特許第6484559号(P6484559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピックの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484559
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】感温特徴を有する新規な両性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20190304BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20190304BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20190304BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20190304BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20190304BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20190304BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20190304BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20190304BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C08F290/04
   C08F8/00
   A61Q5/00
   A61Q5/12
   A61K8/81
   A61Q19/10
   A61Q5/06
   A61Q5/02
   A61K47/32
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-548702(P2015-548702)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-503085(P2016-503085A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】FR2013052856
(87)【国際公開番号】WO2014096595
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】1262530
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】398057293
【氏名又は名称】ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ポール マロ
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ ブラウン
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−081148(JP,A)
【文献】 特表2002−534679(JP,A)
【文献】 特開2003−026737(JP,A)
【文献】 特開2010−077189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00 − 299/08
C08F 220/00 − 220/70
A61K 9/00 − 9/72
A61K 47/00 − 47/69
A61K 8/00 − 8/99
A61Q 1/00 − 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロモノマーのサイドセグメントがグラフト化されているポリマー骨格からなる櫛型コポリマーであって、
該ポリマー骨格が、該櫛型コポリマーの構成成分モノマー単位100mol%に対して、
55mol%より大きく90mol%までの、2−メチル2−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(以後ATBSと示す)に由来するモノマー単位であって、遊離しているか、部分的に塩化しているか、又は完全に塩化している、モノマー単位と、
1mol%〜20mol%の、
式(I):
CH=C(R)−C(=O)−Y−(CH−N(R)(R) (I)
(式中、mは1〜4の数を表し、YはO又はNHを表し、Rは水素原子又はメチルラジカルを表し、R及びRは、同一又は異なって、メチルラジカル又はエチルラジカルを表す)、のモノマーに由来するモノマー単位と、
0.005mol%〜1mol%の、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を含む少なくとも1つの架橋性モノマーに由来するモノマー単位と、
からなることと、
前記マクロモノマーのサイドセグメントが、該櫛型コポリマーの100mol%構成成分に対して、9mol%〜30mol%の、
式(II):
CH=C(R)−C(=O)−N(R)(R) (II)(式中、Rは水素原子又はメチルラジカルを表し、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は任意にヒドロキシル基で置換される、1個〜3個の炭素原子を含むアルキルラジカルを表し、R又はRラジカルの少なくとも一方は水素原子を表すものでないことが理解される)
