(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る集電部材を用いたセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、セルスタック装置100の斜視図である。
図2は、セルスタック装置100の断面図である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、セルスタック装置100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル300とを備える。
【0011】
[燃料マニホールド]
図3は、燃料マニホールド200の斜視図である。
【0012】
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガス(例えば、水素など)を各燃料電池セル300に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の挿入孔202を有している。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部に連通する。
【0013】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。
【0014】
各燃料電池セル300の基端部は、燃料マニホールド200の挿入孔202に挿入されている。各燃料電池セル300は、接合材101によって挿入孔202に固定されている。燃料電池セル300は、挿入孔202に挿入された状態で、接合材101によって燃料マニホールド200に固定されている。接合材101は、燃料電池セル300と挿入孔202の隙間に充填される。接合材101としては、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、及びセラミックスなどが挙げられる。結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。このような結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、又はSiO
2−MgO系が挙げられる。
【0015】
各燃料電池セル300は、長手方向(x軸方向)及び幅方向(y軸方向)に広がる板状に形成されている。各燃料電池セル300は、配列方向(z軸方向)に間隔をあけて配列されている。隣り合う2つの燃料電池セル300の間隔は特に制限されないが、1〜5mm程度とすることができる。隣り合う2つの燃料電池セル300は、集電部材301によって電気的に接続されている。複数の燃料電池セル300が集電部材301で接続されることによってセルスタックが形成されている。集電部材301の構成については後述する。
【0016】
燃料電池セル300は、複数の発電素子部10と、支持基板20とを備える。
【0017】
[支持基板]
図4は、燃料電池セル300の斜視図である。
図5は、燃料電池セル300の断面図である。
【0018】
図4に示すように、支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、支持基板20の基端側から先端側に向かって延びている。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。なお、基端側とは、ガス流路のガス供給側を意味する。具体的には、燃料マニホールド200に燃料電池セル300を取り付けた場合において、その燃料マニホールド200に近い側を意味する。また、先端側とは、ガス流路のガス供給側とは反対側を意味する。具体的には、燃料電池セル300を燃料マニホールド200に取り付けた場合において、その燃料マニホールド200から遠い側を意味する。例えば、
図2に示す例では、下側が基端側であり、上側が先端側となる。
【0019】
図5に示すように、支持基板20は、複数の第1凹部22を有する。本実施形態において、各第1凹部22は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各第1凹部22は支持基板20の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0020】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0021】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20に支持されている。本実施形態において、各発電素子部10は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル300は、いわゆる横縞型の燃料電池である。長手方向に隣り合う発電素子部10は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。
【0022】
発電素子部10は、燃料極4、電解質5、及び空気極6を有している。また、発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。
【0023】
[燃料極]
燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。
【0024】
燃料極集電部41は、第1凹部22内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部22内に充填されており、第1凹部22と同様の外形を有する。燃料極集電部41は、第2凹部411及び第3凹部412を有している。第2凹部411内には、燃料極活性部42が配置されている。また、第3凹部412には、インターコネクタ31が配置されている。
【0025】
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0026】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び第1凹部22の深さは、50〜500μm程度である。
【0027】
燃料極活性部42は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0028】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0029】
