(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484441
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20190304BHJP
F16K 31/08 20060101ALI20190304BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20190304BHJP
H02K 33/02 20060101ALI20190304BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
F16K31/06 305E
F16K31/08
F01P7/16 503
F01P7/16 505B
H02K33/02 A
H01F7/16 R
H01F7/16 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-256435(P2014-256435)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-118213(P2016-118213A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】梅野 真典
(72)【発明者】
【氏名】宮田 成敏
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−147969(JP,A)
【文献】
特開2006−322494(JP,A)
【文献】
特開2000−008852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06 − 31/11
F01P 7/16
H01F 7/16
H02K 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に隣接した電磁弁であって、磁性を帯びた弁体と、該弁体の付勢手段と、電磁コイルと、流入路と、流出路を有し、前記電磁コイルは、前記電動機のステータコアのティース部を該電動機ロータの回転軸方向に延長して巻き線コアとし、少なくとも、前記付勢手段の付勢力と前記電磁コイルの磁力で前記弁体を移動させることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1において、前記付勢手段は圧縮ばねで構成され、前記磁性を帯びた弁体は磁石を含む部材で構成されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記電動機は電動ウォータポンプを構成し、前記電磁弁は電動ウォータバルブを構成することを特徴とする電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のエンジン冷却系における電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン冷却系では、機械式または電動のウォータポンプとサーモスタットやバルブを用いたシステムがある。そして近年のハイブリッド車や、アイドリングストップ車の普及とあいまって、電動式ウォータポンプの需要が増えている。これは、これらの車はエンジンが止まっていてもエンジンや室内を適切な温度に保つ必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−167573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車のエンジンルーム内に冷却系を配置するには、前記ポンプ等の機器を備え付ける土台や、組み付け部品や水路ホースが必要となる。これらの部品や水路ホースは、組み付けスペースのコンパクト化を困難とし、重量の増加や組み付け工数の増大化という課題を有している。
【0005】
特許文献1には、電磁石と圧縮ばねで、鉄等の磁性体でできた弁体を開閉制御する電磁弁が示されている。これは、エンジン、ラジエータ、ヒータコア等の機器を冷却液の循環路で接続して、車両用の冷却装置を構成したものである。そして、電動ウォータポンプで送り出された前記冷却液が、前記電磁弁で制御されている。ここでも、まとめられる機器はなるべく一体化して、更なる、前記循環路の効率化と、冷却装置全体の省スペース化をすることが課題となっている。
【0006】
そこで本発明は、冷却系を構成する機器の一体化により、循環路の効率化と、冷却装置全体の省スペース化及び、組み付け工数の省力化を可能とする電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、電動機に隣接した電磁弁であって、磁性を帯びた弁体と、該弁体の付勢手段と、電磁コイルと、流入路と、流出路を有し、前記電磁コイルは、前記電動機のステータコアのティース部を該電動機ロータの回転軸方向に延長して巻き線コアとし、少なくとも、前記付勢手段の付勢力と前記電磁コイルの磁力で前記弁体を移動させることを特徴とする電磁弁によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁弁は、電動機と一体化することで、自動車の冷却系装置の部品点数の削減、組み付け工数の削減の効果がある。また、前記部品点数の削減により、前記冷却系装置の軽量化、信頼性の向上、省スペース化の効果がある。また、省スペース化により、前記冷却系装置の循環路の短縮化が可能となり冷却機能の効率化が図れる効果がある。
