(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管材を透過性浄化体内に設置する場合には、管材を配置した後に浄化材を投入する必要があるので、管材の位置が計画位置から大きくずれる場合がある。管材の位置がずれると、計画した位置から採水できなくなるため、透過性浄化体の効果を正確に把握できない虞がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、透過性浄化体内に配置する管材が容易には動かない透過性浄化体の構築方法を提供することを課題とし、さらには、透過性浄化体の効果を正確に把握することが可能な地下水採取構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するための請求項1に係る発明は、汚染地下水を含む地盤に立坑を形成する掘削工程と、前記汚染地下水を浄化する浄化材を前記立坑に充填するとともに、地下水採取用の管材と前記管材の下端部を保持したサポート部材とを前記立坑内に設置する充填工程と、を備える透過性浄化体の構築方法である。
前記サポート部材は、前記立坑の内周壁に沿って配置されるリング状の外枠部と、前記外枠部から前記立坑の中央部に向かう棒状の支持部と、前記外枠部から立ち上がる棒状のガイド部とを有し、前記充填工程は、前記
外枠部および前記支持部の設置高さまで前記浄化材を充填する第一ステップと、
前記管材の下端部を前記支持部に固定した状態で、前記第一ステップで充填された前記浄化材の上面に前記
外枠部および前記支持部を載置する第二ステップと、前記
外枠部および前記支持部の上に前記浄化材を充填する第三ステップとを有する。
【0007】
かかる透過性浄化体の構築方法は、サポート部材を使用して地下水採取用の管材を位置決めするので、浄化材を充填する際に管材の位置がずれ難くなる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
立坑に充填される透過性浄化体に埋設されるサポート部材と、前記透過性浄化体の内部から前記透過性浄化体の上端部に至る地下水採取用の管材とを備える地下水採取構造である。前記管材の下端部には、前記透過性浄化体内の地下水を前記管材内に取り込むための採水口が形成されており、前記管材の下端部は、前記サポート部材に保持されている。
【0009】
かかる地下水採取構造によれば、管材の下端部がサポート部材に保持されているので、管材の下端部に設けた採水口を所定の採水位置に設置することができる。つまり、本発明に係る地下水採取構造によれば、管材の採水口を計画した位置に設置することができ、ひいては、透過性浄化体の効果を正確に把握することが可能となる。
【0010】
請求項
2に係る発明では、前記サポート部材が、前記立坑の内周壁に沿って配置される
リング状の外枠部と、前記外枠部から前記立坑の中央部に向かう
複数の棒状の支持部と
、前記外枠部から立ち上がる棒状のガイド部とを有し、
前記管材は、前記ガイド部に保持されており、前記管材の下端部は、前記支持部に固定されている、
【0011】
このようにすると、サポート部材の外枠部が立坑の内周壁に沿って位置決めされるので、サポート部材自体が動きにくくなり、ひいては、採水口の設置精度が向上する。
また、立坑の内周壁に沿って管材を配置できるので、立坑内へ浄化材を投入する際に管材が邪魔になり難い。
【0014】
請求項
3に係る発明では、前記複数の支持部のうち、前記採水口の上流側に配置される前記支持部は、地下水の流れを基準としたときに、地下水の流れ方向に交差する方向に沿って配置されている。
【0015】
このようにすると、採水口の上流側に位置する支持部に沿って水みちが形成されたとしても、当該水みちを通った水が採水口に直に流入することはないので、管材を通じて採取される水の中に未浄化の水が混入し難くなる。
【0016】
請求項
4に係る発明では、
前記ガイド部および前記管材が、地下水の流れの下流側において前記立坑の内周壁に沿って配置され、前記管材の下部が、屈曲しており、前記採水口が、前記立坑の中央部に配置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る透過性浄化体の構築方法によれば、浄化体内に配置する管材の位置がずれ難くなる。
また、本発明に係る地下水採取構造によれば、透過性浄化体の効果を正確に把握することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、
図1を参照して、透過性浄化体Pを含む浄化壁Bについて説明する。
【0021】
浄化壁Bは、汚染源Sを通過することによって汚染された汚染地下水Wを浄化するものであり、汚染源Sの下流側に形成されている。汚染地下水Wは、浄化壁Bを通過することにより浄化されて浄化地下水W’になる。
【0022】
浄化壁Bは、地中に千鳥状に配置された複数本の透過性浄化体P,P,…によって形成されている。
なお、透過性浄化体P,P,…は、列状に配置されていてもよいし、格子状に配置されていてもよい。
【0023】
