(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端面測定工程は、前記端面に沿って複数の測定ポイントを前記端面に設定し、それぞれの前記測定ポイントにおいて形状パラメータを測定することで、前記端面の形状を測定し、
前記加工線算出工程は、それぞれの前記測定ポイントにおける前記形状パラメータに基づいて前記加工線を算出し、
前記調整線算出工程は、それぞれの前記測定ポイントに対応する調整ポイントを有する前記調整線を算出する、
請求項1に記載のガラス板製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態としてのガラス板製造方法について、図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるガラス板製造方法は、ガラス板の端面を加工するための端面加工装置100、および、ガラス板の端面の形状を測定するための端面測定装置110を用いる。
【0017】
(1)ガラス板の製造工程の概要
本実施形態で用いられる端面加工装置100によって加工されるガラス板10の製造工程について説明する。ガラス板10は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられる。ガラス板10は、例えば、0.2mm〜0.8mmの厚みを有し、かつ、縦680mm〜2200mmおよび横880mm〜2500mmのサイズを有する。
【0018】
ガラス板10の一例として、以下の(a)〜(j)の組成を有するガラスが挙げられる。
【0019】
(a)SiO
2:50質量%〜70質量%、
(b)Al
2O
3:10質量%〜25質量%、
(c)B
2O
3:1質量%〜18質量%、
(d)MgO:0質量%〜10質量%、
(e)CaO:0質量%〜20質量%、
(f)SrO:0質量%〜20質量%、
(g)BaO:0質量%〜10質量%、
(h)RO:5質量%〜20質量%(Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種である。)、
(i)R’
2O:0質量%〜2.0質量%(R’は、Li、NaおよびKから選択される少なくとも1種である。)、
(j)SnO
2、Fe
2O
3およびCeO
2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物。
【0020】
なお、上記の組成を有するガラスは、0.1質量%未満の範囲で、その他の微量成分の存在が許容される。
【0021】
図1は、ガラス板10の製造工程を表すフローチャートの一例である。ガラス板10の製造工程は、主として、成形工程(ステップS1)と、採板工程(ステップS2)と、切断工程(ステップS3)と、粗面化工程(ステップS4)と、端面加工工程(ステップS5)と、形状測定工程(ステップS6)と、洗浄工程(ステップS7)と、検査工程(ステップS8)と、梱包工程(ステップS9)とから構成される。
【0022】
成形工程S1では、ガラス原料を加熱して得られた熔融ガラスから、ダウンドロー法またはフロート法によって、ガラスシートが連続的に成形される。成形されたガラスシートは、歪みおよび反りが発生しないように温度制御されながら、ガラス徐冷点以下まで冷却される。
【0023】
採板工程S2では、成形工程S1で成形されたガラスシートが切断されて、所定の寸法を有する素板ガラスが得られる。
【0024】
切断工程S3では、採板工程S2で得られた素板ガラスが切断されて、製品サイズのガラス板10が得られる。素板ガラスは、レーザを用いて高い加工精度で切断される。
【0025】
粗面化工程S4では、切断工程S3で得られたガラス板10の表面粗さを増加させる粗面化処理が行われる。ガラス板10の粗面化処理は、例えば、フッ化水素を含むエッチャントを用いるウエットエッチングである。
【0026】
端面加工工程S5では、粗面化工程S4で粗面化処理が行われたガラス板10の端面の面取り加工が行われる。面取り加工された端面の一部は、R形状を有する。端面加工工程S5は、端面加工装置100によって行われる。
【0027】
形状測定工程S6は、端面加工工程S5で面取り加工された端面の形状が測定される。測定された端面の形状に関するデータは、端面加工工程S5において利用される。形状測定工程S6は、端面測定装置110によって行われる。なお、形状測定工程S6は、少なくとも、各製造ロットの最初のガラス板10に対して行われればよい。
【0028】
洗浄工程S7では、端面加工工程S5で端面加工処理が行われたガラス板10が洗浄される。ガラス板10には、素板ガラスの切断、および、ガラス板10の端面加工によって生じた微小なガラス片や、雰囲気中に存在する有機物等の異物が付着している。ガラス板10の洗浄によって、これらの異物が除去される。
【0029】
検査工程S8では、洗浄工程S7で洗浄されたガラス板10が検査される。具体的には、ガラス板10の形状が測定され、ガラス板10の欠陥が光学的に検知される。ガラス板10の欠陥は、例えば、ガラス板10の表面に存在する傷およびクラック、ガラス板10の表面に付着している異物、および、ガラス板10の内部に存在している微小な泡等である。
【0030】
梱包工程S9では、検査工程S8における検査に合格したガラス板10が、ガラス板10を保護するための合紙と交互にパレット上に積層されて、梱包される。梱包されたガラス板10は、FPDの製造業者等に出荷される。
【0031】
(2)端面加工装置の構成
図2は、端面加工装置100の平面図である。
図3は、
図2に示される矢印IIIの方向から見た、端面加工装置100の側面図である。端面加工装置100は、端面加工工程S5において、固定されたガラス板10の端面を面取り加工する。
【0032】
端面加工装置100は、主として、ガラス板搬送装置20と、吸着テーブル30と、一対の面取り砥石40,42と、一対の砥石移動機構70,72と、研削液供給装置80と、水供給装置90と、加工制御部(図示せず)とから構成される。
【0033】
端面加工装置100によって端面が面取り加工されるガラス板10は、長方形の形状を有する。ガラス板10は、その長辺に平行な端面11,12、および、その短辺に平行な端面13,14を有する。
【0034】
図2に示されるように、ガラス板10の表面に平行な平面上には、X軸およびY軸からなる二次元の直交座標系が設定される。
図3に示されるように、X軸およびY軸を含む平面に直交し、かつ、鉛直方向上向きであるZ軸が設定される。X軸の向きは、
