(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抑制工程は、前記第1主表面の裏側の第2主表面と、前記第2主表面に対向するように配置される第2ガイド部材との間の第2隙間において、第2気体を前記第2主表面に沿って流すことにより、前記第2ガイド部材に向かう力を前記ガラス板に与える第2気体供給工程をさらに有する、
請求項1に記載のガラス板製造方法。
前記第1気体供給工程において、前記第1気体は、前記第1ガイド部材に向かって噴出されることにより、前記第1ガイド部材の表面に沿って流れて前記第1隙間に導かれ、
前記第2気体供給工程において、前記第2気体は、前記第2ガイド部材に向かって噴出されることにより、前記第2ガイド部材の表面に沿って流れて前記第2隙間に導かれる、
請求項2に記載のガラス板製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1(特開2009−236771号公報)に開示される検査装置は、上部把持手段および下部把持手段によってガラス板に上下方向の張力を付与するため、液晶ディスプレイ装置に使用されるような大型かつ薄いガラス板を把持する場合、ガラス板が割れるおそれがある。
【0005】
また、ガラス板を移動させながらガラス板の欠陥を高い精度で検知するためには、ガラス板の姿勢を安定化させ、ガラス板の振動を抑制する必要がある。特に、ガラス板の表面の法線の向きを安定化させること、および、ガラス板の表面の法線方向の振動を低減することが、ガラス板の検査精度の向上に重要である。
【0006】
本発明の目的は、ガラス板の検査工程におけるガラス板の振動を低減することができるガラス板製造方法およびガラス板製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガラス板製造方法は、搬送工程と、抑制工程とを備える。搬送工程は、ガラス板を第1方向に搬送する。抑制工程は、ガラス板が第1方向に搬送される際に、第1方向と交差する第2方向におけるガラス板の動きを抑制する。抑制工程は、第1気体供給工程を有する。第1気体供給工程は、ガラス板の第1主表面と、第1主表面に対向するように配置される第1ガイド部材との間の第1隙間において、第1気体を第1主表面に沿って流すことにより、第1ガイド部材に向かう力をガラス板に与える。
【0008】
一般的に、大型の薄いガラス板は、搬送中に何ら力が付与されていない場合、ガラス板の周囲の圧力の微小な変化によって、ガラス板の主表面と直交する方向に振動しやすい。しかし、本発明に係るガラス板製造方法では、搬送されているガラス板の一方の主表面は、その主表面と対向するガイド部材に向かう力を受ける。ガラス板の主表面とガイド部材との間には気体が流れているので、ガラス板はガイド部材と衝突せず、ガラス板とガイド部材との間の距離は安定的に保たれる。そのため、搬送されているガラス板は、その主表面と直交する方向において力の変化を受けにくい。従って、本発明に係るガラス板製造方法は、ガラス板の振動を低減することができる。
【0009】
また、抑制工程は、第2気体供給工程をさらに有することが好ましい。第2気体供給工程は、第1主表面の裏側の第2主表面と、第2主表面に対向するように配置される第2ガイド部材との間の第2隙間において、第2気体を第2主表面に沿って流すことにより、第2ガイド部材に向かう力をガラス板に与える。
【0010】
このガラス板製造方法では、搬送されているガラス板の一対の主表面は、互いに反対方向の力を受ける。一対の主表面のそれぞれが受ける力の大きさが同じである場合、主表面と直交する方向においてガラス板に作用する力は釣り合っている。そのため、搬送されているガラス板は、その主表面と直交する方向において力の変化を受けにくい。従って、本発明に係るガラス板製造方法は、ガラス板の振動を低減することができる。
【0011】
また、端面測定工程は、第1気体供給工程において、第1気体は、第1ガイド部材に向かって噴出されることにより、第1ガイド部材の表面に沿って流れて第1隙間に導かれ、第2気体供給工程において、第2気体は、第2ガイド部材に向かって噴出されることにより、第2ガイド部材の表面に沿って流れて第2隙間に導かれることが好ましい。
【0012】
また、搬送工程において、ガラス板は、ガラス板の一の端部が把持されることにより吊り下げられた状態で、端部と平行な第1方向に搬送されあることが好ましい。この場合、第1気体供給工程において、第1気体は、第1方向に沿って徐々に狭くなる第1隙間を流れ、第2気体供給工程において、第2気体は、第1方向に沿って徐々に狭くなる第2隙間を流れる。
【0013】
また、ガラス板を検査する検査工程をさらに備えることが好ましい。この場合、抑制工程は、少なくとも検査工程の前に行われる。
【0014】
このガラス板製造方法では、搬送工程において搬送されるガラス板の振動が低減されるので、検査工程において、ガラス板の欠陥の検出精度の低下が抑制される。
【0015】
本発明に係るガラス板製造装置は、ガラス板を固定するためのテーブルと、ガラス板の端面を面取り加工するための面取り砥石と、搬送機構と、抑制機構とを備える。搬送機構は、ガラス板を第1方向に搬送するための機構である。抑制機構は、ガラス板が第1方向に搬送される際に、第1方向と交差する第2方向におけるガラス板の動きを抑制するための機構である。抑制機構は、第1ガイド部材と、第2ガイド部材と、第1気体噴出機構と、第2気体噴出機構とを有する。第1ガイド部材は、ガラス板の第1主表面に対向する第1ガイド表面を有する。第2ガイド部材は、第1主表面の裏側の第2主表面に対向する第2ガイド表面を有する。第1気体噴出機構は、第1ガイド表面に向かって第1気体を噴出する。第2気体噴出機構は、第2ガイド表面に向かって第2気体を噴出する。第1気体噴出機構は、第1主表面と第1ガイド表面との間の第1隙間において、第1気体を第1主表面に沿って流して、第1ガイド部材に向かう力をガラス板に与える。第2気体噴出機構は、第2主表面と第2ガイド表面との間の第2隙間において、第2気体を第2主表面に沿って流して、第2ガイド部材に向かう力をガラス板に与える。
