特許第6484427号(P6484427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484427
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】二重管
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/18 20060101AFI20190304BHJP
   F16L 9/21 20060101ALI20190304BHJP
   F16L 11/11 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   F16L9/18
   F16L9/21
   F16L11/11
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-219117(P2014-219117)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2016-84897(P2016-84897A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】細江 直樹
(72)【発明者】
【氏名】今久保 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】原田 潤
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−194283(JP,A)
【文献】 特開昭51−052355(JP,A)
【文献】 米国特許第05433252(US,A)
【文献】 特開平09−257163(JP,A)
【文献】 特開昭62−228784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L9/00−11/26,59/14−59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の内管と、前記内管の外周面を覆い、合成樹脂製で切断可能な被覆管とを備える、二重管であって、
前記被覆管は、管壁の厚みが均一または略均一であり、かつ外周面に周方向に所定間隔で配置され軸方向に連続して直線状に延びる複数の山部を有し、
前記被覆管の外周面には、周方向において、前記山部とその間の支持部が交互に並ぶように配置され、
前記被覆管が変形していないときには、一部の前記支持部のみが前記内管に当接して支持し、前記山部に加えられる力によって前記支持部が縮径するように前記被覆管が変形したとき、より多くの前記支持部によって前記内管支持する、二重管。
【請求項2】
周方向断面において、前記山部には頂点がある、請求項1記載の二重管。
【請求項3】
前記被覆管の外周面は、周方向において、前記山部とその間の谷部とを含む波形に形成される、請求項1または2記載の二重管。
【請求項4】
前記内管および前記被覆管はいずれもポリオレフィン系樹脂によって形成される、請求項1ないし3のいずれかに記載の二重管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二重管に関し、特にたとえば、合成樹脂製の内管と、内管の外周面を覆う被覆管とを備え、たとえば給湯または給水に用いられる、二重管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の二重管の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の二重管では、被覆管(波付管)は、ポリオレフィンによって軸方向に波形に形成されるいわゆる鞘管である。被覆管の内周面と内管(平滑管)の外周面との間には軸方向に連続する隙間が形成されている。
【0003】
特許文献2の二重管では、被覆管(鞘管)は、ポリエチレンなどによって形成され、その外周面には、周方向にリング状に延びかつ軸方向に並ぶ山部が形成されると共に、軸方向に延びる周方向断面三角形状の4つの凹部が形成される。凹部に対応する位置の被覆管の内周面には、凹部と略同じ三角形状の凸部(凹部の内側先端)が形成される。内管は、すべての凸部と当接しており、凸部によって被覆管内の略同心位置で支持されている。
【0004】
