(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484462
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】温度計測システム
(51)【国際特許分類】
G01K 7/00 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
G01K7/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-40160(P2015-40160)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-161388(P2016-161388A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏見 篤
(72)【発明者】
【氏名】金田 昌基
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−140101(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/072126(WO,A2)
【文献】
実開昭61−161634(JP,U)
【文献】
特開平10−213489(JP,A)
【文献】
特開2011−115001(JP,A)
【文献】
特開平3−35135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出温度に応じた電気信号を出力する温度センサと、
前記温度センサから出力された電気信号を伝送する第1の信号伝送ケーブルと、
前記第1の信号伝送ケーブルから伝送された電気信号を入力して検出温度に換算する温度計測装置とを備えた温度計測システムにおいて、
前記第1の信号伝送ケーブルは、前記温度センサの一方の端子に一端が接続された1本の第1の金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなる少なくとも1本の第1の無機絶縁ケーブルと、前記温度センサの他方の端子に一端が接続された1本の第2の金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなる少なくとも1本の第2の無機絶縁ケーブルとを有し、前記第1の無機絶縁ケーブルと前記第2の無機絶縁ケーブルとを離隔して配設したことを特徴とした温度計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温度計測システムにおいて、
前記温度センサは、2種類の金属素線を接合してなる熱電対で構成され、
前記温度計測装置は、前記第1の金属素線と前記第2の金属素線との間の熱起電力を測定するように構成されたことを特徴とする温度計測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の温度計測システムにおいて、
前記温度センサは測温抵抗体で構成され、
前記温度計測装置は、前記第1の金属素線と前記第2の金属素線との間の抵抗値を測定するように構成されたことを特徴とする温度計測システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の温度計測システムにおいて、
前記第1の信号伝送ケーブルは、前記第1及び第2の無機絶縁ケーブルのそれぞれの金属シースの外表面を被覆する無機絶縁材を備えたことを特徴とする温度計測システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の温度計測システムにおいて、
前記第1の信号伝送ケーブルは、前記第1の金属素線の他端と前記温度計測装置とを接続する第3の金属素線と、前記第2の金属素線の他端と前記温度計測装置とを接続する第4の金属素線とを樹脂絶縁材を充填した樹脂被覆材に収容してなる第1の樹脂絶縁ケーブルを有することを特徴とした温度計測システム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の温度計測システムにおいて、