[電解質]
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から隣のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に連続して配置されている。電解質5は、支持基板20の第1主面23a及び第2主面23bを覆うように構成されている。
【0030】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0031】
[反応防止膜]
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0032】
反応防止膜7は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0033】
[空気極]
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を基準にして、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61と空気極集電部62とを有している。
【0034】
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61おける、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0035】
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0036】
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。また、空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部に向かって延びている。燃料極集電部41と空気極集電部62とは、発電領域から互いに反対側に延びている。発電領域とは、燃料極活性部42と電解質5と空気極活性部61とが重複する領域である。
【0037】
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0038】
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0039】
[インターコネクタ]
インターコネクタ31は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。詳細には、一方の発電素子部10の空気極集電部62は、他方の発電素子部10に向かって延びている。また、他方の発電素子部10の燃料極集電部41は、一方の発電素子部10に向かって延びている。そして、インターコネクタ31は、一方の発電素子部10の空気極集電部62と、他方の発電素子部10の燃料極集電部41とを電気的に接続している。インターコネクタ31は、燃料極集電部41の第3凹部412内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部412内に埋設されている。
【0040】
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0041】
[集電部材]
図6は、
図2の部分拡大図である。
図6では、セルスタック装置100のうち各燃料電池セル300の基端部付近が図示されている。
【0042】
図6に示すように、隣接する2つの燃料電池セル300(第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300b)は、集電部材301によって電気的に接続される。
【0043】
集電部材301は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間に配置される。集電部材301は、支持基板20の両主面に配置された複数の発電素子部10のうち、最も基端側に配置された基端側発電素子部10aよりも基端側に配置されている。
【0044】
集電部材301は、第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300bそれぞれの基端側に接合される。詳細には、集電部材301は、導電性接合材102を介して、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10aから延びる電気的接続部110と、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10aから延びる空気極集電部62とに接合される。
【0045】
導電性接合材102としては、周知の導電性セラミックス等を用いることができる。例えば、導電性接合材102は、(Mn,Co)
3O
4、(La,Sr)MnO
3、及び(La,Sr)(Co,Fe)O
3などから選ばれる少なくとも1種によって構成することができる。
【0046】
ここで、
図7は、集電部材301の斜視図であり、
図8は、
図7のA−A断面図である。
図7では、集電部材301が第1燃料電池セル300aに接合された状態が示されている。
図7では、第2燃料電池セル300bが省略されているが、実際には第1燃料電池セル300aと対向するように第2燃料電池セル300bが配置されている。
【0047】
集電部材301は、第1接合部a1、第2接合部a2、第1連結部b1、及び第2連結部b2を有する。
【0048】
第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aに接合される。詳細には、第1接合部a1は、導電性接合材102によって、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる電気的接続部110に接合される。なお、電気的接続部110は、第1接続部111と第2接続部112を有している。第1接続部111は、上述したインターコネクタ31と同様の構成及び材質とすることができる。また、第2接続部112は、上述した空気極集電部62と同様の材料から構成することができる。第2接続部112は、第1接続部111と電気的に接続されており、下方へと延びている。
