特許第6484423号(P6484423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6484423熱収縮性ポリスチレン系フィルム及びそれを用いた熱収縮性フィルムラベル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484423
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリスチレン系フィルム及びそれを用いた熱収縮性フィルムラベル
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20190304BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C08J5/18CET
   G09F3/04 C
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-211488(P2014-211488)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-79283(P2016-79283A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正浩
(72)【発明者】
【氏名】木下 周一
(72)【発明者】
【氏名】勘坂 裕一郎
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/059026(WO,A1)
【文献】 特開2007−070545(JP,A)
【文献】 特開2003−073486(JP,A)
【文献】 特開2003−071928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/02
5/12− 5/22
G09F 3/04
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
B29C55/00− 55/30
61/00− 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性ポリスチレン系フィルムであって、
4−メチルスチレン成分を共重合し、シンジオタクチック構造を有したポリスチレン系樹脂(A)と、
ブタジエン成分を共重合し、アタクチック構造を有したポリスチレン系樹脂(B)とを備えてなり、
前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムを構成する樹脂の総質量(100質量%)を基準として、
前記ポリスチレン系樹脂(A)が5質量%以上30質量%以下であり、
前記ポリスチレン系樹脂(B)が70質量%以上95質量%以下であり、
前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムを90℃の温湯に10秒間浸した時に、前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの主収縮方向の収縮率が40%以上80%以下であり、前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの前記主収縮方向と直交する方向の収縮率が−5%以上15%以下であり、
前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの厚さが18μm以上40μm以下であり、
前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの主収縮方向と直交する方向の圧縮強度が4N以上である、熱収縮性ポリスチレン系フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載された熱収縮性ポリスチレン系フィルムを用いた、容器包装用に加工された熱収縮性ポリスチレン系フィルムラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材、被覆材、印刷資材、とりわけ、容器等の印刷対象物表面に施される、熱収縮性ポリスチレン系フィルム及びこれを用いた熱収縮性フィルムラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、熱収縮性という特性から、接着剤、固定部材を使用することなく、対象物を被覆した後に熱収縮させることで包装し又は密閉し、対象物に密着させることができる。また、熱収縮性ポリスチレン系フィルムはラベル装着時の仕上りが美しく、製造時の加工容易性と使用後の剥離容易性等の理由から、様々な用途に用いられている。とりわけ、主収縮方向が幅方向である熱収縮性フィルムの幅方向の端部同士を貼り合わせて筒状に形成した熱収縮性スリーブは、飲料用容器(例えば、PETボトル)の筒状ラベルとして広く使用されている。
【0003】
他方、資源保護、コスト低減等の理由から熱収縮性フィルムの薄膜化が強く求められているが、熱収縮性ポリスチレン系フィルムは熱収縮性ポリエステル系フィルム等に比べて剛性が低く、薄膜化すると、フィルム取扱性、対象物への被覆性及び包装性等が困難となる。例えば、熱収縮性スリーブは、通常平坦に折り畳まれ、巻芯に巻き回されたロールの状態で保管するため、筒状ラベルとして使用するときに、平坦に折り畳まれた状態から形状復元しなければならないが、剛性が低いと復元しづらくなり、容器へ装着できなくなる確率が増大してしまう。
【0004】
このような課題に対して、特許文献1(特開2009−214365号公報)では、スチレンーブタジエンブロック共重合体を含む表面層(A)及び裏面層(C)と、スチレンーブタジエンブロック共重合体70〜90質量%とスチレン単独重合体10〜30質量%とからなる中間層(B)が、(A)/(B)/(C)の順に積層されたことを特徴とするスチレン系熱収縮性フィルムが提案されている。