前記第1の信号伝送ケーブルは、前記第1の金属素線の他端と前記温度計測装置とを接続する第3の金属素線を樹脂絶縁材を充填した樹脂被覆材に収容してなる第2の樹脂絶縁ケーブルと、前記第2の金属素線の他端と前記温度計測装置とを接続する第4の金属素線を樹脂絶縁材を充填した樹脂被覆材に収容してなる第3の樹脂絶縁ケーブルとを有することを特徴とした温度計測システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の温度計測システムにおいて、
前記温度センサは、原子炉を収容する格納容器の内部に設置され、
前記温度計測装置は前記格納容器の外部に配置され、
前記第1及び第2の無機絶縁ケーブルは前記格納容器の内部に配設され、
前記樹脂絶縁ケーブルは前記格納容器の外部に配設されたことを特徴とする温度計測システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の温度計測システムにおいて、
前記温度センサの近傍に配置したヒータと、
前記ヒータに電流を供給する電源装置と、
前記ヒータと前記電源装置とを接続する第2の信号伝送ケーブルとを更に備え、
前記第2の信号伝送ケーブルは、前記ヒータの一方の端子に一端が接続された1本の第5の金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなる少なくとも1本の第3の無機絶縁ケーブルと、前記ヒータの他方の端子に一端が接続された1本の第6の金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなる少なくとも1本の第4の無機絶縁ケーブルとを有することを特徴とした温度計測システム。
【請求項9】
請求項8に記載の温度計測システムにおいて、
前記第2の信号伝送ケーブルは、前記第5の金属素線の他端と前記温度計測装置とを接続する第7の金属素線と、前記第6の金属素線の他端と前記温度計測装置とを接続する第8の金属素線とを樹脂絶縁材を充填した樹脂被覆材に収容してなる第4の樹脂絶縁ケーブルを有することを特徴とした温度計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度を監視するための温度計測システムに係り、特に、温度センサと温度計測装置とを接続する信号伝送ケーブルが高温かつ水分のある環境に敷設される用途の温度計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用プラントや発電プラントに使用されている温度計測システムでは、特定の位置(測定点)に設置された温度センサと測定点から離れた位置(監視点)に設置された温度計測装置とを信号伝送ケーブルで接続し、当該温度センサの検出信号を当該信号伝送ケーブルを介して温度計測装置に伝送することにより測定点の温度を監視している。ここで、高温かつ水分のある環境に信号伝送ケーブルが敷設される用途の温度計測システムの場合、信号伝送ケーブルとして耐高温性及び防水性を備えた無機絶縁ケーブルが使用されることが多い。
【0003】
無機絶縁ケーブルは、金属製のシース(以下「金属シース」という)の中に信号や電流を伝送するための金属素線が収納されており、金属素線と金属シースとの間、及び金属素線間がマグネシアやアルミナなどの無機物で絶縁されている。高温環境下での温度計測に使用される温度センサとしては、熱電対や測温抵抗体などがあり、熱電対を用いた温度計測システムの信号伝送ケーブルとしては、熱電対を構成する2種類の金属のそれぞれと同一または熱起電力特性が近い2本の金属素線を1本の金属シースに収納し、酸化マグネシウム等の絶縁材を内部に充填して構成された無機絶縁ケーブルが使用される。なお、熱電対と無機絶縁ケーブルとは独立して構成する必要はなく、例えば
図15に示すように、互いの端部を接合して温接点200を形成した正側金属素線201及び負側金属素線202を一端が閉塞した金属シース203に収容し、金属シース203の内部に無機絶縁材204を充填することにより、温接点200を収容する熱電対205と正側金属素線201及び負側金属素線202を収容する無機絶縁ケーブル206とを一体に構成することも可能である。このようなシース熱電対として例えば特許文献1に記載のものがある。
【0004】
