬物有効性プロファイルの決定を示すグラフである。
【
図4B】「早期」及び「進行期」処理後の用量依存薬物有効性プロファイルの決定を示すグラフ及び画像である。
【
図5】処理終了時の直後、及び薬物不使用の期間の後に測定した薬物活性の有効性を比較するグラフである。
【
図6】三次元環境及び従来の2D細胞培養モデルにおいて成長させたHCT116細胞のコロニーに対する5−フルオロウラシル薬物有効性をまとめた表である。
【
図7】結腸癌細胞(HCT116)の二次元成長を示すグラフである。
【
図8A】結腸癌細胞、膵臓癌細胞、及び卵巣癌細胞の三次元環境における低酸素マーカのそれぞれの成長及び遺伝子発現プロファイルの比較を示すグラフ及び画像である。
【
図8B】結腸癌細胞、膵臓癌細胞、及び卵巣癌細胞の三次元環境における低酸素マーカのそれぞれの成長及び遺伝子発現プロファイルの比較を示すグラフである。
【
図8C-1】結腸癌細胞、膵臓癌細胞、及び卵巣癌細胞の三次元環境における低酸素マーカのそれぞれの成長及び遺伝子発現プロファイルの比較を示すグラフである。
【
図8C-2】結腸癌細胞、膵臓癌細胞、及び卵巣癌細胞の三次元環境における低酸素マーカのそれぞれの成長及び遺伝子発現プロファイルの比較を示すグラフである。
【
図9】独立した処理スケジュールを用いた二次元及び三次元細胞培養のための成長プロファイルを示すグラフである。
【
図10】ゲムシタビンで処理した膵臓癌細胞を示すグラフである:処理終了時の直後、及び薬物不使用の回復期間の4〜7日後に測定した薬物活性の比較。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、薬物処理を行わない三次元生理学的微小環境の結腸癌細胞(HCT116)の成長プロファイルを示す。A)では、細胞は、単一細胞として被包された場合、細胞のコロニーまたはミニ腫瘍を模倣する癌スフェロイドとして成長する。スフェロイドのサイズは、経時的に増加する。左側のパネルは、異なる時点で形成されたスフェロイドのサイズの分布を定量するヒストグラムとして表わされた画像に基づく分析を示す。癌細胞のスフェロイドの径サイズは、成長の第4日目の35μmから第21日目の155μmに増加した。右側のパネルは、成長する癌細胞の蛍光 カルセインベースのライブ染色画像を示す。三次元マトリックスにおける癌細胞スフェロイドの成長動態を、B)に示す。Alamar Blue(登録商標)による代謝活性及びフローサイトメトリーによる細胞計数を示し、両者とも、初期に迅速かつ続いて平らになる細胞成長動態を特徴とする同様の細胞成長プロファイルを示す最適化アッセイ条件で実施する。C)では、細胞スフェロイドを、低酸素条件で、ライブ細胞の場合、カルセイン(calceine)(緑色)で、細胞の場合、ハイポキシセンス(hypoxisense)(赤色)で、染色した。この癌細胞株では、赤色で特定された低酸素(通常、細胞スフェロイドの中央にある)を、培養の第14日目ごろから観察した。赤色染色を呈している無彩色スケールのスフェロイドの可視化については、点線円で示す。赤色染色は、スフェロイドの中央部に最も集中している。
【0027】
癌細胞のプロファイル決定は、成長の異なる時点での癌細胞スフェロイドの生理学的特性(例えば低酸素)を特定及び研究することを可能にするため、本発明において重要なステップである。重要なことには、これらの特性は、(
図8に示されるように)腫瘍組織の由来に強力に依存する。加えて、腫瘍の薬物有効性は、(
図3及び4に示されるように)腫瘍生理学の特徴に強力に依存する。本発明における癌細胞スフェロイドのプロファイル決定した生理学的特性に基づいて、薬物スクリーニングのための処理時点は、その後、インビボの腫瘍の異なる段階を模倣するように適合され得る。細胞増殖の異なる段階及び生理学的特性(例えば、低酸素条件)を示すゲルマトリックスのスフェロイドは、
図1及び8に示される。
【0028】
