(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層鉄心の下部継鉄部を締め付ける下部鉄心締付金具を備えた鉄心締付装置において、前記下部鉄心締付金具の渦電流が集中する箇所に当該渦電流の集中を阻害する所定の構造が設けられており、
前記下部鉄心締付金具は、前記積層鉄心の脚部に対応する位置に、当該脚部に巻装される巻線を載置する台座を有し、
前記所定の構造は、前記台座に外縁から前記脚部の方向に延びるスリットを設けた構造であり、
前記台座と当該台座に載置される巻線との間に絶縁体が設けられ、
前記絶縁体には、前記台座に設けられたスリットに嵌入する突出部が形成されている、鉄心締付装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す構造の積層鉄心300では、巻線303A,303B,303Cを流れる交番電流によって生じる磁束の漏れ磁束が上部鉄心締付金具302Aと下部鉄心締付金具302Bを鎖交し、上部鉄心締付金具302Aと下部鉄心締付金具302Bに渦電流が生じる。
【0006】
上部鉄心締付金具302Aおよび下部鉄心締付金具302Bは、一般に、複数の鋼板を積層した鉄心を挟む1組の金属板を含み、金属板には、その形状によって渦電流が集中して流れる部分が生じる。
【0007】
このため、金属板の渦電流が集中する部分で局所的に多大な渦電流損が発生するとともに、発熱が増大するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第一の発明の鉄心締付装置は、積層鉄心の下部継鉄部を締め付ける下部鉄心締付金具を備えた鉄心締付装置において、下部鉄心締付金具の渦電流が集中する箇所に当該渦電流の集中を阻害する所定の構造が設けられていることを特徴とする、鉄心締付装置である。
【0009】
かかる構成により、下部鉄心締付金具での渦電流の集中による渦電流損と発熱を低減することができる。
【0010】
また、本第二の発明の鉄心締付装置は、第一の発明に対して、下部鉄心締付金具は、積層鉄心の脚部に対応する位置に、脚部に巻装される巻線を載置する台座を有し、所定の構造は、台座に設けられている、鉄心締付装置である。
【0011】
かかる構成により、下部鉄心締付金具の台座の部分に生じる渦電流が局所的に集中するのを防止することができる。
【0012】
また、本第三の発明の鉄心締付装置は、第二の発明に対して、所定の構造は、台座に外縁から脚部の方向に延びるスリットを設けた構造である、鉄心締付装置である。
【0013】
また、本第四の発明の鉄心締付装置は、第三の発明に対して、スリットは、台座を二分するように設けられている、鉄心締付装置である。
【0014】
かかる構成により、第三および第四の発明は、台座に生じる渦電流を分散若しくは低減することができる。
【0015】
また、本第五の発明の鉄心締付装置は、第三または第四の発明に対して、台座と当該台座に載置される巻線との間に絶縁体が設けられ、絶縁体には、台座に設けられたスリットに嵌入する突出部が形成されている、鉄心締付装置である。
【0016】
かかる構成により、第五の発明は、下部鉄心締付金具の台座を鎖交する漏れ磁束が低減し、これにより台座に生じる渦電流を低減することができる。
【0017】
また、本第六の発明の鉄心締付装置は、第二から第五のいずれか1つの発明に対して、台座は、多角形状を有し、所定の構造は、台座の角部を面取りして当該角部に曲面を形成した構造である、鉄心締付装置である。
【0018】
かかる構成により、台座の角部に渦電流が集中するのを防止することができる。
【0019】
また、本第七の発明の鉄心締付装置は、第二の発明に対して、下部鉄心締付金具は、積層鉄心の下部継鉄部を挟む一組の下部締付板と、積層鉄心を挟んだ前記一組の下部締付板を締め付ける締付金具と、前記一組の下部締付板の両端部に設けられ、一方の下部締付板と他方の下部締付板を連結する一組の連結部材とを含み、所定の構造は、下部締付板と連結部材とを接続する接続部に隙間を設ける構造である、鉄心締付装置である。
【0020】
かかる構成により、下部鉄心締付金具と連結部材の接続部に渦電流が集中するのを防止することができる。
【0021】
また、本第八の発明の鉄心締付装置は、第七の発明に対して、隙間には、更に絶縁部材が充填されている、鉄心締付装置である。
【0022】
かかる構成により、下部鉄心締付金具と連結部材の接続部に渦電流が集中するのを防止することができる。
【0023】
