(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
(構成)
1.ガスタービンプラント
図1は、本実施形態に係るガスタービン燃焼器(以下、燃焼器)を適用したガスタービンプラントの一構成例を表す図である。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービンプラント1は、圧縮機2、燃焼器3、タービン4及び発電機11を備えている。
【0013】
圧縮機2は、吸気部(不図示)を介して吸い込まれた空気101を圧縮して高圧の圧縮空気(燃焼空気)102を生成し、燃焼器3に供給する。燃焼器3は、圧縮機2から供給された圧縮空気102と燃料系統200(後述する)から供給された燃料とを混合して燃焼し、高温の燃焼ガス110を生成してタービン4に供給する。タービン4は、燃焼器3から供給された燃焼ガス110が膨張することにより回転駆動される。タービン4を駆動した燃焼ガス110は、排出ガス113としてタービン4から排出される。発電機11は、タービン4と同軸に連結され、タービン4の回転動力を電力に変換する。なお、本実施形態では、圧縮機2、タービン4及び発電機11はシャフト15により相互に連結されている。
【0014】
2.燃焼器
燃焼器3は、ガスタービンのケーシング16に取り付けられている。燃焼器3は、尾筒(トランジションピース)6、エンドカバー7、バーナ8、ディフューザ9、外筒10、内筒(燃焼器ライナ)12、車室13、ライナフロースリーブ14、トランジションピースフロースリーブ19及び燃料系統200を備えている。
【0015】
内筒12は、バーナ8の燃焼ガス110の流れ方向の下流側に設けられている。以下、燃焼ガス110の流れ方向の「上流」「下流」を「燃焼ガス上流」「燃焼ガス下流」と言う。内筒12は円筒状に形成され、圧縮機2から供給される圧縮空気102と燃焼器3で生成される燃焼ガス110とを隔てている。内筒12の外周側に外筒10及びライナフロースリーブ14が設けられている。外筒10は、内筒12の外周側の燃焼ガス上流側を覆うように円筒状に形成されている。ライナフロースリーブ14は、外筒10の燃焼ガス下流側に設けられている。ライナフロースリーブ14は、内筒12の外周側の燃焼ガス下流側を覆うように円筒状に形成されている。内筒12と外筒10及びライナフロースリーブ14との間に形成される環状の空間は、圧縮機2から燃焼器3に供給される圧縮空気102が流れる環状流路(第1環状流路)17を構成している。本実施形態では、圧縮機2から燃焼器3に供給された圧縮空気102は、ディフューザ9を通って車室13に導かれる。ディフューザ9は、圧縮機2から燃焼器3に供給された圧縮空気102を減速させて、圧力を回復する機能を有している。車室13に導かれた圧縮空気102の一部は、車室13から第1環状流路17に流入する。第1環状流路17を流れる圧縮空気102は、内筒12の外周面側から内筒12を対流冷却する。内筒12の壁面には多数の孔(不図示)が形成されている。第1環状流路17を流れる圧縮空気102の一部は、内筒12の壁面に形成された多数の孔から内筒12の内部へ冷却空気103として流入し、内筒12の内周面のフィルム冷却に使用される。第1環状流路17を流れる圧縮空気102のうち内筒12のフィルム冷却に使用されなかった分は、燃焼用空気104として第1環状流路17を流れてバーナ8に到達する。バーナ8に到達した燃焼用空気104は、燃料系統200からバーナ8に供給された燃料と共に燃焼室5(後述する)内に噴射され、燃焼される。エンドカバー7は、外筒10の第1環状流路17を流れる圧縮空気102の流れ方向の下流側(以下、圧縮空気下流側)に設けられている。エンドカバー7は、外筒10の圧縮空気下流側の端部を閉止している。
【0016】
