特許第6484420号(P6484420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484420
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】車両用リアランプ
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/30 20060101AFI20190304BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20190304BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20190304BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190304BHJP
【FI】
   B60Q1/30 Z
   F21S43/14
   F21W103:00
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-188460(P2014-188460)
(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-60314(P2016-60314A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−037414(JP,A)
【文献】 特開2014−051241(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/080363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/30
F21S 43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に配設されるリアランプであって、通常点灯されるランプに加えて、近赤外光で点灯され、当該点灯を後続車において検出することが可能なサブランプを備え、自車両が自動運転しているとき、あるいは自車両において後続車が自動運転していると判断したときに自車両のリアランプを自動運転点灯モードに設定可能であり、自動運転点灯モードに設定されたときには、テールランプが点灯されるとともに前記サブランプも点灯されることを特徴とする車両用リアランプ。
【請求項2】
自動運転点灯モードに設定されないときには、前記通常点灯されるランプが点灯されても前記サブランプは点灯されないことを特徴とする請求項1に記載の車両用リアランプ。
【請求項3】
前記サブランプは、前記リアランプの通常点灯されるランプと一体にまたは別体に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用リアランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動運転を支援することを可能にしたリアランプに関し、特に自車両の後方を走行する後続車が、先行車としての自車両を高精度かつ迅速に検出することを可能にしたリアランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動運転の一つの手法として、自車両の前方の路面に描かれている白線(車線)を検出し、あるいは自車両の前方を走行する先行車を検出し、これらの検出結果から自車両の走行方向を制御する技術がある。特許文献1では、自車両の前方領域を撮像し、撮像した画像から白線と先行車を検出して自動運転の制御を行う技術が提案されている。また、撮像した画像から先行車を検出する技術として、特許文献2では、自車両の前方を撮像した画像に存在する輝点から先行車のテールランプを検出することにより、先行車を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−51241号公報
【特許文献2】特開2009−227088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のように、撮像した画像の輝点から先行車を検出する技術では、先行車を高精度に検出することが難しいという課題がある。すなわち、自車両の前方を撮像したときには、撮像した画像には道路に設置されている標識灯や建造物の照明灯、さらには対向車のヘッドランプ等による種々の輝点が写し込まれることが多く、これらの輝点と先行車のテールランプによる輝点とを区別することが難しい。そのため、先行車を検出して自動運転の制御を実行する場合に、当該自動運転を高い精度で制御することが困難になる。
【0005】
