(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部が、前記第1多相巻線に所定の電流を流したときに前記第2多相巻線に発生する誘起電圧を計測することで、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する
請求項1に記載の始動発電装置。
前記制御部が、前記第1多相巻線に所定の電流を流したときに前記第1多相巻線に発生する誘起電圧を計測することで、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する
請求項1に記載の始動発電装置。
前記制御部が、前記始動発電機を電動機として駆動する際に、前記第2電力変換部の通電角を180°未満とし、前記第2多相巻線の出力電圧のゼロクロス点を検出することで前記界磁部と前記電機子部との位置関係を検知する
請求項1から3のいずれか1項に記載の始動発電装置。
前記第1電力変換部が、前記第1正側直流端子と複数の前記第1交流端子との間で直流および交流間で双方向に電力を変換する多相ブリッジ回路と、前記第1正側直流端子と前記バッテリとの間に介挿された第1スイッチ素子とを有し、
前記第2電力変換部が、前記バッテリに接続される第2正側直流端子を有し、前記第2正側直流端子と複数の前記第2交流端子との間で直流および交流間で双方向に電力を変換する多相ブリッジ回路と、前記第2正側直流端子と前記バッテリとの間に介挿された第2スイッチ素子とを有する
請求項1から4のいずれか1項に記載の始動発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の始動発電制御装置100の構成例を示したブロック図である。
図1に示した始動発電制御装置100は、始動発電機(ACGスタータモータ)1と、第1電力変換部61と、第2電力変換部62と、制御部7とを備える。始動発電機1は、クランクシャフト3に直結されていて、エンジン2の回転に同期して回転する。第1電力変換部61、第2電力変換部62および制御部7は、バッテリ9の正極が接続されるとともに、接地されている。バッテリ9は、負極が接地された2次電池である。また、スタータスイッチ8の一端がバッテリ9の正極に接続され、スタータスイッチ8の他端が制御部7に接続されている。スタータスイッチ8は、ユーザがエンジン2を始動する際に操作するスイッチである。また、制御部7には、エンジン水温計5の出力が接続されている。
【0019】
始動発電機1は、第1電力変換部61および第2電力変換部62の制御によって、スタータモータとして動作したり、発電機として動作したりする。始動発電機1は、巻線部ACG1と巻線部ACG2と
図2に示す界磁部15とを備える。巻線部ACG1はスター結線された3相巻線(多相巻線)を構成する巻線U1、V1およびW1を備える。巻線部ACG2はスター結線された3相巻線を構成する巻線U2、V2およびW2を備える。中性点N1は巻線部ACG1を構成するスター結線の中性点である。中性点N2は巻線部ACG2を構成するスター結線の中性点である。巻線U1、V1およびW1と、巻線U2、V2およびW2とは、図示してない同一の電機子鉄心に巻かれていて、電気的に絶縁されている1組の電機子巻線である。なお、巻線部ACG1と巻線部ACG2と図示してない電機子鉄心とは電機子部を構成する。なお、巻線部ACG1と巻線部ACG2とはスター結線に限らず、デルタ結線で構成されていてもよい。
【0020】
図2は、始動発電機1の巻線部ACG1、巻線部ACG2および界磁部15の構成例を軸方向から見て模式的に示した図である。ただし、
図2では、巻線U1と巻線U2とのみを示している。
図2に示した構成例では、始動発電機1は、界磁部15を複数組のN極の永久磁石15NおよびS極の永久磁石15Sから構成したアウターロータ型のブラシレスモータである。なお、以下では界磁部15をロータとも称する。巻線U1は、図示してない電機子鉄心に対して120度おきに配設された3個の巻線U1−1、U1−2およびU1−3から構成されている。巻線U1の3個の巻線U1−1、U1−2およびU1−3は各一端を中性点N1に共通に接続し、各他端を巻線U1の入出力端子に共通に接続している。巻線U2は、図示してない電機子鉄心に対して120度おきかつ巻線U1−1、U1−2およびU1−3に対して60度ずれて配設された3個の巻線U2−1、U2−2およびU2−3から構成されている。巻線U2の3個の巻線U2−1、U2−2およびU2−3は各一端を中性点N2に共通に接続し、各他端を巻線U2の入出力端子に共通に接続している。なお、以下の説明において、回路の接続先として巻線U1または巻線U2という呼称を用いた場合、中性点N1または中性点N2とは逆の端子である巻線U1の入出力端子または巻線U2の入出力端子を指し示す。巻線V1、巻線W1、巻線V2、および巻線W2についても同様とする。
【0021】
なお、
図1において、エンジン2は例えば小型二輪車に搭載された発動機である。クランクシャフト3は、エンジン2の構成部品であり、エンジン2が備える図示していないピストンの往復運動を回転運動に変換する軸である。エンジン水温計5は、エンジン2の冷却水の温度を検知するセンサである。
【0022】
次に、
図3を参照して、
図1に示した第1電力変換部61、第2電力変換部62および制御部7の内部構成の一例について説明する。
図3に示したように、第1電力変換部61は、6個のnチャネルMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ、以下、MOSFETと記す(スイッチ素子))(Q1)〜(Q6)を備え、3相ブリッジ直交変換回路(多相ブリッジ回路)を構成する。第1電力変換部61は、直流入出力線の正側(ハイサイド)直流端子614(第1正側直流端子)をバッテリ9の正極に、負側(ローサイド)直流端子615をバッテリ9の負極に接続している。第1電力変換部61は、バッテリ9と巻線部ACG1との間、またはバッテリ9と巻線部ACG1および巻線部ACG2との間で、交流および直流間の双方向の電力変換を行う。また、第1電力変換部61の各交流端子(第1交流端子)611、612および613には、巻線部ACG1の各巻線U1、V1およびW1が接続されている。
【0023】
第2電力変換部62は、3個の交流端子(第2交流端子)621、622および623と、3個のMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)とを備える。交流端子621は、巻線部ACG2の巻線U2とMOSFET(Q7)のドレインとに接続されている。交流端子622は、巻線部ACG2の巻線V2とMOSFET(Q8)のドレインとに接続されている。交流端子623は、巻線部ACG2の巻線W2とMOSFET(Q9)のドレインとに接続されている。MOSFET(Q7)のソースは、第1電力変換部61の交流端子611に接続されている。MOSFET(Q8)のソースは、第1電力変換部61の交流端子612に接続されている。MOSFET(Q9)のソースは、第1電力変換部61の交流端子613に接続されている。第2電力変換部62は、MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)をオンまたはオフすることで、交流端子621、622および623を介して入出力する電流を制御する。この場合、第2電力変換部62は、MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)をオンまたはオフすることで、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2をそれぞれ第1電力変換部61の各交流端子611、612および613に接続したり、分離したりする。