図2は、プロファイル決定した細胞成長及び癌の生理学的特性に基づく、薬物処理スケジュール及び読み出し時点の決定を示す。実施例を、三次元マトリックスの細胞成長のための「早期」及び「進行期」薬物処理を含んで提供する。異なる癌段階の条件を特定し、
図1にあるように、プロファイル決定アッセイに由来し、薬物スクリーニングのためのスケジュールを、それに合うように決定する。ここで、三次元マトリックスにおいて培養された細胞のための異なる癌段階を、「早期」及び「進行期」癌処理として決定する。
【0029】
「早期」は、読み出しのための2つの時点を含む。第7日目の第1の時点は、薬物処理の終了時であるが、第7日目の第2の時点は、薬物不使用の回復期に続く。「進行期」は、読み出しのための2つの時点を含む。第17日目の第1の時点は、第2の(「早期」から独立している)薬物処理期の終了時である。第21日目の第2の時点は、薬物不使用の回復期に続く。更なる時点の測定は、処理の開始前及び/または異なる薬物不使用の回復期の後に実施することができる。
【0030】
第4〜7日目である「早期」には、35μmの径を有する小さいスフェロイド、高度に増殖性の細胞(
図9に示される)を示すが、低酸素マーカ発現または他の生化学的手段の測定値を用いて決定された低酸素条件を示さない(
図1C)。反対に、「進行期」は、155μmの径を有する大きいスフェロイドの存在、低細胞増殖(
図9に示される)、及び低酸素条件の存在を示す(
図1C)。いずれの場合においても、読み出しは、即時の薬物有効性を試験するために処理終了時直後に、ならびに「ミニ腫瘍」の再発及び/またはゲムシタビンで観察される場合のような遅延した薬物効果を試験するために4日間の薬物不使用の期間の後に、実施される(
図10)。
【0031】
参照としての二次元アッセイについては、通常、第1日目〜第4日目の対数的増殖期内に薬物を用いて試験される(
図9)。
【0032】
図3は、結腸癌HCT116細胞のコロニーにおける
図2に示されるような処理スケジュールを用いる薬物スクリーニングキャンペーンを示す。「ヒット」生成の実施例としては、市販の薬物ライブラリ(Prestwick)からの薬物の選択を、使用する。A)には、代謝読み出し(AlamarBlue(登録商標))によって測定された癌細胞における60の薬物の効果を、示す。化合物を、10μΜの濃度で3連で試験する。平均値及び標準偏差を、ここに示す。薬物は、3連の実験結果がHIT閾値を超える場合のみ「ヒット」と見なす(平均+/−3×負の対照の標準偏差。薬物を欠いているDMSOビヒクルを有する条件を、負の対照として使用する)。上部のチャートは、二次元において成長した癌細胞及び三次元マトリックスに包埋された癌細胞の早期処理を直接比較したものを示し、下部のチャートは、三次元マトリックスの包埋細胞の「早期」及び「進行期」処理の比較を示す。これは、「早期」及び「進行期」処理を用いて、偽陽性薬物の特定が効率的に回避されて、ヒットの数を減少させることを示している。
【0033】
図3Bでは、細胞コロニー、具体的には「早期」及び「進行期」処理の直後に測定された癌スフェロイドの径サイズの分布を定量する画像に基づく分析を、10μΜの薬物濃度での
図3Aからの薬物の選択の実施例として示す。「早期」及び「進行期」の終了時に代謝の読み出しを用いて決定したとき、黒く塗りつぶされた曲線は、「ヒット」に対応し、塗りつぶされていない曲線は、「ヒットなし」である(正の対照:硫酸銅で処理した細胞;負の対照:DMSOで処理した細胞)。
【0034】
図4では、
図2において選択された「ヒット」のAlamar Blue(登録商標)による読み出しとしての、結腸癌HCT116細胞のコロニーに対する例示の5−フルオロウラシル(5−FU)半数阻害濃度(IC50)の決定を示す。読み出しは、三次元マトリックスの細胞の「早期」及び「進行期」処理の直後に実施した。用量依存薬物有効性を、
図4Aに示す。矢印は、「早期」から「後期」処理まで、より高いIC50濃度へのシフトを示す。このことは、5−FUが進行期癌の治療においてあまり強力でないことを示し、
