(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗車した複数の乗客のそれぞれがどの座席に乗り込んだかを特定できれば、例えば、乗客それぞれの乗り込み位置に応じて空調を自動調整して、それぞれの乗客に対して快適な乗車環境を提供することができる。しかしながら、特許文献1のシステムでは、複数の乗客が車内外のどちらに位置するかは特定できても、乗り込んだ座席の位置までは特定できない。したがって、それぞれの乗客に対して快適な乗車環境を提供できない。なお、乗車環境は、空調に限らず、シートやオーディオなどの他の車両器によって提供される乗車環境も含まれる。
【0005】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗客の乗り込み位置を特定する車両通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、特定の通信規格による無線通信を行う第1の携帯端末及び第2の携帯端末並びに車両からなる車両通信システムは、前記第1の携帯端末及び第2の携帯端末は、それぞれ、音波を送信する端末スピーカと、音波を受信するマイクと、電波を送信する端末送信部と、音波の受信をトリガとしてその旨示す情報を含ませた電波を生成するとともに音波を送信させる端末制御部と、を備え、前記車両は、音波を送信する車載スピーカと、電波を受信する車載受信部と、時間を計測する時間計測部と、音波を生成してから前記第1の携帯端末及び第2の携帯端末の少なくとも一方からの電波を受信するまでに要した時間に基づき前記車載スピーカと前記第1の携帯端末との間の距離である第1の車−端末間距離及び前記車載スピーカと第2の携帯端末との間の距離である第2の車−端末間距離の少なくとも一方を算出するとともに、前記第1の携帯端末及び第2の携帯端末の一方からの電波を受信してから他方からの電波を受信するまでに要した時間に基づき前記第1の携帯端末と前記第2の携帯端末との間の距離である端末間距離を算出し、これら算出した距離に基づき前記第1の携帯端末及び第2の携帯端末を所持するユーザの乗り込み位置を特定する車載制御部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
例えば、第1の車−端末間距離及び端末間距離を算出できる場合について説明する。第1の車−端末間距離が算出できる場合、第1の携帯端末を所持したユーザの乗り込み位置は、車載スピーカから第1の車−端末間距離にある座席と推定できる。さらに、端末間距離が算出できるので、第2の携帯端末を所持したユーザの乗り込み位置は、第1の携帯端末から端末間距離にある座席と推定できる。車両において、これらの条件を満たす座席は限られる。したがって、このシステムによれば、複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定できる。
【0008】
なお、上記2つの距離に加えて、第2の車−端末間距離も算出できる場合、第2の携帯端末を所持したユーザの乗り込み位置は、車載スピーカから第2の車−端末間距離にある座席と推定できる。算出した3つの距離を満足する位置にある座席は、2つの距離を満足する位置にある座席と比較してさらに限定されるので、より正確に複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定することができる。
【0009】
上記システムにおいて、前記車載スピーカは、各車両ドアからの距離が異なる位置に設けられることが好ましい。
このシステムによれば、車載スピーカが各車両ドアからの距離が等しい位置に設けられる場合と比較して、算出した2つないし3つの距離を満足する位置にある座席が限定される。したがって、より正確に複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定することができる。
【0010】
上記システムにおいて、前記車両は、車両ドアの開閉を検出する開閉検出部を備え、前記車載制御部は、前記第1の携帯端末及び第2の携帯端末の少なくとも一方との間で車外通信を行うことにより、前記第1の車−端末間距離及び前記第2の車−端末間距離の少なくとも一方を算出するとともに、前記端末間距離を算出し、これら算出した距離に基づき前記第1の携帯端末及び第2の携帯端末を所持するユーザが車両に乗り込む際に使用する車両ドアの位置を推定し、ここで推定した車両ドアの開閉が検出されることを通じて、前記第1の携帯端末及び第2の携帯端末を所持するユーザの乗り込み位置を特定することが好ましい。
【0011】
車内は閉空間であることから、音波が反射する等して、同じスピーカから送信された音波を携帯端末が複数回受信するおそれがある。この場合、携帯端末は、音波に対する応答としての電波を複数回送信することになる。このため、乗り込み位置の特定が困難になるおそれがある。
【0012】
