特許第6484619号(P6484619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484619
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】剛性容器用のプラズマ処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/14 20060101AFI20190304BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A61L2/14
   H05H1/24
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-524436(P2016-524436)
(86)(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公表番号】特表2016-534783(P2016-534783A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】GB2014053093
(87)【国際公開番号】WO2015056006
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】1318237.3
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516112439
【氏名又は名称】アナカイル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ANACAIL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー ポッツ
(72)【発明者】
【氏名】デクラン ダイバー
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−510398(JP,A)
【文献】 特開2008−183025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/14
A61L 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌装置であって:
・可撓性絶縁材料又は絶縁流体を充填可能なレセプタクルを備え、
・該レセプタクル内に可撓性の通路又は凹部が配置されており、
・該通路又は凹部は、被処理容器を挿入可能であり、
・前記可撓性の通路又は凹部周りには、高電圧交流信号を印加可能とした一連の電極が配置されており、
・前記滅菌装置の使用時に、前記可撓性の通路又は凹部は、前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体の加圧により、前記一連の電極が前記被処理容器に接触した状態で、被処理容器に対して押圧可能であり、前記電極に高電圧交流信号を印加したときに被処理容器内にプラズマが発生する滅菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の滅菌装置であって、発生したプラズマは、高エネルギの反応種を被処理容器内に発生させるものであり、その反応種は、前記被処理容器の内表面前記被処理容器内における気体の滅菌に使用されるオゾン、ヒドロキシルラジカル及び準安定種を含む滅菌装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の滅菌装置であって、被処理容器は、剛性容器として構成されることにより、前記可撓性の通路又は凹部が押圧されたときに、前記可撓性の通路又は凹部における表面に対して密着する滅菌装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の滅菌装置であって、被処理容器は、剛性ガラス又はプラスチックで成形されており、かつ、ジャー、ボトル、薬剤バイアル、エアギャップが封入された充填シリンジのような密封剛性容器である滅菌装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の滅菌装置であって、前記レセプタクルは、密封箱である滅菌装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の滅菌装置であって、前記レセプタクルは、シリコーン油又は高電圧変圧油などの流体状絶縁材料が充填されている滅菌装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の滅菌装置であって、前記通路又は凹部は、前記レセプタクルの中央部を一方の側から他方の側まで延びている滅菌装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の滅菌装置であって、前記通路又は凹部は、シリコーン又はバイトンのような可撓性材料及び絶縁材料で構成されている滅菌装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の滅菌装置であって、前記通路又は凹部は、弾性絶縁膜として機能し、前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体が加圧されたときに被処理容器に対して押圧され、
