(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スプレッドが、チョコレートスプレッド、ナッツ系スプレッド、スペキュロススプレッド、チーズスプレッド、又は塩味のスプレッドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスプレッド。
【背景技術】
【0003】
固形脂肪系は、構造及び安定性を提供するために多くの食品用途において有用である。固形脂肪系は、必要とされる機能性を有するために、固形の脂質を含有する。
【0004】
最近では、多くの油は、水素化によって凝固される。水素化は、植物油をより硬化し、かつ例えばバターと同等のテクスチャにすることによって、それらの植物油を処理して植物油の機能性を高めるために一般に使用されるプロセスである。このプロセスは、油の飽和脂肪酸含量を増加させる。飽和脂肪酸は、脂肪酸鎖の炭素原子間に二重結合を有しない脂肪酸である。水素化プロセス中、トランス脂肪酸も形成される。トランス脂肪酸は、二重結合の水素原子が分子の反対側に位置する不飽和脂肪酸である。一般に、それらは、天然に存在する油及び脂肪中でのみ少量見られる。トランス脂肪は、トランス異性体脂肪酸を有する不飽和脂肪である。
【0005】
伝統的には、食品業界は、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪(バター又は豚脂等)、飽和脂肪酸を多く含むより硬度の高い植物油(パーム油等)、並びにトランス脂肪酸及び飽和脂肪酸を多く含み得る水素化植物油(例えば、大豆又はヒマワリ油由来)ベースの固形脂肪系を使用している。これらの水素化油が広く研究されており、研究は、これらの種類の脂肪の過剰摂取が、心血管疾患、肥満、及びいくつかの種類の癌等の現代病の主な原因の1つであると示している。本業界は、あらゆる種類の食品用途における健康を害する脂肪の量を低減しなければならないという圧力をますます感じている。この問題を考慮して、食品用途におけるトランス脂肪及び/又は飽和脂肪を代替する多くの系が開発されており、それらのうちのいくつかは、脂肪を全く含まない。それらのうちの多くは、脂肪の構造を模倣するペースト様の構造を有する。一般に、これらの脂肪代替物は、脂肪の非常に限られた範囲の食品用途との代替において示される。
【0006】
脂肪の代替は、脂肪が食品の製造及び官能特性に非常に重要な役割を果たすため、難しい問題である。それは、多くの食品用途の最終態様も与える。フィリング、コーティング、及びスプレッドにおいて、脂肪は、可塑剤及び柔化剤の役割を果たし、フィリング、コーティング、又はスプレッドに、かつ全体として最終食品に適切なテクスチャを与える。脂肪がフィリングから漏出せず、かつフィリング、コーティング、又はスプレッドから分離しないことが所望される。
【0007】
米国特許第8,029,847 B2号(特許文献3)は、トランス脂肪代替系を提供する。
【0008】
油の特性のうちの1つは、トランス脂肪酸も飽和脂肪酸も含まないことである。残念ながら、油は、食品用途に特定のテクスチャを与えるのに必要な構造を有しない。油は、漏出する恐れがあるため、フィリング、コーティング、又はスプレッドでの使用が困難である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、構造化脂肪系を含む食品用途に使用するためのフィリング、コーティング、又はスプレッドに関し、構造化脂肪系は、約10w/w%〜約90w/w%の脂質及び約10w/w%〜約90w/w%の食用多孔質粒子を含み、脂質は、前記構造化脂肪系中に連続相として存在する。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「フィリング」という用語は、空洞に別の食品品目を充填するために使用される食用物質又は混合物を意味する。