(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484628
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】自動車用の少なくとも一つのエネルギーモジュールを収納する装置
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20190304BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20190304BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20190304BHJP
【FI】
H01M2/10 S
H01G11/78
H01G11/10
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-532293(P2016-532293)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公表番号】特表2016-533009(P2016-533009A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】EP2014065346
(87)【国際公開番号】WO2015018618
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年7月14日
(31)【優先権主張番号】102013215436.4
(32)【優先日】2013年8月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー・ダーニエール
(72)【発明者】
【氏名】シュターク・ホルガー
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/100072(WO,A1)
【文献】
特開2010−188965(JP,A)
【文献】
特開2013−193686(JP,A)
【文献】
特開2010−284984(JP,A)
【文献】
特開2013−67334(JP,A)
【文献】
特開2012−214065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10、8/04−8/0668
B60K 1/00−6/12、7/00−8/00、16/00
B62D 17/00−25/08、25/14−29/04
B60R 16/00−17/02
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の少なくとも一つのエネルギーモジュールを収納する装置又はハイブリッドカー若しくは電気車両用の少なくとも一つの高電圧エネルギーモジュールを収納する装置(10)であって、
少なくとも一つのエネルギーモジュールを収納する第一の収納部及び第二の収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)と、前記第一の収納部及び前記第二の収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)の間に設けられた接続部(11−3,13−3)とを有するケーシング(11,13)を備え、
前記接続部(11−3,13−3)は、当該接続部(11−3,13−3)により、前記ケーシングに所定の力が加わるときに変形下で当該変形により起きる前記第一の収納部及び前記第二の収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)の間の相対移動が可能となるように形成され、
前記ケーシング(11,13)は、ケーシング下部(11)とケーシング蓋部(13)とを有し、
前記接続部(11−3,13−3)は、それぞれ端部を具備した前記ケーシング下部(11)の接続部(11−3)と前記ケーシング蓋部(13)の接続部(13−3)とを備え、
前記端部は、前記第一の収納部及び前記第二の収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)の間が所定の距離まで接近したら外れるクランプ(14)により、互いに面で当接するようにして押し合わされることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(10)において、
前記収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)の変形のし難さと、前記接続部(11−3,13−3)の変形のし難さとは、予め決められた力の範囲内の所定の力が加わるときに前記接続部(11−3,13−3)が変形する一方、前記接続部(11−3,13−3)の変形に伴い動かされる前記収納部は、全く或いは略塑性変形を被らないように選択されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(10)において、