これにより前記通路又は凹部を形成する前記弾性絶縁膜と被処理容器との間におけるエアギャップが除去される滅菌装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の滅菌装置であって、前記通路又は凹部を形成する材料に隣接するように、高電圧電極が配置されている滅菌装置。
【請求項11】
請求項10に記載の滅菌装置であって、前記高電圧電極が、電気回路によって作動可能であり、かつ、前記通路又は凹部を形成する弾性絶縁膜の伸縮により位置調整可能である滅菌装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の滅菌装置であって、前記レセプタクルには、
該レセプタクル内に充填された前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体の加圧手段が接続され、ピストンを使用して前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体を圧縮することにより、前記通路又は凹部を形成する可撓性材料が被処理容器に対して押圧可能である滅菌装置。
【請求項13】
滅菌装置の作動方法であって:
・可撓性絶縁材料又は絶縁流体を充填可能なレセプタクルを使用し、
・該レセプタクル内に可撓性の通路又は凹部を配置し、
・該通路又は凹部は、被処理容器を挿入可能であり、
・前記可撓性の通路又は凹部周りに、高電圧交流信号を印加可能とした一連の電極を配置し、
・前記滅菌装置の使用時に、前記可撓性の通路又は凹部は、前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体を加圧することにより、前記一連の電極が前記被処理容器に接触した状態で、前記可撓性の通路又は凹部を被処理容器に対して押圧し、前記電極に高電圧交流信号を印加して被処理容器内にプラズマを発生させる方法。
【請求項14】
滅菌装置であって:
・可撓性絶縁材料又は絶縁流体を充填可能なレセプタクルを備え、
・該レセプタクルには、前記レセプタクル延びる凹状の可撓性の通路が配置され、
・前記可撓性の通路には、導電材料が少なくとも部分的に充填される被処理容器が挿入及び配置可能であり、
・前記可撓性の通路周りに2個の電極を備え、前記通路に亘って高電圧交流信号が印加可能であり、
・前記2個の電極は、前記凹状の可撓性の通路の底部側に設けられた下側電極と、前記下側電極の上部に設けられた上側電極とからなり、
・前記下側電極によって前記通路内に挿入される容器包囲可能であり、
前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体の加圧により、前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体が前記被処理容器に向かって膨張することで、前記通路及び容器の間のエアギャップを除去し、
・前記電極に高電圧交流信号が印加されることにより、被処理容器内における前記導電材料の表面と、前記被処理容器の内壁又はリッドとの間にプラズマを発生させる滅菌装置。
【請求項15】
請求項14に記載の滅菌装置であって、該滅菌装置の使用時に、前記可撓性絶縁材料又は絶縁流体の加圧により前記可撓性の通路が被処理容器に対して押圧可能である滅菌装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理システムに関し、特に、剛性容器用のプラズマ処理システムと、プラズマ処理システムを使用して剛性容器の内表面及び/又は内容物を滅菌する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から多くの滅菌法が既知であるが、いずれも滅菌効率が不十分であるのみならず、高価で構成複雑な装置が必要になるという欠点を有する。
【0003】
特許文献1(国際公開第2011/055113号パンフレット)は、参照により本明細書に組み込まれるシステムを開示している。このシステムは、本出願人による先の出願の対象であるが、もっぱら可撓性容器に関連するものである。
【0004】
特許文献2(米国特許第4,834,948号明細書)は、同軸状に構成された従来におけるDBD型のオゾン発生器を開示している。このオゾン発生器は、密封容器内でオゾンを生成することはできず、管から供給される流動ガスにオゾンを添加することを意図するものである。
【0005】
特許文献3(特開2009-218083号公報)は、MHz〜GHzオーダの高周波電力で作動するRF駆動型の装置を開示している。この装置も、密封容器内でオゾンを発生させることはできない。
【0006】
特許文献4(欧州特許出願公開第1941912号明細書)は、完全に異なる形式の装置として、オゾンなどの化学的薬品ではなく、UV放射、IR放射及び電子衝撃の組み合わせにより対象物を滅菌する装置を開示している。
【0007】
特許文献5(米国特許出願公開第2011/123690号明細書)は、密封容器に既知の熱滅菌法を適用するだけの、完全に異なる形式の装置を開示している。
【0008】
特許文献6(米国特許第7,892,611号明細書)は、DBD型のプラズマ発生装置を開示しているが、この装置は密封容器の外部からの処理に適用することができない。即ち、装置を作動させるためには容器内に電極を差し込む必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2011/055113号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,834,948号明細書
