特許第6484604号(P6484604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6484604大気酸素の存在下において重合体組成物を架橋させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484604
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】大気酸素の存在下において重合体組成物を架橋させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20190304BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20190304BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20190304BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C08J3/24 ZCES
   C08L21/00
   C08K5/14
   C08K5/3415
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-500481(P2016-500481)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-518471(P2016-518471A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】US2014019194
(87)【国際公開番号】WO2014158665
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/782,055
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・ランボン
(72)【発明者】
【氏名】レナード・エイチ・パリス
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−514088(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0180985(US,A1)
【文献】 特開昭63−099239(JP,A)
【文献】 特開2008−144112(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0146737(US,A1)
【文献】 特開2012−082422(JP,A)
【文献】 特開昭47−004984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素の存在下にエラストマー組成物を硬化させるためのプロセスであって、前記プロセスが、
A)エチレン−プロピレン三元共重合体と、ポリ(エチレンプロピレン)と、少なくとも1種の有機ペルオキシド配合物を混合して混合物を得る工程であって、前記エチレン−プロピレン三元共重合体及び前記ポリ(エチレンプロピレン)がエラストマー組成物中において50:50〜75:25の重量比で存在し、前記エチレン−プロピレン三元共重合体が飽和又は不飽和であり、前記ポリ(エチレンプロピレン)が飽和又は不飽和であり、そして前記エラストマー組成物は塩素化ポリエチレン又はクロロスルホン化ポリエチレンを含まず;そして前記有機ペルオキシド配合物が、i)少なくとも1種の有機ペルオキシドと、ii)ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−マレイミドならびにビス−、トリ−、及びより高次のポリ−シトラコンイミドから選択される少なくとも1種の成分と、iii)少なくとも1種の硫黄加硫促進剤とを含む、工程;
B)酸素の存在下に前記混合物を硬化させる工程、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記エチレン−プロピレン三元共重合体が飽和エチレン−プロピレン三元共重合体である、請求項1のプロセス。
【請求項3】
前記ポリ(エチレンプロピレン)が不飽和ポリ(エチレンプロピレン)である、請求項1のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1種の有機ペルオキシドが、ジアルキルペルオキシド、ジペルオキシケタール、モノ−ペルオキシカーボネート、環状ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、オルガノスルホニルペルオキシド、ペルオキシエステル、及びペルオキシジカーボネートからなる群より選択される、請求項1のプロセス。
【請求項5】
酸素の存在下に硬化させることが可能なエラストマー組成物であって、前記組成物が、
A)飽和又は不飽和であるエチレン−プロピレン三元共重合体;
B)飽和又は不飽和であるポリ(エチレンプロピレン)
C)少なくとも1種の有機ペルオキシド;
D)ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−マレイミド、ならびにビス−、トリ−、及びより高次のポリ−シトラコンイミドから選択される、少なくとも1種の化合物;及び
E)少なくとも1種の硫黄加硫促進剤
を含み、
前記エラストマー組成物が、塩素化ポリエチレン又はクロロスルホン化ポリエチレンを含まず、
前記エチレン−プロピレン三元共重合体及び前記ポリ(エチレンプロピレン)前記エラストマー組成物中において50:50〜75:25の重量比で存在し、
前記エラストマー組成物が酸素の存在下で架橋する、
組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の有機ペルオキシドが、ジアルキルペルオキシド、ジペルオキシケタール、モノ−ペルオキシカーボネート、環状ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、オルガノスルホニルペルオキシド、ペルオキシエステル、及びペルオキシジカーボネートから選択される、請求項5の組成物。
【請求項7】
前記エチレン−プロピレン三元共重合体が飽和エチレン−プロピレン三元共重合体であり、前記ポリ(エチレンプロピレン)が不飽和ポリ(エチレンプロピレン)である、請求項5の組成物。
【請求項8】
前記エチレン−プロピレン三元共重合体が飽和エチレン−プロピレン三元共重合体であり、前記ポリ(エチレンプロピレン)が不飽和ポリ(エチレンプロピレン)であり、前記成分がビス−、トリ−、及びより高次のポリ−マレイミド、ならびにビス−、トリ−、及びより高次のポリ−シトラコンイミドから選択される、請求項1のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気酸素の存在下において重合体組成物を架橋させるための方法及びそれらの方法によって作成される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカル重合開始剤の、有機ペルオキシド及び/又はアゾ重合開始剤を用いて架橋させた重合体及び共重合体が、特に硫黄硬化によって架橋させた重合体に比較して、優れた性質を有していることは公知である。それらの性質としては、以下のものが挙げられる:高い熱老化抵抗性、低い圧縮永久歪み、金属又はコーティングした金属の汚れの低下、ならびに、架橋の間及び長期使用の間における高い色安定性を有する着色製品の製造が容易であること。それらの性質によって、ペルオキシド硬化が、実用的に高い重要性を有している。有機ペルオキシド及びアゾ重合開始剤からのフリーラジカルを用いて重合体を硬化させた場合に起こりうる欠点は、硬化の際に物質の表面から空気を排除しておかないと、空気中の酸素による硬化阻害のために、表面に粘着性が生じる可能性があるということであった。
【0003】
そのように有機ペルオキシド及び/又はアゾ重合開始剤によるフリーラジカル架橋を使用して加工した対象物の表面の粘着性を回避する目的で、酸素の存在が原因の硬化阻害を避けるために、硬化の際にその表面の空気との接触を排除することがこれまで行われてきた。酸素を排除する手段のために、コストと硬化工程の複雑さとが増大し、例えばスチームオートクレーブ中及びホースの内部における硬化の場合のように、空気及び酸素を完全に排除することが困難なことも起こりうる。いくつかの場合においては、硫黄硬化からペルオキシド硬化に切り替えて、既存の加熱空気オーブン硬化室を使用したいと、メーカーが考えることもあろう。それらの環境下で、従来からのペルオキシド系を用いて硬化させることは、粘着性のある表面が生成してしまうために、実施不可能であろう。
【0004】
米国特許第6,747,099号明細書には、硬化をさせたときにタックフリーな表面を得るための組成物が開示されている(この特許の全てを、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0005】