図8に示すように、第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aの外表面Taと対向する主面Saを有する。
【0049】
第1接合部a1は、平板状に形成される。z軸方向における第1接合部a1の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができる。本実施形態において、第1接合部a1は、幅方向に延びる矩形に形成されているが、第1接合部a1の形状に特に制限はなく、三角以上の多角形、円形、楕円形、或いは、これら以外の複雑形状であってもよい。
【0050】
第1接合部a1には、複数の第1貫通孔c1が形成される。
図8に示すように、各第1貫通孔c1は、主面Saに連なる内壁面Scを有する。各第1貫通孔c1には、導電性接合材102が充填されている。これによって、第1燃料電池セル300aに対する第1接合部a1の接合力を向上させることができる。導電性接合材102は、各第1貫通孔c1から外側に突出していてもよく、さらに第1接合部a1の外表面上に広がっていてもよい。
【0051】
本実施形態において、各第1貫通孔c1は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、各第1貫通孔c1の形状に特に制限はなく、円形、楕円形、三角以上の多角形、又は、これら以外の複雑形状であってもよい。また、本実施形態では、3個の第1貫通孔c1が設けられているが、第1貫通孔c1の個数及び位置は適宜変更可能である。
【0052】
第2接合部a2は、第1接合部a1と電気的に接続される。第2接合部a2は、第2燃料電池セル300bに接合される。詳細には、第2接合部a2は、導電性接合材102によって、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる空気極集電部62に接合される。第2接合部a2は、配列方向において第1接合部a1と対向する。
【0053】
第2接合部a2は、平板状に形成される。z軸方向における第2接合部a2の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができる。本実施形態において、第2接合部a2は、第1接合部a1と同様の形状を有しているが、第1接合部a1と異なる形状であってもよい。第2接合部a2の形状に特に制限はなく、三角以上の多角形、円形、楕円形、或いは、これら以外の複雑形状であってもよい。
【0054】
第2接合部a2には、複数の第2貫通孔c2が形成される。各第2貫通孔c2には、導電性接合材102が充填されている。これによって、第2燃料電池セル300bに対する第2接合部a2の接合力を向上させることができる。導電性接合材102は、各第2貫通孔c2から外側に突出していてもよく、さらに第2接合部a2の外表面上に広がっていてもよい。
【0055】
本実施形態において、各第2貫通孔c2は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、各第2貫通孔c2の形状に特に制限はなく、円形、楕円形、三角以上の多角形、又は、これら以外の複雑形状であってもよい。また、本実施形態では、3個の第2貫通孔c2が設けられているが、第2貫通孔c2の個数及び位置は適宜変更可能である。
【0056】
第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ第1接合部a1と第2接合部a2とに連結される。本実施形態において、第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ湾曲しているが、これに限られない。第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ平板状であってもよいし、少なくとも1箇所で屈曲する形状であってもよい。
【0057】
また、本実施形態では、第1及び第2連結部b1,b2が、集電部材301の両端部に配置されているが、第1及び第2連結部b1,b2の位置は特に制限されない。
【0058】
[集電部材の内部構成]
次に、集電部材301(具体的には、第1接合部a1)の詳細な構成について、図面を参照しながら説明する。
図9は、
図8の領域R1の拡大図である。
【0059】
集電部材301は、基材302と、コーティング膜303とを有する。コーティング膜303は、酸化クロム膜303aと被覆膜303bとを含む。
【0060】
基材302は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)及びNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材302におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
【0061】
基材302は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材302におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。基材302におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。基材302は、TiをTiO
2(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl
2O
3(アルミナ)として含有していてもよい。
【0062】
基材302は、第1燃料電池セル300a(「燃料電池セル」の一例)と対向する主面S1と、主面S1に連なる側面S2とを有する。主面S1は、第1接合部a1の主面Saに沿って形成される。側面S2は、第1接合部a1に形成された第1貫通孔c1の内壁面Scに沿って形成される。第1接合部a1の主面Sa及び第1貫通孔c1の内壁面Scは、それぞれコーティング膜303の外表面である。側面S2は、主面S1に対して傾斜していてよいし、主面S1に対して略垂直であってもよい。略垂直とは、物理的に厳密な意味で垂直な場合だけでなく、15°以内の傾きで連なる場合を含むことを意味する。主面S1は、x−y平面に沿って広がる。側面S2は、y−z平面に沿って広がる。主面S1及び側面S2は、それぞれ略平面であってもよい。略平面とは、物理的に厳密な意味で平面の場合だけでなく、微小な凹凸が存在する場合や、全体的或いは部分的に微小な歪みがある場合を含むことを意味する。
