(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484635
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】可変形状ターボチャージャ用作動機構および歯車駆動式調整リング
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20190304BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20190304BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D17/16 A
F01D17/16 C
F02B39/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-545221(P2016-545221)
(86)(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公表番号】特表2016-536526(P2016-536526A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】US2014057378
(87)【国際公開番号】WO2015048238
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年9月4日
(31)【優先権主張番号】61/884,289
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・キング
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ダブリュ・チェカンスキー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ハッシャー
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−291440(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0160731(US,A1)
【文献】
実開昭59−097234(JP,U)
【文献】
特開昭60−125727(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102009008532(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102008000508(DE,A1)
【文献】
米国特許第02985427(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変タービン形状ターボチャージャ(1)のための歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)であって、
ラックギア(140)を含む調整リング(150)及び前記ターボチャージャ(1)のタービン(2)の形状を変化させるように構成されるベーン(30)に取り付けるベーンアーム(136)を含み、
前記ベーン(30)の回転運動を制御するように構成され、
ピニオン歯(162)を有するピニオンギア(160)をさらに含み、
前記ラックギア(140)は、前記ピニオン歯(162)と噛み合うラックギア歯(142)を含み、
前記調整リング(350、450)は、該調整リング(350、450)の外径と整列して配置される第1セットのギア歯(342、442)および調整リング(350、450)の内径と整列して配置される第2セットのギア歯(346、446)を含む、
歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項2】
前記ラックギア(140)は、前記調整リング(150)とは別体に形成される請求項1に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項3】
前記調整リング(150、350)とラックギア(140、340)とは一体的なユニットとして形成される請求項1に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項4】
前記ラックギア歯(142)は、前記ラックギア(140)の半径方向内向き面に形成される請求項1に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項5】
前記ラックギア歯(242)は、前記ラックギア(240)の半径方向外向き面に形成される請求項1に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項6】
前記ラックギア(140、240、440)は、前記調整リング(150、450)に取り付けられており、前記ラックギア歯(142、242、442)は、調整リング(150、450)の外部端に対して半径方向外側に調整リング(150、450)の外径と整列して位置付けられる請求項1に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項7】
