(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の液体試料測定装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1(a)および
図1(b)は、液体試料測定装置の構成を示す図である。
図1(a)は外観図、
図1(b)はブロック図である。
液体試料測定装置は、
図1(a)および
図1(b)に示すように、ハンドヘルドの測定装置であって、装置本体(筐体)1と、表示部2と、入力部3と、を備えている。そして、装置本体1には、使い捨てのバイオセンサ4が着脱自在に装着される。
【0011】
装置本体1は、看護師や患者であるユーザが片手で保持することができるコンパクトな形状に形成されている。
ここで、液体試料測定装置に装着される使い捨てのバイオセンサについて、
図2を用いて説明する。
図2は、装置本体1に装着されるバイオセンサ4の分解斜視図である。
バイオセンサ4は、
図2に示すように、絶縁性の基板11,12、スペーサ14、試薬層16等を有している。
【0012】
絶縁性の基板11(以下、単に「基板11」とする)は、ポリエチレンテレフタレート等から形成されている。そして、基板11の表面には、例えば、金やパラジウムなどの貴金属やカーボン等の電気伝導性物質からなる導電性層が、スクリーン印刷法やスパッタリング蒸着法によって形成されている。なお、導電性層は、基板11の全面または少なくとも一部に形成されていればよい。
【0013】
絶縁性の基板12は、スペーサ14を介して基板11の上面の一部を覆うように配置されており、その中央部に空気孔13が設けられている。基板11と基板12との間に切欠部を有するスペーサ14を挟み込んで一体化することで、バイオセンサ4が構成される。
基板11上には、スリットによって分割された導電性層が、対電極17、測定電極18および検知電極19を形成している。各電極17,18,19は、基板11の少なくとも一部に形成されていればよく、装置本体1と各電極とはリード線で接続されていてもよい。
【0014】
スペーサ14は、基板11上の対電極17、測定電極18および検知電極19を覆うように配置される。スペーサ14の前縁部中央には、長方形の切欠部が設けられている。そして、切欠部によって試料供給路15が構成される。
ここで、スペーサ14に形成された試料供給路15は、試料点着部15aに点着された試料液を毛細管現象によって、基板12の空気孔13に向かって(
図2中の矢印AR方向に)吸引する。
【0015】
試薬層16は、スペーサ14の切欠部から露出している対電極17、測定電極18および検知電極19を覆うように設けられている。
試薬層には、酸化還元酵素と電子受容体とが含まれており、試料供給路に吸引された試料液(本実施の形態の場合、人体から摂取された血液)中に溶解して、反応が生じる。反応終了後、還元された電子受容体が電気化学的に酸化され、このとき得られる電流から試料液中のグルコース濃度が測定される。このような一連の反応は、対電極17、測定電極18および検知電極19から読み取られる電気化学的変化に伴う電流によって検出される。
【0016】
また、識別部20は、バイオセンサ4の種別や製造ロット毎の出力特性の違いを装置本体1によって識別するために設けられている。対電極17、検知電極19における識別部20に該当する部分には、スリット21gとスリット21hとが組み合わせて形成されている。これにより、装置本体1は、各バイオセンサ4の電気的出力特性の差異を識別できる。
【0017】
バイオセンサ4の試料供給路15には、試料の流れ方向(矢印AR)に沿って、試料点着部15aから対電極17、測定電極18、対電極17、検知電極19の順に配置されている。なお、対電極17と測定電極18の配置は入れ代わってもよい。
また、試料の流れ方向に沿って、測定電極18と検知電極19との間には所定の距離が設けられている。これにより、試料液が確実にかつ充分な量が吸引されたか否かを検知電極19から検出される電流値によって判別できる。
【0018】
再び
図1に戻り、液体試料測定装置の構成要素を説明する。
図1(b)は、液体試料測定装置のブロック図を示すものである。
本実施形態の液体試料測定装置は、
図1(b)に示すように、装置本体1内に、表示部2と、入力部3と、センサ装着部5と、測定部6と、通信部7と、記録部8と、動き測定部9と、制御部10と、を備えている。
【0019】
表示部2は、制御部10からの指示を受けて、測定部6で測定されたグルコース濃度や、ユーザに対する各種情報等を表示する。
入力部3は、ユーザからの動作指示や識別番号などが入力されるデバイスであって、例えば、装置本体1上に設けられたボタンや、バーコードリーダーのような光学読み取り装置が用いられる。あるいは、入力部3は、RF−IDのような無線通信や音声認識による入力であってもよいし、ボタンの代わりに表示部2上に構成されるタッチ入力可能なタッチパネルでもよい。本実施形態では、これら複数の入力デバイスが組み合わされて備えられているものとする。また、入力部3に入力された情報は、制御部10へと伝達される。
【0020】
さらに、センサ装着部5内には、バイオセンサ4の対電極17、測定電極18および検知電極19と電気的に接続されるコネクタ5bと、センサ装着部5にバイオセンサ4が装着されたことを検知するためのセンサ装着検知部5aとが設けられている。