【特許文献3】特開2009-218083号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1941912号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2011/123690号明細書
【特許文献6】米国特許第7,892,611号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の少なくとも1つの態様における課題は、上述した問題点の少なくとも一部を回避又は低減することのできる、剛性容器用の滅菌装置及び減菌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様は、滅菌装置を提供するものである。この滅菌装置は、
・可撓性絶縁材料又は流体を充填可能なレセプタクルを備え、
・このレセプタクル内に可撓性の通路又は凹部が配置されており、この通路又は凹部は、絶縁材料又は流体を被処理容器に適合させる流体変形部を含み、かつ、少なくとも一部が密封レセプタクル内で延在することにより、被滅菌容器を挿入可能とする開口部が形成され、
・可撓性の通路又は凹部周りには、高電圧交流信号を印加可能とした一連の電極が配置されており、
・滅菌装置の使用時に、可撓性の通路又は凹部は、可撓性絶縁材料又は流体の加圧により容器に対して押圧可能であり、一連の電極に高電圧交流信号を印加したときに被滅菌容器内にプラズマが発生する。
【0012】
このように、本発明は、プラズマ発生技術によって、密閉容器内の環境を滅菌することのできる滅菌装置に関する。本発明に係る滅菌装置は、密封容器内に配置される多様な対象物、例えばプラント資材、食品、動物性材料、医療品、眼科製品、医薬品及び化粧品を滅菌するために使用することができる。この場合の滅菌には除染も含まれるため、生存微生物の数が、例えば1/100〜1/100,000にまで減少する。
【0013】
滅菌装置が発生させるプラズマにより、高エネルギの反応種、例えばオゾン、ヒドロキシルラジカル、準安定種が容器内で生成される。これら種は、密封容器内のあらゆる表面を滅菌又は除染することができる。
【0014】
好適には、被滅菌容器は、剛性容器として構成されることにより、可撓性の通路又は凹部が被滅菌容器に対して押圧されたときに可撓性の通路又は凹部における表面に対して密着するものとする。このように本発明は、剛性ガラスや剛性プラスチックで構成され、例えばジャー、ボトル、薬剤バイアル、エアギャップが封入された充填シリンジのような剛性容器を処理及び滅菌することのできる滅菌装置に関する。
【0015】
レセプタクルは、密封することができ、好適には密封箱として構成される。
【0016】
レセプタクルは、適切な任意の流体状絶縁材料、例えばシリコーン油又は高電圧変圧油で充填することができる。
【0017】
通路又は凹部は、密封レセプタクルのほぼ中央部を一方の側から他方の側まで延びる構成とすることができる。この通路又は凹部により、被滅菌容器が配置可能となる開口部が形成される。
【0018】
通路又は凹部は、シリコーン又はバイトン(登録商標)などの可撓性材料及び/又は絶縁材料で構成される。通路又は凹部は更に、弾性絶縁膜として機能し、流体状絶縁材料が加圧されたときに通路又は凹部が被滅菌容器に向けて押圧される。この場合に通路又は凹部は、流体状絶縁材料によって包囲されている。これにより通路又は凹部を形成する弾性絶縁膜と被滅菌容器との間における全てのエアギャップが除去される。
【0019】
通路を形成する材料に隣接するように、陽極及び陰極とする高電圧電極が交互に配置される。これらの高電圧電極は、電気回路によって作動されると共に、通路又は凹部を形成する弾性絶縁膜が伸縮することにより位置が調整可能である。
【0020】
レセプタクルには、レセプタクル内に充填された流体状絶縁材料の加圧手段が接続される。特に好適な実施形態において、流体状絶縁材料を圧縮するために例えばシリンジ状のピストンが使用されることにより、通路又は凹部を形成する弾性材料が被滅菌容器に対して押圧される。
【0021】
滅菌装置の作動時に、被処理容器は可撓性通路内に配置される。その後、流体状絶縁材料が加圧されることにより、電極が容器との接触状態を維持したまま、可撓性の通路又は凹部が容器に強く押圧される。これにより、均一な圧力(約0.1〜1バール)が容器の外部に加わるため、可撓性絶縁膜として機能する通路又は凹部と被滅菌容器表面との間における空気が全て排除される。
【0022】
電極には高電圧交流信号(5〜20 kVrms, 1〜50 kHz)が印加可能であるため、密封容器内における気体が電離し、容器壁に対してプラズマが生じる。このプラズマにより、密封容器内に化学的な活性種、例えば酸素又はヒドロキシルラジカル、オゾン、準安定窒素が生成される。これら種には、例えば、ボトル又はジャーの内表面や内容物を除染又は滅菌し、不所望の有機溶媒を除去する作用がある。
【0023】
本発明の第2態様は、滅菌装置用の方法を提供するものである。この方法は、
・可撓性絶縁材料又は流体を充填可能なレセプタクルを使用し、
・このレセプタクル内に可撓性の通路又は凹部を配置し、この通路又は凹部は、絶縁材料又は流体を被処理容器に適合させる流体変形部を含むものとし、かつ、少なくとも一部を密封レセプタクル内で少なくとも部分的に延在させることにより、被滅菌容器を挿入可能とする開口部を形成し、
・可撓性の通路又は凹部周りに、高電圧交流信号を印加可能とした一連の電極を配置し、