のN−アルキルアクリルアミド又はN,N−ジアルキルアクリルアミドの重合によって生
じることと、
前記マクロモノマーのサイドセグメントが、
式(IVa):
HS−R−NH (IVa)、又は
式(IVb):
HS−R−C(=O)−OH (IVb)
(式(IVa)又は式(IVb)中、Rは、1個〜4個の炭素原子を含む二価ラジカルを表す)
の化合物由来の骨格を介してグラフト化されることと、
前記式(I)のモノマーに由来するモノマー単位が、
ジメチルアミノエチルメタクリレート、又は、
N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、
に由来することと、
前記式(II)の化合物が、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド又はN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドから選択されることと、
を特徴とする、櫛型コポリマー。
【請求項2】
前記マクロモノマーのサイドセグメントが、Rが水素原子又はメチルラジカルを表し、Rが水素原子を表し、Rが、任意にヒドロキシル基で置換される1個〜3個の炭素原子を含むアルキルラジカルを表す、上記に規定される式(II)の化合物の重合によって生じることを特徴とする、請求項1に記載の櫛型コポリマー。
【請求項3】
前記式(II)の化合物がN−イソプロピルアクリルアミドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の櫛型コポリマー。
【請求項4】
前記マクロモノマーのサイドセグメントが、Rが水素原子又はメチルラジカルを表し、R及びRがそれぞれメチルラジカル又はエチルラジカルを表す、上記に規定される式(II)の化合物の重合によって生じることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の櫛型コポリマー。
【請求項5】
化粧品組成物又は医薬組成物における、より詳細には、毛髪のケア及び/又は毛髪のコンディションを整えることを対象としたものにおける、増粘剤としての、請求項1〜4のいずれか一項に記載の櫛型コポリマーの使用。
【請求項6】
増粘剤として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の櫛型コポリマーを有効量含むことを特徴とする、化粧品組成物又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願の主題は、新規な感温性両性コポリマー、それらの製造方法、及び化粧品におけるそれらの使用である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、主としてアニオン性であるものの、カチオン性部位も含む新規な架橋された高分子両性電解質を記載している。これらの高分子両性電解質によって、それらを高剪断にかけると、水性液における膨潤後に、変形可能で、温度安定性かつ機械的に安定なミクロゲルがもたらされ、また、これらのミクロゲルは、岩のアニオン性部位に不可逆的に吸着する。それ故、これらの出願は、炭化水素生産井(puits producteurs d'hydrocarbures)の処理に、とりわけ水の浸入を防止する上で実行可能である。
【0003】
主としてアニオン性であるものの、少ない割合のカチオン性部位も含む、かかる架橋された高分子両性電解質は、それらの良好な吸着特性に起因して皮膚及び頭皮上でも有益に使用することができる。しかしながら、特許文献1に開示されるものは化粧品に使用しても、皮膚又は毛髪に十分に吸着されない。それは、特許文献2に開示される熱増粘性ポリマーについても同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2932183号
【特許文献2】国際公開第00/40958号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目下、良好な吸着特性を有し、かつ温度に依存する増粘特性を有するポリマーの必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この理由から、第1の態様によれば、この発明の主題は、マクロモノマーのサイドセグメントがグラフト化されているポリマー骨格からなる櫛型コポリマーであって、該ポリマー骨格が、該櫛型コポリマーの構成成分モノマー単位(d'unites monomeriques)100mol%に対して、
55mol%より大きく90mol%まで、より詳細には60mol%〜80mol%の、2−メチル2−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(以後ATBSと示す)に由来するモノマー単位であって、遊離しているか、部分的に塩化しているか、又は完全に塩化している、モノマー単位と、
1mol%〜20mol%、より詳細には4mol%〜15mol%の、カチオン性モノマーに由来する単量体単位(d'unites monomeriques)、又は式(I):
CH=C(R)−C(=O)−Y−(CH−N(R)(R) (I)