図3にあるように「進行期」薬物スクリーニングにおけるこの薬物に対して「ヒットを獲得しなかった」ことを確認している。二次元参照アッセイを用いて獲得されたIC50曲線は、本発明(三次元)の「早期」処理条件にしばしば類似している。このことを、
図3A(上にあるパネル)の2つのアッセイ方法を使って観察された大部分の「ヒット」の薬物スクリーニング相関においても示す。異なる反復実験における決定されたIC50濃度のまとめを、
図6に提供する。
図4Bでは、選択された薬物濃度IC50及び1mMで「早期」及び「進行期」処理後に三次元マトリックスにおいて成長させた癌細胞スフェロイドの画像に基づく分析を示す。上にあるパネルはスフェロイドのサイズ分布を示し、下にあるパネルはカルセインベースの蛍光画像に対応する。代謝読み出し分析においても観察されたように(
図3A及び4A)、5−FUは「早期」においてスフェロイド成長の強力な阻害を示したが、「進行期」処理では示さなかった。これらの結果は、膵臓癌を治癒するために臨床において単剤としてもはや用いられない5−FUの臨床的使用と一致している。
【0035】
図5は、処理の終了時の直後及び「回復」と名付けられた薬物不使用の期間の後の薬物有効性の比較を示す。ここで、結腸癌細胞のコロニーにおける5−FU処理を、一実施例として提供する。「早期」(左側のパネル)及び「進行期」処理スケジュール(右側のパネル)に対する用量依存有効性プロファイルを、
図2に記載の処理スケジュールに従って4日間の薬物不使用の回復期の前及び後に測定した。有意差は、IC50曲線及び濃度において薬物不使用の期間の前及び後に観察されなかった(
図6)。興味深いことに、膵臓由来の別の癌細胞及び薬物ゲムシタビンを用いる場合、薬物不使用の回復期は、本発明を用いる薬物有効性の検出に対して重要なことであった(
図10)。本発明は、適用された薬物の効果が薬物不使用の期間後に検出可能な場合であっても、薬物の特定を可能にする。
【0036】
図6は、本発明及び結腸癌細胞を使った参照二次元細胞培養アッセイを用いて決定した薬物5−FUのIC50濃度のまとめを示す。3つの独立した反復実験の結果を示す。
【0037】
癌細胞は、通常、細胞供給元及び化学文献によって説明されるように組織培養可塑性において二次元単層として成長する。
【0038】
図7では、結腸癌HCT116細胞の二次元の環境における成長を示す。コンフルエンス状態に達した時点で、全体的な組織培養物の可塑性表面は細胞に覆われ、細胞は、空間制限に起因して正常な成長を停止する。不利なことに、インビトロ状況は、生理学的インビボ状態を適切に反映しない(例えば、二次元法における細胞層対インビボまたは三次元培養法における三次元の細胞凝集;二次元のインビトロでの栄養分及び酸素供給に曝露された全ての細胞対インビボまたは三次元培養法におけるスフェロイド内部の細胞に対する低栄養分及び低酸素状態)。
【0039】
図8では、異なる癌の種類からの細胞は、スフェロイドのサイズ及び成長が凝集性細胞の数に依存する細胞集合に基づく他の三次元細胞培養法とは反対に、具体的には三次元環境の単一細胞から成長しているときコロニー成長及びインビボの生理学的特性における重要なことを反映するスフェロイド形成における有意差を示す。左側の細胞の画像は、第14日目のものである。3つの癌細胞株、結腸HCT116、膵臓Panc−1、及び卵巣癌細胞を比較した。第14日目の三次元マトリックスにおいて成長したスフェロイドのカルセインベースの蛍光画像を、A)の左側に示す。右側には、第14日目に癌細胞によって形成されたスフェロイドのサイズの分布を定量するヒストグラムとして表わされた画像に基づく分析を示す。一般的には、卵巣癌細胞が最大の癌細胞スフェロイドを、膵臓細胞が最小の癌細胞スフェロイドを、試験された癌細胞のセットから形成し、それをインビボ腫瘍成長と比較できる。B)では、異なる癌細胞のスフェロイド成長曲線を、Alamar Blue(登録商標)代謝活性蛍光読み出しを用いて決定した。卵巣及び結腸癌細胞が、その成長プラトーに第7日目〜第14日目の間に達し、膵臓癌細胞が、第21日目に達した。卵巣及び結腸癌細胞コロニー形成は、膵臓癌細胞と比較すると、早期に平らになることを伴って迅速な初期成長動態を示した。