特許文献3の二重管では、被覆管(緩衝層)は、オレフィン系熱可塑性エラストマーによって形成され、被覆管の内周面には、軸方向に延びる周方向断面三角形状の複数の突条が形成される。内管(管本体)は、すべての突条によって当接して支持されている。一方、被覆管の外周面に凹凸は形成されない。
【0005】
特許文献2および3の二重管では、被覆管の内周面に軸方向に延びる凸部(突条)が形成され、内管はすべての凸部によって被覆管内の略同心位置で支持されているので、ウォーターハンマー現象により内管が振動しても、振動を緩衝でき、被覆管と内管との接触による衝撃音は抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平02-036687号公報[F16L 9/18、F16L 11/11]
【特許文献2】特公平07-043058号公報[F16L 11/11、F16L 9/18]
【特許文献3】特許第4195146号公報[E03C 1/02、F16L 11/04]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の二重管では、内管内を流れる水の圧力が急激に変動し、ウォーターハンマー現象により内管が振動した際、被覆管と内管との接触により大きい衝撃音が発生してしまう。
【0008】
また、特許文献2の二重管では、被覆管は曲げ易くなるが、被覆管の外周面に軸方向に並ぶ凹凸を設けると、被覆管が周囲の構造物に意図せず係止され、係止部分から破断する恐れがある。したがって、外傷防止性能を確保することが難しい。
【0009】
また、特許文献3の二重管では、被覆管を容易に曲げることができるものの、オレフィン系熱可塑性エラストマーは硬度が低いゆえに、外傷防止性能が低い。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、二重管を提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、ウォーターハンマー現象による衝撃音を低減でき、かつ、外傷防止性能が高い、二重管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、合成樹脂製の内管と、内管の外周面を覆い、合成樹脂製で切断可能な被覆管とを備える、二重管であって、被覆管は、管壁の厚みが均一または略均一であり、かつ外周面に周方向に所定間隔で配置され軸方向に連続して直線状に延びる複数の山部を有し、被覆管の外周面には、周方向において、山部とその間の支持部が交互に並ぶように配置され、被覆管が変形していないときには、一部の支持部のみが内管に当接して支持し、山部に加えられる力によって支持部が縮径するように被覆管が変形したとき、より多くの支持部によって内管支持する、二重管である。
【0013】
第1の発明では、二重管は、たとえば給湯または給水に用いられる二重管であり、合成樹脂製の内管と、内管の外周面を覆い、合成樹脂製で切断可能な被覆管とを備え、たとえば成形後工場等においてコイル状に巻き取られ、施工現場においてコイルから引き出されて必要な長さに切断される。被覆管は、管壁の厚みが均一または略均一に形成される。また、被覆管には、外周方向(径方向外側)に向けて突出する複数の山部が形成される。山部は、周方向に所定間隔で配置され、被覆管の軸方向に連続して直線状に延びる。隣り合う山部の間は、内管の外周面を支持する支持部として機能して、その内周面は、内管の外周面に当接する。支持部は、山部と周方向に交互に並ぶように配置される。この支持部によって、被覆管の軸方向位置全長に亘って、つまり軸方向位置に拘わらず内管が当接して支持される。被覆管が変形していないときには、一部の支持部のみが内管に当接して支持する。これに対して、たとえば、被覆管を把持したとき、山部に加えられる力によって支持部が縮径するように被覆管が変形したときより多くの支持部によって内管支持する。
【0014】
第1の発明によれば、被覆管の軸方向位置に拘わらず支持部によって内管が当接して支持されているので、内管の内部を流れる水の圧力が急激に変動し、ウォーターハンマー現象が発生して、内管が大きく振動した場合でも、振動は支持部を介して被覆管へと適切に伝播し緩衝される。これにより、被覆管の内周面と内管の外周面との接触による衝撃音が低減される。
【0015】
また、被覆管に山部が形成されるので、被覆管の外周面と地面などとの接触面積が小さくなり、二重管の移動に対する摩擦力が低減される。したがって、二重管を引き回す際の外傷が抑制され、あるいは軽減される。しかも、山部は軸方向に連続するように形成され、被覆管の外周面の軸方向には凹凸が形成されないので、二重管を軸方向に移動させる際、被覆管の外周面が周囲の構造物に接触した場合でも、その構造物をスムーズに乗り越えることができ、意図せずに係止されることはない。これにより、係止部分を起点とする被覆管の破断を防止できる。したがって、外傷防止性能が高い。
