(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インク供給経路を介して供給されたインクをインクジェットヘッドから吐出することにより印刷を行う本体装置と、前記本体装置に対して着脱可能に取り付けられ、前記インク供給経路にインクを供給するインクカートリッジとを備えたインクジェット印刷装置であって、
前記インク供給経路内のインクのインク特性情報を記憶する経路インク特性情報記憶手段と、
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するカートリッジインク特性情報記憶手段と、
前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否とを関連づけて、インク混合可否テーブルとして記憶するインク混合可否テーブル記憶手段と、
前記インクカートリッジが前記本体装置に装着された際に、前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インク混合可否テーブルに基づいて、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否を判定する判定手段と、
前記判定手段により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を報知するとともに、前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路へのインクの供給を禁止する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、さらに、
前記判定手段により混合不可と判定された場合、洗浄液が貯留された洗浄液カートリッジへの交換要求を報知し、前記洗浄液カートリッジが装着された場合に、前記洗浄液を用いて前記インク供給経路内を洗浄する
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
インク供給経路を介して供給されたインクをインクジェットヘッドから吐出することにより印刷を行う本体装置と、前記本体装置に対して着脱可能に取り付けられ、前記インク供給経路にインクを供給するインクカートリッジとを備えたインクジェット印刷装置であって、
前記インク供給経路内のインクのインク特性情報を記憶する経路インク特性情報記憶手段と、
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するカートリッジインク特性情報記憶手段と、
前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否とを関連づけて、インク混合可否テーブルとして記憶するインク混合可否テーブル記憶手段と、
前記インク供給経路内のインクを排出する排出手段と、
前記インクカートリッジが前記本体装置に装着された際に、前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インク混合可否テーブルに基づいて、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否を判定し、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合が可と判定した場合に、前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報とに基づいて、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとが同種か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を報知するとともに、前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路へのインクの供給を禁止し、
前記判定手段により前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとが同種ではないと判定された場合、前記排出手段に前記インク供給経路内のインクを排出させた後、前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路にインクを供給し、
前記判定手段により前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとが同種であると判定された場合、前記インク供給経路内のインクを排出させることなく、前記インク供給経路内のインク量に応じて前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路にインクを供給する制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
インクカートリッジから既に供給されたインク供給経路内のインクと、インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否を判定する判定手段と、前記判定手段により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を報知するとともに、前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路へのインクの供給を禁止し、洗浄液が貯留された洗浄液カートリッジへの交換要求を報知し、前記洗浄液カートリッジが装着された場合に、前記洗浄液を用いて前記インク供給経路内を洗浄する制御手段とを備え、インク供給経路を介して供給されたインクをインクジェットヘッドから吐出することにより印刷を行う本体装置に着脱可能に取り付けられるインクカートリッジであって、
前記判定手段が、インクカートリッジから供給されたインク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報とに基づいて混合の可否を判定するための、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するカートリッジインク特性情報記憶手段を備え、