【0063】
基材302は、基材本体302aと、複数の凹部302b(「第1凹部」の一例)と、複数のアンカー部302c(「第1アンカー部」の一例)とを有する。基材本体302aは、基材302の本体部分である。各凹部302bは、側面S2に形成される。各アンカー部302cは、各凹部302b内に配置され、コーティング膜303に接続される。各凹部302bと各アンカー部302cとの構成については後述する。
【0064】
コーティング膜303は、基材302の少なくとも一部を覆い、各アンカー部302cに接続される。本実施形態において、コーティング膜303は、酸化クロム膜303aと被覆膜303bとを含む。
【0065】
酸化クロム膜303aは、基材302上に形成される。酸化クロム膜303aは、基材302を被覆する。酸化クロム膜303aは、基材302の一部を被覆していてもよいし、基材302の全体を被覆していてもよい。
【0066】
酸化クロム膜303aは、酸化クロムによって構成される。酸化クロム膜303aの厚みは特に制限されないが、例えば0.5〜10μmとすることができる。
【0067】
被覆膜303bは、酸化クロム膜303a上に形成される。被覆膜303bは、基材302を被覆する。具体的には、被覆膜303bは、基材302上に形成された酸化クロム膜303aを被覆している。被覆膜303bは、基材302の一部を被覆していてもよいし、基材302の全体を被覆していてもよい。被覆膜303bは、基材302のうちセルスタック装置100の作動中に酸化剤ガスと接触する領域を被覆していることが好ましい。
【0068】
被覆膜303bは、基材302からのCrの揮発を抑えることによって、各燃料電池セル300の空気極6におけるCr被毒を抑制する。被覆膜303bを構成する材料としては、セラミックス材料を用いることができる。セラミックス材料の具体的な種類は、適用箇所に応じて適宜選択することができる。本実施形態では、集電部材301に導電性が求められるため、セラミックス材料としては、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物、Mn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物などを用いることができる。ただし、被覆膜303bは、Crの揮発を抑制できればよく、その構成材料はセラミックス材料に限られない。被覆膜303bの厚みは特に制限されないが、例えば1〜200μmとすることができる。
【0069】
[凹部及びアンカー部の構成]
次に、基材302が有する各凹部302b(「凹部」の一例)と各アンカー部302c(「アンカー部」の一例)との構成について、図面を参照しながら説明する。
図10は、
図9の領域R2の拡大図である。
図10は、基材302の側面S2に垂直な断面に相当する。
【0070】
凹部302bは、基材302の側面S2に形成される。凹部302bは、側面S2に形成される開口302dから基材本体302aの内部に向かって延びる。
図10に示すように、凹部302bは、開口302dを起点として、第1燃料電池セル300aから離れる方向に延びる。
【0071】
アンカー部302cは、凹部302b内に配置される。アンカー部302cは、凹部302bの開口302d付近においてコーティング膜303に接続される。本実施形態では、各アンカー部302cと被覆膜303bとの間に酸化クロム膜303aが介挿されているため、各アンカー部302cは酸化クロム膜303aに接続される。ただし、各アンカー部302cと被覆膜303bとの間に酸化クロム膜303aが介挿されていない場合、各アンカー部302cは被覆膜303bに接続される。
【0072】
アンカー部302cは、凹部302bの開口302dを起点として、第1燃料電池セル300aから離れる方向に延びる。このように、アンカー部302cが凹部302bに係止されることによって、コーティング膜303にアンカー効果が生じる。そのため、基材302に対するコーティング膜303の密着力が向上するため、コーティング膜303が基材302から剥離することを抑制できる。特に、アンカー部302cが第1燃料電池セル300aから離れる方向に向かって斜めに延びているため、第1燃料電池セル300aに押しつけられる向きの外力が集電部材301にかかったとしても、コーティング膜303が剥離することを効果的に抑制できる。また、アンカー部302cが第1燃料電池セル300aから離れる方向に向かって斜めに延びているため、アンカー部302cによって電流経路が妨げられて基材302が発熱して劣化することを抑制できる。
【0073】
アンカー部302cは、凹部302bの全体に充填されていてもよいし、凹部302bの一部に配置されていてもよい。従って、凹部302b内には、気孔が存在していなくてもよいし、部分的に気孔が存在していてもよい。
【0075】
本実施形態に係る基材302は、側面S2に垂直な断面において、3つの凹部302b(「複数の第1凹部」の一例)と3つのアンカー部302c(「複数の第1アンカー部」の一例)とを有している。2つの凹部302bは、直線状の楔形に形成されており、互いに略平行に延びている。残り1つの凹部302bは、全体的に湾曲した形状に形成されている。
【0076】
ここで、側面S2は、第1領域S21と、第2領域S22とを含む。第1領域S21は、主面S1から離れている。第2領域S22は、主面S1と第1領域S21とに連なる。すなわち、第1領域S21は、側面S2のうち第1燃料電池セル300aから離れた領域であり、第2領域S22は、側面S2のうち第1燃料電池セル300aに近い領域である。第1領域S21は、特に限定されるものではないが、例えば、側面S2のうち、10〜90%程度の範囲を占めている。第2領域S22は、特に限定されるものではないが、例えば、側面S2のうち、10〜90%程度の範囲を占めている。第1領域S21と第2領域S22との境界は、第1主面S1と側面S2との境界に対して略平行な方向(すなわち、y軸方向)に沿った線で規定される。
【0077】