【0016】
さらに、被覆管には、山部と支持部とが周方向に交互に並ぶように配置されているので、被覆管を把持した際、山部に加えられる力によって支持部が縮径するように変形し、支持部によって内管が確実に支持され、同時に内管を把持できる。したがって、作業性に優れる。しかも、複数の支持部のうち一部のみが内管と当接して、内管を支持する。たとえば、内管は、複数の支持部のうちの半数以下とだけ当接する。そして、内管と当接しない支持部と内管の外周面との間には隙間が形成される。このように、被覆管の内部に隙間が形成されるので、曲げに対する追随性が向上し、二重管が曲げ易くなる。また、この隙間を利用することで、カッターナイフなどで被覆管を切断し易くなり、内管を傷つけ難い。
【0017】
第2の発明は、第1の発明に従属し、周方向断面において、山部には頂点がある。
【0018】
第2の発明では、周方向断面において、山部は、たとえば被覆管の内周面側を底辺とする略二等辺三角形状に形成され、1つの頂点を有する。言い換えると、山部には頂角がある。
【0019】
第2の発明によれば、山部に頂角を設けたので、カッターナイフなどで被覆管を切断する際、内管の方向に刃先を向けることなく、山部の側方(傾斜面)に切り込みを入れ、被覆管を切断することができる。したがって、内管を傷つけるおそれがない。
【0020】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、被覆管の外周面は、周方向において、山部とその間の谷部とを含む波形に形成される。
【0021】
第3の発明では、隣り合う山部の間には谷部が形成され、被覆管は、周方向において波形に形成される。
【0022】
第3の発明によれば、山部の間に谷部を設けたので、被覆管の外周面と地面などとの接触面積がさらに小さくなり、二重管を引き回す際の外傷がさらに抑制される。
【0026】
の発明は、第1ないし第のいずれかの発明に従属し、内管および被覆管はいずれもポリオレフィン系樹脂によって形成される。
【0027】
の発明では、内管および被覆管は、いずれもポリオレフィン系樹脂によって形成される。
【0028】
の発明によれば、二重管を廃棄またはリサイクルする際に、被覆管と内管とに分別する手間が省ける。また、ポリオレフィン系樹脂を用いることによって、被覆管の硬度を高くすることが可能である。これにより、内管の外傷防止性能がさらに高くなる。さらに、安価な再生ポリエチレンなどを用いるようにすれば、製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、被覆管の軸方向位置に拘わらず支持部によって内管が当接して支持されるので、ウォーターハンマー現象が発生して、内管が大きく振動した場合でも、被覆管の内周面と内管の外周面との接触による衝撃音が低減される。
【0030】
また、被覆管に山部が形成されるので、二重管の移動に対する摩擦力が低減され、二重管を引き回す際の外傷を抑制または軽減できる。しかも、山部は軸方向に連続するように形成され、被覆管の外周面の軸方向には凹凸が形成されないので、被覆管の外周面が周囲の構造物に接触した場合でも、意図せずに係止されることはない。これにより、係止部分を起点とする被覆管の破断を防止できる。したがって、外傷防止性能が高い。
【0031】
さらに、被覆管には、山部と支持部とが周方向に交互に並ぶように配置されるので、被覆管を把持した際、支持部によって内管が確実に支持され、同時に内管を把持できる。したがって、作業性に優れる。
【0032】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明の一実施例の二重管を示す斜視図である。
図2図1の二重管の周方向における断面を示す図解図である。
図3図1の二重管の軸方向における断面を示す図解図である。
図4図1の二重管の製造工程の一部を示す図解図である。
図5図4のV−V線における断面を示す図解図である。
図6図1の二重管が備える被覆管を切断する際に用いられるカッターナイフの一例を示す正面図である。
図7図1の二重管が備える被覆管を切断する様子を示す図解図である。
図8】この発明の他の実施例の周方向における断面を示す図解図である。