前記インク供給経路内のインクのインク特性情報、および前記カートリッジインク特性情報記憶手段に記憶された前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報は、溶媒種類、色材種類、および分散方式を含む
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、溶媒種類、色材種類、分散方式などインク特性が異なるインクが混合する場合、上述の特許文献1に記載のインクジェット記録装置のように、記録ヘッドを駆動するための投入エネルギーを変化させるよう制御を行うのみでは、色材が凝集したり、インク粘度が増加したりすることを防止することができなかった。これにより、インク供給経路上に設けられているフィルタの目詰まりなどを発生させる場合があり、インクジェットヘッドへ適切にインクを供給することができなかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インクカートリッジからインクジェットヘッドへ適切にインクを供給するインクジェット印刷装置およびインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、インク供給経路を介して供給されたインクをインクジェットヘッドから吐出することにより印刷を行う本体装置と、前記本体装置に対して着脱可能に取り付けられ、前記インク供給経路にインクを供給するインクカートリッジとを備えたインクジェット印刷装置であって、前記インク供給経路内のインクのインク特性情報を記憶する経路インク特性情報記憶手段と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するカートリッジインク特性情報記憶手段と、前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否とを関連づけて、インク混合可否テーブルとして記憶するインク混合可否テーブル記憶手段と、前記インクカートリッジが前記本体装置に装着された際に、前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インク混合可否テーブルに基づいて、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否を判定する判定手段と、前記判定手段により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を報知するとともに、前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路へのインクの供給を禁止する制御手段と、を備えたことにある。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記制御手段は、前記判定手段により混合不可と判定された場合、洗浄液が貯留された洗浄液カートリッジへの交換要求を報知し、前記洗浄液カートリッジが装着された場合に、前記洗浄液を用いて前記インク供給経路内を洗浄することにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記インク供給経路内のインクを排出する排出手段を、さらに備え、前記判定手段は、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとの混合が可と判定した場合に、前記インク供給経路内のインクのインク特性情報と前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報とに基づいて、前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとが同種か否かを判定し、前記制御手段は、前記判定手段により前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとが同種ではないと判定された場合、前記排出手段に前記インク供給経路内のインクを排出させた後、前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路にインクを供給し、前記判定手段により前記インク供給経路内のインクと前記インクカートリッジに貯留されたインクとが同種であると判定された場合、前記インク供給経路内のインクを排出させることなく、前記インク供給経路内のインク量に応じて前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路にインクを供給することにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴は、前記経路インク特性情報記憶手段に記憶された前記インク供給経路内のインクのインク特性情報、およびカートリッジインク特性情報記憶手段に記憶された前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報は、溶媒種類、色材種類、または分散方式のうち1以上を含むことにある。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴は、前記インク供給経路は、インクを循環しながらインクを供給するインク循環式供給経路であって、前記混合の可否は、混合後における前記インク循環式供給経路内を循環するインクのインク粘度に基づくインク循環のしやすさに基づいて決定されることを特徴とすることにある。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクカートリッジの第1の特徴は、インクカートリッジから既に供給されたインク供給経路内のインクと、インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否を判定する判定手段と、前記判定手段により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を報知するとともに、前記装着されたインクカートリッジから前記インク供給経路へのインクの供給を禁止する制御手段とを備え、インク供給経路を介して供給されたインクをインクジェットヘッドから吐出することにより印刷を行う本体装置に着脱可能に取り付けられるインクカートリッジであって、前記判定手段による混合可否の判定が、前記インクカートリッジから供給された、インク供給経路内のインクのインク特性情