本実施形態において、各凹部302bは、側面S2のうち第2領域S22に形成される。従って、アンカー部302cは、基材本体302aのうち第1燃料電池セル300aに比較的近い位置に配置される。このように、第1燃料電池セル300aの熱膨張の影響から高い応力が発生してコーティング膜303に剥離が生じやすい第2領域S22にアンカー部302cが位置しているため、コーティング膜303の剥離を効率的に抑制することができる。
【0078】
アンカー部302cは、Cr(クロム)よりも平衡酸素圧の低い元素(以下、「低平衡酸素圧元素」という。)の酸化物を含有することが好ましい。すなわち、アンカー部302cは、Crよりも酸素との親和力が大きくて酸化しやすい低平衡酸素圧元素の酸化物を含有することが好ましい。これにより、セルスタック100の運転中、被覆膜303bを透過してくる酸素をアンカー部302cに優先的に取り込むことができるため、アンカー部302cを取り囲む基材本体302aが酸化してアンカー部302cが肥大化することを抑制できる。その結果、アンカー部302cの形状を保つことでアンカー効果を長期間に亘って維持できるため、コーティング膜303の剥離を長期間に亘って抑制できる。
【0079】
低平衡酸素圧元素としては、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Ca(カルシウム)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)などが挙げられ、その酸化物としては、Al
2O
3、TiO
2、CaO、SiO
2、MnO、MnCr
2O
4などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0080】
アンカー部302cにおける低平衡酸素圧元素の含有率は特に制限されないが、全構成元素のうち酸素を除く元素の総和に対する各元素のモル比をカチオン比と定義した場合、カチオン比で0.01以上が好ましい。これにより、アンカー部302cを取り囲む基材本体302aの酸化をさらに抑制できるため、基材302に対する酸化クロム膜303aの密着力をさらに長期間維持させることができる。アンカー部302cにおけるCrよりも平衡酸素圧の低い元素の含有率は、カチオン比で0.05以上がより好ましく、0.10以上が特に好ましい。
【0081】
アンカー部302cにおける低平衡酸素圧元素の含有率は、以下のように得られる。まず、基材302の断面をFE−SEM(Field Emission − Scanning Electron Microscope:電界放射型走査型電子顕微鏡)によって1000−20000倍に拡大した画像から無作為に選出した20個のアンカー部302cについて、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を用いて、アンカー部302cの実長さL1を11等分する10点における低平衡酸素圧元素の含有率をカチオン比で測定する。次に、20個のアンカー部302cごとに10点で測定された含有率から最大値を選択する。次に、20個のアンカー部302cごとに選択された最大値を算術平均する。この算術平均によって得られた値が、アンカー部302cにおける低平衡酸素圧元素の含有率である。一断面において20個のアンカー部302cを観察できない場合には、複数断面から20個のアンカー部302cを選択すればよい。なお、アンカー部302cの実長さL1とは、
図11に示すように、基材302の側面S2に平行な方向(z軸方向)における、アンカー部302cのうち凹部302bに埋設された部分の中点を連ねた線の長さである。
【0082】
アンカー部302cは、低平衡酸素圧元素の酸化物を1種だけ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。例えば、アンカー部302cは、低平衡酸素圧元素の酸化物として、Al
2O
3のみを含有していてもよいし、Al
2O
3とTiO
2の混合体を含有していてもよい。
【0083】
なお、アンカー部302cは、酸化クロムを含有していてもよい。ただし、アンカー部302cにおけるクロムの含有率は、カチオン比で0.95以下が好ましく、0.90以下がより好ましい。
【0084】
アンカー部302cの実長さL1は特に制限されないが、15μm以上が好ましい。これにより、アンカー部302cによって十分なアンカー効果を生むことができる。アンカー部302cの実長さL1は、20μm以上がより好ましく、30μm以上が特に好ましい。
【0085】
アンカー部302cの垂直深さD1は特に制限されないが、15μm以上が好ましい。これにより、アンカー部302cによって十分なアンカー効果を生むことができる。アンカー部302cの垂直深さD1とは、
図11に示すように、基材302の側面S2に垂直な方向(x軸方向)における、アンカー部302cのうち凹部302bに埋設された部分の深さである。アンカー部302cの垂直深さD1は、17μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。
【0086】
アンカー部302cの幅W1は特に制限されないが、0.5μm以上が好ましい。これにより、アンカー部302cによって十分なアンカー効果を生むことができる。アンカー部302cの幅W1とは、
図11に示すように、実長さL1を5等分する4箇所において、アンカー部302cの最短の幅を測定し、得られた4つの幅Wa,Wb,Wc,Wdを算術平均した値である。アンカー部302cの幅W1は、0.7μm以上がより好ましく、1.0μm以上が特に好ましい。
【0087】
側面S2に対するアンカー部302cの角度θ1は特に制限されないが、60度以下が好ましい。これにより、アンカー部302cによって十分なアンカー効果を生むことができる。アンカー部302cの角度θ1とは、
図11に示すように、開口302dの中心点とアンカー部302cの最深点とを結ぶ直線と側面S2とが成す角度である。アンカー部302cの角度θ1は、50度以下がより好ましく、40度以下が特に好ましい。
【0088】
なお、基材302は、凹部302b及びアンカー部302cを少なくとも1つずつ有していればよく、その数は適宜変更可能である。また、基材302が、複数の凹部302b及び複数のアンカー部302cを有する場合、各アンカー部302cは互いに平行な方向に延びていてもよいし、異なる方向に延びていてもよい。また、各アンカー部302cの断面形状及びサイズは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、