図9】この発明のさらに他の実施例の周方向における断面を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1図3を参照して、この発明の一実施例である二重管10は、給湯または給水に用いられる二重管であり、内管12および内管12の外周面を覆う被覆管14を備える。
【0035】
内管12は、通水用の管であり、ポリブテン,ポリプロピレン,ポリエチレン,架橋ポリエチレン等の可撓性を有するポリオレフィン系樹脂によって円筒状に形成される。内管12の外径は、たとえば13mmであり、その内径は、たとえば10mmである。
【0036】
被覆管14は、内管12を保護するための管であり、内管12と同じポリオレフィン系樹脂によって円筒状に形成される。被覆管14の管壁の厚みは周方向および軸方向の全長に亘って均一または略均一に形成され、たとえば0.2mmである。また、被覆管14の外周面には、複数の山部16が形成される。すなわち、被覆管14には、外周方向(径方向外側)に向けて突出する複数の山部16が形成される。
【0037】
山部16は、周方向に所定間隔で並ぶように配置され、各山部16は、被覆管14の軸方向に連続して直線状に延びる。この実施例では、10個の山部16が周方向に等間隔で並ぶように配置されている。山部16の外径は、たとえば17mmであり、その突出高さは、たとえば1.2mmである。山部16は、周方向断面において、被覆管14の内周面側を底辺とする略二等辺三角形状に形成され、1つの頂点16aを有する。言い換えると、山部16には頂角がある。頂角は、角丸に形成され、その角度は、たとえば90°である。
【0038】
また、隣り合う山部16の間には、谷部20が形成される。谷部20は、周方向断面において、内周方向に向けて凹む円弧状に形成される。交互に連続して並ぶ山部16と谷部20とによって、被覆管14は、周方向において波形に形成される。
【0039】
被覆管14は、管壁の厚みが均一または略均一なので、山部16が形成される位置の被覆管14の内周面には、外周方向に向けて凹む凹部が形成される。
【0040】
また、谷部20の頂点およびその近傍は、内管12の外周面を支持する支持部18として機能して、その内周面は、内管12の外周面に当接する。
【0041】
支持部18は、周方向に所定間隔で並ぶように配置され、各支持部18は、被覆管14の軸方向に連続して直線状に延びる。この実施例では、山部16と交互に並ぶように10個の支持部18が周方向に等間隔で配置されている。
【0042】
また、支持部18の内径は、たとえば15mmであり、内管12の外径よりも大きく設定されている。被覆管14の内部に内管12を挿通した際には、複数の支持部18のうち一部の支持部18aのみが内管12の外周面と接触して、内管12を支持する。この実施例では、10個の支持部18のうち8個の支持部18bは内管12と当接せず、他の2個の支持部18aが内管12と当接する。以下、内管12の外周面と接触する支持部18を支持部18a、内管12の外周面と接触しない支持部18を支持部18bとして表現する。
【0043】
2つの支持部18aは、被覆管14の軸方向位置全長に亘って、内管12の外周面に当接して内管12を支持する。
【0044】
また、内管12と当接しない支持部18bと内管12の外周面との間には隙間が形成され、この隙間は、内管12の偏心方向反対側に向かうにしたがって大きくなる。
【0045】
このように、被覆管14の内部に隙間が形成されることによって、二重管10の曲げや撓みに対する追随性を確保することができ、二重管10は曲げ易くなる。また、被覆管14の内部に形成される隙間が大きくなるほど、二重管10の追随性は向上する。発明者の実験によると、たとえば、複数の支持部18のうち半数以下の支持部18aだけが内管12の外周面と当接するようにするとよい。これによって、被覆管14の内部には大きな隙間が形成され、二重管10の追随性が良くなる。
【0046】
ただし、被覆管14の内部に形成される隙間の大きさは、内管12の外径と支持部18の内径との径差のほか、山部16の周長よっても決定される。つまり、山部16の周長を大きくすると、その分だけ内管12の外周面と被覆管14の内周面との間の隙間は大きくなる。
【0047】
このような二重管10は、たとえば内管12と被覆管14とを同時に押出する二層押出しによって成形される。
【0048】
