特許第6484400号(P6484400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6484400切削インサート用ホルダ組立体及び切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484400
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】切削インサート用ホルダ組立体及び切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20190304BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20190304BHJP
   B23B 27/10 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B23B27/16 B
   B23B27/04
   B23B27/10
   B23B27/16 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-176474(P2013-176474)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-46452(P2014-46452A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2016年6月28日
(31)【優先権主張番号】12182213.4
(32)【優先日】2012年8月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】アンデルス ブレイシュ
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−108907(JP,A)
【文献】 特開2002−337009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0283794(US,A1)
【文献】 特表2002−509809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/16,27/04,29/00,27/10,
B23C 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工に用いられる切削インサート(2)のためのホルダ組立体であって、
間隔をあけた第1及び第2のクランプ部材(4,5)を備え、該第1及び第2のクランプ部材(4,5)は、互いに向き合って切削インサートを挿入できる中間ギャップ(6)を画定する内側座面をそれぞれ有し、
第1及び第2のクランプ部材は、二つの内側座面の間で切削インサートをクランプしてしっかりと保持するためにクランプメカズムによって、少なくとも限られた範囲で互いの方へ動くことができ、その後、切削インサートをホルダ組立体からリリースするために、クランプメカニズムをリリースすることによって互いから離れる方向に動くことができ、
クランプメカニズムは、第1及び第2のクランプ部材の各々に形成されたキャビティ内に少なくとも部分的に受容されるドローバー(12)を含み、キャビティは互いに整列して中間ギャップに対して横方向に延びているホルダ組立体において、
少なくとも第1のクランプ部材(4)には、キャビティ内又はそのまわりに位置して中間ギャップ(6)から離れる方向に向いた肩面(18)が形成され、
クランプメカニズムはドローバー(12)の他に圧縮ばね部材(13)を含み、
ドローバー(12)は、ボルトの形態をなし、ドローバーは、ヘッド(14)とシャフト(15)を含み、シャフト(15)は、滑らかな第1の部分(15’)と、ヘッド(14)と反対側の端に雄ねじ溝を有する第2の部分(15”)とを有し、少なくともシャフト(15)の第1の部分は、第1のクランプ部材のキャビティ内で少なくとも限られた範囲で移動可能であり、ヘッド(14)は、肩面に向いている対応面(19)を有し、
圧縮ばね部材は、ヘッド(14)の対応面と肩面との間で、圧縮ばね部材が対応面と肩面とに対して、対応面と肩面とを互いから離れる方向に動かすように作用する力で働きかけ、その結果、第1及び第2のクランプ部材が、切削インサート(2)をしっかりとクランプするように互いの方へ圧しつけられるように位置し、クランプメカニズムのリリースは、クランプ部材を互いの方へ動かすように作用するばね力に打ち勝つことができるリリース部材(22)によって遂行でき、
圧縮ばね部材(13)は、第1のクランプ部材(4)内のキャビティに収容されており、