【0016】
また、第1ガイド部材は、第1気体を第1ガイド表面に沿って流して、第1気体を第1隙間に導き、第2ガイド部材は、第2気体を第2ガイド表面に沿って流して、第2気体を第2隙間に導くことが好ましい。
【0017】
また、搬送機構は、ガラス板の一の端部を把持することによりガラス板を吊り下げた状態で、端部と平行な第1方向にガラス板を搬送することが好ましい。この場合、第1ガイド部材は、第1方向に沿って第1主表面に徐々に近付く第1ガイド表面を有し、第2ガイド部材は、第1方向に沿って第2主表面に徐々に近付く第2ガイド表面を有する。
【0018】
また、ガラス板を検査する検査機構をさらに備えることが好ましい。この場合、抑制機構は、少なくとも、第1方向において検査機構の上流側に設置されている。
【0019】
また、抑制機構は、さらに、第1方向において検査機構の下流側に設置されていることが好ましい。
【0020】
このガラス板製造装置では、検査機構の上流側だけではなく検査機構の下流側においてもガラス板の振動を低減することにより、検査機構の上流側におけるガラス板の振動をより低減することができる。従って、このガラス板製造装置は、検査機構によるガラス板の欠陥の検出精度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0021】
また、第1方向において検査機構の上流側に設置されている複数の抑制機構を備えることが好ましい。この場合、複数の抑制機構のそれぞれにおいて、第1主表面と第1ガイド表面との間の最小距離、および、第2主表面と第2ガイド表面との間の最小距離は、第1方向に沿って徐々に小さくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るガラス板製造方法およびガラス板製造装置は、ガラス板の検査工程におけるガラス板の振動を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るガラス板製造装置100は、主として、ガラス板10を搬送するための搬送装置102、および、搬送装置102によって搬送されているガラス板10を検査するための検査装置104を備えている。
【0025】
(1)ガラス板の製造工程の概要
最初に、ガラス板10の製造工程について説明する。ガラス板10は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられる。ガラス板10は、例えば、0.2mm〜0.8mmの厚みを有し、かつ、縦680mm〜2200mmおよび横880mm〜2500mmのサイズを有する。
【0026】
ガラス板10の一例として、以下の(a)〜(j)の組成を有するガラスが挙げられる。
【0027】
(a)SiO
2:50質量%〜70質量%、
(b)Al
2O
3:10質量%〜25質量%、
(c)B
2O
3:1質量%〜18質量%、
(d)MgO:0質量%〜10質量%、
(e)CaO:0質量%〜20質量%、
(f)SrO:0質量%〜20質量%、
(g)BaO:0質量%〜10質量%、
(h)RO:5質量%〜20質量%(Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種である。)、
(i)R’
2O:0質量%〜2.0質量%(R’は、Li、NaおよびKから選択される少なくとも1種である。)、
(j)SnO
2、Fe
2O
3およびCeO
2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物。
【0028】
なお、上記の組成を有するガラスは、0.1質量%未満の範囲で、その他の微量成分の存在が許容される。
【0029】
図1は、ガラス板10の製造工程を表すフローチャートの一例である。ガラス板10の製造工程は、主として、成形工程(ステップS1)と、採板工程(ステップS2)と、第1検査工程(ステップS3)と、切断工程(ステップS4)と、粗面化工程(ステップS5)と、端面加工工程(ステップS6)と、洗浄工程(ステップS7)と、第2検査工程(ステップS8)と、梱包工程(ステップS9)とから構成される。
【0030】
成形工程S1では、ガラス原料を加熱して得られた熔融ガラスから、ダウンドロー法またはフロート法によって、ガラスシートが連続的に成形される。成形されたガラスシートは、歪みおよび反りが発生しないように温度制御されながら、ガラス徐冷点以下まで冷却される。
【0031】
採板工程S2では、成形工程S1で成形されたガラスシートが切断されて、所定の寸法を有する素板ガラスが得られる。
【0032】
第1検査工程S3では、採板工程S2で得られた素板ガラスが、ガラス板製造装置100によって検査される。第1検査工程S3では、主として、素板ガラスの内部に存在する透光性および非透光性の異物が検知される。異物は、例えば、ガラス原料成分、金属および微小な泡である。また、第1検査工程S3では、素板ガラスの主表面に存在する脈理およびキズが検知されてもよい。
【0033】
切断工程S4では、第1検査工程S3で得られた素板ガラスが切断されて、製品サイズのガラス板10が得られる。素板ガラスは、レーザを用いて高い精度で切断される。