図2に示されるように、端面13から端面14に向かう方向である。X軸の向きは、端面加工工程S5において面取り砥石40,42が端面11,12と接触しながら移動する方向である。Y軸の向きは、
図2に示されるように、端面11から端面12に向かう方向である。
【0035】
次に、ガラス板10の長辺に平行な端面11,12を端面加工装置100が面取り加工する工程について説明する。しかし、以下の説明は、ガラス板10の短辺に平行な端面13,14を端面加工装置100が面取り加工する工程にも適用することができる。
【0036】
(2−1)ガラス板搬送装置
ガラス板搬送装置20は、ガラス板10を搬送するロボットである。ガラス板搬送装置20は、ガラス板10を搬送して、ガラス板10を吸着テーブル30の上に載置し、または、吸着テーブル30の上に載置されているガラス板10を持ち上げて、ガラス板10を搬送する。
【0037】
図4は、ガラス板搬送装置20が吸着テーブル30の上にガラス板10を載置している状態を表す図である。ガラス板搬送装置20は、複数の歯を有する櫛型のロボットハンド22を有する。ロボットハンド22は、ガラス板10の下面を吸着して保持することができる。ガラス板搬送装置20は、ガラス板10を保持しているロボットハンド22の位置を変更したり、水平面に平行な面内において回転させたりすることができる。ガラス板搬送装置20は、
図4に示されるように、ロボットハンド22の歯を、吸着テーブル30の支持ピン32の間に挿入することができる。
【0038】
(2−2)吸着テーブル
吸着テーブル30は、
図4に示されるように、複数の支持ピン32を有している。支持ピン32は、X軸方向およびY軸方向に沿って所定の間隔を空けて吸着テーブル30の上面に取り付けられる。吸着テーブル30の上面には、吸着テーブル30の上に載置されたガラス板10の下面を吸着するための多数の吸引孔(図示せず)が形成されている。吸着テーブル30は、吸引孔の吸引による吸着力によって、載置されたガラス板10を固定する。吸着テーブル30の上面は長方形の形状を有する。吸着テーブル30の上面の長辺は、X軸に平行であり、吸着テーブル30の上面の短辺は、Y軸に平行である。
【0039】
ガラス板10を搬送しているガラス板搬送装置20が、ガラス板10を吸着テーブル30の上に載置する過程について説明する。最初に、ロボットハンド22の歯が支持ピン32の間に位置するように、ガラス板10を保持しているロボットハンド22を下降させる。ロボットハンド22は、支持ピン32がガラス板10の下面と接する高さ位置まで下降する。次に、ロボットハンド22によるガラス板10の吸着を解除する。これにより、ガラス板10は、支持ピン32のみによって支持されている状態となる。次に、ロボットハンド22を水平に移動させて、ロボットハンド22を支持ピン32の間から抜き出す。次に、支持ピン32を下降させて、ガラス板10を吸着テーブル30の上に載置する。次に、吸引孔の吸引によって、ガラス板10を吸着テーブル30の上に固定する。
【0040】
ガラス板搬送装置20が、吸着テーブル30の上に載置されているガラス板10を取り出す過程について説明する。最初に、吸引孔の吸引を解除し、支持ピン32を上昇させて、ガラス板10を支持ピン32のみによって支持する。次に、ロボットハンド22を水平方向に移動させて、吸着テーブル30の支持ピン32の間に挿入する。次に、ロボットハンド22によるガラス板10の吸着を開始し、ロボットハンド22を上昇させて、ガラス板10を持ち上げる。次に、ロボットハンド22によって、ガラス板10を後工程に搬送する。
【0041】
(2−3)面取り砥石
一対の面取り砥石40,42は、それぞれ、ガラス板10の端面11,12を面取り加工するための研削ホイールである。面取り砥石40,42は、それぞれ、砥石移動機構70,72に取り付けられている。
【0042】
面取り砥石40,42は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に沿って移動可能である。面取り砥石40,42のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の位置は、それぞれ、砥石移動機構70,72によって調節される。
【0043】
面取り砥石40,42は、ダイヤモンドホイールである。ダイヤモンドホイールは、例えば、ダイヤモンド砥粒を、鉄および銅等を含む金属系の結合剤で固めた研削ホイールである。ダイヤモンド砥粒は、例えば、粒度が♯300〜600であるダイヤモンド砥粒である。面取り砥石40,42の側面には、
図3に示されるように、周方向に加工溝が形成されている。面取り砥石40,42は、Z軸に平行な回転軸の周りを回転する。回転している面取り砥石40,42の加工溝の内側の面にガラス板10の端部が接触することで、端面11,12が面取り加工される。これにより、切断工程S3で面取り加工される端面11,12は、ラウンド形状となるように形状加工される。
【0044】
(2−4)砥石移動機構
一対の砥石移動機構70,72は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に沿って移動可能なユニットである。砥石移動機構70は、面取り砥石40が取り付けられているユニットである。砥石移動機構70は、ガラス板10に対する面取り砥石40のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対的な位置を調節することができる。砥石移動機構72は、面取り砥石42が取り付けられているユニットである。砥石移動機構72は、ガラス板10に対する面取り砥石42のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対的な位置を調節することができる。
【0045】
(2−5)研削液供給装置
研削液供給装置80は、
図2に示されるように、ガラス板10の側方、かつ、面取り砥石40,42の近傍に設置され、ガラス板10の端面11,12に向かって、研削液を吹きかける装置である。研削液は、例えば、水、界面活性剤が添加された水、その他の薬剤が添加された水である。なお、洗浄工程S6の後においてガラス板10に残留するおそれがある液体、および、端面加工装置100の劣化を促進させるおそれがある液体は、研削液として用いられない。
図2および
図3には示されていないが、ガラス板10の上方には、ガラス板10の表面に研削液が付着することを防止するためのカバーが設置されてもよい。また、
図2および
図3には示されていないが、面取り砥石40,42を覆う砥石カバーが設置されてもよい。砥石カバーを設置することで、研削液の回収が可能になる。