特許文献1に記載のシース熱電対では、各熱電対素線の外周面における他の熱電対素線が存在しないシース内壁に対向する側の領域を、該内壁面に略平行な曲面形状に構成し、熱電対素線と金属シース内壁、熱電対素線相互間に介在する無機絶縁物の層の厚みを略均等に構成することより測定精度や絶縁特性の維持を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−89494号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】川口千代二,荒克之「原子炉の計測」(1978)幸書房.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、無機絶縁ケーブルは金属シース、金属素線、及び無機絶縁材(マグネシアやアルミナなど)で構成されており、それぞれ高い耐熱性を有する。しかし、無機絶縁材は温度上昇とともに抵抗率が低下することが知られている。非特許文献1には、1000℃を超える温度条件での無機絶縁材の比抵抗が示されているが、例えばマグネシアの場合、200℃の温度上昇で比抵抗は1/10以下となる。そのため、無機絶縁ケーブルが高温に曝された場合、高温部の絶縁抵抗が低下し、絶縁抵抗が低下した部分が温度の影響を受けることにより、熱電対部分の温度が正確に測れなくなる。
【0008】
このような絶縁抵抗の低下に対する対策として、より比抵抗の大きな物質を絶縁材として用いることが考えられる。しかし、そのような物質は一般に高価であり、中には毒性を有するために容易に扱えないものもある。別の対策としては、金属シースの外径を大きくすることにより、絶縁層を厚くすることが考えられる。しかし、金属シースの外径を大きくした場合、重量や体積が増し、また、曲げ加工に大きな力を要するため、信号伝送ケーブルの敷設が困難になる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、信号伝送ケーブルが高温環境に敷設される用途において、信号伝送ケーブルの重量や体積を著しく増すことなく、正確な温度計測を可能とした温度計測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、検出温度に応じた電気信号を出力する温度センサと、前記温度センサから出力された電気信号を伝送する第1の伝送ケーブルと、前記第1の伝送ケーブルから伝送された電気信号を入力して検出温度に換算する温度計測装置とを備えた温度計測システムにおいて、前記第1の伝送ケーブルは、前記温度センサの一方の端子に一端が接続された1本の第1の金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなる少なくとも1本の第1の無機絶縁ケーブルと、前記温度センサの他方の端子に一端が接続された1本の第2の金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなる少なくとも1本の第2の無機絶縁ケーブルとを有
し、前記第1の無機絶縁ケーブルと前記第2の無機絶縁ケーブルとを隔離して配設したものとする。
【発明の効果】
【0011】
信号伝送ケーブルが高温環境に敷設される用途の温度計測システムにおいて、信号伝送ケーブルの重量や体積を著しく増すことなく、正確な温度計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施例における温度計測システムの全体構成図。
【
図2】本発明の第1の実施例における無機絶縁ケーブルの構成例を示す縦断面図及び横断面図。
【
図3】本発明の第1の実施例における無機絶縁ケーブルのその他の構成例を示す縦断面図及び横断面図。
【
図4】本発明の第1の実施例における温度センサの一例としてのシース熱電対の構成例を示す縦断面図。
【
図5】本発明の第1の実施例における温度センサの一例としての測温抵抗体の構成例を示す縦断面図。
【
図6】本発明の第1の実施例における温度計測装置の一例として熱電対用の温度計測装置を示す構成図。
【
図7】本発明の第2の実施例における温度計測システムの全体構成図。
【
図8】本発明の第3の実施例における温度計測システムの全体構成図。
【
図9】本発明の第3の実施例における樹脂絶縁ケーブルの構成例を示す縦断面図及び横断面図。
【
図10】本発明の第4の実施例における温度計測システムの全体構成図。
【
図11】本発明の第4の実施例における樹脂絶縁ケーブルの構成例を示す縦断面図及び横断面図。