前記接続部(11−3,13−3)は、前記第一の収納部及び前記第二の収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)よりも低い剛性を有していることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置において、
前記接続部(11−3,13−3)の板厚は、前記少なくとも一つの収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)の板厚よりも薄いことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置において、
前記接続部(11−3,13−3)と前記収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)とは、異なる材料から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記接続部(11−3,13−3)はポリプロピレンを含み、前記収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)は、繊維強化されたポリアミドを含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置において、
前記ケーシング下部(11)の前記接続部(11−3)及び/又は前記ケーシング蓋部(13)の前記接続部(13−3)は、少なくとも一つの傾斜部(15)を有し、当該傾斜部は、前記第一の収納部及び前記第二の収納部(11−1,11−2,13−1,13−2)から選択された一の収納部が、前記第一の収納部及び前記第二の収納部から選択された他の収納部の方に相対移動するときに、前記クランプ(14)の端部が前記傾斜部(15)に接触し、前記二つの収納部の間が所定の距離に達すると、前記傾斜部(15)により及ぼされる力で前記クランプ(14)が外されるように形成されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置において、
前記クランプ(14)は、スナップ係合のためのスナップ装置によって、前記ケーシング(11,13)の前記接続部(11−3,13−3)上に取り付けられていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
前記ケーシング蓋部(13)及び/又は前記ケーシング下部(11)の前記接続部(11−3,13−3)が、スナップ突出部とスナップ溝部から選択された一方を有するとともに、前記クランプ(14)が、前記スナップ突出部と前記スナップ溝部から選択された他方を有し、前記スナップ突出部は、前記スナップ溝部内にスナップ係合されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置(10)を有する車両、自動車、又はハイブリッドカー若しくは電気車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の少なくとも一つのエネルギーモジュールを収納する装置、特にハイブリッドカー若しくは電気車両用の少なくとも一つの高電圧エネルギーモジュールを収納する装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、かかる装置を有した車両に関する。
【背景技術】
【0003】
例えばエネルギー蓄積モジュールやエネルギー変換モジュールといった一又は二以上のエネルギーモジュールを収納するこのような装置は、自動車に既製に組み込まれた状態で、広くエネルギー蓄積部ないしエネルギー蓄積装置として知られている。
【0004】
エネルギーモジュールは、大抵は互いに接続された複数のエネルギーセルにより形成されている。
【0005】
エネルギー蓄積モジュールとして形成されたエネルギーモジュールの例は、複数のバッテリーセルからなる構成が考えられ得る。例えば、二重層コンデンサ、リチウムイオン蓄電池等の電気化学的な蓄電池からなる電気バッテリー等である。エネルギー変換モジュールとして形成されたエネルギーモジュールの一例が、燃料電池スタックであり、これは互いに接続された一列の複数の燃料電池を有する。個々のセルは、例えばモジュールに押して入れることができ、このモジュールがケーシングにネジ止めされることができる。
【0006】
通常、このような装置は、とりわけ、例えばハイブリッドカー若しくは電気車両に関係したエネルギーモジュールを収納するのに使用される。この目的のために、従来の装置は、普通は構造が不変のケーシングを備えており、当該ケーシングは、ネジにより結合されているケーシング下部とケーシング蓋部とを備え、エネルギーモジュールを囲んでいる。さらに、ケーシングには、普通は取付部が設けられており、これによって、ケーシングは、ケーシングを保持させるようにして車両本体側ないし車両車体側に設けられた部材ないし部品を車両に接続することができる。
【0007】
