特許第6484512号(P6484512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6484512レーザスキャナ制御装置、レーザスキャナ制御方法およびレーザスキャナ制御用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484512
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】レーザスキャナ制御装置、レーザスキャナ制御方法およびレーザスキャナ制御用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20190304BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20190304BHJP
   G01C 7/02 20060101ALN20190304BHJP
   G01S 17/89 20060101ALN20190304BHJP
【FI】
   G01C15/00 103A
   G01C3/06 140
   !G01C7/02
   !G01S17/89
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-128529(P2015-128529)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-9558(P2017-9558A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠之
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103542868(CN,A)
【文献】 特開2001−091619(JP,A)
【文献】 特開2004−325202(JP,A)
【文献】 特開2010−147720(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0092083(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽の方向を算出する算出部と、
前記太陽の方向を写した画像の輝度を取得する輝度取得部と、
前記輝度が予め定めた閾値以上である場合に前記太陽の方向におけるレーザスキャンを制限する条件を設定するスキャン条件設定部と
を備えることを特徴とするレーザスキャナ制御装置。
【請求項2】
太陽の方向を算出する算出ステップと、
前記太陽の方向を写した画像の輝度を取得する輝度取得ステップと、
前記輝度が予め定めた閾値以上である場合に前記太陽の方向におけるレーザスキャンを制限する条件を設定するスキャン条件設定ステップと
を備えることを特徴とするレーザスキャナ制御方法。
【請求項3】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
太陽の方向を算出する算出ステップと、
前記太陽の方向を写した画像の輝度を取得する輝度取得ステップと、
前記輝度が予め定めた閾値以上である場合に前記太陽の方向におけるレーザスキャンを制限する条件を設定するスキャン条件設定ステップと
を実行させることを特徴とするレーザスキャナ制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスキャナを用いた三次元点群位置データを取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MMS(モバイルマッピングシステム)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。MMSとは、 GNSS装置、カメラ、レーザスキャナ、IMU(慣性航法装置)等を車両に搭載し、走行しながら周辺の三次元データと映像を取得し、走行した環境の三次元データを取得するシステムである。MMSで得た三次元データは、都市計画、土木工事、防災計画等に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−242317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザスキャナを用いて三次元点群位置データを取得する場合、点群に含まれるノイズが問題となる。このため、ノイズとなる点群をいかに低減し除去するかが重要となる。ノイズとなる点群が生じる原因にはいくつか種類があるが、屋外での測定の場合、太陽がノイズの要因となる。例えば、レーザスキャナの光源として赤外光を用いた場合、太陽光が測定光として誤検出され、それがノイズとなる。
【0005】
この問題への対応策として、点群作成後にこれらノイズ点を別途目視で選別し、データから削除する方法や、何かしらのフィルター処理を点群に施し、ノイズ点を削除する方法などが考えられる。しかしいずれも点群作成後に何かしらの手順を踏んで行う必要があり、作業時間もかかり煩雑である。
【0006】
このような背景において、本発明は、レーザスキャナを用いた点群の取得において、太陽光がノイズとして検出されることを抑える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、太陽の方向を算出する算出部と、前記太陽の方向を写した画像の輝度を取得する輝度取得部と、前記輝度が予め定めた閾値以上である場合に前記太陽の方向におけるレーザスキャンを制限する条件を設定するスキャン条件設定部とを備えることを特徴とするレーザスキャナ制御装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、太陽光を測定光として誤検出する問題が解決される。レーザスキャンを制限する条件としては、