【0034】
粗面化工程S5では、切断工程S4で得られたガラス板10の主表面の表面粗さを増加させる粗面化処理が行われる。ガラス板10の粗面化処理は、例えば、フッ化水素を含むエッチャントを用いるウエットエッチングである。
【0035】
端面加工工程S6では、粗面化工程S5で粗面化処理が行われたガラス板10の端面の面取り加工が行われる。面取り加工された端面の一部は、R形状を有する。
【0036】
洗浄工程S7では、端面加工工程S6で端面の面取り加工が行われたガラス板10が洗浄される。ガラス板10には、素板ガラスの切断、および、ガラス板10の端面加工によって生じた微小なガラス片や、雰囲気中に存在する有機物等の異物が付着している。ガラス板10の洗浄によって、これらの異物が除去される。
【0037】
第2検査工程S8では、洗浄工程S7で洗浄されたガラス板10が検査される。具体的には、ガラス板10の主表面が光学的に測定されて、ガラス板10の欠陥が検知される。ガラス板10の欠陥は、例えば、ガラス板10の主表面に形成される脈理、ガラス板10の主表面に存在するキズおよびクラック、ガラス板10の主表面に付着している異物、および、ガラス板10の内部に存在している微小な泡等である。
【0038】
梱包工程S9では、第2検査工程S8における検査に合格したガラス板10が、ガラス板10を保護するための合紙と交互にパレット上に積層されて、梱包される。梱包されたガラス板10は、FPDの製造業者等に出荷される。
【0039】
(2)ガラス板製造装置の構成
ガラス板製造装置100は、第1検査工程S3において、搬送装置102によって素板ガラスを搬送しながら、検査装置104によって素板ガラスの欠陥を光学的に検査する。欠陥は、主として、素板ガラスの内部に存在する、微小な泡等の異物である。
図2は、ガラス板製造装置100の斜視図である。
図3は、
図2に示される矢印IIIの方向から見た、ガラス板製造装置100の側面図である。
図4は、
図2に示される矢印IVの方向から見た、ガラス板製造装置100の上面図である。ガラス板製造装置100は、圧力が一定になるように制御されている空間に設置されている。以下、搬送装置102によって搬送され検査装置104によって検査される素板ガラスを、便宜的に、ガラス板10と記載する。
【0040】
(2−1)搬送装置の構成
搬送装置102は、直立状態のガラス板10を水平方向に搬送する。搬送装置102によって搬送されるガラス板10の主表面の法線は、水平方向に平行である。
図2〜
図4には、三次元空間の直交座標系を構成するX軸、Y軸およびZ軸が示されている。X軸は、ガラス板10の搬送方向に平行である。Y軸は、ガラス板10の主表面の法線に平行である。Z軸は、鉛直方向に平行であり、かつ、ガラス板10の主表面の法線と直交する。
【0041】
X軸の向きは、ガラス板10が搬送される方向である。以下、X軸の負方向を上流側と呼び、X軸の正方向を下流側と呼ぶ。ガラス板10は、上流側から下流側に向かって搬送される。
図4に示されるように、上流側から下流側に向かって見た場合に、ガラス板10の右側をY軸の負方向とし、ガラス板10の左側をY軸の正方向とする。Z軸の向きは、鉛直方向上向きである。
【0042】
搬送装置102は、主として、上部ガイド機構110と、クランプ機構112と、下部ガイド機構114と、複数のエアナイフ116a,・・・と、複数のガイド板118a,・・・とを備える。以下、ガラス板10の左側の主表面を左主表面10aと呼び、ガラス板10の右側の主表面を右主表面10bと呼ぶ。
【0043】
(2−1−1)上部ガイド機構
上部ガイド機構110は、搬送されるガラス板10の上方において、X軸方向に沿って延びるガイドレールである。上部ガイド機構110は、クランプ機構112が取り付けられている。上部ガイド機構110は、クランプ機構112をX軸方向に移動させるための駆動機構(図示せず)を備える。
【0044】
(2−1−2)クランプ機構
クランプ機構112は、ガラス板10のZ軸正方向の端部である上端部を把持する。クランプ機構112は、主として、基部112aと、複数の把持部112bとを備える。基部112aは、X軸方向に沿って延びる部材である。基部112aは、上部ガイド機構110と摺動可能なように、上部ガイド機構110に取り付けられている。基部112aは、上部ガイド機構110と摺動することにより、X軸方向に移動することができる。基部112aの下側には、X軸方向に沿って複数の把持部112bが等間隔に取り付けられている。把持部112bは、ガラス板10の上端部を把持して、ガラス板10をクランプ機構112に固定する。なお、把持部112bの数、および、基部112aに対する把持部112bの取り付け位置は、ガラス板10の寸法、および、ガラス板10の搬送速度等に応じて適宜に設定されてもよい。
【0045】
クランプ機構112は、上部ガイド機構110によってX軸方向に搬送される。これにより、搬送装置102は、クランプ機構112に把持されたガラス板10をX軸方向に搬送することができる。
【0046】
(2−1−3)下部ガイド機構
下部ガイド機構114は、X軸方向に沿って延びる部材である。下部ガイド機構114のZ軸正方向の端面には、X軸方向に沿ってスリット114aが形成されている。スリット114aは、搬送されるガラス板10のZ軸負方向の端部である下端部が収容される空間である。ガラス板10の下端は、スリット114aの底部と接触しない。下部ガイド機構114は、上部ガイド機構110によって搬送されるガラス板10の下端部がY軸方向に移動することを抑制する。