センサ装着検知部5aは、バイオセンサ4が装着されたことを検知して、制御部10に伝達する。検知の手段としては、例えば、対象物が装着されている間は電気スイッチが押されて導通して装着が検知可能なメカニカルな電気スイッチが用いられる。その他、光学式のセンサなど、装着部における対象物の存在を検知できるものであれば、どのような手段を用いてもよい。または、バイオセンサ4上に設けた電極とコネクタ5bとが電気的に接続されたかどうかを監視し、電気的に接続されたことを検出すると、バイオセンサ4の装着を検知するように構成されたものでもよい。
【0021】
測定部6は、制御部10の指示を受けて、バイオセンサ4に点着された生体の液体試料から生体情報を測定する。例えば、バイオセンサ4に血液が点着された時、コネクタ5bを介してバイオセンサ4の各電極に電圧または電流を印加し、応答として得られる電流または電圧の値から血液中のグルコース濃度を測定する。なお、コネクタ5bには、図示しないスイッチが設けられており、バイオセンサ4の対電極17、測定電極18および検知電極19に選択的に電圧または電流を印加することができる。
【0022】
通信部7は、制御部10の指示を受け、通信回線を経由して、サーバーやパーソナルコンピューターなどの他の機器とデータ送受信を行う。通信部7は、例えば、測定部6で測定されたグルコース濃度や、動き測定部9で測定された動き情報、入力部3に入力された識別番号などを他の機器に向けて送信したり、他の機器から識別番号のリストなどを受信したりする。ここで、通信回線とは、有線または無線で公衆回線に接続した形態や、他の機器と有線または無線で1対1に接続した形態など、一般的な通信回線のことを示す。
【0023】
記録部8は、測定部6が出力する測定結果、動き測定部9が出力する動き情報、入力部3によって入力された情報、通信部7が受信した情報等を、制御部10を介して受け取り、記録する。記録部8へのデータの記録再生は、制御部10によって制御される。
動き測定部9は、制御部10の指示を受けて装置本体1の動き量を測定し、制御部10に動き情報として出力する。
【0024】
制御部10は、装置本体1全体の制御を行なう。制御部10は、特に、センサ装着検知部5a、測定部6、動き測定部9、入力部3から入力された情報に基づいて、測定部6、表示部2、通信部7に対して指示を行なう。
ユーザが測定を開始する際には、まず、入力部3を用いて、測定者であるユーザ(看護師)のIDと被測定者である患者のIDとバイオセンサ4のIDの入力を行う。このIDの入力は、ユーザが入力部3のボタンを押して入力してもよいし、入力部3にバーコードリーダーが備えられている場合には、それぞれに付されたバーコードを読み取るようにしてもよい。これらIDの入力が完了すると、測定準備完了となる。
【0025】
測定準備が完了すると、次に、ユーザはバイオセンサ4の装着を行う。
バイオセンサ4がセンサ装着部5に装着されると、センサ装着検知部5aにより検知されて制御部10へ伝達される。すると制御部10は、測定部6に対して測定開始を指示する。これにより、測定部6は、後述する方法によりグルコース濃度の測定を行い、測定した値を制御部10へと通知する。
【0026】
制御部10は、測定部6で測定されたグルコース濃度の値を表示部2に表示するように指示する。同時に、測定されたグルコース濃度と関連付けるための情報の候補を表示し、ユーザが入力部3を用いて選択できるようにする。
ここで、情報の候補とは、例えば、食前、食後などの食事に関する情報等、後でグルコース濃度の測定結果を確認する時に測定時の状況を把握するためのものである。どのような候補を選択可能とするかは、ユーザが別途設定することができる。また、情報の候補を選択するだけでなく、ユーザが入力部3を用いて任意の文字列などを入力できるようにしてもよい。
【0027】
制御部10は、ユーザによる入力が完了すると、測定者のIDと被測定者のIDとバイオセンサ4のIDと測定が行われた時刻とグルコース濃度の測定結果とユーザが指定した関連する情報と動き測定部9が出力する動き情報とを関連付けてひとまとまりのデータとして記録
部8に記録する。このひとまとまりのデータを以下、測定管理データと称す。
【0028】
この時、制御部10は、測定されたグルコース濃度の値を監視しており、通常測定し得ないような異常値であったり、ユーザが指定した範囲から外れた値であったりした場合には、異常発生を示す異常値フラグを測定管理データの中に追加する。制御部10は、異常値フラグを追加する時には、表示部2に異常値の検知を示す表示を行わせてユーザに通知する。
【0029】
なお、ここまでの説明は、液体試料測定装置が病院等の多数の測定者が多数の対象者に対して測定を行うような環境で使用されるように仕向けられている場合を例としたものである。すなわち、そのような環境では、グルコース濃度の測定結果を管理するために、誰がどのバイオセンサを用いて誰のグルコース濃度を測定したのかを関連付けなければならない。従って、ユーザのIDと患者のIDとバイオセンサ4のIDの入力を行っている。
【0030】
一方、患者個人が自宅で使用するために、簡易な構成とされたり、機能が限定されたりした液体試料測定装置であって、1つの装置には1人のグルコース濃度の測定結果しか蓄積されない場合には、ユーザのIDと患者のIDの入力は省略することができる。また、バイオセンサ4の識別部20の情報を液体試料測定装置が読み取ることで、バイオセンサ4のIDを認識できる場合や、バイオセンサ4のID自体を読み取らなくてもよい場合には、バイオセンサ4のIDの入力も省略してもよい。
