(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に制限するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変化して実施することができる。
【0013】
[ポリアセタール樹脂組成物]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)とカーボンブラック(B)とポリオレフィン化合物(C)とエステル化合物(D)とを少なくとも含み、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、カーボンブラック(B)5質量部以上30質量部以下を含み、カーボンブラック(B)のフタル酸ジブチル吸油量が100mL/100g以上300mL/100g以下であり、カーボンブラック(B)のよう素吸着法によるBET比表面積が20
mg/g以上100
mg/g以下であり、JIS K7194に準拠して測定した体積固有抵抗率が10
0Ωcm以上10
2Ωcm以下であり、ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が15%以上である。
【0014】
<ポリアセタール樹脂(A)>
本実施形態においてポリアセタール樹脂(A)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマー等が挙げられる。ポリアセタールホモポリマーとして、具体的には、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる重合体等が挙げられる。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。
【0015】
ポリアセタールコポリマーとして、具体的には、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、環状エーテルと、を共重合させて得られるもの等が挙げられる。環状エーテルとして、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、グリコール等の環状ホルマールである1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等;ジグリコールの環状ホルマールである環状エーテル等;その他環状ホルマール等が挙げられる。環状オリゴマーと環状エーテルは、それぞれ、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
また、ポリアセタールコポリマーとしては、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルと、を共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマー等も挙げられる。
【0017】
ポリアセタール樹脂(A)は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物として、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルとを共重合させて得られる、ブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー又はポリアセタールコポリマー等も挙げられる。
【0018】
上述したように、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれるポリアセタール樹脂(A)としては、ポリアセタールホモポリマーとポリアセタールコポリマーは、それぞれ、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本実施形態に用いられるポリアセタール樹脂(A)の数平均分子量は、引張破壊呼び歪を高く保つ観点から、50,000以上150,000以下が好ましく、55,000以上120,000以下がより好ましい。なお、ポリアセタール樹脂(A)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求める。
【0020】
数平均分子量が前記範囲内のポリアセタール樹脂(A)を得る方法として、具体的には、ポリアセタール樹脂(A)の製造において、メチラール等に代表されるような連鎖移動剤の添加量を調節すること等が挙げられる。
【0021】
本実施形態のポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)を用いて得る場合に、上記の環状エーテルは、トリオキサン100mol%に対して0.1mol%以上60mol%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1mol%以上20mol%以下、さらに好ましくは0.13mol%以上10mol%以下とする。また、前記ポリアセタールコポリマーをホルムアルデヒドの4量体(テトラオキサン)を用いて得る場合に、上記の環状エーテルの添加量としては、テトラオキサン100mol%に対して0.13mol%以上90mol%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.13mol%以上30mol%以下、さらに好ましくは0.16mol%以上13mol%以下とする。
【0022】
本実施形態において、ポリアセタールコポリマーの融点は、熱安定性等の観点から、162℃以上173℃以下が好ましく、より好ましくは162℃以上167℃以下である。例えば、融点が162℃以上167℃以下であるポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)100mol%に対して3.0mol以上6.0mol%以下の上記の環状エーテルを用いること等により得ることができる。本実施形態において、ポリアセタール樹脂(A)の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定する。
【0023】
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、上記の環状エーテルとを、所定の重合触媒を用いて共重合することにより製造できる。
【0024】
ポリアセタールコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
【0025】
ルイス酸として、具体的には、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩等が挙げられる。
【0026】
プロトン酸、及びそのエステル又は無水物として、具体的には、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0027】
上述した重合触媒の中でも、重合反応制御の観点から、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;、及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好適な例として挙げられる。
【0028】
ポリアセタールコポリマーは、従来公知の方法として、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。
【0029】
上述のように、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、上記の環状エーテルとを、上記の重合触媒を用いて共重合することにより得られたポリアセタールコポリマーは、熱的に不安定な末端部(例えば、〔−(OCH
2)
n−OH基〕)が存在する。そこで、不安定な末端部を分解除去処理することが好ましく、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理することが好適である。