【0040】
図8C)では、経時的な遺伝子発現に基づいて提示される、本発明の三次元環境において成長した3つの細胞株の比較を、低酸素条件において典型的に観察されるマーカに関して示す。比較した細胞株は、結腸癌細胞(HCT116)、膵臓癌細胞(Panc−1)、及び卵巣癌細胞(A2780)である。試験した低酸素マーカは、HIF−la(低酸素誘導因子1アルファ;低酸素の主要制御因子)、VEGFA(血管形成に関わる血管内皮増殖因子A;pH制御に関わるCAIX(炭酸脱水酵素IX)、エネルギー生成に関わるGLUT−1(グルコース輸送体1)、エネルギー生成に関わるLDHA(乳酸脱水素酵素A)、アポトーシスに関わるBNIP3(BCL−2/アデノウイルス−EIB−19−kDa−相互作用タンパク質3)である。遺伝子レベル(経時的な遺伝子発現プロファイル)で試験した3つの癌細胞株は、著しく異なる挙動を示す。HIF−la遺伝子発現は、経時的にA2780及びHCT116細胞の基礎レベルに留まるが、経時的にPanc−1細胞において増加する。VEGFA発現は、A2780細胞に対して一定であり、HCT116及びPanc−1細胞において最大6倍に増加する。CAIX発現は、経時的に増加するが、その発現の規模は、試験した細胞株間で劇的に異なる。最も強いCAIX遺伝子発現を、A2780細胞において観察し(約4000倍の増加)、HCT116(約400〜500倍の増加)及びPanc−1細胞(約60〜80倍の増加)における発現が後に続いた。BNIP3、GLUT−1、及びLDHAの遺伝子発現プロファイルは、経時的に遺伝子発現を増加させる傾向を共有する。癌細胞の遺伝子発現プロファイル決定は、成長の異なる時点の癌細胞スフェロイドの生理学的特性の特定及び研究を可能にする。
図8A)、B)、及びC)は、これらの生理学的特性が腫瘍細胞の起源及び/または細胞成長の段階に強く依存することを示す。
図8C)は、関連する段階で提示されるように薬物スクリーニングを実施するために、癌細胞の早期及び進行期層を特定することの重要性を支持する定量データを提供する。
【0041】
図9では、癌細胞HCT116成長プロファイル内の処理スケジュールを、三次元生理学的環境に包埋された細胞を用いて本発明のために示した(高いほうのパネル)。比較のために、二次元参照アッセイ(低いほうのパネル)を示す。二次元参照アッセイは、第1日目〜第4日目の初期成長期のみを包含する。本発明にあるような薬物処理の分割は、「三次元早期処理期」(第4日目〜第7日目)及び「三次元後期処理期」(第14日目〜第17日目)を包含する。前者は、比較的小さいスフェロイド、低酸素条件がない、及び高増殖を示すスフェロイドの初期成長期を特徴とし、後者は、大きいスフェロイドのサイズ、低酸素条件、及び停止細胞増殖を示す静置期を特徴とする。これは、インビボ腫瘍成長に一致している。
【0042】
図10は、ゲムシタビンを用いて処理した膵臓Panc−1癌細胞を示す。三次元マトリックスの膵臓癌細胞培養においてゲムシタビンを用いた「進行期」処理のための用量依存有効性プロファイルを、4〜7日の薬物不使用の回復期の前及び後にAlamar Blue(登録商標)読み出しに従って測定した。処理の直後に測定された二次元参照アッセイ及び三次元アッセイからの読み出しによると、ゲムシタビンは、活性であると示されなかった。しかしながら、測定を薬物不使用の回復期後に実施した場合、ゲムシタビンは、三次元環境における癌細胞成長の強力細胞成長阻害剤であることを観察した。ゲムシタビンを、膵臓癌を治癒するために臨床において単剤として使用する。本発明では、強力原薬が例えば低酸素条件または静置細胞増殖等の特定の状況下で効果的であり、及び/または細胞の遅延有効性を示すことを特定した。