【
図12】本発明の第5の実施例における温度計測システムの全体構成図。
【
図13】本発明の第6の実施例における温度計測システムの全体構成図。
【
図14】本発明の第7の実施例における温度計測システムの全体構成図。
【
図15】従来技術における無機絶縁ケーブルの構成例を示す縦断面図及び横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、各図中、同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施例における温度計測システムの全体構成図である。温度計測システムは、検出温度に応じた電気信号を出力する温度センサ1と、温度センサ1から出力された電気信号を伝送する信号伝送ケーブル10と、信号伝送ケーブル10から伝送された電気信号を入力して検出温度に換算する温度計測装置6と、温度計測装置6で換算した検出温度を表示する表示装置7とを備えている。信号伝送ケーブル10は、互いに離隔して配設された2本の無機絶縁ケーブル2,3を有し、それぞれの一端は温度センサ1に接続され、それぞれの他端はコネクタ4,5を介して温度計測装置6に接続されている。このとき、無機絶縁ケーブル2,3は、温度センサ1及び温度計測装置6を介在して1つの閉ループを形成している。
【0015】
次に、本実施例における温度計測システムの動作を説明する。まず、温度センサ1が測定対象の温度に応じた電気信号を出力する。この電気信号は、後述するように無機絶縁ケーブル2,3の金属素線12,15(
図2参照)をそれぞれ正負の信号線として伝搬する。このとき、無機絶縁ケーブル2,3は互いに離隔して配設されているため、無機絶縁ケーブル2,3が高温に曝されても、正負の信号線12,15間の絶縁抵抗は高い状態で維持され、温度センサ1が出力した電気信号が乱されることはない。無機絶縁ケーブル2,3を伝搬した正負の信号は、コネクタ4,5を介して温度計測装置6に入力される。温度計測装置6は、無機絶縁ケーブル2,3間の電圧を計測して温度に換算し、その結果を温度情報として表示装置7に送信する。表示装置7は、受信した温度情報を表示する。
【0016】
図2(a)は無機絶縁ケーブル2,3の構成例を示す縦断面図であり、
図2(b)は同じく横断面図である。本実施例における無機絶縁ケーブル2,3は、温度センサ1として熱電対を用いた温度計測システムに適したものである。無機絶縁ケーブル2は、細い筒状のステンレス鋼製シース(以下「金属シース」という)11の中心部に正側金属素線12(例えばクロメル)を配置し、金属シース11と金属素線12との間に無機絶縁材13としてマグネシアの粉末を充填したものである。一方、無機絶縁ケーブル3は、金属シース14の中心部に負側金属素線15(例えばアルメル)を配置し、金属シース14と金属素線15との間に無機絶縁材16としてマグネシアの粉末を充填したものである。熱電対1から出力された電気信号は、正側金属素線12及び負側金属素線15をそれぞれ正負の信号線として伝搬し、コネクタ4,5を介して温度計測装置6に入力される。
【0017】
図3(a)は、無機絶縁ケーブル2,3のその他の構成例を示す縦断面図であり、
図3(b)は同じく横断面図である。
図3において、
図2に示した無機絶縁ケーブル2,3との相違点は、無機絶縁ケーブル2,3の金属シース11,14の外表面にガラス繊維を円筒状に形成した絶縁被覆17を被せている点である。
図2に示した無機絶縁ケーブル2,3の場合、金属シース11,14が金属製の構造物に触れた状態で、金属素線12と金属シース11との間、及び金属素線15と金属シース14との間の絶縁抵抗が低下した場合、金属シース11,14が金属製の構造物を介して導通することにより、金属素線12,15間の絶縁抵抗が低下する可能性がある。一方、
図3に示した無機絶縁ケーブル2,3の場合、金属シース11,14が金属製の構造物に触れた状態で、万一、金属素線12と金属シース11との間の絶縁抵抗、及び金属素線15と金属シース14との間の絶縁抵抗が低下した場合でも、絶縁被覆17によって構造物と金属シース11,14との間の絶縁が保たれるため、金属素線12,15間の絶縁抵抗が低下することはない。
【0018】