その点、このシステムによれば、車外通信により第1の車−端末間距離及び第2の車−端末間距離の少なくとも一方、並びに端末間距離を算出する。車外では、音波が反射するおそれが少ないため、車載制御部は、第1の車−端末間距離及び第2の車−端末間距離の少なくとも一方、並びに端末間距離を算出することができる。そして、これら算出した距離から、車外における第1の携帯端末及び第2の携帯端末を所持するユーザの位置を推定できる。車載スピーカは、車両に乗り込む際に使用される各車両ドアからの距離が異なる位置に設けられているので、先に推定した位置のユーザが車両に乗り込むときに開閉を必要とする車両ドアを推定できる。そして、この推定した車両ドアの開閉をもってユーザの乗り込み位置を特定すること
ができる。
【0013】
上記システムにおいて、前記車両は、車両周囲に設定される第1の通信エリアに進入した前記第1の携帯端末及び前記第2の携帯端末との間で相互無線通信を行うものであって、前記車載制御部は、前記第1の携帯端末及び前記第2の携帯端末の両方が前記第1の通信エリアに進入した場合に、これら前記第1の携帯端末と前記第2の携帯端末との間で音波の授受並びに音波の受信に伴う電波の送信を要求し、前記第1の携帯端末及び前記第2の携帯端末は、前記車両から音波の授受並びに音波の受信に伴う電波の送信が要求されてから端末間における音波の授受を開始することが好ましい。
【0014】
このシステムによれば、第1の携帯端末及び第2の携帯端末のスピーカから音波が送信されるタイミングは、少なくとも第1の携帯端末又は第2の携帯端末が車両と相互無線通信できる状態、すなわち、第1の携帯端末及び第2の携帯端末がマイクで拾った音波の応答として送信する電波を車載受信部が受信できる状態にある。したがって、車載制御部は、端末間における音波の授受に伴う端末間距離を算出することができる。言い換えると、端末間における音波の授受で端末間距離を算出できない状況が抑制されるので、第1の携帯端末及び第2の携帯端末
から音波
が無駄に送信される状況が少ない。このため、第1の携帯端末及び第2の携帯端末の周囲がうるさくない。
【0015】
上記システムにおいて、前記車両は、車両周囲に設定される前記第1の通信エリアよりも狭い第2の通信エリアに進入した車両専用の電子キーとの間で相互無線通信を行うものであり、前記車載スピーカは、前記第2の通信エリアを覆うように設定される領域に音波を送信するものであって、前記車載制御部は、前記電子キーが前記第2の通信エリアに進入した場合に、これら前記第1の携帯端末と前記第2の携帯端末に対して音波の受信に伴う電波の送信を要求するとともに、前記車載スピーカから音波を送信させることが好ましい。
【0016】
このシステムによれば、車載スピーカから音波が送信されるタイミングは、少なくとも電子キーを所持するユーザが第2の通信
エリアに位置する状態、すなわち、車載スピーカから送信される音波を受信できる状態である。このため、電子キーを所持するユーザが携帯端末を所持していれば、当該携帯端末は、音波を受信できる。したがって、車載制御部は、当該携帯端末との間で音波の授受及び電波の授受を行うこと
ができる。したがって、音波が無駄に送信されることが抑制されるので、車両周囲がうるさくない。
【0017】
上記システムにおいて、前記車載スピーカは、車両の前後左右において対称とならない位置に複数設けられることが好ましい。
このシステムによれば、車載制御部は、第1の車−端末間距離及び第2の車−端末間距離を複数取得することができるので、第1の携帯端末及び第2の携帯端末の位置をより正確に推定することができる。したがって、より正確に複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両通信システムは、乗客の乗り込み位置を特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、車両通信システムの一実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、車両通信システム1は、車両10と第1のスマートフォン30との間の無線通信、及び、車両10と第2のスマートフォン40との間の無線通信、並びに、車両10と電子キー20との間の無線通信を通じて車両制御を行う。
【0021】
<電子キー>
図1に示すように、電子キー20は、LF(Low Frequency)帯の無線信号の受信及びUHF(Ultra Hi
gh Frequency)帯の無線信号の送信
をすることができる。電子キー20は、車両10の車載制御部11と共通のIDコードが記憶されている。IDコードは、車載制御部11との間の相互認証に使用される。
【0022】
電子キー20は、LF帯の無線信号である後述のリクエスト信号を受信すると、これに対する応答としてIDコードを含むレスポンス信号を生成する。レスポンス信号は、UHF帯の無線信号に変調され、無線送信される。
【0023】
<スマートフォン>