ピニオン歯(162)を有するピニオンギア(160)をさらに含み、前記調整リング(350)は、半径方向内向き端(356)に形成された歯(342)と半径方向外向き端(354)に形成された歯(346)をさらに含み、前記ピニオン歯(162)は調整リング(350)の半径方向外向き端(354)に形成される歯342と噛み合う請求項3に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項8】
前記ベーンアーム(336)は歯(337)を含み、
前記調整リング(350、450)は、該調整リング(350、450)の半径方向内向き端と半径方向外向き端の少なくとも一部に形成される歯(346、446)をさらに含み、前記ベーンアーム(336)の歯(337)は、調整リング(150)の半径方向内向き端に形成される歯(346、446)と噛み合う請求項1に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項9】
前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)に連結されるアクチュエータピボット軸(52)をさらに含み、該アクチュエータピボット軸(52)は、ベアリングハウジング(16)内で回転可能に支持され、弾力的マウント(70)が前記アクチュエータピボット軸(52)とベアリングハウジング(16)との間に配置される請求項1に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項10】
前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)に連結されるアクチュエータ
ピボット軸(52)をさらに含み、該アクチュエータピボット軸(52)は、ベアリング
ハウジング(16)内で回転可能に支持され、弾力的マウント(70)が前記アクチュエ
ータピボット軸(52)とベアリングハウジング(16)との間に配置される請求項6に
記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項11】
前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)に連結されるアクチュエータピボット軸(52)をさらに含み、該アクチュエータピボット軸(52)は、ベアリングハウジング(16)内で回転可能に支持され、弾力的マウント(70)が前記アクチュエータピボット軸(52)とベアリングハウジング(16)との間に配置される請求項7に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【請求項12】
前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)に連結されるアクチュエータピボット軸(52)をさらに含み、該アクチュエータピボット軸(52)は、ベアリングハウジング(16)内で回転可能に支持され、弾力的マウント(70)が前記アクチュエータピボット軸(52)とベアリングハウジング(16)との間に配置される請求項8に記載の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「可変形状ターボチャージャ用作動機構および歯車駆動式調整リング」と称する米国特許仮出願第61/884,289号(2013年9月30日出願)に基づく優先権および該特許仮出願のすべての利益を主張するものであり、該米国特許仮出願は本願に参照として援用される。
【0002】
本開示は、可変タービン形状ターボチャージャの調整リングのための作動機構に関する。より具体的には、本開示は、可変タービン形状ターボチャージャにあるタービンベーンを調整する歯車駆動式調整リング、および可変タービン形状ターボチャージャにある調整リングのために弾力的に取り付けられる作動機構に関する。
【背景技術】
【0003】
ターボチャージャは、内燃機関に用いられる一種の強制誘導システムである。ターボチャージャは、圧縮空気をエンジン吸気部に伝達してより多くの燃料が燃焼できるようにし、このようにしてエンジンの重量を大きく増加させることなくエンジンの馬力を増大することができる。ターボチャージャは、同一量の馬力を有する小型エンジンを大型の通常の吸気式エンジンとして用いられるようにする。車両に小型エンジンを用いる場合、該車両の質量が減少し、性能が増加し、また、燃費が向上する。さらに、ターボチャージャはエンジンに伝達される燃料のより完全な燃焼を提供するが、このような燃焼はより清浄な環境という望ましい目標に寄与する。
【0004】
ターボチャージャは、一般的にエンジンの排気マニホールドに連結されるタービンハウジング、エンジンの吸気マニホールドに連結される圧縮機ハウジング、およびタービンハウジングと圧縮機ハウジングとの間に連結される中央ベアリングハウジングを含む。タービンハウジング内のタービンホイールは排気マニホールドから供給される排気ガスの流入によって回転可能に駆動される。中央ベアリングハウジング内に回転可能に支持される軸がタービンホイールを圧縮機ハウジング内の圧縮機インペラに連結し、これによりタービンホイールが回転すると圧縮機インペラが回転する。タービンホイールと圧縮機インペラとを連結する前記軸は回転軸線を規定する。圧縮機インペラが回転することによって、該圧縮機インペラは吸気マニホールドを通じてエンジンのシリンダに伝達される空気質量流量、空気流動密度および空気圧を増加させる。