第1及び第2のクランプ部材(4,5)はヒンジジョイント(8)のまわりで回ることによって互いに対して動くことができ、
第1及び第2のクランプ部材は、単一部品で一体的に形成され、ヒンジジョイントは弾性的に曲げることができる弾性材料部分(8)であり、
圧縮ばね部材(13)は、ドローバー(12)によってキャビティ内に装着され、ドローバーは、ヘッド(14)が第1のクランプ部材(4)のキャビティにあるように位置し、圧縮ばね部材を通って延び、移動可能にキャビティを通され、二つのクランプ部材の間のギャップ(6)を通り、第2のクランプ部材(5)のねじ溝つき孔に螺合することを特徴とするホルダ組立体。
【請求項2】
圧縮ばね部材(13)はいくつかのカップ形状ワッシャ(20)から構成されるカップばねであることを特徴とする請求項1に記載のホルダ組立体。
【請求項3】
カップ形状ワッシャ(20)は、連続するカップ形状ワッシャの凹側を一方向と他方向に交互に向けることを特徴とする請求項2に記載のホルダ組立体。
【請求項4】
ドローバー(12)は一方のクランプ部材から他方のクランプ部材へ冷却液の流れを可能にするために貫通通路(23)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のホルダ組立体。
【請求項5】
リリース部材(22)を挿入するための凹み(17)がギャップ(6)に関連して設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のホルダ組立体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のホルダ組立体(1)と、座面間に位置する切削インサート(2)と、を備える切削工具。
【請求項7】
クランプ部材(4,5)は単一部品で一体的に形成され、
ヒンジジョイントは弾性的に曲げられる弾性材料部分(8)であり、
クランプ部材の二つの座面の間のギャップ(6)は、ばね力に影響されない最初の段階では切削インサート(2)の厚さよりも小さく、切削インサートを挿入できるようにするためには二つのクランプ部材を曲げて引き離すことが必要になるほどであり、したがってそれは切削インサートに対するクランプ力に寄与することを特徴とする請求項6に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工作業に適合する切削インサートのためのホルダ組立体に関し、詳しくは、間隔をあけた第1及び第2のクランプ部材を備え、各クランプ部材は互いに向き合って中間のギャップを画定するそれぞれの内側座面を有し、このギャップ内に切削インサートを挿入することができるようになっており、クランプ部材はクランプメカニズムによって切削インサートを座面の間にクランプしてしっかりと保持するために少なくとも限られた範囲で互いの方へ動くことができ、その後、クランプメカニズムをリリースすることで二つのクランプ部材は互いから離れる方向に動いて切削インサートをホルダ組立体から解放することができ、クランプメカニズムは二つのクランプ部材に形成されるキャビティに少なくとも部分的に受容され、このキャビティは互いに整列されて中間のギャップに対して横方向に延びている、そのようなホルダ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の機械加工では、互いの方へ及び互いから離れるように少なくともある範囲で動かすことができるクランプ顎又はクランプ部材の対向する表面の間に切削インサートをしっかりとクランプするいろいろなホルダ組立体が知られている。切削インサートは通常高価な高い質の硬い金属合金から作られるので、コストを節約するためにはできるだけ小さく作ることが望ましい。これらの条件は、機械加工作業の間に意図せずに解除されることがないように小さな切削インサートをしっかりとクランプすることができるホルダ組立体に厳しい要求を課する。切削インサートの寸法が小さいために、クランプ部材と切削インサートとの間の接触表面も非常に小さくなる。したがって、機械加工作業の間にインサートが受ける力に抗するためにクランプ部材と切削インサートとの間の接触圧力も高くなければならない。しかし、接触圧力が高すぎる場合、クランプ中に、又は機械加工作業の間に切削インサートが壊れるかもしれないので、高すぎる接触圧力は許されない。
【0003】
通常、クランプ部材の間のクランプ圧力は少なくともひとつのねじによって調整され、クランプ部材を切削インサートの方へクランプするようにねじがある程度締められる。したがって、十分なクランプ圧力を確保しつつクランプ圧力が高くなりすぎて切削インサートを損傷することがないようにするために、切削インサートを交換するオペレータは通常、トルクレンチを用いてねじが正しく締められるようにしなければならない。このように切削インサートに正しいクランプ力を加える責任はオペレータにあり、ミスをする危険が生ずる。さらに、ねじによって切削インサートを外したりクランプしたりし、トルクレンチを用いて締め付けることは時間がかかる。