【0024】
また、この場合、3個のMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)は、巻線部ACG1の各巻線U1、V1およびW1が接続されている第1電力変換部61の各交流端子611、612および613と、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2との間に介挿されている。そして、3個のMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)は、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2を、オンすることで各交流端子611、612および613に対して接続したり、オフすることで各交流端子611、612および613から分離したりする。
【0025】
また、各MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)は、ドレイン・ソース間に寄生ダイオードD7、D8およびD9が形成されている(なお、他のMOSFETについては寄生ダイオードは不図示)。寄生ダイオードD7、D8およびD9の向きは、各交流端子611、612および613に対して同一であり、この場合、アノードが各交流端子611、612および613に接続されている。また、カソードは、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2に接続されている。このように寄生ダイオードD7、D8およびD9の向きをそろえることで、各MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)をオフした場合に、モータ動作における第1電力変換部61を介したバッテリ9から巻線部ACG2への電流の流れ込みおよび発電動作における第1電力変換部61を介した巻線部ACG2からバッテリ9への電流の流れ出しを遮断することができる。なお、寄生ダイオードD7、D8およびD9の向き(すなわちMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)のドレインおよびソースの向き)は、図示したものと逆向きであってもよい。
【0026】
制御部7は、MOSFETゲートドライブ回路71と、CPU(中央処理装置)72と、検出・判定回路部73と、抵抗76−1〜76−4とを備える。なお、制御部7は、他に、センサやアクチュエータ等との間の入出力を接続することで、エンジン2の点火制御等を行うこともできる。検出・判定回路部73は、ゼロクロス検出回路74と、ロータ位置判定回路75とを備える。
【0027】
抵抗76−1は一端を巻線U2に接続し、他端を接地する。抵抗76−2は一端を巻線V2に接続し、他端を接地する。抵抗76−3は一端を巻線W2に接続し、他端を接地する。そして、抵抗76−4は一端を中性点N2に接続し、他端を接地する。抵抗76−1〜76−4の端子電圧が、検出・判定回路部73へ入力される。
【0028】
ゼロクロス検出回路74は、巻線U2、V2およびW2で発生した誘起電圧のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス検出回路74は、ゼロクロス点を検出した場合に、ロータ位置が予め定めたどのステージにあるのかを示す信号であるステージ信号を生成してCPU72に対して出力する。
【0029】
ロータ位置判定回路75は、始動発電機1の停止時に、次のようにしてロータの位置が予め定めたどのステージにあるのかを判定し、判定結果をCPU72へ出力する。ここで、始動発電機1の停止時とは、エンジン2の停止時を意味する。また、ロータの位置とは、界磁部15と、巻線部ACG1および巻線部ACG1との間の相対的な位置を意味する。ロータ位置判定回路75によるステージの判定は、第2電力変換部62によって、巻線部ACG2を電気的に開放した状態で行われる。ロータ位置判定回路75は、第1電力変換部61を使って巻線部ACG1に予め決められた通電パターンに従ってモータが動かない程度の短パルスを順次通電した場合に、もう一方の巻線部ACG2に誘起される電圧情報(大きさ、極性)をもって、ロータステージを判定する。
【0030】
CPU72は、ゼロクロス検出回路74の出力、ロータ位置判定回路75の出力等に基づいて、MOSFET(Q1)〜(Q9)をオンまたはオフするための制御信号を生成してMOSFETゲートドライブ回路71へ出力する。
【0031】
MOSFETゲートドライブ回路71は、CPU72から入力した制御信号に応じて、MOSFET(Q1)〜(Q9)の各ゲート信号を生成し、MOSFET(Q1)〜(Q9)の各ゲートに供給する。
【0032】
次に、
図4〜
図16を参照して、
図1〜
図3を参照して説明した始動発電制御装置100の動作例について説明する。まず、
図4〜
図14を参照して、始動発電機1をエンジン2の始動を行うスタータモータとして動作させる場合について説明する。次に、
図15および
図16を参照して、始動発電機1を発電機として動作させる場合について説明する。
【0033】
図4は、
図1に示した始動発電装置100におけるスタータモータ始動制御の一例を示したフローチャートである。エンジン2が停止している状態で図示していないイグニションスイッチがユーザによってオンされた場合、制御部7に対してバッテリ9から電力が供給され、CPU72が所定の初期処理を行った後、
図4に示した処理を開始する。まず、CPU72は、スタータスイッチ8がオンされるまで待機する(ステップS11で「N」の繰り返し)。ユーザがスタータスイッチ8をオンすると、CPU72はステージ判別処理を実行する(ステップS11で「Y」からステップS12)。
【0034】
ステップS12において、CPU72は、まず、第2電力変換部62のMOSFET(Q7)〜(Q9)をオフし、巻線部ACG1と巻線部ACG2とを電気的に分離する。次に、CPU72は、第1電力変換部61のMOSFET(Q1)〜(Q6)をオンまたはオフに制御することで、巻線部ACG1に予め決められた複数の通電パターンに従ってモータが動かない程度の短パルスを順次通電する。一方、ロータ位置判定回路75は、巻線部ACG2に誘起される電圧を複数の通電パターン間で比較することで、ロータステージを判定する。
【0035】
ここで、
図5〜
図13を参照して、ステップS12におけるステージ判別処理の一例について説明する。
図5は、始動発電機1における界磁部15と、電機子鉄心16と巻線部ACG1と巻線部ACG2とからなる電機子部161との構成例を示す模式図である。この場合、巻線部ACG1を構成する巻線U1、V1およびW1は、それぞれ、巻線U1−1〜U1−3、巻線V1−1〜V1−3および巻線W1−1〜W1−3から構成されている。巻線部ACG2を構成する巻線U2、V2およびW2は、それぞれ、巻線U2−1〜U2−3、巻線V2−1〜V2−3および巻線W2−1〜W2−3から構成されている。