【0005】
ターボチャージャは制限された条件の範囲でのみ理想的なブーストを提供する。したがって、与えられたエンジンに対する大型タービンは、高速では良好なブーストを提供するが、低速では良好に提供できない。なぜならば、大型タービンはターボラグを経ることとなり、これによって必要なときにブーストを提供できないからである。小型タービンは低速で良好なブーストを提供するが、高速ではエンジンがチョークされ得る。この問題に対する一解決方案は、タービンハウジング内で可動ベーンを有する可変形状タービン(VGT)を有するターボチャージャを提供することである。低速で、ブーストが速やかに必要なときには、ベーンを閉じて排気ガスの流れのための通路をより狭くすることができる。狭い通路は、排気ガスをタービンホイールブレード側に加速させ、ターボチャージャが必要なときにエンジンに動力の増大を提供することができる。一方、エンジンが高速で稼動して排気ガスの圧力が高いときにはベーンを開くことができ、ターボチャージャは関連速度に対して適切な量のブーストをエンジンに提供する。ベーンを開閉できるようにすることによって、ターボチャージャはエンジンによる動力要求に応じて様々な駆動条件で作動することができる。したがって、ベーンは調整リング機構を使用して頻繁に調整される。ベーンは軸に取り付けられ、該軸は調整リングに配置されたピンと結合するベーンアームに取り付けられる。したがって、調整リングが回転することによって各ベーンの位置は他のベーンと同時に調整される。調整リングはアクチュエータによって駆動され、当業界で良く知られている多様な機械駆動リンクによってアクチュエータに連結される。残念ながら、現在利用可能なあるリンクは不正確で、ヒステリシスを受けることになる。
【発明の概要】
【0006】
VGTターボチャージャは、タービンハウジング内に位置する可動ベーンを含む。該ベーンはタービンハウジングに対して回転して、タービンホイールに流れる排気ガスの流量を調整し、これによりターボチャージャは様々な条件下で適切に作動することができる。低速でベーンが閉じると、排気ガスはタービンホイールブレード側に加速され、ターボチャージャは必要なブーストを提供することができる。高速ではベーンが開かれ、タービンホイールブレード側に向かう排気の流れが減少し、必要に応じてブーストが調節される。VGTターボチャージャは、一般的にブロック駆動式調整リングアクチュエータ機構を用いて、ベーンが調整される一部のVGTターボチャージャに比べて減少したヒステリシスでタービンハウジング内のベーンを正確に動かすように構成される歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構を含む。
【0007】
本開示の一つの態様によると、可変タービン形状タービンの調整リングの回転運動を制御するための歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構が提供されるが、該歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構では、ラックギアおよびピニオンシステムを用いてベーンを動かす。ラックギアは、該ラックギアの歯が調整リングの外部端に対して外側に配置されるように調整リングに対して位置付けられる。このような配置によって、ラックギアと複雑なベーン調整部品との間の干渉が避けられる。ラックギアは、ラックギア歯が半径方向内側に向かうように形成されてもよく、またはラックギア歯が半径方向外側に向かうように形成されてもよい。
【0008】
本開示の他の態様によると、各ベーンはベーンアームを介して調整リングに連結される。該ベーンアームは歯車駆動式調整リングアクチュエータのラックに対するピニオンギアの運動に応じてベーンを回転させる。
【0009】
本開示の他の態様によると、前記ラックギアは調整リングの一体部分であり、この場合、ギアは調整リングに形成されている。ベーンアームとピニオンギアとを用いてベーンを回転させることができる。
【0010】
本発明の他の態様によると、各ベーンアームにはギア式半径方向外向き端が提供されてもよく、該端が調整リングの半径方向内向き端に形成される対応するギア歯と噛み合うようになることで、ピニオンが回転すると調整リングが回転するようになり、よって、それらの間のギア式連結を通じて各ベーンアームの回転が発生するようになる。
【0011】
本開示の他の態様によると、ラックギアは調整リングとは別体であり、ラックギアの歯は、調整リングの外部端と同一の半径方向外向き位置に配置されるように調整リングに取り付けられる。ラックギアを別体として形成することによって、好都合にもそのラックギアを調整リングの他の部分とは異なる材料で形成できるようになる。例えば、ラックギアは調整リングの他の部分と比較して相対的に高い高耐摩耗性材料で形成することができ、これにより、調整リングの耐久性を改善でき、高耐摩耗性材料で全体的に形成される調整リングに比べて製造コストを抑えることができる。
【0012】
本開示の他の態様によると、前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構には弾力的マウントが提供されるが、該弾力的マウントは、ベアリングハウジングと作動機構の軸の周囲に配置されるブッシングとの間に配置される。