従来では、先行車の左右のリアランプ、特にテールランプによる輝点が水平方向に対をなして撮像されること、左右のテールランプによる輝点の輝度(明るさ)が同じであること、左右のテールランプによる輝点が画像上において一体的に位置変化すること、先行車のテールランプによる輝点は赤色であること、等の輝点の属性を検証することによって、画像中の輝点が先行車のテールランプによる輝点であるとの検出を行っている。しかし、自車両の前方に複数の先行車が存在するような場合には、これら先行車のテールランプが渾然一体に検出されるため、前記した属性を検証することが難しく、先行車を高精度に検出する上での障害になっている。また、先行車を検出するための時間がかかり、先行車に追従して走行を行う際の応答性が悪く、自動運転に支障をきたすことがある。
【0006】
本発明の目的は、先行車に追従走行する後続車が、先行車を高い精度でかつ迅速に検出することができるようにし、当該後続車における自動運転を支援することを可能にしたリアランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の後部に配設されるリアランプであって、通常点灯されるランプに加えて、少なくとも後続車が自動運転を行う時に点灯され、当該点灯を後続車において検出することが可能なサブランプを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のサブランプは近赤外光で点灯される。また、自車両が自動運転しているとき、あるいは自車両において後続車が自動運転していると判断したときに自車両のリアランプを自動運転点灯モードに設定可能であり、自動運転点灯モードに設定されたときには、テールランプが点灯されるとともにサブランプも点灯される。自動運転点灯モードに設定されないときには、通常点灯されるランプが点灯されてもサブランプは点灯されない。サブランプは、車両に既設のリアランプと一体にまたは別体に構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、後続車は通常点灯されるランプに加えて点灯されるサブランプを検出することにより先行車を検出することができるので、通常点灯されるランプを検出するよりも正確にかつ確実にサブランプを検出し、先行車を高精度にかつ迅速に検出することができる。特に、サブランプを近赤外光で点灯することにより、先行車のサブランプを正確に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動運転を説明する概念図。
図2】実施形態1のリアランプを備えた自動車(先行車)の後面図と、リアランプの一部を破断した正面図。
図3】後続車における先行車検出装置のブロック構成図と撮像素子の画素配列図。
図4】先行車検出装置における分光特性を示す図。
図5】後続車において撮像した先行車を検出するための画像。
図6】実施形態2のリアランプを備えた自動車(先行車)の後面図。
図7】実施形態3のリアランプを備えた自動車(先行車)の後面図と、サブセンターランプの一部を破断した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明にかかるリアランプを利用した自動運転を説明するための概念図である。自動車CAR1が道路を自動運転で走行しているとき、あるいは、自動車CAR1が通常運転(自動運転ではない状態)で走行しているときに、当該自動車CAR1の後方を後続車CAR2が追走していることを自車両、すなわち先行車CAR1側において認識したときに、当該先行車CAR1のリアランプRLは自動運転点灯モードに設定される。先行車CAR1が自動運転走行の場合には自動的に当該自動運転点灯モードに設定されるが、先行車CAR1が通常運転走行の場合には先行車CAR1の乗員の判断で自動運転点灯モードに設定される。このように、先行車CAR1と後続車CAR2が存在しているときに、先行車CAR1が自動運転点灯モードに設定されると、先行車CAR1のリアランプRLは通常運転点灯モードとは異なる形態で点灯される。
【0012】
一方、自動運転している後続車CAR2は、自車両に備えた撮像装置CAMにおいて前方領域を撮像し、撮像した画像から先行車CAR1を検出する。この先行車CAR1を検出する際には、撮像した画像に写し込まれている先行車CAR1のリアランプRLの輝点に基づいて検出を行う。本発明においては、先行車CAR1においてリアランプRLを自動運転点灯モードで点灯することにより、後続車CAR2において撮像した画像には特異な形態での輝点が検出されることになり、この輝点に基づいて後続車CAR2は先行車CAR1を検出することが可能になる。後続車CAR2は先行車CAR1を検出したときには、検出した先行車CAR1を追従して走行するように自動運転を実行するが、この自動運転の詳細については、ここでは説明は省略する。