図4は、温度センサ1の一例としてシース熱電対の構成例を示す縦断面図である。シース熱電対21は、金属シース22の内部に正側金属素線23(例えばクロメル)と負側金属素線24(例えばアルメル)と2つの金属素線23,24を接合してなる温接点25とを収容してなる。金属シース22の内部にはマグネシア粉末の無機絶縁材26が充填されており、金属素線23,24間及び金属素線23,24と金属シース22との間が絶縁されている。シース熱電対21の端部はステンレス鋼製のアダプタ27に挿入されており、アダプタ27と金属シース22とが溶接等で気密に接続されている。また、アダプタ27のシース熱電対21が挿入されている端部と反対側には無機絶縁ケーブル2,3の一端が挿入されており、アダプタ27と金属シース11,14とが溶接等で気密に接続されている。アダプタ27の内部では、シース熱電対21の一方の端子を構成する正側金属素線23と無機絶縁ケーブル2の金属素線12とが溶接等で接続されると共に、シース熱電対21の他方の端子を構成する負側金属素線24と無機絶縁ケーブル3の金属素線15とが溶接等で接続されており、これらの金属素線23,12,24,15とアダプタ27の間にはマグネシア粉末の無機絶縁材28が充填され絶縁が施されている。シース熱電対21で発生した熱起電力は、無機絶縁ケーブル2の金属素線12と無機絶縁ケーブル3の金属素線15との間の電圧信号として温度計測装置6(
図1参照)に伝送される。
【0019】
図5は、温度センサ1の一例として測温抵抗体31の構成例を示す縦断面図である。測温抵抗体31は、金属シース32の内部に白金抵抗線34とその両端に接続され端子を構成する金属素線33,33とを収容してなる。金属シース32の内部にはマグネシア粉末の無機絶縁材35が充填されており、金属素線33,33間及び金属素線33,33と金属シース32との間が絶縁されている。金属素線33は、抵抗測定のために印加する定電流が流れやすいように抵抗の小さな材質で構成する必要があり、銅線または銅線に酸化防止の被覆(ニッケルメッキ等)を施したものが適している。金属シース32の端部はステンレス鋼製のアダプタ37に挿入されており、アダプタ37と金属シース32とが溶接等で気密に接続されている。また、アダプタ37の測温抵抗体31が挿入されている端部と反対側には2本の無機絶縁ケーブル41,41が挿入されており、アダプタ37と無機絶縁ケーブル41,41の金属シース42,42とが溶接等で気密に接続されている。無機絶縁ケーブル41の金属素線43は、
図2に示した無機絶縁ケーブル2,3とは異なり、銅線または銅線に酸化防止の被覆(ニッケルメッキ等)を施したものが適している。アダプタ37の内部では、金属素線33,33と無機絶縁ケーブル41,41の金属素線43,43とが溶接で接続されており、これらの金属素線33,33,43,43とアダプタ37との間にマグネシア粉末の無機絶縁材38が充填され絶縁が施されている。測温抵抗体31に定電流を印加したときに端子間(金属素線33,33間)に生じる電圧は、金属素線43,43間の電圧信号として温度計測装置6(
図1参照)に伝送される。
【0020】
図6は、温度計測装置6の一例として熱電対用の温度計測装置を示す構成図である。無機絶縁ケーブル2,3で伝送された電気信号は、コネクタ4,5を介して温度計測装置6に入力される。無機絶縁ケーブル3を介して入力された負側の信号は、基準接点補償回路52に入力される。基準接点補償回路52は、トランジスタに定電流を印加して温度計測装置6内の温度に応じた電圧をベースエミッタに生じさせ、この電圧を熱電対のゼロ点を補償するための電圧に変換して負側の信号線15に印加することにより、正側の信号線12の電圧がそのまま温度センサ1の位置における絶対温度に相当するように補正する。正側の電圧は、A/D変換器53によってデジタル値に変換され、温度換算回路54に送出される。温度換算回路54は、マイコンを内蔵しており、予め設定されている温度と熱起電力との関係に従って正側の信号線12の電圧(熱起電力)を温度に換算し、その結果を温度情報として送信回路55に送出する。送信回路55は、受信した温度情報をコネクタ56を介して信号ケーブル57に送出する。
【0021】