(1)レーザ測定光の発光を行わない。
(2)レーザ測定光の発光は行うが、その検出は行わない。
(3)検出した測定光(太陽光を検出している可能性あり)を測定光として取り扱わない(別データとして扱う)。
といったものが挙げられる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、太陽の方向を算出する算出ステップと、前記太陽の方向を写した画像の輝度を取得する輝度取得ステップと、前記輝度が予め定めた閾値以上である場合に前記太陽の方向におけるレーザスキャンを制限する条件を設定するスキャン条件設定ステップとを備えることを特徴とするレーザスキャナ制御方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータに太陽の方向を算出する算出ステップと、前記太陽の方向を写した画像の輝度を検出する輝度検出ステップと、前記輝度が予め定めた閾値以上である場合に前記太陽の方向におけるレーザスキャンを制限する条件を設定するスキャン条件設定ステップとを実行させることを特徴とするレーザスキャナ制御用プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザスキャナを用いた点群の取得において、太陽光がノイズとして検出されることを抑える技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】MMS(モバイルマッピングシステム)の概要を示す概念図である。
図2】実施形態における演算装置のブロック図である。
図3】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】実施形態におけるスキャンの制限を行う原理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(構成)
図1には、車両100が示されている。車両100には、アンテナ101、IMU102、演算装置103、カメラ104およびレーザスキャナ105が搭載されている。図1には、レーザスキャナ105によって建物131の三次元点群位置データを取得する様子が示されている。
【0014】
アンテナ101は、GPS衛星等の航法衛星からの航法信号を受信する。航法信号には、航法信号の発信時刻、航法衛星の軌道情報、航法信号の伝搬時間等の測定に利用されるコード情報等が含まれている。利用する航法衛星は、GPS衛星に限定されず、他の形態の航法衛星であってもよい。航法衛星として、GPSシステムを補完する航法衛星を用いることもできる。この例としては、準天頂衛星システム(Qusai-Zenith Satellite System)で運行される航法衛星が挙げられる。
【0015】
IMU(Inertial Measurement Unit)102は、慣性航法装置であり、車両100に加わる加速度の情報や車両100の姿勢の変化に関する情報を取得する。演算装置103は、コンピュータとして機能するハードウェアであり、後述する図2に示す構成を有し、また図3に示す処理を行う。
【0016】
カメラ104は、全周カメラであり、上方向も含めて周囲全周(2π空間)の動画を撮影する。全周カメラについては、例えば特開2012−204982号公報や特開2014−71860号公報に記載されている。ここでは説明を省略するが、カメラ104が撮影した動画の画像データは、レーザスキャナ105が計測する3次元点群位置データと組み合わされて周囲の三次元情報の構築に利用される。カメラ104と後述するレーザスキャナ105の車両100(この場合は、IMU102の位置)に対する外部標定要素(位置と姿勢)は予め測定され、その情報は既知とされている。また、カメラ104と後述するレーザスキャナ105は、なるべく近い位置となるようにその位置が決められている。
【0017】
レーザスキャナ105は、周囲全周(2π空間)に対するレーザスキャニングを行い、当該周囲環境の三次元点群位置データを取得する。三次元点群位置データは、レーザ測定光の反射点の三次元位置を各点において求めることで得られる。三次元点群位置データにより、三次元位置が特定された点の集合として対象物の三次元情報を得られる。レーザスキャナについては、例えば特開2008−268004号公報や特開2010−151682号公報に記載されている。
【0018】
演算装置103は、コンピュータとして機能するハードウェアであり、図2に示す各機能部を有する。図2に示す各機能部は、ソフトウェア的に構成されていてもよいし、専用の演算回路によって構成されていてもよい。また、ソフトウェア的に構成された機能部と、専用の演算回路によって構成された機能部が混在していてもよい。例えば、図示する各機能部は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)により構成される。また、演算装置103は、固体電子メモリやハードディスク装置等の記憶装置、各種のインタフェース回路を備えている。
【0019】
図2には、演算装置103のブロック図が示されている。演算装置103は、データ取得部111、車両位置算出部112、太陽位置算出部113、太陽位置投影部114、太陽の方向算出部115、輝度取得部116、輝度判定部117およびスキャン条件設定部118を備えている。
【0020】