内筒12の内部には燃焼室5が形成されている。燃焼室5では、圧縮機2から供給された圧縮空気102と燃料系統200から供給された燃料との混合気が燃焼され、燃焼ガス110が生成される。内筒12のバーナ8から遠い側(燃焼ガス下流側)には、尾筒6の一端が挿し込まれている。尾筒6の他端は、燃焼器3とタービン4とを接続する管路(不図示)に接続している。尾筒6は、燃焼室5で発生した燃焼ガス110をタービン4に導く機能を有する。ライナフロースリーブ14の下流側にトランジションピースフロースリーブ19が設けられている。トランジションピースフロースリーブ19は、尾筒6の外周側を覆うように円筒状に形成されている。尾筒6とトランジションピースフロースリーブ19との間に形成される環状の空間は、車室13から流入した圧縮空気102を第1環状流路17に導く環状流路(第2環状流路)18を構成している。つまり、車室13に導かれた圧縮空気102のうち第2環状流路18に流入した分は、第2環状流路18を経由して第1環状流路17に導かれる。第2環状流路18を流れる圧縮空気102は、尾筒6の外周面側から尾筒6を対流冷却する。
【0017】
燃料系統200は、燃料供給源210、共通燃料系統211及び第1,2燃料系統201,202を備えている。燃料供給源210は、第1,2燃料系統201,202に供給される燃料の供給源である。共通燃料系統211は、燃料供給源210に接続している。共通燃料系統211には、燃料遮断弁(開閉弁)60が設けられている。第1,2燃料系統201,202は、共通燃料系統211から並列に分岐し、エンドカバー7の内部に設けられた燃料ヘッダ23(第1,2燃料ヘッダ23A,23B)に接続している。このように、燃料系統を複数(本実施形態では2つ)とすることにより、ガスタービンプラント1の運転の自由度を高めることができる。なお、共通燃料系統211から分岐する燃料系統の数は2つに限定されない。第1燃料系統201には、第1燃料圧力調整弁61a及び第1燃料流量調整弁61bが設けられている。第2燃料系統202には、第2燃料圧力調整弁62a及び第2燃料流量調整弁62bが設けられている。第1,2燃料圧力調整弁61a、62a及び第1,2燃料流量調整弁61b、62bは、個別に制御可能に構成されている。
【0018】
燃料供給源210から第1,2燃料系統201,202を通じて第1,2燃料ヘッダ23A,23Bに供給された燃料は、燃料ノズル22(後述する)の先端から噴射されて燃焼室5に供給される。第1燃料系統201を通じて第1燃料ヘッダ23Aに供給される燃料(以下、F1燃料)の流量は、第1燃料流量調整弁61bによって調整される。同様に、第2燃料系統202を通じて第2燃料ヘッダ23Bに供給される燃料(以下、F2燃料)の流量は、第2燃料流量調整弁62bによって調整される。本実施形態では、第1,2燃料流量調整弁61b、62bによりF1,F2燃料の流量を個別に調節することで、ガスタービンプラント1の発電量が制御される。なお、F1,F2燃料には、例えば、コークス炉ガス、製油所オフガス、石炭ガス化ガス等の水素含有燃料や液化天然ガス(LNG)などのガス燃料を採用することができる。
【0019】
3.バーナ
図2は本実施形態に係る燃焼器のバーナ付近の構造を示す部分断面図である。
【0020】
図2に示すように、バーナ8は、内筒12の中心軸(不図示)を中心とした同心円状の複数(本実施形態では3つ)の環状列に区分されており、これら複数の環状列を内周側から外周側に向かって第1列、第2列、第3列と適宜称する。
【0021】
本実施形態では、複数の環状列のうち最も内側の領域を構成する第1列が第1バーナ8Aを構成し、第2列が第2バーナ8Bを構成し、第3列が第3バーナ8Cを構成している。第1バーナ8Aに上述した第1燃料ヘッダ23Aを介してF1燃料が供給され、第2,3バーナ8B,8Cに上述した第2燃料ヘッダ23Bを介してF2燃料が供給される。第1〜3バーナ8A〜8Cに供給されたF1,2燃料は、燃料ノズル22に流入して燃焼室5に噴射される。バーナ8は、複数の燃料ノズル22、空気孔プレート20及びプレートリップ25を備えている。
【0022】
3−1.燃料ノズル
複数の燃料ノズル22は、エンドカバー7に支持されている。複数の燃料ノズル22は円筒状に形成されており、燃料系統200(
図1を参照)から供給された燃料を空気孔プレート20に向かって噴射する。複数の燃料ノズル22は、同心円状に第1〜3列に配置されており、各列において周方向に間隔をあけて複数設けられている(環状に配置されている)。
【0023】
3−2.空気孔プレート