図4および図5を参照して、二重管10の製造装置24は、たとえば第1押出機(図示せず)、第2押出機30、金型32、外側サイジング26、および冷却のための水槽(図示せず)を含む。金型32は、多層(2層)押出のためのクロスヘッドダイであり、その上流側には第1押出機が接続され、上端部には、第2押出機30の先端部が接続される。また、金型32の下流側端部には円筒状の突出部(内側サイジング)32aが設けられる。さらに、内側サイジング32aの先端部分には、その外周面を覆うように環状の外側サイジング26が設けられる。図5からよくわかるように、内側サイジング32aの外周面と外側サイジング26の内周面とは、それぞれ周方向において波形に形成され、その間には被覆管14の厚みに相当する隙間が形成されている。
【0049】
このような製造装置24を用いて二重管10を製造する際には、第1押出機は、加熱溶融した原材料を円筒状に押し出して内管12を成形しつつ、金型32に供給する。内管12は金型32の突出部(内側サイジング)32aの内側を通り、突出部32aの出口から押し出される。一方、第2押出機30は、被覆管14の原材料を加熱溶融して金型32に供給する。この金型32では、進行方向へ進むにつれて被覆管14の溶融材料が内管12の外周面を順次覆い、被覆管14は突出部(内側サイジング)32aの外面を通って、押し出される。この際、押し出された被覆管14は、内側サイジング32aの外面形状と外側サイジング26の内側形状とによって矯正され、周方向において波形に形成される。
【0050】
また、波形の被覆管14の谷部20の各頂点、つまり各支持部18の内周面と、突出部32a内を挿通されて送られてきた内管12の外周面との間には、0.8mm程度の隙間が形成される。内管12と被覆管14とは押出後に冷却固化されるので、内管12と被覆層14とが融着あるいは接着することはない。つまり、両者が一体化されるようなことはなく、被覆管14の内周面と内管12の外周面とは非接着状態とされる。このようにして、内管12と被覆管14とを備える二重管10が形成される。
【0051】
ただし、上述の製造方法では、内管12と被覆管14とを同時に押出成形したが、二重管10の製造方法はこの方法に限定されるものではなく、たとえば、先に単独で押出成形された内管12に対して、被覆層14を共押出して内管12の外周面を被覆するようにしてもよい。
【0052】
このようにして成形した二重管10は、工場等において、コイル状に巻き取られ、施工現場において、必要な長さに切断される。
【0053】
二重管10を用いて給湯・給水管路を配管する際には、先ず、コイル状に巻回された二重管10が施工現場に搬入される。次に、二重管10は、施工現場において、コイルから引き出される。この際、被覆管14に形成された山部16が滑り止めとなって、作業者は二重管10を把持し易い。また、被覆管14には、山部16と谷部20(支持部18)とが周方向に交互に並ぶように配置されているので、手やバンドなどで被覆管14を包み込むように把持した際、山部16に加えられる力によって支持部18が縮径するように変形し、平常時は内管12に接触していなかった支持部18bも内管12に接触するようになる。よって、より多くの支持部18aによって内管12が確実に支持され、同時に内管12を把持できる。
【0054】
続いて、コイルから引き出された二重管10は、管路上の所定の位置まで引き回され、配置される。この際、被覆管14に山部16が形成されていることによって、被覆管14の外周面と地面やスラブ面などとの接触面積が小さくなり、二重管10の移動に対する摩擦力が低減される。したがって、二重管10を引き回す際の外傷が抑制され、あるいは軽減される。特に、この実施例では、被覆管14を周方向において波形に形成した、つまり山部16の間に谷部20を設けたので、上述のような効果が高くなる。しかも、山部16は軸方向に連続するように形成されており、被覆管14の外周面の軸方向には凹凸が形成されていないので、二重管10を軸方向に移動させる際、被覆管14の外周面が周囲の構造物に接触した場合でも、その構造物をスムーズに乗り越えることができ、意図せずに係止されることはない。これにより、係止部分を起点とする被覆管14の破断は防止される。
【0055】
ここで、二重管10をコイル状に巻回して保管・搬入等する際、二重管10に屈曲が発生し、被覆管14の山部16の形状が損なわれたり、被覆管14に皺ができたりすることによって、上述のような効果が低減されるおそれがある。そこで、この実施例では、内管12の外周面と被覆管14の内周面との間に大きい隙間を設けることで、これに対応している。つまり、被覆管14の内周面と外周面との隙間を大きくすると、二重管10の曲げや撓みに対する追随性が増し、被覆管14をコイル状に巻回しても、屈曲の発生が抑制される。これにより、山部16の形状が損なわれ難く、皺もでき難くなる。したがって、上述のような効果が適切に発揮される。