また、本第九の発明の静止誘導機器は、積層鉄心と当該積層鉄心の脚部に巻装された巻線とを備えた静止誘導機器であって、積層鉄心は、第一から第九の発明のいずれか1つの鉄心締付装置によって締め付けられていることを特徴とする、静止誘導機器である。
【0024】
かかる構成により、静止誘導機器の鉄心締付装置で生じる渦電流損と発熱を低減することができる。
【0025】
また、本第十の発明の静止誘導機器は、変圧器である。
【0026】
かかる構成により、変圧器の鉄心締付装置で生じる渦電流損と発熱量を低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明による鉄心締付装置によれば、下部鉄心締付金具での局所的な渦電流損と発熱を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る鉄心締付装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明に係る鉄心締付装置を用いた、三相変圧器の積層鉄心を例に説明する。
【0031】
図1は、変圧器のタンクに収納される変圧器本体A(積層鉄心にU、V、Wの各相の巻線を巻装した構成)の正面図、
図2は、同変圧器本体Aの上面図、
図3は、同変圧器本体Aの右側面図である。
【0032】
変圧器本体Aは、複数の鋼板(例えば、珪素鋼板)を積層して成る積層鉄心1と、積層鉄心1を積層方向(
図1で紙面に垂直な方向)に締め付ける鉄心締付装置2と、3個の巻線3U,3V,3Wを含む。積層鉄心1は、3つの脚部103U,103V,103Wと、これらの脚部103U,103V,103Wの上部を連結する上部継鉄部101と、3つの脚部103U,103V,103Wの下部を連結する下部継鉄部102とを有する。積層鉄心1は、積層する各鋼板の寸法を異ならせることにより、3つの脚部103U,103V,103Wの断面形状が略円形にされている。
【0033】
巻線3U,3V,3Wは、それぞれ脚部103U,103V,103Wに巻装されている。U相の巻線3Uは、例えば、6600ボルトの高圧が入力される高圧巻線(一次巻線。図示省略)と、例えば、100ボルトの低圧が出力される低圧巻線(二次巻線。図示省略)を含む。巻線3Uの高圧巻線と低圧巻線はそれぞれ筒状に巻かれており、両巻線は、高圧巻線が低圧巻線の外側に同心状に巻回されるように、脚部103Uに巻装されている。V相の巻線3VとW相の巻線3WもU相の巻線3Uと同様の構成である。なお、以下の説明では、脚部103U,103V,103Wを代表する場合は、「脚部103」の符号を用いて説明し、巻線3U,3V,3Wを代表する場合は、「巻線3」の符号を用いて説明する。
【0034】
鉄心締付装置2は、積層鉄心1の上部継鉄部101を締め付ける上部鉄心締付金具201と、積層鉄心1の上部継鉄部101を締め付ける下部鉄心締付金具202と、上部鉄心締付金具201と下部鉄心締付金具202を連結する連結板203を含む。上部鉄心締付金具201は、上部継鉄部101の長手側面(
図2で上下の側面)を挟む2個の上部締付板2011,2012と、上部締付板2011,2012の両端を連結する2個の上部連結部材2013とで構成される。
【0035】
上部締付板2011は、断面がコの字型をした帯状の板部材で構成され(
図3参照)、長手方向の所定の位置(上部締付板2011を略4等分する位置)に4個の補強片2011aが設けられている。上部締付板2012も上部締付板2011と同一の形状と構造を有している。
【0036】
積層鉄心1の上部継鉄部101は、上部締付板2011と上部締付板2012で上部継鉄部101を締め付けて締結されている。
【0037】
上部連結部材2013も上部締付板2011と同様の断面がコの字型をした帯状の板部材で構成されている(
図3参照)。上部連結部材2013の両端には、上部締付板2011と上部締付板2012とに固定するための固定面2013aが形成されている(
図3参照)。両固定面2013aは、折り曲げ加工によって形成されている。
【0038】
2個の上部連結部材2013は、所定の長さ(上部締付板2011と上部締付板2012で積層鉄心1を締め付けた際の両締付板2011,2012の間隔と略同一の長さ)を有し、両端面が上部締付板2011と上部締付板2012とにボルト締めによって固定されている。
【0039】