【0013】
(実施形態1)
図2(a)は前記した先行車CAR1、すなわち本発明にかかるリアランプを備えた自動車の実施形態1の後面図である。自動車CAR1の車体パネルの後部面の左右にはそれぞれリアランプRLが配設されている。各リアランプRLは、それぞれランプハウジング1にテール&ストップランプT&SL、バックアップランプBUL、ターンシグナルランプTSLが一体に組み込まれたコンビネーション型のリアランプとして構成されている。これらのランプT&SL,BUL,TSLは既存のリアランプに用いられているものがそのまま採用されるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0014】
図2(b)は左リアランプRLを自動車の後方から見た一部を破断した正面図である。右リアランプも左右対称の同じ構造である。リアランプRLのランプハウジング1はランプベース11と、このランプベース11の正面に取着された透光性の正面カバー12で構成されており、ランプベース1の内部は複数の領域に区画され、各区画領域にそれぞれ光源が配設されて前記各ランプT&SL,BUL,TSLが構成されている。
【0015】
前記テール&ストップランプT&SLは、前記ランプベース11内に光源として複数個の赤色LED(半導体発光素子)13が配設されており、この赤色LED13はテールランプとして点灯する際には低輝度で発光され、ストップランプとして点灯する際には高輝度で発光されるようになっている。また、この実施形態1では、前記テール&ストップランプT&SLには、サブテールランプSTLが一体的に構成されている。
【0016】
このサブテールランプSTLは、図2(b)に示されるように、複数の近赤外LED14を光源としており、これらの近赤外LED14は前記ランプベース11のテール&ストップランプT&SLの区画領域内に前記赤色LED13とともに配設されている。この近赤外LED14は前記赤色LED13とは独立して点灯制御されるようになっており、ここでは、自動運転点灯モードに設定されたときに点灯されるように構成されている。
【0017】
図3(a)は前記後続車CAR2に設けられた先行車検出装置2の概念構成図である。図1に示した撮像装置CAMは撮像光学系21と撮像素子22で構成されており、自車両の前方領域を撮像する。撮像装置CAMには、撮像された撮像信号を信号処理して画像を取得する信号処理部23が接続され、さらに取得した画像を解析することにより先行車を検出する車両検出部24が接続されている。
【0018】
前記撮像素子22はCCD、CMOS等のように、半導体受光素子をマトリクス配置した素子で構成されている。ここでは、図3(b)に示すように、ベイヤー配列を構成するB(青),G(緑),R(赤)の画素のうち、1つのB(青色)画素をIR(近赤外)の画素に置き換えたCMOS撮像素子で構成されている。したがって、この撮像素子22は、図4(a)のように、B,G,R,IRの各光領域を受光する受光感度を有している。特に、RとIRの受光感度は、図4(b)に示すように、前記赤色LED13と前記近赤外LED14の分光光度に対応する。
【0019】
そして、前記車両検出部24は、撮像して得られた画像に存在する輝点、すなわち先行車CAR1のリアランプRLによる輝点を検出することにより当該先行車CAR1を検出する。したがって、車両検出部24は、信号処理部23で信号処理されたB,G,R,IRの各画素の信号の全てを選択したときには、可視光領域から近赤外領域を含むリアランプRLによる輝点を検出する。一方、車両検出部24がIRの画素の信号のみを選択したときには、図4(c)に示すように、近赤外LED14で発光した光、すなわちサブテールランプSTLによる輝点のみを検出することになる。
【0020】
ここでは説明を省略するが、後続車CAR2に設けられている自動運転システムは、前記車両検出部24において検出した先行車CAR1を追従するように車速、操舵を制御することにより自動運転が実行される。
【0021】
図1に示した状況においては、先行車CAR1が通常運転をしているとき、あるいは先行車CAR1の運転者が、後続車CAR2において自動運転をしていないと判断したときには、先行車CAR1を自動運転点灯モードには設定しない。したがって、先行車CAR1のリアランプRLは通常の点灯状態となる。一方、先行車CAR1が自動運転をしているときには、リアランプRLは自動的に自動運転点灯モードに設定される。あるいは、先行車CAR1が通常運転の場合でも、先行車CAR1の運転者が、後続車CAR2において自動運転していると判断したときには手動で自動運転点灯モードに設定する。