このような従来装置のケーシングは、例えば事故とか衝突の際或いは自動車内で発生する振動等といった外部から作用する力を受け止める一方で、他方では、ケーシングに水が浸入することを防ぐ等、外部環境の影響からケーシングがエネルギーモジュールを保護する。このために、ケーシング下部とケーシング蓋部の間に配置されたシール部材が設けられており、これがエネルギーモジュール内に存在している電解液がケーシングから外に漏れ出すことも防いでいるのだが、安全性の観点からすると、電解液が漏れ出た際に発火してそれによって車両が炎に包まれかねないことからすれば、むしろこのことの方が一層重要である。
【0008】
特に、燃料タンクの組立スペースには、エネルギーモジュールを収納する二つに分かれた装置が用いられ、この装置は、エネルギーモジュールを収納する第一及び第二の収納部を備え、これらの収納部は、排気装置並びにカルダンシャフトないし駆動シャフトを跨ぐように設けられた接続部ないしブリッジにより接続されている。
【0009】
車両の長手側面に横方向から激突するような事故のときには、例えばエネルギー吸収部材、及び車両のサイドメンバー(Langstrager)等のその他の部品が、外から働く力を弾性及び/又は塑性変形しつつ先ず受け取り、そして、外から働く力の少なくとも一部を、エネルギーモジュールを収納する装置へとさらに導くことで、この装置が、接続部の部分ないしブリッジの部分において、梃子の働きによって折曲ないし変形することができるようになっている。
【0010】
外からケーシングに働く力によってエネルギーモジュールが壊れないように、ケーシングは、普通は、スチールすなわち鋼板やアルミニウム等の剛性のある金属材料から作られており、後者の場合には、例えばアルミ押出成形法(Aluminiumdruckgussverfahren)によって一塊の部品として製造される。ところが、ケーシングの質量は、一又は二以上のエネルギーモジュールの質量と並んで、装置の全重量のうちまさに最も大きな部分となる。
【0011】
その結果、装置がかなり重くなることで、自動車の出力効率が下がり、自動車のエネルギー需要が押し上げられることになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、事故のときにエネルギーモジュールを損傷から護ることができるとともに、重量を節約することができる少なくとも一つのエネルギーモジュールを収納する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1の特徴部の構成により解決される。
【0014】
本発明の有利な実施形態と発展態様は、下位請求項に与えられる。
【0015】
本発明による装置は、自動車用の少なくとも一つのエネルギーモジュールを収納するためのものであり、特には少なくとも一つのハイブリッドカー若しくは電気車両用の高電圧エネルギーモジュールを収納するためのものであり、当該装置は、次の構成とされている。すなわち、装置は、少なくとも一つのエネルギーモジュールを収納する第一の収納部及び第二の収納部を有するケーシングと、第一の収納部及び第二の収納部の間に設けられた接続部とを備えており、当該接続部は、ケーシングに所定の力が加わるときに、当該接続部が変形しながらその変形により第一の収
納部及び第二の収
納部の間に起きる所定の相対移動を可能とするように形成されている。
【0016】
これにより、例えば、クラッシュないし事故(例えば、フロント、リア、サイドのクラッシュ)の際に発生する運転ないしクラッシュの負荷、つまりは運転ないしクラッシュの衝撃応力を意図したとおりに接続部が受け止めることができる一方、外部の環境の影響から少なくとも一つのエネルギーモジュールを密閉する機能ないし少なくとも一つのエネルギーモジュールを遮蔽する機能を、収納部の領域において少なくとも暫定的に維持することができる。
【0017】
収
納部の変形のし難さと接続部の変形のし難さは、予め決められた力の範囲内に所定の力が加わるときに接続部が変形する一方、接続部が変形したことで移動させられた収納部は、塑性変形を一切被らないか、殆ど被らないように選択することができる。
【0018】
従って、収納部が有している変形のし難さに比べて、接続部は変形のし難さが低く、特に、塑性変形に関する変形のし難さが低いようにすることができる。さらに、接続部は、収納部が有しているよりも低い剛性を有していてもよい。
【0019】
加えて、接続部の板厚は、少なくとも一つの収納部の板厚よりも薄くなるように選択することができる。
【0020】
それに対して付加的ないし代替的に、接続部と収納部は、異なる材料から形成されていてもよい。例えば、接続部がポリプロピレンを含み、収納部が繊維強化ポリアミドを含んでいてもよい。
【0021】
本発明による装置は、有利には、ケーシングがケーシング下部とケーシング蓋部とを備え、接続部が、それぞれが端部を具備したケーシング下部の接続部とケーシング蓋部の接続部とを備え、取り外し可能なクランプによりこれらが互いに面で押し合わされるように構成される。
【0022】
ケーシング下部の接続部及び/又はケーシング蓋部の接続部は、少なくとも一つの傾斜部を有していてもよく、当該傾斜部は、第一の収納部及び第二の収納部から選択された一の収
納部が、第一の収納部及び第二の収納部から選択された他の収