【0004】
特許文献1から、請求項1の前文に示されている種類のホルダ組立体を含む切削工具が知られており、そこではクランプメカニズムは互いに対してある角度をなす2つのねじを備えている。第1のねじは、ドローバーとして機能し、第1のクランプ顎に螺合され、ヘッドが第2のクランプ顎の座面に載る。第2のねじは第1のねじに対してある角度で延び、第2のねじの先端が第1のねじのヘッドに出会うように位置する。第2のねじを締め付けると、それは第1のねじのヘッドの円錐面に突き当たって、第2のねじを締め付けると第1のねじが第1の顎を第2の顎の方へ可能な限り引っ張るようになる。この位置で、第1のねじを用いて、第1及び第2のクランプ顎の間に位置する切削インサートに所望のクランプ力を設定することができる。その後、切削インサートは第2のねじをゆるめるだけで解除でき、切削インサートを交換した後に第2のねじを第1のねじに突き当たって完全にストップするまで可能な限り締め付けることができる。この位置で、第1のねじは自動的に設定された位置まで引っ張られ、その位置で切削インサートへのクランプ力は設定されたレベルになり、締め付けるときにトルクレンチを用いる必要はない。しかし、この切削工具にはいくつか問題がある。第1に、切削工具インサートを交換するために第2のねじをゆるめたり締め付けたりするときに多少時間がかかり、切削インサートを頻繁に交換すると、第2のねじの工具との係合部分が摩耗することがある。また、切削インサートの寸法の非常に小さな変化もクランプ圧力を大きく変化させるため、切削インサートが正しいクランプ圧力でクランプされない恐れがある。また、第1及び第2のねじの間の接触表面の摩耗はクランプ力に大きな影響を及ぼす。さらに、オペレータが、第2のねじが完全に締められ第1のねじに突き当たってストップされるまで注意深く引かず、そのために正しいクランプ圧力が得られない恐れがある。特許文献1に開示された切削工具は、また、向きが異なる2つの孔と、それぞれの孔の内側のねじ溝を必要とし、そのため切削工具を製造するのに費用と時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1252954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、切削インサートに対する正しいクランプ圧力を小さい許容誤差で達成することが可能なホルダ組立体を提供することである。少なくともこの目的は請求項1に係わるホルダ組立体によって達成される。
【0007】
本発明はまた、上記の目的と本質的に同じ目的を有する切削工具に関する。この目的は、請求項11に係わる切削工具によって達成される。
【0008】
本発明のその他の目的及び特徴は、本発明の実施形態についての以下の説明と図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基礎となっているのは、請求項1の前文に係わるホルダ組立体によって、ドローバーに作用する圧縮ばね部材を備えたクランプメカニズムを設けることによって上記の目的が達成できるという直観である。ドローバーは、第1の部分が第1のクランプ部材のキャビティ内にあってそのクランプ部材と係合するように位置し、ドローバーの第2の部分が第2のクランプ部材のキャビティ内にあってそのクランプ部材と係合するように位置する。少なくとも第1のクランプ部材には、キャビティ内又はそのまわりに中間ギャップから離れる方向に向いた肩面が設けられ、ドローバーの第1の部分には第1のクランプ部材のキャビティ内で少なくともある程度変位可能な、肩面の方に向いた対応面が設けられる。圧縮ばね部材は肩面と対応面と間に、肩面と対応面が互いから押しやられるように位置し、その結果第1及び第2のクランプ部材は圧縮ばね部材によって互いの方へ圧しつけられる。ある切削工具を取り外し、別のものを挿入することができるように、リリース部材はクランプ部材を互いの方へ動かすように作用するばねの力に打ち勝つことができ、それによって座面を互いからある距離だけ離隔することができる。
【0010】
このような全体的な考え方の下で、本発明のホルダ組立体はいろいろな仕方で変えることができる。以下で記述し図示する第1の実施形態では、ドローバーは一端にねじ溝を有し、他端にヘッドを有するねじ又はボルトの形態を成す。ねじ溝は、第2のクランプ部材の孔における雌ねじ溝と係合し、第1のクランプ部材のキャビティ又は孔の内部に設けられ、ヘッドの下面は肩面と向き合う対応面として機能する。
【0011】