フィリングの例には、ピーナッツバターフィリング、プラリネフィリング、ボンボンフィリング、キャラメルフィリング、バタークリームフィリング、シリアルフィリング、押出スナック用のフィリング、チョコレートバー用のフィリング、チーズ又はチーズクリームフィリング、ゼリー又はチューインガム用のフィリングがある。好ましくは、本発明のフィリングは、製菓用フィリングである。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「コーティング」という用語は、食品品目に層として塗布される食用物質又は混合物の層を意味する。この層は、液体又は固体として塗布され得る。いくつかの実施形態において、コーティングは、食品品目の一部のみに塗布される。他の実施形態では、コーティングは、食品品目を完全に包み込み、故に食品品目を封入し得る。コーティングの一例は、典型的には糖と液体(水又は牛乳)で作られた、甘く、多くの場合クリーム状の糖シロップであるアイシング又はフロスティングであり、多くの場合、バター、卵白、クリームチーズ、又は香味料等の成分で濃縮される。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「スプレッド」という用語は、典型的にはナイフで、例えばパン又はクラッカ等の別の食品品目上に文字通りスプレッドされる食品を意味する。本発明の目的のために、スプレッドには、マーガリンは含まれない。本発明の好ましいスプレッドには、チョコレートスプレッド、ナッツ系スプレッド(ピーナッツバタースプレッド、アーモンドバタースプレッド、ヘーゼルナッツスプレッド)、スペキュロススプレッド、チーズ又はクリームチーズスプレッド、及び塩味のスプレッドが含まれる。
【0017】
一実施形態において、構造化脂肪系は、約10w/w%〜約50w/w%、好ましくは約15w/w%〜約40w/w%、更により好ましくは約20w/w%〜約35w/w%の脂質と、約50w/w%〜約90w/w%、好ましくは約60w/w%〜約85w/w%、より好ましくは約65w/w%〜約80w/w%の食用多孔質粒子とを含む。好ましい一実施形態において、構造化脂肪系は、約25w/w%〜約35w/w%の脂質と、約65w/w%〜約75w/w%の食用多孔質粒子とを含む。
【0018】
別の実施形態では、構造化脂肪系は、約50w/w%〜約90w/w%、好ましくは約60w/w%〜約85w/w%、更により好ましくは約65w/w%〜約80w/w%の脂質と、約10w/w%〜約50w/w%、好ましくは約15w/w%〜約40w/w%、より好ましくは約20w/w%〜約35w/w%の食用多孔質粒子とを含む。好ましい一実施形態において、構造化脂肪系は、約65w/w%〜約75w/w%の脂質と、約25w/w%〜約35w/w%の食用多孔質粒子とを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、脂肪系は、フィリング、コーティング、又はスプレッド中に、組成物中約10w/w%〜約75w/w%の量で、より好ましくは約15w/w%〜約60w/w%の量で、更により好ましくは約20w/w%〜約50w/w%の量で存在する。最も好ましくは、脂肪系は、フィリング、コーティング、又はスプレッド中に約25w/w%〜約45w/w%の量で存在する。
【0020】
構造化脂肪系
「系」という用語は、本発明において、脂肪系が必ずしも互いに化学的かつ生物学的に関連しているわけではなく、ある特定の比率で存在すべきであり、ある特定の方法で相互作用すべきである2つ以上の成分を含むことを強調するために使用される。
【0021】
脂肪系において、脂質と多孔質食用粒子との間の相互作用は、脂質が、連続相、すなわち、実質的に中断されていない相を形成するようなものでなければならず、そこで多孔質食用粒子が分布される。多孔質食用粒子は、脂質相を構造化し、かつ構造化脂肪系を提供する網構築物(network builder)の働きをする。したがって、脂肪系は、脂肪結晶の働きをし、かつそれを代替する多孔質食用粒子の存在及び構成によって構造化される。