図11では、直線状の楔形に形成されたアンカー部302cと湾曲状の楔形に形成されたアンカー部302cとを図示したが、アンカー部302cの断面形状はこれに限られない。アンカー部302cの断面形状は、全体的或いは部分的に湾曲又は屈曲していてもよいし、楔形以外の形状(錐台形、矩形、他の複雑形など)であってもよい。
【0089】
[集電部材の製造方法]
集電部材301の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0090】
まず、
図12に示すように、基材302の側面S2のうち第2領域S22に所望数の凹部302bを形成する。凹部302bは、例えばサンドブラストを斜めに吹き付けることによって形成することができる。この際、研磨剤の粒径を調整したり、或いは、ローラーで側面S2を均したりすることによって、凹部302bの実長さL1及び幅W1を調整することができる。
【0091】
次に、
図13に示すように、基材302の側面S2上に低平衡酸素圧元素の酸化物を含むペーストを塗布することによって、凹部302bの内部にペーストを充填する。ペーストは、低平衡酸素圧元素の酸化物粉末にエチルセルロースとテルピネオールを添加することによって調製される。
【0092】
次に、
図14に示すように、例えばスキージを用いて、側面S2上に残った余分なペーストを除去する。
【0093】
次に、
図15に示すように、基材302を大気雰囲気で熱処理(800〜900℃、5〜20時間)することによって、凹部302bに充填されたペーストを固化してアンカー部302cを形成するとともに、基材302を覆う酸化クロム膜303aを形成する。
【0094】
次に、
図16に示すように、酸化クロム膜303a上にセラミックス材料のペーストを塗布した後に熱処理(800〜900℃、1〜5時間)することによって、被覆膜303bを形成する。
【0095】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0096】
[変形例1]
上記実施形態では、本発明に係る集電部材301を横縞型の燃料電池セルに適用した場合について説明したが、いわゆる縦縞型の燃料電池セルにも適用することができる。縦縞型の燃料電池セルは、導電性の支持基板と、支持基板の一主面上に配置される発電部(燃料極、固体電解質層及び空気極)と、支持基板の他主面上に配置されるインターコネクタとを備える。また、本発明に係る電気化学セル用金属部材は、燃料電池のほか、固体酸化物型の電解セルを含む固体酸化物型の電気化学セルにも適用可能である。
【0097】
[変形例2]
上記実施形態では、
図7を参照しながら集電部材301の構成について説明したが、集電部材301の具体的な構成は適宜変更可能である。例えば、集電部材301は、3以上の接合部を有していてもよいし、接合部には貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0098】
[変形例3]
上記実施形態では、基材302の側面S2のうち第1領域S21には凹部が形成されないこととしたが、側面S2の第1領域S21にも凹部が形成されていてもよい。
【0099】
例えば、
図17に示すように、基材302は、基材本体302aと、複数の第1凹部302eと、複数の第1アンカー部302fと、複数の第2凹部302gと、複数の第2アンカー部302hとを有していてもよい。
【0100】
各第1凹部302eは、上記実施形態に係る凹部302bと同じ構成であり、各第1アンカー部302fは、上記実施形態に係るアンカー部302cと同じ構成である。
【0101】
各第2凹部302gは、側面S2のうち第1領域S21に形成される。各第2凹部302gは、側面S2のうち第1領域S21に形成された開口302kから基材本体302aの内部に向かって延びる。
図17において、各第2凹部302gは、側面S2に略垂直な方向に延びているが、各第2凹部302gが延びる方向は特に制限されない。
【0102】
各第2アンカー部302hは、第2凹部302g内に配置される。第2アンカー部302hは、凹部302gの開口302k付近においてコーティング膜303に接続される。このような第2アンカー部302hを設けることによって、基材302に対するコーティング膜303の密着力を更に向上させることができるため、コーティング膜303が基材302から剥離することを更に抑制できる。
【0103】
第1アンカー部302f及び第2アンカー部302hそれぞれの数は特に制限されない。従って、基材302は、側面S2に垂直な断面において、第2凹部302gを1つだけ有していてもよい。
【0104】
第2アンカー部302hの実長さは、第1アンカー部302fの実長さL1よりも短いことが好ましい。これによって、アンカー効果によるコーティング膜303の剥離防止効果を向上できるだけでなく、アンカー部による電流の妨げを低減することができる。第2アンカー部302hの実長さは、上記実施形態にて説明したアンカー部302cの実長さL1と同じ手法で測定される。
【0105】
また、第2アンカー部302hの垂直深さは、第1アンカー部302fの垂直深さD1よりも短いことが好ましい。これによって、集電部材301と第1燃料電池セル300aとの間における電流の流れが、第2アンカー部302hによって阻害されることを抑制できる。第2アンカー部302hの垂直深さは、上記実施形態にて説明したアンカー部302cの垂直深さD1と同じ手法で測定される。
【0106】
また、第2アンカー部302hの幅は、第1アンカー部302fの幅W1よりも狭いことが好ましい。これによって、第2アンカー部302hが側面S2において電流の流れを妨げることを低減できる。第2アンカー部302hの幅は、上記実施形態にて説明したアンカー部302cの幅W1と同じ手法で測定される。
【0107】
[変形例4]
上記実施形態では、各凹部302bは、側面S2のうち第2領域S22のみに形成されることとしたが、これに限られない。各凹部302bは、側面S2のうち第1領域S21のみに形成されていてもよいし、第1領域S21と第2領域S22の両方に形成されていてもよい。
【0108】