図5に示した構成例では、界磁部15の極数が12である。界磁部15は、各極が交互に配設されたN極の永久磁石15N−1、3、5、7、9および11と、S極の永久磁石15S−2、4、6、8、10および12とから構成されている。電機子鉄心16のスロット数は18であり、各スロットには、巻線U1−1〜U1−3、巻線V1−1〜V1−3または巻線W1−1〜W1−3のうちの1つと、巻線U2−1〜U2−3、巻線V2−1〜V2−3または巻線W2−1〜W2−3のうちの1つとが交互に巻回されている。
【0036】
図6は、
図5に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおける6ステージのロータ位置関係を模式的に示している。各ステージは電気角が60°毎異なる。
【0037】
図7は、通電パターンと誘起電圧とステージ判定結果との対応関係を示す。通電パターン「U1⇒V1」は、MOSFET(Q7)〜(Q9)をオフした状態で、MOSFET(Q1)とMOSFET(Q5)とをオンし、巻線Uから巻線V1へ通電するパターンである。以下の通電パターンにおいて、MOSFET(Q7)〜(Q9)はすべてオフである。通電パターン「V1⇒U1」は、MOSFET(Q2)とMOSFET(Q4)とをオンし、巻線V1から巻線U1へ通電するパターンである。通電パターン「V1⇒W1」は、MOSFET(Q2)とMOSFET(Q6)とをオンし、巻線V1から巻線W1へ通電するパターンである。通電パターン「W1⇒V1」は、MOSFET(Q3)とMOSFET(Q5)とをオンし、巻線W1から巻線V1へ通電するパターンである。通電パターン「W1⇒U1」は、MOSFET(Q3)とMOSFET(Q4)とをオンし、巻線W1から巻線U1へ通電するパターンである。そして、通電パターン「U1⇒W1」は、MOSFET(Q1)とMOSFET(Q6)とをオンし、巻線U1から巻線W1へ通電するパターンである。
【0038】
誘起電圧「W2−N2」は中性点N2を基準とした巻線W2の電圧である。誘起電圧「U2−N2」は中性点N2を基準とした巻線U2の電圧である。そして、誘起電圧「V2−N2」は中性点N2を基準とした巻線V2の電圧である。ステップS12において、ロータ位置判定回路75は、通電パターン「U1⇒V1」時と通電パターン「V1⇒U1」時とに電圧「W2−N2」を、通電パターン「V1⇒W1」時と通電パターン「W1⇒V1」時とに電圧「U2−N2」を、そして、通電パターン「W1⇒U1」時と通電パターン「U1⇒W1」時とに電圧「V2−N2」を、順次計測する。そして、ロータ位置判定回路75は、各通電パターンにおける誘起電圧の計測結果に基づいてステージを判定する。例えば、ロータ位置判定回路75は、誘起電圧と正および負の基準電圧との比較結果に基づいてステージを判定することができる。
図7の例では、例えば、通電パターン「V1⇒U1」時の電圧「W2−N2」と通電パターン「W1⇒U1」時の電圧「V2−N2」とがどちらも極性が負で絶対値が基準電圧より大きい場合、ロータ位置判定回路75は、界磁部15と電機子部161との位置関係がステージ1であると判定することができる。
【0039】
次に、
図8から
図10を参照して、ステージ3、ステージ4およびステージ6における誘起電圧発生の仕組みについて説明する。
【0040】
図8は、ステージ3で発生する磁束を矢線で示す。通電前の磁束は白抜きの矢線の分布となっている。U1→N1→W1と通電するとU1は磁石15S−2と対向する磁極がN極に、W1は磁石15N−3と対向する磁極がS極に磁化され、磁石による磁力線と同方向となるので、それぞれの巻線と交鎖する磁束(黒矢線)は増加しフロート状態のV2巻線の磁束は1本増加するためN2からV2方向の誘起電圧IVが発生する。
【0041】
図9は、ステージ4で発生する磁束を矢線で示す。通電前の磁束は白抜き矢線の分布となっている。U1→N1→W1と通電するとU1は磁石15S−2と対向する磁極がN極に、W1は磁石15N−3と対抗する磁極がS極に磁化され、磁石による磁力線と同方向となるので、それぞれの巻線と交鎖する磁束(黒矢線)は増加しフロート状態のV2巻線は磁束が1本増加するためV2からN2に向かう方向に誘起電圧IVが発生する。
【0042】
図10は、ステージ6で発生する磁束を矢線で示す。通電前の磁束は白抜き矢線の分布となっている。U1→N1→W1と通電するとU1は磁石15N−3と対向する磁極がN極に、W1は磁石15S−4と対向する磁極がS極に磁化され、磁石による磁力線と逆方向となるので、フロート状態のV2巻線の交鎖磁束は0.5本に減少するだけなので誘起電圧IVは小さい。
【0043】
次に、
図11から
図13を参照して、ステップS12におけるステージ判別処理のフローについて説明する。ステージ判定処理においてロータ位置判定回路75は、まず、U1からV1へ通電する(
図11のステップS101)。次に、ロータ位置判定回路75は、U1からV1への通電時に計測した電圧W2−N2と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS102)。電圧W2−N2が+Vref以下の場合(ステップS102:N)、ロータ位置判定回路75は、電圧W2−N2と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS103)。
【0044】
電圧W2−N2が−Vrefより小さい場合(ステップS103:Y)、ロータ位置判定回路75は、W1からV1へ通電する(ステップS104)。続いて、ロータ位置判定回路75は、W1からV1への通電時に計測した電圧W2−N2と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS105)。電圧W2−N2が−Vrefより小さい場合(ステップS105:Y)、ロータ位置判定回路75は、位置関係がステージ5であると確定する(ステップS106)。一方、電圧W2−N2が−Vref以上である場合(ステップS105:N)、ロータ位置判定回路75は、再度、U1からV1へ通電する(ステップS101)。
【0045】
ステップS103において、電圧W2−N2が−Vref以上の場合(ステップS103:N)、ロータ位置判定回路75は、
図12に示したステージ判別2の処理を実行する。
【0046】
また、ステップS102において、電圧W2−N2が+Vrefより大きい場合(ステップS102:Y)、ロータ位置判定回路75は、U1からW1へ通電する(ステップS107)。続いて、ロータ位置判定回路75は、電圧V2−N2と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS108)。電圧V2−N2が+Vrefより大きい場合(ステップS108:Y)、ロータ位置判定回路75は、位置関係がステージ4であると確定する(ステップS109)。一方、電圧V2−N2が+Vref以下である場合(ステップS108:N)、ロータ位置判定回路75は、再度、U1からV1へ通電する(ステップS101)。
【0047】
一方、
図12に示したステージ判別2では、ロータ位置判定回路75は、まず、V1からU1へ通電する(ステップS201)。次に、ロータ位置判定回路75は、V1からU1への通電時に計測した電圧W2−N2と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS202)。電圧W2−N2が+Vref以下の場合(ステップS202:N)、ロータ位置判定回路75は、電圧W2−N2と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS203)。