納部の方に向かう相対移動の際に、クランプの端部が傾斜部と接触し、二つの収納部の間が所定の距離に達したら、傾斜部から及ぼされる力によってクランプが外されるように形成されている。
【0023】
好ましくは、クランプがスナップ装置によりケーシングの接続部に取り付けられており、その場合、ケーシング蓋部の接続部及び/又はケーシング下部の接続部が、スナップ突出部とスナップ溝部から選択された一方を備えるとともに、クランプが、スナップ突出部とスナップ溝部から選択された他方を備え、これらのスナップ突出部とスナップ溝部がスナップ係合している。
【0024】
本発明による車両、特には自動車、それも好ましくはハイブリッドカー若しくは電気車両は、上述した本発明による装置を備える。
【0025】
以下に、図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態を例を示して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】自動車用のエネルギーモジュールを収納する本発明による装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した装置の中央部分の拡大図である。
【
図3】本発明による
図1の装置を上面視して示す図である。
【
図5】
図1乃至4に示されたクランプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、自動車用の例えばエネルギー蓄積モジュール及び/又はエネルギー変換モジュールといったエネルギーモジュール(不図示)を収納する本発明による装置10を示す斜視図である。装置10は、例えば、高電圧エネルギーモジュールによりそれぞれが形成される6個のエネルギーモジュールを収納するように、ハイブリッドカー若しくは電気車両用に構成可能とされている。他の実施形態では、各自動車における組立スペースの関係から許される限りは、任意の数のエネルギーモジュールを収納するように構成されていてもよい。各エネルギーモジュールは、複数の互いに接続されたエネルギーセルを備えることができる。例えば、エネルギーモジュールは、例えば、リチウムイオン蓄電池といった電気化学的な蓄電池、二重層コンデンサ、燃料電池等々といったような一又は二以上のバッテリーセルからなる構成より形成することができる。
【0028】
装置10は、ケーシング11,13を備え、当該ケーシングは、ケーシング下部11と、ケーシング蓋部ないしケーシング上部13とを有する。好ましくは、ケーシング下部11もケーシング上部13も一体的に形成されている。ケーシング下部11の第一の−つまり自動車の進行方向に対して右側の−収納部11−1と、第二の−つまり左側の−収納部11−2とは、エネルギーモジュールを収納するように構成されており、エネルギーモジュールは、例えばケーシング11,13にネジ止めされていてもよいし、或いは、ケーシング11,13内に設けられた保持部に固定されていてもよい。ケーシング蓋部ないしケーシング上部13は、対応する第一及び第二の収納部13−1,13−2を有し、これらが相応にケーシング下部11の第一ないし第二の収納部11−1,11−2を覆う。
【0029】
ケーシング下部11の第一の収納部11−1は、ケーシング蓋部13の第一の収納部13−1とともにケーシング11,13の第一の収納部を形成し、他方、ケーシング下部11の第二の収納部11−2は、ケーシング蓋部13の第二の収納部13−2とともにケーシング11,13の第二の収納部を形成する。
【0030】
ケーシング下部11の第一及び第二の収納部11−1,11−2は、ケーシング下部11の接続部11−3を介して接続されている。この接続部11−3は、自動車のカルダンシャフトないし駆動シャフトと排気装置とが設置可能とされた自動車の中央トンネル部分上方を跨いで設けられるように構成されている。この結果、ケーシング下部11の第一及び第二の収納部11−1,11−2は、それぞれ、自動車の横手方向において上記中央トンネル部の側方に隣接して設けられるように構成されていることになる。
【0031】
ケーシング蓋部13の第一及び第二の収納部13−1,13−2は、同じようにケーシング蓋部13の接続部13−3を介して接続されている。この接続部13−3は、ケーシング下部11の接続部11−3の上方且つそれに伴い上記中央トンネル部の上方をも跨いで設けられるように構成されている。
【0032】
ケーシング下部11の接続部11−3は、ケーシング蓋部13の接続部13−3とともにケーシングの接続部11,13を形成する。
【0033】
好ましくは、ケーシング11,13は、上記中央トンネル部から離間して配置できるように設けられており、これにより、カルダンシャフトないし駆動シャフトからケーシングに振動が伝わらないようにするか或いは少なくとも伝わり難くするようになっている。さらに、排気装置から放射される熱からケーシング11,13を保護するために、排気装置とケーシング11,13との間に防熱板を設け且つ/又はケーシング11,13の材料として相応に熱に強い材料を用いることができる。
【0034】