第2の実施形態では、ドローバーは一端にヘッドを有し、他端にナットを有するボルトであり、ドローバーのシャフトは第1並びに第2のクランプ部材のキャビティ又は孔の内部で少なくとも限られた 範囲で変位可能である。圧縮ばね部材はヘッドと第1のクランプ部材の上面としての肩面の間、並びにナットと第1のクランプ部材の皿穴に設けられた肩面の間、に位置する。
【0012】
第1及び第2の実施形態のホルダ組立体はどちらも、クランプ部材が互いに一体化されたクランプ顎の形であって、それらがヒンジジョイントを形成する弾性材料部分の形のフレキシブルジョイントによって結合されるタイプである。切削インサートは摩擦係合によってホルダ組立体から真っ直ぐに出て行く方向に取り付けられる。このタイプの係合はフレキシブルピボットが形成されたホルダ組立体に適している。その場合、切削インサートの取り外しと挿入のためにクランプ顎の小さな動きしか必要とされないからである。
【0013】
以下で記述し図示する本発明の第3の実施形態では、第1及び第2のクランプ部材は別々の部品であり、それらが、上方の又は第2のクランプ部材における皿穴に載る一端にヘッドを有し、下方の又は第1のクランプ部材における皿穴に収容される他端にナットを有するボルトによって結合される。圧縮ばね部材は、ナットのカウンター面と皿穴の端の肩面との間に位置する。ここでは、クランプ部材と切削インサートとのアタッチメントは第2のクランプ部材の下向きに突出するピンが切削インサートの凹みと係合する形の構造的係合である。この場合、切削インサートを取り外したり挿入したりするときのクランプ部材の間の動きは大きくならざるをえないので、クランプ部材を別々の部品として作ることが好ましい。
【0014】
しかし、ドローバーも他のいろいろな仕方で設計できることはいうまでもない。例えば、それは円形断面を有するように形成する必要はなく、他の断面形状も考えられる。ヘッドの代わりに、対応面として機能できる他の形の拡がった部分、例えばピン、を設けることもでき、クランプ部材のキャビティ又は孔と係合するためのねじ溝を形成する必要はなく、クランプ部材とドローバーの間の係合を可能にする他の形の部材又は構成も可能である。
【0015】
リリース部材又はツール、すなわちクランプ部材の間のギャップ又はスペースを拡げる部材又はツール、は多くの異なる仕方で形成し機能させることができる。記述し図示した3つの実施形態のすべてで、リリースツールは非円形断面の形の係合構造を有するシャンクを備える。最初の2つの実施形態では、非円形断面のシャンクは適当に形成された凹みが設けられたクランプ顎に挿入可能であり、シャンクのある回転位置でシャンクを回すことによってクランプ顎の間のスペース又はギャップを拡げることができる。第3の実施形態では、シャンクはボルトの端に作用を及ぼす。しかし、リリース部材は多くの異なる仕方で形成でき、例えば正方形、円形、その他の断面形状を有することができ、クランプ部材の間のスペース又はギャップを拡げることができるあらゆる実施形態が考えられる。さらに、リリース部材を挿入する孔又は凹みはドローバーの位置に対していろいろな位置に配置でき、同じひとつのホルダ組立体でいくつかの位置に設けて、切削工具が機械に装着されてスペースが限られているときに異なる方向からの切削インサートの交換を可能にすることができる。また、リリース部材は、例えば油圧又は空気圧で操作することができる。
【0016】
記述し図示したすべての実施形態で、圧縮ばね部材はいくつかのカップ状ワッシャが互いに重なって成るカップばねである。カップばねの利点は、短い圧縮長さで非常に強いばね力を達成でき、圧縮ばね部材の長さ並びにばね力をカップ状ワッシャの数を変え、積層の中の向きを変える、例えばすべてのカップ状ワッシャの凹側を同じ方向に向ける、カップ状ワッシャの積層のある半分の凹側をある方向に向け他の半分の凹側を別の方向に向ける、又は引き続くカップ状ワッシャの凹側を交互にある方向に向け交互に別の方向に向ける、などによって容易に調整できることである。最後にあげた実施形態の利点は、ばね部材のストロークの長さが長くなり、クランプ部材の間のより大きな開きを与えることが可能になり、それは切削インサートの交換を容易にするということである。しかし、他のタイプの圧縮ばね部材も考えられることは言うまでもない。
【0017】
以下で記述し図示する実施形態では、ドローバーは内部孔を有するボルトの形である。これは、クランプ部材のそれぞれに機械加工作業のさいの冷却又は潤滑のために水やその他の冷却又は潤滑液を供給しやすくするためである。
【0018】