硬化工程のコストと複雑さを単純化及び軽減させる目的で、フリーラジカル架橋の際の酸素による表面硬化阻害を防止するための、各種の方法が提案されてきた。それらの方法は、各種の理由から、実用的には、ほとんど若しくは全く成功していない。特に、ペルオキシド(アゾ)硬化の最も望ましい物理的性質、すなわち従来技術の場合の、より低い温度(約100℃)の性能に比較して150℃で70時間での優れた圧縮永久歪み性を備えながらも、タックフリーな表面を得るということには、全く成功していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、大気酸素の全面的若しくは部分的な存在下で実施することが可能な、重合体及び共重合体を硬化させるための方法があれば望ましい。さらに、金型成形することが可能で、かつ金型に付着しないようなエラストマー性組成物が得られれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、大気酸素との全面的若しくは部分的な接触下に、有機ペルオキシド配合物の存在下で、重合体組成物を架橋させるための方法に関する。少なくとも1種の有機ペルオキシドに加えて、その有機ペルオキシド配合物には、以下のものから選択される少なくとも1種のさらなる化合物が含まれていてもよい:ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−マレイミド、ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−シトラコンイミド、ペルオキシド−架橋性シリコーンエラストマー、p−フェニレンジアミンをベースとしたオゾン劣化防止剤、ならびに硫黄、さらには硫黄化合物(それはポリスルフィド重合体である)によって硬化/架橋させることが可能な重合体を硫黄硬化(架橋)させるための加硫促進剤である硫黄含有有機化合物。本発明はさらに、それらの架橋性重合体組成物を含む組成物、及びそのようなプロセスによって製造される製品にも関する。
【0008】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、酸素の存在下にエラストマー組成物を硬化させるためのプロセスに関し、それには以下の工程が含まれる:
A)少なくとも1種のエラストマー、少なくとも1種の重合体、及び少なくとも1種の有機ペルオキシド配合物を混合して混合物を得る工程であって、そのエラストマーは飽和又は不飽和であり、その重合体は飽和又は不飽和であり、そして前記重合体には塩素化ポリエチレン又はクロロスルホン化ポリエチレンを含まず;そしてその有機ペルオキシド配合物には、i)少なくとも1種の有機ペルオキシド、ii)ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−マレイミド、ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−シトラコンイミド、ならびにp−フェニレンジアミンをベースとしたオゾン劣化防止剤から選択される少なくとも1種の成分、ならびにiii)少なくとも1種の硫黄加硫促進剤を含む、工程;及び
B)酸素の存在下に前記混合物を硬化させる工程。
【0009】
本発明の実施態様はさらに、酸素の存在下に硬化可能なエラストマー組成物にも関し、前記組成物には以下のものが含まれる:
A)飽和又は不飽和である、少なくとも1種のエラストマー;
B)飽和又は不飽和である、少なくとも1種の重合体;
C)少なくとも1種の有機ペルオキシド;
D)ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−マレイミド、ならびにビス−、トリ−、及びより高次のポリ−シトラコンイミドから選択される、少なくとも1種の化合物;及び
E)少なくとも1種の硫黄加硫促進剤;
ここで、前記の少なくとも1種の重合体には、塩素化ポリエチレン又はクロロスルホン化ポリエチレンを含まない。
【0010】
本発明の他の実施態様は、本明細書に記載されているエラストマー組成物を含む物品を製造するための方法にも関するが、それには以下の工程が含まれる:
前記エラストマー組成物を、加熱空気の存在下に押出成形して、未硬化の予備成形物品を形成させる工程;及び
その未硬化の予備成形物品を硬化させる工程。
【0011】
本発明の実施態様はさらに、酸素の存在下にエラストマー物品を製造する際に金型の汚れを低下させるためのプロセスにも関するが、それには以下の工程が含まれる:
A)未硬化のエラストマー組成物を金型に供給する工程であって、その未硬化のエラストマー組成物には少なくとも1種の有機ペルオキシド配合物が含まれている、工程;
B)そのエラストマー組成物を硬化させて、エラストマー物品を形成させる工程;及び
C)その金型から、硬化させたエラストマー物品を取り出す工程。
【0012】
本発明の実施態様はさらに、有機ペルオキシド配合物を含むエラストマー組成物、及び上述の方法によって作成された製品にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ポリ(エチレンプロピレン)エラストマーの2種のサンプルの比較を示す図である。
図2】ポリ(エチレンプロピレンジエン)エラストマーの2種のサンプルの比較を示す図である。
図3】ポリ(エチレンプロピレン)エラストマーとポリ(エチレンプロピレンジエン)エラストマーとのブレンド物の2種のサンプルに比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の開示の一つの態様は、エラストマー組成物を硬化させるためのプロセスに関するが、それには、単独で使用するか、又は少なくとも1種の重合体と組み合わせて使用した少なくとも1種のエラストマーを含むエラストマー組成物を、大気酸素の全面的若しくは部分的な存在下、そして有機ペルオキシド配合物の存在下に硬化させることが含まれる。
【0015】
本明細書で使用するとき、「重合体」という用語は、少なくとも1種の単量体を含む重合体を意味している。その「重合体」という用語には単独重合体及び共重合体が包含されるが、ここでその「共重合体」という用語は、重合された形態にある少なくとも2種の異なった単量体を含む重合体を指している。例えば、本発明の開示における共重合体は、2種の異なった単量体を含む重合体であっても、3種の異なった単量体を含む三元共重合体であっても、あるいは4種以上の異なった単量体を含む重合体であってもよい。
【0016】
本明細書で使用するとき、「硬化(curing)」という用語は、重合体鎖を架橋させて、強化されるか又は固化された(strengthened or hardened)重合体を形成させること指している。
【0017】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物が、飽和エラストマー、不飽和エラストマー、又は飽和と不飽和両方のエラストマーを含んでいてもよい。
【0018】
同様にして、そのエラストマー組成物の少なくとも1種の重合体は、飽和重合体、不飽和重合体、又は飽和と不飽和両方の重合体を含んでいてもよい。
【0019】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物の重合体には、共重合体が含まれる。本明細書において開示された実施態様では、共重合体を含むエラストマー組成物を列挙している。しかしながら、通常の技能を有する当業者なら容易に理解できるように、(明白にそうではないとされている場合以外では)いかなる共重合体を含む実施態様においても、単独重合体に置きかえることができる。
【0020】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種のエラストマー及び少なくとも1種の共重合体が含まれる。そのエラストマーと共重合体とは、そのエラストマー組成物中に、(99:1)から(1:99)まで、例えば(85:15)から(15:85)まで、又は(75:25)から(25:75)までの重量比で存在させることができる。少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマーと共重合体とが、エラストマー組成物の中に(50:50)の重量比で存在している。
【0021】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の飽和エラストマーが含まれる。その飽和エラストマーは、例えば以下のものから選択することができる:エチレン−プロピレン三元共重合体(EPDM)、フルオロエラストマー(FKM、FFKM、FVMQ)(例えば、Viton(登録商標)及びDyneon(登録商標))、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、及びそれらの組合せ。
【0022】
エラストマー組成物の中で使用することが可能な不飽和エラストマーとしては、例えば以下のものが挙げられる:亜硝酸塩ゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ハロゲン化アクリロニトリルブタジエン(HNBR),天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ネオプレンゴム(CR)、ポリクロロプロペン、ブロモブチルゴム、クロロブチルゴム、及びそれらの組合せ。