図2に示すように、透過性浄化体Pは、立坑9に浄化材1を充填することによって形成されている。
【0024】
浄化材1は、砕石と反応材の混合体である。混合の割合は適宜変えられるものであり、反応材のみでもよい。反応材の種類に制限はなく、例えば鉄粉、活性炭、キレート樹脂、微生物などを反応材として使用することができる。反応材の種類は、汚染物質に応じて適宜選定すればよい。
【0025】
複数の透過性浄化体P,P,…のうち、少なくとも一つの透過性浄化体Pは、地下水採取構造を内蔵している。
地下水採取構造は、透過性浄化体P内の地下水を採水するために設けられるものであり、透過性浄化体Pに埋設されるサポート部材2と、透過性浄化体Pの内部から透過性浄化体Pの上端部に至る地下水採取用の管材3とを備えている。
【0026】
サポート部材2は、立坑9の内周壁に沿って配置される外枠部21と、外枠部21から立坑9の中央部に向かう複数(本実施形態では三つ)の支持部22,22,22と、外枠部21から立ち上がるガイド部23とを備えている。
【0027】
外枠部21は、立坑9の内径よりも小径のリング状部材からなる。なお、本実施形態では、外枠部21が円形のリング(枠)である場合を例示するが、外枠部21の形状等を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、外枠部を多角形状としてもよい。
【0028】
支持部22は、棒状部材からなる。
図3にも示すように、支持部22の一端は、外枠部21に接合されており、支持部22の他端は、立坑9の中央部(外枠部21の中心部)において他の支持部22に接合されている。すなわち、各支持部22は、外枠部21の内側において他の支持部22と交差している。複数の支持部22,22,22は、外枠部21の中心から放射状に配置されている。複数の支持部22,22,22のうち、支持部22同士の交差部分の上流側(
図2においては交差部分の左側)に配置された支持部22,22は、地下水の流れ方向に交差する方向に沿って配置されている。
なお、支持部22の数や配置は、適宜変更してもよい。
【0029】
ガイド部23は、管材3を立坑9の上端に向かわせるためのガイドであり、棒状部材からなる。本実施形態のガイド部23は、外枠部21と支持部22との接合部に立設されている。ガイド部23の下端部は、外枠部21に接合されている。本実施形態では、ガイド部23の上端を立坑9内に位置させているが、ガイド部23の長さを限定する趣旨ではない。図示は省略するが、ガイド部23の上端を、立坑9の上端に位置させてもよいし、立坑9の上端から突出させてもよい。
【0030】
管材3は、地下水の流れの下流側(
図2において右側)において立坑9に沿って配置されている。管材3の下部は、湾曲しており、立坑9の中央部まで延出している。本実施形態の管材3は、内径10mm以下のフレキシブルチューブからなる。細径のチューブ等を使用すれば、地下水の流れを阻害せず、採取する水の量も少なくて済む。
管材3の下端部には、透過性浄化体P内の地下水を管材3内に取り込むための採水口3aが形成されている。採水口3aは、立坑9の中央部(外枠部21の中心部)に配置されている。本実施形態では、管材3の採水口3aを目詰まり防止用のフィルター(網状部材)で覆っている。図示は省略するが、管材3の管壁に設けた複数の透孔を採水口としてもよい。
管材3の下端部は、サポート部材2に保持されている。管材3の固定方法に制限はないが、例えば、結束バンドや番線等を管材3と支持部22とに巻き付けて固定すればよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る透過性浄化体の構築方法について説明する。
本実施形態に係る透過性浄化体の構築方法は、主に掘削工程と、充填工程とを備えている。
【0032】
掘削工程は、
図4の(a)に示すように、汚染地下水を含む地盤Gに立坑9を形成する工程である。
掘削工程では、図示せぬケーシング回転掘削機によりケーシング4を回転圧入し、図示せぬハンマーグラブを使用して、ケーシング4の上端の開口部よりケーシング4内を掘削する。なお、立坑9の形成方法に制限はなく、例えば、リーダ式のケーシング回転掘削機を使用することにより、1台の建設機械でケーシング4の回転圧入と土砂の掘削とを行ってもよい。また、ケーシング4を使用しない方法で立坑9を構築してもよい。
【0033】
充填工程は、
図4の(b)〜(d)に示すように、浄化材1を立坑9に充填するとともに、管材3の下端部を保持したサポート部材2を管材3とともに立坑9内に設置する工程である。
本実施形態の充填工程は、サポート部材2の設置高さまで浄化材1を充填する第一ステップ(
図4の(b)参照)と、第一ステップで充填された浄化材1の上面にサポート部材2を載置する第二ステップ(
図4の(c)参照)と、サポート部材2の上に浄化材1を充填する第三ステップ(
図4の(d)参照)と、ケーシング4を引き抜く第四ステップ(
図4の(e)参照)とを有する。
【0034】
第一ステップでは、
図4の(b)に示すように、立坑9の底部からサポート部材2の設置高さまで、図示しないホッパーを用いて浄化材1を充填する。