【0046】
水に界面活性剤が添加された研削液は、表面張力が小さいので、ガラス板10の端面11,12と、面取り砥石40,42との接触部である研削点に入り込みやすい。そのため、研削液は、ガラス板10の研削により発生したガラス微粒子等の異物を洗い流して除去する効果を有する。また、研削液は、摩擦により高温になりやすい研削点を冷却する効果を有する。
【0047】
(2−6)水供給装置
水供給装置90は、
図3に示されるように、ガラス板10の上方に設置され、ガラス板10の端面11,12に向かって、水を吹きかける装置である。ガラス板10の端面11,12が面取り砥石40,42によって加工されることで、ガラスの微小片であるカレットが端面11,12から飛散する。水供給装置90は、ガラス板10の表面の内側から端面11,12に向かって水を噴出して、水の膜を形成する。これにより、水供給装置90は、ガラス板10の表面の内側に向かって飛散するカレットの量を低減することができる。従って、水供給装置90は、ガラス板10の表面に付着するカレットの量を抑えることができる。
【0048】
(2−7)加工制御部
加工制御部は、端面加工装置100の動作を制御するコンピュータである。加工制御部は、ガラス板搬送装置20、吸着テーブル30、一対の面取り砥石40,42、一対の砥石移動機構70,72、研削液供給装置80および水供給装置90を制御する。
【0049】
加工制御部は、ガラス板搬送装置20のロボットハンド22の位置および姿勢を制御する。加工制御部は、吸着テーブル30に載置されたガラス板10の吸着を開始および終了する。加工制御部は、面取り砥石40,42の回転速度を制御する。加工制御部は、砥石移動機構70,72のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の位置を制御する。加工制御部は、研削液供給装置80がガラス板10に吹きかける研削液の量を制御する。加工制御部は、水供給装置90がガラス板10に吹きかける水の量を制御する。
【0050】
また、加工制御部は、端面測定装置110に接続されている。加工制御部は、端面測定装置110からデータを受信し、端面測定装置110にデータを送信することができる。例えば、加工制御部は、端面測定装置110によって測定されたガラス板10の端面11,12の形状に関するデータを受信することができる。
【0051】
(3)端面測定装置の構成
端面測定装置110は、端面加工装置100によって面取り加工された、ガラス板10の端面11〜14の形状を測定する。以下、ガラス板10の長辺に平行な端面11,12の形状を端面測定装置110が測定する工程について説明する。しかし、以下の説明は、ガラス板10の短辺に平行な端面13,14の形状を端面測定装置110が測定する工程にも適用することができる。
【0052】
図5は、端面測定装置110の平面図である。端面測定装置110は、主として、載置テーブル120と、一対の位置センサ130,132と、一対のセンサ移動機構140,142と、測定制御部(図示せず)とを備える。
【0053】
(3−1)載置テーブル
載置テーブル120は、端面加工装置100によって端面が面取り加工されたガラス板10が載せられるテーブルである。端面が面取り加工されたガラス板10は、ガラス板搬送装置20によって持ち上げられ、端面測定装置110に搬送され、載置テーブル120に載せられる。
【0054】
(3−2)位置センサ
一対の位置センサ130,132は、それぞれ、載置テーブル120に載せられているガラス板10の端面11,12の形状を測定する接触型センサである。位置センサ130,132は、それぞれ、端面11,12と接触して端面11,12との接触点の位置を、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の座標として取得することができる先端部130a,132aを有する。
【0055】
(3−3)センサ移動機構
一対のセンサ移動機構140,142は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に沿って移動可能なユニットである。センサ移動機構140は、位置センサ130が取り付けられているユニットである。センサ移動機構140は、ガラス板10に対する位置センサ130のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対的な位置を調節することができる。センサ移動機構142は、位置センサ132が取り付けられているユニットである。センサ移動機構142は、ガラス板10に対する位置センサ132のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の相対的な位置を調節することができる。
【0056】
(3−4)測定制御部
測定制御部は、端面測定装置110の動作を制御するコンピュータである。測定制御部は、一対の位置センサ130,132と、一対のセンサ移動機構140,142とを制御する。測定制御部は、位置センサ130,132の位置を制御することができる。測定制御部は、センサ移動機構140,142の位置を制御することができる。
【0057】
ガラス板10の端面11,12の形状を表すデータは、端面11,12に予め設定された複数の測定ポイントのX軸方向およびY軸方向の座標から構成される。
図6は、Z軸方向に沿って見た場合における、端面11に設定された6個の測定ポイントP11〜P16、および、端面12に設定された6個の測定ポイントP21〜P26を示している。
図7は、
図6に示される矢印VIIの方向から見た、Y軸およびZ軸を含む平面で切断したガラス板10の断面図である。
図7に示されるように、測定ポイントP16、P26は、端面11,12のZ軸方向の中心の高さ位置にある。他の測定ポイントP11〜P15,P21〜P25も、端面11,12のZ軸方向の中心の高さ位置にある。以下、端面11の測定ポイントP11〜P16のX軸方向の位置は、それぞれ、端面12の測定ポイントP21〜P26のX軸方向の位置と同じであるとする。端面11の形状を表すデータは、測定ポイントP11〜P16のX軸方向およびY軸方向の座標から構成される。端面12の形状を表すデータは、測定ポイントP21〜P26のX軸方向およびY軸方向の座標から構成される。なお、端面11,12に設定される測定ポイントの数は、ガラス板10の寸法に応じて適宜に設定されてもよい。測定ポイントは、所定の間隔で設定されてもよい。例えば、測定ポイントは、1mm〜50mmの間隔で設定されてもよく、好ましくは1mm〜10mmの間隔で設定されてもよい。例えば、ガラス板10の端面11,12の寸法が2500mmの場合、測定ポイントは、10mmの間隔で等間隔に設定されてもよい。