(式中、mは1〜4の数を表し、YはO又はNHを表し、Rは水素原子又はメチルラジカルを表し、R及びRは、同一又は異なって、メチルラジカル又はエチルラジカルを表す)、のモノマーに由来するモノマー単位のいずれかと、
任意に、0.005mol%〜1mol%、より詳細には0.01mol%〜0.5mol%の、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を含む少なくとも1つの架橋性モノマーに由来するモノマー単位と、
からなることと、
前記マクロモノマーのサイドセグメントが、該櫛型コポリマーの100mol%構成成分に対して、9mol%〜30mol%、より詳細には15mol%〜25mol%の、式(II):
CH=C(R)−C(=O)−N(R)(R) (II)(式中、Rは水素原子又はメチルラジカルを表し、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は任意にヒドロキシル基で置換される、1個〜3個の炭素原子を含むアルキルラジカルを表し、R又はRラジカルの少なくとも一方は水素原子を表すものでないことが理解される)
のN−アルキルアクリルアミド又はN,N−ジアルキルアクリルアミドの重合によるものであることとを特徴とする、櫛型コポリマーである。
【0007】
少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を含む架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、テトラアリルオキシエタン、エチレングリコールジアクリレート、ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはメチレンビス(アクリルアミド)、又はこれらの化合物の混合物が挙げられる。
【0008】
上記に規定される方法の特定の態様によれば、上記の段階e)において、架橋剤をより詳細には0.01%以上かつ0.25%以下のモル比率で用いる。
【0009】
本発明の2つの特定の態様によれば、上記に規定される上記櫛型コポリマーは、上記ポリマー骨格が、式(I)のモノマーに由来するモノマー単位を含む場合、上記式(I)中、mが2若しくは3に等しく、及び/又はR及びRがそれぞれメチルラジカルを表すことを特徴とする。
【0010】
これらの特定の態様によれば、上記に規定される櫛型コポリマーは、上記ポリマー骨格が、式(I)のモノマーに由来するモノマー単位を含む場合、これらのモノマー単位が、
ジメチルアミノエチルメタクリレート(以後DMAEMAと示す)、又は、
N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(以後DMAPAAと示す)、
に由来することを特徴とする。
【0011】
カチオン性モノマーは、上記に規定される櫛型コポリマーに関して、主として第4級アンモニウム官能基及び少なくとも1つの(une liaison)エチレン結合を含むモノマーを意味する。そのようなモノマーは、特に強酸の塩の形態で一般的に入手可能である。
【0012】
強酸の塩は、より詳細には上記第4級アンモニウム官能基を有するモノマーの硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩又は臭化物、塩化物若しくはヨウ化物等のハロゲン化物を意味する。
【0013】
本発明の別の特定の態様によれば、上記に規定される上記櫛型コポリマーは、上記ポリマー骨格が、カチオン性モノマーに由来するモノマー単位を含む場合、これらのモノマー単位が、式(III):
CH=C(R)−C(=O)−Y−(CH−N(R)(R)(R10)X (III)
(式中、rは1〜4の数を表し、YはO又はNHを表し、Rは水素原子又はメチルラジカルを表し、R及びR及びR10は、同一又は異なって、メチルラジカル又はエチルラジカルを表し、アニオンXは、臭化物イオン又は塩化物イオンから選択されるアニオンを表す)、のカチオン性モノマーに由来することを特徴とする。
【0014】
この他の特定の態様によれば、上記ポリマー骨格が、式(III)のカチオン性モノマーに由来するモノマー単位を含む場合、これらのモノマー単位が、以下の第4級アンモニウム塩:
N,N,N−トリメチル−3−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]プロパンアンモニウム塩、
N,N,N−トリメチル−3−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]プロパンアンモニウム塩、
N,N,N−トリメチル−2−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エタンアンモニウム塩、又は、
N,N,N−トリメチル−2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エタンアンモニウム塩、
非常に詳細には、
N,N,N−トリメチル−3−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]プロパンアンモニウムクロリド(APTACとして知られる)、
N,N,N−トリメチル−3−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]プロパンアンモニウムクロリド(MAPTACとして知られる)、