【0023】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の不飽和重合体が含まれる。使用することが可能な不飽和重合体の例としては以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):エチレンと、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及び酢酸ビニルとの共重合体、例えば線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(EVA)、ポリ(エチレンプロピレン)(EPM)、ポリ(エチレンオクテン)(Engage(登録商標))、ポリ(エチレンヘキセン)(Insite Technology(登録商標))、ポリ(エチレンブチレン)Tafmer(登録商標)、Vamac(登録商標)重合体(ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)、ポリ(エチレン−アクリレート)、及びアクリル酸との組合せ)、ならびにそれらの組合せ。
【0024】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、塩素化ポリエチレン又はクロロスルホン化ポリエチレンは含まれない。
【0025】
発泡させた製品が望まれる場合には、そのエラストマー組成物に発泡剤が含まれていてもよい。
【0026】
硬化工程、又は架橋工程は、従来からの各種の方法、例えば、加熱空気法、スチーム法、及び加熱成形法などで実施することができる。
【0027】
その有機ペルオキシド配合物には、少なくとも1種の有機ペルオキシドが含まれる。ヒドロペルオキシド及び液状のペルオキシジカーボネートは別として、加熱によって分解して、所望の硬化(架橋)反応を開始させることができるラジカルを発生する、公知の有機ペルオキシドならばいずれのものも、本発明の開示において使用するのに好適であると考えられる。例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ジアルキルペルオキシド、ジペルオキシケタール、モノ−ペルオキシカーボネート、環状ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、オルガノスルホニルペルオキシド、ペルオキシエステル、及び固体で、室温では安定なペルオキシジカーボネート。少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシドが、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、環状ケトンペルオキシド、及びジアシルペルオキシドから選択される。
【0028】
それらのタイプの有機ペルオキシドの全ての、ペルオキシドの名称及び物理的性質は、「有機過酸化物(Organic Peroxides)」(Jose Sanchez and Terry N.Myers;Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Ed.,Volume 18(1996))に見いだすことができる。
【0029】
ジアルキルペルオキシド重合開始剤の具体例としては、以下のものが挙げられる:
ジ−t−ブチル ペルオキシド;
t−ブチル クミル ペルオキシド;
2,5−ジ(クミルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;
2,5−ジ(クミルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキシン−3;
4−メチル−4−(t−ブチルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(t−アミルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(クミルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(t−ブチルペルオキシ)−2−ペンタノン;
4−メチル−4−(t−アミルペルオキシ)−2−ペンタノン;
4−メチル−4−(クミルペルオキシ)−2−ペンタノン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)ヘキサン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)ヘキシン−3;
2,5−ジメチル−2−t−ブチルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5−ジメチル−2−クミルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5−ジメチル−2−t−アミルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
m/p−アルファ,アルファ−ジ[(t−ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン;
1,3,5−トリス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5−トリス(t−アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5−トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
ジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3−ジメチル−3−(クミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ−t−アミルペルオキシド;
t−アミル クミル ペルオキシド;
2,4,6−トリ(ブチルペルオキシ)−s−トリアジン;
1,3,5−トリ[1−(t−ブチルペルオキシ)−1−メチルエチル]ベンゼン
1,3,5−トリ−[(t−ブチルペルオキシ)−イソプロピル]ベンゼン;
1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブタノール;
1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブタノール;及び
それらの混合物。
【0030】
固体で、室温で安定なペルオキシジカーボネートの具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:
ジ(2−フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート;ジ(4−t−ブチル−シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート;ジミリスチル ペルオキシジカーボネート;ジベンジル ペルオキシジカーボネート;及びジ(イソボルニル)ペルオキシジカーボネート。
【0031】
本発明の開示において考慮されている、単独で使用できるか、又は他のフリーラジカル重合開始剤と組み合わせて使用できるまた別なタイプのジアルキルペルオキシドは、次式で表される群から選択されたものである:
【化1】
式中、R4及びR5は独立して、メタ位又はパラ位に存在することが可能で、同一であるか又は異なっており、水素又は1〜6個の炭素原子の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである。ジクミルペルオキシド及びイソプロピルクミル クミル ペルオキシドが具体例である。
【0032】
他のジアルキルペルオキシドとしては、以下のものが挙げられる:
3−クミルペルオキシ−1,3−ジメチルブチルメタクリレート;
3−t−ブチルペルオキシ−1,3−ジメチルブチルメタクリレート;
3−t−アミル−1,3−ジメチルブチルメタクリレート;
トリ(1,3−ジメチル−3−t−ブチルペルオキシブチルオキシ)ビニルシラン;
1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブチル N−[1−{3−(1−メチルエテニル)−フェニル}1−メチルエチル]カルバメート;
1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブチル N−[1−{3(1−メチルエテニル)−フェニル}−1−メチルエチル]カルバメート;
1,3−ジメチル−3−(クミルペルオキシ)ブチルN−[1−{3−(1−メチルエテニル)−フェニル}−1−メチルエチル]カルバメート。
【0033】
ジペルオキシケタール重合開始剤の群の中での好ましい重合開始剤としては、以下のものが挙げられる:
1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;
1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;
n−ブチル 4,4−ジ(t−アミルペルオキシ)バレレート;
エチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;
2,2−ジ(t−アミルペルオキシ)プロパン;
3,6,6,9,9−ペンタメチル−3−エトキシカルボニルメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン;