図1に示すように、第1のスマートフォン30は、スマートフォン制御部31と、BT通信部32と、端末スピーカ33と、マイク34と、タッチパネルディスプレイ35と、を備えている。これらスマートフォン制御部31を除く各構成は、それぞれスマートフォン制御部31と電気的に接続され、当該スマートフォン制御部31によって統括的に制御される。
【0024】
BT通信部32は、79又は40の周波数チャネルに分けられた2.4GHz帯(2.40〜2.48GHz)の周波数をランダムに変更する周波数ホッピングを行うことにより、他の機器に搭載されているBT通信部との間でBluetooth(登録商標)通信(以下、BT通信)を行う。ここで、BT通信は、79chを用いるクラシックタイプも40chを用いるローエナジータイプのいずれも含む。BT通信部32は、電気信号を2.4GHz帯の無線信号に変換し、BTアンテナ32aを通じて予め設定された通信エリアに向けて無線送信する。また、BT通信部32は、BTアンテナ32aを通じて受信した2.4GHz帯の無線信号を電気信号に変換する。なお、BT通信部32が端末送信部に相当する。
【0025】
端末スピーカ33は、スマートフォン制御部31が生成する音波生成信号を音波に変換し、この変換された音波をスマートフォン30の周囲に送信する。マイク34は、音波を拾って電気信号に変換する。タッチパネルディスプレイ35は、タッチ位置を示す情報を電気信号に変換するとともに、スマートフォン制御部31が生成する映像信号に基づく映像を表示する。
【0026】
スマートフォン制御部31のメモリ31aには、自身に固有のBTのデバイスアドレスが記憶されている。BTのデバイスアドレスは、BT通信部を有する通信相手とのペアリング処理及びBT通信に使用される。
【0027】
スマートフォン制御部31は、ペアリングされた通信相手との間でBT通信が可能とされたBT通信可能モードと、BT通信が不能とされたBT通信不能モードと、ペアリングが可能な機器を探索する探索モードと、を有している。これら3つのモードの間は、タッチパネルディスプレイ35が操作されることにより切り替えられる。
【0028】
探索モードのスマートフォン制御部31は、ペアリングが可能な機器を発見すると、ペアリング処理を行う。ペアリング処理が完了すると、スマートフォン制御部31は、ペアリングされた通信相手との間でBT通信することができる。通信相手の特定は、その通信相手固有のデバイスアドレスにより行う。なお、ペアリング処理では、セキュリティ性を確保するために、通信相手固有の暗証番号の入力が必要な場合もあるし、一度暗証番号を入力すればそれ以降は暗証番号の入力なしにペアリングが許可される場合もある。また、一度の暗証番号の入力なしにペアリングが許可される場合もある。
【0029】
また、BT通信可能モードのスマートフォン制御部31は、さらに端末間音波授受モードと、車両端末間音波授受モードと、を有している。これら2つのモードの間は、車載制御部11との間でBT通信することにより切り替えられる。詳述すると、スマートフォン制御部31は、車載制御部11から端末間で音波を授受する旨示す情報が含まれる端末間音波授受信号を受信すると端末間音波授受モードに、車両と端末との間で音波を授受する旨示す情報が含まれる車両端末間音波授受信号を受信すると車両端末間音波授受モードに、それぞれ切り替えられる。
【0030】
なお、端末間音波授受信号には、先に音波を送信する旨示す情報が含まれる第1の端末間音波授受信号と、音波を受信してから音波を送信する旨示す情報が含まれる第2の端末間音波授受信号とがある。
【0031】
第1の端末間音波授受信号を受信したスマートフォン制御部31は、端末間音波授受モードに移行する。そして、スマートフォン制御部31は、端末間における音波の授受を開始する旨示す情報を含む開始信号を生成するとともに、音波生成信号を生成する。開始信号は、BT通信部32により無線送信される。音波生成信号は、
端末スピーカ33により音波に変換され送信される。その後、スマートフォン制御部31は、音波の受信を待機する。スマートフォン制御部31は、音波の受信をトリガとして、その旨示す情報を含む受信信号を生成し、その後、音波生成信号を生成する。
【0032】
一方、第2の端末間音波授受信号を受信したスマートフォン制御部31は、端末間音波授受モードに移行する。そして、スマートフォン制御部31は、音波の受信を待機する。スマートフォン制御部31は、音波の受信をトリガとして、その旨示す情報を含む受信信号を生成し、その後、音波生成信号を生成する。
【0033】
また、車両端末間音波授受信号を受信したスマートフォン制御部31は、車両端末間音波授受モードに移行する。そして、スマートフォン制御部31は、音波の受信を待機する。スマートフォン制御部31は、音波の受信をトリガとして、その旨示す情報を含む受信信号を生成する。なお、スマートフォン制御部31が端末制御部に相当する。
【0034】