上部締付板2011には、両サイドの補強片2011aよりも内側の位置に、2個のフック211が取り付けられている。フック211は、上方に延びる板状の部材で、上端部に孔が設けられている。フック211は、変圧器本体Aをタンクに出し入れする際に当該変圧器本体Aを吊り下げるための金具である。上部締付板2012も上部締付板2011と同様の形状と構造を有し、両サイドの補強片(図示省略)よりも内側の位置に、2個のフック211が取り付けられている。
【0040】
また、上部締付板2011と下部締付板2012の上面には、上部鉄心締付金具201の強度を補強するために連結部材204が取り付けられている。
【0041】
下部鉄心締付金具202も上部鉄心締付金具201と同様に、下部継鉄部102の長手側面を挟む2個の下部締付板2021,2022と、下部締付板2021,2022の両端を連結する2個の下部連結部材2023とで構成される。締結具2023も金属製のボルトとナットからなり、ボルト締めにより積層鉄心1を締め付ける締結具である。
【0042】
下部締付板2021も上部締付板2011と同様に、断面がコの字型をした帯状の板部材で構成され、3つの脚部103U,103V,103Wに対応する位置に2個ずつ補強片2021aが設けられている。下部締付板2022も下部締付板2021と同様の形状および構成を有している。
【0043】
下部締付板2021および下部締付板2022の下側に、変圧器本体Aをタンク内の支持部材に固定するための固定部材205が3個設けられている。3個の固定部材205は、3つの脚部103U,103V,103Wに対応する位置に、下部継鉄部102と直交する方向に設けられている(
図3参照)。下部締付板2021と下部締付板2022の下面の各配設位置に固定部材205を支持する一対の板部材205aが取り付けられており、各固定部材205は、その板部材205aの先端に水平に取り付けられている。
【0044】
上部締付板2011と下部締付板2021は、3個の連結板203で連結されている。上部締付板2012と下部締付板2022も3個の連結板203で連結されている。各連結板203の連結位置は、積層鉄心1の3つの脚部3U,3V,3Wに対応する位置である。連結板203は金属性の板部材で、連結板203の両端部が上部締付板2011と下部締付板2021に溶接されている。
【0045】
下部締付板2021および下部締付板2022の上面であって3つの脚部103U,103V,103Wに対応する位置に合計6個の台形状の台座206が外側に張り出すようにして取り付けられている。台座206は、下部締付板2021の上面に溶接によって固定されている。台座206は、3つの脚部103U,103V,103Wに巻装された3個の巻線3U,3V,3Wを載せるための部材である。
【0046】
張り出した台座206の先端側の角部206aは、
図4に示すように、曲面を形成するように面取り処理が行われている。台座206の角部206aに曲面を形成するのは、台座206に渦電流が流れた場合に当該渦電流が角部206aに集中するのを防止するためである。なお、
図4は、下部締付板2021の中央に取り付けられたV相の巻線3Vを載置する台座206の構造を示す図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【0047】
また、台座206の略中央には、外縁から当該台座206に対応する脚部3Vに向かう方向に延びるスリット207が設けられている。スリット207は、台座206を二分するように、座面全体に設けられている。スリット207を設けることによって生じるスリット207先端の角部206aにも面取り処理によって曲面が形成されている。スリット207は、台座206に渦電流が流れる場合に電流経路を遮断し、当該渦電流の分散と集中の低減を図るためのものである。例えば、スリット207がなければ、台座206には一点鎖線で示す電流経路で流れる渦電流i
eが生じるが、その電流経路を切断するようにスリット207が設けられていると、渦電流i
eは、実線で示す電流経路で流れるようになり、渦電流i
eの分散とそれに基づく渦電流i
eの集中の低減を図ることができる。台座206の角部206aの面取り処理やスリット207の作用・効果については後述する。
【0048】
本実施の形態1では、台座206の形状を台形状としているが、長方形や正方形などの台形以外の多角形状としてもよい。この場合も、多角形の角部206aや台座206にスリット207を設けることによって生じる角部206aに曲面を形成するとよい。
【0049】