n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート;
エチル−3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート;及び
それらの混合物。
【0034】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様において使用可能な他のペルオキシドとしては、ベンゾイル ペルオキシド、OO−t−ブチル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシ−スクシネート、及びOO−t−アミル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシ−スクシネートが挙げられる。
【0035】
具体的な環状ケトンペルオキシドは、次の一般式(I)、(II)及び/又は(III)を有する化合物である。
【化2】
【化3】
【化4】
式中、R1〜R10は独立して、水素、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキル、及びC7〜C20アルクアリールからなる群より選択されるが、それらの基には、直鎖状若しくは分岐状のアルキルが含まれていてもよく、そしてR1〜R10のそれぞれが、ヒドロキシ、C1〜C20アルコキシ、直鎖状若しくは分岐状のC1〜C20アルキル、C6〜C20アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリド及びアミドから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、例えば、架橋反応のために使用されるペルオキシド混合物の全活性酸素含量の少なくとも20%が、式(I)、(II)及び/又は(III)を有する化合物からのものとなるであろう。
【0036】
好適な環状ケトンペルオキシドのいくつかの例としては、以下のものが挙げられる:
3,6,9、トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン(又は、メチルエチルケトン ペルオキシド 環状トリマー)、メチルエチルケトン ペルオキシド 環状ダイマー、及び3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン。
【0037】
ペルオキシエステルの具体例としては、以下のものが挙げられる:
2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン;
t−ブチルペルベンゾエート;
t−ブチルペルオキシアセテート;
t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート;
t−アミルペルベンゾエート;
t−アミルペルオキシアセテート;
t−ブチルペルオキシイソブチレート;
3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート;
OO−t−アミル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシスクシネート;
OO−t−ブチル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシスクシネート;
ジ−t−ブチル ジペルオキシフタレート;
t−ブチルペルオキシ(3,3,5−トリメチルヘキサノエート);
1,4−ビス(t−ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン;
t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート;
t−ブチル−ペルオキシ−(cis−3−カルボキシ)プロピオネート;
アリル3−メチル−3−t−ブチルペルオキシブチレート。
【0038】
モノペルオキシカーボネートの具体例としては、以下のものが挙げられる:
OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート;
OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシカーボネート;
1,1,1−トリス[2−(t−ブチルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1−トリス[2−(t−アミルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1−トリス[2−(クミルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
OO−t−アミル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート。
【0039】
ジアシルペルオキシドの具体例としては、以下のものが挙げられる:
ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジデカノイル ペルオキシド;
ジラウロイル ペルオキシド;
2,4−ジブロモ−ベンゾイルペルオキシド;
コハク酸ペルオキシド。
ジベンゾイルペルオキシド;
ジ(2,4−ジクロロ−ベンゾイル)ペルオキシド。
【0040】
1997年2月6日付のPCT出願、国際公開第9703961A1号パンフレットに記載されているタイプのイミドペルオキシドもまた、使用するには好適であると考えられる。
【0041】
その有機ペルオキシド配合物及び/又は混合物にはさらに、以下の物質からの少なくとも1種のさらなる化合物が含まれていてもよい:ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−マレイミド、ビス−、トリ−、及びより高次のポリ−シトラコンイミド、p−フェニレンジアミンをベースとしたオゾン劣化防止剤、硫黄によって硬化/架橋させることが可能な重合体を硫黄硬化(架橋)させるための加硫促進剤である硫黄含有有機化合物、及びポリスルフィド重合体。少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物及び/又は混合物に、アゾ−重合開始剤がさらに含まれていてもよい。
【0042】
少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物が、式IVのマレイミド化合物を含む:
【化5】
式中、nは1又は2であり、Rは二価又は三価であって、約2〜16個の炭素原子を有する非環状脂肪族基、約5〜20個の炭素原子を有する環状脂肪族基、約6〜18個の炭素原子を有する芳香族基、及び約7〜24個の炭素原子を有するアルキル芳香族基からなる群より選択され、そして、それらの二価又は三価の基は、(1個又は複数の)炭素原子の代わりに、O、N及びSから選択された1個又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、そしてそれぞれのR1は同一であって、水素又は1〜18個の炭素原子のアルキル基である。
【0043】
当業者のよく知るところであるが、式IVの範囲に入るその他の化合物は全て固体物質であり、全て、トリマレイミド、ビスマレイミド、トリシトラコンイミド、又はビスシトラコンイミドであり、いずれも、有機ペルオキシド配合物の化合物と結合することが可能である。ビスマレイミド及びビスシトラコンイミドはいずれも、市場で入手することが可能であるか、あるいは、当業者に周知の方法によって容易に合成することができる。例えば、米国特許第5,494,948、米国特許第5,616,666号明細書、米国特許第5,292,815号明細書、及びそれらの中に引用されている合成方法についての参考文献を参照されたい(これらの特許のそれぞれについて、その全てを参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0044】
トリマレイミド及びトリシトラコンイミド、さらにはもっと高次のポリマレイミド及びシトラコンイミドは、市販されていないのであれば、類似の方法で調製することができる。例えば、トリマレイミドの、N,N’,N”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリマレイミドは、CAS(67460−81−5)のCAS番号を有している。
【0045】
ジ、トリ−、及びより高次のポリマレイミドならびに類似のシトラコンイミドを合成するために好適ないくつかの一級アミンは、多官能一級アミン、例えばメラミン、及びHuntsman CorporationからJEFFAMINEの商品名で販売されている各種のポリオキシプロピレンアミン、例えばポリオキシプロピレンジアミン及びポリオキシプロピレントリアミンである。
【0046】
先に特に引用したN,N’−m−フェニレン−ビスマレイミドに加えて、先に引用した特許類に開示されているもの加えて、有機ペルオキシド配合物において使用するのが好適で、先の一般式(IV)の普遍性を損なわない、その他のビスマレイミドとしては、以下のものが挙げられる:
N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−ドデカメチレン−ビスマレイミド、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビスマレイミド、N,N’−(オキシ−ジプロピレン)ビスマレイミド、N,N’−(アミノジプロピレン)ビスマレイミド、N,N’−(エチレンジオキシ−ジプロピレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,4−シクロヘキシレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,3−シクロヘキシレン)ビスマレイミド、N,N’−(メチレン1,4−ジシクロヘキシレン)ビスマレイミド、N,N’−(イソプロピリデン−1,4−ジシクロヘキシレン)ビスマレイミド、N,N’−(オキシ−1,4−ジシクロヘキシレン)ビスマレイミド、N,N’−p−(フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(o−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,3−ナフチレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,4−ナフチレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,5−ナフチレン)ビスマレイミド、N,N−(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(3,3−ジクロロ−4,4’−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(2,4−ピリジル)ビスマレイミド、N,N’−2,6−ピリジル)ビスマレイミド、N,N’−(1,4−アントラキノンジイル)ビスマレイミド、N,N’−(m−トリレン)ビスマレイミド、N,N’−(p−トリレン)ビスマレイミド、N,N’−(4,6−ジメチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(2,3−ジメチル−1,4−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(4,6−ジクロロ−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(5−クロロ−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(5−ヒドロキシ−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(5−メトキシ−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(m−キシリレン)ビスマレイミド、N,N’−(p−キシリレン)ビスマレイミド、N,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(イソプロピリデンジ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(オキシジ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(チオジ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(ジチオジ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(スルホジ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(カルボニルジ−p−フェニレン)ビスマレイミド、α,α−ビス−(4−マレイミドフェニル)−メタ−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス−(4−p−フェニレン)ビスマレイミド、及びα,α−ビス−(4−マレイミドフェニル)パラ−ジイソプロピルベンゼン。
【0047】
本発明の組成物及びプロセスにおける、2種以上のビスマレイミドの組合せ、又はビスマレイミドとトリマレイミド及びより高次のポリマレイミドとの組合せもまた等価物と考えられ、当業者ならば、そのようなトリマレイミド及びより高次のポリマレイミドならびにそれらの置換物が、本発明を実施するために本明細書で特に説明されている化合物及びプロセスにとっては、そのような等価物であり、本発明が考慮している範囲の中に包含されるということを理解するであろう。
【0048】
先に挙げたN,N’−m−フェニレンビスマレイミドと全面的又は部分的に置きかえることが可能なビスシトラコンイミドとしては、代表的な例として、以下のものが挙げられる:
1,2−N,N’−ジメチレンビスシトラコンイミド;
1,2−N,N’−トリメチレンビスシトラコンイミド;
1,5−N,N’−2−メチル−ペンタメチレン)−ビスシトラコンイミド;及び
N,N’−メチルフェニレンビスシトラコンイミド。
【0049】
ビスシトラコンイミドの混合物、ビスマレイミドとビスシトラコンイミドとの混合物、さらにはトリマレイミドを含むものもまた、有機ペルオキシド配合物において使用することができる。
【0050】
ビスシトラコンイミドは周知の化合物であって、市販されていないのであれば、当業界でよく知られた方法によって容易に合成することができる。米国特許第5,292,815号明細書のカラム4には、そのような方法の詳しいリストが提供されている。先にも述べたように、トリ−、及びより高次のポリシトラコンイミドも、類似の方法で調製し、あらかじめ開示されている有機ペルオキシド配合物において全面的又は部分的に置きかえることが可能であるが、そのような化合物及び代替物は、本明細書において説明されたものと完全に等価であり、本発明によって等価であると考えられる範囲の中に包含されるということは、当業者は容易に理解するであろう。
【0051】
少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物にさらに、シリコーンエラストマーが含まれていてもよい。有機ペルオキシド配合物の中で使用することが可能なシリコーンエラストマーとしては、例えば一つの分子あたり、少なくとも一つの不飽和部位(例えば、ビニル基)を含む、不飽和のペルオキシド架橋性シリコーンエラストマーが挙げられる。一つの実施態様においては、そのシリコーンエラストマーに、複数の不飽和の部位が含まれる。ペルオキシド架橋性シリコーンエラストマーのタイプの一例には、ジメチルビニル置換されたシリコーン誘導体エラストマーが挙げられるが、このものは当業界では周知のものである。例えば、「カーク・オスマー工業化学百科事典(Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)」,Vol.20、p.943〜,John Wiley & Sons,(著作権)1982を参照されたい(本明細書に組み入れたものとする)。
【0052】
少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物がさらに、硫黄によって架橋させることが可能な重合体の硫黄加硫を促進することができる、硫黄含有有機化合物を含んでいる。重合体の硫黄加硫を促進することができる硫黄含有有機化合物の例は、当業界では周知である。各種多様なタイプのそれらの化合物が公知であって、いずれも等価であると考えられている。
【0053】
ヴァンダービルト ラバー ハンドブック(Vanderbilt Rubber Handbook),thirteenth edition,1990,R.T.ヴァンダービルト社(R.T.Vanderbilt Company,Inc.),publisherには、多くのタイプが列記されている。それらの具体例としては、ベンゾチアゾール、チアジアゾール、スルフェンアミド、スルフェンイミド、ジチオカルバメート、チウラム、イミダゾール、キサンテート、及びチオ尿素の誘導体が挙げられる。この一般的なタイプの硫黄化合物における、硫黄加硫促進剤としては、以下のものが挙げられる:スルフィド、ジスルフィド(例えば、ジアリルジスルフィド)、ポリスルフィド、及びアリールポリスルフィド化合物例えば、アミルフェノールポリスルフィド例えば、アルケマ(Arkema)製のVULTAC(登録商標)製品、及びその他のスルフィド例えばジスルフィド、及び/又はその他公知の硫黄促進剤系のポリスルフィドホスフェート、ジチオホスフェート及び/又はリン及び硫黄含有化合物。公知ではあるが、コスト的な問題でそのような反応には現在では使用されていない、加硫温度において硫黄を供与することが可能なその他の硫黄含有有機化合物もまた、等価物と見なされる。それらの具体例は、2−(2,4−シクロペンタジエン−1−イリデン)−1,3−ジチオランの化合物である。
【0054】
少なくとも一つの実施態様においては、一つの硫黄加硫促進剤のタイプとして、二置換されたジチオカルバミン酸の塩が含まれる。
【0055】
それらの塩は、次の一般的構造を有している:
【化6】