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報とに基づいて行われる場合、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶する経路インク特性情報記憶手段を備えることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、判定手段が、インクカートリッジが本体装置に装着された際に、インク供給経路内のインクのインク特性情報と、インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、インク混合可否テーブルに基づいて、インク供給経路内のインクとインクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否を判定し、制御手段が、判定手段により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を報知するとともに、装着されたインクカートリッジからインク供給経路へのインクの供給を禁止する。
【0016】
そのため、混合不可のインク同士を混合させることを防止することができるので、色材が凝集したり、インク粘度が増加したりすることを防止し、インク供給経路上に設けられているフィルタの目詰まりを防止することができる。これにより、インクジェットヘッドへ適切にインクを供給することができる。
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、制御手段が、判定手段により混合不可と判定された場合、洗浄液が貯留された洗浄液カートリッジへの交換要求を報知し、洗浄液カートリッジが装着された場合に、洗浄液を用いてインク供給経路内を洗浄する。
【0018】
そのため、インク供給経路内が洗浄液で洗浄され、混合不可のインクを混合させることなく、混合不可のインクが貯留されたインクカートリッジへの交換が可能となる。
【0019】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、
判定手段が、インク供給経路内のインクとインクカートリッジに貯留されたインクとの混合が可と判定した場合に、インク供給経路内のインクのインク特性情報とインクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報とに基づいて、インク供給経路内のインクとインクカートリッジに貯留されたインクとが同種か否かを判定し、制御手段は、判定手段によりインク供給経路内のインクとインクカートリッジに貯留されたインクとが同種ではないと判定された場合、排出手段にインク供給経路内のインクを排出させた後、装着されたインクカートリッジからインク供給経路にインクを供給し、判定手段によりインク供給経路内のインクとインクカートリッジに貯留されたインクとが同種であると判定された場合、インク供給経路内のインクを排出させることなく、インク供給経路内のインク量に応じて装着されたインクカートリッジからインク供給経路にインクを供給する。
【0020】
そのため、混合可のインクであったとしても、同種のインクではない場合、インク供給経路内にあるインクの全量をインクカートリッジに貯留されたインクに混合することなく、インク供給経路内のインクを排出して極力混合されるインクの量を低減することができる。
【0021】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴によれば、インク特性情報は、溶媒種類、色材種類、または分散方式のうち1以上を含むので、インクの特性に応じて適切にインクの混合の可否を判定することができる。
【0022】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴によれば、インク供給経路は、インクを循環しながらインクを供給するインク循環式供給経路であって、前記混合の可否は、混合後におけるインク循環式供給経路内を循環するインクのインク粘度に基づくインク循環のしやすさに基づいて決定されるので、インク循環方式のインクジェット印刷装置であっても、インクの混合によるインク物性の変化に基づく不具合を防止し、インク循環式供給経路内で適切にインクを循環させることができる。
【0023】
本発明に係るインクカートリッジの第1の特徴によれば、判定手段による混合可否の判定が、インクカートリッジから供給された、インク供給経路内のインクのインク特性情報と、インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報とに基づいて行われる場合、インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶する経路インク特性情報記憶手段を備えるので、インクカートリッジがインクジェット印刷装置に装着された場合、インクジェット印刷装置は、判定手段が、インクカートリッジから既に供給されたインク供給経路内のインクと、インクカートリッジに貯留されたインクとの混合の可否を判定する際、インクカートリッジに記憶されたインク特性情報を読み出すことができるので、予めインクジェット印刷装置内にインクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶する必要がないので、インクジェット印刷装置の記憶手段の記憶容量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
<実施例1>
本発明の実施例1では、インクの温度調節やインク内に混入したゴミなどの不純物を除去するためにインクを絶えず循環させるインク循環方式のインクジェット印刷装置を例に挙げて説明する。
【0027】
<インクジェット印刷装置の構成>
図1は、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1の構成を説明した図である。