データ取得部111は、アンテナ101が受信した航法信号、カメラ104が撮影した画像データ、およびレーザスキャナ105が取得した三次元点群位置データを受け付ける。車両位置算出部112は、アンテナ101が受信したGNSS航法衛星からの航法信号に基づいて車両100の位置を算出する。車両100の位置は、IMU102の位置を基準として計算される。車両100の位置の算出において、GNSSのデータに加えて、各種のビーコン信号を利用することもできる。このGNSSに加えて利用可能なシステムとして、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)が挙げられる。車両の位置と姿勢は、カメラが撮影した動画を用いて算出することもできる。この技術は、例えば特開2013−186816号公報に記載されている。
【0021】
太陽位置算出部113は、カメラ103の位置から見た天球面上における太陽の位置を算出する。太陽の位置は、専用のプログラムを利用して計算する。天球面上における太陽の軌道情報は、公知の天文情報から得られる。太陽の軌道情報は、例えば、米国ジェット推進研究所のwebサイト(http://www.jpl.nasa.gov/)から入手できる。太陽の位置を求める方法に関しては、例えば、日本建築学会東北支部研究報告集 第68号 計画系 出版日:2005年6月10日、(news-sv.aij.or.jp/kankyo/s13/OLDHP/matsu0512.pdf)に記載されている。
【0022】
太陽位置投影部114は、太陽位置算出部113が算出した太陽の位置を、カメラ104を中心とした天球面上に投影する。具体的には、太陽の方向を写した画面上に計算した太陽の位置を投影する。太陽の方向算出部115は、投影された太陽の天球面上における位置に基づき、カメラ104から見た太陽の方向を算出する。輝度取得部116は、計算により求めた太陽の方向を撮影した画像の輝度を取得する。輝度判定部117は、輝度取得部116が取得した輝度の値を特定の条件に基づいて判定する。スキャン条件設定部118は、輝度判定部117での判定の結果に基づいてレーザスキャナ105のスキャン条件を設定する。
【0023】
(処理の一例)
図3には、処理の手順の一例が示されている。図3の処理を実行するためのプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、図2のハードウェアで実行される。処理が開始されると、まず、時刻tにおける車両の位置と姿勢のデータを取得する(ステップS101)。車両の位置のデータは、車両位置算出部112で算出され、車両の姿勢のデータは、IMU112から取得する。時刻tは、0.2秒毎(5Hz動作)といった特定の時間間隔で設定される。
【0024】
車両100に対するカメラ104の外部標定要素(位置と姿勢)は既知であるので、車両の位置と姿勢が判ることで、カメラ104の位置と姿勢のデータが得られる(ステップS102)。また、時刻tにおける太陽の位置データを取得する(ステップS103)。太陽の位置データの算出は、太陽の位置算出部113で行われる。
【0025】
太陽の位置を計算により求めたら、撮影画面中に計算により求めた太陽の位置を投影する(ステップS104)。この処理は、太陽位置投影部114において行われる。次に、カメラの位置から太陽への方向を特定する(ステップS105)。この処理は、太陽の方向算出部115において行われる。カメラ位置から見た太陽の方向を特定したら、当該方向を撮影した画像を解析し、その輝度値を取得する(ステップS106)。この処理は、輝度取得部116で行われる。
【0026】
そして、ステップS106で取得した輝度値が予め設定した閾値以上であるか否か、を判定する(ステップS107)。この処理は、輝度判定部117で行われる。当該輝度値が閾値以上である場合、太陽の方向を中心とした矩形や円形の視野の範囲を設定し、当該範囲のスキャンをレーザスキャナ105が行なわない、あるいは当該範囲からは点群データを取得しない設定が行なわれる(ステップS108)。この処理は、スキャン条件設定部118で行われる。ステップS106で取得した輝度値が閾値以上でない場合、レーザスキャニングの制限は設定されず、特に太陽を避けない条件でのレーザスキャンが行われる。
【0027】
ステップS108で設定されるスキャン処理の制限としては、例えば、太陽の方向を中心として上下角±5°、左右角±5°の範囲を設定し、その角度範囲のレーザスキャンを行わない設定が挙げられる。図4にスキャンが制限される範囲を設定した場合の一例を示す。
【0028】
なお、上記の処理では、レーザスキャナ105とカメラ104との距離が太陽までの距離に比べて十分に小さいので、レーザスキャナ105から見た太陽の方向と、カメラ104から見た太陽方向は同一であるとしている。
【0029】
図3の処理は、繰り返し行われるレーザスキャンに合わせて特定の時間間隔で行われる。例えば、レーザスキャンが5Hzの周期で行なわれる場合、図3の処理も5Hzの間隔で間欠的に行われ、0.2秒おきにスキャン範囲を制限するか否かの判定が行なわれる。この処理の間隔は、5Hzに限定されず、他の周期を採用することも可能である。また、必要とするタイミングで図3の処理を行うことも可能である。また、図3の処理を繰り返し行う周期を可変とすることもできる。また、図3の処理を行う周期として、短周期設定と長周期設定とを用意し、状況によっていずれか一方を選択する処理も可能である。
【0030】
上記の処理によれば、太陽の方向を中心とした特定の範囲におけるレーザスキャンが行われない、あるいはそのスキャンデータを取得しない、あるいはそのスキャンデータを利用しない設定が行なわれ、太陽光によってノイズが生じる問題を避けることができる。また、特定の間隔で太陽の方向の輝度を確認するので、スキャン情報の欠落を最小限に抑えることができる。また、輝度情報に基づいて、スキャン範囲の制限に係る判定を行うので、雲によって太陽が遮られる場合等の太陽光によってノイズが生じない状況では、スキャン範囲の制限は行なわれず、スキャンデータの欠落が抑えられる。
図1
図2
図3
図4