【0031】
なお、制御部10は、内部に時計(図示せず)を有している。このため、制御部10は、時計が示す時刻、時間を利用して各種制御動作を行う。さらに、時計の情報は後述する測定制御部にも伝達され、利用される。
ここで、動き測定部9について詳細に説明する。動き測定部9は、例えば、装置本体1内に設けられた3次元の加速度センサを用いることができる。加速度センサの数は、1つでも複数でもよい。また、加速度センサの代わりに、ジャイロセンサなどを用いてもよく、重力方向に対する装置本体1の姿勢の変化と移動量が検出できるものであれば、どのようなセンサを用いてもよい。
【0032】
図3(a)は、動き測定部9として、装置本体1内に加速度センサが1つ設けられた例を示している。加速度センサを、バイオセンサ4を装着する側と反対側の、装置本体1の中心線(1A,1B)からずれた位置に配置している。さらに、この位置は、装置本体1の重量の重心位置からもずれている。
このような動き測定部9の配置により、バイオセンサ4の姿勢と動きを精度よく検出することができる。これは、バイオセンサ4に点着される試料が液体であるため、バイオセンサ4の姿勢と動きによって液体の展開と位置が変わり、グルコース濃度の測定結果に影響を及ぼすおそれがあることから、液体試料の位置等を監視するために特に有効である。
【0033】
図3(b)は、装置本体1の模式図に3次元軸を重ねたものを示している。装置本体1に対して長手方向をX軸1X、短手方向をY軸1Y、高さ方向をZ軸1Zとしている。動き測定部9として配置される加速度センサには、この3次元軸それぞれについて単位時間あたりの変化量を検出する一般的なセンサが用いられる。
なお、このような変化量の検出が可能なものであれば、センサの種類は加速度センサに限定されるものではない。
【0034】
動き測定部9は、制御部10から指示される間、検出した3次元軸それぞれの単位時間当たりの変化量を動き情報として測定部6へと出力する。変化量の数値的な表現は、絶対値でも相対値でもよく、この動き情報に基づいて装置本体1の動きが再現できる程度に必要十分な情報が含まれればよい。また、この動き情報を出力する間隔、すなわちサンプリング間隔も同様に、装置本体1の動きを再現できる程度の適切な間隔が選択される。
【0035】
次に、測定部6の構成および動作について、
図4を用いて説明する。
図4は、測定部6内部構成とその周辺の接続を示すブロック図である。
測定部6は、
図4に示すように、コネクタ5bと接続された電圧印加部22と、応答電流検出部23と、電圧印加部22と応答電流検出部23と制御部10とに接続されてグルコース濃度の測定制御を行う測定制御部24と、動き測定部9が出力する動き情報を受け取り動きの判定を行う動き判定部25と、を有している。
【0036】
電圧印加部22は、コネクタ5bに対して、測定制御部24が指示するタイミング、間隔、電圧レベルで電圧の印加を行う。
応答電流検出部23は、コネクタ5bに現れるバイオセンサ4の電極間の電流変化を検出し、測定制御部24へと出力する。具体的には、応答電流検出部23は、コネクタ5bに流れる電流の値を所定の間隔でサンプリングし、応答電流値として測定制御部24へと出力する。この所定のサンプリング間隔は、応答電流の変化を検出するために、数〜数十msecの間隔である。
【0037】
なお、これら電圧印加部22と応答電流検出部23とは、電子素子を組み合わせた電気回路または集積回路でひとまとめに構成されていて、測定制御部24の電圧印加の指示を受けて、応答電流値を測定制御部24に出力するようなものであってもよい。
また、本実施の形態では、電圧を印加することを基準として測定を行う例を挙げて説明するが、電流を印加することを基準として、応答電圧のレベルに応じてグルコース濃度の測定を行う方式であっても、同様に発明を実施することが可能である。
【0038】
ここで、グルコース濃度を測定するための動作の一例を、
図5(a)および
図5(b)を用いて説明する。
図5(a)は、コネクタ5bに印加する電圧の様子、
図5(b)は、コネクタ5bから得られる応答電流値の様子を示す図である。
図5(a)および
図5(b)において、横軸は時間を示し、制御部10がバイオセンサ4の装着を検知して測定部6に対して測定開始を指示した時刻を起点としている。
図5(a)の縦軸は、コネクタ5bに印加する電圧のレベルであり、
図5(b)の縦軸は、コネクタ5bに現れる応答電流値のレベルを示す。
【0039】
制御部10から測定開始を指示された測定制御部24は、電圧印加部22に指示し、コネクタ5bを介してバイオセンサ4の対電極17、測定電極18および検知電極19に電圧の印加を開始する(時刻0)。なお、この段階では、まだバイオセンサ4の試料点着部15aには血液は点着されていない。
ユーザによって試料点着部15aに血液が点着される(時刻t0)と、毛細管現象によって血液が試料供給路15内に吸引され、空気孔13の方向へと展開される。展開された血液が対電極17、測定電極18または検知電極19のいずれか最も試料点着部15aに近い側に配置された電極に到達した後、応答電流値の変化が始まる。
【0040】
測定制御部24は、応答電流検出部23から得られる応答電流値が所定の値よりも大きくなった時(時刻t1)、血液の点着を検知することができる。測定制御部24は、この点着を検知した時刻t1を試料点着時刻として保持する。