【0005】
特許文献1の提案によれば、スチレン系熱収縮性フィルムの総厚みが30〜50μmとある程度の薄膜化を達成することができるとされているが、30μm未満の膜厚を実現することは困難であった。また、(A)/(B)/(C)という三層構造を有するものであり、複数層を構成するには複雑な製造装置及び調整工程が必要となり、コストと時間が掛るため、薄膜化した熱収縮性ポリスチレン系フィルムを低廉かつ大量に提供することは容易ではなかった。
【0006】
従って、今なお、薄膜化を実現することができると共に、環境性、低コスト性及び大量生産性に優れ、所望の薄膜化を行っても、取扱性、作業性及び加工容易性とに優れた熱収縮性ポリスチレン系フィルムの開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−214365号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、本発明時において、特定二種のポリスチレン系樹脂を特定の添加量で添加して、縦方向(長手方向)及び横方向(幅方向)の熱収縮率を特定の数値内に調整することにより、薄膜化を容易かつ大量に実現しつつ、剛性、取扱性、印刷容易性、作業性及び加工容易性に優れ、包装(密閉)等がきわめて容易に行うことができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
【0009】
本発明によれば、熱収縮性ポリスチレン系フィルムであって、
4−メチルスチレン成分を共重合し、シンジオタクチック構造を有したポリスチレン系樹脂(A)と、
ブタジエン成分を共重合し、アタクチック構造を有したポリスチレン系樹脂(B)とを備えてなり、
前記ポリスチレン系樹脂(A)が5質量%以上30質量%以下であり、
前記ポリスチレン系樹脂(B)が70質量%以上95質量%以下であり、
前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムを90℃の温湯に10秒間浸した時に、前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの主収縮方向の収縮率が40%以上80%以下であり、前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの前記主収縮方向と直交する方向の収縮率が−5%以上15%以下である、熱収縮性ポリスチレン系フィルムを提案することができる。
【0010】
本発明による熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、複雑な製造装置及び製造工程を有さず低廉に、極めて薄膜化したフィルムとして製造することができ、環境保全性、経済性に優れ、取扱性、印刷容易性、包装・積層容易性、高い加工適用性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔熱収縮性ポリスチレン系フィルム〕
本発明による熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、ポリスチレン系樹脂(A)とポリスチレン系樹脂(B)の二種の樹脂を特定の含有量で包含してなり、かつ、特定の測定条件において、一定の収縮率を有するものである。このような特性を有する本発明は、熱収縮特性、印刷インクとの相溶性、印刷容易性、廃棄処理容易性、印刷面にピンホール等の発生抑制性等の効果を付与することができる。
【0012】
(二種のポリスチレン系樹脂(A)及び(B)の混合)
本発明にあっては、ポリスチレン系樹脂(A)が5質量%以上30質量%以下、好ましくは8質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。また、ポリスチレン系樹脂(B)が70質量%以上95質量%以下であり、好ましくは75質量%以上92質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上90質量%以下で配合されてなる。
【0013】
ポリスチレン系樹脂(A)及びポリスチレン系樹脂(B)の混合量が上記数値の範囲内にあることにより、熱収縮性ポリスチレン系フィルムに所望の物理的又は化学的な特性を付与することが可能となる。より具体的には、ポリスチレン系樹脂(A)の配合量が上記下限値以上とされてなることにより、薄膜化されてもなお、熱収縮性ポリスチレン系フィルムに好ましい剛性を付与することが可能となり、かつ、ポリスチレン系樹脂(B)の配合量が上記下限値以上とされてなることにより、熱収縮性ポリスチレン系フィルムに好ましい熱収縮特性を付与することが可能となる。
【0014】
(熱収縮率)
熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、90℃の温湯(水)に10秒間浸した時に、熱収縮性ポリスチレン系フィルムの主収縮方向(幅方向)の収縮率が40%以上80%以下であり、好ましくは50%以上80%以下、より好ましくは55%以上80%以下とされてなる。
主収縮方向の収縮率が上記数値範囲程度とすることにより、即ち、上記下限値以上とすることにより、熱収縮性ポリスチレン系フィルムが十分に収縮し、ラベルと容器等の対象物との間の隙間発生を有効に抑制し、かつ、熱収縮性ポリスチレン系フィルム(そのラベル)が容器等の対象物に一体的に密着することを可能とし、並びに、上記上限値以下とすることにより、加熱収縮時に皺や歪み等の変形等の発生を有効に抑制し、かつ、包装材又は表示材として優れた意匠(外観)を実現することが可能となる。
【0015】
熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、90℃の温湯(水)に10秒間浸した時に、熱収縮性ポリスチレン系フィルムの該主収縮方向と直交する方向(長手方向)の収縮率が−5%以上15%以下であり、好ましくは−3%以上10%以下とされてなる。
【0016】
該主収縮方向と直交する方向の収縮率を上記数値範囲程度とすることにより、即ち、上記下限値以上とすることにより、例えば、熱収縮性ポリスチレン系フィルムを用いて筒状ラベルとしてPETボトル等の容器に装着して使用する場合、すなわち主収縮方向が周方向となっている場合、加熱収縮時に容器縦方向にラベルが伸長しラベルの長さが余剰するといったことを抑制し、かつ、意図したラベルデザインが変形し又は歪んでしまうことを有効に抑制し、並びに、上記上限値以下とすることにより、加熱収縮時に容器等の対象物の表面にラベルが収縮してフィルム(そのラベル)の長さが不足することを抑制し、かつ、意図したラベルデザインが皺や歪み等の変形等の発生を有効に抑制することを可能とする。
【0017】
(厚さ)
熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムの厚さは、18μm以上40μm以下であり、好ましくは、18μm以上35μm以下であり、より好ましくは18μm以上30μm以下である。フィルムの厚さが上記数値範囲内にあることにより、薄膜化という効果を達成することが可能となる。フィルムの厚さは、JIS K7130に準じてマイクロメーターにて測定することができる。
【0018】
(圧縮強度)
本発明の好ましい態様によれば、熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、その主収縮方向と直交する方向の圧縮強度が4N以上である。圧縮強度が上記数値程度とすることにより、フィルム及びラベルを容器等の対象物に実装する際に、ラベルが縦方向途中で折曲するといった不都合を有効に防止することができる。
【0019】
(任意成分)
熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムには、第三の樹脂成分、静電密着性、易滑性、延伸性、加工適性、耐衝撃性等を向上させるためや、粗面化、不透明化、空洞化、軽量化等を目的として、他の樹脂、可塑化剤、相溶性調整剤、無機粒子、有機粒子、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を任意成分として使用することができる。本発明の好ましい態様によれば、第三の樹脂成分として、耐衝撃性を向上することが可能な、ハイインパクトポリスチレンが好ましくは用いられる。
【0020】
(形状・延伸)
熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムは、一層又は二以上の多層で構成されてよいが、薄膜化及び製造容易性等の見地から、一層として形成されることが好ましい。本発明における熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムにあっては、少なくとも一軸方向に延伸されて、フィルムが形成されてなる。前記延伸は、好ましくは前記フィルムの幅方向(横方向)に行われてなる。また、必要に応じて、フィルムの長手方向(縦方向)への延伸も行ってよい。本発明にあっては、延伸温度と延伸倍率とを調整し、フィルムに所望の収縮率を付与することができる。
【0021】
〔ポリスチレン系樹脂(A)〕
本発明におけるポリスチレン系樹脂(A)は、4−メチルスチレン成分を共重合し、シンジオタクチック構造を有したものである。
「シンジオタクチック」とは、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基又は置換フェニル基が、交互に反対方向に位置する立体構造を有するものである。そのタクティシティは同位体炭素による核磁気共鳴(13C−NMR法)により定量することができる。13C−NMR法により測定されるタクティシティは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば、2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本発明によるシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂は、通常、ラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、又はラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクシティを有するものである。
【0022】
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(A)は、一般に、結晶性が高く、高い融点を有することから、耐熱性及び耐薬品性に優れた樹脂である。このポリスチレン系樹脂(A)は、フィルムに、寸法安定性、耐熱性、取り分け、高い剛性を付与することができる。この結果、容器等の印刷対象物に被覆した際に、「こし」のあるフィルムとして被覆することが可能となり、その後の容器へのラベル装着等を容易に行うことが可能となる。また、このポリスチレン系樹脂(A)は、印刷インクに含まれる溶剤に対する耐久性を向上させ、優れた印刷性を発揮させることが可能となる。
【0023】
(添加剤)
本発明に使用するポリスチレン系樹脂(A)は、所望の目的を達成させるために、可塑化剤、相溶化剤等、例えば、熱可塑性樹脂および/またはゴム成分を添加してもよい。
【0024】
〔ポリスチレン系樹脂(B)〕
本発明におけるポリスチレン系樹脂(B)は、ブタジエン成分を共重合し、アタクチック構造を有したものを用いる。「アタクチック」とは、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基又は置換フェニル基が、全く無秩序に位置する立体構造を有するものである。