本明細書で記述し図示するような仕方でクランプメカニズムに圧縮ばね部材を設ける大きな利点は、クランプ部材を外したり締めたりするためにねじ又はボルトを回さなくても適当に形成されたリリース部材によって切削インサートを解除したり装着したりできるということであり、それによって切削インサートの取替が速やかで容易になる。圧縮ばね部材からクランプ部材に伝達されるクランプ力を予め設定でき、その結果、切削インサートにかかるクランプ力はばねの作用によって小さい許容範囲で常に正しくなり、組み込まれた部品の摩耗や切削インサートの寸法の差異は実現されるクランプ力に何も影響を及ぼさない、又はきわめて小さな影響しか及ぼさない。
【0019】
別の実施形態では、ホルダ組立体は、クランプ部材が単一部品から一体的に構成され、ヒンジジョイントは弾性的に曲げられる弾性材料部分の形になり、クランプ部材の座面の間のギャップがばね力の影響を受けない初期段階においては、ホルダ組立体に挿入されるようになっている切削インサートの厚さよりも小さくなるように形成できる。ホルダ組立体がこのように形成されると、切削インサートを挿入できるようにするためにはクランプ部材を曲げて開くことが必要になり、それが切削インサートに加えられるクランプ力に寄与する。このような実施形態のひとつの利点は、圧縮ばね部材に必要なばね力が小さくなり、その寸法を小さくできるということである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係わるホルダ組立体を切削インサートと共に示す斜視図である。
図2図1のホルダ組立体を示す側面図である。
図3図1によるホルダ組立体を示す部分分解斜視図である。
図4図1〜3によるホルダ・アセンブリの外側端を上から示す図である。
図5図4の線V−Vに沿った断面図である。
図6】リリース部材が挿入されたホルダ組立体を示す上からの図である。
図7図6の線VII−VIIに沿った断面図であり、最初の挿入位置におけるリリース部材を示す。
図8図7による断面図であって、リリース位置におけるリリース部材と、第1のクランプ部材から少し離れるように動かされた第2のクランプ部材を示す。
図9】本発明の第2の実施形態に係わるホルダ組立体を示す斜視図である。
図10図9によるホルダ組立体を示す側面図である。
図11図9によるホルダ組立体を示す分解斜視図である。
図12図9〜11によるホルダ組立体の図13における線XII−XIIに沿った断面図である。
図13図9〜12によるホルダ組立体を示す上からの図である。
図14】本発明に係わるあるホルダ組立体の分解斜視図である。
図15図14のホルダ組立体のクランプ位置にあるときの断面図である。
図16】ホルダ組立体がリリース位置にあるときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態について図1〜8を参照して説明する。それらの図には、ホルダ組立体1と切削インサート2を含む切削工具が示されている。この例では、ホルダ組立体は四角形断面の長く細いシャフトの形を有し、その前端に第1及び第2のクランプ部材4,5が形成されている。前記のクランプ部材はギャップ6によって間隔をあけており、それは後方で円筒状の貫通キャビティ7に移行する。ホルダは、全体が、ある程度の内在的な弾性を有する鋼やその他の材料から製造される。ギャップが存在することによってクランプ部材が第1及び第2のクランプ部材を互いに結合する弾性ヒンジジョイントを構成する狭い材料部分8における弾性変形によって互いに対して回るようにできる。第1のクランプ部材4の延長上にいわゆるブレード片9が形成され、第2のクランプ部材5の延長上にクランプ指10が形成される。ブレード片とクランプ指は、一緒になって顎型のインサート座11を画定し、そこに切削インサート2を挿入しクランプすることができる。実際には、ブレード片とクランプ指は、切削インサートと合わせて、厚さがホルダ組立体の幅全体の小さな割合にしかならない。すなわち、ホルダ組立体の幅はブレード片とクランプ指の厚さよりも5〜20倍も大きい。
【0022】
図示したホルダ組立体ついてこれまで記述した限りにおいて、同じことは本質的に従来から知られている。
【0023】
本発明によれば、ホルダ組立体は、ドローバー12と圧縮ばね部材13から成るクランプメカニズムを含む。ドローバーはねじ又はボルトの形態をなし、ヘッド14,シャフト15を含み、シャフト15は滑らかな第1の部分15’とヘッドと反対側の端に雄ねじ溝を有する第2の部分15”を含む。図5に最も良くみられるように、キャビティ又は孔が第1及び第2のクランプ部材の各々に形成され、これらのキャビティは互いに整列して中間ギャップ6に対して横方向に延びている。第1及び第2のクランプ部材4,5を隔てるギャップ6はドローバー12のある距離だけ後方から延びている、すなわちインサート座11に対してドローバーの反対側で前方へインサート座11の方へ延びる。前方で、ギャップはインサート座の方に移行し、インサート座は通常第1のクランプ部材に配置されるインサートの後端サポート16を含む。