【0047】
(2−1−4)エアナイフ
エアナイフ116a,・・・は、ガラス板10の主表面10a,10bに向かって空気の噴流を吹き付けるための装置である。エアナイフ116a,・・・は、ガラス板10の左右両側に配置される。
【0048】
エアナイフ116a,・・・は、空気の噴流が吐出される吐出孔(図示せず)を有する。吐出孔は、エアナイフ116a,・・・の先端部に形成され、Z軸方向に延びる細長い孔である。エアナイフ116a,・・・は、吐出孔から吐出される空気の量を制御するためのレギュレータ(図示せず)を有する。レギュレータは、例えば、圧力調整弁である。エアナイフ116a,・・・は、吐出孔から吐出される空気のXY平面における向きを制御するための風向調整機構(図示せず)を有する。風向調整機構は、例えば、エアナイフ116a,・・・の姿勢を制御する機構である。エアナイフ116a,・・・は、後述するように、搬送されるガラス板10のY軸方向の移動を抑制してガラス板10の姿勢を安定化させる効果を有する。
【0049】
図4に示されるように、ガラス板製造装置100は、4個のエアナイフ116a,116b,116c,116dを備える。以下、必要に応じて、4個のエアナイフ116a,116b,116c,116dを、それぞれ、第1左エアナイフ116a、第1右エアナイフ116b、第2左エアナイフ116cおよび第2右エアナイフ116dと呼ぶ。
【0050】
第1左エアナイフ116aおよび第2左エアナイフ116cは、ガラス板10の左側に配置されている。第1右エアナイフ116bおよび第2右エアナイフ116dは、ガラス板10の右側に配置されている。第1左エアナイフ116aおよび第1右エアナイフ116bは、第2左エアナイフ116cおよび第2右エアナイフ116dの上流側に配置されている。X軸方向およびZ軸方向において、第1左エアナイフ116aは、第1右エアナイフ116bと同じ位置に配置され、第2左エアナイフ116cは、第2右エアナイフ116dと同じ位置に配置されている。第1左エアナイフ116aと左主表面10aとの間の距離は、第1右エアナイフ116bと右主表面10bとの間の距離と同じである。第2左エアナイフ116cと左主表面10aとの間の距離は、第2右エアナイフ116dと右主表面10bとの間の距離と同じである。
【0051】
第1左エアナイフ116aおよび第2左エアナイフ116cは、左主表面10aのZ軸方向の中央部に向かって空気を吹き付ける。第1右エアナイフ116bおよび第2右エアナイフ116dは、右主表面10bのZ軸方向の中央部に向かって空気を吹き付ける。
【0052】
(2−1−5)ガイド板
ガイド板118a,・・・は、ガラス板10の主表面10a,10bに対抗して配置される部材である。ガイド板118a,・・・は、ガラス板10の左右両側に配置される。ガイド板118a,・・・の数は、エアナイフ116a,・・・の数と同じである。
【0053】
ガイド板118a,・・・は、Y軸方向の位置を調整するための位置調整機構(図示せず)、および、XY平面における向きを制御するための角度調整機構(図示せず)を有する。ガイド板118a,・・・は、後述するように、エアナイフ116a,・・・から吐出された空気を、ガイド板118a,・・・とガラス板10との間の空間に導くための部材である。
【0054】
図4に示されるように、ガラス板製造装置100は、4個のガイド板118a,118b,118c,118dを備える。以下、必要に応じて、4個のガイド板118a,118b,118c,118dを、それぞれ、第1左ガイド板118a、第1右ガイド板118b、第2左ガイド板118cおよび第2右ガイド板118dと呼ぶ。
【0055】
第1左ガイド板118aおよび第2左ガイド板118cは、ガラス板10の左側に配置されている。第1右ガイド板118bおよび第2右ガイド板118dは、ガラス板10の右側に配置されている。第1左ガイド板118aおよび第1右ガイド板118bは、第2左ガイド板118cおよび第2右ガイド板118dの上流側に配置されている。X軸方向およびZ軸方向において、第1左ガイド板118aは、第1右ガイド板118bと同じ位置に配置され、第2左ガイド板118cは、第2右ガイド板118dと同じ位置に配置されている。
【0056】
第1左ガイド板118aは、左主表面10aと対向する第1左ガイド表面119aを有する。第1右ガイド板118bは、右主表面10bと対向する第1右ガイド表面119bを有する。第2左ガイド板118cは、左主表面10aと対向する第2左ガイド表面119cを有する。第2右ガイド板118dは、右主表面10bと対向する第2右ガイド表面119dを有する。X軸方向において、第1左ガイド表面119aと左主表面10aとの間の距離は、第1右ガイド表面119bと右主表面10bとの間の距離と同じである。X軸方向において、第2左ガイド表面119cと左主表面10aとの間の距離は、第2右ガイド表面119dと右主表面10bとの間の距離と同じである。
【0057】
次に、第1左ガイド板118aの作用効果について、図面を参照しながら説明する。以下の説明は、他のガイド板118b,118c,118dにも適用可能である。
【0058】
第1左ガイド板118aは、第1左エアナイフ116aから吐出された空気を第1左ガイド表面119aに沿って流すことで、第1左ガイド表面119aと左主表面10aとの間の空間に空気を導く。
図5は、第1左エアナイフ116aから吐出され、第1左ガイド板118aによって導かれる空気の流れを説明する図である。
図5は、
図4と同様の上面図である。
図5には、空気の流れが白抜きの矢印F1〜F4で示されている。