【0058】
次に、位置センサ130を用いて端面11の測定ポイントP11〜P16の位置を測定制御部が測定する工程について説明する。以下の説明は、位置センサ132を用いて端面12の測定ポイントP21〜P26の位置を測定制御部が測定する工程にも適応可能である。
【0059】
測定制御部は、X軸の正の方向に沿って、測定ポイントP11〜P16の位置を順に測定する。最初に、測定制御部は、位置センサ130のX軸方向の座標を、測定ポイントP11のX軸方向の座標に調節する。次に、測定制御部は、位置センサ130のZ軸方向の座標を、端面11のZ軸方向の中心の高さ位置に調節する。次に、測定制御部は、位置センサ130のY軸方向の座標を、位置センサ130の先端部130aが端面11と接触する位置に調節する。次に、測定制御部は、先端部130aと端面11との接触点のY軸方向の位置を測定する。測定ポイントP11の位置は、この接触点のX軸方向およびY軸方向の座標から構成される。以上の工程により、測定制御部は、位置センサ130を用いて測定ポイントP11の位置を測定する。
【0060】
次に、測定制御部は、位置センサ130のX軸方向の座標を、測定ポイントP12のX軸方向の座標に調節する。上述の工程により、測定制御部は、位置センサ130を用いて測定ポイントP12の位置を測定する。同様に、測定制御部は、位置センサ130を用いて測定ポイントP13〜P16の位置を順に測定する。また、測定制御部は、位置センサ132を用いて測定ポイントP21〜P26の位置を順に測定する。
【0061】
測定制御部は、端面加工装置100の加工制御部からの要求に応答して、位置センサ130,132が測定した測定ポイントP11〜P16,P21〜P26の位置に関するデータを加工制御部に送信する。後述するように、加工制御部は、受信したデータを利用して、端面11,12の面取り加工時において面取り砥石40,42の位置を制御する。
【0062】
(4)面取り加工の工程
図8は、ガラス板10の端面11,12が面取り加工される工程のフローチャートである。次に、
図8を参照しながら、端面加工装置100が端面11を面取り加工する工程について説明する。以下の説明は、端面加工装置100が端面12を面取り加工する工程にも適用可能である。
【0063】
ステップS11では、端面加工装置100の加工制御部は、ガラス板搬送装置20を制御して、粗面化工程S4において表面処理されたガラス板10を搬送して、吸着テーブル30に載置する。次に、加工制御部は、位置調整機構(図示せず)によって、吸着テーブル30に載置されたガラス板10の位置および向きを調整する。次に、加工制御部は、ガラス板10を吸着テーブル30に固定する。固定されたガラス板10において、ガラス板10の長辺に平行な端面11,12は、X軸に平行であり、ガラス板10の短辺に平行な端面13,14は、Y軸に平行である。次に、ステップS12が実行される。
【0064】
ステップS12では、加工制御部は、ステップS16において、後述する調整線が算出されているか否かを判定する。調整線が算出されていないと判定された場合、ステップS13が実行される。調整線が算出されていると判定された場合、ステップS17が実行される。
【0065】
ステップS13では、加工制御部は、面取り砥石40を端面11に接触させ、端面11の形状に沿って面取り砥石40を移動させて、端面11の面取り加工を行う。ステップS11において端面11がX軸と平行になるようにガラス板10の向きが調整されているので、加工制御部は、面取り砥石40をX軸に沿って移動させて、端面11の面取り加工を行うことができる。ステップS13は、端面11から所定量のガラスを除去することで、端面11の形状をラウンド形状に定量加工する工程である。次に、ステップS14が実行される。
【0066】
なお、ステップS13では、面取り加工によって端面11を均一に研削するために、加工制御部は、面取り砥石40をX軸に沿って正確に移動させることが好ましい。しかし、面取り砥石40を移動させるための砥石移動機構70の機械精度に起因して、端面11の面取り加工時において面取り砥石40を正確にX軸に沿って移動させることは困難である。そのため、端面11の面取り加工時において、面取り砥石40は、Y軸方向にわずかに移動する。従って、実際には、ステップS13では、加工制御部は、端面11を均一に研削することができない。そこで、ステップS14〜S16では、端面11が均一に研削されるように、端面11の面取り加工時において面取り砥石40の移動の軌跡を微調整するための準備が行われる。
【0067】
ステップS14では、加工制御部は、ガラス板搬送装置20を制御して、吸着テーブル30に載置されたガラス板10を、端面測定装置110に搬送し、載置テーブル120に載せる。次に、端面測定装置110の測定制御部は、ガラス板10の面取り加工された端面11の形状を測定する。具体的には、測定制御部は、端面11に設定された複数の測定ポイントのX軸方向およびY軸方向の座標を測定する。測定ポイントは、
図6および
図7に示される測定ポイントP11〜P16である。次に、測定制御部は、測定された測定ポイントP11〜P16のX軸方向およびY軸方向の座標を、端面加工装置100の加工制御部に送信する。次に、ステップS15が実行される。
【0068】
ステップS15では、加工制御部は、測定制御部から受信した測定ポイントP11〜P16のX軸方向およびY軸方向の座標に基づいて、加工線を算出する。
図9は、端面11の測定ポイントP11〜P16の測定結果の一例である。
図9において、横軸は、測定ポイントP11〜P16のX軸方向の座標を表し、縦軸は、測定ポイントP11〜P16のY軸方向の座標を表す。測定ポイントP11〜P16は、X軸方向において、ガラス板10の端面11にほぼ均等に設定されている。
図9において、X軸方向に隣り合う測定ポイントが実線で連結されている。加工線は、測定ポイントP11〜P16を順に連結した線分である。加工線は、面取り加工された端面11のおおよその形状を表している。次に、ステップS16が実行される。
【0069】
ステップS16では、加工制御部は、面取り加工される前の端面11の形状、および、ステップS15で算出された加工線の形状に基づいて、調整線を算出する。調整線は、面取り加工される前の端面11の形状に沿って端面11を面取り加工するために用いられる。