【0022】
自動運転点灯モードに設定されたときには、リアランプRLのテール&ストップランプT&SLがテールランプとして点灯されるのと同時にサブテールランプSTLも点灯される。すなわち、テールランプとして点灯されたときには赤色LED13による可視光が先行車CAR1から出射されるが、これと同時にサブテールランプSTLの近赤外LED14による近赤外光も先行車CAR1から出射される。このときサブテールランプSTLから出射される近赤外光は後続車CAR2の運転者によって視認されることはないので、当該運転者が先行車CAR1においてストップランプを点灯させた等の誤認を生じさせることはない。
【0023】
後続車CAR2は、自動運転時には先行車検出装置2の撮像装置CAMにおいて自車両の前方領域を撮像するので、図5(a)に示すように、撮像して得られる画像には先行車CAR1のリアランプRLが撮像される。そして、車両検出部24は、撮像した画像から先行車CAR1のリアランプRLによる輝点を検出するが、基本的には、第1検出として撮像素子22のB,G,R,IRの全ての画素の信号を選択し、あるいはRの画素の信号のみを選択することで、図4(b)に示した赤色LED13による輝点の検出を行う。
【0024】
この第1検出では、車両検出部24は撮像した画像に写し込まれている可視光領域の一対の輝点に基づいて先行車CAR1を検出する。すなわち、図5(b)に示すように、第1検出の画像には先行車CAR1の左右のリアランプRLが左右方向に所要の間隔で並んだ一対の輝点(図の黒塗り潰し部位)として撮像されており、これら一対の輝点は先行車CAR1の移動に伴って一体的に移動する挙動を示すので、車両検出部24はこの挙動をとる一対の輝点を検出することにより先行車CAR1を検出することができる。
【0025】
しかし、撮像された画像には対向車CAR3のヘッドランプによる輝点や、道路標識灯、街路灯等SLによる輝点も写し込まれており、これらの輝点が混同されるため先行車CAR1のリアランプRLの輝点のみを検出することが難しいことがある。このような理由で車両検出部24において先行車CAR1を好適に検出できないときには、車両検出部24は、第2の検出として、撮像素子22のIRの画素の信号のみを選択し、図4(b)に示した近赤外LED14による輝点の検出を行う。
【0026】
この第2検出では、図5(c)に示すように、画像中における可視光による輝点は除去され、近赤外光の輝点のみが写し込まれている。すなわち、先行車CAR1の左右のリアランプRLにそれぞれ設けられているサブテールランプSTLの各近赤外LED14で発光した光による輝点のみが写し込まれている。
【0027】
この画像においては第1検出の場合と同様に、先行車CAR1の左右のサブテールランプSTLが左右方向に所要の間隔で並んだ1対の輝点として撮像されているので、車両検出部24はこの一対の輝点を検出することにより先行車CAR1を検出することができる。道路標識灯や街路灯等SLには近赤外光を発光するものが存在することがあるが、これらの近赤外光が輝点として画像に写し込まれたとしても、可視光に比較するとその数は極めて少ない。
【0028】
したがって、第2検出において車両検出部24が検出対象とする輝点は第1検出の場合に比較して極めて少なく、これらの輝点による混同も少ないため先行車CAR1を高い精度でかつ迅速に検出することが可能になる。このように、先行車CAR1を高い精度でかつ迅速に検出することにより、特に先行車CAR1に追従走行する自動運転を行う場合に、適正な自動運転を支援する上で有効になる。なお、第1検出を行うことなく第2検出のみを行うようにしてもよく、この場合には先行車CAR1をさらに迅速に検出することができる。
【0029】
(実施形態2)
図6は本発明の実施形態2のリアランプを備えた自動車の後面図である。この実施形態2では、先行車CAR1の後部に左右のリアランプRLとは独立したサブリアランプSRLを配設している。すなわち、自動車CAR1の車体パネルの後面の左右にそれぞれリアランプRLが配設されており、これらのリアランプRLは既存のリアランプと同じ構成である。また、前記車体パネルの後面の上部の左右、ここでは左右のリアピラーのルーフパネルに近い位置にサブリアランプSRLが配設されている。これらのサブリアランプSRLは、図示は省略するが、ランプハウジング内に近赤外LEDを光源として内装したランプとして構成されている。このサブリアランプSRLの近赤外LEDは前記リアランプRLとは独立して点灯制御されるようになっており、自動運転点灯モードに設定されたときに点灯されるように構成されている。
【0030】