【0025】
アタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(B)は、フィルムに、熱収縮特性と耐衝撃性とを付与することができる。
【0026】
(添加剤)
本発明に使用するポリスチレン系樹脂(B)は、所望の目的を達成させるために、可塑化剤、相溶化剤等、例えば、熱可塑性樹脂および/またはゴム成分を添加してもよい。
【0027】
(樹脂混合物の調製)
本発明にあっては、4−メチルスチレン成分を共重合し、シンジオタクチック構造を有したポリスチレン系樹脂(A)と、
ブタジエン成分を共重合し、アタクチック構造を有したポリスチレン系樹脂(B)とを用意する。それぞれ、サイト等の一次貯蔵器内に供給されてよい。
次に、5質量%以上30質量%以下の前記ポリスチレン系樹脂(A)と、70質量%以上95質量%以下の前記ポリスチレン系樹脂(B)の配合量を調整し、必要に応じて、任意成分を添加して、樹脂混合物を調製する。
樹脂混合物は、混合機によって調製することが可能であり、その具体例としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等が使用可能である。樹脂混合物は、ホッパー等を経て押出機に搬送されてよい。
【0028】
(フィルム成形)
本発明にあっては、熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムは押出成型法、溶液流延法、及びカレンダー法等によってフィルム成形をすることが可能であり、一般には、押出成型法の属する、インフレーション成形法及びT−ダイ成形法を用いてフィルム成形が行われる。
【0029】
(延伸)
本発明にあっては、熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルム成形後又は成形と同時に、熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する。本発明の好ましい態様によっては、上記冷却ロールにて冷却されたフィルムが、その後、ロール等の搬送手段に搬送されて、先ず、縦延伸され、その後に、横延伸されることが好ましい。本発明にあっては、延伸方法は特に制限されず、公知の延伸方法が採用される。例えば、ロールによる一軸延伸、一軸延伸後テンター延伸機による逐次二軸延伸、または同時二軸延伸が挙げられる。
【0030】
(収縮率)
本発明にあっては、最終的には、前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムを90℃の温湯に10秒間浸した時に、前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの主収縮方向の収縮率が40%以上80%以下であり、前記熱収縮性ポリスチレン系フィルムの前記主収縮方向と直交する方向の収縮率が−5%以上15%以下とし調製してなるものである。
【0031】
(スリッター)
延伸後、フィルムはシート状の長尺巻物(ウエッブ)として巻き取られる。その後、スリッターにて、シート状の長尺巻物(ウエッブ)を巻戻しながら、任意の幅に連続して切断しながら、任意の幅及び長さに巻き取って製品を得る。
【0032】
〔用途〕
本発明の熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムは、容器等の被覆、結束、外装などに用いられる包装材として、取り分けラベルとして好適に用いられる。特に、本発明のフィルムにより構成されるラベルは、被覆性に優れ、容器の包装用として好適である。また、低温収縮性に優れ、無菌充填包装や短時間での包装への優れた適用性を有する。
【0033】
また、本発明によるフィルム又はラベルは、表面に情報を表示してもよい。具体的には、容器等の対象物に、容器等に収容される商品の品名、大きさ、数量、使い方、注意事項等の商品情報を印刷することができる。この情報表示は、カラフルな色彩、文字、イラストレーション、写真などの表現手段を用いて、目を引くように印刷されてよい。さらには、本発明によるラベルは、その一部において、切断用ミシン目等からなる破断手段を一又は複数備えてなるものを備えてなるものであってもよい。
【実施例】
【0034】
本発明の内容を、以下の実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明の内容はこれらの実施例の内容に制限して解釈されるものではなく、また、これらの実施例は当業者が実施できる好ましい態様の一態様を開示するものであり、これら実施例に基づいて、本願発明の範囲に属する発明全て実施できることは言うまでもない。
【0035】
〔材料〕
実施例中の成分は下記に列記した通りであった。
ポリスチレン系樹脂(A):シンジオタクチック構造を有し、4−メチルスチレン成分を共重合したポリスチレン系樹脂(出光興産製、商品名:ザレック)
ポリスチレン系樹脂(B):アタクチック構造を有し、ブタジエン成分を共重合したポリスチレン系樹脂(電気化学工業製、商品名:クリアレン)
ポリスチレン系樹脂(H):ハイインパクトポリスチレン樹脂(東洋スチレン製、商品名:トーヨースチロールHI)
【0036】
〔熱収縮性ポリスチレン系樹脂フィルムの調製〕
(実施例1)
ポリスチレン系樹脂(A)を14.8質量%、ポリスチレン系樹脂(B)を84.0質量%、及びポリスチレン樹脂(H)を1.2質量%それぞれ計量し、ブレンダにて攪拌混合して得た樹脂組成物を、シリンダー温度を270℃に設定した押出機に供給し、Tダイを通して冷却ロール上に溶融押出した。冷却ロール上で冷却固化したシートを、縦延伸工程でシート温度を95℃まで予熱した後、長手方向(MD方向)に1.15倍延伸し、次に横延伸機内に導き延伸温度100℃で幅方向(TD方向)に4.7倍延伸し、引続き横延伸機内で熱固定処理を施した後、巻取機でフィルムを巻取った。得られたフィルムの厚さは25μm、フィルム幅方向と長手方向の90℃熱収縮率は、各々72%、5.8%であった。又、長手方向の圧縮強度は5.2Nであった。