図9には、調整線の一例が点線で示されている。調整線は、加工線の測定ポイントP11〜P16にそれぞれ対応する調整ポイントP31〜P36が設定されている。調整ポイントP31〜P36のX軸方向の座標は、測定ポイントP11〜P16のX軸方向の座標と同じである。
【0070】
加工線と調整線との関係について説明する。
図9において、実線で表される加工線は、面取り加工された端面11のおおよその形状を表している。また、
図9において、鎖線で表される基準線は、面取り加工された端面11の理想的な形状を表している。本実施形態において、面取り加工される前の端面11は、X軸に平行である。理想的には端面11はX軸方向に均一に面取り加工されるので、基準線は、X軸に平行である。そして、面取り加工された端面11がX軸に平行になるように、調整線は、X軸に平行な基準線に対して加工線を反転させた線分に設定されている。なお、基準線のY軸方向の座標は、端面11の加工代に応じて適宜に設定されてもよい。測定ポイントP11〜P16のY軸方向の座標が大きいほど、端面11の加工代が大きいため、調整ポイントP31〜P36のY軸方向の座標は小さく設定される。次に、ステップS11が実行される。
【0071】
ステップS17において、加工制御部は、面取り砥石40の位置を微調整しながら、ステップS16で算出された調整線に沿うように面取り砥石40を移動させて、ガラス板10の端面11を面取り加工する。例えば、面取り砥石40がX軸方向に沿って調整ポイントP31からP32まで移動している間、Y軸方向において面取り砥石40の座標が調整ポイントP31の座標からP32の座標まで移動するように、面取り砥石40の位置が制御される。
図9において、測定ポイントP11のY軸方向の座標は約−0.02mmであるので、測定ポイントP11における研削量を理想的な値(Y軸方向の座標が0mmの状態)にするため、面取り加工時において、面取り砥石40のY軸方向の座標が約+0.02mmになるように、面取り砥石40を移動させる。これにより、面取り加工後の端面11の測定ポイントP11のY軸方向の座標は約0mmになる。すなわち、調整ポイントP31は、Y軸方向における面取り砥石40の理想的な座標を表す。測定ポイントP12〜P16に関しても、同様に、面取り砥石40のY軸方向の座標が制御される。これにより、面取り加工された端面11は、面取り加工される前の端面11にほぼ平行となる。ステップS17は、ステップS13と同様に、端面11から所定量のガラスを除去することで、端面11の形状をラウンド形状に定量加工する工程である。
【0072】
以上の工程は、製造ロットの全てのガラス板10が面取り加工されるまで繰り返される。なお、ステップS13〜S16は、通常、製造ロットの最初のガラス板10のみに対して行われる。
【0073】
なお、ステップS11〜S17の端面11,12の面取り加工の後に、端面11,12の研磨加工が行われる。研磨加工は、弾性ホイールを一定圧力で面取り加工された端面11,12に押し当てることで、端面11,12の表面粗さを低減する工程である。研磨加工では、面取り加工で形成された端面11,12のラウンド形状は維持される。弾性ホイールは、ポリウレタン等の弾性部材で成形される。
【0074】
(5)特徴
端面加工装置100は、最初に、調整用のガラス板10の端面11,12を面取り砥石40,42で面取り加工する。調整用のガラス板10は、調整線の算出のために面取り加工されるガラス板10であり、通常は、製造ロットの最初のガラス板10である。調整用のガラス板10の面取り加工工程において、面取り砥石40,42は、それぞれ、調整用のガラス板10の端面11,12の形状に沿って移動するように、すなわち、X軸に沿って移動するように、制御される。しかし、面取り砥石40,42を移動させるための砥石移動機構70,72の機械精度に起因して、面取り砥石40,42をX軸に沿って正確に移動させることは困難である。そのため、砥石移動機構70,72が面取り砥石40,42をX軸に沿って移動させている間、面取り砥石40,42は、Y軸方向にわずかに移動することがある。そのため、Z軸方向に沿って見た場合における、面取り砥石40,42の移動の軌跡である加工線は、X軸に平行ではない。すなわち、面取り加工された端面11,12の形状は、それぞれ、面取り加工される前の端面11,12の形状と完全に一致することはなく、両者の間には差異が存在する。そのため、調整用のガラス板10では、面取り加工された端面11,12は、端面11,12が延びる方向に沿って均一に研削されない。すなわち、調整用のガラス板10では、面取り加工された端面11,12は、研削量が多い部分と、研削量が少ない部分とを有するので、Y軸方向に微小な凹凸が形成されている。微小な凹凸は、端面11,12のうねりである。従って、調整用のガラス板10の端面11の直進性は、面取り加工によって低下する。
【0075】
本実施形態では、端面測定装置110は、調整用のガラス板10の面取り加工された端面11,12の形状を測定する。端面加工装置100は、測定された端面11,12の形状に基づいて、加工線を算出する。加工線は、調整用のガラス板10の端面11,12の面取り加工時に、面取り砥石40,42が実際に移動した軌跡を表す。また、加工線は、面取り加工された端面11,12の実際の形状を表す。例えば、
図9において、実線で示される加工線の凸部は、端面11の凸部に相当し、加工線の凹部は、端面11の凹部に相当する。端面11の凸部は、面取り砥石40による研削量が周囲よりも少ない部分である。端面11の凹部は、面取り砥石40による研削量が周囲よりも多い部分である。そのため、加工線の凸部において、面取り砥石40の研削量を増加させ、加工線の凹部において、面取り砥石40の研削量を減少させることにより、面取り加工された端面11の研削量を均一にすることができる。
図9において、点線で示される調整線は、端面11の研削量を均一にするための面取り砥石40の移動の軌跡を表している。
【0076】
図10は、調整線に沿って面取り砥石40を移動させながら面取り加工された端面11の測定ポイントP11〜P16のX軸方向およびY軸方向の座標の測定結果の一例である。
図9および
図10は、同じガラス板10の同じ端面11の測定結果である。
図9と
図10とを比較しても分かるように、端面11は、X軸方向に沿ってほぼ均一に研削されている。また、
図10に示されるように、面取り加工された端面11の測定ポイントP11〜P16のY軸方向の座標は、理想的な座標である0mmを基準として、−10μm〜10μm(−0.01mm〜0.01mm)の範囲内にある。すなわち、本実施形態の端面11の面取り加工は、±10μmの加工精度を達成することができる。