空気孔プレート20は、内筒12と同軸の円盤状のプレートであって、複数の燃料ノズル22に対して燃料の流れ方向の下流側に配置されている。以下、燃料の流れ方向の「上流」「下流」を「燃料上流」「燃料下流」と言う。空気孔プレート20の外周側にプレートリップ25が設けられている。
【0024】
図4は、
図2の点線で囲んだ領域Aの拡大図である。
図4に示すように、空気孔プレート20の外周面は、プレートリップ25に接合する第1外周面(第1面)28と、第1面28の燃料下流側に設けられ、プレートリップ25の内周面との間に空間40を形成するように第1面28よりも空気孔プレート20の径方向内側に位置する第2外周面(第2面)29とを備えている。つまり、空気孔プレート20の第2面29は空間40を挟んでプレートリップ25の内周面と対向するように形成されており、空気孔プレート20は第1面28を介してプレートリップ25に支持されている。
【0025】
図3は、本実施形態に係る空気孔プレートを燃焼ガス下流側から見た図である。
【0026】
図3に示すように、空気孔プレート20には、複数の燃料ノズル22に対応する複数の空気孔21が形成されている。つまり、複数の空気孔21は、第1〜3列に同心円状に配置され、各空気孔列の全周に渡って設けられている(環状に配置されている)。複数の空気孔21は、1つの空気孔が1つの燃料ノズル22の燃料下流側にその燃料ノズル22に対応して配置されている。本実施形態では、複数の燃料ノズル22の先端が複数の空気孔21に挿し込まれている。なお、空気孔プレート20を複数の燃料ノズル22の先端から離間して配置し、複数の燃料ノズル22の先端が複数の空気孔21に挿し込まれないように構成しても良い。
【0027】
複数の空気孔21は、燃料上流側及び下流側の開口部を構成する2つの楕円と母線とが直交しない斜円柱状に形成されている。以下、空気孔33Bの燃料上流側の開口部を「入口」、燃料下流側の開口部を「出口」と言う。複数の空気孔21は、旋回角を有する旋回空気孔であり、出口が入口に対して空気孔プレート20の周方向にずれている。つまり、複数の空気孔21は、入口及び出口の中心を結んで得られる中心軸が空気孔プレート20に対して周方向に傾斜するように形成されている。そのため、複数の空気孔21に流入した燃焼用空気104には旋回成分が付与される。上述したように、空気孔プレート20は内筒12と同軸に配置されているので、複数の空気孔21から燃焼室5に噴出した燃焼用空気104は内筒12の中心軸周りに旋回する。これにより、燃焼室5内に循環渦80が形成され、火炎83が安定化される。
【0028】
3−3.プレートリップ
図2に示すように、プレートリップ25は、空気孔プレート20の外周側を覆うように円筒状に形成されている。プレートリップ25は、スプリングシール26を介して内筒12の内側に保持されている。スプリングシール26は、プレートリップ25の外周面と内筒12の内周面との間に設けられている。プレートリップ25の外周面と内筒12の内周面との間に形成される環状の空間は、燃焼用空気104の一部をリップ冷却空気105として燃焼室5のプレートリップ25側の外周部に供給する外周流路27を構成している。スプリングシール26には、外周流路27を流れるリップ冷却空気105が流通可能な孔部(不図示)が形成されている。プレートリップ25の燃料上流側の端部は、燃料の流れ方向において、空気孔プレート20の燃料上流側の端部と一致している。一方、プレートリップ25の燃料下流側の端部は、燃料の流れ方向において、空気孔プレート20の燃料下流側の端部よりも燃焼ガス下流側に延在して(突出して)設けられている。空気孔プレート20に対してプレートリップ25の燃料の流れ方向における厚みを大きく確保することで、プレートリップ25を介して空気孔プレート20がスプリングシール26によって内筒12に対して確実に保持される。なお、本実施形態では、プレートリップ25は空気孔プレート20と同じ材質で形成されている。
【0029】
図4に示すように、プレートリップ25には、連通孔41が形成されている。連通孔41は、空気孔プレート20の第2面29に対向する位置に、プレートリップ25を空気孔プレート20の径方向に貫通するように設けられており、外周流路27と空間40とを連通している。そのため、外周流路27を流れるリップ冷却空気105の一部は、連通孔41を介して循環流用空気106として空間40に導かれる。空間40に導かれた循環流用空気106は、空間40をプレートリップ25の軸方向に流れて空間40から燃焼室5に流入し、プレートリップ25の内周面に沿って燃焼室5を流れる。