2個の下部連結部材2023は、上部連結部材2013と同一の形状および構造を有している。下部連結部材2023の両端にも、折り曲げ加工により下部締付板2021と下部締付板2022とに固定するための固定面2023aが形成されているが、下部連結部材2023の長さは、上部連結部材2013よりも短く設定されている。下部連結部材2023の長さを上部連結部材2013よりも短くしているのは、
図5に示すように、絶縁体から成るスペーサ208を介して下部連結部材2023を下部締付板2021と下部締付板2022に連結するためである。すなわち、下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023との間を絶縁するためである。スペーサ208には、例えば、テフロン(登録商標)、シリコン、フェノール樹脂などの樹脂や合板などの木が用いられる。
【0050】
下部連結部材2023の両端の固定面2023aは、金属性のボルトとナットからなる締結具209でネジ留めにより下部締付板2021と下部締付板2022に固定されている。なお、このネジ留めでは、締結具209を下部締付板2021、下部締付板2022および下部連結部材2023から絶縁するために、締結具209のボルトは、絶縁部材からなる円筒カバー209bを被せて下部締付板2021,2022、固定面2023aおよびスペーサ208のボルト嵌入用の孔に嵌入装着されている。また、ボルトの頭部とナットの内側にそれぞれ絶縁部材からなるワッシャ209aが装着されている。
【0051】
下部連結部材2023と下部締付板2021および下部締付板2022とがスペーサ208によって絶縁されているので、下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023との間を流れる渦電流を低減することができる。
【0052】
本実施の形態1では、下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023の隙間全体にスペーサ208を充填するようにしているが、
図6に示すように、スペーサ208を締結具209のボルトの部分にだけ設け、下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023の間に隙間212を設けるようにしてもよい。このようにした場合は、変圧器本体Aをタンクに収納した場合、隙間に絶縁油が浸入するので、絶縁油によって下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023との間を流れる渦電流を低減するとともに、その渦電流による発熱を抑制することができる。
【0053】
2個の下部連結部材2023の上面には、それぞれ台座210が取り付けられている。脚部103Uを臨む下部連結部材2023に取り付けられた台座210は、脚部103Uに巻装された巻線3Uを載せるための部材であり、脚部103Wを臨む下部連結部材2023に取り付けられた台座210は、脚部103Wに巻装された巻線3Wを載せるための部材である。スペーサ208によって下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023との間を流れる渦電流が低減されるので、台座210には、スリットは設けられていない。
【0054】
次に、本実施の形態1の鉄心締付装置2の作用と効果について、説明する。
【0055】
巻線3U,3V,3Wの高圧巻線(一次巻線)には三相交流電圧が印加されるので、各高圧巻線には相互に位相が2π/3だけ異なる電流が流れる。例えば、中央の巻線3Vを流れるV相の電流を基準にした場合、U相の巻線3UにはV相の電流に対して2π/3だけ遅れた電流が流れ、W相の巻線3WにはV相の電流に対して2π/3だけ進んだ電流が流れる。
【0056】
渦電流は、表皮効果により台座206の表面を流れ、しかも、尖った部分に集中するので、中央の台座206では、台形の角部に集中して渦電流が流れようとする。
【0057】
図7は、本実施の形態1の台座206を鎖交する漏れ磁束φと台座206を流れる渦電流i
eの一例を模式的に示した図である。
図7は、漏れ磁束φが台座206を上側から下方向に鎖交する例を示している。
【0058】
図7に示すように、漏れ磁束φが台座206を上側から下方向に鎖交する場合、台座206にはその漏れ磁束φを弱める磁束を生成するように、反時計周りの渦電流i
eが流れる。台座206にスリット207が設けられていなければ、渦電流i
eは、表皮効果によって台座206の巻線3の載置面の表面を自由に流れる。そして、渦電流i
eの電流密度は、漏れ磁束φの分布や台座206の形状などによって変化するので、台座206に渦電流i