第2のスマートフォン40は、スマートフォン制御部41と、BT通信部42と、端末スピーカ43と、マイク44と、タッチパネルディスプレイ45と、を備えている。また、スマートフォン制御部41は、メモリ41aを有している。第2のスマートフォン40の構成は、第1のスマートフォン30の構成と同様であるため、各構成の詳細な説明を省略する。なお、スマートフォン制御部41が端末制御部に、BT通信部42が端末送信部に、それぞれ相当する。
【0035】
<車両>
図1に示すように、車両10は、車載制御部11と、BT通信部12と、LF送信部13と、UHF受信部14と、ドアハンドルセンサ15と、ドアロック装置16と、ドアカーテシ18と、車載スピーカ19と、を備えている。これらのうち、車載制御部11を除く各構成は、それぞれ車載制御部11と電気的に接続され、当該車載制御部11により統括的に制御される。
【0036】
BT通信部12は、2.4GHz帯の周波数ホッピングを行うことにより、他のBT通信部との間でBluetooth通信を行う。BT通信部12は、車載制御部11が生成する電気信号を2.4GHz帯の信号に変換する。変換された無線信号は、BTアンテナ12aを通じて、
図2に示すように、車両10の全体を覆うように設定されたBT通信エリアS1に向けて無線送信される。なお、ここでは、BT通信エリアS1を、車両の周囲30m程度の領域としているが、BT出力を調整することにより車両の周囲10〜100m程度の領域にも設定可能である。また、BT通信部12は、BTアンテナ12aを通じて受信した2.4GHz帯の無線信号を電気信号に変換する。なお、BT通信部12が、車載受信部に相当する。
【0037】
LF送信部13は、電気信号をLF(Low Frequency)帯の無線信号に変調する。変調された無線信号は、
図2に示すように、車両ドアの近傍の領域を覆うように設定されたLF通信エリアS2に向けて無線送信される。なお、ここでは、LF通信エリアS2を、車両ドアの近傍1m程度の領域としているが、アンテナの形状や出力等を調整することにより運転席側のドアの近傍数m程度の領域に設定可能である。
【0038】
UHF受信部14は、UHF(Ultra Hi
gh Frequency)帯の無線信号を受信するとともに、受信した信号を電気信号に復調する。
ドアハンドルセンサ15は、ドアハンドルへの接触を検出し、ドアロック装置16は、ドアのロックとアンロックとを切り替える。
【0039】
ドアカーテシ18は、車両ドアの開閉を検出するカーテシスイッチである。ここでは、フロント右側のドアの開閉を検出するドアカーテシFR18a、フロント左側のドアの開閉を検出するドアカーテシFL18b、リア右側のドアの開閉を検出するドアカーテシRR18c、及びリア左側のドアの開閉を検出するドアカーテシRL18dを備えている。なお、ドアカーテシ18が開閉検出部に相当する。
【0040】
車載スピーカ19は、
図3に示すように車両右側のAピラーに設けられる第1のスピーカ19aと車両左側のCピラーに設けられる第2のスピーカ19bとを備えている。車載スピーカ19は、電気信号を音波に変換する。この変換された音波は、各スピーカ19a,19bから送信され、それぞれのスピーカを中心とする半径5m程度の領域に到達する。なお、図示は省略するが、スピーカ19a,19bから送信された音波が到達する領域は、LF通信エリアS2を含む車両10全体を覆う領域である。
【0041】
車載制御部11のメモリ11aには、自身に固有のBluetoothのデバイスアドレス及び暗証番号、並びに電子キー20と共通のIDコードが記憶されている。Bluetoothのデバイスアドレス及び暗証番号は、BT通信部を有する通信相手とのペアリング処理に使用される。IDコードは、電子キー20との間の相互認証に使用される。また、メモリ11aには、車−端末間、及び端末間同士の距離を算出するための距離算出式が記憶されている。
【0042】
また、車載制御部11は、時間を計測するカウンタ11bを備えている。車載制御部11は、当該カウンタ11bを使用して、音波受信信号を受信してから音波受信信号を受信するまでの時間や、自身により音波生成信号を生成してから音波
受信信号を受信するまでの時間を、それぞれ計測する。なお、カウンタ11bが時間計測部に相当する。
【0043】
車載制御部11は、ペアリングされた通信相手との間でBT通信が可能とされたBT通信可能モードと、BT通信が不能とされたBT通信不能モードと、を有している。BT通信可能モードとBT通信不能モードとの間は、図示しない入力装置が操作されることにより切り替えられる。
【0044】
なお、BT通信可能モードの車載制御部11は、BT通信部を有する機器とペアリング可能な状態であって、探索している機器に発見されペアリング処理されることにより当該機器とペアリングされる。ペアリング処理が完了すると、車載制御部11は、ペアリングされた通信相手との間でBT通信することができる。通信相手の特定は、その通信相手固有のコードにより行う。なお、車載制御部11は、ペアリング処理に際し、暗証番号の入力を求める。自身に固有の暗証番号が入力された場合、その暗証番号が入力された機器とのペアリングを許可する。