【0030】
特定の不安定末端部の分解処理方法として、具体的には、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下で、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度とし、ポリアセタールコポリマーを溶融状態として加熱処理を施す方法が挙げられる。
[R
1R
2R
3R
4N
+]
nX
-n ・・・ (1)
ここで、式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立して、置換又は非置換の炭素数1〜30のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;置換又は非置換の炭素数1〜30のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;、又は炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示す。上記置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。前記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、前記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
【0031】
上述の第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされる化合物であれば特に限定されないが、本実施形態による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、一般式(1)におけるR
1、R
2、R
3、及びR
4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、R
1、R
2、R
3、及びR
4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であることがより好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表される第4級アンモニウム化合物として、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等;これらの水酸化物;これらの塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;これらの硫酸等のチオ酸塩;これらの蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、不安定末端部の分解除去反応の効率の観点から、水酸化物(OH
-)、硫酸(HSO
4-、SO
42-)、炭酸(HCO
3-、CO
32-)、ホウ酸(B(OH)
4-)、及びカルボン酸の塩が好ましい。また、カルボン酸の中でも、蟻酸、酢酸、プロピオン酸がより好ましい。
【0034】
第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニア、トリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
【0035】
第4級アンモニウム化合物の好適な使用量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算することにより求められる。第4級アンモニウム化合物の使用量は、好ましくは0.05質量ppm以上50質量ppm以下、より好ましくは1質量ppm以上30質量ppm以下である。
P×14/Q ・・・ (2)
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0036】
第4級アンモニウム化合物の使用量が前記範囲内であると、不安定末端部の分解除去速度が向上し、また、不安定末端部の分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調が良好となる傾向にある。
【0037】
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部は、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去される。この分解除去処理に用いる装置として、具体的には、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは、減圧下で除去される。
【0038】
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部を分解除去処理する際に、第4級アンモニウム化合物をポリアセタールコポリマー中に存在させる方法について、具体的には、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法等が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを熱処理する工程において、そのポリアセタールコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。より具体的には、ポリアセタールコポリマーが溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入する方法、その押出機等を用いてポリアセタールコポリマーにフィラーやピグメントを配合する場合に、ポリアセタールコポリマーの樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部を分解除去処理する方法等が挙げられる。
【0039】
また、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも、又は、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活処理として、具体的には、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法等が挙げられる。重合触媒の失活を行わない場合は、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で、不活性ガス雰囲気下にてポリアセタールコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
【0040】
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【0041】
ポリアセタール樹脂(A)のメルトフローレイト(以下「MFR」とも記す)は、0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上50g/10分以下であることがより好ましく、3g/10分以上30g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRが上記範囲内となるポリアセタール樹脂(A)を得る方法として、具体的には、ポリアセタール樹脂(A)の製造において、メチラール等に代表されるような連鎖移動剤の添加量を調節すること等が挙げられる。本実施形態において、MFRは、JIS K7210 A法に準じて、190℃、2.16kg条件で測定した値である。
【0042】
<カーボンブラック(B)>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、カーボンブラック(B)を含む。また、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、カーボンブラック(B)を5質量部以上30質量部以下含む。さらに、カーボンブラック(B)のフタル酸ジブチル吸油量が100mL/100g以上300mL/100g以下であり、カーボンブラック(B)のよう素吸着法によるBET比表面積が20