本実施例における温度計測システムによれば、金属素線12,15を金属シース11,14にそれぞれ分けて収納したことにより、金属シース11,14の径を大きくすることなく、金属素線12と金属シース11との間、及び金属素線15と金属シース14との間に、均一かつ大きな幅の絶縁層を確保することができ、高温時の絶縁抵抗を高く維持できる。また、万一、金属素線12と金属シース11との間の絶縁、及び金属素線15と金属シース14との間の絶縁が低下した場合でも、無機絶縁ケーブル2,3間が離隔されていることにより、金属素線12,15間の絶縁が直接低下することはない。これにより、信号伝送ケーブル10が高温環境に敷設される用途の温度計測システムにおいて、信号伝送ケーブル10の重量や体積を著しく増すことなく、正確な温度計測が可能となる。
【実施例2】
【0022】
図7は、本発明の第2の実施例における温度計測システムの全体構成図である。
図7において、第1の実施例における温度計測システム(
図1参照)との相違点は、信号伝送ケーブル10が無機絶縁ケーブル2,3をそれぞれ2本ずつ(冗長に)有している点である。
【0023】
本実施例における温度計測システムにおいても、第1の実施例と同様の効果を達成できる。さらに、信号伝送ケーブル10が無機絶縁ケーブル2,3をそれぞれ冗長に有することにより、無機絶縁ケーブル2のいずれか、又は無機絶縁ケーブル3のいずれかに断線等が生じた場合でも正確な温度計測が可能となる。なお、本実施例では無機絶縁ケーブル2,3をそれぞれ2本ずつ有する構成としたが、無機絶縁ケーブル2又は3は3本以上であっても良く、また、無機絶縁ケーブル2,3のいずれか一方のみを冗長としても良い。
【実施例3】
【0024】
図8は、本発明の第3の実施例における温度計測システムの全体構成図である。
図8において、第1の実施例における温度計測システム(
図1参照)との相違点は、信号伝送ケーブル10が樹脂絶縁ケーブル62を更に有し、無機絶縁ケーブル2,3の他端がコネクタ61を介して樹脂絶縁ケーブル62の一端に接続され、樹脂絶縁ケーブル62の他端がコネクタ63を介して温度計測装置6に接続されている点である。
【0025】
図9(a)は、樹脂絶縁ケーブル62の構成例を示す縦断面図であり、
図9(b)は同じく横断面図である。樹脂絶縁ケーブル62は、無機絶縁ケーブル2の金属素線12の他端と温度計測装置6とを接続する金属素線65と、無機絶縁ケーブル3の金属素線15の他端と温度計測装置6とを接続する金属素線66とを樹脂絶縁材67を充填した樹脂被覆材64に収容してなる。正側金属素線65には、無機絶縁ケーブル2の正側金属素線12と同じくクロメルを用い、負側金属素線66には無機絶縁ケーブル3の負側金属素線15と同じくアルメルを用いる。樹脂絶縁材67及び樹脂絶縁被覆64にはフッ素樹脂、ポリエチレン、ビニル等の材質を用いることができる。樹脂絶縁ケーブル62は、正側金属素線65及び負側金属素線66が1本の樹脂絶縁被覆64に収容されていること、及び、樹脂絶縁材67及び樹脂絶縁被覆64が樹脂製であることから、高温環境下では使用できないが、無機絶縁ケーブルに比べて安価でかつ敷設が容易である。
【0026】
本実施例における温度計測システムにおいても、第1の実施例と同様の効果を達成できる。さらに、温度センサ1に近く耐高温性及び防水性が要求される区間において無機絶縁ケーブル2,3を使用し、温度計測装置6に近く比較的温度が低い区間において樹脂絶縁ケーブル62を使用することにより、信号伝送ケーブル10のコストを抑制できる。
【実施例4】
【0027】
図10は、本発明の第4の実施例における温度計測システムの全体構成図である。
図10において、第1の実施例における温度計測システム(
図1参照)との相違点は、信号伝送ケーブル10が2本の樹脂絶縁ケーブル72,75を更に有し、無機絶縁ケーブル2,3の他端がそれぞれコネクタ71,74を介して樹脂絶縁ケーブル72,75の一端に接続され、樹脂絶縁ケーブル72,75の他端がそれぞれコネクタ73,76を介して温度計測装置6に接続されている点である。
【0028】
図11(a)は、樹脂絶縁ケーブル72,75の構成例を示す縦断面図であり、
図11(b)は同じく横断面図である。樹脂絶縁ケーブル72の金属素線78には、無機絶縁ケーブル2の正側金属素線12と同じくクロメルを用い、樹脂絶縁ケーブル75の金属素線81には無機絶縁ケーブル3の負側金属素線15と同じくアルメルを用いる。樹脂絶縁材79,82及び樹脂絶縁被覆77,80には、フッ素樹脂、ポリエチレン、ビニル等の材質を用いることができる。