【0045】
なお、車載制御部11は、モードにかかわらず、定期的にIDコードの送信を要求する要求信号を生成する。要求信号は、LF通信エリアS2に向けて無線送信される。車載制御部11は、要求信号に対する応答としてIDコードが含まれた応答信号を受信すると、当該応答信号に含まれるIDコードの照合を行う。照合が成立する場合、車載制御部11は、ドアのロックとアンロックとの間の切り替えを許可する。この状態でドアハンドルセンサ15への接触を検出した場合、車載制御部11は、ドアロック装置16を通じてドアのロックとアンロックとを切り替える。
【0046】
BT通信可能モードにおいて、2つのスマートフォン制御部31,41との間でペアリングされた車載制御部11は、ペアリングされたスマートフォン制御部の一方に対して第1の端末間音波授受信号を、他方に対して第2の端末間音波授受信号を、それぞれ生成し、これらを無線送信する。なお、ここでは、車載制御部11は、先にペアリングされたスマートフォン制御部に対して第1の端末間音波授受信号を、後にペアリングされたスマートフォン制御部に対して第2の端末間音波授受信号を、それぞれ生成する。
【0047】
第1の端末間音波授受信号及び第2の端末間音波授受信号の送信後、車載制御部11は、音波
受信信号を受信してから次の音波
受信信号を受信するまでの時間を計測する。そして、その時間から2つのスマートフォン間の距離である端末間距離を算出する。
【0048】
また、車載制御部11は、IDコードの照合が成立する場合、2つのスマートフォン制御部31,41に対して、車両端末間音波授受信号を生成する。
その後、車載制御部11は、音波生成信号を生成してから音波
受信信号を受信するまでの時間を計測する。そして、その時間から車両
10と第1のスマートフォン30との間の距離である第1の車−端末間距離及び車両
10と第2のスマートフォン40との間の距離である第2の車−端末間距離の少なくとも一方を算出する。
【0049】
車載制御部11は、第1の車−端末間距離及び第2の車−端末間距離の少なくとも一方、並びに端末間距離から、乗客の乗り込み位置を推定する。そして、ドアカーテシ18を通じて推定した乗り込み位置に対応するドアが開閉されたことを通じて乗客の乗り込み位置を特定する。車載制御部11は、特定した乗り込み位置に応じて、エアコンなどの車両器を動作させる。
【0050】
なお、車載制御部11のメモリ11aには、端末間音波授受モードにおけるスマートフォン制御部31,41が音波を受信してからその音波の受信をトリガとして音波生成信号を生成するまでの間の処理にかかる時間(以下、スマホ処理時間Td)があらかじめ記憶されている。また、メモリ11aには、車−端末間距離の算出を打ち切るための最大時間が記憶されている。車載制御部11は、車−端末間距離を算出するための音波を生成してから最大時間を経過した場合には、車−端末間距離の算出を打ち切る。この最大時間は、車載スピーカ
19から送信される音波が到達する範囲に基づき設定される。
【0051】
<作用>
次に、車両通信システム1の作用について
図4に示すタイムチャートにしたがって説明する。なお、ここでは、電子キー20を所持した乗客A、第1のスマートフォン30を所持した乗客B、及び第2のスマートフォン40を所持した乗客Cの3名が車両10に乗り込もうとして、車両10に近づく場合を想定して説明する。
【0052】
乗客B,CがBT通信エリアS1に進入すると(
図2参照)、
図4に示すように、車載制御部11は、スマートフォン制御部31との通信が開始されるとともに、スマートフォン制御部41との通信が開始される(タイミングT1)。なお、乗客B,Cのスマートフォン30,40と車両10との間は、事前にペアリングされているものとする。これ以降、車載制御部11は、スマートフォン制御部31との間及びスマートフォン制御部41との間でそれぞれ定期的にBT通信する。なお、車載制御部11は、定期的に実施するBT通信を通じて先に接続されたスマートフォン制御部、ここでは、スマートフォン制御部31に対して第1の端末間音波授受信号を、後に接続されたスマートフォン制御部、ここではスマートフォン制御部41に対して第2の端末間音波授受信号を、それぞれ無線送信する。
【0053】
第1の端末間音波授受信号を受信したスマートフォン制御部31は、開始信号を生成するとともに、音波生成信号を生成し、音波を送信する(タイミングT2)。車載制御部11は、開始信号の受信を通じて、スマートフォン制御部31が音波
を送信したことを認識する。
【0054】
音波を受信したスマートフォン制御部41は、受信信号を生成する(タイミングT3)。そして、スマートフォン制御部41は、音波の受信からスマホ処理時間Tdの経過後、音波生成信号を生成し、音波を送信する(タイミングT4)。車載制御部11は、受信信号の受信を通じて、スマートフォン制御部41が音波を受信したことを認識する。