【0048】
電圧W2−N2が−Vrefより小さい場合(ステップS203:Y)、ロータ位置判定回路75は、W1からU1へ通電する(ステップS204)。続いて、ロータ位置判定回路75は、W1からU1への通電時に計測した電圧W2−N2と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS205)。電圧W2−N2が−Vrefより小さい場合(ステップS205:Y)、ロータ位置判定回路75は、位置関係がステージ1であると確定する(ステップS206)。一方、電圧W2−N2が−Vref以上である場合(ステップS205:N)、ロータ位置判定回路75は、再度、V1からU1へ通電する(ステップS201)。
【0049】
ステップS203において、電圧W2−N2が−Vref以上の場合(ステップS203:N)、ロータ位置判定回路75は、
図13に示したステージ判別3の処理を実行する。
【0050】
また、ステップS202において、電圧W2−N2が+Vrefより大きい場合(ステップS202:Y)、ロータ位置判定回路75は、V1からW1へ通電する(ステップS207)。続いて、ロータ位置判定回路75は、電圧U2−N2と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS208)。電圧U2−N2が+Vrefより大きい場合(ステップS208:Y)、ロータ位置判定回路75は、位置関係がステージ2であると確定する(ステップS209)。一方、電圧U2−N2が+Vref以下である場合(ステップS208:N)、ロータ位置判定回路75は、再度、V1からU1へ通電する(ステップS201)。
【0051】
また、
図13に示したステージ判別3では、ロータ位置判定回路75は、まず、V1からW1へ通電する(ステップS301)。次に、ロータ位置判定回路75は、V1からW1への通電時に計測した電圧U2−N2と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS302)。電圧U2−N2が−Vref以上の場合(ステップS302:N)、ロータ位置判定回路75は、位置関係がステージ6であると確定する(ステップS303)。
【0052】
電圧W2−N2が−Vrefより小さい場合(ステップS302:Y)、ロータ位置判定回路75は、U1からW1へ通電する(ステップS304)。続いて、ロータ位置判定回路75は、U1からW1への通電時に計測した電圧V2−N2と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS305)。電圧V2−N2が−Vrefより小さい場合(ステップS305:Y)、ロータ位置判定回路75は、位置関係がステージ3であると確定する(ステップS306)。一方、電圧V2−N2が−Vref以上である場合(ステップS305:N)、ロータ位置判定回路75は、再度、V1からW1へ通電する(ステップS301)。
【0053】
以上のように、ステップS12においてロータ位置判定回路75はステージ判別処理を実行する。なお、
図11から
図13に示したフローでは、巻線部ACG1に対する所定の通電後に
図7に示した通電パターンが確認できない場合、ロータ位置判定回路75は、適宜、通電をやり直して誘起電圧を再測定する。その際、再度の測定における通電時間等の通電条件と基準電圧とは同一でもよいし、変化させてもよい。また、再度の測定に回数の制限や時間の制限を設けてもよい。
【0054】
次に、
図4において、CPU72は、ロータ位置判定回路75においてステージ判別処理が正常に終了したか否かを判定する(ステップS13)。一方、ステージ判別処理が正常に終了していない場合(ステップS13で「N」の場合)、CPU72は、ステップS12の判別処理を再度、実行する(ステップS11で「Y」からステップS12)。他方、ステージ判別処理が正常に終了していた場合(ステップS13で「Y」の場合)、CPU72は、ロータ位置判定回路75が判定したステージに対応した通電パターンで第1電力変換部61および第2電力変換部62のMOSFET(Q1)〜(Q9)の通電制御を開始する(ステップS14)。その際、CPU72は、例えば、第1電力変換部61の通電角を180°に設定し、第2電力変換部62の通電角を120°以上180°未満に設定する。
【0055】
次に、始動発電機1が回転を開始した後、ゼロクロス検出回路74が巻線部ACG2の出力電圧のゼロクロス点に基づきステージ信号を生成してCPU72に対して出力する(ステップS15)。そして、CPU72が、第1電力変換部および第2電力変換部に対して、ゼロクロス検出回路74によって検出されたステージに対応したパターンにて通電制御を行う(ステップS15)。
【0056】
ここで、
図14を参照して、スタータモータ始動制御時の回転時における巻線部ACG2の電圧波形について説明する。
図14は、巻線部ACG2の巻線U2の出力電圧波形と、ロータ位置判定回路75による巻線U2の出力電圧のゼロクロス点の検出波形とを模式的に示した波形図である。この場合、ステップS14およびステップS15における第2電力変換部62の通電角は120°に設定している。
図14において、ゼロクロス点の検出波形は、出力電圧のゼロクロス点において出力電圧の変化と同一方向で立ち上がりまたは立ち下がる。なお、巻線部ACG2の電圧波形には、相を切り替えるタイミング(破線の領域A1)でノイズが発生する。そのため、ロータ位置判定回路75では、切り替えタイミングでノイズをマスクしゼロクロス検出に支障が出ないようにすることが望ましい。ゼロクロス検出回路74は、巻線U2、V2およびW2の各出力電圧波形から各相の検出波形を生成し、各相の検出波形に基づきロータ位置を表すステージ信号を生成してCPU72に対して出力する。
【0057】
次に、
図4において、CPU72は、エンジンの始動が完了したか否かを判定する(ステップS16)。エンジンの始動が完了していない場合(ステップS16で「N」の場合)、CPU72は、ステップS15へ戻り、ゼロクロス検出回路74が検出したステージに対応したパターンにて通電制御を続行する(ステップS15)。エンジンの始動が完了していた場合(ステップS16で「Y」の場合)、CPU72は、モータ通電を停止し、スタータモータ始動制御を終了する(ステップS17)。
【0058】
以上のように、スタータモータ制御においては、まず、第2電力変換部62のMOSFETを全てオフする。そして、第1電力変換部61を使って、巻線部ACG1に予め決められた通電パターンに従って、モータが動かない程度の短パルスを順次通電する。そして、もう一方の巻線部ACG2の巻線両端に誘起される電圧情報をもって、ロータ位置判定回路75が停止時におけるロータステージを判定する。次に、CPU72が、ロータ位置判定回路75により特定されたロータステージに対応した通電パターンを、巻線部ACG1および巻線部ACG2の各相に接続された第1電力変換部61と第2電力変換部62とのうち、第1電力変換部61に対しては180°、第2電力変換部62は120°以上180°未満の何れかの角度にて通電を開始する。そして、通電開始後は、ゼロクロス検出回路74が検出した巻線部ACG2のゼロクロスポイントから導出されるロータ位置情報に基づいてCPU72が巻線部ACG1および巻線部ACG2にエンジンの始動が完了するまで通電する。これによって、本実施形態では、始動時に、巻線部ACG2をゼロクロスポイント検出用に使用することが可能になるとともに、巻線部ACG1と巻線部ACG2との両方を始動巻線として使用することが可能になる。また、巻線部ACG1の通電モードを180°とし、巻線部ACG2の通電モードをゼロクロスポイントの検出が可能なできるだけ大きな通電角とすることで、巻線部ACG1と巻線部ACG2との両方を180°通電モードとする場合からの始動トルクの低減を極力抑えることができる。