図5に示されるように、第1左ガイド板118aの第1左ガイド表面119aは、ガイド湾曲面119a1と、ガイド平面119a2とを有する。ガイド湾曲面119a1は、上流側から下流側に向かって左主表面10aに徐々に近付く面である。ガイド平面119a2は、ガイド湾曲面119a1の下流側に位置し、左主表面10aに平行な面である。ガイド湾曲面119a1は、ガイド平面119a2と滑らかに接続されている。すなわち、第1左ガイド表面119aは、上流側から下流側に向かって左主表面10aに徐々に近付く。ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の距離は、第1左ガイド表面119aと左主表面10aとの間の距離の最小値である。
【0059】
図5を参照しながら、第1左エアナイフ116aから吐出された空気の流れについて説明する。最初に、空気の噴流は、第1左エアナイフ116aの吐出孔から、第1左ガイド板118aのガイド湾曲面119a1に向かって吐出される(矢印F1)。このとき、コアンダ効果によって、吐出された空気の噴流は、第1左ガイド板118aに引き寄せられる。その結果、空気は、ガイド湾曲面119a1に沿って流れる(矢印F2)。この時、噴流が周りの流体を引き込む性質によって、ガイド湾曲面119a1に沿って流れる空気は、周囲の空気を引き込む(矢印F3)。そして、周囲の空気を引き込んだ空気は、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間においてX軸方向に沿って流れる(矢印F4)。
【0060】
また、第1左ガイド板118aの下流側には、気体を吸引する吸引機構(図示せず)が設置されている。ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を通過した空気は、吸引機構によって吸引される。
【0061】
(2−2)検査装置の構成
検査装置104は、ガラス板10の内部に存在する異物を光学的手法により検知する。検査装置104は、エアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・の下流側に設置されている。
【0062】
検査装置104は、主として、光源120と、ラインセンサー122とから構成される。光源120は、ガラス板10の左側に設置されている。ラインセンサー122は、光源120と対向するように、ガラス板10の右側に設置されている。光源120は、Z軸方向に延びるライン光を、Y軸の負方向に向かって照射する。ラインセンサー122は、Z軸方向に配置された複数のカメラ122aを有している。ラインセンサー122は、光源120から照射されてガラス板10を通過したライン光をカメラ122aで受光する。ラインセンサー122は、受光したライン光の強さの変化に基づいて、ガラス板10の歪みを検出して、ガラス板10の内部に存在する異物を検知する。ラインセンサー122のカメラ122aのフォーカスエリアは、±5mm以下である。
【0063】
(3)ガラス板製造装置の具体例
ガラス板製造装置100の構成の一例について説明する。
図6および
図7は、第1左エアナイフ116aおよび第1左ガイド板118aの寸法および位置を説明するための図である。
図6は、
図3と同様の側面図である。
図7は、
図4と同様の上面図の一部であり、
図6に示される矢印VIIの方向から見た図である。
図6および
図7には、ガラス板10、第1左エアナイフ116a、第2左エアナイフ116c、第1左ガイド板118aおよび第2左ガイド板118cのみが示されている。ガラス板10のX軸方向の寸法L1は、2400mmである。ガラス板10のZ軸方向の寸法L2は、1550mmである。搬送装置102によってX軸方向に搬送されるガラス板の搬送速度は、1200mm/sである。以下の説明は、他のエアナイフ116b,116c,116d、および、他のガイド板118b,118c,118dにも適用可能である。
【0064】
図6において、第1左エアナイフ116aのZ軸方向の寸法L3は、627mmである。第1左ガイド板118aのZ軸方向の寸法L4は、693mmである。第1左エアナイフ116aのZ軸方向の中心位置は、第1左ガイド板118aのZ軸方向の中心位置と同じである。ガラス板10の上端と、第1左エアナイフ116aの上端との間の距離L5は、376mmである。ガラス板10の下端と、第1左エアナイフ116aの下端との間の距離L6は、547mmである。
【0065】
図7において、第1左ガイド板118aのX軸方向の寸法L7は、845mmである。第1左ガイド板118aのガイド湾曲面119a1は、XY平面においてR形状を有し、その径L8は、300mmである。第1左ガイド板118aのガイド平面119a2のX軸方向の寸法L9は、195mmである。ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の距離L10は、10mmである。第1左エアナイフ116aは、上流側から下流側に向かって左主表面10aに近付くように配置される。第1左エアナイフ116aと左主表面10aとの間の距離の最小値L11は、32mmである。第1左エアナイフ116aと左主表面10aとの間の角度θは、30度である。第1左ガイド板118aのガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を流れる空気の速さの最大値は、1.0m/s〜2.0m/sである。ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を流れる空気の速さは、ガラス板10の搬送速度に応じて調整され、ガラス板10の搬送速度よりも大きいことが好ましい。