測定制御部24は、血液の点着を検知した時刻t1から所定の時間が経過した時刻t2に、一旦電圧の印加を停止する。この時刻0から時刻t2までの期間を第1電位期間と称す。
【0041】
第1電位期間は、上述した血液の点着検知を目的とすることに加えて、バイオセンサ4の試薬と試料液が溶解し反応した際に生じる妨害物質の除去を目的としたものである。第1電位期間の電圧レベル(V1)と印加時間のうち時刻t1から時刻t2の長さは、1つまたは複数の妨害物質を適切に除去できるように、予め定められている。
なお、近年の測定時間の短縮の要望に応えるように、第1電位期間の印加時間は、測定を行う際に外乱の影響を受けない前提で最短の時間に設定されている。
【0042】
次に、測定制御部24は、第1電位期間が終了した後、所定の期間(時刻t2から時刻t3まで)電圧印加を停止する。すなわち、コネクタ5bに印加される電圧はゼロになる。時刻t2から時刻t3までの期間を待機期間と称す。
この待機期間は、バイオセンサ4の試薬層16において酵素反応を促すために設けられる。この待機期間の時間は、試薬層16に用いられる反応試薬の種類と量、試料供給路15で受け入れる試料液の容量によって異なるが、同じ種類のバイオセンサ4を用いている限りは、予め定められた一定の時間に固定される。なお、試薬の種類によっては、この待機期間中に電圧を印加して酵素反応を促すようにしてもよい。
【0043】
そして、測定制御部24は、待機期間が終了した後、所定の期間(時刻t3から時刻t4まで)電圧レベルV2にて電圧印加を行う。この時刻t3から時刻t4までの期間を第2電位期間と称す。
この第2電位期間は、バイオセンサ4の試薬層16において酸化反応を促進し、最終的にグルコース濃度の測定に関連する応答電流値を取得するための期間である。この第2電位期間も、試薬層16に用いられる反応試薬の種類と量、試料供給路15で受け入れる試料液の容量によって異なるが、同じ種類のバイオセンサ4を用いている限りは、予め定められた一定の時間に固定される。
【0044】
なお、この第2電位期間の間に少なくとも1回の追加の待機期間を設けてもよい。また、第1電位期間、第2電位期間中の印加電圧は一定ではなく、変化させるようにしてもよい。これらは、グルコース濃度測定のアルゴリズムによって定められる。
測定制御部24は、上記第2電位期間の間に、電気化学的変化に伴う応答電流値を少なくとも1回取得して、電流プロファイルとして保持する。そして、保持した電流プロファイルをコットレル式や他のアルゴリズムを用いてグルコース濃度を特定し、測定結果として制御部10へ出力する。制御部10は、測定部6から測定されたグルコース濃度が伝えられた時刻を測定が行われた時刻(測定時刻)とする。
【0045】
動き判定部25は、上述した動き測定部9が出力する動き情報を受け取って動き情報の判定を行い、判定結果を測定制御部24に出力する。測定制御部24は、動き判定部25の判定結果に基づいて、上述したグルコース濃度の測定動作の変更の要否を判断する。
動き判定部25は、随時、動き測定部9が出力する3次元軸それぞれの単位時間当たりの変化量の大小を2つのしきい値と比較し、第1状態、第2状態、第3状態の3つに分類する判定を行う。まず、3次元軸それぞれについて、変化量と第1閾値との大小比較を行う。そして、第1閾値よりも変化量が大きい場合には、第1閾値よりも大きく設定された第2閾値と大小比較を行う。
【0046】
その結果、少なくとも1つの軸で、変化量が第2閾値よりも大きい場合は、第3状態と判定する。また、変化量が第2閾値よりも大きい軸は無いが、少なくとも1つの軸で、変化量が第1閾値よりも大きい場合は、第2状態と判定する。さらに、3次元軸全てにおいて、変化量が第1閾値よりも小さい場合は、第1状態と判定する。
動き判定部25は、この判定結果を随時、測定制御部24へ出力する。動き判定部25は、装置本体1の電源が投入され、動作している間は、この判定を常に行う。あるいは、最低限でもバイオセンサ4の挿入が検知されてからグルコース濃度の測定が完了するまでの間は行う。判定を行う間隔は、応答電流値の検知のサンプリング間隔と同じく数〜数十msecの間隔が最も好ましい。
【0047】
測定制御部24は、応答電流検出部23から入力される電流応答値、および動き判定部25から入力される判定結果の履歴を参照できるように、少なくとも1回のグルコース濃度測定の間の電流応答値と判定結果とを保持するだけのメモリ(図示せず)を有する。
測定制御部24は、バイオセンサ4の挿入が検知されてからグルコース濃度の測定が完了するまでの間、すなわち
図5(a)および
図5(b)における時刻0から時刻t4までの間、動き判定部25から伝えられる判定結果が常に第1状態であった場合には、上述したグルコース濃度の測定において、第1電位期間、待機期間、第2電位期間の長さと印加電圧のレベルを変更せず、測定を完了させる。
【0048】
これは、装置本体1の動きが、グルコース濃度の測定に影響を及ぼす程の大きなものでなく、安定して測定を行えたことを意味する。
一方、測定制御部24は、
図5(a)および
図5(b)における時刻0から時刻t4までのある特定の期間で動き判定部25の判定結果が第3状態を示す場合には、グルコース濃度の測定を中止して測定エラーとするか、測定を完了して何らかの測定値が得られたとしても同じく測定エラーとする。この時、制御部10は測定部6から測定エラーが伝えられると、表示部2に測定エラーであることとバイオセンサ4を取り替えて再度血液を点着し、再測定を行うことを促す表示を行う。