【0059】
次に、
図15および
図16を参照して、始動発電機1を発電機として動作させる場合について説明する。
図15は、
図1に示した始動発電装置100における発電制御の一例を示したフローチャートである。エンジン2の始動完了後、CPU72は、第2電力変換部62の各MOSFET(Q7)〜(Q9)をオフする(ステップS21)。
【0060】
次に、CPU72は、ゼロクロス検出回路74が巻線部ACG2の出力電圧のゼロクロス点に基づいて生成したステージ信号を入力する(ステップS22)。
【0061】
ここで、
図16を参照して、発電制御時の巻線部ACG2の電圧波形について説明する。
図16は、巻線部ACG2の巻線U2の出力電圧波形と、ロータ位置判定回路75による巻線U2の出力電圧のゼロクロス点の検出波形とを模式的に示した波形図である。この場合、第2電力変換部62はオフ状態に制御されている。ゼロクロス点の検出波形は、出力電圧のゼロクロス点において出力電圧の変化と同一方向で立ち上がりまたは立ち下がる。ゼロクロス検出回路74は、
図16に示したような巻線U2、V2およびW2の各出力電圧波形から各相の検出波形を生成し、各相の検出波形に基づきロータ位置を段階的に表すステージ信号を生成してCPU72に対して出力する。
【0062】
次に、CPU72は、バッテリ9の電圧値に基づき第1電力制御部61の通電角を計算する(ステップS23)。 次に、CPU72は、第1電力変換部61から巻線部ACG1へステップS23で計算した遅角量に基づく遅角パターンを出力する(ステップS24)。そして、CPU72は、ステップS22へ戻り、上述した処理を再度実行する。
【0063】
以上のように、発電制御においては、エンジン始動後に第2電力変換部62のMOSFETを全オフとすることで、余剰な発電電力の発生を防いでいる。また、ゼロクロス検出回路74によって、巻線部ACG2の巻線両端に発生する無負荷電圧のゼロクロスポイントからロータ位置を導出することで、巻線部ACG1の交流電圧を第1電力変換部61にて位相制御するに必要なタイミングを生成する。これによって、本実施形態によれば、バッテリ9や図示していない電装負荷に最適な電力を供給することができる。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば高価なセンサを用いず、かつサブコイルを用いることなく、簡易な方法で安価にロータの位置決めが可能となる。
【0065】
また、本実施形態は、3相巻線(多相巻線)である巻線部ACG1と巻線部ACG2とが並列に配設された電機子部と、永久磁石からなる界磁部とを備えた始動発電機1(ACGスタータモータ)と、巻線部ACG1または巻線部ACG1および巻線部ACG2に接続され、交流および直流間の電力変換を行う第1電力変換部61と、巻線部ACG1の各端部に接続されている第1電力変換部61の各交流端子611、612および613と、巻線部ACG2の各端部との間に介挿され、各交流端子611、612および613に対して巻線部ACG2の各端部の接続および分離を行う複数のMOSFET(スイッチ素子)(Q7)〜(Q9)とを備えている。この構成によれば、電力損失の低減等、始動発電機1の制御特性を容易に向上させることができる。
【0066】
また、以上のように、本実施形態によれば、巻線部を例えば2分割して両方を使用する場合と片方を使用する場合とで使い分けることで、発電と電気負荷とのバランスを適正化することができる。この構成によれば、スタータモータのトルク特性を満たすように巻線仕様を設計したモータを、発電機として使用したときに電気負荷とのアンバランスによって発生する余剰電力を低減することができる。すなわち、巻線部の環流電流を減らし、巻線やパワーデバイス素子の発熱(電力損失)を小さくすることができる。よって、モータトルクを損なうことなく発電時の余剰電力を容易に削減することができる。これによってエンジン2の燃費向上やフリクションの低減が可能となる。
【0067】
また、発電制御時に、環流電流を減らすことで電機子巻線とパワーデバイスの発熱を低減することができる。
【0068】
次に、
図17を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
図17は、本発明の第2の実施形態の始動発電制御装置100bの構成例を示したブロック図である。なお、
図17において、
図3に示したものと同一の構成には同一の符号を付けて説明を省略する。また、
図17において、
図3に示したものと基本的な機能が同一の構成には同一の符号の末尾に文字「a」を付加した符号を付けている。検出・判定回路部73の構成と動作は上記の実施形態と同一である。
【0069】
第2の実施形態の始動発電制御装置100aは、
図3に示した始動発電制御装置100と比較して次の点が異なる。すなわち、第2電力変換部62aが、MOSFET(Q10)〜(Q12)を新たに備える。この場合、MOSFET(Q10)のドレインはMOSFET(Q7)のドレインに接続されている。MOSFET(Q11)のドレインはMOSFET(Q8)のドレインに接続されている。MOSFET(Q12)のドレインはMOSFET(Q9)のドレインに接続されている。そして、MOSFET(Q10)、MOSFET(Q11)およびMOSFET(Q12)の各ソースは、接地されている。
【0070】
また、制御部7aにおいて、MOSFETゲートドライブ回路71aは、
図3に示したMOSFETゲートドライブ回路71に対して、新たに設けたMOSFET(Q10)〜(Q12)用の回路が追加されている。また、CPU72aは、
図3に示したCPU72に対して、新たに設けたMOSFET(Q10)〜(Q12)用にプログラムが追加されている。
【0071】
第2の実施形態の始動発電制御装置100aによれば、負側のMOSFETを巻線部ACG1用と巻線部ACG2用とに2組設けることで、負側のMOSFETに流れる電流を制限し、各MOSFETの発熱を減らすことができる。
【0072】
次に、
図18を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
図18は、本発明の第3の実施形態の始動発電制御装置100bの構成例を示したブロック図である。なお、
図18において、
図3または
図17に示したものと同一の構成には同一の符号を付けて説明を省略する。また、
図18において、
図3に示したものと基本的な機能が同一の構成には同一の符号の末尾に文字「b」を付加した符号を付けている。検出・判定回路部73の構成と動作は上記の各実施形態と同一である。
【0073】
第3の実施形態の始動発電制御装置100bは、
図3に示した始動発電制御装置100と比較して次の点が異なる。すなわち、第1電力変換部61bは、