【0029】
本実施例における温度計測システムにおいても、第1の実施例と同様の効果を達成できる。さらに、信号伝送ケーブル10が2本の樹脂絶縁ケーブル72,75を有し、各々に無機絶縁ケーブル2,3を接続することにより、無機絶縁ケーブル2,3を共通のコネクタに接続するように敷設する必要がなくなる。そのため、無機絶縁ケーブル2と樹脂絶縁ケーブル72とを接続するコネクタ71と、無機絶縁ケーブル3と樹脂絶縁ケーブル75とを接続するコネクタ74とを離隔して配置し、無機絶縁ケーブル2,3が近接する区間を極力減らすことにより、高温環境下での絶縁低下をより効果的に防止することができる。また、無機絶縁ケーブル2,3を共通のコネクタに接続するように敷設する必要がないため、それぞれが最短のケーブル長となるように無機絶縁ケーブル2,3を離間して敷設することにより、信号伝送ケーブル10のコストを更に削減できる。
【実施例5】
【0030】
図12は、本発明の第5の実施例における温度計測システムの全体構成図である。本実施例は、第3の実施例における温度計測システム(
図8参照)を原子炉格納容器の温度計測に適用した場合の例である。温度センサ1は、原子炉91を収容する格納容器92の内部に設置されている。無機絶縁ケーブル2,3は、それぞれの一端が温度センサ1に接続され、格納容器92の内部に互いに離隔して配設されている。無機絶縁ケーブル2,3の他端は、格納容器92の貫通部93,94にそれぞれ挿通され、コネクタ61を介して格納容器92の外部に設置された樹脂絶縁ケーブル62の一端に接続されている。樹脂絶縁ケーブル62の他端は、コネクタ63を介して格納容器92の外部に設置された温度計測装置6に接続されている。温度計測装置6には表示装置7が付設されており、格納容器92の外部で格納容器92内部の温度を監視することができる。
【0031】
本実施例における温度計測システムによれば、事故時に格納容器92の内部が高温になった場合でも温度センサ1の温度を正確に測定することができる。また、耐高温性及び防水性が要求される格納容器92の内部において無機絶縁ケーブル2,3を使用し、高温になる可能性が極めて低い格納容器92の外部において樹脂絶縁ケーブル62を使用することにより、信号伝送ケーブル10のコストを抑制できる。
【実施例6】
【0032】
図13は、本発明の第6の実施例における温度計測システムの全体構成図である。
図13において、第1の実施例における温度計測システム(
図1参照)との相違点は、温度センサ1に近接して設置されたヒータ101と、ヒータ101に電力を供給するヒータ用電源106と、ヒータ用電源106を制御する電源制御装置107と、それぞれの一端がヒータ101に接続され、それぞれの他端がコネクタ104,105を介してヒータ用電源106に接続され、互いに離隔して配置された無機絶縁ケーブル102,103とで構成されたヒータシステムを更に備えている点である。無機絶縁ケーブル102は、ヒータ101の一方の端子に一端が接続された金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなり、無機絶縁ケーブル103は、ヒータ101の他方の端子に一端が接続された金属素線を無機絶縁材を充填した金属シースに収容してなる。電源制御装置107からの指令によりヒータ用電源106をOn/Offし、無機絶縁ケーブル102,103を経由してヒータ101に電流を印加することにより、温度センサ1の温度を上昇させることができる。
【0033】
本実施例における温度計測システムにおいても、第1の実施例と同様の効果を達成できる。さらに、ヒータ101の発熱量を所定の発熱量に制御し、このとき温度センサ1で検出した温度上昇量と予め正常な温度センサで検出した既知の温度上昇量とが有意に異なるか否かを判定することにより、温度センサ1の健全性を確認することができる。また、ヒータ101の発熱量を所定の発熱量に制御し、このとき温度センサ1で検出した温度上昇量が水中での温度上昇量に相当するのか、あるいは気中での温度上昇量に相当するのかを判定することにより、温度センサ1が水中にあるのか気中にあるのかを検知することができる。さらに、ヒータ101とヒータ用電源106との間を、温度センサ1と温度計測装置6との間と同様に、離隔して配設された2本の無機絶縁ケーブル102,103で接続したことにより、高温環境下での正確な発熱制御を実現でき、温度センサ1の異常検出精度を向上させることができる。