mg/g以上100
mg/g以下である。
【0043】
本実施形態におけるカーボンブラック(B)は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下を含み、好ましくは8質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上25質量部以下である。5質量部以上であれば高い導電性が得られ、30質量部以下であれば成形体の割れを抑えられる。
【0044】
本実施形態におけるカーボンブラック(B)は、超導電性カーボンブラックではなく、フタル酸ジブチル(DBP)吸油量が低く、かつよう素吸着法によるBET比表面積が低い。具体的には、フタル酸ジブチル吸油量が100mL/100g以上300mL/100g以下であり、よう素吸着法によるBET比表面積が20
mg/g以上100
mg/g以下である。この範囲にあれば、成形体の割れを抑え、かつ寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0045】
DBP吸油量の好ましい範囲は120mL/100g以上250mL/100g以下であり、より好ましい範囲は150mL/100g以上200mL/100g以下である。
【0046】
よう素吸着法によるBET比表面積の好ましい範囲は30
mg/g以上90
mg/g以下であり、より好ましい範囲は40
mg/g以上80
mg/g以下である。
【0047】
なお、よう素吸着法によるBET比表面積はISO1304に基づいて測定した値であり、フタル酸ジブチル吸油量はISO4656に基づいて測定した値である。また、カーボンブラック(B)の製法も、特に制限されず、オイルファーネス法、ランプブラック法、チャンネル法、ガスファーネス法、アセチレン分解法、サーマル法等のいずれでも構わない。
【0048】
<オレフィン樹脂(C)>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、オレフィン樹脂(C)を含む。本実施形態におけるオレフィン樹脂(C)は、下記一般式(3)により表されるオレフィン化合物のホモ重合体、下記一般式(3)で表されるオレフィン化合物を全体のモノマー単位に対して60mol%以上の範囲で含む共重合体、及びそれらの変性体からなる群より選ばれる1種以上のオレフィン樹脂である。
【化1】
上記式(3)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキル化カルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、又はビニル基を表す。
【0049】
オレフィン樹脂(C)として、具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0050】
オレフィン樹脂(C)として、変性されたもの(変性体)も適用できる。変性体として、具体的には、オレフィン樹脂を形成している重合体とは異なる他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン化合物と酸無水物を共重合したもの等が挙げられる。
【0051】
オレフィン樹脂(C)は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、組成物に十分な導電性及び靱性を付与させたポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、好ましくは5質量部以上25質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは7質量部以上15質量部以下である。
【0052】
また、本実施形態においては、オレフィン樹脂(C)は、ポリアセタール樹脂の熱安定性や高導電性発現の観点から、酸変性されていないオレフィン樹脂であることが好ましい。ここで「酸変性されていない」とは、オレフィン樹脂が、α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸)及び/又はその酸無水物等で(必要により過酸化物を併用して)変性されておらず、各種のオレフィン類と酸無水物を共重合したものでもないことを指す。
【0053】
<エステル化合物(D)>
本実施形態におけるポリアセタール樹脂組成物は、エステル化合物(D)を含む。エステル化合物(D)を含むことにより、押出加工時においてポリアセタール樹脂(A)中へのカーボンブラック(B)の分散性が向上し、押出機からストランドが押し出される際に発生する異物(目ヤニ)の量を少量に抑えることができる。これにより、目ヤニの混入による導電性の低下を抑えることができる。これに加え、ポリアセタール樹脂組成物の成形時においても、金型と金型汚染の原因となる物質の間にエステル化合物(D)が介在するようになり、連続成形時の金型汚染を低いレベルに抑えることができ、汚染されても汚染物を容易に除去することができる。また、ポリアセタール樹脂組成物にエステル化合物(D)を含むことで、長期間の靱性保持性能も得ることができる。
【0054】
本実施形態におけるエステル化合物(D)は、炭素数4〜30の脂肪酸と炭素数2〜30の脂肪族アルコールとからなるエステルである。これらのエステル化合物(D)の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、エステル化合物(D)は成形加工時に液体であることが好ましい。
【0055】
脂肪酸として、具体的にはは、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナンと酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸等の一価の脂肪酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の二価の脂肪酸等が挙げられる。これらの中では、二価の脂肪酸が好ましい。
【0056】
脂肪族アルコールとして、具体的には、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等の飽和又は不飽和アルコール;エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール等が挙げられる。これらの中では、三価以上のポリオールが好ましい。
【0057】
本実施形態において用いられるエステル化合物(D)としては、靱性の保持の観点から、脂肪族ジエステル及び脂肪族トリエステルからなる群から選択される1種又は2種のものが好ましい。
【0058】
本実施形態のエステル化合物(D)として用いられる物質は、単一成分のものであっても、2種以上の物質の混合物であってもよい。
【0059】
また、エステル化合物(D)は、ポリアセタール樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.1質量%以上3質量%以下である。このような範囲とすることで、連続成形時の金型汚染を抑制でき、かつ汚染されても汚染物を容易に除去することができる傾向にある。また、高い導電性を維持し、かつ高い靱性及び長期間の靱性を付与することができ、成形品の割れを抑えることができる傾向にある。
【0060】
エステル化合物(D)の配合方法としては、少なくとも一部のポリアセタール樹脂(A)を含むポリアセタール樹脂とエステル化合物(D)とのマスターバッチを事前に作製し、当該マスターバッチを用いて本実施形態の組成物を二軸押出機等にて混練すると、より分散性が向上し、エステル化合物(D)配合による効果をより奏し、特に引張破壊呼び歪の向上をよりもたらす傾向にある。