【0022】
本発明の構造化脂肪系は、好ましくは、約0.5kg〜約2.5kgの硬度を有する。好ましくは、硬度は、約1kg〜約2kg、より好ましくは約1.4kg〜約1.8kgである。
【0023】
本発明の構造化脂肪系は、その最大弾性率及び最大損失率によって特徴付けられ得る。最大弾性率は、好ましくは約150000Pa〜約3000000Pa、より好ましくは約1500000〜約3000000Pa、更により好ましくは約2000000Pa〜約3000000Paである。最大損失率は、好ましくは約40000Pa〜約400000Pa、より好ましくは約200000Pa〜約300000Paである。
【0024】
本発明の構造化脂肪系は、その融点でのその弾性率及び損失率によっても特徴付けられ得る。弾性率は、好ましくは200Pa〜1500Pa、より好ましくは600Pa〜1200Paである。損失率は、好ましくは200Pa〜1500Pa、より好ましくは600Pa〜1200Paである。
【0025】
脂質
構造化脂肪系の脂質は、油、脂肪、又はこれらの混合物を含む。一実施形態において、脂質は、油及び脂肪を含む。油が、室温(約20℃〜約25℃)で液状のトリグリセリドである一方で、脂肪は、室温で固形又は半固形のトリグリセリドである。
【0026】
油は、ヒマワリ油、ピーナッツ油、高オレイン酸ヒマワリ油、トウモロコシ胚芽油、小麦核油、菜種油、紅花油、亜麻仁油、大豆油、パーム核油、パームオレイン、キャノーラ油、綿実油、魚油、藻類油、ヘーゼルナッツ油、アーモンド油、マカデミア油、米糠油、及びこれら2つ以上の混合物等の任意の食用油であり得る。
【0027】
脂肪は、バター、豚脂、獣脂、バター油、ココアバター、パームステアリン、ココナツ油、パーム油、パーム核油、シア油、イリッペ油、サラノキ油、コカムグルジ(kokum gurgi)油、マンゴー核油、部分水素化分画パーム核油等の部分水素化植物油、完全水素化植物油、水素化魚油、及びこれらの混合物等の任意の食用脂肪であり得る。好ましくは、脂肪は、飽和脂肪を多く含む。
【0028】
多孔質食用粒子
多孔質食用粒子は、任意の好適な多孔質食用粒子であり得る。好ましくは、多孔質食用粒子は、デンプン、タンパク質、繊維、親水コロイド、ココア粉末、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。粒子は、本発明の目的のために、粒子凝集体でもあり得る。
【0029】
多孔質食用粒子は、孔を有する食用粒子であり、これらの孔は、粒子の表面に存在する穴の形態、及び/又は粒子を通って互いにつながった空洞の形態、及び/又は固体泡状構造の形態であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、多孔質粒子は、本発明の目的のために、約5%〜約50%、好ましくは約5%〜約40%、より好ましくは約10%〜約35%、更により好ましくは約15%〜約30%、なお更により好ましくは約20%〜約25%の油吸収能を有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、多孔質食用粒子は、本発明の目的のために、好ましくは、約1μm〜500μmの平均粒径又は平均等価粒径を有する。いくつかの実施形態において、平均粒径又は平均等価粒径は、好ましくは約50μm〜約375μm、より好ましくは約100μm〜約350μm、なお更により好ましくは約100μm〜約300μmである。構造化脂肪系が滑らで柔らかいテクスチャが所望される製菓又は食品用途に使用されるとき、平均粒径又は平均等価粒径は、好ましくは50μm未満、より好ましくは25μm未満、更により好ましくは20μm未満、最も好ましくは15μm未満である。等価粒径は、非球状粒子のために使用され、試験用粒子と同一の密度を有する球状粒子の粒径と数値的に等しい。多孔質粒子は、その粒度分布によって特徴付けられ得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、多孔質粒子は、本発明の目的のために、BET法で測定されるとき、約2m