【0049】
これは、装置本体1の動きが、グルコース濃度の測定に大きく影響を及ぼす程異常なものであって、それによって測定が不可能であるか、測定結果が間違った値を示してしまう可能性があることを意味する。
さらに、測定制御部24は、
図5(a)および
図5(b)における時刻0から時刻t4までのある特定の期間で動き判定部25の判定結果が第2状態を示す場合、および測定エラーとする上記期間とは異なる期間で第3状態を示す場合には、上述したグルコース濃度の測定において、電圧印加の長さと電圧レベルを変更するかどうかを調整する。
【0050】
これは、装置本体1の動きがグルコース濃度の測定に幾分か影響を及ぼすものであるが、それを加味した調整を行うことにより、正しい測定結果を得ることができることを意味する。
次に、測定制御部24における動き判定結果を考慮した測定動作について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
ステップS01は、バイオセンサ4の挿入が検知され、制御部10から測定部6に対してグルコース濃度の測定の指示が出された段階である。測定制御部24は、電圧印加部22にコネクタ5bへ電圧レベルV1の電圧印加の開始を指示し、電圧印加部22は直ちに電圧印加を開始する(時刻0)。
ステップS02は、ユーザによってバイオセンサ4の試料点着部15aに血液が点着された後、測定制御部24が、応答電流検出部23が出力する応答電流値の変化から血液の点着を検知した段階である(時刻t1)。
【0052】
ステップS03は、時刻t1において、測定制御部24が、時刻0から時刻t1までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に、第2状態または第3状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第2状態または第3状態と判定されたものが1度でも含まれている場合は、ステップS04に移行する。一方、1度も含まれていなければ、電圧レベルV1と時刻t2を変更せずにステップS05へと移行する。
【0053】
ステップS04では、測定制御部24は、現在、電圧印加部22が印加している電圧レベルV1を変更し、電圧印加を停止する予定の時刻t2を変更する。
これは、バイオセンサ4の試料点着部15aに血液が点着される前後の時間で装置本体1が動かされる状態にあり、これが続くと、試料供給路15を展開する血液の展開速度が遅くなったり、試薬に到達する血液の液量に偏りが生じたりして、血液と試薬との溶解が不均一になり、その結果として妨害物質の除去が十分に行えなくなる可能性があることに対応するものである。
【0054】
このような印加電圧レベルの変更制御の一例としては、電圧レベルV1と時刻t2とが一定の関係を保ったまま反比例の変更となるように制御する。
具体的には、電圧レベルV1の値を小さくし、時刻t2を長くする(遅らせる)。この時、変更前の時刻t1から時刻t2の長さと変更前の電圧レベルV1の積と、変更後の時刻t1から時刻t2の長さと変更後の電圧レベルV1の積とが同じになるようにする。すなわち、例えば、電圧レベルV1を半分にした場合は、時刻t1から時刻t2の長さが倍になるように時刻t2を遅らせる。
【0055】
これは、第1電位期間における妨害物質の除去度合いが印加する電圧レベルと印加時間に比例して変化する場合に有効な制御である。これにより、装置本体1の動きによってバイオセンサ4の試料供給路15内の血液と試薬との溶解が均一になるのに時間がかかる場合でも、均一になるための時間を確保しながら、電圧の印加が過多にならず必要十分とすることが可能となる。
【0056】
また、この変更制御の別の一例としては、電圧レベルV1は変更せず、印加時間を長くする(時刻t2を遅らせる)ことである。これは、第1電位期間における妨害物質の除去度合いが電圧の印加時間にのみ依存する場合に有効な例である。これにより、装置本体1の動きによってバイオセンサ4の試料供給路15内の血液と試薬との溶解が均一になるのに時間がかかる場合でも、均一になるための時間を確保しながら、電圧の印加を必要十分とすることが可能となる。
【0057】
ステップS05は、初期に設定された時刻t2、またはステップS04で時刻t2が変更された場合には、変更後の時刻t2に到達した段階である。このとき、測定制御部24は、電圧印加部22に電圧印加の停止を指示し、電圧印加部22は直ちにコネクタ5bへの電圧の印加を停止する。
ステップS06は、時刻t2において、測定制御部24が、時刻t1から時刻t2までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に第3状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第3状態と判定されたものが1度でも含まれている場合には、ステップSE1に移行し、1度も含まれていなければステップS07へと移行する。
【0058】