【0024】
ドローバー12は、ボルトの雄ねじ溝と第2のクランプ部材の孔の中の雌ねじ溝の間の螺合ジョイントによって第2のクランプ部材と結合される。第1のクランプ部材のキャビティは2つの異なる断面寸法で形成される。詳しく言うと、本質的にドローバーのシャフトの断面寸法に対応するギャップ6に最も近い領域における第1の断面寸法と、圧縮ばね部材13とボルトヘッド14も収容するもっと広い第2の断面寸法である。狭い断面寸法を有するキャビティと大きな断面寸法を有する部分の間の移行部分にはギャップ6から離れる方向に向いた肩面18が形成される。ドローバー12の第1の部分15’は、少なくとも限られた範囲で第1のクランプ部材のキャビティ内で変位可能であり、ボルトヘッドの内側は対応面19を形成し、それがキャビティ内の肩面18に向けられる。大きな断面寸法を有するキャビティ部内で、圧縮ばね部材13がボルトの対応面19とキャビティの肩面18との間に位置する。図示した実施形態では、圧縮ばね部材は中央の貫通開口を有するいくつかのカップ状ワッシャ20が互いに重なって成るカップばねであり、図5の部分断面図に示されるようにその開口を通ってボルトのシャフトが延びている。この実施形態では、カップ状ワッシャの積層の半分の凹側がある方向に向き、他の半分は他の方向に向いている。
【0025】
図5に示されるように、クランプ部材の座面の間に切削インサート2が設けられる上述のようなホルダ組立体では、ボルトヘッド14の外側表面における係合凹み21と係合する適当な締め付け工具によってボルトシャフトのねじ溝がある第2の部分15”を第2のクランプ部材5と螺合させるようにボルトを締め付けることができる。この作用によりボルトヘッド14の内側対応面19はカップばね13の方へ締め付けられ、さらにキャビティ内の肩面18の方へ圧しつけられる。こうして第1及び第2のクランプ部材4,5は互いに押しつけられ、切削インサート2は座面の間にクランプされ、カップばねに張力がかかる。こうしてボルトの調整によって切削インサートは望ましい力でクランプできる。
【0026】
本発明によれば、ホルダ組立体のリリース(解除)は、図1,6及び7に示されるようなリリース部材22によって遂行できる。ここに図示した3つの実施形態すべてで、リリース部材は互いに90°の角を成す2つのシャンクから成るねじりレンチとして形成される。ねじりレンチの長い方のシャンクはオペレータが握るハンドルとしての機能を有し、ねじりレンチの短い方のシャンクは係合機能を有するように構成されてホルダ組立体の凹み17に挿入されるようになっている。図1〜8の実施形態では、凹みは断面が部分円形の溝として形成され、第1及び第2のクランプ部材の間のギャップ6に向いている第2のクランプ部材5の表面に位置する。ねじりレンチの係合構造は、その周の一部で断面は部分円形であり、周の残りの部分は本質的に平坦である。したがって、図7に示されるように、係合構造はその平坦部分を第1のクランプ部材4の上面に向けて凹みに容易に挿入できる。この位置からねじりレンチを図8の位置に回し、その位置で部分円形の周が第1のクランプ部材4の上面に載るようになる。ねじりレンチのこの位置で、カップばねのばね力に打ち勝つことができ、第2のクランプ部材5が持ち上げられ第1のクランプ部材から離れる方向に動かされ、その結果、座面の間のギャップ6が拡がり、切削インサート2を取り外して新しいものを挿入することができる。新しい切削インサートを挿入した後、リリース部材は図7による位置にリセットすることができ、ホルダ組立体は圧縮ばね部材13により自動的に新しい切削インサートをボルト12によって設定された望ましいクランプ力でクランプする。好ましくは、リリース部材22はその後に凹み17から外される。
【0027】
上述のホルダ組立体の第1の実施形態のクランプボルト12はさらに、ホルダ組立体に冷却液チューブを結合するために、図5に示されるような内部孔23と、図1〜3に最も良く見られるような入口24を備える。さらに、ホルダ組立体には内部孔(図示せず)が形成され、それらが第1及び第2のクランプ部材のキャビティをそれぞれブレード片とクランプ指の前端における吐出孔25と結合しており、これは図1と3に見られる。したがって、この実施形態では、クランプボルトはクランプのためだけでなく、ただひとつの結合されたチューブからの冷却液を両方のクランプ部材に供給して、機械加工の間に冷却液を上から並びに下から切削インサート2に噴射できるようにするためにも用いられる。クランプボルト以外には2つのクランプ部材の間の結合は狭い材料部分8だけであり、この狭い材料部分に液体供給孔を形成することはホルダ組立体の機能を攪乱し妨害することなしには難しいので、これは大きな利点である。図示した実施形態では、内部孔23にはボルトヘッド14における出口36が設けられ、ボルトの内部孔23をホルダ組立体の不図示の内部孔と結合するためにシール37が出口の反対側でヘッドとキャビティの間に配置されている。