2/g以下、好ましくは約0.1m
2/g〜約2m
2/g、より好ましくは約0.2m
2/g〜約2m
2/g、更により好ましくは約0.2m
2/g〜約1.5m
2/g、なお更により好ましくは約0.2m
2/g〜約1.2m
2/gの比表面積を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明の多孔質粒子は、約0.5m
2/g〜約1.2m
2/gの比表面積を有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、多孔質粒子は、本発明の目的のために、約0.2g/cm
3〜約0.8g/cm
3、好ましくは約0.2g/cm
3〜約0.6g/cm
3、より好ましくは約0.2g/cm
3〜約0.5g/cm
3、更により好ましくは約0.3g/cm
3〜約0.5g/cm
3の疎性密度(loose density)を有し得る。
【0034】
更に、多孔質粒子の平均孔径は、典型的には約1μm〜約100μm、好ましくは約1μm〜約20μmである。平均孔径は、例えば、好適な顕微鏡で測定され得る。
【0035】
多孔質食用粒子は、食用粒子の構造格子に孔、穴、又は開口部を作成するように食用粒子を修飾するのに好適な任意の方法によって得ることができる。多孔度は、高い場合もあり、低い場合もある。孔、穴、又は開口部が粒子に単に表面的に存在する場合、多孔度は低い。孔、穴、又は開口部が粒子を通って互いにつながる空洞の形態である場合、多孔度は高い。これらの2つの両極端間の任意の多孔性は、生成方法を調整することによって得ることができる。かかる方法には、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ロール乾燥、押出、及び部分酵素分解がある。多孔質食用粒子は、タンパク質、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、グアー、ローカストビーンガム、デンプンデキストリン、ペクチン、マルトデキストリン、アルギン酸塩等の少量の結合剤を有する異なる種類の粒子、例えば、異なる種類のデンプン顆粒を噴霧乾燥させることによって得ることができる。
【0036】
好ましい一実施形態において、多孔質食用粒子は、デンプン系である。
【0037】
本発明における使用に好適なデンプン源は、トウモロコシ、エンドウ豆、ジャガイモ、サツマイモ、モロコシ、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、クズウコン、カンナ、及びこれらの低アミロース(約10重量%以下のアミロース、好ましくは5重量%以下のアミロースを含有する)又は高アミロース(少なくとも約40重量%のアミロースを含有する)品種である。これらの作物の遺伝子組み換え品種も好適なデンプン源である。本明細書における使用に好ましいデンプンは、1重量%未満のアミロース含量を有する蝋様トウモロコシデンプンを含む、40重量%未満のアミロース含量を有するデンプンである。特に好ましい源には、トウモロコシ及びジャガイモが含まれる。
【0038】
デンプン粒子のデンプンは、化学的に修飾されてもよく、酵素的に修飾されてもよく、熱処理、物理的処理、表面処理、コーティング、又は共加工によって修飾されてもよい。「化学的に修飾された」又は「化学修飾」という用語には、架橋、老化を抑制するブロッキング基での修飾、親油基の付加による修飾、アセチル化デンプン、ヒドロキシエチル化及びヒドロキシプロピル化デンプン、無機エステル化デンプン、カチオン性、アニオン性、及び酸化デンプン、両性イオン性デンプン、酵素によって修飾されたデンプン、並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。熱処理には、例えば、アルファ化が含まれる。したがって、デンプン粒子には、顆粒状態又は非顆粒状態のデンプンが含まれ得、すなわち、顆粒状態のデンプンは、物理的、熱、化学、又は酵素処理によって破壊されている。