【0055】
音波を受信したスマートフォン制御部31は、受信信号を生成する(タイミングT5)。そして、スマートフォン制御部31は、音波の受信からスマホ処理時間Tdの経過後、音波生成信号を生成し、音波を送信する(タイミングT6)。車載制御部11は、受信信号の受信を通じて、スマートフォン制御部31が音波を受信したことを認識する。
【0056】
その後は、タイミングT3〜T6の各処理が繰り返される。車載制御部11は、カウンタ11bを通じて、スマートフォン制御部31,41のそれぞれから無線送信される受信信号を受信するタイミングT3(T5)とタイミングT5(T3)との間の時間Taを計測する。この時間Taからスマホ処理時間Tdを差し引いた時間が第1のスマートフォン30と第2のスマートフォン40との間を音波が進むのに要した時間となる。従って、この時間に音速を乗算することにより、車載制御部11は、第1のスマートフォン30と第2のスマートフォン40との間の距離(端末間距離)を算出する。車載制御部11は、算出した端末間距離に基づき、第1のスマートフォン30と第2のスマートフォン40とが別々の乗客に所持されているか否かを判断する。第1のスマートフォン30と第2のスマートフォン40とが別々の乗客に所持されていると判断される場合、次のタイミングT11以降の処理を実施する。
【0057】
第1のスマートフォン30と第2のスマートフォン40とが別々の乗客に所持されていると判断される場合、車載制御部11は、電子キー20を所持したユーザのLF通信エリアS2への進入をトリガとして、車両端末間音波授受信号を無線送信する(タイミングT11)。これにより、スマートフォン制御部31,41は、端末間音波授受モードから車両端末間音波授受モードに切り替わる。その後、車載制御部11は、音波生成信号を生成し、音波を送信する(タイミングT12)。
【0058】
音波を受信したスマートフォン制御部31,41は、それぞれ受信信号を生成する(タイミングT13,T14)。
車載制御部11は、受信信号の受信を通じて、スマートフォン制御部31,41が音波を受信したことを認識する。車載制御部11は、カウンタ11bを通じて、音波を生成してからスマートフォン制御部31,41のそれぞれから無線送信される受信信号を受信するまでの時間、すなわち、タイミングT12とタイミングT13との間、及びタイミングT12とタイミングT14との間の時間Tb及び時間Tcを計測する。この時間Tbが車両10(車載スピーカ19)と第1のスマートフォン30との間を、時間Tcが車両10(車載スピーカ19)と第2のスマートフォン40との間を、それぞれ音波が進むのに要した時間となる。従って、この時間に音速を乗算することにより、車載制御部11は、車両10(車載スピーカ19)と第1のスマートフォン30との間の距離(第1の車−端末間距離)、車両10(車載スピーカ19)と第2のスマートフォン40との間の距離(第2の車−端末間距離)を、それぞれ算出する。
【0059】
その後、車載制御部11は、第1及び第2の端末間音波授受信号を生成する(タイミングT15)。これにより、スマートフォン制御部31,41は、車両端末間音波授受モードから端末間音波授受モードに切り替わる。その後は、上記タイミングT2〜T
5の各処理が繰り返される。
【0060】
なお、例えば、車載スピーカ19からスマートフォンまでの距離が遠く、スマートフォンが音波を受信できない場合など、車載制御部11は、自身が音波生成信号を生成してから、最大時間を経過した場合には、車−端末間距離の算出を打ち切り、タイミングT15の処理を行う。
【0061】
車載制御部11は、算出した第1の車−端末間距離、及び第2の車−端末間距離、並びに端末間距離から、第1のスマートフォン30及び第2のスマートフォン40を所持する乗客B,Cの乗り込み位置を推定する。
【0062】
(第1の車−端末間距離、及び第2の車−端末間距離、並びに端末間距離が全て算出できる場合)
図3に示すように、第2のスピーカ19bを算出の基準点とする第1の車−端末間距離r4、及び第2の車−端末間距離r5、並びに端末間距離r6が算出できている場合について説明する。この場合、車載制御部11は、乗客CがRLドアを開閉できる位置、乗客BがRLドアを開閉できず且つFLドアを開閉できる可能性がある位置にそれぞれ位置することを推定できる。すなわち、RLドアが開閉されれば、それは乗客Cによるものであり、FLドアが開閉されれば、それは乗客Bによるものと特定することができる。車載制御部11は、ドアカーテシ18による開閉の検出をもって、乗客B,Cの乗り込み位置を特定する。
【0063】
なお、先の3つの距離に加え、第1のスピーカ19aを算出の基準点とする第1の車−端末間距離r2、及び第2の車−端末間距離r3が算出できれば、より高い精度で乗客B,Cの位置を推定できる。したがって、乗客B,Cの乗り込み位置の特定精度も高い。