【0077】
以上より、端面加工装置100は、調整用のガラス板10の面取り加工された端面11,12の形状を予め測定して加工線を算出し、算出された加工線に基づいて調整線を算出し、算出された調整線に沿って面取り砥石40,42を移動させることで、端面11,12を均一に研削する面取り加工を行うことができる。
【0078】
また、ガラス板10の端面11,12から水平クラックおよび脆性破壊層を除去するためには、端面11,12の面取り加工時において、端面11,12に直交するY軸方向に沿って±10μmの加工精度、より好ましくは5μmの加工精度が必要とされる。そのため、ガラス板10の端面11,12の加工精度を向上させて、面取り加工されたガラス板10の端面11,12のX軸方向の直進性を向上させることが重要である。本実施形態では、端面加工装置100は、端面11,12を均一に研削する面取り加工を行うことができるので、ガラス板10の端面11,12の加工精度を向上させることができる。
【0079】
また、端面加工装置100は、ガラス板10の端面11,12の研削量をX軸方向に亘って均一かつ低く抑えることができる。これにより、端面加工装置100は、端面11,12の研削量を低減することができ、端面11,12の研削時に発生するカレットおよびガラスのパーティクルの量を低減できます。また、面取り砥石40,42による端面11,12の切り込み量も低く抑えることができ、発生するカレットおよびパーティクルのサイズも小さくできます。この結果、ガラス板10の表面に付着するカレットおよびパーティクルの量を低減することができます。
【0080】
また、端面加工装置100を用いて製造されたガラス板10は、高精細ディスプレイ用パネルの製造に用いられるガラス基板に好適に用いることができます。線幅やピッチが狭い配線パターンが表面に形成される高精細・高解像度ディスプレイ用ガラス基板、例えば、酸化物半導体や低温ポリシリコン半導体素子が形成されるガラス基板の品質要求は、従来のガラス基板に比べて高い。従来のガラス基板の製造方法では、この高い品質要求に十分に応えることができなかった。しかし、本実施形態の端面加工装置100は、ガラス基板に形成される配線電極の線幅やピッチが狭く、小さな欠陥でも許されない高精細・高解像度ディスプレイ用のガラス基板の製造において、カレットおよびパーティクルがガラス基板表面に付着する問題の発生を抑制することができる。
【0081】
また、ガラス基板表面へのカレットおよびパーティクルの付着量を低減することで、ガラスとの密着性が低いCu系の電極の配線の歩留まりを上げることができる。すなわち、本実施形態の端面加工装置100を用いることで、配線電極の線幅やピッチが狭くても、ガラスとの密着性が低い電極材料が使用可能となる。例えば、Al系電極やCr、Mo系電極等と比べてガラスへの密着性は低いが、低抵抗であるTi−Cu合金やMo−Cu合金等のCu系電極を使用することができる。このように電極材料の選択幅が広がることで、テレビ等に用いられる大型ディスプレイパネルの製造工程におけるRC遅延(配線遅延)の問題を解消することができる。また、今後さらに高精細・高解像度化が進むと予想される携帯端末向けの小型ディスプレイパネルの製造工程におけるRC遅延の問題も解消することができる。
【0082】
また、上記の説明では、デバイスとして半導体素子が設けられているTFTパネル等に用いられるガラス基板の問題の対策について説明したが、本実施形態の端面加工装置100は、デバイスとしてカラーフィルタ(CF)等が設けられるディスプレイ用ガラス基板の問題の対策にも有効である。例えば、CFパネルの場合、近年、ブラックマトリックス(BM)の細線化が進んでいる。しかし、本実施形態の端面加工装置100を用いることで、BM線幅が20μm以下、例えば、5μm〜10μmに細線化された液晶ディスプレイ用CFパネルの製造工程において、表面に付着した異物に起因するBM剥がれの問題の発生を抑制することができる。
【0083】
(6)変形例
以上、本発明に係るガラス板製造方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および変更が施されてもよい。
【0084】
(6−1)変形例A
実施形態では、
図8に示されるステップS14において、端面測定装置110の測定制御部は、面取り加工されたガラス板10の端面11,12に設定された複数の測定ポイントP11〜P16,P21〜P26のX軸方向およびY軸方向の座標を測定して、端面11,12の形状を測定する。しかし、測定制御部は、面取り加工されたガラス板10の端面11,12に設定された複数の測定ポイントP11〜P16,P21〜P26のY軸方向の座標を測定する代わりに、Z軸方向の座標を測定して、端面11,12の形状を測定してもよい。
【0085】
本変形例は、例えば、吸着テーブル30に固定されたガラス板10の端面11のZ軸方向の座標が、X軸方向に沿って一定でない場合において、端面11を均一に研削する面取り加工に関する。以下の説明は、端面12の面取り加工にも適用可能である。
【0086】
吸着テーブル30の機械精度に起因して、吸着テーブル30に固定されたガラス板10の主表面は、完全に平坦ではない場合がある。これにより、ガラス板10の端面11をY軸方向に沿って見た場合に、端面11は、Z軸方向に凹凸が形成されている。すなわち、端面11のZ軸方向の座標は、X軸方向に沿って一定でない。
【0087】
このような端面11を面取り砥石40で面取り加工すると、面取り加工された端面11の面幅差Dが、X軸方向に沿って一定ではなくなる場合がある。
図11および
図12は、端面11の面幅差Dを説明するための図である。
図11は、面取り加工されたガラス板10をX軸に沿って見た側面図である。
図12は、面取り砥石40によって研削されるガラス板10のYZ平面の断面図である。
図12において、点線でハッチングされている領域は、ガラス板10の一部であって、面取り砥石40によって研削されて除去される部分である。面幅差Dは、第1面取り幅W1から第2面取り幅W2を減じた値である。第1面取り幅W1は、ガラス板10の下側の第1主表面10aから除去された領域の幅である。第2面取り幅W2は、ガラス板10の上側の第2主表面10bから除去された領域の幅である。
図12において、ガラス板10の端面11は、回転する面取り砥石40の加工溝40aの内側の面と接触することで面取り加工される。
図12に示されるように、ガラス板10のZ軸方向の位置によっては、第1面取り幅W1は、第2面取り幅W2と異なる値になる。