eの集中する部分が生じる。
【0059】
本実施の形態1の台座206には、中央にスリット207が設けられているので、例えば、一点鎖線で示す電流経路で流れようとする渦電流i
eはスリット207によって遮断され、実線で示す渦電流i
eに分散される。また、台座206の角部206aに面取り処理をして曲面を形成しているので、角部206aを流れる渦電流の密度が低減される。
【0060】
従って、本実施の形態1の鉄心締付装置2によれば、下部締付板2021の3個の台座206において、渦電流i
eが局所的に集中することによる渦電流損と発熱を低減することができる。
【0061】
図8は、本実施の形態1の下部締付板2021と下部連結部材2023の連結部を鎖交する漏れ磁束φと下部締付板2021および下部連結部材2023を流れる渦電流i
eの一例を模式的に示した図である。
【0062】
例えば、下部鉄心締付金具202の脚部103W側の端部では、下部締付板2021、下部連結部材2023および下部締付板2022を漏れ磁束φが同一方向に鎖交する。
図8には、漏れ磁束φが上側から下方向に鎖交する例を示しているが、下側から上方向に鎖交する場合や横方向に鎖交する場合も、漏れ磁束φは下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023を同一方向に鎖交する。
【0063】
図8に示すように、漏れ磁束φが下部締付板2021と下部連結部材2023を上側から下方向に鎖交する場合、下部締付板2021と下部連結部材2023が導通状態で接続されていれば、下部締付板2021と下部連結部材2023にはその漏れ磁束φを弱める磁束を生成するように、反時計周りの渦電流i
eが流れる。
【0064】
例えば、渦電流i
eが、一点鎖線で示すように、下部締付板2021と下部連結部材2023との間を周回する経路で流れる場合、下部締付板2021と下部連結部材2023は直交するように接続されているので、電流経路が直角に変化する角部で渦電流i
eが集中するようになる。
【0065】
本実施の形態1の下部締付板2021では、下部締付板2021と下部連結部材2023との間を絶縁材から成るスペーサ208によって絶縁しているので、例えば、一点鎖線で示す電流経路で流れようとする渦電流i
eはスペーサ208によって遮断され、実線で示す渦電流i
eに分散される。従って、渦電流が下部締付板2021と下部連結部材2023の両連結部に集中することによる渦電流損と発熱を低減することができる。下部締付板2022と下部連結部材2023の両連結部や下部鉄心締付金具202の脚部103U側の端部でも上記同様の作用・効果を奏する。
【0066】
以上のように、本実施の形態1の鉄心締付装置2によれば、下部鉄心締付金具202の渦電流i
eが集中する箇所に、渦電流i
eの集中を阻害する所定の構造を設けているので、渦電流i
eの集中による局所的な渦電流損と発熱を好適に防止することができる。
【0067】
具体的には、下部締付板2021および下部締付板2022の台座206にスリット207を設け、そのスリット207で台座206における渦電流i
eの経路を遮断するようにしているので、渦電流i
eの経路が分散され、台座206における渦電流i
eの集中が低減し、台座206における局所的な渦電流損と発熱を低減することができる。また、スリット207に冷却兼絶縁用の絶縁油が浸入するので、絶縁油によって渦電流による発熱を低減することができる。
【0068】
また、下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023の連結部に絶縁部材からなるスペーサ208を介在させ、下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023との間の渦電流i
eの経路を遮断するようにしているので、渦電流i
eが下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023との間を周回する経路で流れることがなく、下部締付板2021および下部締付板2022と下部連結部材2023の連結部に渦電流i
eが集中することによる局所的な渦電流損と発熱を低減することができる。
【0069】
図1〜
図4では、台座206にだけ全体的にスリット207を設け、台座206だけを二分するようにしているが、下部締付板2021のスリット207が重なる部分にもスリットを形成するようにしてもよい。このようにした場合は、下部締付板2021,2022の台座206が取り付けられる部分(上部の水平に屈曲した部分)においても渦電流i