【0056】
また、二重管10が管路に配設される際には、その端部が継手(図示せず)などの他の管路部材に接続される。継手などの他の管路部材に対して二重管10を接続する際には、接合部分に相当する部分の被覆管14が除去される。すなわち、被覆管14をカッターナイフ100や被覆管除去用の専用工具(図示せず)などで周方向に切断する。
【0057】
図6には、カッターナイフ100の一例を示す。カッターナイフ100は、たとえば扁平略矩形状に形成され、その先端部は一方側から他方側へと斜め下方に向かう傾斜状に形成される。この傾斜状の先端部に刃先100aが設けられる。また刃先100aとカッターナイフ100の一方側との間の角度は鋭角とされ、鋭角側の側面がカッターナイフ100の下面100bであるものとする。
【0058】
以下、図7を参照して、このようなカッターナイフ100を用いて被覆管14を周方向に切断する方法について具体的に説明する。
【0059】
先ず、二重管10の一方端部を把持し、図7(A)に示すように、二重管10の軸方向の所定位置において軸方向と交差する方向にカッターナイフ100を向けた状態で、山部16の側方(傾斜面)にカッターナイフ100の刃先100aを食い込ませ、貫通させる。このとき、カッターナイフ100の刃先100aは内管12から見て斜め上方を向くようにされ、内管12の方向には向かないようにされている。これによって、内管12が傷付くことが防止される。また、カッターナイフ100の下面100bは内管12の外周面から浮かせた状態とされ、内管12には接触しないようにされる。
【0060】
それから、図7(B)に示すように、内管12の外周面と被覆管14の内周面との間の隙間を利用して、カッターナイフ100の下面100bを内管12の外周面から浮かせた状態のまま、内管12の外周面上を滑らせるように被覆管14の周方向に沿ってカッターナイフ100を動かし、被覆管14を周方向に切り開いていく。この際、被覆管14の外側から人力又は機械で力を与え、カッターナイフ100の進行方向において内管12の外周面と被覆管14の内周面との間の隙間が広がるように被覆管14を変形させるとよい。このように、内管12の外周面と被覆管14の内周面との間の隙間を利用することで、被覆管14は切断し易くなる。
【0061】
そして、そのままカッターナイフ100を周方向に1回転させることで、図7(C)に示すように、被覆管14が押し切られる。これにより、接合部分に相当する部分の被覆管14が除去される。
【0062】
このように、被覆管14を切断する際に、カッターナイフ100の刃先100aを内管12の方向に向けることなく、山部16の側方(傾斜面)に刃先100aを食い込ませることができるのは、被覆管14に1つの頂点16a(頂角)を有する山部16を設けたからである。仮に、被覆管14の外周面が凹凸のない平滑面である場合、カッターナイフ100で被覆管14に切り込みを入れる際に、刃先100aを内周方向、つまり内管12に向ける必要があるので、内管12を傷つけてしまう可能性がある。
【0063】
以上のようにして被覆管14が除去されると、内管12の清浄な接合部分を得ることができるので、この接合部分を利用して、二重管10の端部を継手等の受口に挿入して接合し、接続を完了する。
【0064】
ところで、このような給湯・給水管路に使用される二重管10では、たとえば給湯・給水栓が開閉された際に、内管12の内部を流れる水の圧力が急激に変動し、その水が内管12の管壁に衝突するウォーターハンマー現象が発生し、内管12が大きく振動しようとする。また、内管12の波打ち現象が生じ、内管12と被覆管14の衝突により、衝突音が発生するおそれがある。そこで、この実施例では、軸方向全長に亘って内管12の外周面と接触する支持部18aを被覆管14に設け、この支持部18aによって、軸方向位置に拘わらず内管12が支持されるようにした。これによって、ウォーターハンマー現象が発生し、内管12が大きく振動した場合でも、振動は支持部18aを介して被覆管14へと適切に伝播し緩衝されるので、被覆管14と内管12との接触による衝撃音を低減できる。
【0065】