ステップS07は、時刻t2において、測定制御部24が、時刻t1から時刻t2までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に第2状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第2状態と判定されたものが1度でも含まれている場合はステップS08に移行し、1度も含まれていなければ、時刻t3を変更せずにステップS09へと移行する。
【0059】
ステップS08では、測定制御部24は、次に、電圧印加部22が電圧印加を再開する予定の時刻t3を変更する。
これは、装置本体1が動かされる状態にあり、これが続くと、バイオセンサ4の試料供給路15内で進行する酵素反応が阻害されて、反応が遅れてしまう可能性があることに対応するものである。ここでは、時刻t3を遅らせて、時刻t2から時刻t3までの待機期間を長くすることで、十分に酵素反応が行われるようにすることができる。
【0060】
ステップS09は、初期に設定された時刻t3、またはステップS08で時刻t3が変更された場合に、変更後の時刻t3に到達した段階である。この時、測定制御部24は、電圧印加部22に電圧レベルV2での電圧印加の再開を指示し、電圧印加部22は直ちにコネクタ5bへの電圧の印加を再開する。
ステップS10は、時刻t3において、測定制御部24が、時刻t2から時刻t3までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に第3状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第3状態と判定されたものが1度でも含まれている場合には、ステップSE1に移行し、1度も含まれていなければステップS11へと移行する。
【0061】
ステップS11は、時刻t3において、測定制御部24が、時刻t2から時刻t3までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に第2状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第2状態と判定されたものが1度でも含まれている場合には、ステップS12に移行し、1度も含まれていなければ、時刻t4を変更せずにステップS13へと移行する。
【0062】
ステップS12では、測定制御部24は、電圧印加部22が電圧印加を終了する予定の時刻t4を変更する。これは、装置本体1が動かされる状態にあり、これが続くと、バイオセンサ4の電極上の血液の液量に偏りが生じたりして、その結果として酸化反応が安定しない可能性があることに対応するものである。時刻t4を遅らせて、時刻t3から時刻t4までの第2電位期間を長くすることで、安定した酸化反応が行われる期間を確保することができる。
【0063】
ステップS13は、初期に設定された時刻t4、またはステップS12で時刻t4が変更された場合に、変更後の時刻t4に到達した段階である。この時、測定制御部24は、電圧印加部22に電圧印加の終了を指示し、電圧印加部22は直ちにコネクタ5bへの電圧の印加を停止する。
ステップS14は、時刻t4において、測定制御部24が、時刻t3から時刻t4までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に第3状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第3状態と判定されたものが1度でも含まれている場合には、ステップSE2に移行し、1度も含まれていなければステップS15へと移行する。
【0064】
ステップS15は、時刻t4において、測定制御部24が、時刻t3から時刻t4までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に第2状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第2状態と判定されたものが1度も含まれていなければステップS16へ移行し、1度でも含まれている場合にはステップS17へ移行する。
【0065】
ステップS16は、少なくとも時刻t3から時刻t4の第2電位期間において、動き判定部25から出力される判定結果が常に第1状態と判定されたものである場合に推移する段階である。これは、グルコース濃度の測定に影響を及ぼすほどの装置本体1の動きが検出されなかったことを意味する。
この場合には、測定制御部24は、第2電位期間中の予め定められた通りのタイミングで応答電流検出部23が出力した応答電流値を、グルコース濃度特定のための応答電流値として採用する(応答電流値の通常選択)。
【0066】
その際に、もしステップS11からステップS12に移行し、時刻t4を変更していた場合には、変更する前の時刻t4に相当する時刻に得られた応答電流値が用いられる。例えば、時刻t4の時に得られた応答電流値を採用するように定められている場合には、変更後の時刻t4の時に得られた応答電流値ではなく、変更前の時刻t4のタイミングで得られた応答電流値が採用される。
【0067】
ステップS17は、時刻t3から時刻t4の第2電位期間において、動き判定部25から出力される判定結果に第2状態と判定されたものが含まれているために推移する段階である。これは、グルコース濃度の測定に幾分か影響を及ぼす可能性がある程度の装置本体1の動きが検出されたことを意味する。
従って、ステップS16における応答電流値の通常選択を行うと、その応答電流値の精度は保障されない。このため、ステップS17では追加の第2電位期間を開始している。すなわち、時刻t5において、測定制御部24は、電圧印加部22に電圧レベルV2での電圧印加の再開を指示する。電圧印加部22は、直ちにコネクタ5bへの電圧の印加を再開する。