N,N,N−トリメチル−2−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エタンアンモニウムクロリド(ADQUATとして知られる)、又は、
N,N,N−トリメチル−2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エタンアンモニウムクロリド(MADQUAT(商標)として知られる)、
好ましくは、
N,N,N−トリメチル−3−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]プロパンアンモニウムクロリド、又は、
N,N,N−トリメチル−2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エタンアンモニウムクロリド、
に由来する。
【0015】
本発明の別の特定の態様によれば、上記櫛型コポリマーは、上記マクロモノマーのサイドセグメントが、Rが水素原子又はメチルラジカルを表し、Rが水素原子を表し、Rが、任意にヒドロキシル基で置換される1個〜3個の炭素原子を含むアルキルラジカルを表す、上記に規定される式(II)の化合物の重合によって生じることを特徴とする。
【0016】
この特定の態様によれば、式(II)の化合物が、より詳細にはN−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド又はN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドから選択される。
【0017】
本発明のこの更に特定の態様によれば、式(II)の化合物が、N−イソプロピルアクリルアミド(以後NIPAMと示す)である。
【0018】
本発明の別の特定の態様によれば、上記櫛型コポリマーは、上記マクロモノマーのサイドセグメントが、Rが水素原子又はメチルラジカルを表し、R及びRがそれぞれメチルラジカル又はエチルラジカルを表す、上記に規定される式(II)の化合物の重合によって生じることを特徴とする。
【0019】
この特定の態様によれば、式(II)の化合物が、より詳細にはN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド又はN,N−ジエチルメタクリルアミドから選択される。
【0020】
本発明の別の主題は、上記に規定される櫛型コポリマーの製造方法であって、以下の連続段階:
式(Va):
N−R−S−{CH−C(R)[C(=O)N(R)(R)]−}−H (Va)
又は式(Vb):
HO−C(=O)−R−S−{CH−C(R)[C(=O)N(R)(R)]−}−H (Vb)
(式(Va)又は式(Vb)中、nは、2以上かつ100以下の整数を表す)、のポリ(N−アルキルアクリルアミド)テロマー又はポリ(N,N−ジアルキルアクリルアミド)テロマーを得るための、重合開始剤の存在下、tert−ブタノール/水混合物中における、式(II):
CH=C(R)−C(=O)−N(R)(R) (II)(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、又は1個〜4個の炭素原子を含む線形若しくは分岐状アルキルラジカルを表し、Rは、Rと同一又は異なって、1個〜4個の炭素原子を含む線形又は分岐状アルキルラジカルを表す)の化合物と、式(IVa):
HS−R−NH (IVa)、又は式(IVb):
HS−R−C(=O)−OH (IVb)
(式(IVa)又は式(IVb)中、Rは、1個〜4個の炭素原子を含む二価ラジカルを表す)、の連鎖制限化合物との反応の段階(a)と、任意に、
段階(a)において得られる式(Va)又は式(Vb)の前記テロマーの単離及び/又は乾燥の段階(b)と、
10より大きく13以下、より詳細には11以上かつ12以下の値の反応媒体のpHを維持しながら、7以上かつ9以下、好ましくは8以下の値への該pHの調整後に、式(VIIa):
CH=C(R)−C(=O)−NH−R−Z−{CH−C(R)[C(=O)N(R)(R)]−}−H (VIIa)
又は式(VIIb):
CH=C(R)−C(=O)−O−(C=O)−R−Z−{CH−C(R)[C(=O)N(R)(R)]−}−H (VIIb)
のマクロモノマーの溶液を得るための、tert−ブタノール中における、段階(a)又は任意に段階(b)において得られる式(Va)又は式(Vb)のテロマーと、グリシジルメタクリレート(VI)との、10以下かつ1以上の(VI)/(IVa)又は(VI)/(IVb)モル比における反応の段階(c)と、任意に、
段階(c)において得られる式(VIIa)又は式(VIIb)の前記マクロモノマーの単離及び/又は乾燥の段階(d)と、
tert−ブタノール中における、段階(c)又は段階(d)によって生じる式(VIIa)又は式(VIIb)の前記マクロモノマーと、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び上記に規定されるカチオン性モノマー若しくは式(I)のモノマー、及び/又は架橋性モノマー若しくは少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を含むモノマーとの、所望のモル比率における共重合の段階(e)と、必要に応じて、