【0066】
第1左エアナイフ116aおよび第1左ガイド板118aのZ軸方向の寸法は、大きいほど好ましい。第1左エアナイフ116aおよび第1左ガイド板118aのZ軸方向の中心位置は、ガラス板10のZ軸方向の中心位置に近いほど好ましい。
【0067】
第1左エアナイフ116aおよび第1左ガイド板118aの寸法および位置に関する上記の数値L3〜L11およびθは一例であり、ガラス板10の寸法L1,L2、および、ガラス板10の搬送速度に応じて適宜に設定される。
【0068】
(4)特徴
ガラス板製造装置100は、第1検査工程S3において、搬送装置102によってガラス板10をX軸方向に搬送しながら、検査装置104によって、ガラス板10の内部に存在する異物を光学的手法により検知する。
【0069】
搬送装置102によって搬送されるガラス板10の主表面10a,10bには、エアナイフ116a,・・・から吐出される空気が吹き付けられる。空気は、ガイド板118a,・・・によって導かれて、ガイド板118a,・・・とガラス板10との間の空間をX軸方向に沿って流れる。
【0070】
第1左エアナイフ116aから吐出され第1左ガイド板118aによって導かれる空気の作用について、
図5を参照しながら説明する。
図5に示されるように、第1左エアナイフ116aから吐出された空気は、周囲の空気を引き込みながらガイド湾曲面119a1に沿って流れ、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を流れる。第1左ガイド板118aとガラス板10との間の空間は、第1左エアナイフ116aから吐出された空気の流路であり、上流側から下流側に向かって徐々に狭くなる。そのため、第1左ガイド板118aとガラス板10との間の空間において、空気の流速は、上流側から下流側に向かって徐々に大きくなる。特に、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間において、空気の流速は最大となる。ベルヌーイの定理により、空気の流速が増加するほど空気の圧力は低下するので、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間は、周囲の空間に対して負圧となる。その結果、ガラス板10は、第1左ガイド板118aに向かうY軸方向の力を受ける。同様に、第1右エアナイフ116bから吐出され第1右ガイド板118bによって導かれる空気によって、ガラス板10は、第1右ガイド板118bに向かうY軸方向の力を受ける。また、ガラス板10は、第2左ガイド板118cに向かうY軸方向の力、および、第2右ガイド板118dに向かうY軸方向の力を受ける。このように、ガラス板10は、Y軸の正方向の力、および、Y軸の負方向の力を受けながら、X軸方向に搬送される。
【0071】
ガイド板118a,・・・の作用によってガラス板10が受けるY軸方向の力が最大となる領域は、ガイド板118a,・・・と対向する領域、すなわち、Z軸方向における中央領域である。ガラス板10のZ軸方向における中央領域は、ガラス板10を把持するクランプ機構112、および、ガラス板10のY軸方向の移動を抑制する下部ガイド機構114からZ軸方向において最も離れたポイントを含む。そのため、搬送されているガラス板10のZ軸方向における中央領域は、Y軸方向に何ら力が付与されていない場合には、ガラス板10の周囲の圧力の微小な変化によってY軸方向に振動しやすい。
【0072】
しかし、本実施形態において、搬送装置102によって搬送されるガラス板10は、Z軸方向における中央領域において、Y軸の正方向および負方向の力が付与される。Y軸の正方向の力の大きさが、Y軸の負方向の力の大きさと同じである場合、ガラス板10に作用するY軸方向の力は釣り合っている。そのため、搬送されているガラス板10は、Z軸方向における中央領域においてY軸方向の力の変化を受けにくくなる。従って、ガラス板10のY軸方向の振動が低減される。
【0073】
また、搬送されているガラス板10に付与されるY軸方向の力は、エアナイフ116a,・・・から吐出される空気の流量および向き、もしくは、ガイド板118a,・・・の位置および角度を調整することにより、高い精度で制御することができる。そのため、ガラス板製造装置100は、搬送されているガラス板10のY軸方向の振動を容易に低減することができる。
【0074】
また、第1左ガイド板118aのガイド平面119a2と、ガラス板10の左主表面10aとの間の空間を通過した空気は、吸引機構によって吸引される。これにより、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間における、左主表面10aに沿う気流が安定化するので、ガラス板10のY軸方向の振動が低減される。
【0075】
また、搬送装置102によって搬送されているガラス板10がY軸方向に振動すると、検査装置104のラインセンサー122のカメラ122aの焦点位置がずれるので、ガラス板10の内部に存在する異物の検出精度が低下する。また、ラインセンサー122のカメラ122aのフォーカスエリアが±3mm以下と短い場合、カメラ122aの焦点位置に高い精度が要求されるので、ガラス板10の内部に存在する異物の検出精度が低下する。従って、ガラス板製造装置100は、搬送されているガラス板10の振動を低減し、ガラス板10のY軸方向の振動の振幅を1mm以下に抑えることができるので、ガラス板10の内部に存在する異物の検出精度の低下を抑制することができる。
【0076】
(5)変形例