【0068】
ステップS18は、時刻t6に到達した段階である。この時、測定制御部24は、電圧印加部22に電圧印加の終了を指示する。電圧印加部22は、直ちにコネクタ5bへの電圧の印加を停止する。
この時刻t5から時刻t6の間が、追加の第2電位期間であり、時刻t3から時刻t4の間の第2電位期間と同じ長さになるように、時刻t6が設定される。
【0069】
図7(a)および
図7(b)は、
図5(a)および
図5(b)に示したコネクタ5bに印加する電圧の様子(a)と、コネクタ5bから得られる応答電流値の様子(b)を示す図に、この追加の第2電位期間を設けた一例を示すものである。時刻t5から時刻t6の間に電圧レベルV2での電圧印加を行い、得られる応答電流値の様子が追加されている。
なお、追加の第2電位期間を開始する時刻t5は、時刻t4から時刻t5の間を追加の待機時間とするために、時刻t4から時刻t5の長さが時刻t2から時刻t3の待機時間の長さと同じになるように設定される。あるいは、時刻t5は、
図7(a)および
図7(b)に示すように時刻t4から時刻t5の長さが待機時間よりも短くなるように設定されてもよい。
【0070】
さらに、追加の第2電位期間における電圧印加を、電圧レベルV2とは異なる電圧レベルV3で行ってもよい。この場合には、追加の第2電位期間を第3電位期間と称する。
ステップS19は、測定制御部24が、時刻t5から時刻t6までの間に、動き判定部25から出力される判定結果に第2状態または第3状態と判定されたものが含まれていたかどうかを確認する段階である。ここで、第2状態または第3状態と判定されたものが1度でも含まれている場合には、ステップSE2に移行する。一方、第2状態または第3状態と判定されたものが1度も含まれていない場合には、ステップS20へと移行する。
【0071】
なお、ステップS19からステップSE2への移行は、グルコース濃度の測定に影響を及ぼすほどの装置本体1の動きが連続または断続的に続いており、これ以上条件を変更しても精度を保障できる範囲内での応答電流値の選択が困難であり、最初から測定のやり直しが必要であることを意味する。
ステップS20は、少なくとも時刻t5から時刻t6の追加の第2電位期間において、動き判定部25から出力される判定結果が、常に第1状態と判定されたものである場合に推移する段階である。これは、グルコース濃度の測定に影響を及ぼすほどの装置本体1の動きが検出されなかったことを意味する。
【0072】
この場合には、測定制御部24は、追加の第2電位期間中の予め定められた通りのタイミングで応答電流検出部23が出力した応答電流値を、グルコース濃度特定のための応答電流値として採用する(応答電流値の置き換え選択)。
この時、応答電流値を採用するタイミングと時刻t5から時刻t6の相対的な関係は、時刻t3から時刻t4の第2電位期間内における応答電流値を採用するタイミングの相対的な関係と同じにする。例えば、時刻t3から時刻t4の第2電位期間での通常選択として時刻t4時に出力される応答電流値が採用される場合には、時刻t5から時刻t6の追加の第2電位期間では時刻t6時に出力される応答電流値が採用される。
【0073】
ステップS21では、測定制御部24は、ステップS16またはステップS20で採用された応答電流値に上述したアルゴリズムを適用して、グルコース濃度の特定を行う。この時、ステップS16で得られた応答電流値とステップS20で得られた応答電流値とでは、アルゴリズムの演算などで用いるパラメータや条件を同じにしてもよいし、それぞれ異なるパラメータや条件が設定されていてもよい。
【0074】
すなわち、第2電位期間の後で追加の第2電位期間を設けることで、どちらの応答電流に基づいて求められたグルコース濃度であっても、正しく同じ結果が得られるようにパラメータや条件の調整が必要かどうかを予め調べておき、設定される。追加の待機時間の長さを変更したり、追加の第2電位期間における印加電圧の電圧レベルを変更したりした場合も同様である。
【0075】
ここで、ステップS06またはステップS10から推移するステップSE1と、ステップS14から推移するステップSE2について説明する。
ステップSE1は、第1電位期間の点着検知後(ステップS06の分岐)または待機期間(ステップS10の分岐)に、グルコース濃度の測定精度を補償できない程の装置本体1の動き(第3状態)が検出されたため、このグルコース濃度の測定をエラーとして、測定を中止する段階である。この場合には、測定制御部24は、直ちに測定を中止して、制御部10に対して測定エラーを通知する。
【0076】
ステップSE2は、第2電位期間に、グルコース濃度の測定精度を補償できない程の装置本体1の動き(第3状態)が検出された、あるいは追加の第2電位期間に、信頼性を低下させる程の装置本体1の動き(第2状態または第3状態)が検出されたために、このグルコース濃度の測定をエラーとする段階である。この場合には、制御部10は、グルコース濃度の特定結果を測定エラーと設定して、ステップS22へ移行する。
【0077】
ステップS22では、測定制御部24は、ステップS21で特定されたグルコース濃度の値、またはステップSE2で設定された測定エラーを制御部10へ出力し、制御部10は、グルコース濃度の測定動作を終了する。