eの流れを制限することができる。
【0070】
また、
図1〜
図4では、台座206全体にスリット207を設けているが、台座206の一部にスリット207を設けるようにしてもよい。例えば、
図4において、台座206の下部締付板2021から張り出した部分にだけスリット207を設け、台座206の下部締付板2021に溶接されている部分にはスリット207を形成しないようにしてもよい。
【0071】
また、
図1〜
図4では、台座206にスリット207を1本だけ設けているが、2本以上のスリット207を設けるようにしてもよい。この場合、全てのスリット207を台座206の外縁から当該台座206に対応する脚部3に向けて切り込みを入れる形状としてもよく、一部若しくは全てのスリット207を台座206内に長孔の形状で形成してもよい。
【0072】
また、
図1〜
図4では、スリット207を空間とし、変圧器本体Aを絶縁油が充填されたタンクに収容した場合にスリット207に絶縁油が浸入する構成としているが、スリット207に絶縁部材を充填した構成であってもよい。
【0073】
また、
図1〜
図4では、台座206にスリット207を設けて当該台座206を流れる渦電流の経路を阻害することにより、渦電流の集中を低減しているが、
図9,
図10に示すように、台座206と当該台座206に載置される巻線3との間に絶縁部材から成る載置台212を介在させるようにしてもよい。載置台212を介在させることにより、コイル3U,3V,3Wと下部鉄心締付金具202とを確実に絶縁することができる。載置台212としては、例えば、木やフェノール樹脂(ベークライト)を用いるとよい。
【0074】
図9,
図10の例は、木製のボルト213aとナット213bとからなる締結具213で台座206に直方体形状の載置台212を固定した例である。締結具213のボルト213aが台座206に交叉するように取り付けられるので、締結具213に渦電流が生じないように、締結具213も絶縁体(例えば、木製)で構成している。
【0075】
台座206と巻線3との間に絶縁部材から成る載置台213を介在させると、巻線3が台座206から離れるので、台座206を鎖交する漏れ磁束φが載置台213を設けない場合よりも少なくなる。従って、台座206に生じる渦電流i
eの大きさが小さくなるので、当該台座206で局所的に生じる渦電流損や発熱を抑制することができる。
【0076】
図9,
図10の例では、載置台212を直方体形状とし、台座206のスリット207は空間となっているが、載置台212の下面のスリット207に対向する位置に当該スリット207に嵌入する凸部212aを形成し、スリット207を載置台212の凸部213aで閉塞するようにしてもよい。
【0077】
載置台212を台座206に設けるにあたり、当該台座206にスリット207の形成と角部206aの面取り処理のいずれか一方若しくは両方を行ってもよく、いずれも行わないようにしてもよい。
【0078】
図1〜
図4の例では、下部鉄心締付金具202の6個の台座206に巻線3U,3V,3Wを載置する構造であるので、巻線3U,3V,3Wは下部鉄心締付金具202に密着した状態となるが、上部鉄心締付金具201からは少し離れた状態となる。このため、下部鉄心締付金具202を鎖交する漏れ磁束φは、上部鉄心締付金具201を鎖交する漏れ磁束φよりも大きくなり、渦電流i
eの集中により局所的に渦電流損や発熱が増大する箇所が下部鉄心締付金具202側に生じ易くなる。
【0079】
本実施の形態1では、渦電流i
eの集中による局所的な渦電流損や発熱に対する対策を下部鉄心締付金具202にだけ施しているが、載置台212によって巻線3U,3V,3Wの高さ方向の位置を上昇させることによって渦電流i
eの集中による局所的な渦電流損や発熱が増大する箇所が上部鉄心締付金具201側にも生じる場合は、下部鉄心締付金具202に施したスリット207の形成や角部206aの面取り処理を上部鉄心締付金具201の該当箇所に施すようにしてもよい。
【0080】
本実施の形態1では、3脚構造の積層鉄心1を締付ける鉄心締付装置2について説明したが、本発明は、2脚構造の積層鉄心や3脚以上の構造を有する積層鉄心を締め付ける鉄心締付装置についても適用することができる。
【0081】
また、本実施の形態1では、変圧器の積層鉄心1について説明したが、同様の構成の積層鉄心1を備えるリアクトルなどの静止誘導機器についても本発明に係る鉄心締付装置2を適用することができる。