以上、本発明に係るガラス板製造装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および変更が施されてもよい。
【0077】
(5−1)変形例A
実施形態のガラス板製造装置100は、4個のエアナイフ116a,116b,116c,116d、および、4個のガイド板118a,118b,118c,118dを備えている。しかし、ガラス板製造装置100が備えるエアナイフ116a,・・・の数、および、ガイド板118a,・・・の数は、ガラス板10の寸法L1,L2、および、ガラス板10の搬送速度に応じて適宜に設定されてもよい。
【0078】
ガラス板製造装置100に備えられるエアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・の数が大きいほど、ガラス板10の主表面10,10bに沿う空気の流れがより安定的になるため、搬送されるガラス板10のY軸方向の振動がより効果的に抑えられる。そのため、ガラス板製造装置100が設置される空間においてY軸方向の気流が発生しても、ガラス板10のY軸方向の振動が十分に抑えられ、ガラス板10の内部に存在する異物の検出精度の低下が抑制される。
【0079】
(5−2)変形例B
実施形態のガラス板製造装置100では、エアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・は、検査装置104の上流側に設置されている。しかし、エアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・は、検査装置の下流側にも設置されてもよい。
図8は、本変形例におけるガラス板製造装置100の上面図である。
図8に示されるガラス板製造装置100は、検査装置の下流側において、2個のエアナイフ116e,116f、および、2個のガイド板118e,118fをさらに備えている。エアナイフ116eおよびガイド板118eは、ガラス板10の左側に配置されている。エアナイフ116fおよびガイド板118fは、ガラス板10の右側に配置されている。
【0080】
検査装置104によるガラス板10の内部に存在する異物の検出精度の低下を抑制するためには、検査装置104の上流側においてガラス板10の振動を低減することが重要である。しかし、本変形例のように、検査装置104の上流側だけではなく検査装置104の下流側においてもガラス板10の振動を低減することにより、検査装置104の上流側におけるガラス板10の振動がさらに低減される。そのため、本変形例は、検査装置104によるガラス板10の内部に存在する異物の検出精度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0081】
(5−3)変形例C
実施形態のガラス板製造装置100は、4個のエアナイフ116a,116b,116c,116d、および、4個のガイド板118a,118b,118c,118dを備えている。ガラス板10の左主表面10aは、上流側から下流側に向かって、第1左ガイド板118aおよび第2左ガイド板118cと対向している。このように、ガラス板10の搬送方向に沿って複数のガイド板118a,・・・が設置されている場合、ガイド板118a,・・・とガラス板10との間の距離を、上流側から下流側に向かって徐々に小さくしてもよい。すなわち、ガラス板10の搬送方向に沿って、ガイド板118a,・・・をガラス板10に向かって徐々に近付けてもよい。
【0082】
図9は、本変形例におけるガラス板製造装置100の上面図である。
図9には、ガラス板10、第1左エアナイフ116a、第2左エアナイフ116c、第1左ガイド板118aおよび第2左ガイド板118cのみが示されている。
図9に示されるように、第2左ガイド板118cの第2左ガイド表面119cと左主表面10aとの間の距離の最小値L20は、第1左ガイド板118aの第1左ガイド表面119aと左主表面10aとの間の距離の最小値L10よりも小さい。
図9には示されていないが、同様に、第2右ガイド板118dの第2右ガイド表面119dと右主表面10bとの間の距離の最小値は、第1右ガイド板118bの第1右ガイド表面119bと右主表面10bとの間の距離の最小値よりも小さい。
【0083】
全てのエアナイフ116a,・・・から吐出される空気の風量および風向が同じである場合、ガイド板118a,・・・がガラス板10に近いほど、ガイド板118a,・・・とガラス板10との間の空間を流れる空気の速度が増加して空気の圧力が低下する。そのため、ガイド板118a,・・・がガラス板10に近いほど、ガイド板118a,・・・に向かってガラス板10に作用するY軸方向の力が大きくなるので、ガラス板10のY軸方向の振動がより効果的に低減される。しかし、上流側においてガイド板118a,・・・とガラス板10との間の距離が小さすぎる場合、ガラス板10のY軸方向の振動によって、ガラス板10がガイド板118a,・・・に接触して破損するおそれがある。そのため、本変形例のように、ガイド板118a,・・・とガラス板10との間の距離は、上流側から下流側に向かって徐々に小さくなることが好ましい。
【0084】
(5−4)変形例D
実施形態のガラス板製造装置100では、ガラス板10の左右両側に、エアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・が配置されている。しかし、ガラス板10の左側のみ、または、ガラス板10の右側のみに、エアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・が配置されていてもよい。