[変形例5]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303aによって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。側面は、第1燃料電池セル300a側の第1領域と、第1燃料電池セル300aと反対側の第2領域とを含む。第1領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。第2領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。
【0109】
ここで、第2領域における表面粗さは、第1領域における表面粗さよりも大きくすることができる。この構成によれば、集電部材301の側面のうち、第1領域よりも第2領域の方に重点的に被覆膜303bが形成されやすくなる。この結果、第2領域は確実に被覆膜303bによって覆われるため、第1燃料電池セル300aの外側面に酸化剤ガスが供給されても、第2領域における酸化を抑制することができる。
【0110】
本変形例において、第2領域における被覆膜303bの厚さは、第1領域における被覆膜303bの厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、酸化剤ガスに晒され易い領域で、さらに酸化を抑制することができる。また、第1領域における被覆膜303bの厚さは、第2領域における被覆膜303bの厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、基材本体部302aがクロムを含む金属の場合に、第1燃料電池セル300aに近い側の領域において本体部からのクロムの揮発をより抑制することによって、第1燃料電池セル300aにおけるクロム被毒をより抑制することができる。また、第2領域における表面粗さは、第1及び第2主面における表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0111】
[変形例6]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303aによって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。側面は、第1燃料電池セル300a側の第1領域と、第1燃料電池セル300aと反対側の第2領域とを含む。第1領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。第2領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。
【0112】
ここで、第1領域における表面粗さは、第2領域における表面粗さよりも大きくすることができる。この構成によれば、集電部材301の側面のうち、第1領域における表面粗さが第2領域における表面粗さよりも大きいため、第1領域において被覆膜303bの剥離を抑制することができる。また、第2領域の表面粗さが第1領域の表面粗さよりも小さいため、第1燃料電池セル300aの外側面に酸化剤ガスを流したときに酸化され易い第2領域の表面積を小さくして酸化を抑制できる。
【0113】
本変形例において、第1領域における被覆膜303bの厚さは、第2領域における被覆膜303bの厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、基材本体部302aがクロムを含む金属の場合に、本体部からのクロムの揮発をより抑制することによって、第1燃料電池セル300aにおけるクロム被毒をより抑制することができる。また、第2領域における被覆膜303bの厚さは、第1領域における被覆膜303bの厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、酸化剤ガスに晒され易い領域で、さらに酸化を抑制することができる。また、第1領域における表面粗さは、第1及び第2主面における表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0114】
[変形例7]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303aによって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる一対の側面とを有する。
【0115】
ここで、第2主面の面積は、第1主面の面積よりも小さくすることができる。この構成によれば、集電部材301の一対の主面のうち、酸化剤ガスに晒される側にある第2主面は、第1主面よりも面積が小さくなっている。このため、従来のように第1主面と同じ面積の第2主面を有する集電部材301に比べて、第2主面をより確実に被覆膜303bで覆うことができる。また、第1主面は第2主面よりも面積が大きいため、集電部材301と第1燃料電池セル300aとの接合面積が大きくなり、電気抵抗を小さくすることができる。
【0116】
本変形例において、第1主面に垂直な断面において、一対の側面は、第2主面に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。この構成によれば、一対の側面は、傾斜していない場合に比べて被覆膜303bとの接合面積が大きくなるため、被覆膜303bとの接合強度を向上させることができる。また、第2主面と少なくとも一方の側面とがなす角度は、鈍角であることが好ましい。第2主面と側面との境界部である角部は、第1燃料電池セル300aの外側面に流れる酸化剤ガスに露出され易い位置に配置される。この第2主面と側面との角部の角度を鈍角とすることによって、この角部への被覆膜303bの形成を容易にし、より確実に被覆膜303bを形成することができる。
【0117】
[変形例8]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303aによって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。
【0118】