式中、Xは、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、スズ、亜鉛、銅、鉛、ビスマス、カドミウム、セレン、及びテルルからなる群より選択される金属から誘導されるイオンであるか、又はXは、四級アンモニウムイオンであり、nは、1〜6の間で変化させることができ、Xイオンの上の公称の陽電荷の数に等しく、そしてR1及びR2は独立して、1〜7個の炭素原子のアルキルである。
【0056】
二置換されたジチオカルバミン酸の塩の例としては、以下のものが挙げられる:
ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス;
ジエチルジチオカルバミン酸カドミウム;
ジアミルジチオカルバミン酸カドミウム;
ジメチルジチオカルバミン酸銅;
ジアミルジチオカルバミン酸鉛;
ジメチルジチオカルバミン酸鉛;
ジエチルジチオカルバミン酸セレン;
ジメチルジチオカルバミン酸セレン;
ジエチルジチオカルバミン酸テルル;
ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジニウム;
ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛;
ジイソブチルジチオカルバミン酸亜鉛;
ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛;
ジブチルジチオカルバミン酸銅;
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム;
ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム;
ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム;
ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛;
ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛。
【0057】
有機ペルオキシド配合物において使用するのに適した第二の硫黄加硫促進剤のタイプとしては、チウラムが挙げられる。それらは、二級アミンと二硫化炭素とから調製され、次の一般構造を有している:
【化7】
式中、R3は、1〜約7個の炭素原子のアルキル基であるか、又はそれぞれ特定の窒素原子の上のR3基が、それらがその上に結合している窒素原子と共につなぎ合わさって、それぞれ4、5、又は6個の炭素原子を含む5員、6員又は7員の複素環式環を形成しており、そしてnは、ゼロより大きく6までの正の値を有することができる。
【0058】
チウラム硫黄加硫促進剤の例としては、以下のものが挙げられる:
ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及びヘキサスルフィド;
テトラブチルチウラムジスルフィド;
テトラメチルチウラムジスルフィド;
テトラエチルチウラムジスルフィド;
テトラメチルチウラムモノスルフィド;
イソブチルチウラムジスルフィド;
ジベンジルチウラムジスルフィド;
テトラベンジルチウラムジスルフィド;
テトライソブチルチウラムジスルフィド;
イソブチルチウラムモノスルフィド;
ジベンジルチウラムモノスルフィド;
テトラベンジルチウラムモノスルフィド;
テトライソブチルチウラムモノスルフィド。
【0059】
各種のチウラムで、より高次のマルチスルフィドもまた硫黄供与体である。
【0060】
チアジアゾールの誘導体としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ジメルカプトチアジアゾール(2,5−ジメチル−1,3,4−チアジアゾール)のモノベンゾイル誘導体;VANAX(登録商標)189の識別番号を有するヴァンダービルト ラバー カンパニー(Vanderbilt Rubber Company)製の商標権付きチアジアゾール;1,2,4−チアジアゾール、5−エトキシ−3−(トリクロロメチル)チアジアゾール;及びアルキルメルカプトチアジアゾール、例えばメチルメルカプトチアジアゾール。
【0061】
ベンゾチアゾールの誘導体は、次の一般構造を有している:
【化8】
式中、Mは、2個の硫黄原子の間の直接結合、H、又は、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、スズ、亜鉛、銅、鉛、ビスマス、カドミウム、セレン、及びテルルからなる群より選択される金属から誘導されるイオンであるが;MがHである場合には、xは1であり;Mが2個の硫黄原子の間の直接結合である場合には、xは1又は2であり;そしてMが、金属から誘導されたイオンである場合には、xは、その金属イオンの公称原子価に等しく;そしてMが2個の硫黄原子の間の直接結合であり、xが1である場合には、そのMが結合している第二の硫黄原子が、4−モルホリニル基にも結合されている。
【0062】
具体的な化合物としては、以下のものが挙げられる:2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール;ベンゾチアジルジスルフィド;2−メルカプト−ベンゾチアゾール;2−メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド;ナトリウム−2−メルカプトベンゾチアゾレート;亜鉛−2−メルカプト−ベンゾチアゾール;銅−2−メルカプトベンゾチアゾレート;2−N−シクロヘキシルアミノベンゾチアゾール;N−シクロヘキシルアミノ−2−ベンゾチアゾールポリスルフィド;2−ビスベンゾチアゾール−2,2−ポリスルフィド、及び2−ビスベンゾチアゾール−2,2−ジスルフィド;ビス(2,2’−ベンゾチアジルジスルフィド)。
【0063】
スルフェンアミド加硫促進剤もまた、周知である。具体例としては、以下のものが挙げられる:N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;N−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルフェンアミド;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド;N,N−ジシクロヘキシルベンズチアジルスルフェンアミド;N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド。スルフェンイミド化合物、例えば、N−t−ブチル−ベンゾチアゾール−2−スルフェンイミドもあり得る。
【0064】
典型的なイミダゾールとしては、次のものが挙げられる:2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール;及び2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩。
【0065】
イソプロピルキサントゲン酸亜鉛は、典型的なキサンテート硫黄加硫促進剤である。
【0066】
典型的なチオ尿素としては、次のものが挙げられる:トリメチルチオ尿素;1,3−ジエチルチオ尿素及び1,3−ジブチルチオ尿素;エチレンチオ尿素;ジアルキルチオ尿素のブレンド物;ジフェニルチオ尿素;ジオルトトリルチオ尿素;ジメチルチオ尿素;ジエチルチオ尿素;ジブチルチオ尿素。
【0067】
アルキルフェノールジスルフィドタイプの硫黄加硫促進剤の具体例としては、アルケマ(Arkema)から、VULTAC(登録商標)2、VULTAC(登録商標)3、及びVULTAC(登録商標)5の名称で入手可能な化合物が挙げられる。
【0068】
チオリン酸塩硫黄加硫促進剤の具体例は、ジアルキルジチオリン酸銅;ジアルキルジチオリン酸亜鉛;アミンジ二リン酸亜鉛;ジブチル二チオリン酸亜鉛;銅O,O−ジイソプロピル−ホスホロジチオレート;及び亜鉛O,O−ジイソプロピルホスホロジチオレートのような化合物である。
【0069】
その他各種の硫黄加硫促進剤としては、4,4−ジチオジモルホリン;N,N’−カプロラクタムジスルフィド;及びジブチルキサントゲンジスルフィド、などが挙げられる。
【0070】
少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物に、アゾ重合開始剤がさらに含まれる。アゾ重合開始剤は当業界では公知であって、例えば2,2’−アゾビス−(2−アセトキシプロパン)であり、熱分解によってフリーラジカルを発生して、所望の硬化(架橋)反応を誘導することが可能である。米国特許第3,862,107号明細書及び米国特許第4,129,531号明細書のアゾ重合開始剤もまた好適である(それらの特許の開示を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0071】
当業者であれば、有機ペルオキシド配合物の中で使用するための各種の成分の適切な量を容易に選択することが可能であろうし、硬化させる(架橋させる)重合体の中での成分の量を増やしていく方法を採用した一連のベンチスケール実験により、迅速かつ容易に濃度の最適化を行うことも可能であろう。最適な加工(コンパウンディング)時間及び温度などもまた、同一の実験から求めて、最適の硬化時間及び温度とすることができるであろう。
【0072】