【0064】
(第1の車−端末間距離、及び第2の車−端末間距離の一方と、端末間距離とが算出できる場合)
図3に示すように、第2のスピーカ19bを算出の基準点とする第2の車−端末間距離r5と、端末間距離r6とが算出できている場合について説明する。この場合、車載制御部11は、乗客CがFLドアを開閉できずRLドアを開閉できる可能性がある位置、乗客BがRLドアを開閉できず且つFLドアを開閉できる可能性がある位置にそれぞれ位置することを推定できる。この場合でも、RLドアが開閉されれば、それは乗客Cによるものであり、FLドアが開閉されれば、それは乗客Bによるものと特定することができる。
【0065】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)スマートフォン制御部31,41は、音波の受信をトリガとして、その旨示す情報を含む受信信号を送信するとともに、音波を送信するようにした。また、車載制御部11は、スマートフォン制御部31,41同士で授受される音波に基づく受信信号の受信を通じて端末間距離を算出するようにした。さらに、車載制御部11は、自身が送信する音波に基づく受信信号の受信を通じて第1の車−端末間距離、及び第2の車−端末間距離の少なくとも一方を算出するようにした。
【0066】
例えば、第1の車−端末間距離及び端末間距離を算出できる場合について説明する。第1の車−端末間距離が算出できる場合、スマートフォン30を所持したユーザの乗り込み位置は、車載スピーカ19から第1の車−端末間距離にある座席と推定できる。さらに、端末間距離が算出できるので、スマートフォン40を所持したユーザの乗り込み位置は、スマートフォン30から端末間距離にある座席と推定できる。車両において、これらの条件を満たす座席は限られる。したがって、このシステムによれば、複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定できる。
【0067】
(2)なお、上記2つの距離に加えて、第2の車−端末間距離も算出できる場合、スマートフォン40を所持したユーザの乗り込み位置は、車載スピーカ19から第2の車−端末間距離にある座席と推定できる。算出した3つの距離を満足する位置にある座席は、2つの距離を満足する位置にある座席と比較してさらに限定されるので、より正確に複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定することができる。
【0068】
(3)車載スピーカ19を構成する第1のスピーカ19a及び第2のスピーカ19bを、各車両ドアからの距離が異なる位置に設けた。これにより、車載制御部11が算出した2つないし3つの距離を満足する位置にある座席が限定されるので、より正確に複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定することができる。
【0069】
(4)車両ドアの開閉を検出するドアカーテシ18を設けた。車載制御部11は、スマートフォン30,40との間で車外通信を行うことにより、第1の車−端末間距離及び第2の車−端末間距離の少なくとも一方を算出するとともに、端末間距離を算出し、これら算出した距離に基づきスマートフォン30,40を所持する乗客が車両10に乗り込む際に使用する車両ドアの位置を推定する。そして、車載制御部11は、推定した車両ドアの開閉がドアカーテシ18を通じて検出されることによ
り、スマートフォン30,40を所持する乗客の乗り込み位置を特定するようにした。
【0070】
車内は閉空間であることから、音波が反射する等して、同じスピーカから送信された音波をスマートフォン30,40が複数回受信するおそれがある。この場合、スマートフォン30,40は、音波に対する応答としての電波(受信信号)を複数回送信することになる。このため、乗り込み位置の特定が困難になるおそれがある。
【0071】
その点、車外では、音波が反射するおそれが少ないため、車載制御部11は、第1の車−端末間距離及び第2の車−端末間距離の少なくとも一方、並びに端末間距離を算出することができる。そして、これら算出した距離から、車外におけるスマートフォン30,40を所持する乗客の位置を推定できる。車載スピーカ19は、車両に乗り込む際に使用される各車両ドアからの距離が異なる位置に設けられているので、先に推定した位置の乗客が車両に乗り込むときに開閉を必要とする車両ドアを推定できる。そして、この推定した車両ドアの開閉をもって乗客の乗り込み位置を特定すること
ができる。
【0072】
(5)車載制御部11は、車両10の周囲に形成されるBT通信エリアS1にスマートフォン30,40が進入した場合に、スマートフォン30,4