段階(e)において得られる該櫛型コポリマーの精製の段階(f)と、
を含む、櫛型コポリマーの製造方法である。
【0021】
tert−ブタノール/水混合物は、上記に規定される方法において、50%以下の体積比率の水を有する混合物を示す。
【0022】
そのカチオン性及びその熱増粘性のために、本発明の主題である高分子電解質は、毛髪
のケア及び/又はコンディションを整えることを対象とした化粧品組成物又は医薬組成物における増粘剤及び/又は乳化剤として有利に使用される。
【0023】
この理由から、別の態様によれば、この発明の主題は、化粧品組成物又は医薬組成物における、より詳細には毛髪のケア及び/又はコンディションを整えることを対象とした化粧品組成物又は医薬組成物における増粘剤として上記に規定される櫛型コポリマーの使用である。
【0024】
本発明の主題である高分子電解質は、フォーム、ジェル、ローション、噴霧剤、シャンプー、コンディショナー、手及び身体のローション、日焼け止め剤及びより一般的なケア製品等の化粧品配合物又は医薬配合物に配合することができる。
【0025】
毛髪をトリートメント又はメンテナンスする場合、そのような化粧品組成物又は医薬組成物は、通常、シャンプー、乳剤、ミクロエマルションの形態で提供され、特にコンディショナーの場合に噴霧可能な乳剤の形態で提供される。
【0026】
最後の態様によれば、この発明の主題は、増粘剤として、上記に規定される櫛型コポリマーを有効量含むことを特徴とする、化粧品組成物又は医薬組成物である。
【0027】
有効量は、上記に規定される高分子電解質のおよそ0.1重量%〜およそ5重量%の重量比率を意味すると理解される。
【0028】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明を制限するものではない。
【0029】
以下の実施例はこの発明を説明するものであるが、上記発明を制限するものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1 ATBS(NH)/DMAPAM/NIPAMコポリマー(モル比:70.6/7.8/21.6)の合成
(1)ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)テロマーの調製
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)60gを、サーモスタットにより制御されたリアクタ内において25℃でtert−ブタノール/水(50/50体積)混合物75gに溶解し、これを、窒素を通気させながらおよそ1時間撹拌する。次に2−アミノエタンチオール塩酸塩(AET.HCl)0.9gを添加する。過酸化ジラウロイル1.33gを添加することによって重合が開始し、温度を60℃とし、その後、窒素を通気させながら反応混合物を更に3時間半撹拌させておく。次にtert−ブタノール87gを添加すると、白色でペースト状の最終反応混合物がもたらされる。
【0031】
(2)マクロモノマーの調製
調製の間、pHをおよそ12とするために、48重量%の水酸化ナトリウムのtert−ブタノールに溶解させた溶液0.5gを、10℃の温度に維持した段階(1)で得られた反応媒体に添加する。グリシジルメタクリレート3.16gをその後添加し、反応を1時間起こさせる。反応の終わりに、pHを7〜8の値に下げるために、15%塩酸水溶液およそ1.3gを添加する。
【0032】
得られる溶液は、28.1重量%のNIPAMマクロモノマーと、17重量%の水とを含む。
【0033】
(3)櫛型コポリマーの合成
段階2で得られた溶液40.5gを、サーモスタットにより25℃に制御されるリアク
タ内においてtert−ブタノール487.5g中に希釈させ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸粉末67.7g及びN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(DMAPAM)5.7gをこれに添加し、アンモニア4.95gを反応混合物中に注入すると、pHおよそ6が得られる。水0.5g及びトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.48gをその後添加する。窒素を1時間拡散させて、60℃に加熱した後、過酸化ジラウロイル1gにより重合が開始する。3時間の反応後、生成物を取り出し、濾過及び乾燥させる。所望の櫛型コポリマーが白色粉末形態で得られる(以下の実施例においてコポリマー(1)と称する)。
【0034】
25℃での櫛型コポリマーの1%水溶液の粘度:
μ=10000mPa・s(Brookfield RVT、スピンドル4、回転速度:5回転/分)。
【0035】
50℃での櫛型コポリマーの1%水溶液の粘度:
μ=50000mPa・s(Brookfield RVT、スピンドル5、回転速度:5回転/分)。
【0036】
25℃〜50℃で観測される粘度のこの違いが、感温性ポリマーの特徴を示すものである。
【0037】
実施例2:抗ストレスヘアケア製品
配合
A相
水: 100%まで適量キサンタンガム 0.50%
B相
Sepicap(商標)MP: 3.00%
C相
コポリマー1: 4.00%
D相
ブチレングリコール: 5.00%
Lanol(商標)99: 5.00%