【0039】
多孔質デンプン粒子は、多孔質デンプン顆粒であり得る。多孔質デンプン顆粒は、以下のように得ることができる。デンプン顆粒は、好ましくは酵素処理による加工によって修飾されており、より小さい分子がデンプン顆粒の間隙に入る穴、孔、又は開口部を有する顆粒をもたらす。修飾及び本発明での使用に好適なデンプン顆粒には、修飾されて孔容積又は表面積を増加させることのできる任意のデンプン、例えば、トウモロコシデンプン又はジャガイモデンプンが含まれ得る。本発明における使用に好適な多孔質デンプン顆粒の例には、孔容積を増加させ、それにより微多孔質デンプンマトリックスを生成する、通常デンプン分解酵素による処理によって修飾されたデンプン顆粒がある。シロクモノスカビ、クロコウジカビ、及びイネシロクモノスカビ、並びに枯草菌由来のものを含む多種多様の当技術分野で認識されているα−アミラーゼ又はグルコアミラーゼ、並びに動物起源のα−アミラーゼ及びグルコアミラーゼのうちのいずれかを使用することができる。酸又はアミラーゼの顆粒状デンプンにおける作用によって調製される微多孔質デンプン顆粒は、文献において周知であり、例えば、Starch Chemistry and Technology,Whistler,Roy L.,2
nd Edition(1984),Academic Press,Inc.New York,N.Yを参照されたい。これらの方法及び他の方法、並びに本明細書に開示される方法は、多孔質デンプンマトリックスの調製に好適である。本発明における使用に好適な微多孔質デンプンマトリックスの生成に必要な酵素処理期間は、デンプン源、アミラーゼの種及び濃度、処理温度、並びにデンプンスラリーのpHを含むいくつかの可変要素に依存する。デンプン加水分解の進行は、反応スラリーのD−グルコース含量をモニタリングすることによって追跡することができる。
【0040】
多孔質デンプン顆粒は、約1μm〜約500μm、好ましくは約1μm〜約100μm、より好ましくは約1μm〜約50μmの粒径又は等価粒径を有し得る。
【0041】
多孔質デンプン顆粒は、約0.2m
2/g〜約2m
2/g、好ましくは約0.2m
2/g〜約1.5m
2/g、更により好ましくは約0.2m
2/g〜約1.2m
2/gのBET比表面積を有し得る。最も好ましくは、多孔質デンプン顆粒は、約0.5m
2/g〜約1.2m
2/gのBET比表面積を有する。
【0042】
多孔質デンプン粒子は、非顆粒状デンプン物質を含む多孔質粒子であり得る。非顆粒状デンプン物質とは、本明細書で使用されるとき、顆粒状形状を有しない粒子からなるデンプン物質を指す。顆粒状形状は、略球状又は楕円形状を意味することを意図しており、従来の噴霧乾燥プロセスによって生成された球状デンプン粒子等の1つ以上の部分に刻み目を有する球状粒子を含む。薄片形状のデンプン粒子は、本明細書で使用されるとき、その顆粒状構造を失っており、かつ不規則な平板若しくは厚板又はシートの形態で不均一な形状を有する粒子である。典型的には、ロール乾燥又はドラム乾燥プロセスは、かかる薄片形状のデンプン粒子を生み出す。
【0043】
多孔質非顆粒状デンプン粒子は、約1μm〜約500μm、好ましくは約50μm〜約200μm、より好ましくは約100μm〜約150μmの粒径又は等価粒径を有し得る。
【0044】
非顆粒状デンプン物質のBET比表面積は、典型的には、約0.5m
2/g以下であり、好ましくは約0.4m
2/g以下、より好ましくは約0.3m
2/g以下である。
【0045】
任意成分