【0030】
図5は、
図4のV−V線の矢視断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、連通孔41はプレートリップ25の周方向に等間隔に複数設けられている。
【0031】
(動作)
本実施形態に係るバーナ8の周辺における燃料と空気の流れについて
図2を参照して説明する。
【0032】
図2に示すように、内筒12のフィルム冷却に利用されなかった圧縮空気102は、第1環状流路17をバーナ8に向かって流れる。その後、この圧縮空気102は、エンドカバー7で堰き止められて転向し、燃焼用空気104として空気孔プレート20の空気孔21に流入する。この燃焼用空気104の一部は、リップ冷却空気105として外周流路27に流入し、第1環状流路17を流れる圧縮空気102の流れ方向と逆向きに流れる。リップ冷却空気105は、スプリングシール26の孔部を通り抜けて、燃焼室5の外周部に噴射される。また、外周流路27を流れるリップ冷却空気105の一部は、循環流用空気106としてプレートリップ25に形成された連通孔41を介して空間40に導かれ、プレートリップ25の内周面に沿って燃焼室5に流入する。
【0033】
一方、燃料系統200(
図1を参照)から燃料ヘッダ23を介して燃料ノズル22に供給された燃料は、燃料ノズル22の先端の噴射口から空気孔プレート20の空気孔21内に噴射される。上述したように、空気孔21は入口及び出口を構成する2つの楕円と母線とが直交しない斜円柱状に形成されているため、空気孔21内に噴射された燃料は、燃焼用空気104と混合しながら旋回方向の力成分が付与される。そして、空気孔21の出口から噴出した燃料と燃焼用空気104の混合気は燃焼室5内に循環渦80を形成しながら燃焼され、燃焼室5内に火炎83が形成される。
【0034】
(効果)
(1)
図6は、比較例に係る燃焼器のバーナ付近の構造を示す部分断面図である。
【0035】
図6に示した燃焼器のバーナは、空気孔プレートPの外周面の全面がプレートリップLに接合しており、空気孔プレートPとプレートリップLとの間に空間は存在せず、本実施形態における連通孔41に相当する要素もない。
【0036】
比較例に係る燃焼器のバーナでは、空気孔プレートPの空気孔Hの出口付近で形成される火炎Fからの熱により空気孔プレートPの燃焼室C側に臨む壁面(燃焼室側壁面)の温度が上昇し、空気孔プレートPに径方向外側への熱伸びEが生じる(つまり、空気孔プレートPが径方向外側に膨張する)。しかしながら、上述したように、空気孔プレートPの外周部はプレートリップLで拘束されているため、空気孔プレートPの燃焼室側壁面とプレートリップLとの接合箇所に熱応力Sが発生する。特に、水素含有燃料を燃焼器に供給する燃料として使用する場合、水素は最小着火エネルギー(着火に必要な最小エネルギー)が低く着火し易い上、可燃範囲が広く燃焼速度が速いため、空気孔プレートPの燃焼室側壁面に火炎Fがより接近する可能性がある。この場合、火炎Fからの熱量が増加するため、空気孔プレートPの温度がより上昇し、前出の接合箇所に発生する熱応力Sが増加する。上述したように、空気孔プレートPとプレートリップLとの接合部に熱応力Sが発生すると燃焼器の信頼性が低下し得る。
【0037】
また、比較例に係る燃焼器のバーナでは、プレートリップLに近い空気孔プレートPの燃焼室側壁面付近の領域は淀み域となるため、この領域に外側循環流Xが生じ得る。この場合、空気孔プレートPの最外周に配置された空気孔の出口付近で生成された高温の燃焼ガスの一部が、外側循環流Xによって、前出の領域に戻される。これにより、空気孔プレートPの径方向外側の燃焼室側壁面の温度がより上昇し、熱応力Sが増加する。
【0038】
これに対し、
図4に示すように、本実施形態では、空気孔プレート20とプレートリップ25との間に空間40が形成されている。そのため、空気孔プレート20に発生した熱伸び90を空間40で吸収し、熱応力91が発生する位置を前出の接合箇所から空間40の底部(第1面28と第2面29を繋ぐ壁面30と、第2面29との接続部)に移すことができる。空間40の底部は空気孔プレート20の燃焼室側壁面よりも燃焼室5から遠く、燃焼ガスからの伝熱量が小さくなるとともに、エンドカバー7側からの燃焼用空気104による冷却作用も増すため、空気孔プレート20の燃焼室側壁面よりもメタル温度が低くなる。