一方、この実施形態2の場合には、後続車CAR2の先行車両検出部2の車両検出部24は、撮像装置CAMの撮像素子22の全ての画素、すなわちB,G,R,IRの信号を常時検出するように構成されている。したがって、車両検出部24は先行車CAR1の左右のリアランプRLによる左右一対の可視光の輝点と、先行車CAR1の左右のサブリアランプSRLによる左右一対の近赤外光の輝点を同時に検出することになる。
【0031】
実施形態2では、先行車CAR1において通常運転での点灯を行うときには、左右のリアランプRLのみが点灯され、サブリアランプSRLが点灯されることはない。先行車CAR1において自動運転点灯モードに設定されたときには、左右のリアランプRLが点灯されるととともに左右のサブリアランプSRLも同時に点灯される。この左右のサブリアランプSRLの点灯状態は後続車CAR2の運転者において視認されないため、当該運転者が先行車CAR1のストップランプの点灯と誤認することはない。
【0032】
自動運転点灯モードでリアランプRLとサブリアランプSRLを点灯しているときに、後続車CAR2において先行車CAR1を撮像したときには、取得した画像にはリアランプRLによる左右一対の可視光の輝点と、サブリアランプSRLによる左右一対の近赤外光の輝点とが同時に撮像され、車両検出部24はこれら二対の輝点を検出する。これら二対の輝点、すなわち4つの輝点は先行車CAR1の移動に伴って一体的に移動する挙動を示すので、車両検出部24はこれら二対の一体的に移動する輝点を検出することにより、高い精度でかつ迅速に先行車を検出することが可能になる。
【0033】
(実施形態3)
図7(a)は本発明の実施形態3のリアランプを備えた自動車の後面図である。自動車のリアパネルRPの中央領域、すなわち車体パネルの後面に配設されている左右のリアランプRLで挟まれた領域には、サブセンターランプSCLが配設されている。このサブセンターランプSCLは、ランプの正面カバーが光吸収機能を有していることを一つの特徴としている。
【0034】
図7(b)は前記サブセンターランプSCLの一部を破断した斜視図であり、ランプハウジング1Aはランプベース11と正面カバー12とで構成されている。この正面カバー12は透光材で構成され、その内面の複数の点状領域を除いた領域にカーボンブラック等の光吸収材15を塗布している。これにより、カーボンブラックを塗布した領域が光吸収領域16となり、塗布していない点状領域が光透過領域17となる。ここでは、この点状の光透過領域17はマトリクス状に配列されている。なお、図7(b)では説明を簡略化するために縦方向に3つの光透過領域17を例示しているが、実際にはこれよりも多数に形成する。また、この構成に代えて、板厚方向に貫通した複数の透孔を有する光吸収板を透光材からなる正面カバー12の外面または内面に接着するようにしてもよい。
【0035】
前記ランプハウジング1A内には、前記光透過領域17に臨む位置にそれぞれ、実施形態1,2と同様な近赤外LED14が配設されている。この近赤外LED14はリアランプRLとは独立して点灯制御されるようになっており、自動運転点灯モードに設定されたときに発光されるように構成されている。近赤外LED14で発光した光は、正面カバー12の光透過領域17を通して出射される。なお、近赤外LED14は必ずしも光透過領域17と一対一に対応していなくてもよく、1つの近赤外LED14から出射した光が複数の光透過領域17を透過して出射されてもよい。
【0036】
この実施形態3においても、後続車CAR2の先行車両検出部2の車両検出部24は撮像素子22のB,G,R,IRの全ての画素の信号を常時検出するように構成されている。したがって、車両検出部24は先行車CAR1の左右のリアランプRLによる左右一対の可視光の輝点と、サブセンターランプSCLによる近赤外光の輝点を同時に検出することになる。
【0037】
実施形態3では、先行車CAR1は、通常運転のときにはリアランプRLのみを点灯し、自動運転点灯モードに設定したときにはリアランプRLと同時にサブセンターランプSCLを点灯する。リアランプRLが点灯したときに、ランプから出射された光の一部は自動車のリアパネルRPの表面で反射されることがある。特にリアランプRL間のリアパネルRPで光が反射されると、この反射光は左右のリアランプRLからの直接出射光と渾然一体となり、後続車CAR2において左右のリアランプRLをそれぞれ輝点として検索することが難しくなる。この実施形態3では、サブセンターランプSCLは正面カバー12が光吸収機能を有しているので、左右のリアランプRLの光がサブセンターランプSCLの表面で反射されることはない。したがって、左右のリアランプRLの光を独立した輝点として明確に検索でき、先行車を高精度にかつ迅速に検出することが可能になる。