本発明の構造化脂肪系は、任意成分を更に含み得る。任意成分の例には、テクスチャ調整剤(texturizer)、香味剤、カカオ固形物及びカカオ固形物代替物、イナゴマメ、麦芽、乳固形物、甘味料、塩、デキストロース一水和物、ナッツ、果実、タンパク質、キャラメル、着色剤、ビタミン、ミネラル、酸化防止剤、健康に良い脂質等が挙げられるが、これらに限定されない。テクスチャ調整剤は、任意の親水コロイド、例えば、キサンタンガム、カラギナン、ローカストビーンガム、アルギン酸塩等であり得る。香味剤は、任意の好適な合成又は天然香味料、例えば、バニラ、キャラメル、及び/又はアーモンド香味料、果実抽出物、野菜抽出物、例えば、トマト、ニンジン、タマネギ、及び/又はニンニク抽出物、薬味、薬草等であり得る。カカオ固形物は、全脂又は脱脂カカオ粉末であり得る。乳固形物は、全脂又は脱脂粉乳であり得る。甘味料には、液体又は粉末形態の任意の種類の甘味料、例えば、サッカロース、グルコースシロップ、フルクトースシロップ、マルトースシロップ、メープルシロップ、トウモロコシシロップ、ハチミツ、糖アルコール、高強度甘味料等が含まれる。糖アルコールは、例えば、ソルビトール、マルチトール、エリトリトール等であり得る。高強度甘味料は、例えば、アスパルテーム、アセサルフェーム−K、グリコシド、例えば、ステビオシド又はレバウジオシドA等であり得る。ナッツは、例えば、ヘーゼルナッツ、ピーナッツ、アーモンド、マカデミア、ピーカン、クルミ(粉砕(粉)又は感全体)であり得る。果実は、任意の乾燥果実又は果実片、コンフィ果実又は果実片であり得る。タンパク質は、グルテン及び大豆タンパク質等の植物性タンパク質、カゼイン又は乳漿タンパク質等の乳タンパク質等であり得る。着色剤には、天然及び合成着色剤が含まれる。ビタミンには、An、D3、E、K1、C、B1、B2、B5、B6、B12、及びPPが含まれ、葉酸及びビオチン及びミネラルには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、塩化物、鉄、亜鉛、銅、マンガン、フッ素、クロム、モリブデン、セレン、及びヨウ素が含まれる。酸化防止剤には、トコフェロール、ローズマリー抽出物が含まれる。健康に良い脂質には、高オメガ油、魚油、藻類油、植物油が含まれる。
【0046】
使用
本発明は更に、フィリング、コーティング、又はスプレッドのトランス脂肪及び飽和脂肪含量を低減するための構造化脂肪系の使用に関し、構造化脂肪系は、10w/w%〜90w/w%の脂質及び10w/w%〜90w/w%の食用多孔質粒子を含み、脂質は、前記構造化脂肪系中に連続相として存在する。いくつかの実施形態において、構造化脂肪系は、フィリング、コーティング、又はスプレッドのトランス脂肪及び飽和脂肪含量を少なくとも10w/w%、好ましくは少なくとも20w/w%、より好ましくは少なくとも40w/w%低減することができる。いくつかの実施形態において、トランス脂肪及び飽和脂肪含量は、更には60w/w%超低減され得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明の構造化脂肪系は、フィリング、コーティング、又はスプレッドの糖含量を減少させるためにも使用され得る。
【0048】
構造化脂肪系を作製するプロセス
いくつかの実施形態において、構造化脂肪系は、液体又は溶融脂質、多孔質食用粒子、及び上述の任意成分を混合することによって作製される。混合は、好ましくは、均一の混合物が得られるまで実行される。その後、この混合物は、凝固される。
【0049】
混合は、脂質を多孔質粒子の孔内に取り込むために行われる。脂質と多孔質食用粒子の混合は、任意の好適な加工温度で行われ得る。いくつかの実施形態において、これは、60℃〜90℃の温度で行われる。しかしながら、他の実施形態では、これは、室温で行われ得る。
【0050】
脂質と多孔質食用粒子の混合は、静的、受動、インライン、又は動的ミキサ、例えば、高速ミキサ及び高剪断ミキサでの混合等の粉末及び液体を混合するための任意の好適な方法によって行われ得る。好ましくは、高速混合が用いられる。
【0051】
混合される脂質は、加工温度で液体であるべきである。脂質が加工温度で液体でない場合、それは、最初に溶融され得る。
【0052】