【0028】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクに対応するインクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kを備えており、用紙は、装置内を搬送ローラにより搬送された後、インクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kの対向面に設けられた環状の搬送ベルト(図示しない)によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、インクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kのノズルから吐出されたインクによりライン単位で印刷される。
【0029】
各インクは着脱可能なインクボトルから供給されるようになっており、C(シアン)のインクを供給するインクボトル151C、M(マゼンタ)のインクを供給するインクボトル151M、Y(イエロー)のインクを供給するインクボトル151Y、K(ブラック)のインクを供給するインクボトル151Kが備えられている。なお、以下においてインク色にこだわらない場合にはインクボトル151で代表させて説明する。他の機能部についても同様である。
【0030】
インクボトル151から供給されたインクは、樹脂、金属等のパイプにより形成されたインク循環経路を通って、インクジェットヘッド110の下流側に設けられた下流タンクに一旦溜められる。このため、インクジェット印刷装置1には、C(シアン)のインクを溜める下流タンク159C、M(マゼンタ)のインクを溜める下流タンク159M、Y(イエロー)のインクを溜める下流タンク159Y、K(ブラック)のインクを溜める下流タンク159Kが備えられている。
【0031】
下流タンク159に溜められたインクは、ポンプによりインクジェットヘッド110の上流側に設けられた上流タンクに送られる。このため、インクジェット印刷装置1には、ポンプ170C、ポンプ170M、ポンプ170Y、ポンプ170Kおよび上流タンク158C、上流タンク158M、上流タンク158Y、上流タンク158Kが備えられている。上流タンク158に送られたインクは、インクを吐出する多数のノズルが設けられているインクジェットヘッド110に送液される。
【0032】
インクジェットヘッド110で吐出されなかったインクは、下流タンク159に戻される。上流タンク158からインクジェットヘッド110を経由して下流タンク159へのインク帰還は、上流タンク158と下流タンク159との水頭差を利用している。
【0033】
上流タンク158には、共通空気室172が接続されており、共通空気室172に備えられたポンプ173により、上流タンク158に空気を送り込む。
【0034】
インクは印刷品質が保証される温度範囲が定められており、環境温度が低く、インク温度が印刷可能である下限温度を下回っているとインクを加熱する必要がある。一方、インクジェットヘッド110内に設けられたドライバやピエゾ素子は動作することにより発熱し、これらの発熱やインク振動のジュール熱により、高温時におけるインク温度上昇の影響等を抑制する必要がある。そこで、インク循環経路上に、温度調節器161が設けられており、温度調節器161により、インクは、加温又は冷却される。
【0035】
次に、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路、インクカートリッジ150からのインクの供給およびインク循環経路からのインクの排出について説明する。
【0036】
図2は、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1において、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクを循環するインク循環経路を模式的に示した図である。なお、ここでは、C(シアン)のインクのインク循環経路を代表して説明するが、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインク循環経路についても同様の構成を有する。
【0037】
図2に示すように、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1は、上述したように、インクIKが貯留された上流タンク158を備えている。そして、この上流タンク158と、インクを吐出するインクジェットヘッド110の上流側に設けたインク供給室123とは、インク供給経路155を介して接続されている。
【0038】
さらに、インクジェットヘッド110の下流側に設けたインク回収室124と、このインク回収室124から回収したインクIKを貯蔵する下流タンク159と、ポンプ160と、温度調節器161と、上流タンク158とは、インク回収経路156を介して接続されている。これにより、下流タンク159に貯留されたインクは、ポンプ160が起動することにより温度調節器161側へ送出される。インク回収経路156上の温度調節器161の出口側には、インク内に混入したゴミなどの不純物を除去するためにフィルタ163が設けられており、インク回収経路156内をインクが循環されることにより、インクが濾過される。仮に、インクの色材が凝集したり、インク粘度が増加したりすると、フィルタ163に目詰まりが生じ、インク供給経路155とインク回収経路156とを含むインク循環経路157内でインクを循環させることが困難となる。
【0039】
上流タンク158には、空気連通経路171が接続されており、この空気連通経路171を介して、上流タンク158の上部の空気層と接続された共通空気室172が設けられている。
【0040】
共通空気室172には、大気開放管175が接続され、この大気開放管175には大気開放弁174が備わっており、この大気開放弁174を開放することにより共通空気室172の気室内を大気開放する。また、大気開放弁174を閉止することで共通空気室172を密閉することもできる。さらに、共通空気室172には、共通空気室172内に空気を送り込むポンプ173が設けられている。
【0041】
このように、共通空気室172には、大気開放弁174とポンプ173とが設けられているので、共通空気室172内の空気圧を調整することができ、この共通空気室172と連通された上流タンク158上部の空気層の圧力を調整することができる。
【0042】
また、大気開放管175には、大気開放管175に空気中のゴミが入り込まないようにするエアフィルタ176と、下部に下流タンク159からオーバーフローして大気開放管175に流入したインクを回収するオ−バーフローパン177とが設けられている。
【0043】