【0061】
<エポキシ化合物(E)>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、エポキシ化合物(E)をさらに含むことが好ましい。エポキシ化合物(E)に加えて、エポキシ化合物硬化性添加剤をさらに含むことはより好ましい。また、エポキシ化合物(E)及びエポキシ化合物硬化性添加剤は、長期連続成形時の金型汚染が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点と、高い靱性及び長期間の靱性保持の観点とから、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、各々独立して、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0062】
エポキシ化合物(E)として、具体的には、モノ又は多官能グリシジル誘導体、又は不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物等が挙げられる。エポキシ硬化性添加剤として、具体的には、塩基性窒素化合物、塩基性リン化合物、その他のエポキシ硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物等が挙げられる。
【0063】
モノ又は多官能グリシジル誘導体として、具体的には、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0064】
また、他のモノ又は多官能グリシジル誘導体としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0065】
不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物として、具体的には、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4‐(2−メチルオキシラニル)−1−メチルシクロヘキサン、リモネンオキサイド等が挙げられる。
【0066】
エポキシ硬化性添加剤として、具体的には、イミダゾール;1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾール等の置換イミダゾール;オクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミン等の脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、ジトリルアミン等の芳香族2級アミン;トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミン等の脂肪族3級アミン;トリトリルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族3級アミン;セチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリン等のモルホリン化合物;ジシアンジアミド、メラミン、尿素等へのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1モル以上20モル以下)、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
【0067】
これらのエポキシ化合物、エポキシ化合物硬化性添加剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
<安定剤>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤を含むことができる。安定剤として、具体的には、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒド又はギ酸の捕捉剤等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
酸化防止剤としては、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)等が挙げられる。
【0070】
また、上記以外のヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミド等も挙げられる。
【0071】
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
【0072】
ホルムアルデヒド又はギ酸の捕捉剤として、具体的には、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。
【0073】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体として、具体的には、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
【0074】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩として、具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、カルシウム塩が好ましい。カルシウム塩として、具体的には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)等が挙げられ、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
【0075】
上述した各種安定剤の好ましい組み合わせは、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せである。
【0076】
上述したそれぞれの安定剤の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、酸化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1質量部以上2質量部以下、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤として、例えば、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1質量部以上3質量部以下、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1質量部以上1質量部以下の範囲であると好ましい。
【0077】
<添加剤>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、かつ所望の特性に応じて、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種添加剤を含むことができる。添加剤として、具体的には、下記の無機充填剤、結晶核剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
無機充填剤として、具体的には、繊維状、粉粒子状、板状、中空状等の充填剤が用いられる。
【0079】
繊維状充填剤として、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維;ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維等が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類等;芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質等も挙げられる。
【0080】
粉粒子状充填剤として、具体的には、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0081】