【0039】
加えて、本実施形態では、プレートリップ25に外周流路27と空間40とを連通する連通孔41を設けている。そのため、外周流路27を流れるリップ冷却空気105の一部を循環流用空気106として空間40に導き、プレートリップ25の内周面に沿って燃焼室5に噴射して、比較例で説明した外側循環流Xを燃焼ガス下流側に押し流すことができる。これにより、一部の燃焼ガスの逆流による空気孔プレート20の温度上昇を抑制することができる。また、循環流用空気106をプレートリップ25の内周面に沿って燃焼室5に噴射することにより、プレートリップ25の内周面を冷却できると同時にプレートリップ25への火炎83の接近を抑制することができる。更に、循環流用空気106を空間40に導くことにより、空間40の底部及び空気孔プレート20を冷却することができる。
【0040】
以上のことから、空気孔プレート20の空間40の底部に発生する熱応力91を低減し、燃焼器3の信頼性を確保することができる。
【0041】
(2)本実施形態では、連通孔41をプレートリップ25の周方向に等間隔に複数設けている。そのため、燃焼室5に対する循環流用空気106の噴射位置の偏りを抑え、空気孔プレート20の温度上昇を均一に抑制することができる。
【0042】
<第2実施形態>
(構成)
図7は本実施形態に係る燃焼器のバーナ付近の構造を示す部分断面図、
図8は本実施形態に係る空気孔プレートを燃焼ガス下流側から見た図である。
図7,8において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る燃焼器は、複数の燃料ノズルと空気孔とを配置して構成されたバーナを複数備えたいわゆるマルチ噴射式ガスタービン燃焼器であって、燃料系統200の代わりに燃料系統250及び起動燃料系統260を備え、起動ノズル24を更に備える点で第1実施形態に係る燃焼器3と異なる。その他の構成は、第1実施形態に係る燃焼器3と同様である。また、本実施形態に係る燃焼器を備えたガスタービンプラントの構成も第1実施形態に係るガスタービンプラント1と同様である。
【0044】
図7,8に示すように、本実施形態に係る燃焼器は、燃焼室5の上流側に内筒12と同軸に配置された1つのバーナ(中央バーナ)32と、中央バーナ32の周囲に配置された6つのバーナ(外周バーナ)33とを備えている。
【0045】
中央バーナ32は、例えば、ガスタービンの起動時に用いられたり、負荷運転時に燃焼器全体の燃焼安定性を確保するために用いられる。中央バーナ32は、本実施形態では同心円状の2つの環状列に区分されており、各環状列を内周側から外周側に向かって第1列、第2列と適宜称する。中央バーナ32は、起動ノズル24と、第1,2列に配置された複数の燃料ノズル22と、第1,2列に配置された複数の空気孔21からなる中央空気孔群42とを備えている。
【0046】
起動ノズル(中央燃料ノズル)24は、燃焼室5に起動燃料を供給するものである。起動ノズル24は、エンドカバー7により内筒12と同軸に支持されている。つまり、起動ノズル24は、その先端部が空気孔プレート20の中心に位置するように設けられている。中央空気孔群42は、空気孔プレート20の中央に形成されている。
【0047】
外周バーナ33は、本実施形態では同心円状の3つの環状列に区分されており、各環状列を内周側から外周側に向かって第1列、第2列、第3列と適宜称する。外周バーナ33は、第1〜3列に配置された複数の燃料ノズル22と、第1〜3列に配置された複数の空気孔21からなる外周空気孔群44とを備えている。
【0048】
外周空気孔群44は、空気孔プレート20の中央空気孔群42の外周側に中央空気孔群42を囲うように形成されている。本実施形態では、中央バーナ32及び外周バーナ33は空気孔プレート20を共用している。
【0049】