下流タンク159は、インクIKを充填したインクボトル151と接続されており、インク補給弁142が開とされることにより、インクボトル151内に貯留されたフレッシュなインクIKが下流タンク159に供給される。
【0044】
なお、下流タンク159が大気圧に保たれている時には、下流タンク159とインクジェットヘッド110のノズルとの水頭差によってノズルにメニスカスが生じるような適切圧力となるように、下流タンク159の高さ位置が定められている。
【0045】
従って、インクIKをインク供給経路155とインク回収経路156とによるインク循環経路157内を循環させる場合、共通空気室172に設けた大気開放弁174を開にすると、上流タンク158と下流タンク159との水頭差によって、上流タンク158内に貯蔵されたインクIKはインク供給経路155内を通ってインクジェットヘッドユニットのインク供給室123内に供給される。そして、このインク供給室123からインクIKが2次元的に配置された複数のインクジェットヘッド110に分配され、各インクジェットヘッド110からインクIKが用紙上に選択的に吐出される。
【0046】
また、下流タンク159の空気層と連通された下流共通気室101が備えられおり、下流共通気室101には圧力調整器105が接続されている。圧力調整器105のベローズ昇降機構105aが昇降することにより、ベローズ本体部105bが伸縮する。これにより、下流共通気室101の内圧を調整することができる。
【0047】
また、下流共通気室101には、大気開放管175が接続され、この大気開放管175には大気開放弁104が備わっている。この大気開放弁104を開放することにより、下流共通気室101の気室内を大気開放し、また、大気開放弁104を閉止することで下流共通気室101内を密閉することもできる。
【0048】
下流タンク159の下方には、下流タンク159から排出されたインクを貯留する廃液タンク167が設けられている。廃液タンク167は、下流タンク159と接続されており、廃液弁165が開とされることにより、下流タンク159内に貯留されたインクが廃液として廃液タンク167に排出される。
【0049】
このように、インク回収経路156上の温度調節器161の出口側には、インク内に混入したゴミなどの不純物を除去するためにフィルタ163が設けられているので、仮に、インクの色材が凝集したり、インク粘度が増加したりすると、フィルタ163に目詰まりが生じ、インク循環経路157内でインクを循環させることが困難となる。
【0050】
そこで、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1では、インクの混合の可否を判定することにより、インク循環経路157上に設けられているフィルタ163の目詰まりを防止する。
【0051】
図3は、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1の機能を説明した説明図である。
【0052】
図3に示すように、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1は、インクカートリッジ150K,150C,150M,150Yと、本体装置に設けられたCPU10と、メモリ11と、操作パネル12と、インク補給弁142と、廃液弁165とを備えている。このうち、インク補給弁142と、廃液弁165とについては、上述したので説明を省略する。
【0053】
K(ブラック)のインクに対応するインクカートリッジ150Kは、それぞれインクボトル151Kと、非接触IC(符号152K)とを備えている。なお、ここでは、K(ブラック)のインクに対応するインクカートリッジ150Kを例に挙げて説明するが、他のインク色のインクも同様である。
【0054】
非接触IC(符号152K)は、メモリ153Kを有しており、本体装置のCPU10との間で無線によるデータ通信を行う。
【0055】
メモリ153Kは、インクカートリッジ150Kが製造された製造年月日、インクカートリッジ150Kが本体装置に装着された使用開始日、インクボトル151Kに貯留されたインク残量、インクボトル151Kに貯留されたインクの特性を示すインク特性情報を記憶している。なお、インク残量は、例えば、初期の量から、インクジェットヘッド110からの吐出量等を減算することにより算出することができる。また、インク特性情報には、インクの主な溶媒種類、色材種類、分散方式が含まれている。溶媒種類は、例えば、「水」、「低沸点溶剤」、「高沸点溶剤」、「アルコール」、「その他」に分類されており、色材種類は、例えば、「有機顔料」、「正帯電無機顔料」、「負帯電無機顔料」、「染料」、「その他」、「なし」に分類されており、分散方式は、「自己分散」、「樹脂分散」、「活性剤分散」、「溶解」、「その他」、「なし」に分類されている。
【0056】
また、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のインクに対応するインクカートリッジ150C,150M,150Yも同様に、製造年月日、使用開始日、インク残量、インク特性情報を記憶しており、本体装置のCPU10との間で無線によるデータ通信を行う。
【0057】
メモリ11は、インク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報と、インク混合可否テーブルとを記憶している。
【0058】
メモリ11に記憶されたインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報は、メモリ153に記憶されたインク特性情報と同様に、インクの主な溶媒種類、色材種類、分散方式が含まれており、それぞれ同様に分類されている。
【0059】
インク混合可否テーブルは、インク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報と、インクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報と、インク循環経路157内のインクとインクボトル151に貯留されたインクとの混合の可否とを関連づけたテーブルである。
【0060】
図4は、メモリ11に記憶されたインク混合可否テーブルの一例を示した図である。
【0061】