ケーシング11,13は、不図示の取付部を介して車両本体側ないし車両車体側が接続可能且つそれにより保持可能である。
【0035】
特に有利な態様では、ケーシング11,13の接続部11−3,13−3は、ケーシング11,13の接続部11−3,13−3が、予め決められた力の範囲内でケーシング11,13に所定の力が加わるときに変形、それも好ましくは塑性変形して、ケーシング11,13の第一及び第二の収納部11−1,11−2,13−1,13−2間において、変形により生じる所定の相対移動を可能とするように設けられている。
【0036】
特に、ケーシング11,13は、次のように形成されている。すなわち、ケーシング11,13の接続部11−3,13−3は、例えば側方の激突ないし側方のクラッシュといった事故の際に発生し得るような横手方向の外部の力が自動車に作用するとき等、車両横手方向に働く所定の力がケーシング11,13に加わるときには、ちょうど力の作用点近くに配置されているケーシング下部11及びケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2が、それぞれケーシング下部11及びケーシング蓋部13の他方の収納部の方に向かって、変形に起因した相対移動を行えるように形成されている。
【0037】
エネルギーを吸収するために、接続部11−3,13−3は、ケーシングに所定の力が加わると塑性変形してエネルギー吸収部材として機能するように設けられている。このとき、接続部11−3,13−3は、当該接続部11−3,13−3が、力が加わることで生じるエネルギーの大半又は力が加わることで生じるエネルギーの全てを受け止めるか、或いは代替的に、ケーシング11,13に力が加わるときに、塑性及び/又は弾性変形して、ケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2の、車両本体側エネルギー吸収部材(これは、ケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2の周りにある車両構造と一緒になって、力が加わることで生じるエネルギーの大部分を受け止める。)へと向かうそれぞれの相対移動を生じさせるように形成されていてもよい。この場合には、車両本体側エネルギー吸収部材は、例えば、車両の中央トンネル部並びにその下にある部品ないし部材により形成することができる。
【0038】
どちらの場合においても、ケーシング下部11及びケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2の変形のし難さと、ケーシング下部11及びケーシング蓋部13の接続部11−3,13−3の変形のし難さとは、予め決められた力の範囲内で所定の力が加わるときにケーシング下部11及びケーシング蓋部13の接続部11−3,13−3が変形する一方、それと同じか或いは殆ど同じ負荷のときにケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2が全く或いは殆ど塑性変形を被らないように選択されている。
【0039】
このようにして、自動車の長手側面に力が働くとき(これは、自動車がスピンしたあとに支柱に長手側面で激突したときとか、或いは他の車両との事故ないし衝突のときであって、例えばその車が自動車の左側ないし右側長手側面に激突したときとかに現れるような力である。)、左側ないし右側のケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2(これらには、外から働く力が自動車の他の部品を介して伝達される。)のそれぞれが、相対的にそれぞれ他方のケーシング下部11及びケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2に向かって位置を変えることができ、つまりは、他方のケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2へと移動することができるが、これは、ケーシング下部11及びケーシング蓋部13の接続部11−3,13−3が先ず弾性的に、それから場合によっては塑性的に変形することができる一方、他方で、収納部11−1,11−2,13−1,13−2が依然として弾性変形すら被っていないか殆ど被っていないことによるのである。
【0040】
これにより、余分なエネルギーは周りにある車体構成部品により分解され、ケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2は、かなり後になってからはじめてエネルギーの吸収に組み込まれる。換言すると、ケーシング11,13の本発明による実施形態を用いることで、ケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2に働く力の大きさ並びに当該力から受け取るエネルギーが大幅に低減される。このようにして、ケーシング11,13に物が入って来るおそれが低減され、従って収納されたエネルギーモジュールが損傷するおそれと電解液が外に出ていくおそれが低減される。
【0041】