【0037】
(実施例2)
ポリスチレン系樹脂(A)29.5質量%と、ポリスチレン系樹脂(B)69.3質量%とし、長手方向(MD方向)に1.17倍に縦延伸したこと以外は、実施例1と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0038】
(比較例1)
ポリスチレン系樹脂(A)4.9質量%と、ポリスチレン系樹脂(B)93.9質量%としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0039】
(比較例2)
ポリスチレン系樹脂(A)30.5質量%と、ポリスチレン系樹脂(B)68.3質量%としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0040】
(比較例3)
ポリスチレン系樹脂(A)3.3質量%と、ポリスチレン系樹脂(B)95.5質量%としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0041】
(比較例4)
横方向(TD方向)に3.9倍に横延伸したこと以外は、実施例1と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0042】
(比較例5)
縦方向(MD方向)に1.20倍に縦延伸したこと以外は、実施例1と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0043】
(比較例6)
縦延伸工程でシート温度を98℃まで予熱し、長手方向(MD方向)に1.04倍に縦延伸したこと以外は、実施例1と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0044】
(比較例7)
縦方向(MD方向)に1.09倍に縦延伸したこと以外は、実施例2と全く同一にして、フィルムを巻取って得た。
【0045】
〔評価試験〕
〔評価試験1:特性評価試験〕
下記評価を行って、その結果を下記表1に記載した。
(評価1:フィルム厚み測定)
フィルムについて、JIS K7130法に準じてマイクロメーターにて厚み(μm)を測定した。
【0046】
(評価2及び評価3:TD方向及びMD方向の熱収縮率測定)
(評価方法)
実施例及び比較例のフィルムについて、縦横各100mmの大きさにサンプリングし、90℃の温水中に10秒間浸漬した後温水中から取出して、0.5mm目盛のスケールで縦横各々の寸法変化を測定し、下記数式で計算して求めた。
熱収縮率(%)={100(mm)−浸漬後の長さ(mm)}/100(mm)×100
【0047】
(評価4:圧縮強度測定)
実施例及び比較例のフィルムについて、JIS P 8126に準じて、長さ152.4mm、幅12.7mmの大きさにサンプリングし、支持具に円筒状にセットし、リングクラッシュテスターにて測定した。1種のフィルムに対して5サンプルを測定し、その平均値を圧縮強度(N)とした。
【0048】
〔評価試験2:フィルム機能性評価試験〕
実施例及び比較例のフィルムを幅25cmとなるようスリットし、幅方向端部同士を重ね合せ、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合溶剤により接着し、筒状に加工してスリーブを作製した。スリーブは長手方向に沿って2本のローラーで押しつぶして平坦にし、紙管にロール状に巻き回した。そのスリーブロールをラベル装着機に装填して、平坦なスリーブを巻き戻しながら長さ15cm毎に切断し、それぞれ筒状に拡げて600本のPETボトル(装着部分の断面は一様な直径6cmの円形)に装着し、装着後に連続してスチームトンネルに通してスリーブを加熱収縮させた。収縮後のスリーブを下記の評価基準によって評価し、その結果を表1に記載した。
【0049】
(評価5:密着性評価)
600本のうち、ペットボトル表面と装着されたスリーブとの間に間隙が認められたペットボトルの本数について以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:スリーブとの間に間隙が認められたものが3本以下であった。
×:スリーブとの間に間隙が認められたものが4本以上であった。
【0050】
(評価6:皺の存在評価)
600本のうち、ペットボトル表面に装着されたラベルに皺が認められたペットボトルの本数について以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:ラベルへの皺が認められたものが3本以下であった。
×:ラベルへの皺が認められたものが4本以上であった。
【0051】
(評価7:縦長さ評価)
600本のうち、ペットボトル表面に装着されたラベルの長さの短長が認められたペットボトルの本数について以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:ラベルの長さが±3%を超えたものが3本以下であった。
×:ラベルの長さが±3%を超えたものが4本以上であった。
【0052】
(評価8:総合評価)
600本のうち、ペットボトル表面に装着されたラベルに上記密着性、しわ、縦長さの不良が認められたペットボトルの本数について以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:600本のうち不良が認められたものが3本以下であった。
×:600本のうち不良が認められたものが4本以上であった。
【0053】
【表1】