第二ステップでは、
図4の(c)に示すように、サポート部材2の外枠部21および支持部22,22,22を第一ステップで充填した浄化材1の上面に載置する。管材3は、サポート部材2の支持部22およびガイド部23に予め固定しておく。サポート部材2は、ガイド部23が地下水の下流側に位置するように配置し、管材3は、立坑9の内周壁に沿って配置する。なお、サポート部材2の外枠部21の外径は、ケーシング4の内径よりも小さい。
第三ステップでは、
図4の(d)に示すように、サポート部材2の上に、図示しない油圧ショベルまたは投入管等を用いて浄化材1を充填する。管材3は、サポート部材2のガイド部23に保持されていて、立坑9の内周壁に沿って配置されているので、立坑9内へ浄化材1を充填する際に管材3が邪魔になり難い。
なお、図示は省略するが、採水位置の深さが異なる複数の管材3を立坑9内に設置する場合には、サポート部材2の上方に設置される他のサポート部材2の設置高さまで浄化材1を充填する。
第四ステップでは、
図4の(e)に示すように、ケーシング4を図示せぬクレーン等により引き上げる。本実施形態では、立坑9の上端まで浄化材1を充填した段階で、ケーシング4を引き上げているが、浄化材1の充填作業とケーシング4の引上げ作業を交互に行ってもよい。
立坑9の上端まで浄化材1を充填し、ケーシング4を全て引き抜くと、透過性浄化体Pが完成する。
【0035】
本実施形態に係る透過性浄化体の構築方法によれば、サポート部材2を使用して地下水採取用の管材3を位置決めするので、浄化材1を充填する際に管材3の位置がずれ難くなる。
【0036】
つまり、本実施形態に係る地下水採取構造によれば、管材3の下端部がサポート部材2に保持されているので、管材3の採水口3aを所定の採水位置に設置することができ、ひいては、透過性浄化体Pの効果を正確に把握することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態に係る地下水採取構造では、サポート部材2が外枠部21を備えていて、この外枠部21が立坑9の内周壁(ケーシング4の内周面)に沿って配置されるので、浄化材1の上面にサポート部材2を載置するだけで、立坑9の内周壁に沿ってサポート部材2が位置決めされるようになる。つまり、本実施形態に係る地下水採取構造によれば、サポート部材2自体が動きにくくなり、ひいては、採水口3aの設置精度が向上する。
【0038】
さらに、複数の支持部22,22,22の交差部分に管材3の下端部を固定すれば、採水口3aを所定の採水位置に安定して固定することができる。
【0039】
また、採水口3aの上流側に配置された支持部22,22を、地下水の流れ方向に交差する方向に沿って配置するとともに、ガイド部23を採水口3aの下流側に配置しているので、支持部22やガイド部23に沿って水みちが形成されたとしても、当該水みちを通った水が採水口3aに流入し難い。つまり、本実施形態に係る地下水採取構造によれば、管材3を通じて採取される水の中に未浄化の水が混入し難くなるので、透過性浄化体Pの効果を正確に把握することが可能となる。
【0040】
なお、サポート部材2の構成は、適宜変更してもよい。
例えば、外枠部21を省略してもよい。
また、本実施形態では、複数の支持部22,22を立坑9の中央部で交差させた場合を例示したが、支持部22を一つとしてもよい。なお、支持部22を一つとする場合には、支持部22の一端のみを外枠部21に接合するか、あるいは、支持部22の両端を外枠部21に接合する。また、本実施形態では、棒状の支持部22を例示したが、網状の支持部を使用してもよい。サポート部材2の材質についても、特に限定はない。
【0041】
また、サポート部材2に代えて、
図5に示すサポート部材2aを使用してもよい。
サポート部材2aは、外枠部21aと、外枠部21aから立坑9の中央部に向かう複数(本実施形態では三つ)の支持部22a,22a,22aと、外枠部21aから立ち上がるガイド部23aと、外枠部21aからガイド部23aに向けて斜めに立ち上がる一対のブレース24a,24aとを備えている。
【0042】
外枠部21aは、C字状を呈している。外枠部21aの両端部は、それぞれ、支持部22aの端部と接合されている。
支持部22aおよびガイド部23aの構成は、サポート部材2の支持部22およびガイド部23の構成と同様である。
ブレース24aは、外枠部21aの端部からガイド部23aの上端に至る棒状部材である。ブレース24aの下端部は、外枠部21aに接合されており、ブレース24aの上端部は、ガイド部23aの上端部に接合されている。
【0043】
図5のサポート部材2aによれば、地下水流の上流側において外枠部21aが途切れているので、透過性浄化体Pに流入する汚染地下水の流れを阻害し難くなる。また、ガイド部23aがブレース24a,24aによって支えられているので、ガイド部23aが変形し難くなる。
【0044】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。