・滅菌装置の使用時に、可撓性の通路又は凹部は、可撓性絶縁材料又は流体を加圧することにより可撓性の通路又は凹部を被処理容器に対して押圧し、一連の電極に高電圧交流信号を印加したときに被滅菌容器内にプラズマを発生させる。
【0024】
この場合の滅菌装置は、第1の態様に規定された装置とすることができる。
【0025】
本発明の第3態様は、滅菌装置を提供するものである。この滅菌装置は、
・可撓性絶縁材料又は流体を充填可能なレセプタクルを備え、
・このレセプタクル内で少なくとも部分的に延びる可撓性の通路が配置されることにより、導電材料が少なくとも部分的に充填される被滅菌容器が挿入及び配置可能な開口部が形成され、
・可撓性の通路周りに2個の電極を備え、この通路に亘って高電圧交流信号が印加可能であり、下側電極によって通路と、この通路内に挿入される任意の容器が全て包囲可能であり、
・滅菌装置の使用時に、可撓性絶縁材料又は流体を加圧することにより、可撓性の通路が被滅菌容器に対して押圧可能である。
【0026】
高電圧交流信号が電極対に印加されると、下側電極と導電性のジャー内容物との間における大面積に効率的な容量結合が生じる。この場合、作動電圧のほぼ全ては導電性のジャーと上側電極との間に印加され、容器内において、導電性の容器内容物と容器壁との間にプラズマを発生させる。
【0027】
このように本発明に係るシステムの使用は、乾燥材料又は乾性油ではなく、導電性の液体、例えばほぼ全ての食品や水溶液が充填された容器に限定されている。本発明に係るシステムは、特に、ジャー内のヘッドスペースが極めて小さい場合の使用に適している。これは、より低い作動電圧で遥かに大きな電力密度を確実に得ることが可能だからである。
【0028】
導電性の内容物には、例えば、水分を含有する食品又は飲料又は水溶液が含まれる。
【0029】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る滅菌装置を、被処理容器を包囲する流体の減圧状態で示す説明図である。
図2図1の装置を、被処理容器を包囲する流体の加圧状態で示す説明図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る滅菌装置を示す説明図である。
図4図3の滅菌装置を容器の配置状態で示す説明図である。
図5図3及び図4の滅菌装置を使用状態で示す説明図である。
図6a】本発明に係る滅菌装置の他の実施形態を充填済み容器の配置状態で示す説明図である。
図6b図6aの滅菌装置を作動させる電気回路を示す回路図である。
図6c図6aの滅菌装置に配置された充填済み容器及びその内容物を示す説明図である。
図6d図6cの充填済み容器及びその内容物を高圧電源との容量結合状態で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、基本的に、例えばボトルやジャーなどの密封された剛性容器内で放電(即ちプラズマ)を生じさせる装置を提供するものである。このプラズマにより、高エネルギの反応種、例えばオゾン、ヒドロキシルラジカル、準安定種が容器内で生成される。これら種は、密封容器内のあらゆる表面及び気体を滅菌又は除染することができる。
【0032】
本発明は、剛性ガラスや剛性プラスチックで構成された剛性容器、例えばジャー、ボトル、薬剤バイアル、エアギャップが封入された充填シリンジを処理及び滅菌することのできる滅菌装置に関する。
【0033】
図1は、本発明に係る滅菌装置100を示す。図1は更に、シリコーン油又は高電圧変圧油などの流体状絶縁材料112が充填された密封箱110を示す。この密封箱110内には、被滅菌容器114が配置されている。また、密封箱110のほぼ中央部に通路116が延びている。通路116により、被滅菌容器114が配置可能となる開口部が形成されている。
【0034】
通路116は、シリコーン又はバイトン(登録商標)などの可撓性材料及び/又は絶縁材料で構成されている。従って、通路116は、弾性絶縁膜として機能する。通路116を形成する材料に隣接するように、高電圧電極(陽極118,陰極120)が配置されている。これら高電圧電極118,120は、電気回路122によって作動される。
【0035】
図1は更に、ピストン・シリンダアセンブリ124を示す。同図におけるピストン124は伸長状態にあるため、開口部126から密封箱110における流体112が減圧されている。可撓性の通路116に対して押圧された高電圧電極118,120は、絶縁流体112がピストン124で減圧されている場合には、大気圧によって外側に押圧される。
【0036】
滅菌装置100の作動時に、被処理容器114は、参照符号200で表すように、可撓性の通路116内に配置される。その後、ピストン124が押し込まれることにより、電極118,120が容器114との接触状態を維持したまま、可撓性の通路116が容器114に強く押圧される。このように、流体状絶縁材料112は加圧することができる。これにより、均一な圧力(約0.1〜1バール)が容器114の外部に加わるため、可撓性の絶縁膜として機能する通路116と被滅菌容器114表面との間における空気が全て排除される。
【0037】
図示の電極118,120に高交流電圧信号(5〜20 kVrms, 1〜50 kHz)が印加されることにより、密封容器114内における気体が電離し、容器114壁に対してプラズマが生じる。このプラズマにより、密封容器114内に化学的な活性種、例えば酸素又はヒドロキシルラジカル、オゾン、準安定窒素が生成される。これら種には、例えば、ボトル又はジャーの内表面や内容物を除染又は滅菌し、不所望の有機溶媒を除去する作用がある。プラズマを生じさせる上記信号は、所要の化学的性質を得るために、振幅及びデューティ比を調整することができる。