【0013】
本開示の他の態様によると、可変タービン形状タービンの調整リングを制御するためのギアドライブが提供される。該調整リングはラックギアを含み、ピニオン(例えば、ドライブ)ギアの運動に応じて回転する。ピニオンギアはアクチュエータによる作動に応じて回転する。
【0014】
本開示のさらに他の態様によると、ベアリングハウジングと作動機構の軸の周囲に位置するブッシングとの間に配置される弾力的マウントはブロック駆動式調整リングと共に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面と共に以下の詳細な説明を参照して本開示の利点をよりよく理解することにより、その利点が容易に分かるようになるだろう。
【
図1】
図1は、可変形状タービンを含む従来の排気ガスターボチャージャの断面図である。
【
図2】
図2は、請求項1のターボチャージャの調整リングアセンブリの側面図である。
【
図3】
図3は、
図2のA−A線に沿った調整リングアセンブリの断面図である。
【
図4】
図4は、半径方向内側に向かうラックギアを有する調整リングを含む歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構の斜視図である。
【
図5】
図5は、半径方向外側に向かうラックギアを有する調整リングを含む他の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構の斜視図である。
【
図6】
図6は、一体形成されたラックギアを有する調整リングを含む他の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構を反対側からみた斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構のギア式ベーンアームの斜視図である。
【
図9】
図9は、取り付けられたラックギアを有する調整リングを含む他の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構の斜視図である。
【
図10】
図10は、
図6の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構を支持するベアリングハウジングの一部の断面図であり、該ベアリングハウジングとアクチュエータピボット軸との間に配置される弾性部材を図示する。
【
図12】
図12は、
図1の従来のブロック駆動式調整リングアクチュエータ機構を支持するベアリングハウジングの一部の断面図であり、該ベアリングハウジングとアクチュエータピボット軸との間に配置される弾性部材を図示する。
【
図13】
図13は、
図12のブロック駆動式調整リングアクチュエータ機構の詳細な端部図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、従来の排気ガスターボチャージャ1は、タービン部2、圧縮機部18および圧縮機部18とタービン部2との間に配置され、これらを互いに連結する中央ベアリングハウジング16を含む。タービン部2はタービンハウジング4を含み、該タービンハウジングは排気ガス入口(図示せず)、排気ガス出口8、及び前記排気ガス入口と排気ガス出口8との間で流体経路に配置されるタービンボリュート10を有する。タービンホイール12がタービンハウジング4内でタービンボリュート10と排気ガス出口8との間に配置される。軸14がタービンホイール12に連結されており、ベアリングハウジング16の内部で回転軸線Rの周りで回転可能に支持され、また、圧縮機部18内に延びている。圧縮機部18は圧縮機ハウジング20を含み、該圧縮機ハウジングは軸方向に延びる空気入口22、空気出口(図示せず)、および圧縮機ボリュート26を形成する。圧縮機ホイール28は圧縮機ハウジング20内の空気入口22と圧縮機ボリュート26との間に配置され、軸14に連結される。
【0017】
使用時、タービンハウジング4内のタービンホイール12は、エンジン(図示せず)の排気マニホールドから供給される排気ガスの流入によって回転可能に駆動される。前記軸14がタービンホイール12を圧縮機ハウジング20内の圧縮機ホイール28に連結するので、タービンホイール12が回転すると圧縮機ホイール28が回転するようになる。圧縮機ホイール28が回転することによって、該圧縮機ホイールは圧縮機空気出口(エンジンの吸気マニホールドに連結される。)からの流出を通じてエンジンのシリンダに伝達される空気質量流量、空気流動密度および空気圧を増加させる。
【0018】
前記ターボチャージャ1は可変タービン形状ターボチャージャ(VTG)である。特に、タービン部2は、タービンホイール12に衝突する排気ガスの流れを制御し、また、タービン部2の動力を制御するための複数の回転可能なベーン30を含む。よってベーン30はまた、圧縮機部18によって発生する圧力比を制御する。高圧排気ガス再循環(HP EGR)技術を用いてNOxの生成を制御するエンジンで、ベーン30はまた、排気背圧を制御して発生させるための手段を提供する。
【0019】
また、