図3に示した第1電力変換部61に対して、MOSFET(Q13)(第1スイッチ素子)を新たに備えている。このMOSFET(Q13)は、正側直流端子614とバッテリ9に接続されている正側直流端子616との間に介挿されている。MOSFET(Q13)のドレインは正側直流端子614に接続され、MOSFET(Q13)のソースは正側直流端子616に接続されている。
【0074】
第2電力変換部62bは、6個のMOSFET(Q17)〜(Q19)および(Q10)〜(Q12)を備え、3相ブリッジ直交変換部回路を構成する。また、直交変換部62bは、MOSFET(Q17)〜(Q19)および(Q10)〜(Q12)からなる3相ブリッジ直交変換部回路の直流入出力線の正側に正側直流端子624を備えるとともに、負側に負側直流端子625を備える。このMOSFET(Q17)〜(Q19)および(Q10)〜(Q12)からなる3相ブリッジ直交変換部回路は、巻線部ACG2の巻線U2、巻線V2および巻線W2を各交流端子621、622および623に接続し、直流および交流間の双方向に電力を変換する。
【0075】
また、第2電力変換部62bは、正側直流端子624とバッテリ9に接続されている正側直流端子626との間にMOSFET(Q14)(第2スイッチ素子)を備えている。MOSFET(Q14)のドレインは正側直流端子624に接続され、MOSFET(Q14)のソースは正側直流端子626に接続されている。
【0076】
なお、第2電力変換部62bは、
図3に示した第2電力変換部62と比較して、MOSFET(Q7)〜(Q9)が省略されている。
【0077】
また、制御部7bにおいて、MOSFETゲートドライブ回路71bは、
図3に示したMOSFETゲートドライブ回路71に対して、新たに設けたMOSFET(Q10)〜(Q14)および(Q17)〜(Q19)用の回路が追加されている。また、CPU72bは、
図3に示したCPU72に対して、新たに設けたMOSFET(Q10)〜(Q14)および(Q17)〜(Q19)用にプログラムが変更されている。
【0078】
第3の実施形態の始動発電制御装置100bでは、MOSFET(Q13)およびMOSFET(Q14)をオンまたはオフすることで、発電制御時に、巻線部ACG1のみから発電電力を出力させたり、巻線部ACG2のみから発電電力を出力させたり、あるいは、巻線部ACG1と巻線部ACG2との両方から発電電力を出力させたりという制御を行うことができる。
【0079】
以上のように、第3の実施形態の始動発電制御装置100bによれば、巻線部を例えば2分割して両方を使用する場合と片方を使用する場合とで使い分けることで、発電と電気負荷とのバランスを適正化することができる。この構成によれば、スタータモータのトルク特性を満たすように巻線仕様を設計したモータを、発電機として使用したときに電気負荷とのアンバランスによって発生す余剰電力を低減することができる。すなわち、巻線部の環流電流を減らし、巻線やパワーデバイス素子の発熱(電力損失)を小さくすることができる。よって、モータトルクを損なうことなく発電時の余剰電力を容易に削減することができる。これによってエンジン2の燃費向上やフリクションの低減が可能となる。
【0080】
また、巻線部ACG1と巻線部ACG2との仕様(ターン数、線径等)を異ならせることでモータ制御における発生トルクや発電制御における発電出力を、例えば、巻線部ACG1を使用する場合と、巻線部ACG2を使用する場合と、巻線部ACG1および巻線部ACG2を使用する場合の3段階で選択することができる。
【0081】
次に、
図19を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
図19は、本発明の第4の実施形態の始動発電制御装置100cの構成例を示したブロック図である。なお、
図19において、
図3に示したものと同一の構成には同一の符号を付けて説明を省略する。また、
図19において、
図3に示したものと基本的な機能が同一の構成には同一の符号の末尾に文字「c」を付加した符号を付けている。以下、第1の実施形態の始動発電制御装置100との差異について説明する。
【0082】
第4の実施形態の始動発電制御装置100cにおいて、制御部7cは、MOSFETゲートドライブ回路71と、CPU72cと、検出・判定回路部73cと、抵抗76−1〜76−4とを備えるとともに、新たに抵抗77−1〜77−4を備える。抵抗77−1は一端を巻線U1に接続し、他端を接地する。抵抗77−2は一端を巻線V1に接続し、他端を接地する。抵抗77−3は一端を巻線W1に接続し、他端を接地する。そして、抵抗77−4は一端を中性点N1に接続し、他端を接地する。抵抗77−1〜77−4の端子電圧が、検出・判定回路部73cへ入力される。検出・判定回路部73cは、ゼロクロス検出回路74とロータ位置判定回路75cとを備える。
【0083】
第4の実施形態の始動発電制御装置100cの動作は、
図4を参照して説明した第1の実施形態の始動発電制御装置100の動作と次の点を除いて同一である。異なる点は、
図4に示したステップS12のステージ判別処理の内容である。
【0084】
第4の実施形態においてロータ位置判定回路75cは、始動発電機1の停止時に、次のようにしてロータの位置が予め定めたどのステージにあるのかを判定し、判定結果をCPU72cへ出力する。ロータ位置判定回路75cによるステージの判定は、第2電力変換部62によって、巻線部ACG2を電気的に開放した状態で行われる。ロータ位置判定回路75cは、第1電力変換部61を使って巻線部ACG1の巻線U1、V1またはW1に予め決められた通電パターンに従ってモータが動かない程度の短パルスを順次通電した場合に、巻線部ACG1における非通電状態の巻線U1、V1またはW1に誘起される電圧情報(大きさ、極性)をもって、ロータステージを判定する。この点は、第1の実施形態の始動発電制御装置100で巻線部ACG1に通電したときに巻線部ACG2に発生する電圧を計測していたのと異なる。第1の実施形態を説明する際に例として用いた
図5に示した電機子部161の構成では、電機子鉄心16の各スロットに、巻線U1−1〜U1−3、巻線V1−1〜V1−3または巻線W1−1〜W1−3のうちの1つと、巻線U2−1〜U2−3、巻線V2−1〜V2−3または巻線W2−1〜W2−3のうちの1つとが交互に巻回されている。このような巻線部ACG1と巻線部ACG2との配置関係では、巻線部ACG1に通電した場合に巻線部ACG2に比較的大きな電圧を発生させることができる。一方、例えば、
図20に示すように、巻線部ACG1と巻線部ACG2との配置関係に偏りがある場合、巻線部ACG1に通電した場合に巻線部ACG2に発生する電圧は比較的小さくなる。第4の実施形態のロータ位置判定回路75cは、巻線部ACG1と巻線部ACG2との配置関係に偏りがある場合に比較的精度良く各ステージを判定することができる。
【0085】
図20は、
図5と同様にして、始動発電機1における界磁部15と、電機子鉄心16と巻線部ACG1と巻線部ACG2とからなる電機子部161との構成例を示す模式図である。
図20に示した電機子鉄心16の各スロットには、連続した半数のスロットに巻線U1−1〜U1−3、巻線V1−1〜V1−3および巻線W1−1〜W1−3が、残りの半数のスロットに巻線U2−1〜U2−3、巻線V2−1〜V2−3および巻線W2−1〜W2−3がそれぞれ巻回されている。
【0086】
また、
図21は、