インク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報と、インクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報とは、溶媒種類、色材種類、分散方式の順に、(溶媒種類,色材種類,分散方式)の形式で示しており、それぞれ数値で表現している。具体的に、溶媒種類は、「水」(=1)、「低沸点溶剤」(=2)、「高沸点溶剤」(=3)、「アルコール」(=4)、「その他」(=5)で示し、色材種類は、「有機顔料」(=1)、「正帯電無機顔料」(=2)、「負帯電無機顔料」(=3)、「染料」(=4)、「その他」(=5)、「なし」(=6)で示し、分散方式は、「自己分散」(=1)、「樹脂分散」(=2)、「活性剤分散」(=3)、「溶解」(=4)、「その他」(=5)、「なし」(=6)で示している。例えば、(1,1,1)は、溶媒種類が「水」(=1)であり、色材種類が、「有機顔料」(=1)であり、分散方式が、「自己分散」(=1)であることを示している。
【0062】
インク循環経路157内のインクとインクボトル151に貯留されたインクとの混合の可否については、“○”が混合可を示しており、“×”が混合不可を示しており、いずれかが予め入力されている。“○”または“×”は、下記の1)〜3)の3つの条件に基づいて設定されている。
【0063】
1)(溶媒種類,色材種類,分散方式)の全てが同一の種類である場合には、“○”とする。
【0064】
2)溶媒種類と分散方式とが同一種類であり、かつ色材種類が異なる場合は“○”とする。その理由は、通常、色材種類が異なっても溶剤種類と分散方式が同じであれば、分散性は保たれるため色材の凝集等の不具合が生じることはほとんどないためである。ただし、インク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報と、インクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報のうち、一方のインク特性情報の色材種類が「正帯電無機顔料」(=2)であり、他方のインク特性情報の色材種類が「負帯電無機顔料」(=3)である場合を除く。この場合には、正帯電無機顔料と負帯電無機顔料とが反応して色材の凝集等の不具合が生じる可能性が高いからである。
【0065】
3)上記1)および2)以外の場合には、全て“×”とする。溶媒種類や分散方式が異なるインクを混合すると、各種の要因が組み合わさり、色材の凝集等の不具合が生じる可能性が高くなるためである。
【0066】
なお、“○”または“×”は、予め実験によって(溶媒種類,色材種類,分散方式)の全ての組み合わせによって、色材が凝集したり、インク粘度が増加するような不具合がなければ“○”に設定し、色材が凝集したり、インク粘度が増加する場合には、“×”として設定してもよい。
【0067】
また、より混合による不具合を確実に防止するために、(溶媒種類,色材種類,分散方式)の全てが同一の種類である場合には、“○”とし、それ以外は全て“×”としてもよい。また、混合の可否は、インク循環のしやすさに基づいて決定されてもよい。異なるインクの混合度によっては、混合インクの粘度が大きく変化したり、混合インクの物性が大きく変化する場合もあり、この場合には、インク循環のしやすさに影響して、循環の駆動に大きく影響を与えたり、駆動ではフォローしきれない場合もある。このため、インクの組み合わせに応じて、実験的に、インク粘度の測定やインク循環への影響を調べ、混合の可否の○、×を決めるようにしてもよい。
【0068】
また、図示しないが、インクジェット印刷装置1が工場から出荷された状態(初期状態)から、初めてインクカートリッジ150が装着されたときに、メモリ11に本体使用開始日が記憶される。
【0069】
CPU10には、操作画面とタッチパネルとで構成された操作パネル12が接続されている。この操作パネル12は、インクジェット印刷装置1の上部に配置されている。この操作パネル12は、図示しないスキャナ部にセットした印刷画像を複写印刷する場合や、外部から受け付けた印刷ジョブを印刷する場合の印刷枚数などの処理内容といった設定条件を、ユーザが入力する入力操作部等として利用できる。
【0070】
また、操作パネル12には、後述する警告画面などを表示する。
【0071】
CPU10は、プログラムを実行する演算処理装置であり、インクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kに印刷動作を行わせるなどインクジェット印刷装置1の全体制御を行う。また、このCPU10は、本体装置に装着されたインクカートリッジとの間で無線通信によりデータ転送を行う機能を有する。
【0072】
さらに、CPU10は、図示しないセンサーの検出結果に基づいて、本体装置にカートリッジが装着したことを検出する。なお、検出するカートリッジには、インクカートリッジ150や、後述する洗浄液が貯留された洗浄液カートリッジを含むものとする。
【0073】
また、CPU10は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザ操作に対する種々の処理を行う。具体的には、CPU10は、判定手段と、制御手段との機能モジュールを構築している。なお、本実施形態中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせ等によって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0074】
判定手段21は、インクカートリッジ150が本体装置に装着された際に、インク循環経路157内のインクのインク特性情報と、インクカートリッジ150に貯留されたインクのインク特性情報と、インク混合可否テーブルとに基づいて、インク循環経路157内のインクとインクカートリッジ150に貯留されたインクとの混合の可否を判定する。
【0075】
制御手段22は、判定手段21により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を操作パネル12に表示させるとともに、装着されたインクカートリッジ150からインク循環経路157へのインクの供給を禁止する。
【0076】
<インクジェット印刷装置の作用>
次に、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1の作用について説明する。