図7に示すように、燃料系統250は、燃料供給源210、共通燃料系統211及び第3〜5燃料系統203〜205を備えている。第3〜5燃料系統203〜205は、共通燃料系統211から並列に分岐している。第3〜5燃料系統203〜205は、エンドカバー7の内部に設けられた燃料ヘッダ43(第3〜5燃料ヘッダ43A〜43C)に接続している。第3燃料系統203には第3燃料圧力調整弁73a及び第3燃料流量調整弁73b、第4燃料系統204には第4燃料圧力調整弁74a及び第4燃料流量調整弁74b、第5燃料系統205には第5燃料圧力調整弁75a及び第5燃料流量調整弁75bがそれぞれ設けられている。第3〜5燃料圧力調整弁73a〜75a及び第3〜5燃料流量調整弁73b〜75bは、個別に制御可能に構成されている。
【0050】
燃料供給源210から第3〜5燃料系統203〜205を通じて第3〜5燃料ヘッダ43A〜43Cに供給された燃料は、燃料ノズル22の先端から噴射されて燃焼室5に供給される。第3燃料系統203を通じて第3燃料ヘッダ43Aに供給される燃料(以下、F3燃料)の流量は、第3燃料流量調整弁73bによって調整される。同様に、第4,5燃料系統204,205を通じて第4,5燃料ヘッダ43B,43Cに供給される燃料(以下、F4,F5燃料)の流量は、第4,5燃料流量調整弁74b,75bによって調整される。第3〜5燃料流量調整弁73b〜75bによりF3〜F5燃料の流量を個別に調節することで、ガスタービンの運転状態に応じて、各バーナの環状列に供給する燃料流量を制御することができる。例えば、外周バーナ33の1列目から噴射される燃料は火炎の起点を形成し得るため、外周バーナ33の1列目に供給する燃料流量を個別に制御することができると、火炎の起点を強固にして、より広い負荷範囲に対して安定燃焼を維持することができる。
【0051】
起動燃料系統260は、起動燃料供給源270及び起動系統206を備えている。起動燃料供給源270は、起動系統206に供給される起動燃料の供給源である。起動系統206は、起動燃料供給源270と起動ノズル24を接続している。起動系統206には、起動燃料圧力調整弁76a及び起動燃料流量調整弁76bが設けられている。
【0052】
起動燃料供給源270から起動系統206を通じて起動ノズル24に供給された起動燃料は、起動ノズル24の先端から噴射されて燃焼室5に供給される。起動系統206を通じて起動ノズル24に供給される起動燃料の流量は、起動燃料流量調整弁76bによって調整される。なお、起動燃料には、例えば、軽油、重油等の液体燃料を採用することができる。
【0053】
図8に示すように、本実施形態では、連通孔41は、プレートリップ25の周方向において、外周空気孔群44と対応する位置にそれぞれ複数(
図8では各5つ)設けられている。すなわち、連通孔41は、プレートリップ25の周方向において、外周空気孔群44と同位相に設けられていて、隣り合う2つの外周バーナ33の間に対応する位置には設けられていない。
【0054】
(効果)
本実施形態のように、マルチ噴射式ガスタービン燃焼器の場合でも第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態では、以下の効果が得られる。
【0055】
第1実施形態で説明したように、空気孔21は入口及び出口の中心を結んで得られる中心軸が空気孔プレート20に対して周方向に傾斜して形成されている。そのため、外周空気孔群44の最外周に配置された空気孔21の一部(プレートリップ25の内周面に対向する位置に配置されているもの)から噴射された燃料により形成される燃焼ガス(外周バーナ燃焼ガス)112が、プレートリップ25の内周面に接触してプレートリップ25の内周面を加熱する可能性がある(
図8を参照)。
【0056】
これに対し、本実施形態では、連通孔41を外周空気孔群44と対応する位置にそれぞれ複数設けているので、連通孔41から空間40に流入してプレートリップ25の内周面に沿って燃焼室5を流れる循環流用空気106により、外周バーナ燃焼ガス112を燃焼ガス下流側に押し流すことができる。そのため、外周バーナ燃焼ガス112によるプレートリップ25の内周面の加熱を抑制することができる。加えて、循環流用空気106が外周バーナ燃焼ガス112と混合することにより、外周バーナ燃焼ガス112の温度を低減させることができるので、燃焼ガス110の温度を局所的に低減してNOx排出量を抑制することができる。