図19に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおける6ステージのロータ位置関係を模式的に示している。各ステージは電気角が60°毎異なる。
【0087】
図22は、
図7と同様にして、通電パターンと誘起電圧とステージ判定結果との対応関係を示す。誘起電圧「W1−N1」は中性点N1を基準とした巻線W1の電圧である。誘起電圧「U1−N1」は中性点N1を基準とした巻線U1の電圧である。そして、誘起電圧「V1−N1」は中性点N1を基準とした巻線V1の電圧である。ステップS12において、ロータ位置判定回路75cは、通電パターン「U1⇒V1」時と通電パターン「V1⇒U1」時とに電圧「W1−N2」を、通電パターン「V1⇒W1」時と通電パターン「W1⇒V1」時とに電圧「U1−N2」を、そして、通電パターン「W1⇒U1」時と通電パターン「U1⇒W1」時とに電圧「V1−N2」を、順次計測する。そして、ロータ位置判定回路75cは、各通電パターンにおける誘起電圧の計測結果に基づいてステージを判定する。例えば、ロータ位置判定回路75cは、誘起電圧と正および負の基準電圧との比較結果に基づいてステージを判定することができる。
図22の例では、例えば、通電パターン「V1⇒U1」時の電圧「W1−N1」と通電パターン「W1⇒U1」時の電圧「V1−N1」とがどちらも極性が負で絶対値が基準電圧より大きい場合、ロータ位置判定回路75は、界磁部15と電機子部161との位置関係がステージ1であると判定することができる。
【0088】
次に、
図23から
図25を参照して、ステージ1、ステージ2およびステージ5における誘起電圧発生の仕組みについて説明する。
【0089】
図23は、ステージ1で発生する磁束を矢線で示す。通電前の磁束は白抜き矢線の分布となっている。U1→N1→V1と通電するとU1は磁石15N−1と対向する磁極がN極に、V1は磁石15S−2と対向する磁極がS極に磁化され、磁石による磁力線と方向が逆向きとなるので、それぞれの巻線と交鎖する磁束(黒矢線)は減少しフロート状態のW1巻線にW1→U1向きの誘起電圧IVが発生する。W1巻線の誘起電圧は磁束が1本から0,5本に減少することから小さな電圧が発生する。
【0090】
図24は、ステージ2で発生する磁束を矢線で示す。通電前の磁束は白抜き矢線の分布となっている。V1→N1→U1と通電するとU1は磁石15N−1と対向する磁極がS極に、V1は磁石15S−2と対向する磁極がN極に磁化され磁石による磁力線と同方向となるので、それぞれの巻線と交鎖する磁束(黒矢線)は増加しフロート状態のW1巻線にW1→N1向きの誘起電圧IVが発生する。W1巻線の誘起電圧は磁束が1本増加することから大きな電圧が発生する。
【0091】
図25は、ステージ5で発生する磁束を矢線で示す。通電前の磁束は白抜き矢線の分布となっている。U1→N1→V1と通電するとU1は磁石15S−2と対向する磁極がN極に、V1は磁石15N−3と対向する磁極がS極に磁化され磁石による磁力線と同方向となるので、それぞれの巻線と交鎖する磁束(黒矢線)は増加しフロート状態のW1の磁極巻線にN1→W1向きの誘起電圧IVが発生する。W1巻線に発生する誘起電圧は磁束が1本増加することから大きな電圧が発生する。
【0092】
次に、
図26から
図28を参照して、第4の実施形態におけるステップS12でのステージ判別処理のフローについて説明する。ステージ判定処理においてロータ位置判定回路75cは、まず、U1からV1へ通電する(
図26のステップS401)。次に、ロータ位置判定回路75cは、U1からV1への通電時に計測した電圧W1−N1と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS402)。電圧W1−N1が+Vref以下の場合(ステップS402:N)、ロータ位置判定回路75cは、電圧W1−N1と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS403)。
【0093】
電圧W1−N1が−Vrefより小さい場合(ステップS403:Y)、ロータ位置判定回路75cは、W1からV1へ通電する(ステップS404)。続いて、ロータ位置判定回路75cは、W1からV1への通電時に計測した電圧W1−N1と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS405)。電圧W1−N1が−Vrefより小さい場合(ステップS405:Y)、ロータ位置判定回路75cは、位置関係がステージ5であると確定する(ステップS406)。一方、電圧W1−N1が−Vref以上である場合(ステップS405:N)、ロータ位置判定回路75cは、再度、U1からV1へ通電する(ステップS401)。
【0094】
ステップS403において、電圧W1−N1が−Vref以上の場合(ステップS403:N)、ロータ位置判定回路75cは、
図27に示したステージ判別2Aの処理を実行する。
【0095】
また、ステップS402において、電圧W1−N1が+Vrefより大きい場合(ステップS402:Y)、ロータ位置判定回路75cは、U1からW1へ通電する(ステップS407)。続いて、ロータ位置判定回路75cは、電圧V1−N1と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS408)。電圧V1−N1が+Vrefより大きい場合(ステップS408:Y)、ロータ位置判定回路75cは、位置関係がステージ4であると確定する(ステップS409)。一方、電圧V1−N1が+Vref以下である場合(ステップS408:N)、ロータ位置判定回路75cは、再度、U1からV1へ通電する(ステップS401)。
【0096】
一方、
図27に示したステージ判別2Aでは、ロータ位置判定回路75cは、まず、V1からU1へ通電する(ステップS501)。次に、ロータ位置判定回路75cは、V1からU1への通電時に計測した電圧W1−N1と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS502)。電圧W1−N1が+Vref以下の場合(ステップS502:N)、ロータ位置判定回路75cは、電圧W1−N1と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS503)。
【0097】
電圧W1−N1が−Vrefより小さい場合(ステップS503:Y)、ロータ位置判定回路75cは、W1からU1へ通電する(ステップS504)。続いて、ロータ位置判定回路75cは、W1からU1への通電時に計測した電圧W1−N1と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS505)。電圧W1−N1が−Vrefより小さい場合(ステップS505:Y)、ロータ位置判定回路75cは、位置関係がステージ1であると確定する(ステップS506)。一方、電圧W1−N1が−Vref以上である場合(ステップS505:N)、ロータ位置判定回路75cは、再度、V1からU1へ通電する(ステップS501)。
【0098】
ステップS503において、電圧W1−N1が−Vref以上の場合(ステップS503:N)、ロータ位置判定回路75cは、
図28に示したステージ判別3Aの処理を実行する。
【0099】