板状充填剤として、具体的には、マイカ、フレーク状ガラス、各種金属箔等が挙げられる。
【0082】
中空状の充填剤として、具体的には、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
【0083】
これらの無機充填剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
これらの無機充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、ポリアセタール樹脂組成物を含む成形体の表面の平滑性、機械的特性の観点から、表面処理の施されたものが好ましい場合がある。
【0085】
表面処理剤としては従来公知のものが使用可能であり、具体的には、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤等が挙げられる。カップリング処理剤として、具体的には、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
【0086】
無機充填剤は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。
【0087】
結晶核剤として、具体的には、窒化ホウ素等が挙げられる。結晶核剤は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.003質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.005質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0088】
導電剤として、具体的には、上記(B)成分として挙げたもの以外のカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末又は金属繊維等が挙げられる。導電剤は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。
【0089】
熱可塑性樹脂として、具体的には、上記(C)成分として挙げたもの以外のオレフィン樹脂等が挙げられ、より具体的には、上記一般式(3)により表されるオレフィン化合物を全体のモノマー単位に対して40mol%未満の範囲で含む共重合体、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、これらの変性物も挙げられる。熱可塑性樹脂は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0090】
熱可塑性エラストマーとして、具体的には、スチレン系エラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンープロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。熱可塑性エラストマーは、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0091】
顔料として、具体的には、無機系顔料、有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料とは、樹脂の着色用として一般的に使用されているものをいい、具体的には、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。有機系顔料として、具体的には、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料が挙げられる。顔料は、所望の色調に応じてその量を選択できるが、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.05質量部以上5質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0092】
[体積固有抵抗率]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片を用いて、JIS K7194に準拠して測定された体積固有抵抗率が10
0Ωcm以上10
2Ωcm以下であり、10
0Ωcm以上7×10
1Ωcm以下であることが好ましく、10
0Ωcm以上5×10
1Ωcm以下であることがより好ましい。当該体積固有抵抗率が10
0Ωcm以上10
2Ωcm以下であることによって、より広範な用途に適用可能なポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0093】
体積固有抵抗率が上記範囲内のポリアセタール樹脂組成物を得る方法として、具体的には、カーボンブラック(B)の添加量を調節する方法等が挙げられる。
【0094】
[引張破壊呼び歪]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が15%以上であり、好ましくは20%以上である。引張破壊呼び歪が15%以上であるポリアセタール樹脂組成物は、機械的特性に優れ、成形体が割れを起こしにくくなる。また、当該引張破壊呼び歪の上限値は、特に限定されないが、例えば、200%である。
【0095】
引張破壊呼び歪が上記範囲内のポリアセタール樹脂組成物を得る方法として、具体的には、ポリアセタール樹脂(A)の分子量を調節する方法、カーボンブラック(B)の添加量を調節する方法、オレフィン樹脂(C)及び/又はエステル化合物(D)の添加量を調整する方法等が挙げられる。
【0096】
[ポリアセタール樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述したポリアセタール樹脂(A)100質量部と、特定のカーボンブラック(B)5質量部以上30質量部以下と、オレフィン樹脂(C)と、エステル化合物(D)と、必要に応じてその他の成分とを、溶融混練することにより製造できる。
【0097】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。当該混練機として、具体的には、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。これらの中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が好ましい。
【0098】
溶融混練の方法として、具体的には、すべての成分のブレンド物を押出機トップのフィーダー(以下、トップフィーダーと呼ぶ)から連続的にフィードして溶融混練させる方法、カーボンブラック(B)成分以外の成分のブレンド物を押出機トップフィーダーから連続的にフィードして溶融混練させた後、押出機のサイドに設けられたフィーダー(以下、サイドフィーダーと呼ぶ)からカーボンブラック(B)成分を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法、エステル化合物(D)と少なくとも一部のポリアセタール樹脂(A)を事前に溶融混練させてマスターバッチ化し、該マスターバッチを用いてそれ以外は上記の溶融混練させる方法を用いる方法等が挙げられる。これらのうち、安定した性能発現の観点から、エステル化合物(D)と少なくとも一部のポリアセタール樹脂(A)を事前に溶融混練させてマスターバッチ化し、該マスターバッチを用いて、カーボンブラック(B)成分以外のブレンド物を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、サイドフィーダーからカーボンブラック(B)成分を添加してさらに溶融混練させる方法が好ましい。
【0099】
押出機の減圧度は、0MPa以上0.07MPa以下が好ましい。
【0100】