【0057】
<第3実施形態>
(構成)
図9は、本実施形態に係る空気孔プレートを燃焼ガス下流側から見た図である。
図9において、上記第2実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
本実施形態に係る燃焼器は、連通孔41を設ける位置が第2実施形態に係る燃焼器と異なる。その他の構成は、第2実施形態に係る燃焼器と同様である。
【0059】
図9に示すように、本実施形態では、連通孔41は、プレートリップ25の周方向において、隣り合う2つの外周空気孔群44の間に対応する位置にそれぞれ複数(
図9では5つ)設けられている。
【0060】
(効果)
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態では以下の効果が得られる。
【0061】
図9に示すように、起動ノズル24から噴射される起動燃料と、中央バーナ32の空気孔21から噴射される燃料とで形成された燃焼ガス(中央バーナ燃焼ガス)111が、隣り合う2つの外周バーナ33の間の領域を通過して燃焼室5の外周部へ広がると、プレートリップ25の内周面のうち隣り合う2つの外周バーナ33の間の領域に対応する部分が中央バーナ燃焼ガス111により加熱される可能性がある。
【0062】
また、起動ノズル24から燃焼室5に噴射された起動燃料のうち蒸発し切れなかった燃料(未蒸発燃料)があると、中央バーナ燃焼ガス111によって燃焼室5の外周部へ運ばれ、プレートリップ25の内周面に付着してコーキングする可能性がある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、連通孔41を隣り合う2つの外周空気孔群44の間に対応する位置にそれぞれ複数設けているので、連通孔41から空間40に流入してプレートリップ25の内周面に沿って燃焼室5を流れる循環流用空気106により、中央バーナ燃焼ガス111を燃焼ガス下流側に押し流すことができる。そのため、中央バーナ燃焼ガス111によるプレートリップ25の内周面の加熱を抑制することができる。また、循環流用空気106で中央バーナ燃焼ガス111が燃焼ガス下流側に押し流されることにより、未蒸発燃料のプレートリップ25の内周面への付着を抑制することができる。なお、本実施形態では、中央バーナ32の空気孔21から噴出する混合気と、外周バーナ33の空気孔21から噴出する混合気との旋回方向が逆向きの場合を例示しているが、同じ向きの場合でも同様の作用効果が得られる。
【0064】
<その他>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することも可能である。
【0065】
上述した各実施形態では、空気孔プレート20の外周面の一部を空気孔プレート20とプレートリップ25の接合面より空気孔プレート20の径方向内側の位置に形成し、空気孔プレート20とプレートリップ25の間に空間40を形成する構成を例示した。しかしながら、本発明の本質的効果は、バーナに発生する熱応力を低減し、ガスタービン燃焼器の信頼性を確保することであり、この本質的効果を得る限りにおいては、必ずしもこの構成に限定されない。例えば、プレートリップ25の内周面の一部を空気孔プレート20とプレートリップ25の接合面よりプレートリップ25の径方向外側の位置に形成し、空気孔プレート20とプレートリップ25の間に空間40を形成しても良い。
【0066】
また、上述した第1実施形態では、連通孔41をプレートリップ25の周方向に等間隔に複数設けた構成を例示した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしもこの構成に限定されない。例えば、連通孔41をプレートリップ25の周方向に間隔を変えて設けても良い。
【0067】
また、上述した第1実施形態では、空気孔プレート20の空気孔21を各環状列の全周に渡って形成した構成を例示した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしもこの構成に限定されない。例えば、空気孔プレート20の各環状列において、環状列の一部分に空気孔21を形成しても良い。