また、ステップS502において、電圧W1−N1が+Vrefより大きい場合(ステップS502:Y)、ロータ位置判定回路75cは、V1からW1へ通電する(ステップS507)。続いて、ロータ位置判定回路75cは、電圧U1−N1と正の基準電圧+Vrefとを比較する(ステップS508)。電圧U1−N1が+Vrefより大きい場合(ステップS508:Y)、ロータ位置判定回路75cは、位置関係がステージ2であると確定する(ステップS509)。一方、電圧U1−N1が+Vref以下である場合(ステップS508:N)、ロータ位置判定回路75cは、再度、V1からU1へ通電する(ステップS501)。
【0100】
また、
図28に示したステージ判別3Aでは、ロータ位置判定回路75cは、まず、V1からW1へ通電する(ステップS601)。次に、ロータ位置判定回路75cは、V1からW1への通電時に計測した電圧U1−N1と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS602)。電圧U1−N1が−Vref以上の場合(ステップS602:N)、ロータ位置判定回路75cは、位置関係がステージ6であると確定する(ステップS603)。
【0101】
電圧W1−N1が−Vrefより小さい場合(ステップS602:Y)、ロータ位置判定回路75cは、U1からW1へ通電する(ステップS604)。続いて、ロータ位置判定回路75cは、U1からW1への通電時に計測した電圧V1−N1と負の基準電圧−Vrefとを比較する(ステップS605)。電圧V1−N1が−Vrefより小さい場合(ステップS605:Y)、ロータ位置判定回路75cは、位置関係がステージ3であると確定する(ステップS606)。一方、電圧V1−N1が−Vref以上である場合(ステップS605:N)、ロータ位置判定回路75cは、再度、V1からW1へ通電する(ステップS601)。
【0102】
以上のように、第4の実施形態の始動発電制御装置100cによれば、始動発電機1の停止時に、巻線U1、V1またはW1に予め決められた通電パターンで通電した場合に非通電状態の巻線U1、V1またはW1に誘起される電圧情報(大きさ、極性)をもってロータステージを判定することができる。なお、ロータ位置判定回路75cは、次のように変形してもよい。すなわち、ロータ位置判定回路75cは、巻線U1、V1またはW1に予め決められた通電パターンで通電した場合に、非通電状態の巻線U1、V1またはW1の電圧を計測するとともに、巻線U2、V2またはW2に発生する電圧を計測してもよい。この場合、ロータ位置判定回路75cは、巻線U1、V1またはW1の電圧計測結果と、巻線U2、V2またはW2の電圧計測結果とに基づいてステージの判定を行うことができる。
【0103】
なお、電機子部161の構成は、
図5または
図20に示したものに限定されない。電機子部161の他の構成例を
図29から
図31に示した。
図29から
図31は、
図5および
図20と同様にして、始動発電機1における界磁部15と、電機子鉄心16と巻線部ACG1と巻線部ACG2とからなる電機子部161との構成例を示す模式図である。
【0104】
図29に示した電機子鉄心16の各スロットには、連続した6スロット毎に、巻線U2−1〜U2−2、巻線V2−1〜V2−2および巻線W2−1〜W2−2と、巻線U1−1〜U1−2、巻線V1−1〜V1−2および巻線W1−1〜W1−2と、巻線U1−3、巻線V1−3および巻線W1−3と巻線U2−3、巻線V2−3および巻線W2−3とを交互に組み合わせたものとが、それぞれ巻回されている。また、巻線U1−3、巻線V1−3および巻線W1−3と巻線U2−3、巻線V2−3および巻線W2−3とを交互に組み合わせたものについては、各巻線の端部を直接接続することで中性点N1の結線と中性点N2の結線とがなされている。
【0105】
一方、巻線U2−1〜U2−2、巻線V2−1〜V2−2および巻線W2−1〜W2−2については、巻線U2−1と巻線U2−2とが同一の導線から構成され、巻線V2−1と巻線V2−2とが同一の導線から構成され、そして、巻線W2−1と巻線W2−2とが同一の導線から構成されている。同様に、巻線U1−1〜U1−2、巻線V1−1〜V1−2および巻線W1−1〜W1−2については、巻線U1−1と巻線U1−2とが同一の導線から構成され、巻線V1−1と巻線V1−2とが同一の導線から構成され、そして、巻線W1−1と巻線W1−2とが同一の導線から構成されている。白丸で示した各巻線の端部は、他の巻線とは接続されていない。これら各巻線の端部は、例えば回路基板にそれぞれ接続し、回路基板内の配線で結線することができる。
【0106】
図30に示した構成例は、
図5に示した構成例と各巻線の配列は同一である。ただし、中性点N1およびN2を接続する結線を3分割している。また、白丸で示した各巻線の端部は、回路基板内の配線で結線する構成としている。
【0107】
図31に示した構成例は、巻線U1を巻線U1−1〜U1−4から構成し、巻線V1を巻線V1−1〜V1−4から構成し、そして、巻線W1を巻線W1−1〜W1−4から構成する。また、巻線U2を巻線U2−1〜U2−2から構成し、巻線V2を巻線V2−1〜V2−2から構成し、そして、巻線W2を巻線W2−1〜W2−2から構成する。そして、巻線U1−1〜U1−2、巻線V1−1〜V1−2および巻線W1−1〜W1−2と、巻線U2−1〜U2−2、巻線V2−1〜V2−2および巻線W2−1〜W2−2を交互に配置する。また、巻線U1−3〜U1−4、巻線V1−3〜V1−4および巻線W1−3〜W1−4をまとめて配置する。中性点N1を接続する結線を2分割している。また、白丸で示した各巻線の端部は、回路基板内の配線で結線する構成としている。
【0108】
次に、
図32および
図33を参照して、各巻線の端部を回路基板を用いて配線する場合の構成例について説明する。
図32は、電機子部161の構成例を示した側面図である。
図32に示した構成例では、電機子鉄心16に接近するように回路基板17が設けられている。電機子鉄心16に巻かれた巻線の端部または端部を結線した導線の端部が回路基板17のスルーホールにハンダ付けで接続されている。また、回路基板17にコネクタ18が接続されている。
【0109】
図33は、
図32に示した電機子部161からコネクタ18を外した状態を示す。
図33(a)はコネクタ18の側面図である。
図33(b)は電機子部161の平面図である。そして、
図33(c)は電機子部161の側面図である。
図33に示したように、回路基板17にはコネクタ18との接続部である複数のターミナル19が設けられている。
【0110】
各巻線の端部を回路基板を用いて配線した場合、
図5に示したような入り組んだ各巻線端部の結線作業を簡略化することができる。
【0111】
以上のように、本発明の各実施形態によれば、巻線部ACG1および巻線部ACG2が並列に配置された始動発電機1が、エンジン2の始動に用いられる場合、および発電機として用いられる場合の双方において、巻線部ACG2をロータの位置を検出する検出巻線として用いるため、ホールセンサを設けずに、ロータの位置を高い精度で検出することができる。このため、高価なホールセンサを高い取付精度に対応して配置する必要がないため、価格が安くかつ高い精度でロータの検出が可能な始動発電機を提供することができる。
【0112】
なお、本発明の実施形態は上記のものに限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。