【0088】
面幅差Dがゼロである場合、ガラス板10の第1主表面10aおよび第2主表面10bは、均等に研削されている。面幅差Dが正の値である場合、面幅差Dが大きいほど、第1主表面10aは第2主表面10bより研削される。面幅差Dが負の値である場合、面幅差Dが小さいほど、第2主表面10bは第1主表面10aより研削される。そのため、第1主表面10aおよび第2主表面10bを均一に研削する観点からは、面幅差Dの絶対値は、小さいほど好ましく、ゼロであることがより好ましい。第1面取り幅W1と第2面取り幅W2とが異なる場合、面取り加工された端面11,12を研磨する後の工程において、端面11,12全体が均一に研磨されず、ガラス板10の強度が低下するおそれがある。そのため、面取り砥石40を用いてガラス板10を面取りする工程では、面幅差Dの絶対値をゼロに近付けて、ガラス板10の端面11,12全体を均一に研削加工する必要がある。
【0089】
面取り砥石40のZ軸方向の座標と、ガラス板10の端面11のZ軸方向の座標とが適切である場合、面取り加工された端面11の面幅差Dは、ゼロになる。具体的には、面取り砥石40の加工溝のZ軸方向の中心が、端面11のZ軸方向の中心と同じ位置にある場合、面取り加工された端面11の面幅差Dは、ゼロになる。しかし、面取り砥石40に対して端面11のZ軸方向の座標が小さすぎる場合、端面11の下部は上部よりも面取りされるので、第1面取り幅W1は第2面取り幅W2より大きくなり、面幅差Dはゼロより大きくなる。逆に、面取り砥石40に対して端面11のZ軸方向の座標が大きすぎる場合、端面11の上部は下部よりも面取りされるので、第1面取り幅W1は第2面取り幅W2より小さくなり、面幅差Dはゼロより小さくなる。
【0090】
本変形例において、端面測定装置110の測定制御部は、面取り加工されたガラス板10の端面11の面幅差Dを複数の測定ポイントにおいて測定して、面幅差Dの測定データに基づいて、各測定ポイントにおける端面11のZ軸方向の座標を算出することができる。すなわち、測定制御部は、複数の測定ポイントにおける面幅差Dに基づいて、Y軸方向に沿って見た端面11の形状を測定できる。
図13は、面取り加工された端面11の第1面取り幅W1、第2面取り幅W2および面幅差Dの測定結果の一例である。
図13において、横軸は、実施形態と同じ測定ポイントP11〜P16のX軸方向の座標を表し、縦軸は、第1面取り幅W1、第2面取り幅W2および面幅差Dの絶対値を表す。第1面取り幅W1は、菱形のポイントで連結された実線で表される。第2面取り幅W2は、四角形のポイントで連結された点線で表される。面幅差Dの絶対値は、円のポイントで連結された鎖線で表される。第1面取り幅W1および第2面取り幅W2は、左側の縦軸の目盛りの値により示される。面幅差Dの絶対値は、右側の縦軸の目盛りの値により示される。
【0091】
測定制御部は、面幅差Dがゼロより大きい測定ポイントでは、面取り砥石40のZ軸方向の座標を小さくし、面幅差Dがゼロより小さい測定ポイントでは、面取り砥石40のZ軸方向の座標を大きくすることで、端面11の形状に合わせて面取り砥石40のZ軸方向の座標を適切に調整することができる。具体的には、実施形態と同様に、各測定ポイントP11〜P16の面幅差Dの測定データに基づいて加工線を算出し、算出された加工線に基づいて調整線を算出し、算出された調整線に沿って面取り砥石40,42を移動させることで、端面11,12を均一に研削する面取り加工を行うことができる。これにより、測定制御部は、面取り加工された端面11の面幅差Dの絶対値を小さくすることができる。
【0092】
図14は、算出された調整線に沿って面取り砥石40のZ軸方向の位置を調整しながら面取り加工した端面11の第1面取り幅W1、第2面取り幅W2および面幅差Dの絶対値の測定結果の一例である。
図13および
図14は、同じガラス板10の同じ端面11の測定結果である。
図13および
図14では、同じ凡例が使用されている。
図13と
図14とを比較しても分かるように、調整線に沿って面取り砥石40のZ軸方向の位置を調整しながら面取り加工することで、面取り加工された端面11の面幅差Dの絶対値は低減される。そのため、端面加工装置100は、ガラス板10の端面11の加工精度を向上させて、端面11を均一に研削する面取り加工を行うことができる。また、ガラス板10の面幅差Dの絶対値が小さいほど、ガラス板10の曲げ強度は大きい。そのため、端面加工装置100は、ガラス板10の曲げ強度の低下を抑制する面取り加工を行うことができる。なお、面取り加工されたガラス板10の面幅差Dの絶対値は、150μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
【0093】
なお、ガラス板10の面幅差Dの絶対値を小さくする面取り加工の後に、端面11,12の研磨加工が行われる。研磨加工は、弾性ホイールを一定圧力で面取り加工された端面11,12に押し当てることで、端面11,12の表面粗さを低減する工程である。研磨加工では、面取り加工で形成された端面11,12のラウンド形状は維持される。弾性ホイールは、ポリウレタン等の弾性部材で成形される。
【0094】
また、FPDの製造工程では、ガラス板10の面幅差Dの絶対値が大きいほど、ガラス板10の主表面の検出精度が低下する。その理由は、ガラス板10の面幅差Dがゼロではない場合、ガラス板10の一方の主表面の領域と他方の主表面の領域とが互いに異なるため、ガラス板10の主表面に垂直な方向に沿ってガラス板10を見た場合において、異なる領域を有する主表面が2つ存在するからである。ガラス板10の主表面の検出精度が低下すると、FPDの製造工程における生産性が低下するおそれがある。そのため、本変形例の端面加工装置100は、ガラス板10の面幅差Dの絶対値を小さくし、好ましくはゼロにして、FPDの製造工程におけるガラス板10の主表面の検出精度の低下を抑えることができる。
【0095】
(6−2)変形例B
実施形態では、端面測定装置110の測定制御部は、面取り加工されたガラス板10の端面11に設定された複数の測定ポイントのY軸方向の座標を測定する。また、変形例Aでは、測定制御部は、面取り加工されたガラス板10の端面11に設定された複数の測定ポイントのZ軸方向の座標を、面幅差の測定結果に基づいて算出する。
【0096】