【0077】
図5は、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1における処理手順を示したフローチャートである。
【0078】
図5に示すように、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1は、まず、CPU10が、図示しないセンサーの検出結果に基づいて、本体装置にインクカートリッジが装着したことを検出すると(ステップS101;“YES”)、判定手段21は、装着されたインクカートリッジ150のメモリ153からインク特性情報を読み込む(ステップS103)。
【0079】
次に、CPU10の判定手段21は、本体装置が、出荷状態であり、今回を除く過去にインクカートリッジ150が装着されていない初期状態か否かを判定する(ステップS105)。具体的に、判定手段21は、メモリ11に本体使用開始日が記憶されていない場合、本体装置は初期状態であると判定する。
【0080】
ステップS105において、初期状態であると判定された場合(“YES”)、インク循環経路157にはインクが充填されておらず、インクの混合を考慮する必要がないため、処理をステップS139に移行し、インク補給弁142を開にすることによりインクカートリッジ150からインクを充填する(ステップS139)。
【0081】
そして、制御手段22は、装着されたインクカートリッジ150のメモリ153に記憶されたインク特性情報を、インク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報として、メモリ11に記憶する(ステップS141)。
【0082】
一方、ステップS105において、初期状態ではないと判定された場合(“NO”)、インク循環経路157には、インクが残留しているので、インクの混合を考慮する必要がある。
【0083】
そこで、判定手段21は、本体装置のメモリ11からインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報を読み込み(ステップS107)、本体装置のメモリ11からインク混合可否テーブルを読み込む(ステップS109)。
【0084】
そして、判定手段21は、インク循環経路157内のインクとインクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクとの混合が禁止か否かを判定する(ステップS111)。具体的に、判定手段21は、メモリ11から読み込んだインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報と、メモリ153から読み込んだインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報と、インク混合可否テーブルとに基づいて、インク循環経路157内のインクとインクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクとの混合が禁止か否かを判定する。
【0085】
ステップS111において、インクの混合が禁止ではない、すなわちインクの混合可と判定された場合(“NO”)、判定手段21は、メモリ11から読み込んだインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報と、メモリ153から読み込んだインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報とに基づいて、同種のインクか否かを判定する(ステップS113)。具体的に、判定手段21は、メモリ11から読み込んだインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報の溶媒種類、色材種類、分散方式と、メモリ153から読み込んだインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報の溶媒種類、色材種類、分散方式とが、それぞれ同一種類である場合には、同種のインクであると判定する。
【0086】
ステップS113において、同種のインクではないと判定された場合(“NO”)、制御手段22は、廃液弁165を開にすることにより下流タンク159内に貯留されたインクを廃液として廃液タンク167に排出する(ステップS115)。
【0087】
インク循環経路157内からインクが排出されると、制御手段22は、インク補給弁142を開とすることにより、インクボトル151内に貯留されたフレッシュなインクIKを下流タンク159に供給しインク循環経路157内にインクを充填させた後、インク補給弁142を閉とする(ステップS117)。
【0088】
一方、ステップS113において、同種のインクであると判定された場合(“YES”)、制御手段22は、判定手段21は、インク循環経路157内にインクを充填させる必要があるか否かを判定する(ステップS119)。具体的に、判定手段21は、上流タンク158および下流タンク159に設けられた図示しない液面センサの検出値に基づいて、インク循環経路157内でインクを循環させる上で必要なインク量に満たない場合には、インク循環経路157内にインクを充填させる必要があると判定する。
【0089】
ステップS119において、インク循環経路157内にインクを充填させる必要があると判定した場合、処理をステップS117に以降し、インク補給弁142を開とすることにより、インク循環経路157内にインクを充填させ、インク循環経路157内にインクを充填させる必要がないと判定した場合、処理を終了する。
【0090】
一方、ステップS111において、インクの混合が禁止である、すなわちインクの混合不可と判定された場合(“YES”)、制御手段22は、インク補給弁142を閉とし、インクボトル151から下流タンク159へのインクの供給を禁止するとともに、操作パネル12に洗浄液カーリッジの装着を指示する警告画面を表示する(ステップS121)。
【0091】
例えば、
図6の警告画面12aに示すように、「インクを供給することができません。洗浄液カートリッジを装着してください。」というメッセージを表示する。ここで、洗浄液カートリッジとは、インク循環経路157を洗浄するための洗浄液が貯留されたカートリッジのことであり、インクカートリッジ150と同様に、貯留された洗浄液の特性をインク特性情報としてメモリ153に記憶している。