【0028】
次に図9〜13を参照すると、そこには本発明の第2の実施形態に係わるホルダ組立体が示されている。この実施形態では、クランプボルト12は第1及び第2のクランプ部材4,5の全体を通って延び、ボルトヘッド14は第2のクランプ部材5の外側に位置し、ボルトシャフトの反対の端に螺合されるナット26は第1のクランプ部材4の反対側から突出する。したがって、ボルトはクランプ部材のキャビティ又は孔の雌ねじ溝に螺合されるためいずれのクランプ部材にもクランプされない。逆に、ボルトシャフト15全体はキャビティ内で少なくとも限られた範囲で変位可能である。さらに、この実施形態には、2つの圧縮ばね部材が2つの別々のカップばね13’、13”という形で設けられる。一方のカップばね13’はナット26と第1のクランプ部材の浅い皿穴の底面18の間に位置し、皿穴の底面は肩面として機能し、ナットの内側が対応面として機能する。他方のカップばね13”は第2のクランプ部材5の外側表面27とボルトヘッド14の内側28の間に位置し、クランプ部材の外側表面は肩面18として機能し、ボルトヘッドの内側は対応面19として機能する。この実施形態では、クランプボルトにはクランプ部材へ冷却液を供給するための内部孔は設けられない。その他のすべての点で、第2の実施形態は第1の実施形態と対応しており、したがって他の部分や特徴の説明は簡単のために省略する。
【0029】
本発明の第3の実施形態は図14〜16に示されている。この実施形態では、第1及び第2のクランプ部材4,5はフレキシブルジョイントによって結合されない。第1及び第2のクランプ部材は、今度はクランプボルト12によってのみ一緒に保持される別々の部品である。図は、ホルダ組立体の最も外側の端を示しており、切削インサート2と敷板29が第1のクランプ部材4のインサート座に装着される。別になった第2のクランプ部材5はクランプボルト12によって第1のクランプ部材の方へクランプされ、ボルトのボルトヘッド14は第2のクランプ部材の皿穴に位置し、ボルトシャフト15は第2及び第1のクランプ部材を通って延び、ナット26がボルトシャフトの端に螺合されて第1のクランプ部材の下側から皿穴に位置する。カップばね13の形の圧縮ばね部材が皿穴におけるボルトシャフトのまわりに、肩面として働く皿穴の底面18と対応面19として働くナットの内側表面の間に位置する。
【0030】
図15に示されるようなクランプ位置で、第2のクランプ部材5は、ナット26の対応面19と第1のクランプ部材の肩面18の間で働くばね部材13によって第1のクランプ部材4の方へ押され、それによってボルトを下向きに引いて、第2のクランプ部材の突出するピン30が引かれて切削インサート2の凹み31と係合し、第2のクランプ部材5の後端の係合構造32が第1のクランプ部材4の対合する係合構造33内に位置するようになる。
【0031】
図14には前述し図示したねじりレンチと同様なねじりレンチ22の形のリリース部材が示されている。この実施形態では、ねじりレンチの短いシャンクの係合構造は2つの部分円形部分で隔てられた2つの本質的に平坦な部分34で形成される。図14に示されるように、係合構造の平坦部分が水平の向きになっているとき、ねじりレンチの短いシャンクをホルダ組立体の側面の孔35に挿入することができる。孔35は皿穴及びクランプボルト12に対して90°に向いており、ねじりレンチが孔35に挿入されると、係合構造の上方の平坦部分が図15に示されるようにボルトの端に隣接した位置になる。ねじりレンチを約90°回すことによって図16に示されるように係合構造の部分円形部分がボルトの端の方へ回され、ばね力に打ち勝ち、ボルト12並びに第2のクランプ部材5が持ち上げられて切削インサート2を取り替えることができる、又は別の切れ刃が切削位置になるように回すことができる。この実施形態のホルダ組立体では、第2のクランプ部材が係合できる凹みが設けられていないインサートを使用することもできる。クランプ部材は、例えばインサートの平坦な表面に、又はいくつかのの上面の突起に作用することもできるであろう。
【符号の説明】
【0032】
1 ホルダ組立体
2 切削インサート
4 第1のクランプ部材
5 第2のクランプ部材
6 中間ギャップ
8 ヒンジジョイント、弾性材料部分
12 ドローバー、ボルト
13 圧縮ばね部材
14 ヘッド
17 凹み
18 肩面
19 対応面
20 カップ形状ワッシャ
22 リリース部材、ねじりレンチ
23 貫通通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16