混合物の凝固は、混合物が固体又は半固体になるまで、例えば、室温への冷却、氷浴内での冷却、冷蔵、又はブラスト冷却等の当技術分野で既知の任意の好適な方法によって行われ得る。
【0053】
その後、構造化脂肪系は、フィリング、コーティング、又はスプレッドを作製するために典型的に使用される他の成分と混合され得る。
【0054】
あるいは、脂質(液体又は溶融形態)、食用多孔質粒子、及び任意成分は、フィリング、コーティング、又はスプレッドを作製するために典型的に使用される他の成分と直接混合され得る。
【0055】
測定方法
多孔質粒子の油吸収能を、油分散中の所与の量の多孔質粒子試料を遠心分離し、多孔質粒子に結合していない油を除去し、残りの油装填多孔質粒子を高遠心力に供し、得られた遠心分離デンプンの重量を評価することによりデンプン試料に結合したままの油の量を決定することによって測定する。
【0056】
25g(W
0)の多孔質粒子を秤量し、25gの油を添加し、スプーンで2分間完全に混合して、油−多孔質粒子混合物を得る。粘度が高すぎる場合、追加量の油を添加する。750mLの丸底バケツ遠心分離ボトルに約360gの天然ジャガイモデンプンを充填し、折り畳まれた濾紙(直径150mm、Machery−Nagel MN 614)を広げ、ジャガイモデンプンの上に(濾紙がその後の遠心分離中に適所に留まることを確実にするために小さい穴内に)設置する。その後、調製された油−多孔質粒子混合物を濾紙上に注いだ後に、Heraeus Multifuge 3S遠心分離機内で3434×gで10分間遠心分離する。遠心分離が完了した後、デンプン−多孔質粒子試料を有する濾紙を遠心分離ボトルから引き出し、濾紙に残ったデンプン−多孔質粒子試料を慎重に除去し、重量W
sを測定した。試料に吸収された油は、W
s−W
0で計算され、油吸収能(%)は、(W
s−W
0)/W
0×100%(約3%の偏差)で表される。
【0057】
多孔質粒子の疎性密度を、以下のように測定する。
【0058】
100cm
3の金属製ビーカーに、試験用物質を充填する。その後、これを秤量し、密度をg/cm
3単位で計算する。
【0059】
多孔質粒子の比表面積を、Gemini II 2370表面積分析器(Micromeritics NV/SA,Brussels,Belgium)内での窒素吸収によって測定する。多点(従来、11点)BET法(Bruauner,Emmett and Teller,J.Am.Chem.Soc.60:309〜319(1983))を使用して、全利用可能表面積(BET比表面積)(m
2/g)を決定する。
【0060】
多孔質粒子の粒度分布を、異なる開口を有する篩を使用した篩分析によって決定する。篩上のそれぞれの篩画分を較量し、試料の全重量で除して、各篩上に保持されたパーセンテージを得る。
【0061】
構造化脂肪系の硬度を、以下のように測定する。
【0062】
構造化脂肪系の硬度を、TAXTplusテクスチャ分析器(Stable Micro Systems,Godalming,UK)で測定する。粒径0.5cmのスピンドルを試料の1.5cmまで貫通させる。試料を20℃で測定する。
【0063】
レオロジーを、以下のように測定する。
【0064】
レオロジー測定を、モジュラーコンパクトレオメーターモデルMCR 300(AntonPaar Physica,Germany)を使用して実施する。
【0065】
鋸歯状の下板と1mm間隙の25mmの輪郭形成されたチタン製平板(PP 25/P)を有する構成を使用する。
【0066】
温度掃引測定のために、10rad/秒の角周波数で0.1mradの一定振幅を適用する。
【0067】
このシステムの温度を20℃から80℃まで5℃/分で変化させる。弾性率及び損失率 (それぞれ、G’及びG”)を測定する。
【0068】
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.構造化脂肪系を含む食品用途に使用するためのフィリング、コーティング、又はスプレッドであって、前記構造化脂肪系が、10w/w%〜90w/w%の脂質及び10w/w%〜90w/w%の食用多孔質粒子を含み、前記脂質が、前記構造化脂肪系中に連続相として存在する、フィリング、コーティング、又はスプレッド。