図2および3を参照すると、ベーン30はタービンホイール12の周囲に円形配列に配置されており、タービンボリュート10とタービンホイール12との間に位置している。この構成でベーン30は、略環状である上側ベーンリング40と略環状である下側ベーンリング42との間で回転可能に支持され、ここで「上側」は、中央ベアリングハウジング16に近いことを指し、「下側」は、タービンハウジング4に近いことを指す。各ベーン30はベーン30の両側面から突出したポスト32上で回転し、該ポスト32はピボット軸35を規定する。ポスト32の自由端は、上側ベーンリング40と下側ベーンリング42におけるそれぞれの孔に収容される。下側ベーンリング42に対する上側ベーンリング40の配向角度は、ベーンリング40、42における対応する孔がポスト32の軸35と同心になるように設定され、ベーン30は軸35の周りを自由に回転できる。ベーン30の上側ベーンリング側で、ポスト32は上側ベーンリング40に対応する孔を介して突出してベーンアーム36に取り付けられ、該ベーンアームはベーンリング40、42に対するベーン30の回転位置を制御する。調整リングアセンブリ45が上側ベーンリング40に隣接してそれと平行に配置されており、全てのベーンアーム36の位置を同時に制御する。
【0020】
調整リングアセンブリ45は、調整リング50、該調整リング50のタービンに向かう回転可能に配置される小型のスライドブロック47、および調整リング50の圧縮機に向かう回転可能に配置される大型ブロック46を含み、この大型ブロックは調整リング50のアクチュエータへの連結個所に用いられる。使用時、調整リングアセンブリ45はベーンアーム36を介してベーン30を回転可能に駆動させて、前記ベーンアームは調整リングアセンブリ45を個々のベーン30に連結する。多くの構成で、システムの摩擦を最小化させ、かつタービンハウジングおよびリンクにおける歪曲と腐食に対応するためにフォーク37がベーンアーム36の端に形成されており、独立的に回転可能なスライドブロック47を駆動させる。調整リング50は最小の摩擦で円周方向に回転でき、上側ベーンリング40および下側ベーンリング42と同心に保持されるように半径方向に整列し、また、前記調整リングはスライドブロック47がベーンアーム36との接触を保つように軸方向に整列する。
【0021】
ある実施形態で、調整リング50はベーンアーム36にある隔壁38により支持される。前記大型ブロック46は軸によって調整リング50に連結される。大型ブロック46がターボチャージャの回転軸線Rの周りで円周方向に動くと、調整リング50がターボチャージャの回転軸線Rの周りで回転する。調整リング50がターボチャージャの回転軸線Rの周りで回転すると、複数の小型スライドブロック47がターボチャージャの回転軸線Rの周りで回転し、また、このとき、スライドブロック47のそれぞれはベーンポスト32の回転軸線35の周りで回転する。スライドブロック47のこのような運動によって、ベーンアーム36がベーンポスト32の回転軸線35の周りで回転し、排気流れに対するベーン30の迎え角を変化させる。スライドブロック47は、各スライドブロック47と前記対応するベーンアームフォーク37との間の界面が回転するスライドブロック47の一側面部の全体領域にわたって主に摺動摩擦されるように設計されている。このような設計によって、均一な荷重分布が得られて摩耗が減少し、また、線接触の場合よりも寿命が延びるが、反対に摩擦は線接触の設計の場合より大きくなる。
【0022】
調整リング50の回転配向は、リンク48とアクチュエータピボット軸52(
図1)とを介して前記大型ブロック46に作動連結されているアクチュエータ(図示せず)により制御され、このようにして調整リング50は回転軸線Rの周りで回転することができる。アクチュエータはエンジン電子制御ユニット(ECU)から指令を受ける。
【0023】
図4を参照すると、歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100を用いて、前述した従来の調整リングアセンブリおよび作動機構の一部分が代替される。前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100は、ある従来の構成よりも正確でかつ少ないヒステリシスで可変タービン形状タービンの調整リング150の回転運動を制御するように構成される。前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100は、複数の摺動ブロック137を含む調整リング150、ラックギア歯142を有するラックギア140、ベーンポスト132上に取り付けられるフォーク型ベーンアーム136、およびピニオンギア歯162を有するピニオンギア160を含む。ピニオンギア160は、アクチュエータピボット軸52とリンク48とを介してアクチュエータに連結される。ラックギア140はその半径方向内向き面に形成される歯142を含み、該歯は、ピニオンギア160の歯162と噛み合うようになる。ラックギア歯142はターボチャージャ軸の回転軸線Rに向かって内側を向いており、調整リング150の外部端に対して半径方向外向きに位置する。ラックギア歯142を調整リング150の外部端に対して外側に配置することによって、アクチュエータピボット軸52とピニオンギア160の作動のための十分な余裕が提供され、また、ラックギア140とターボチャージャの他の動く部品との干渉が防止される。ラックギア140は調整リング150とは別に形成されるが、任意の通常の取り付け方法によって該調整リングに取り付けられる。