すなわち、本発明の液体試料測定装置は、通常の測定で用いられる第1の条件と、通常よりも測定中の測定装置の動きに許容度の大きい第2の条件とを少なくとも有している。そして、測定中に検出された測定装置の動き度合いに応じて、通常の第1の条件から第1の条件とは異なる第2の条件に切り替えて測定を行う。
【0078】
ここで、第1の条件は、変更前の印加電圧レベルV1、時刻t2,t3,t4に相当する。そして、第2の条件は、変更後の印加電圧レベルV1、時刻t2,t3,t4のいずれか、および追加される時刻t5,t6、またはこれらの組み合わせに相当する。そして、第1条件から第2条件への切り替えは、測定制御部24と動き判定部25によって決定される。
【0079】
なお、本実施の形態では、第1電位期間、待機期間、第2電位期間、追加の待機期間、追加の第2電位期間を有する電圧の印加方法(電圧印加パターン)と電流プロファイルの測定を例にして説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、電圧印加パターンは、待機期間を有しないものでもよい。すなわち、時刻t2から時刻t3までの時間がほぼ0になり、第1電位期間のすぐ後に第2電位期間が設定される。そのような場合には、
図6のフローチャートにおいて、ステップS06、ステップS07、ステップS08をスキップし、ステップS10の分岐の条件を時刻t1−t2の間に状態3はあったかどうか、ステップS11の分岐の条件を時刻t1−t2の間に状態2はあったかどうかに置き換えるとよい。
【0080】
また、例えば、電圧印加パターンは、第1電位期間の間に、グルコース以外の血液中の存在物を推定するための電流値の取得を行ってもよい。このため、第1電位期間の間に、存在物を推定するために必要な電圧レベルを印加する期間を設けてもよい。
すなわち、時刻t1と時刻t2の間に時刻t1´を設け、時刻0から時刻t1までと時刻t1´から時刻t2までは印加電圧レベルV1で電圧印加し、時刻t1から時刻t1´の間は印加電圧レベルV1とは異なる印加電圧レベルで電圧印加し、時刻t1から時刻t1´の間の任意の時刻で応答電流値を取得してもよい。ここで取得された応答電流値は、グルコース濃度の値を算出する時に使用される。この場合には、
図6のフローチャートはそのまま適用される。
【0081】
つまり、電圧印加パターンを変更しても、
図6に示すフローチャートの一部を必要に応じて変更するだけで、本発明を実施することが可能である。
以上のように、本実施形態の液体試料測定装置は、装置本体1の動き量を監視し、その動き量によって、そのまま測定を行うか、測定時間の調整を行うか、グルコース濃度を特定するための情報の取得タイミングを変更するかを調整する。
【0082】
これにより、グルコース濃度を測定している間に、装置本体1に対して外部から衝撃が加えられる等、測定を実施する環境が悪化した場合でも、測定精度の低下を防ぐことができる。すなわち、測定中に装置本体1の動きが生じた場合でも、従来よりも許容度を向上させることができる。
特に、測定時間を調整することにより測定精度を確保できる場合には、測定をし直す必要がなくなる。これにより、従来は測定実施時の環境が悪化した場合には、一律に測定し直しが必要であったため、ユーザに対して再度穿刺を要求したり、バイオセンサを追加で使用するように要求したりしていたが、本発明ではそれらの頻度を低減させることができる。
【0083】
なお、測定装置に電気化学式のバイオセンサを装着し、試料液として生体の血液を点着し、血液中のグルコース濃度を測定する例を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
試料液としては、血液、尿や間質液など実質的に生体から得られるサンプルの原液または溶液が適用される。または、それらサンプルの擬似的な生成物や実験による生成物であってもよい。さらに、これらを変性、化学変化などの前処理を行った処理溶液を用いてもよい。あるいは、測定装置の校正などを目的としたコントロール液などを用いる場合にも、本発明は適用可能である。
【0084】
測定対象物としては、糖類、乳酸、各種コレステロール、核酸、DNA、抗体、抗原、タンパク質、ホルモン、菌、酵素、薬物、抗生物質、医薬組成物、標識マーカー、化学的物質など、サンプル中の発現または定量を行うもの全てに対して、本発明は適用可能である。
バイオセンサとしては、試料液が点着され流路やメンブレンなどの作用によって展開させるものや、点着された試料液を貯留するチャンバ等の構造を有するものが用いられる。あるいは、バイオセンサの替わりに、ハイブリダイズや血球収縮、血球破壊などの前処理をその中で実行するバイオチップやDNAチップなどを用いてもよい。すなわち、センサまたはチップに試料液が供給されてから測定が完了するまでに、センサまたはチップの姿勢や動きによって、その測定結果に影響が及ぼされる可能性が生じる形態のもの全てに本発明が適用可能である。
【0085】
さらに、バイオセンサへの試料液の供給方法は、直接生体から点着するだけでなく、シリンジやカートリッジや前処理容器などから供給されるものでもよい。試料液を供給するためのカートリッジや前処理容器がバイオセンサに装着された状態で対象物の測定が行われるものであってもよい。
さらに、測定装置における測定には、光学式や磁力式など、ハンドヘルドの測定装置で実施可能な全ての測定方法が含まれる。