【実施例7】
【0034】
図14は、本発明の第7の実施例における温度計測システムの全体構成図である。
図14において、第6の実施例における温度計測システム(
図13参照)との相違点は、信号伝送ケーブル10が樹脂絶縁ケーブル62を更に有し、無機絶縁ケーブル2,3の他端がコネクタ61を介して樹脂絶縁ケーブル62の一端に接続され、樹脂絶縁ケーブル62の他端がコネクタ63を介して温度計測装置6に接続されている点、及び、信号伝送ケーブル20が樹脂絶縁ケーブル162を更に有し、無機絶縁ケーブル102,103の他端がコネクタ161を介して樹脂絶縁ケーブル162の一端に接続され、樹脂絶縁ケーブル162の他端がコネクタ163を介してヒータ用電源106に接続されている点である。樹脂絶縁ケーブル162は、無機絶縁ケーブル102の金属素線の他端とヒータ用電源106とを接続する金属素線と、無機絶縁ケーブル103の金属素線の他端とヒータ用電源106とを接続する金属素線とを樹脂絶縁材を充填した樹脂被覆材に収容してなる。
【0035】
本実施例における温度計測システムにおいても、第6の実施例と同様の効果を達成できる。さらに、温度センサ1に近く耐高温性及び防水性が要求される区間において無機絶縁ケーブル2,3を使用し、温度計測装置6に近く比較的温度が低い区間において樹脂絶縁ケーブル62を使用することにより、信号伝送ケーブル10のコストを抑制できる。また、ヒータ101に近く耐高温性で防水性が要求される区間において無機絶縁ケーブル102,103を使用し、ヒータ用電源106に近く比較的温度が低い区間において樹脂絶縁ケーブル162を使用することにより、信号伝送ケーブル20のコストを抑制できる。
【0036】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、あるいは、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…温度センサ、2…無機絶縁ケーブル(第1の無機絶縁ケーブル)、3…無機絶縁ケーブル(第2の無機絶縁ケーブル)、4,5…コネクタ、6…温度計測装置、7…表示装置、10…信号伝送ケーブル(第1の信号伝送ケーブル)、11…金属シース、12…正側金属素線(第1の金属素線)、13…無機絶縁材、14…金属シース、15…負側金属素線(第2の金属素線)、16…無機絶縁材、17…絶縁被覆、20…信号伝送ケーブル(第2の信号伝送ケーブル)、21…シース熱電対、22…金属シース、23…正側金属素線(端子)、24…負側金属素線(端子)、25…温接点、26…無機絶縁材、27…アダプタ、28…無機絶縁材、31…測温抵抗体、32…金属シース、33…金属素線(端子)、34…白金抵抗線、35…無機絶縁材、37…アダプタ、38…無機絶縁材、41…無機絶縁ケーブル、42…金属シース、43…金属素線(第1及び第2の金属素線)、44…無機絶縁材、52…基準接点補償回路、53…A/D変換器、54…温度換算回路、55…送信回路、56…コネクタ、57…信号ケーブル、61…コネクタ、62…樹脂絶縁ケーブル(第1の樹脂絶縁ケーブル)、63…コネクタ、64…樹脂絶縁被覆、65…正側金属素線(第3の金属素線)、66…負側金属素線(第4の金属素線)、67…樹脂絶縁材、71…コネクタ、72…樹脂絶縁ケーブル(第2の樹脂絶縁ケーブル)、73,74…コネクタ、75…樹脂絶縁ケーブル(第3の樹脂絶縁ケーブル)、76…コネクタ、77…樹脂絶縁被覆、78…正側金属素線(第3の金属素線)、79…樹脂絶縁材、80…樹脂絶縁被覆、81…負側金属素線(第4の金属素線)、82…樹脂絶縁材、91…原子炉、92…格納容器、93,94…貫通部、101…ヒータ、102…無機絶縁ケーブル(第5の金属素線、第3の無機絶縁ケーブル)、103…無機絶縁ケーブル(第6の金属素線、第4の無機絶縁ケーブル)、104,105…コネクタ、106…ヒータ用電源、107…電源制御装置、161…コネクタ、162…樹脂絶縁ケーブル(第7の金属素線、第8の金属素線、第4の樹脂絶縁ケーブル)、163…コネクタ、200…温接点、201…正側金属素線、202…負側金属素線、203…金属シース、204…無機絶縁材、205…熱電対、206…無機絶縁ケーブル