Sepicide(商標)HB: 0.30%
Sepicide(商標)CI: 0.20%
香料 0.20%
手順
キサンタンガムを解膠機(deflocculator)で水に分散させる。続けてSepicap(商標)MPを添加した後に化合物1を添加する。これを分散させた後、D相の成分を添加する。
【0038】
実施例3:ストレスを受け、脆くなった毛髪用の再生クリームマスク
配合
A相
Montanov(商標)82: 3.00%
Lanol(商標)P: 6.00%
Amonyl(商標)DM: 1.00%
イソノナン酸イソステアリル: 5.00%
コポリマー1: 2.50%
B相
水: 100%まで適量
C相
Sepicap(商標)MP: 3.00%
Sepicide(商標)HB: 0.30%
Sepicide(商標)CI: 0.20%
手順
75℃でA相を融解する。B相を75℃に熱する。AをBに乳化させる。およそ40℃でC相の構成要素を投入する。
【0039】
実施例4:洗顔ジェル(Purifying facial gel)
配合
A相
Montaline(商標)C40: 7.00%
Pearlescent base 2078: 5.00%
コポリマー1: 2.00%
B相
水: 100%まで適量
【0040】
実施例5:染料シャンプー(Dye shampoo)
配合
A相
Montaline(商標)C40: 15.00%
ココアンホ酢酸二ナトリウム: 5.00%
塩化セトリモニウム: 1.00%
Sepiperl(商標)N: 3.00%
コポリマー1: 3.00%
B相
着色料 適量
水 100%まで適量
【0041】
実施例6:アルカリ性pHの液体エマルション
Marcol(商標)82: 5.0%
水酸化ナトリウム: 10.0%
水: 100%まで適量コポリマー1: 1.5%
【0042】
実施例7:ストレスを受け、脆くなった毛髪用の洗い流す(rinse-off)再生クリームマスク
Ketrol(商標)T: 0.5%
Pecosil(商標)SPP50: 0.75%
N−ココイルアミノ酸: 0.70%
ブチレングリコール: 3.0%
コポリマー1: 3.0%
Montanov(商標)82: 3.0%
ホホバ油: 1.0%
Lanol(商標)P: 6.0%
Amonyl(商標)DM: 1.0%
Lanol(商標)99: 5.0%
Sepicide(商標)HB: 0.3%
Sepicide(商標)CI: 0.2%
香料: 0.2%
水: 100%まで適量
【0043】
実施例8:ヘアローション
ブチレングリコール: 3.0%
コポリマー1: 3.0%
Simulsol(商標)1293: 3.0%
乳酸: pH=6まで適量Sepicide(商標)HB: 0.2%
Sepicide(商標)CI: 0.3%
香料: 0.3%
水: 100%まで適量
【0044】
実施例9:プロテクティブリラクシングシャンプー
Amonyl(商標)675SB: 5.0%
28%ラウリルエーテル硫酸ナトリウム: 35.0%
コポリマー1: 3.0%
Sepicide(商標)HB: 0.5%
Sepicide(商標)CI: 0.3%
水酸化ナトリウム: pH=7.2まで適量
香料: 0.3%
色素(FDC青色1号/黄色5号): 適量
水: 100%まで適量
【0045】
実施例10:リーブオンプロテクター、抗ストレスヘアケア製品
Ketrol(商標)T: 0.5%
ココイルアミノ酸混合物: 3.0%
ブチレングリコール: 5.0%
DC1501: 5.0%
コポリマー1: 4.0%
Sepicide(商標)HB: 0.5%
Sepicide(商標)CI: 0.3%
香料: 0.3%
水: 100%まで適量
【0046】
実施例で使用されている市販品の規定は以下の通りである:
Seppicにより販売されているMontaline(商標)C40:(ココアンモニウム(cocammonium)カルバモイルクロリド)。
Seppicにより販売されているSepiperl(商標)N:(ココイルグルコシド 1 ココイルアルコール)。
Seppicにより販売されているAmonyl(商標)DM:(Quaternium 82)。
Seppicにより販売されているSepicap(商標)MP:(ナトリウムココイルアミノ酸 1 カリウムジメチコンコポリオールパンテニルホスフェート)。
Simulsol(商標)1293はSeppicにより販売されている、エトキシル化数(indice d'ethoxylation)が40の、水素化及びエトキシル化ヒマシ油である。
Ketrol(商標)Tは、Kelcoにより販売されているキサンタンガムである。
Lanol(商標)99は、Seppicにより販売されているイソノニルイソノナノエートである。
DC1501は、Dow Chemicalにより販売されているシクロペンタシロキサン及びジメチ
コノールの混合物である。
Montanov(商標)82は、セテアリルアルコール及びココイルグルコシドベースの乳化剤である。
イミダゾリジニル尿素であるSepicide(商標)CIは、Seppicにより販売されている防腐剤である。
フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンの混合物であるSepicide(商標)HBは、Seppicにより販売されている防腐剤である。
Lanol(商標)Pは、Seppicにより販売されている安定化作用を有する添加剤である。