【0009】
また、本発明の電磁弁の電磁コイルの磁場の向きと、前記電磁弁に隣接する電動機の駆動磁場とは、直交しているので、お互いの磁場の干渉を最小化する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)は流路遮断時の、本発明の電磁弁と隣接する電動機の断面図、(B)はX1−X1矢視による断面図、(C)はX2−X2矢視による断面図である。
【
図2】(A)は、矢印方向aに冷却液の圧力が掛かっている場合の本発明の電磁弁における、流路遮断時の断面図、(B)は流路接続時の断面図である。
【
図3】(A)は、矢印方向cに冷却液の圧力が掛かっている場合の本発明の電磁弁における、流路遮断時の断面図、(B)は流路接続時の断面図である。
【
図4】(A)は、電動機用巻き線31aと31bが作る磁場Z1と、電磁弁用巻き線42の位置関係を示す図、(B)は、電磁弁用巻き線42が作る磁場Z2aとZ2bと、電動機用巻き線31aと31bの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に基づいて、本発明の電磁弁の実施の一例を説明する。
図1(A)は流路遮断時の、本発明の電磁弁及びこれに隣接する電動機の断面図である。
図1(B)はX1−X1矢視による断面図で、同図(C)はX2−X2矢視による断面図である。
【0012】
図1(A)に示すように本発明の電磁弁は電磁弁ハウジング1と電磁コイル4から成る。そして、電磁弁ハウジング1の内部には、流路11と、流路12と、電磁弁13と、弁体軸13aと、弁体規制部13bと、付勢ばね13cが構成されている。本発明の電磁弁は、電動機に接近して構成されていて、電磁弁ハウジング1と電動機ハウジング2は接するか、非常に近接して存在してもよいし、一体成形されていてもよい。
【0013】
前記電動機は電動機ハウジング2と、ロータ21と、回転軸22と、ステータコア3を有する。該ステータコア3には、電動機用巻き線31aと31bを有する。そして、ステータコア3には、ティース芯部33とティース部32が形成されている。電動機用巻き線31aと31bは、ティース芯部33に巻かれている。更に、ティース部32が回転軸22の方向に延長されティース延長部32aを構成している。ティース延長部32aは、電磁コイル4の巻き線コア41として用いられ、電磁弁用巻き線42が巻かれている。
【0014】
ティース延長部32aは、
図1(A)に示す例では、ステータコア3の外周円筒壁よりも回転軸22方向に飛び出した部分である。該飛び出し部全体を巻き線コア41として、電磁弁用巻き線42を巻いてもよいし、前記飛び出し部の一部を巻き線コア41として、電磁弁用巻き線42を巻いてもよい。
【0015】
弁体13は例えば永久磁石を含む部材で構成されていて、上下方向に磁場が発生するように、S極とN極に磁化されている。弁体13は弁体軸13aを通じて、弁体規制部13bによって、上下方向のみに動けるように規制されている。弁体13と弁体規制部13bの間には付勢ばね13cが装着されていて、弁体規制部13bに対して、弁体13を一方向へ付勢している。
【0016】
次に
図2と
図3に基づいて、本発明の電磁弁の動作説明をする。
図2は、流路12に対して、矢印方向aの向きに、冷却液の圧力が掛かっている場合である。
図2(A)においては、弁体13が流路12を塞いでいるために、流路12と流路11は遮断されている。付勢ばね13cに圧縮ばねを用いた場合は、付勢ばね13cの反発力によって、弁体13が電磁弁ハウジング1底部に押し付けられて、流路12を塞いでいる。付勢ばね13cの反発力により、矢印方向aの液圧に抗して弁体13が電磁弁ハウジング1底部に押し付けられている。
【0017】
図2(B)は、電磁コイル4で上下方向に磁場を発生させて、磁力の反発力によって、弁体13を上方へ移動させている状態である。このとき、流路12と流路11は接続して、流路12は流入路となり、流路11は矢印方向bへ流出する流出路となる。前記磁力による反発力と矢印方向aの液圧の和が付勢ばね13cの反発力より大きくなれば、弁体13が上方へ移動する。
【0018】
電磁コイル4に流す電流を調整して前記磁力を弱めたり、前記電流を止めて前記磁力を止めたりすることにより、付勢ばね13cの反発力により弁体13は再び下方へ移動して、流路12は遮断される。また、矢印方向aの液圧が強い場合は、付勢ばね13cの反発力を強めるほか、電磁コイル4で弁体13を引き付ける磁場を発生させて、弁体13を下方へ移動させるようにしてもよい。
【0019】
電磁コイル4をDUTY制御電流により励磁し、弁体13に対する反発力若しくは引力を発生させて、流路12の開口面積を段階的に変化させる構成をとることもできる。