【0038】
プラズマによって密封容器114内が処理及び滅菌された後、ピストン124を図1に示す初期位置に戻すことで流体112内における圧力が解放される。
【0039】
滅菌が施された容器114は取り出すことができる。この場合、容器114には、内表面を引き続き滅菌する活性種が含まれている。これら種は、経時的(温度及び容器の内容物に応じて分単位又は時間単位)に減衰するため、容器114が有毒残留物を含むことなく滅菌状態が維持される。
【0040】
容器114に水溶液を充填する場合、容器114内に生じたオゾンは、溶液内に容易に溶解し、従って液体が滅菌される。この場合にオゾンが溶液に溶解する速度は、容器を撹拌するか又は容器に超音波を作用させることによって高めることができる。
【0041】
図3は、他の実施形態を示す。この実施形態において、円筒管として構成された環状装置212は、シリコーンゴムなどの弾性絶縁材料で構成された厚壁を有する。この場合、流体210が容器200内に充填されている。図示の実施形態において、材料が充填された容器200は、環状装置212の孔に嵌め込む準備が完了した状態にある。
【0042】
図4及び図5に示す環状装置の壁には、可撓性を有する複数個の導電性電極214, 216, 218, 220が配置されている。電極214, 216, 218, 220は、円形状に形成され、かつ中央部に孔を有する。
【0043】
可撓性電極214, 216, 218, 220は、滅菌装置212と同種の、しかも導電性を有する弾性材料で構成され、チューブ状滅菌装置212の絶縁材料で完全に密封されている。交流電極は、高交流電圧源(5〜20kVrms,1〜50kHz;パルス整形)に接続される。
【0044】
図5に示すように、滅菌装置の作動時に、被処理流体210は、環状装置200の中央部における孔内に充填されている。この場合、滅菌装置212の頂面が垂直方向に加圧されているため、チューブ状滅菌装置212が水平方向に膨張し、容器200が押圧されている。この弾性チューブは、チューブの孔と容器200との間における空気が全て排出されるように構成されている(閉じ込めリング又は閉じ込め管を外側に任意で設けることができる)。その後、高電圧高周波信号が電極214, 216, 218, 220に印加されることにより、図1の実施形態と同様に、容器200内における気体が電離される。このように本発明は、外部電極のみを使用し、絶縁性を有する剛性容器内で放電を生じさせるためのシステムに関する。本発明においては、容器壁に対して電極が近接されるように、剛性容器がシステム内に配置可能である。絶縁材料を使用することにより、各電極間及び容器の間における全てのギャップと、各電極間における全てのギャップとが完全に塞がれる。
【0045】
高交流電圧(正弦波状又はパルス状)が交流電極に印加されれば、強い電場が生じる。容器内の気体にこの電場が作用すれば、放電又はプラズマが生じ、オゾン及び他の活性種が発生する。
【0046】
図6aは、滅菌装置310に配置された充填済み容器300を示す。図6cにおける電極は、可撓性を有するエラストマ材料で構成されている。この実施形態においても、(図1における実施形態と同様に)流体絶縁システムを利用することができる。
【0047】
図6dの実施形態において、剛性容器300は通路又は凹部内に配置され、上述した実施形態と同様に、エラストマ材料の頂部が加圧されている。これにより、エラストマが容器の外面に順応するため、ジャー周りにおける空気が全て排出される。図示の実施形態においては、高電圧高周波数の電力(3〜15kVrms, 1〜50kHz)が電極A,B間に印加されている。電極Bは、任意で接地してもよいが、電極Aとは逆位相で電力を供給することができる。電極B及び容器内容物の間におけるキャパシタンスが比較的大きいため、容器内容物は、ジャーの壁に亘って僅かな電圧降下を生じているのみで、電極Bに対して密接に電気結合されている。従って、電極A及びジャー内容物の間には極めて大きな電場が存在するため、ジャー内における気体がプラズマを生じる。図6の実施形態におけるシステムは、図1図5の実施形態におけるシステムに比べて、より低い作動電圧で作動可能という利点がある。
【0048】
ジャーがほぼ満杯以上に充填されていれば、エラストマに電極Aを設ける必要はなく、リッド(lid)に接触する電極や導電性を有するリッド自体を代わりに使用することができる。この場合、電極Aは安全上の理由から接地され、電極Bに電力が供給される。
【0049】
本発明の装置は、下記のような多様な分野での滅菌に使用することができる。
・医療用:熱的に敏感な薬剤(特に放射性薬剤、例えばPETトレーサ)のエンドポイント滅菌。即ち、放射性元素の半減期は短いため、滅菌に関して従来のバリデーション(検証)を行うための時間が不十分。
・産業用:食品、飲料及び化粧品産業におけるボトルやジャーの充填前の滅菌。
・食品用:密封ボトルや密封ジャーの頂部における食品表面の滅菌又は除染
【0050】
以上、本発明を特定の実施形態について記載してきたが、これら以外の実施形態にも適用可能であることは、言うまでもない。例えば、適切な形状及び可撓性を有する任意の通路を使用し、被滅菌剛性容器に対して押圧することができる。更に、任意のプラズマ発生を実現することができる。これに加えて、本発明の装置は、滅菌が必要とされる任意の状況下で使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d