異なる変形のし難さ(特に剛性)は、例えば、収納部11−1,11−2,13−1,13−2及び接続部11−3,13−3に対して異なる材料を用いたり且つ/又は収納部11−1,11−2,13−1,13−2及び接続部11−3,13−3に対して異なる板厚を設定したりすることによって実現できる。例えば、ケーシング11,13のための材料として、プラスチックを利用することができ、接続部11−3,13−3に対してはポリプロピレン、収納部11−1,11−2,13−1,13−2に対しては30%ガラス繊維強化のポリアミドを選択することができる。
【0042】
ケーシング11,13に力が働く場合に、接続部11−3,13−3の目指す変形が得られるように、ケーシング下部11及びケーシング蓋部13の接続部11−3,13−3は、取り外し可能なクランプ14によって接続されており、このクランプ14が、ケーシング下部11とケーシング蓋部13との接続部11−3,13−3を解除可能に押圧する一方、ケーシング下部11とケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2は、ネジにより接続することができる。
【0043】
横から力が働いた場合、例えば
図3に示すように、車両横手方向に働く力Fがケーシング下部11及びケーシング蓋部13の収納部11−1,13−1に作用したときに、クランプ14が外れるように、ケーシング下部11の接続部11−3及び/又はケーシング上部13の接続部13−3は、
図2及び
図3に示すように、傾斜部15を有する。傾斜部15は、収納部11−1,11−2,13−1,13−2が互いに接近するように動くような場合に、車両長手方向(
図3中の短い矢印を参照。)においてクランプ14に力が働き、これにより、クランプが車両長手方向に向かって押され、外れるように機能する。特に、傾斜部15は、ケーシング11,13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2の一つが他のケーシング11,13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2に向かって相対移動する際に、クランプ15の端面側端部が傾斜部15と接触し、さらにこれに沿って移動する際にスライドし、ケーシング11,13の第一及び第二の収
納部11−1,11−2,13−1,13−2の間が所定の距離に達したら、クランプ15がケーシング11,13から外れるように形成されている。
【0044】
このようにして、ケーシングの収納部11−1,11−2,13−1,13−2における力の加減をさらに下げることができる。というのも、ケーシング下部11及びケーシング上部13の接続部11−3,13−3は、クランプ15が外れると、互いに離間するように動けるようになり、つまりは、ケーシング下部11の接続部11−3もケーシング上部13の接続部13−3も拡がることができるからである。このように力のレベルが一層下がることで、材料、及びそれに伴い重量(アルミ筐体に比べて約8kg)、コスト及び構造体における組立スペースを節約することができる。さらに、これにより、より低い耐荷重に適しているような、アルミニウム以外の他の材料を使用することが可能になる。車両の空いた組立スペース内には、さらに他の変形部材を使用することができる。この部材は、一方ではエネルギーを吸収し、他方ではケーシング下部11ないしケーシング蓋部13の収納部11−1,11−2,13−1,13−2の移動を補助する。
【0045】
図4に示すように、ケーシング下部11の収納部11−1,11−2内に配置されたエネルギーモジュールは、エネルギーモジュールを冷却するための冷却導管や導電線といったようなライン17を介して接続されている。好ましくは、接続部11−3,13−3において、ラインはメアンダ状ないしオメガ字状に延びている。これは、この形状が、真直ぐなラインの形態に比べて変形を許容し易いからであり、これにより、接続部11−3,13−3が変形するときのラインの損傷のおそれが低減される。一実施形態では、冷却導管は、接続部11−3,13−3の部分ではホースとしても形成されていてよく、このホースが、やはりある程度までは変形を許容する。収納部12内でのラインの位置を固定するために、ライン17は、ケーシング11,13側に取り付けられた接続素子16によって、エネルギーモジュールに向かって延びるラインに接続することができる。
【0046】
図5及び
図6に図示されたクランプ14は、ケーシングを密閉するのに必要な力を得ることができるように、その形状に基づいて且つ/又はそのために用いられる材料に基づいて設計されている。例えば、クランプ14は、ガラス繊維強化されたプラスチックから形成することもできるし或いはバネ鋼から形成することもできる。ケーシング下部ないしケーシング蓋部の接続部11−3,13−3上に載置するクランプ14の平坦部16上には、スナップ突出部(不図示)が設けられていてもよく、これが、ケーシング下部11ないしケーシング蓋部13の接続部11−3,13−3の端部に設けられた対応する溝部にスナップ係合し、例えば振動が生じたために意図せずクランプ14が外れてしまうのを防止するようになっている。