【0024】
機械的駆動リンク48の作動に応じて、ピニオンギア160が回転するようになり、これによってピニオンギア歯162とラックギア歯142との相互の噛み合いを通じて調整リング150の回転が起こる。そして調整リング150の回転によって、個々のベーンアーム136とベーン30(この図には図示せず)が摺動ブロック137を介して回転するようになる。
【0025】
図5を参照すると、一つの代案的な歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構200が、ある従来の構成よりも正確でかつ少ないヒステリシスで可変タービン形状タービンの調整リング150の回転運動を制御するように構成される。歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構200は
図4の機構100と同様であり、共通の構成要素は共通の参照番号で示している。前記代案的な歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構200はラックギア240を含み、該ラックギアは、ラックギア240の半径方向外向き面に形成されるラックギア歯242を有する。また、ラックギア歯242はターボチャージャ軸の回転軸線Rから遠ざかる方向を向いている。ラックギア歯242はラックギア240の外部面に形成されるが、該ラックギア歯242は調整リング150の外部端に対しても半径方向外向きに配置され、
図4の歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100と同様に作動する。
【0026】
図6〜8を参照すると、他の代案的な歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構300が、ある従来の構成よりも正確でかつ少ないヒステリシスで可変タービン形状タービンの調整リング350の回転運動を制御するように構成される。歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構300は、ラックギア340を有する調整リング350、ベーンポスト32上に取り付けられるベーンアーム36、およびピニオンギア歯162を有するピニオンギア160を含む。歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構300はまた、ギア式ベーンアーム336を含む。例えば、ギア式ベーンアーム336のそれぞれはベーンアーム隔壁338の半径方向外向き面に形成されている一セットの歯337を含む(
図8)。
【0027】
前記調整リング350のラックギア340は、調整リング350の半径方向外向き端354(例えば、外径)の少なくとも一部に沿って一体形成される第1セットの歯342を含む。ピニオンギア歯162は、調整リング350の半径方向外向き端354に形成される前記第1セットの歯342と噛み合う(
図6)。該第1セットの歯342は、ピニオンギア160の運動に応じて調整リング350をターボチャージャの回転軸線Rの周りで回転させるために用いられる。
【0028】
調整リング350は、該調整リング350の半径方向内向き端356(例えば、内径)の全円周に沿って一体形成される第2セットの歯346を含む(
図7)。調整リング350における前記第2セットの歯346は前記ギア式ベーンアーム336における対応するセットの歯337と噛み合うように構成され、これにより調整リング350が回転すると、これに応じて各ベーンアーム336が回転するようになる。各ベーンアーム336の回転はベーンポスト332を介して該それぞれのベーン30に伝達される。
【0029】
図9を参照すると、他の代案的な歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構400が、ある従来の構成よりも正確かつ少ないヒステリシスで可変タービン形状タービンの調整リング450の回転運動を制御するように構成される。歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構400は、ラックギア440を有する調整リング450、対応するベーンポスト332に取り付けられるギア式ベーンアーム336、およびピニオンギア歯162を有するピニオンギア160を含む。
【0030】
前記調整リング450のラックギア440は、調整リング450とは別体に形成され、任意の通常の取り付け方法によって該調整リングに取り付けられる。ラックギア440を調整リング450とは別体に形成することにより、好都合にもこれら構成要素を形成するために用いられる材料の戦略的な選択が可能になる。例えば、ある実施形態において、ラックギア440は調整リング450の他の部分と比較して相対的に高い高耐摩耗性材料で形成することができ、これにより調整リング450の耐久性を改善でき、高耐摩耗性材料で全体的に形成される調整リングに比べて製造コストを抑えることができる。
【0031】