しかし、測定制御部は、面取り加工されたガラス板10の端面11に設定された複数の測定ポイントのY軸方向の座標を測定し、かつ、Z軸方向の座標を算出して、端面11の形状を測定してもよい。この場合、端面加工装置100の加工制御部は、端面11の形状の測定データから加工線および調整線を算出し、調整線に沿って面取り砥石40のY軸方向およびZ軸方向の座標を調整しながら、端面11を面取り加工することができる。本変形例では、端面加工装置100は、ガラス板10の端面11の加工精度をより向上させることができる。
【0097】
(6−3)変形例C
実施形態では、端面加工装置100の加工制御部は、ステップS16において、面取り加工される前の端面11の形状、および、ステップS15で算出された加工線の形状に基づいて、調整線を算出する。また、ガラス板10が吸着テーブル30に固定される前に、ガラス板10の位置および向きが調整され、面取り加工される前の端面11の形状は、常にX軸に平行である。そのため、実施形態では、加工制御部は、面取り加工される前の端面11の形状を測定することなく、ステップS15で算出された加工線の形状のみに基づいて、調整線を算出することができる。
【0098】
しかし、加工制御部は、ステップS16において調整線を算出する前に、面取り加工される前の端面11の形状をさらに測定してもよい。この場合、加工制御部は、ステップS16において、面取り加工される前の端面11の形状、および、ステップS15で算出された加工線の形状に基づいて、調整線を算出することができる。そのため、本変形例では、面取り加工される前のガラス板10の位置および向きが調整されていない場合、および、面取り加工される前のガラス板10が切断工程S3において精度良く切断されていない場合等においても、加工制御部は、調整線を適切に算出することができる。
【0099】
(6−4)変形例D
実施形態において、端面加工装置100は、ガラス板10の端面11,12を研削するための面取り砥石40,42を備える。これらの面取り砥石40,42は、ダイヤモンドホイールであるが、樹脂結合ホイールであってもよい。樹脂結合ホイールは、例えば、通常用いられる砥粒を、柔軟性および弾性を有する樹脂系の結合剤で固めた研削ホイールである。砥粒の粒度は、例えば、JIS R6001−1987で規定される♯300〜♯500程度である。樹脂結合ホイールを用いる場合においても、端面加工装置100は、ガラス板10の端面11,12を均一に研削して、ガラス板10の水平クラックおよび脆性破壊層を除去することができる。
【0100】
また、端面加工装置100は、必要に応じて、ダイヤモンドホイールである面取り砥石40,42を用いてガラス板10の端面11,12を面取り加工した後に、樹脂結合ホイールである面取り砥石を用いて端面11,12をさらに研削してもよい。
【0101】
(6−5)変形例E
実施形態において、端面加工装置100は、ガラス板10の端面11,12を研削するための一対の面取り砥石40,42を備える。これらの面取り砥石40,42は、ダイヤモンドホイールである。しかし、端面加工装置100は、変形例Dの樹脂結合ホイールである一対の面取り砥石をさらに備えてもよい。この場合、ガラス板10の端面11,12は、ダイヤモンドホイールである面取り砥石40,42によって面取り加工された後、樹脂結合ホイールである面取り砥石によってさらに面取り加工される。
【0102】
また、本変形例において、ガラス板10の端面11,12は、ダイヤモンドホイールおよび樹脂結合ホイールによって面取り加工された後、一対の研磨ホイールによってさらに研磨されてもよい。研磨ホイールによって端面11,12を研磨することにより、端面11,12の表面粗さを低減することができる。なお、研磨ホイールによって研磨された端面11,12の算術平均粗さRaは、100nm以下であることが好ましく、80nmであることがより好ましい。
【0103】
本変形例では、一対のダイヤモンドホイール、一対の樹脂結合ホイールおよび一対の研磨ホイールのそれぞれによる端面加工工程において、実施形態と同様に、加工線に基づいて調整線を算出し、算出された調整線に沿ってホイールを移動させる制御が行われる。これにより、それぞれの端面加工工程において、ガラス板10の端面11,12を均一に研削または研磨することができる。その結果、端面加工装置100は、ガラス板10の端面11,12の算術平均粗さRaを、端面11,12の全長に亘って、100nm以下、好ましくは80nm以下にする端面加工を行うことができる。
【0104】
(6−6)変形例F
実施形態において、端面加工装置100は、調整用のガラス板10の面取り加工された端面11,12の形状を予め測定して加工線を算出し、算出された加工線に基づいて調整線を算出し、算出された調整線に沿って面取り砥石40,42を移動させることで、端面11,12を均一に研削する面取り加工を行うことができる。しかし、端面加工装置100は、端面11,12の面取り加工の後に行われる、研磨ホイールを用いる研磨加工においても、端面11,12の形状を予め測定して加工線を算出し、算出された加工線に基づいて調整線を算出し、算出された調整線に沿って研磨ホイールを移動させることで、端面11,12を均一に研磨する加工を行ってもよい。これにより、研磨加工において、研磨ホイールの押し付け圧力を変化させることなく、端面11,12の全体を均一に研磨加工することができる。
【0105】
本変形例では、端面11,12を均一に研磨加工することで、例えば、一辺の寸法が2200mmを超える大型のガラス板10であっても、端面11,12に沿って均一な研磨加工が可能となる。これにより、ガラス板10の端面11,12の表面粗さRaを低下させることができ、端面11,12から発生するカレットやパーティクルの量を低減することができる。そのため、本変形例は、高精細・高解像度ディスプレイパネル用のガラス板の製造に特に好適に用いることができる。
【0106】
(6−7)変形例G
実施形態において、端面加工装置100は、調整用のガラス板10の面取り加工された端面11,12の形状を予め測定して加工線を算出し、算出された加工線に基づいて調整線を算出する。端面加工装置100は、一度算出された調整線を繰り返し使用して、複数のガラス板10を加工することができる。
【0107】
しかし、端面加工装置100で端面加工されたガラス板の搬送時にガラス板の形状を測定し、測定データを端面加工装置100にフィードバックすることで、端面加工装置100は、面取り加工された端面11,12の形状を予め測定して加工線を算出してもよい。これにより、端面加工装置100は、端面加工装置100の機械精度や加工精度以外の要因による端面11,12のうねり、および、ガラス板10を繰り返し加工することで発生する端面加工装置100の機械精度や加工精度の経時的な変化にも対応することができる。