溶融混練する際の押出機の設定温度は、用いるポリアセタール樹脂(A)のJIS K7121に準じた示差走査熱量計(DSC)の測定で求められる融点より1℃以上100℃以下の範囲内で高い温度が好ましい。より好ましくは160℃以上240℃以下であるが、本発明の効果をより効果的に発現させるといった観点から、ポリアセタール樹脂組成物に用いるカーボンブラック(B)のフタル酸ジブチル吸油量(以下「DBP吸油量」とも記す。)が100mL/100g以上の場合には、押出機ダイに隣接した、全スクリュー長に対する少なくとも1/10の長さの領域を160℃以上、180℃以下に設定することがさらに好ましい。
【0101】
[成形体]
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を含む。そのためには、上述のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、本実施形態の成形体を得ることができる。ポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に制限されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。具体的には、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
【0102】
[成形体の用途]
本実施形態の成形体の用途としては、靭性と高い導電性とが要求される用途が好適である。具体的には、本実施形態の成形体は、導電性歯車、導電性フランジ、導電性ドラムギア、導電性軸受用途等により好適に用いられる。
【0103】
また、一般的なポリアセタール樹脂の用途である、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、ガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、デジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray(登録商標) Disc、HD−DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD、MO、ナビゲーションシステム、モバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。さらに、本実施形態の成形体は、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;シャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品等も好適に用いられる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、後述する実施例及び比較例に限定されるものではない。実施例及び比較例のポリアセタール樹脂組成物及び成形体に対する各種測定方法と、実施例及び比較例に用いたポリアセタール樹脂組成物及び成形体の原料成分とを以下に示す。
【0105】
(1)数平均分子量の測定方法
サンプルとなるポリアセタール樹脂2mgを、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略すことがある、Waters社製)で、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略す)を標準物質として用いて計算されたPMMA換算分子量で表される数平均分子量である。この際のPMMA標準物質は数平均分子量として、2,000程度から1,000,000程度の範囲で、少なくとも4サンプルを用いた。
【0106】
(2)体積固有抵抗率の測定方法
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベル(ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片)を得た。このISOダンベルから30mm×20mm×4mmの平板を切り出し、この平板を体積固有抵抗率測定用のサンプルとした。体積固有抵抗率のレベルにより、以下の2種類の測定方法を使い分けた。
【0107】
体積固有抵抗率が1.0×10
4Ωcm未満のサンプルの場合は、四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194準拠)を、上記作製したサンプル(平板)に押し当て、三菱化学(株)製ロレスタ(登録商標)−GPにより測定電圧90Vで、上記サンプルの体積固有抵抗率を測定した。
【0108】
体積固有抵抗率が1.0×10
4Ωcm以上のサンプルの場合は、URS型リングプローブ(JIS K6911準拠)を、上記作製したサンプル(平板)に押し当て、三菱化学(株)製ハイレスタ(登録商標)−UPにより測定電圧1,000Vで、上記サンプルの体積固有抵抗率を測定した。
【0109】
(3)引張破壊呼び歪の測定方法及び長期熱エージング後の引張破壊呼び歪の測定方法
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベル(ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片)を得た。このISOダンベルを用いて、ISO 527−1に準拠した引張試験を行い、引張破壊呼び歪を測定した。また、長期熱エージングは、上記ISOダンベルを80℃のオーブンで1ヶ月エージングし、ISO 527−1に準拠した引張試験を行い、引張破壊呼び歪を測定した。
【0110】
(4)寸法精度の測定方法
住友重機工業(株)製の射出成形機(商品名「SH−75」)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件にて、右ねじれ方向、ピッチ円直径80mm、モジュール1、ねじれ角20度、歯幅12mm、ウエッブの厚さ2mm、リブの数12本のはすばギアを製造した。このようにして得られたはすば歯車について、大阪精密機械(株)製の歯車精度測定器を用い、JIS B 1702−1に準拠して、90度の間隔の4歯における歯形誤差を測定した。その歯形誤差の数値が小さいほど、はすば歯車の精度が優れていると判断した。
【0111】
(5)成形品の割れやすさの測定方法
ファナック(株)製の射出成形機(商品名「ROBOSHOT(登録商標) α‐50iA」)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件にて、ピッチ円直径60mm、モジュール1、歯数60、ねじれ角0度、歯幅5mm、ウエッブの厚さ2mmの歯車を製造した。この歯車を23℃50RH%の環境下で24時間放置した後、東芝(株)製の歯車耐久試験機の従動側にセット、テナック(登録商標)C−45201製の同形状のギアを駆動側にセットした。ピッチ円上の回転速度を0.5m/s、トルクを4.5kgf・cmに設定して運転させ、23℃、50RH%の条件下で168時間連続運転を行った。そのときの従動側及び駆動側のギアの両方の重量減の合計(mg)をギアの耐久性として評価した。この値が低いほど、ギアの耐久性に優れていると判断した。なお、前記試験条件において、168時間の経過前にギアの歯折れが発生し、試験が続行できない場合は「歯折れあり」とした。
【0112】
ポリアセタール樹脂(A)は、以下のように準備した(A−i)、(A−ii)、(A−iii)、(A−iv)を用いた。
【0113】
<ポリアセタール樹脂(A−i)>
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整した。上記重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/時間、連鎖移動剤としてメチラールを、得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が30,000になるような量に調整して添加した。
【0114】