【0020】
図3は、流路11に対して、矢印方向cの向きに、冷却液の圧力が掛かっている場合である。
図3(A)においては、弁体13が流路12を塞いでいるために、流路12と流路11は遮断されている。付勢ばね13cに圧縮ばねを用いた場合は、付勢ばね13cの反発力によって、弁体13が電磁弁ハウジング1底部に押し付けられて、流路12を塞いでいる。付勢ばね13cの反発力と矢印方向cの液圧によって弁体13が電磁弁ハウジング1底部に押し付けられている。
【0021】
図3(B)は、電磁コイル4で上下方向に磁場を発生させて、磁力の反発力によって、弁体13を上方へ移動させている状態である。このとき、流路12と流路11は接続して、流路11は流入路となり、流路12は矢印方向dへの流出路となる。前記磁力による反発力が矢印方向cの液圧と付勢ばね13cの反発力の和より大きくなれば、弁体13が上方へ移動する。電磁コイル4に流す電流を調整して前記磁力を弱めたり、前記電流を止めて前記磁力を止めたりすることにより、付勢ばね13cの反発力により弁体13は再び下方へ移動して、流路12は遮断される。
【0022】
以上の電磁弁の構成により、自動車の冷却系装置の部品点数の削減、組み付け工数の削減の効果がある。また、前記部品点数の削減により、前記冷却系装置の軽量化、信頼性の向上、省スペース化の効果がある。また、省スペース化により、前記冷却系装置の循環路の短縮化が可能となり冷却機能の効率化が図れる効果がある。
【0023】
本発明の電磁弁は、電磁コイル4と電動機用巻き線31a及び31bが接近している特徴がある。しかし、電磁コイル4と前記電動機用巻き線(31aと31b)の巻き軸の属する面が互いに直交しているので、互いの磁気的な干渉は最小に抑えることができるという効果がある。この理由を、
図4を使って説明する。
図4(A)は、本発明の電磁弁に係る電磁コイル4の巻き線42である。また、電動機用巻き線のうち、回転軸22(
図4には表示せず)に対して回転対称の関係にある電動機用巻き線31aと31bが示されている。
【0024】
ここで、磁気的な干渉とは、電動機用の巻き線が作る磁場によって電磁弁用の巻き線に誘導起電力が生じたり、電磁弁用の巻き線が作る磁場によって電動機用の巻き線に誘導起電力が生じたりすることをいう。
【0025】
図4(A)は、電動機用巻き線31aと31bが作る磁場Z1が、電磁弁用巻き線42に与える影響を示す図である。回転軸に対して回転対称にある巻き線31aと31bは同一方向、向きと強さの磁場を発生する。磁場の概略は矢印付の曲線で示している。該矢印は逆向きの場合もある。巻き線42に誘導起電力を生じさせる磁場は、42の巻き軸の方向の成分を有する磁場である。しかし、磁場Z1には該方向の成分は少ない。このため、磁場Z1が誘導起電力として、電磁弁用巻き線42に与える影響は少ない。
【0026】
電動機の巻き線の中、前記31aと31b以外の巻き線も、電磁弁用巻き線42と直交しているという点で同様であり、電磁弁用巻き線42に与える影響は少ない。しかし、磁場Z1にある巻き線42に電流を流すと、該巻き線42を回転させようとするローレンツ力が作用するため、これに抗する程度に該巻き線42は固定されていなければならない。
【0027】
次に、電磁弁用巻き線42が作る磁場が電動機用巻き線31aと31bに与える影響について説明する。
図4(B)に電磁弁用巻き線42が作る磁場の概略を磁力線Z2aとZ2bで示す。矢印がそれぞれ逆の場合もあり得る。これらの磁力線は、電磁弁用巻き線42の巻き軸に対して、回転対称になる。そうすると、電動機用巻き線31aと31bには等しい強さで、同方向逆向きの磁場となる。これらは電動機用巻き線31aと31bにたいして、それぞれ逆向きの誘導起電力を発生させる。しかしここで、電動機用巻き線31aと31bを短絡しておけば、これらの誘導起電力は相殺される。したがって、電磁弁用巻き線42が作る磁場が電動機用巻き線に影響を与えなくなる。
【0028】
以上説明したように、本発明の電磁弁は、電動機用巻き線と接近していながらも、お互いの影響を最小化した配置とする効果がある。この効果により、電磁弁用の電磁コイル4をDUTY制御するにも好適な配置といえる。このように、電動機と電磁弁の磁気的な干渉を最小化するには、前記電動機ロータの回転軸の延長直線が、電磁弁の電磁コイル4の巻き線コアを貫く配置であってもよい。
【0029】
本発明の電磁弁を、例えば、電動ウォータバルブとして用いて、前記電動機を電動ウォータポンプとすれば、本発明の電磁弁とこれに隣接する電動機は、自動車の冷却系に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…電磁弁ハウジング、11…流路、12…流路、13…弁体、13a…弁体軸、
13b…弁体規制部、13c…付勢ばね、2…電動機ハウジング、21…ロータ、
22…回転軸、3…ステータコア、31a…電動機用巻き線、31b…電動機用巻き線、32…ティース、32a…ティース延長部、33…ティース芯部、4…電磁コイル、
41(32a)…巻き線コア、42…電磁弁用巻き線。