少なくとも一つの実施態様においては、その式(IV)の化合物(ビスマレイミド及びビスシトラコンイミド)を、有機ペルオキシド配合物の中に、重量で重合体100部あたり約0.2重量部(phr)〜約10.0phr、例えば約1.0phr〜約5.0phr、又は約1.5phr〜約3.0phrとなるような量で存在させる。
【0073】
少なくとも一つの実施態様においては、硫黄によって架橋させることが可能な重合体中での硫黄加硫を促進させることが可能な硫黄含有有機化合物を、その有機ペルオキシド配合物の中に、約0.01phr〜約20phr、例えば約0.1〜約10phr、例えば約0.1phr〜約5phr、例えば約0.1phr〜約1.0phr、又は約0.1phr〜約0.5phrとなるような量で存在させる。それらの化合物には二つのタイプ、すなわち、加硫に対して硫黄を供与するものと、単に硫黄加硫を促進させるものとが存在することは、当業者の理解するところである。いずれかのタイプの化合物又はそれらの混合物は、本発明においては等価であると考えられる。
【0074】
アルケマ(Arkema)から商品名VULTAC(登録商標)として販売されているタイプのアルキルフェノールジスルフィド重合体は、単独で使用する場合なら約0.5phr〜20phr、他の硫黄加硫促進剤と組み合わせて使用する場合なら約0.1phr〜約10phrの量で使用することができる。
【0075】
少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド及び任意選択の成分のアゾ重合開始剤を、有機ペルオキシド配合物中に、約0.04〜約10phr、例えば約0.1〜約5phr、例えば約1〜約4phrの量で存在させる。
【0076】
硬化のために必要とされる時間−温度条件は、そのフリーラジカル硬化剤の構造にほとんど依存する。アゾ重合開始剤については、米国特許第3,632,107号明細書及び米国特許第4,129,531号明細書に適切な条件が詳述してある(これらの特許のそれぞれについて、その全てを本明細書に組み入れたものとする)。
【0077】
本発明の開示のエラストマー組成物の場合、特定の重合体組成物を架橋させるのに適した時間及び温度条件は、十分に制御されたレオメーター実験をいくつか行い、それらの実験の結果から、時間/温度の関係が、その系におけるフリーラジカル重合開始剤の半減期の値の5倍〜15倍となるような値を選択することによって求めることができる。
【0078】
少なくとも一つの実施態様においては、他の慣用される添加剤例えば、抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノール及び重合体性キノリン誘導体)、脂肪族プロセスオイル、及びその他の加工助剤、顔料、染料、粘着付与剤、ワックス、補強助剤、UV安定剤、発泡剤、ならびに活性化剤及びオゾン劣化防止剤を、エラストマー組成物の中に、硬化工程の前、途中、又は後に存在させてもよい。
【0079】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様においては、そのポリスルフィド重合体が、α,ω−ジハロアルキル(又はジハロヘテロアルキル)化合物を、金属系例えばアルカリ金属ポリスルフィドと反応させることによって調製される公知のポリスルフィド重合体である。一般的に市販されているポリスルフィド重合体は、液体又は固体のいずれかであり、チオール末端又はヒドロキシ末端のいずれかを有しており、1,2−ジクロロエタン、2,2’−ジクロロジエチルエーテル、又はビス(2−クロロエチル)ホルマールを、アルカリ金属ポリスルフィド(MSx)(ここで、Mはアルカリ金属イオン、例えばナトリウムから誘導されたものであり、xは1より大で約6までの数である)と反応させることによって製造された物質から誘導される。
【0080】
本発明では、ポリスルフィド重合体は、p−フェニレンジアミンをベースとしたオゾン劣化防止剤、及び硫黄によって架橋させることが可能な重合体の硫黄加硫を促進させることができる硫黄含有有機化合物(「硫黄加硫促進剤」)、ポリスルフィド重合体、及び前記硫黄含有化合物とそれらの化合物について先に特定したものとの等量混合物からなる群より選択される硫黄含有有機化合物、から選択される化合物との混合物に代えるか、又はそれらとの混合物の形で使用することができると考えている。ポリスルフィド重合体が過剰であると本発明の実施に悪影響が出ると考えている訳ではないが、式(IV)の化合物(ビスマレイミド及びビスシトラコンイミド)及び場合によってフリーラジカル重合開始剤と予備ブレンドして、固体又は液体いずれかのマスターバッチを形成させてもよいとも考えられる。ポリスルフィド重合体を、硬化させる重合体の中に予備ブレンドしておき、そして式(IV)の化合物及びさらにはフリーラジカル重合開始剤を、作業者の判断で同時又は逐次にブレンドしてもよい。ポリスルフィド重合体を他の硫黄と組み合わせて使用することによって、使用する硫黄加硫促進剤の量を低減させることが可能となる。
【0081】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物には、少なくとも1種の有機ペルオキシド及び以下のものが含まれる:
a)シリコーンエラストマー及び式(I)を有する化合物からなる群より選択される、少なくとも1種の化合物(A):
【化9】
[式中、nは1又は2であり、Rは二価又は三価であって、約2〜16個の炭素原子を有する非環状脂肪族基、約5〜20個の炭素原子を有する環状脂肪族基、約6〜18個の炭素原子を有する芳香族基、及び約7〜24個の炭素原子を有するアルキル芳香族基からなる群より選択され、そして、それらの二価又は三価の基は、(1個又は複数の)炭素原子の代わりに、O、N及びSから選択された1個又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、そしてそれぞれのR1は同一であって、水素又は1〜18個の炭素原子のアルキル基である];及び
(b)p−フェニレンジアミンをベースとしたオゾン劣化防止剤、及び硫黄によって架橋させることが可能な重合体の硫黄加硫を促進させることができる硫黄含有有機化合物(「硫黄加硫促進剤」)、ポリスルフィド重合体、及び前記硫黄含有化合物の混合物からなる群より選択される、少なくとも1種の化合物(B)。
【0082】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物には、ジペンタメチレンチウラムテトラ−スルフィド(例えば、SULFADS(登録商標))、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド(例えば、HVA−2)、及び1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(例えば、LUPEROX(登録商標)231XL)の混合物が含まれ、このものは、加熱空気中でエチレンプロピレン共重合体(VISTALON(登録商標)504)を硬化させるのに使用することができる。
【0083】
SULFADS(登録商標)、HVA−2、及びLUPEROX 231XLの混合物を調製するためには、全て乾燥粉体の形態にある(LUPEROX(登録商標)231XLは、炭酸カルシウムに分散させた40重量%のペルオキシドの形態になっている)それらの成分を、いかなる順序でもよいが混合し、次いで標準的な方法(Banbury、2本ロールミル、押出機など)で、VISTALON(登録商標)重合体の中にコンパウンディングするのがよい。SULFADS(登録商標)、HVA−2、及びLUPEROX 231XLを、同時に、又はいかなる順序でもよいが逐次に、VISTALONの中に直接コンパウンディングすることもまた可能である。SULFADS(登録商標)、HVA−2、及びLUPEROX(登録商標)231XLの成分の内のいずれか2種を混合し、第三の成分と同時又は逐次に、VISTALON(登録商標)の中にコンパウンディングしてもよい。このコンパウンディングは、別々に実施するのなら、重合体に対して成分添加をいかなる順序で実施してもよいが、ペルオキシドを最後に添加すれば、好ましい。
【0084】
VISTALON(登録商標)とのコンパウンディングが完了したら、そのコンパウンディングした混合物を、そのペルオキシドを分解させることによって硬化を開始させるのに好適な温度、この場合には好適には約365゜F(約185℃)で、所望の架橋度に達せさせるに十分な時間、この場合には好適には約1分間、開始時には室温で薄いサンプルを、加熱空気オーブン中に単に置くだけで硬化させることができる。
【0085】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様は、上述のエラストマー組成物を含む物品を製造するための方法に関する。少なくとも一つの実施態様においては、その物品には、シール、ホース、又はガスケットを含むことができる。その方法には、先に述べたように、エラストマー組成物(そのエラストマー組成物には、未硬化の予備成形物品を成形するための有機ペルオキシド配合物が含まれている)を押出成形し、その未硬化の予備成形物品を硬化させることが含まれていてよい。そのエラストマー組成物を、加熱空気の存在下に押出成形して、未硬化の予備成形を形成させることができる。少なくとも一つの実施態様においては、マイクロ波又はスチームオートクレーブを用いて、その予備成形物を硬化させる。少なくとも一つの他の実施態様においては、マイクロ波又はスチームオートクレーブを使用せずに、その予備成形物を硬化させる。