【0085】
例えば、ガラス板10の左主表面10aと対向するエアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・のみが配置されている場合、ガラス板10は、左側のガイド板118a,・・・に向かう力を受ける。ガラス板10の左主表面10aと、ガイド板118a,・・・との間には空気が流れているので、ガラス板10はガイド板118a,・・・と衝突せず、ガラス板10とガイド板118a,・・・との間の距離は安定的に保たれる。そのため、搬送されているガラス板10は、Y軸方向において力の変化を受けにくい。従って、本変形例においても、ガラス板10の振動が低減される。
【0086】
(5−5)変形例E
実施形態のガラス板製造装置100は、第1検査工程S3において、採板工程S2で得られた素板ガラスであるガラス板10の欠陥を検知する。しかし、ガラス板製造装置100は、第2検査工程S8において、洗浄工程S7で洗浄されたガラス板10の欠陥を検知してもよい。この場合、ガラス板製造装置100は、ガラス板10の内部に存在する異物を検知する代わりに、ガラス板10の主表面に形成される脈理、ガラス板10の主表面に存在するキズおよびクラック、および、ガラス板10の主表面に付着している異物等を検知してもよい。また、ガラス板製造装置100は、ガラス板10の内部に存在する異物を検知すると共に、ガラス板10の主表面に形成される脈理、ガラス板10の主表面に存在するキズおよびクラック、および、ガラス板10の主表面に付着している異物等をさらに検知してもよい。
【0087】
(5−6)変形例F
実施形態のガラス板製造装置100は、第1検査工程S3において、エアナイフ116a,・・・から吐出されガイド板118a,・・・によって導かれる空気によって形成される、ガラス板10の主表面10a,10bに沿う空気の流れによって、ガラス板10のY軸方向の振動を十分に抑えて、ガラス板10の内部に存在する異物の検出精度の低下を抑制することができる。
【0088】
しかし、ガラス板製造装置100は、第1検査工程S3の前に、ガラス板10の主表面10a,10bに付着している異物を除去する洗浄工程をさらに行ってもよい。洗浄工程は、例えば、主表面10a,10bに向かって空気を吹き付けて、主表面10a,10bに付着している異物を吹き飛ばして主表面10a,10bから除去する。具体的には、洗浄工程は、エアノズル等を用いて主表面10a,10bに向かって高圧の圧縮空気を噴出し、主表面10a,10bに付着している異物を吹き飛ばして除去する。その後、洗浄工程は、エアノズルの近傍に設置されるバキュームノズル等を用いて、エアノズルから噴出された圧縮空気を、主表面10a,10bから除去された異物と共に吸引する。異物は、採板工程S2においてガラスシートの切断面から発生するガラス微小片であるカレット、および、成形工程S1においてガラスシートを徐冷しながら下方に搬送するために用いられる搬送ロールに起因する物質等である。
【0089】
本変形例では、第1検査工程S3の前に、ガラス板10の主表面10a,10bに付着している異物を除去する洗浄工程を行うことで、検査装置104によるガラス板10の内部に存在する異物の検出精度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0090】
(5−7)変形例G
実施形態のガラス板製造装置100は、エアナイフ116a,・・・から吐出されガイド板118a,・・・によって導かれる空気によって形成される、ガラス板10の主表面10a,10bに沿う空気の流れによって、ガラス板10のY軸方向の振動を十分に抑えることができる。
【0091】
しかし、ガラス板製造装置100は、第1検査工程S3において、ガラス板10のY軸方向の振動が十分に抑えられているか否かを検査装置104で確認してもよい。第1検査工程S3において、検査装置104のラインセンサー122のカメラ122aは、Y軸方向の合焦位置において、ガラス板10を撮像する。合焦位置は、カメラ122aの像のピントが最も合う位置であり、カメラ122aのフォーカスエリアにある。合焦位置は、Y軸方向の任意の位置に設定することができる。しかし、ガラス板10の厚み方向(Y軸方向)に散らばって形成されている欠陥を効果的に検出するためには、合焦位置は、Y軸方向に振動していないときのガラス板10の厚み方向の中心にあることが好ましい。
【0092】
搬送装置102によって搬送されているガラス板10のY軸方向の振動が十分に抑制されていない場合、ガラス板10が、カメラ122aのフォーカスエリアから外れることがある。特に、カメラ122aのフォーカスエリアが±3mm以下と短い場合、ガラス板10は、Y軸方向に振動することでフォーカスエリアから外れやすい。カメラ122aのフォーカスエリアからガラス板10が外れると、ガラス板10の内部に存在する異物の検出精度が低下するおそれがある。
【0093】
そのため、本変形例のガラス板製造装置100は、第1検査工程S3において、カメラ122aのフォーカスエリアからガラス板10が外れていることを検知した場合には、そのガラス板10を不良品と判定して、切断工程S4に送らずに製造ラインから取り除いてもよい。なお、ガラス板10がフォーカスエリアから外れているか否かを判定するために、カメラ122aから、ガラス板10の主表面10a,10bまでのY軸方向の距離を測定する距離センサが用いられてもよい。この場合、カメラ122aの撮像のタイミングと、距離センサの測定のタイミングとをできるだけ近付けるために、距離センサは、カメラ122aの近傍に設置されることが好ましい。