また、上述のように、この実施例では、山部16は軸方向に連続するように形成されており、被覆管14の外周面の軸方向には凹凸が形成されていないので、被覆管14の外周面が周囲の構造物に接触しても、意図せずに係止されることはない。これによって、係止部分を起点とする被覆管14の破断を防止できる。したがって、外傷防止性能が高い。
【0066】
さらに、二重管10の外傷防止性能が高いので、被覆管14の管壁の厚みを薄くすることが可能であり、二重管10を軽量化および低廉化できる。
【0067】
また、山部16には頂角が形成されるので、カッターナイフ100などで被覆管14を切断する際、内管12の方向に刃先100aを向けることなく、山部16の側方(傾斜面)に切り込みを入れることができる。したがって、内管12を傷つけるおそれがない。
【0068】
さらに、内管12は、複数の支持部18のうち一部の支持部18aによって支持され、内管12と当接しない支持部18bと内管12の外周面との間には隙間が形成される。被覆管14の内部に隙間が形成されることによって、曲げに対する追随性が向上し、二重管10が曲げ易くなる。しかも、この隙間を利用することで、カッターナイフ100などで被覆管14を切断し易くなり、内管12を傷つけ難い。
【0069】
さらにまた、内管12および被覆管14はいずれも同じポリオレフィン系樹脂によって形成されるので、二重管10を廃棄またはリサイクルする際に、被覆管14と内管12とに分別する手間が省ける。また、ポリオレフィン系樹脂を用いることによって、被覆管14の硬度を高くすることが可能である。これにより、内管12の外傷防止性能がさらに高くなる。
【0070】
なお、上述の実施例では、山部16の頂角を90°に設定したが、これに限定される必要はなく、たとえば、図8に示すように、山部16の頂角は鈍角であってもよい。図8に示す実施例は、以下の点を除いて、上述の実施例と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0071】
図8に示す実施例では、山部16は、周方向断面において、角丸の頂角を有する略二等辺三角形状に形成されるが、頂角は鈍角であり、たとえば120°に設定される。山部16の各傾斜面は緩やかに傾斜し、隣り合う山部16の間の距離は大きくなっている。また、山部16の突出高さは、たとえば1mmである。このように、山部16と山部16との間の距離を大きく設定すると共に、山部16の突出高さを低くすることで、カッターナイフ100などで被覆管14を切断する際に、山部16の側方に切り込みを入れるのがさらに容易になる。したがって、内管12を傷つけることなく、被覆管14をより簡単に切断できる。
【0072】
また、上述の各実施例では、被覆管14が周方向断面において波形に形成されるようにしたが、これに限定されない。被覆管14の周方向断面形状としては、角形や星形など種々の形状が考えられる。たとえば、図9に示すように、被覆管14を、周方向断面において六角形状に形成することもできる。以下、図9を参照して具体的に説明するが、上述の実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0073】
図9に示す実施例では、被覆管14には、6個の山部16が周方向に等間隔で並ぶように配置され、被覆管14の軸方向に直線状に延びる。山部16は、周方向断面において、被覆管14の内周面側を底辺とする略二等辺三角形状に形成され、1つの頂角を有する。頂角の角度は、たとえば120°である。
【0074】
また、隣り合う山部16の間には、山部16どうしを直線状に繋ぐ平坦部22が形成される。交互に並ぶ山部16と平坦部22とによって、被覆管14は、周方向において六角形状に形成される。
【0075】
被覆管14は、管壁の厚みが均一または略均一なので、山部16が形成される位置の被覆管14の内周面には、山部16の凸形状と略同じ略二等辺三角形状の凹部が形成される。
【0076】
また、平坦部22の中央部およびその近傍は、内管12を支持する支持部18として機能して、その内周面は、内管12の外周面に当接する。この実施例では、6個の支持部18が周方向に等間隔で並ぶように配置され、被覆管14の軸方向に延びる。
【0077】
この実施例においても、上述の各実施例と同様に、被覆管14の軸方向位置に拘わらず支持部18aによって内管12が支持されるので、ウォーターハンマー現象が発生して、内管12が大きく振動した場合でも、被覆管14と内管12との接触による衝撃音が低減される。また、被覆管14に山部16が形成されるので、二重管10の移動に対する摩擦力が低減され、二重管10を引き回す際の外傷を抑制または軽減できる。しかも、被覆管14の外周面の軸方向には凹凸が形成されないので、被覆管14の外周面が周囲の構造物に意図せずに係止されることはない。これにより、係止部分を起点とする被覆管の破断を防止できる。したがって、外傷防止性能が高い。