【0086】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の不飽和エラストマー及び少なくとも1種の飽和エラストマーが含まれていてよい。
【0087】
物品を製造するための方法は、加熱空気トンネル中、又は各種その他の装置で実施することができる。
【0088】
少なくとも一つの実施態様においては、物品を製造するためのその方法を、連続的に実施することができる。連続的製造法によって、連続的な物品、例えば連続シール材の製造が可能となるが、これは、より小さな部品からばらばらにしなければならない、個別のシールの場合とは異なっている。
【0089】
本発明の開示はさらに、本明細書において開示された方法によって製造された、自動車用、工業用、又は住宅用のシール材にも関する。
【0090】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様は、ホースを製造するための方法に関する。その方法には、エラストマー組成物から、1本のホースを硬化させることなく、1本のホースを押出成形することが含まれていてよい。未硬化の1本のホースを集めて、例えばその未硬化のホースをスチームに曝露させることによって、硬化させてもよい。
【0091】
本発明の開示はさらに、酸素の存在下にエラストマー物品を製造する際に金型の汚れを低下させるためのプロセスにも関する。従来技術の方法においては、金型の中に存在している酸素が、そのエラストマーが完全に反応することを妨げて、未硬化のエラストマーの残渣が残り、それが金型の中に蓄積するということが起こりえた。この蓄積物は、定期的に除く必要があった。
【0092】
少なくとも一つの実施態様においては、本発明は、金型に未硬化のエラストマー組成物(その未硬化のエラストマー組成物には少なくとも1種の有機ペルオキシド配合物が含まれている)を酸素の存在下に供給することを含む、金型の汚れを低減させるためのプロセスを提供する。次いでそのエラストマー組成物を、そのエラストマー組成物を硬化させてエラストマー物品を形成させるのに十分な温度にまで加熱し、次いで、その金型からエラストマー物品を取り出すことができる。
【0093】
本発明の開示はさらに、少なくとも1種のエラストマー及び少なくとも1種の不飽和重合体から構成されるエラストマー物品を製造するための方法にも関する。その方法には、加熱空気の存在下にそのエラストマー組成物を押出成形し、硬化させて、エラストマー物品を形成させる工程が含まれていてよいが、ここでそのエラストマー組成物には有機ペルオキシド配合物が含まれ得る。
【0094】
本発明の開示の方法に従って製造することが可能なエラストマー性物品の例としては、以下のものが挙げられる:O−リング、ガスケット、ダイヤフラム、シール、グロメット、絶縁材、靴底、セプタム、フィッティング、シュラウド、シート、ベルト、チューブ、など。
【0095】
本明細書に記載されている実施態様は、本発明を説明することを目的としており、本発明を限定するものではない。当業者のよく知るところであるが、本発明の開示の範囲を逸脱することなく、本発明の開示の実施態様及び実施例の変更を実施することができる。本発明の実施態様はここまで、「comprising」(含む)及びそれを変形した用語を使用して記述されている。しかしながら、本願発明者らの意図するところでは、「comprising」という用語は、本明細書に記載されたいずれの実施態様においても、本発明の範囲を逸脱することなく、「consisting of」(〜からなる)及び「consisting essentially of」(実質的に〜からなる)という用語と置きかえることが可能である。
【0096】
以下の実施例において、本発明を実施するにあたって本願発明者らが考え得るベストモードをさらに説明するが、それらは説明のためと解釈するべきであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0097】
数種のペルオキシド−エラストマー組成物を調製し、加熱空気オーブン中、215℃で15分かけて硬化させた。
【0098】
検討したそれらのペルオキシド−エラストマー組成物には、「対照(Control)」か「AIR−NS」かいずれかの標識を付けたが、これについては後に述べる。3種のエラストマーについて検討したが、以下の順序で考察する。
1.ポリ(エチレンプロピレン)エラストマー(EPM)組成物
2.ポリ(エチレンプロピレンジエン)エラストマー(EPDM)組成物
3.54%のEPDMエラストマーと46%のEPMエラストマーとのブレンド物。
【0099】
エラストマー−ペルオキシド組成物のフラットで未硬化のシートを215℃に設定した加熱空気オーブン中に金属クリップで吊り下げて、15分かけて硬化させた。15分経過後に、その硬化させたサンプルを空気オーブンから素早く取り出し、ベンチの上に置き、直ちに、そのシートの極めて熱い表面にペーパータオルを1分間、しっかりと押し込んだ。次いで、その硬化させたエラストマーシートからペーパータオルを剥がした。冷却したサンプルを、標識を記した厚紙の上に置いて、その表面の写真が撮れるようにした。これは、表面に付着した白色のペーパータオルの繊維の量から、組成物がタックフリーな表面を作り出す性能を視覚的に評定するために実施したものである。エラストマーのサンプルについてもまた、アルファ テクノロジー(Alpha Technologies) RPA(登録商標)Rheometerを使用して、MH−ML(dN−m)相対架橋度性能についての試験を実施した。
【0100】
1.ポリ(エチレンプロピレン)エラストマー(EPM)
【0101】
【表1】
【0102】
加熱空気オーブン中、215℃で15分かけて硬化させ、直後に表面硬化のためのペーパータオル試験にかけたエラストマー−ペルオキシド組成物の写真を図1に示す。このペーパータオル試験は、完全表面硬化の極めて良好な指標を与えた。エラストマーの表面が完全には硬化していない領域はいずれも、極めて粘着性があり、ペーパータオルの繊維が、そのエラストマー組成物の粘着性のある未硬化の表面に付着するであろう。
【0103】
EPMエラストマー−ペルオキシドブレンド物を使用した「対照(Control)」組成物は、未硬化の粘着性のある表面に付着したペーパータオル繊維がかなり多い、極めて粗い表面を与えた。EPMを使用し、「AIR−NS」の標識を付けたペルオキシド−エラストマー組成物もまた、望ましくない粗い表面を与えたが、ただし「対照(Control)」組成物ほどにはひどくはなかった。いずれのサンプルにおいても、粘着性のある未硬化の表面を示す、表面に付着したペーパータオルの繊維がかなりの量で認められた。未硬化の表面領域は、自動車用ガスケットシールでは重大な欠陥と見なされるであろう。
【0104】
2.ポリ(エチレンプロピレンジエン)エラストマー(EPDM)
【0105】
【表2】
【0106】
EPDMエラストマー−ペルオキシドブレンド物を使用した「対照(Control)」組成物は、付着したペーパータオルの小さな粒子が多い、極めて粗い表面を与え、表面硬化が不十分であることを示していた。「AIR−NS」の標識を付けたEPDMの組成物を用いて硬化させたサンプルは、ペーパータオルの繊維の痕跡がほとんど無く滑らかで、極めて良好な表面硬化であったことを示している。実施例2の「対照(Control)」及び「AIR−NS」のサンプルの写真を図2に示す。
【0107】
3.54%のEPDMエラストマーと46%のEPMエラストマーとのブレンド物
【0108】
【表3】
【0109】
図3に、54%のEPDMと46%のEPMとのブレンド物を使用し、「対照(Control)」の標識を付けられた、ペルオキシド−エラストマーブレンド組成物の表面硬化性能を示している。#1のEPM及び#2のEPDMの「対照(Control)」の写真とは異なって、この#3の「対照(Control)」組成物は、最も貧弱な表面硬化の一つを示していて、粗で硬化不良の表面に付着したペーパータオルの繊維がかなり多い。
【0110】
それとは対照的に、驚くべきことには、54%のEPDMと46%のEPMとを含む本発明の新規な組成物及び「AIR−NS」の標識が付けられた本発明の成分は、表面に付着したペーパータオルの繊維がまったく無い極めて艶のある表面を与えているが、このことは、表面硬化が優れていることを示している。
【0111】
加熱空気オーブン中で硬化させる前の未硬化のサンプルシートの中に、数個の小さな閉じ込められた気泡が存在していたので、それが、図3の中の反射領域の中に(サンプルの表面が極めて滑らかで艶があるために)白く見えている。その表面に付着したペーパータオルの繊維はまったく認められなかったが、そのことは、優れて完全な硬化表面であることを表している。まとめると、本発明の教示に従い、ペルオキシド、添加剤、EPM及びEPDMエラストマーの新規なブレンド物を使用した新規なペルオキシド−エラストマー組成物#3は、加熱空気硬化プロセスのための改良された硬化組成物を提供し、思いがけないことには、完全にタックフリーで、完全に硬化されたエラストマー表面が得られている。
図1
図2
図3