ラックギア440は、ラックギア歯442がピニオンギア歯162と噛み合い、ラックギア440の半径方向外向き面に形成されるように調整リング450に配置される。ラックギア440は、ラックギア歯442が調整リング450の半径方向外向き端454と同一の半径方向位置に配置されるように調整リング450に取り付けられる。ピニオンギア歯162はラックギア歯442と噛み合い、該ラックギア歯442は、ピニオンギア160の運動に応じて調整リング450をターボチャージャの回転軸線Rの周りで回転させるために用いられる。
【0032】
前記調整リング450は、該調整リング450の半径方向内向き端456(例えば、内径)の全円周に沿って一体形成される第2セットの歯446を含む。調整リング450における前記第2セットの歯446は、ギア式ベーンアーム336における対応するセットの歯337と噛み合うように構成され、これにより調整リング450が回転するとこれに応じて各ベーンアーム336が回転するようになる。各ベーンアーム336の回転はベーンポスト332を介してそのそれぞれのベーン30に伝達される。
【0033】
前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100、200、300、400の作動中に、調整リング150、250、350、450は、ピニオンギア歯162とラックギア歯142、242、342、442とが噛み合うことを通じてピニオンギア160の回転によりターボチャージャの回転軸線Rの周りで回転する。特に、ピニオンギア160が時計回りに回転すると、調整リング150、250、350、450は反時計回りに回転する。ピニオンギア160は、ラックギア140、240、340、440に形成される歯142、242、342、442より少ない数の歯162を有する。したがって、ピニオンギア160がより大きく回転すると、調整リング150、250、350、450はより小さく回転する。3:1〜6:1の範囲にあるピニオンギア歯162に対するラックギア歯142、242、342、442のギア比が効果的であると明らかになったが、ギア比はこのような範囲に限定されない。
【0034】
前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100、200、300、400は、軸を回転させることができるアクチュエータによって作動され得る。前記ギア比は、アクチュエータの回転に合わせて回転が設定されてもよく(例えば、1:1のギア比)、また、アクチュエータがベーン30を制御できるように全体的なギア比を提供するように調節してもよい。また、調整リング150、350、450の直接的な駆動を可能にするアクチュエータをベアリングハウジングに提供することができる。
【0035】
代案的に、前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100、200、300、400は、線形運動を回転運動に変換するリンクを介して連結される線形アクチュエータによって回転することができる。リンクが広くなく、かつ特に複雑でない限り、アクチュエータの線形変位が軸の回転に変換されることは一般的に線形的ではない。例えば、5mmの線形変位によって10度の回転が起こるとすると、10mmの線形変位によって20度の回転が起るものではない。幸いにも、ベーン30は大きな角度の回転を必要としない。したがって、ベーン30が一般的に動く小さな回転角に対しては、非線形性が最小であって一般に無視することができる。あまり複雑ではないリンクの場合の非線形性は簡単に計算できる。必要であれば、ターボチャージャコントローラまたはエンジンのコントローラユニットは、いかなる非線形性の発生と関連する補正も容易に行える。
【0036】
前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100、200、300、400は軸の回転運動を調整リング150、350、450に伝達することができる。前述した通り、可変形状ターボチャージャ1で、高温の排気ガスはベーン30によりタービンホイール12に送られ、該ベーンは調整リング150、350、450によって動く。しかし、ベーン30から出る熱が調整リング150、350、450に伝導され、また該調整リング150、350、450からターボチャージャ1の軸14に伝導される。ターボチャージャ部品の熱膨張は作動および耐久性に否定的な影響を与え得る。
【0037】
図10を参照すると、前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100、200、300、400は、アクチュエータピボット軸52とベアリングハウジング16との間に配置される弾力的マウント70を含んでいてもよく、該弾力的マウントは前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100、200、300、400とベアリングハウジング16との間の熱伝導の否定的な影響を減らすために用いることができる。前記弾力的マウント70は、ここでは
図6に示す歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構300と関連して示しているが、前記機構のすべての実施形態に採用することができる。
【0038】