ここで、本体部は、第1主面と側面とがなす角部から第1主面が向く方向に突出する突起部と、第2主面と側面とを連結する湾曲面とをさらに有していてもよい。この構成によれば、本体部は第1燃料電池セル300a側に突出する突起部を有しているため、本体部と被覆膜303bとの密着性を向上させることができる。この結果、被覆膜303bが剥離することを抑制することができる。また、突起部とは反対側の角部は、湾曲面によって形成されているため、被覆膜303bの形成が容易となり、被覆膜303bをより確実に形成することができる。
【0119】
[変形例9]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303aによって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。
【0120】
ここで、本体部は、第2主面と側面とがなす角部から第2主面が向く方向に突出する突起部と、第1主面と側面とを連結する湾曲面とをさらに有していてもよい。この構成によれば、第1燃料電池セル300a側において、湾曲面によって第1主面と側面とを連結しているため、第1主面と側面とが直接連結されて角部を構成する従来の本体部に比べて、電流が集中することを抑制することができる。この結果、この部分における酸化を抑制することができる。また、第2主面と側面とがなす角部から第2主面が向く方向に突起部が突出しているため、この突起部が優先的に酸化されて他の部分の酸化を抑制することができる。
【0121】
[変形例10]
集電部材301は、基材302及び酸化クロム膜303aによって構成される本体部を有する。本体部は、第1燃料電池セル300a側を向く第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面及び第2主面に連なる側面とを有する。側面は、第1燃料電池セル300a側の第1領域と、第1燃料電池セル300aと反対側の第2領域とを含む。第1領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。第2領域は、側面のうち10〜90%程度の範囲を占める。
【0122】
ここで、側面は、第1領域と第2領域との間に形成される段差部を有していてもよい。この構成によれば、段差部が被覆膜303bとの密着性を向上させることができるため、本体部からの被覆膜303bの剥離を抑制することができる。
【0123】
本変形例において、段差部は、第2主面が向く方向を向いていることが好ましい。この場合、第1主面に垂直な断面において、本体部の一対の側面は、第2主面に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。段差部が向く方向と第2主面が向く方向とがなす角度が45度以内であれば、段差部は第2主面が向く方向を向いていると言える。また、段差部は、第1主面が向く方向を向いている。この場合、第1主面に垂直な断面において、本体部の一対の側面は、第1主面に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。段差部が向く方向と第1主面が向く方向とがなす角度が45度以内であれば、段差部は第1主面が向く方向を向いていると言える。
【0124】
本変形例において、側面と直交する方向に沿って側面を見た場合において、第1領域の第2主面側の端部と、第2領域の第1主面側の端部とが互いに重複するように段差部が構成されることが好ましい。この構成によれば、段差部と被覆膜303bとの密着性がより向上するため、本体部からの被覆膜303bの剥離をより確実に抑制することができる。
【0125】
[変形例11]
上記実施形態において、コーティング膜303は、酸化クロム膜303aと被覆膜303bとを含むこととしたが、少なくとも被覆膜303bを含んでいればよい。例えば、
図18に示すように、コーティング膜303は、実質的に被覆膜303bのみを含んでいてもよい。各アンカー部302cの実長さL1、垂直深さD1及び接合幅W1は、上記実施形態にて説明したとおりである。
図18に示す構成であっても、第1燃料電池セル300aから離れる方向に各アンカー部302cを延ばすことによって、第1燃料電池セル300aに押しつけられる向きの外力が集電部材301にかかったとしても、コーティング膜303が剥離することを抑制できる。なお、被覆膜303bのみを含むコーティング膜303は、埋設部用のペーストを凹部302bに埋設した後、被覆膜用のペーストを塗布して熱処理することで形成できる。
【0126】
[変形例12]
上記実施形態において、各アンカー部302cは、コーティング膜303のうち酸化クロム膜303aに接続されることとしたが、
図19に示すように、各アンカー部302cは、コーティング膜303のうち被覆膜303bに接続されていてもよい。この場合、各アンカー部302cの一部は、基材302の凹部302bの外に突出し、各アンカー部302cの残りの部分が、基材302の凹部302bに埋設される。基材302に対してアンカー効果を発揮するのは、各アンカー部302cのうち凹部302bに埋設された部分である。そのため、各アンカー部302cの実長さL1、垂直深さD1及び接合幅W1は、各アンカー部302cのうち凹部302bに埋設された部分のみを測定対象として算出する。
図19に示す構成であっても、第1燃料電池セル300aから離れる方向に各アンカー部302cを延ばすことによって、第1燃料電池セル300aに押しつけられる向きの外力が集電部材301にかかったとしても、コーティング膜303が剥離することを抑制できる。なお、コーティング膜303のうち被覆膜303bに各アンカー部302cを接続させるには、アンカー部用のペーストを凹部302bに埋設した後、基材302上に被覆膜用のペーストを塗布して熱処理することによって、被覆膜303bを形成しながら、さらに熱処理することによって、基材302と被覆膜303bとの間に酸化クロム膜303aを析出させればよい。
【解決手段】集電部材301は、クロムを含有する合金材料によって構成される基材302と、基材302を覆うコーティング膜303とを有する。基材302は、第1燃料電池セル300aと対向する主面S1と、主面S1に連なる側面S2と、側面S2に形成される凹部302bと、凹部302b内に配置され、コーティング膜303に接続されるアンカー部302cとを含む。アンカー部302cは、側面S2に形成された開口302dを起点として、第1燃料電池セル300aから離れる方向に延びる。