0間における音波の授受並びに音波の受信に伴う電波の送信を要求する端末間音波授受信号を送信するようにした。これにより、スマートフォン30,40から音波が送信されるタイミングは、少なくとも車載制御部11がスマートフォン制御部31,41とBT通信できる状態である。この状態は、車載制御部11が、スマートフォン30,40間における音波の授受に伴う端末間距離を算出することができる状態である。言い換えると、スマートフォン30,40間における音波の授
受で端末間距離を算出できない状況が抑制されている。このため、スマートフォン30,40の周囲がうるさくない。
【0073】
(6)車載スピーカ19を構成する第1及び第2のスピーカ19a,19bを、車両の前後左右において対称とならない位置である車両右側Aピラーと車両左側Cピラーに設けた。これにより、車載制御部11は、第1の車−端末間距離及び第2の車−端末間距離を複数取得することができるので、スマートフォン30,40の位置をより正確に推定することができる。したがって、より正確に複数の乗客それぞれの乗り込み位置を特定することができる。
【0074】
(7)車載スピーカ19から送信される音波が到達する領域がLF通信エリアS2を覆うように設定した。そして、車載制御部11は、車両10の周囲に形成されるLF通信エリアS2に電子キー20が進入した場合に、スマートフォン30,40に対して音波の受信に伴う電波の送信を要求する車両端末間音波授受信号を生成とともに、車載スピーカ19から音波を送信させるようにした。これにより、スマートフォン30,40は、車載スピーカ19からの音波を受信でき、車載制御部11は、スマートフォン制御部31,41から受信信号を受信できる状態である。したがって、車載制御部11は、車−端末間距離を算出することができる状態である。言い換えると、車−端末間距離を算出できない状況が抑制されている。このため、車両10の周囲がうるさくない。
【0075】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、車載スピーカ19は、第1のスピーカ19a又は第2のスピーカ19bのどちらかを備えていればよい。このように構成しても、車載制御部11は、スマートフォン30,40の位置から乗客の乗り込み位置を特定できる。
【0076】
・なお、車載スピーカ19は、3つ以上あってもよい。3つ以上あれば、車載制御部11は、より正確にスマートフォン30,40の位置から乗客の乗り込み位置を特定できる。
【0077】
・上記実施形態において、車載制御部11が電子キー20の位置にかかわらず音波を送信するシステムであってもよい。また、スマートフォン制御部31,41も車両10に対する位置にかかわらず音波を送信するシステムであってもよい。
【0078】
・上記実施形態において、BT通信エリアS1、LF通信エリアS2は、任意の広さに設定してもよい。また、車載スピーカ19から送信される音波が到達する領域も任意の広さに設定してもよい。
【0079】
・上記実施形態において、車載スピーカ19及び端末スピーカ33,43から送信される音波の周波数は、それぞれ異なる固有の周波数に設定される方がよい。このように構成すれば、車載制御部11及びスマートフォン制御部31,41は、受信する音波の周波数から、その音波の送信元を特定することができる。そして、あらかじめ設定された送信元からの音波に対してのみ受信信号を生成するように構成すれば、スマートフォン30,40における電池の消費を抑制することもできる。
【0080】
・上記実施形態において、音波は、例えば20kHzの単一の周波数でなくてもよい。例えば、18〜20kHzなどの特定の範囲にて異なる周波数を使用する周波数変調であってもよい。また、振幅変調してもよい。
【0081】
・上記実施形態において、あらかじめスマートフォン30,40に採用されるマイクが拾いやすい周波数に合わせた音波を送信するように各スピーカ19,33,43を調整してもよい。このように構成すれば、車両通信システム1の動作信頼性が高まる。
【0082】
・上記実施形態では、各スピーカ19,33,43から送信される音波は、高周波の音波とされたが、人間にとって聞き取りやすい、言い換えれば人間が発しやすい周波数の音波、具体的には可聴領域の周波数である1kHz〜20kHzの音波であってもよい。通常のスマートフォン30,40に採用されるマイクであれば、人間が発する周波数の音波を問題なく拾うことができるので、各スピーカ19,33,43から送信される音波も問題なく拾うことができる。
【0083】
・上記実施形態において、スマートフォン30,40が電子キー20の機能を兼ねてもよい。
・上記実施形態では、車両10とスマートフォン30,40との間の通信規格としてBluetoothを採用する場合について説明したが、他の通信規格を利用してもよい。
【0084】
・上記実施形態では、携帯端末としてスマートフォン30,40を採用したが、これに代えて電話機能を有しないタブレット端末、携帯型の音楽端末、あるいはノート型パソコン等であってもよい。
【0085】
・上記実施形態において、ペアリング可能な相手の探索及びペアリング処理は、車載制御部11から行ってもよい。