【0092】
そして、CPU10が、図示しないセンサーの検出結果に基づいて、本体装置にカートリッジが装着したことを検出すると(ステップS125;“YES”)、判定手段21は、装着されたカートリッジのメモリ153からインク特性情報を読み込み、装着されたカートリッジに洗浄液が貯留されているか否かを判定する(ステップS127)。具体的には、判定手段21は、メモリ153に記憶されたインク特性情報の色材種類および分散方式が、共に「なし」(=6)である場合、装着されたカートリッジに洗浄液が貯留されていると判定してもよいし、予め、洗浄液カートリッジであることを示す洗浄液フラグを記憶しておき、この洗浄液フラグに基づいて装着されたカートリッジに洗浄液が貯留されていると判定してもよい。
【0093】
ステップS127において、装着されたカートリッジに洗浄液が貯留されていると判定された場合(“YES”)、制御手段22は、廃液弁165を開にすることにより下流タンク159内に貯留されたインクを廃液として廃液タンク167に排出する(ステップS129)。
【0094】
そして、制御手段22は、インク循環経路157内を洗浄液で洗浄する(ステップS131)。具体的に、制御手段22は、インク補給弁142を開とすることにより、インクボトル151内に貯留された洗浄液を下流タンク159に供給しインク循環経路157内に洗浄液を充填させる。そして、制御手段22は、上流タンク159と下流タンク159との液面制御をオンにすることにより、インク循環経路157内を洗浄液で洗浄した後、廃液弁165を開にすることにより下流タンク159内に貯留された洗浄液を廃液として廃液タンク167に排出して廃液弁165を閉にする。これにより、インク循環経路157内を洗浄液で洗浄した後、液体が全て排出された空の状態にすることができる。
【0095】
次に、制御手段22は、メモリ11に記憶されたインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報を洗浄液カートリッジのメモリ153に記憶されたインク特性情報で更新する(ステップS133)。
【0096】
そして、制御手段22は、操作パネル12にインクカートリッジ150の装着を指示する画面を表示する(ステップS135)。例えば、
図7の警告画面12bに示すように、「洗浄が完了しました。インクカートリッジを装着してください。」というメッセージを表示する。
【0097】
そして、CPU10は、図示しないセンサーの検出結果に基づいて、本体装置にインクカートリッジが装着したことを検出すると(ステップS137;“YES”)、制御手段22は、インク補給弁142を開とすることにより、インクボトル151内に貯留されたフレッシュなインクIKを下流タンク159に供給しインク循環経路157内にインクを充填させた後、インク補給弁142を閉とする(ステップS139)。
【0098】
そして、制御手段22は、装着されたインクカートリッジ150のメモリ153に記憶されたインク特性情報を、メモリ11に記憶されたインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報として記憶する(ステップS141)。すなわち、メモリ11に記憶されたインク循環経路157内を循環するインクのインク特性情報を、装着されたインクカートリッジ150のメモリ153に記憶されたインク特性情報で更新する。
【0099】
なお、制御手段22は、ステップS121において、操作パネル12に洗浄液カーリッジの装着を指示する警告画面を表示したが、これに限らず、音声等により洗浄液カーリッジの装着を指示する警告を発報するようにしてもよい。
【0100】
以上のように、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1によれば、インクカートリッジ150が本体装置に装着された際に、インク循環経路157内のインクのインク特性情報と、インクカートリッジ150に貯留されたインクのインク特性情報と、インク混合可否テーブルに基づいて、インク循環経路157内のインクとインクカートリッジ150に貯留されたインクとの混合の可否を判定する判定手段21と、判定手段21により混合不可と判定された場合、混合不可である旨を報知するとともに、装着されたインクカートリッジ150からインク循環経路157へのインクの供給を禁止する制御手段22とを備えるので、混合不可のインク同士を混合させることを防止することができる。これにより、色材が凝集したり、インク粘度が増加したりすることを防止し、インク循環経路157上に設けられているフィルタ163の目詰まりを防止することができる。
【0101】
また、インクの混合の可否は、混合後におけるインク循環経路157内を循環するインクのインク粘度に基づくインク循環のしやすさに基づいて決定されるので、インク循環方式のインクジェット印刷装置1であっても、インクの混合によるインク物性の変化に基づく不具合を防止し、インク循環式供給経路内で適切にインクを循環させることができる。
【0102】
なお、本発明の実施例1に係るインクジェット印刷装置1では、インクの主な溶媒種類、色材種類、分散方式が含まれるインク特性情報を記憶したが、インク特性情報は、溶媒種類、色材種類、分散方式に限らず、溶媒種類、色材種類、分散方式のうち、いずれか1以上を含むようにしてもよい。
【0103】
また、本発明の実施例1では、インクの温度調節やインク内に混入したゴミなどの不純物を除去するためにインクを絶えず循環させるインク循環方式のインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明した。上述したように、インク循環方式のインクジェット印刷装置1では、インクの循環経路157内にインクが多く残留する。そのため、インク特性が異なるインクのインクカートリッジ150に交換すると、インク循環経路157内に多く残留するインクと、交換するインクカートリッジ150のインクとが混合することになるので、インク混合の影響が大きい。そのため、特にインク循環方式のインクジェット印刷装置1において本発明の効果が大きくなる。ただし、本発明は、インク循環方式のインクジェット印刷装置に限らず、インクカートリッジ150からインクジェットヘッド110へインクを供給する経路を有するインクジェット印刷装置であれば適用可能である。