【0078】
なお、上述の実施例では、内管12および被覆管14をポリブテン,ポリプロピレン,ポリエチレン,架橋ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂によって形成するようにしたが、内管12および被覆管14の材質としては、たとえば再生ポリエチレンを用いるようにしてもよい。安価な再生ポリエチレンを用いることで、二重管10の製造コストを低減できる。
【0079】
また、内管12および被覆管14は、必ずしもポリオレフィン系樹脂によって形成する必要はなく、ポリオレフィンの発泡体、エラストマーやエラストマーの発泡体など、可撓性を有する合成樹脂によって形成されるのであればよい。また、内管12と被覆管14とは、必ずしも同じ材質で形成する必要はない。
【0080】
さらに、上述の各実施例では、被覆管14の周方向断面形状を回転対称となるように形成したが、被覆管14は、周方向に非対称な形状であってもかまわない。
【0081】
さらにまた、山部16および支持部18(谷部20)の形状や大きさなどは、上述のものに限定される必要はない。
【0082】
たとえば、山部16を、周方向断面において円弧状に形成することもできる。この場合、円弧状の山部16の最も外側の位置(被覆管14の外径が最も大きくなる位置)が、山部16の頂点16aであるものとする。つまり、頂角は円弧状であってもよい。また、山部16の頂角の角度を変えてもかまわない。たとえば、山部16の頂角の角度は、90°より小さくてもよいし、120°より大きくてもよい。さらにまた、山部16には、必ずしも頂点16a(頂角)がなくてもよい。たとえば、山部16は四角形状であってもよい。ただし、山部16を四角形状に形成したときに、隣り合う山部16と山部16との間の距離が小さくなると、カッターナイフ100などで山部16の側方に切り込みを入れるのが難しくなる。このような問題を解消するには、山部16を、台形状に形成し、山部16の各傾斜面の傾斜角度を緩やかに設定するとよい。
【0083】
また、支持部18は、たとえば内周方向に向けて突出する三角形状や四角形状に形成してもよい。この場合でも、支持部18aによって内管12を支持することができる。
【0084】
さらに、谷部20の頂角の角度は適宜変更可能である。
【0085】
さらにまた、上述の各実施例では、山部16および支持部26(谷部20)を周方向において等間隔に配置したが、山部16および支持部18の配置態様はこれに限定されず、不等間隔に配置してもよい。
【0086】
また、山部16および支持部18(谷部20)の数は特に限定されないが、周方向に交互に並ぶ山部16と支持部18とを有する被覆管14を形成するためには、各々少なくとも3個以上設ける必要がある。
【0087】
さらに、平常時に、内管12と当接する支持部18aの数は特に限定されない。たとえば、内管12は、1個の支持部18aによって支持されるようにしてもよい。あるいは、複数の支持部18のうち半数よりも多くの支持部18aによって支持されるように設定してもよい。要は、支持部18aと内管12とが、軸方向位置に拘わらず当接しているのであればよく、周方向の接触範囲は限定されない。なお、内管12と当接する支持部18aの数を半数よりも多くに設定した場合、支持部18bと内管12の外周面との間の隙間は小さくなる。ただし、その場合でも、山部16の周長を大きく設定することにより、内部の空間を大きくすれば、内管12の外周面と被覆管14の内周面との間に十分な隙間を確保でき、二重管10の曲げや撓みに対する追随性効果が発揮できる。
【0088】
また、被覆管14を切断する際に用いるカッターナイフ100としては、内管12の方向に刃先100aが向かない状態で、山部16の側方に切り込みを入れることができるものであればよく、上述の実施例に示すものに限定される必要はない。
【0089】
なお、上述した寸法等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 …二重管
12 …内管
14 …被覆管
16 …山部
16a …山部の頂点
18(18a,18b) …支持部
20 …谷部
22 …平坦部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9