2.前記構造化脂肪系が、10w/w%〜50w/w%の脂質及び50w/w%〜90w/w%の食用多孔質粒子を含み、前記脂質が、前記構造化脂肪系中に連続相として存在する、上記1に記載のフィリング、コーティング、又はスプレッド。
3.前記構造化脂肪系が、50w/w%〜90w/w%の脂質及び10w/w%〜50w/w%の食用多孔質粒子を含み、前記脂質が、前記構造化脂肪系中に連続相として存在する、上記1に記載のフィリング、コーティング、又はスプレッド。
4.前記脂質が、油、脂肪、及びこれらの混合物を含む、上記1〜3のいずれか一項に記載のフィリング、コーティング、又はスプレッド。
5.前記食用多孔質粒子が、5〜50%の油吸収能を有する、上記1〜4のいずれか一項に記載のフィリング、コーティング、又はスプレッド。
6.前記食用多孔質粒子が、デンプン、タンパク質、繊維、親水コロイド、ココア粉末、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記1〜5のいずれか一項に記載のフィリング、コーティング、又はスプレッド。
7.前記デンプンが多孔質デンプンである、上記6に記載のフィリング、コーティング、又はスプレッド。
8.前記デンプンがアルファ化デンプンである、上記6又は7に記載のフィリング、コーティング、又はスプレッド。
9.前記コーティングがアイシングである、上記1〜8のいずれか一項に記載のコーティング。
10.前記フィリングが製菓用フィリングである、上記1〜9のいずれか一項に記載のフィリング。
11.前記フィリングがチョコレートフィリングである、上記1〜10のいずれか一項に記載のフィリング。
12.前記スプレッドが、チョコレートスプレッド、ナッツ系スプレッド、スペキュロススプレッド、チーズスプレッド、又は塩味のスプレッドである、上記1〜11のいずれか一項に記載のスプレッド。
13.フィリング、コーティング、又はスプレッドのトランス脂肪及び飽和脂肪含量を低減するための構造化脂肪系の使用であって、前記構造化脂肪系が、10w/w%〜90w/w%の脂質及び10w/w%〜90w/w%の食用多孔質粒子を含み、前記脂質が、前記構造化脂肪系中に連続相として存在する、使用。
14.フィリング、コーティング、又はスプレッドの糖含量を低減するための構造化脂肪系の使用であって、前記構造化脂肪系が、10w/w%〜90w/w%の脂質及び10w/w%〜90w/w%の食用多孔質粒子を含み、前記脂質が、前記構造化脂肪系中に連続相として存在する、使用。
本発明は、以下の実施例を用いて説明される。
【実施例】
【0069】
別途提供されない限り、本実施例に記載される全てのパーセンテージは、重量パーセントである。
【0070】
以下のチョコレートフィリングを作製した。
【0071】
【表1】
【0072】
チョコレート乾燥混合物は、チョコレートの無脂肪成分のブレンドである。これは、天然ココア粉末を8.67%、糖を57.76%、脱脂粉乳を33.47%、バニラを0.1%含有する。これらの成分を一緒に微粉砕する。
【0073】
参照物は、チョコレートフィリング又はチョコレートスプレッドとしてのベースの典型的なブレンドである。
【0074】
これらの成分をブレンドし、約40〜45℃で混合した。その後、これらを20℃に冷却させた。
【0075】
参照物は、柔らかい半固体の生成物をもたらした。試料T1〜T3もテクスチャが半固体であった。
【0076】
T1〜T3では、パーム脂肪の量が15%から5%に低減し、参照物と比較して飽和脂肪含量が67%低減したことに相当する。
【0077】
試料T1〜T3は、官能パネルに従って、参照物と同等の食感を有した。
【0078】
比較すると、T1も、参照物に対して約20%低減した糖含量を有する(30.32%に対して37.54%)。