【0038】
これに加えて、サブセンターランプSCLでは、近赤外LED14を発光すると、近赤外LED14の光はそれぞれ正面カバー12に配列形成した光透過領域17を通して出射されるので、マトリクス状をした光パターンが得られる。後続車CAR2においては、先行車CAR1を撮像すると、リアランプRLによる左右一対の輝点の間に、サブセンターランプSCLによる複数のマトリクス状に配置された輝点が検索される。このように、左右一対の輝点の間に複数の輝点がマトリクス状に存在するような光パターンは、通常の自動車の走行環境には存在しないので、後続車CAR2においてはこの光パターンを検出することで先行車CAR1を高精度にかつ迅速に検出することが可能になる。このサブセンターランプSCLによる光パターンは近赤外光であるので後続車CAR2の運転者が視認することはなく、運転者に違和感や煩わしさを生じさせることはない。
【0039】
なお、この実施形態3では、サブセンターランプSCLの近赤外LED14により構成される光パターンを特定のパターンとなるように形成してもよい。すなわち、光透過領域17を任意のパターンに構成すればよい。あるいは、マトリクス配置された近赤外LED14のうち一部を選択的に発光させることにより任意の光パターンを形成するようにしてもよい。
【0040】
この場合における光パターンとして、例えば、先行車CAR1における所要の走行情報を、バーコードやQRコード(登録商標)のようにコード化した光パターンとして発光させるように構成することができる。これを撮像した後続車CAR2では、当該光パターンで表示されたコードを検出し、これをデコードすることによって先行車CAR1の走行情報を取得することも可能になる。後続車CAR2において先行車CAR1の走行情報を取得することにより、精度の高い自動運転が可能になる。
【0041】
以上の実施形態1〜3では、先行車を検出するためのサブランプとしてのサブテールランプ、サブリアランプ、サブセンターランプが近赤外光を発光するランプとして構成しているが、これは前記したように点灯時における後続車の運転者が視認したときに誤認や違和感を生じさせないようにするためである。したがって、このような運転者における誤認や違和感を考慮しない場合、あるいは問題にならないような場合にはこれらのランプは可視光で、あるいは発光領域に可視光領域を含む形態で発光させるようにしてもよい。
【0042】
また、実施形態1〜3において、サブテールランプ、サブリアランプ、サブセンターランプを近赤外光で発光する際には、これらの光を先行車の走行情報に基づいて光強度変調あるいは偏光変調してもよい。後続車は変調された近赤外光を復調することにより、先行者の走行情報を取得でき、後続車における自動運転の支援に有効となる。
【0043】
なお、実施形態では可視光と近赤外光を分光するために、IRの画素の信号を選択する構成としているが、光学フィルタによって撮像素子22で受光する受光領域を選択するように構成してもよい。例えば、図3(a)に鎖線で示すように、撮像装置CAMに近赤外光を透過する近赤外フィルタ25を設け、この近赤外フィルタ25をフィルタ制御部27での制御により駆動されるフィルタ駆動部26によって、撮像素子22の受光光路上に進退させるように構成してもよい。近赤外フィルタ25を光路上に進出させることにより近赤外光の輝点のみを検出することが可能になる。あるいは、近赤外フィルタに代えて、印加する電圧を可変することにより光透過領域をチューニングすることが可能なチューニングフィルタを採用して近赤外光の輝点のみを検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は後続車が先行車に追従走行する自動運転を支援するために有効なリアランプとして採用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
CAR1 先行車
CAR2 後続車
CAR3 対向車
RL リアランプ
T&SL テール&ストップランプ
BUL バックアップランプ
TSL ターンシグナルランプ
STL サブテールランプ
SRL サブリアランプ
SCL サブセンターランプ
CAM 撮像装置
1, 1A ランプハウジング
2 先行車検出装置
11 ランプベース
12 正面カバー
13 赤色LED
14 近赤外LED
15 光吸収材
16 光吸収面
17 光透過面
21 撮像光学系
22 撮像素子
23 信号処理部
24 車両検出部
25 近赤外フィルタ
26 フィルタ駆動部
27 フィルタ制御部



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7