前記弾力的マウント70は、弾性的かつ弾力的な中空円筒形部材である。弾力的マウント70は、アクチュエータピボット軸52を収容するベアリングハウジング内の開口16aの内径に相当する外径を有する。ブッシング72が前記弾力的マウント70の内部に同心に配置されており、前記弾力的マウント70の内径に相当する外径を有する。ブッシング72はアクチュエータピボット軸52の端部を収容するように構成される。前記弾力的マウント70とブッシング72とは前記開口16a内に配置され、ベアリングハウジング16に対してアクチュエータピボット軸52を回転可能に支持する。したがって、ブッシング72はアクチュエータピボット軸52と弾力的マウント70との間に位置し、弾力的マウント70はブッシング72とベアリングハウジング16との間に配置される。図示されている実施形態において、アクチュエータピボット軸52はリンク48を介してアクチュエータによって回転するが、これに限定されない。前述した通り、アクチュエータピボット軸52が回転すると、この軸に連結されるピニオンギア160の回転とギア調整リングアクチュエータ機構300の運動が発生し、これによりベーン30の運動も発生する。
【0039】
作動時、排気ガス熱の一部はアクチュエータピボット軸52に伝達されて、該アクチュエータピボット軸52と接触する要素が膨張する。例えば、ブッシング72は350〜450℃の範囲内の温度に達し得る。ブッシング72とアクチュエータピボット軸52とがターボチャージャ内の高温によって膨張することにより、これに応じてアクチュエータピボット軸52とベアリングハウジング16との間に位置する前記弾力的マウント70が膨張するようになる。アクチュエータピボット軸52が冷却されると、弾力的マウント70は元の形状に戻る。該弾力的マウント70の弾性のため、アクチュエータピボット軸52とブッシング72とを含むアクチュエータ部品が加熱により膨張し、冷却により収縮されることができ、また、引き続き調整リング350との接触を保持することができる。さらに、弾力的マウント70はターボチャージャの作動中に発生し得る振動を減衰する。
【0040】
前記弾力的マウント70は多様な形状を有することができ、弾力的マウント70の形状によって、該弾力的マウント70により提供される弾力性の実際の量が決定される。弾力的マウント70は略円形である断面形状を有し、半径方向内側に向かう突出部74を含み、該突出部は様々な形状を有する。弾力的マウントの突出部74の例示的な形状を
図11a〜11dに示す。
【0041】
弾力的マウント74の形成に適した材料は、鋼、スプリング鋼、および310等級鋼や2111HTR等級鋼のような耐熱性ステンレス鋼を含むが、これに限定されない。ブッシング72の形成のために用いるのに適した材料は、銅、青銅、黄銅、鋼およびステンレス鋼を含むが、これに限定されない。
【0042】
図12および13を参照すると、前記歯車駆動式調整リングアクチュエータ機構100、200、300、400を含むターボチャージャ1に前記弾力的マウント70を好都合に用いることができるが、該弾力的マウントは
図2に示すブロック駆動式機構のような従来のVTG作動機構にも用いることができる。例えば、弾力的マウント70とブッシング72とは前記開口16a内に配置され、アクチュエータピボット軸52をベアリングハウジング16に対して回転可能に支持する。したがって、ブッシング72はアクチュエータピボット軸52と弾力的マウント70との間に位置し、弾力的マウント70はブッシング72とベアリングハウジング16との間に配置される。
図13に示すように、ブロック駆動式機構はアクチュエータピボット軸52の端部に取り付けられるフォーク型部材78を含む。該フォーク型部材78は調整リング50に連結される大型ブロック46を部分的に囲む。アクチュエータピボット軸52が回転すると、この軸に連結された前記フォーク型部材78が回転し、その結果、調整リング50の運動が発生し、これによりさらにベーン30の運動が発生するようになる。
【0043】
タービンホイールと可変タービンベーンとは、タービンホイールが1922゜F(1050℃)の高温まで達し得る高温環境で作動する。可変タービン形状ターボチャージャにおいて、ベーン調整リングは排気ガスの直接的な経路にある。場合によっては、調整リングアクチュエータの一部も排気ガスの直接的な経路にあり得る。しかし、調整リングアクチュエータが排気ガスの直接的な経路になくとも、ベーンと調整リングからの熱が調整リングアクチュエータに伝導され得る。したがって、ニッケル系超合金と耐熱性ステンレス鋼が、開示された歯車駆動式および/またはブロック駆動式調整リングアクチュエータ機構の製造のための例示的な材料である。ニッケル系超合金は一般的にニッケル、クロムおよび鉄を含有し得るが、ある合金では他の金属が含まれてもよい。インコネル、ハステロイ、インコロイおよびモネル金属合金が、開示された歯車駆動式および/またはブロック駆動式調整リングアクチュエータ機構の形成に用いられるのに適したニッケル系超合金の例である。開示された歯車駆動式および/またはブロック駆動式調整リングアクチュエータ機構を製造するために耐熱性ステンレス鋼を選択する場合、適切な耐熱性ステンレス鋼の材料は310等級鋼および2111HTR等級鋼を含む。
【0044】
ここでは本開示の態様を例示的な方式で説明したが、使用された用語は限定のためのものでなく説明のためのものであることを理解すべきである。前述した教示に鑑みて本開示に対する多様な修正及び変化が可能である。したがって、添付された請求範囲内で、本発明は説明内で具体的に言及されたのとは異なるように実施される可能性があることを理解すべきである。