さらに、前記重合機に、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10
-5molで連続的に添加し重合を行った。次に、重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。
【0115】
重合触媒の失活を行ったポリアセタールコポリマーを、遠心分離機でろ過した。このポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。ここで、水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。なお、水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。
【0116】
乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。
【0117】
不安定末端部分が分解されたポリアセタールコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。
【0118】
このようにしてポリアセタール樹脂(A−i)を得た。また、ポリアセタール樹脂(A−i)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは30g/10分であった。
【0119】
<ポリアセタール樹脂(A−ii)>
ポリアセタール樹脂(A−i)の製造方法において、連鎖移動剤として添加するメチラールの量を、得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が60,000になるような量とした他は、ポリアセタール樹脂(A−i)と同様に操作を行い、ポリアセタール樹脂(A−ii)を得た。また、ポリアセタール樹脂(A−ii)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは10g/10分であった。
【0120】
<ポリアセタール樹脂(A−iii)>
ポリアセタール樹脂(A−i)の製造方法において、連鎖移動剤として添加するメチラールの量を、得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が90,000になるような量とした他は、ポリアセタール樹脂(A−i)と同様に操作を行い、ポリアセタール樹脂(A−iii)を得た。また、ポリアセタール樹脂(A−iii)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは3g/10分であった。
【0121】
<ポリアセタール樹脂(A−iv)>
ポリアセタール樹脂(A−i)の製造方法において、連鎖移動剤として添加するメチラールの量を、得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が160,000になるような量とした他は、ポリアセタール樹脂(A−i)と同様に操作を行い、ポリアセタール樹脂(A−iv)を得た。また、ポリアセタール樹脂(A−iv)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは2.7g/10分であった。
【0122】
カーボンブラック(B)は、以下のものを用いた。
(B−i)DBP吸油量360mL/100g、BET比表面積800
mg/gのカーボンブラック
(B−ii)DBP吸油量190mL/100g、BET比表面積65
mg/gのカーボンブラック
(B−iii)DBP吸油量180mL/100g、BET比表面積51
mg/gのカーボンブラック
(B−iv)DBP吸油量70mL/100g、BET比表面積17
mg/gのカーボンブラック
また、上記のDBP吸油量及びBET比表面積は、それぞれ、ISO1304及びISO4656に基づいて測定した。
【0123】
オレフィン樹脂(C)は、以下のものを用いた。
(C−i)1−ブテン含有率90質量%、エチレン含有率10質量%のオレフィン共重合体、JIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは40g/10分
(C−ii)スチレン含有率20質量%、イソプレン含有率80質量%のスチレン−イソプレン共重合体、JIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは5g/10分
【0124】
エステル化合物(D)は、以下のものを用いた。
(D−i)DIDA(大八化学工業(株)製、アジピン酸ジイソデシル)
(D−ii)ユニスター(登録商標)H310R(日油(株)製、トリメチロールプロパントリドデカン酸エステル)
【0125】
エポキシ樹脂(E)は、クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(エポキシ当量=350、軟化点=80℃)を用いた。また、エポキシ化合物硬化性添加剤としては、トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製)を用いた。
【0126】
ポリアセタール樹脂(A−ii)90質量部に、エステル化合物(D−i)10質量部を二軸混練機で混練し、マスターバッチ(F−i)を得た。
【0127】
ポリアセタール樹脂(A−ii)50質量部に、オレフィン樹脂(C−i)30質量部、エステル化合物(D−i)20質量部を二軸混練機で混練し、マスターバッチ(F−ii)を得た。
【0128】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造〕
本実施例では、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−48SS押出機(L/D=58、ベント付き)を用いて、ポリアセタール樹脂組成物を製造した。
図1に2軸押出機の概略構成図を示す。
【0129】
図1の2軸押出機は、個々に独立している押出機のバレルゾーン1〜14を具備し、当該バレルゾーンの終端部をダイヘッド15に連結した。バレルゾーンの始端部は押出機モーター16に連結され、モーターの駆動により原料がバレルゾーン1〜14を移動するように設定した。バレルゾーン1にはトップ部の定量フィーダー17、バレルゾーン8にはサイド部の定量フィーダー18を設けた。バレルゾーン13には脱気ベント19を設けた。全てのバレルゾーンの温度を200℃に設定し、(B)成分以外の成分のブレンド物を定量フィーダー17より、(B)成分を定量フィーダー18よりそれぞれ供給して、押出量200kg/時間、スクリュー回転数240rpmの条件で押出を行い、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0130】
〔実施例1〜24〕
各成分を表1、表2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。なお、実施例23及び24ではマスターバッチ(F−i)又は(F−ii)を配合したが、最終の配合の比較がしやすいように表中では(A)〜(E)成分の割合で示した。押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて、上述の方法により体積固有抵抗率、引張破壊呼び歪、熱エージング後の引張破壊呼び歪、寸法安定性、成形品の割れやすさの評価を行った。測定及び評価結果を表1、表2に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
〔比較例1〜13〕
各成分を表3に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて、上述の方法により体積固有抵抗率、引張破壊呼び歪、熱エージング後の引張破壊呼び歪、寸法安定性、成形品の割れやすさの評価を行った。測定及び評価結果を表3に示す。
【0134】
【表3】