特許第6484723号(P6484723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484723
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】時計アーバ用の磁性耐衝撃システム
(51)【国際特許分類】
   G04B 31/02 20060101AFI20190304BHJP
   G04B 31/004 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G04B31/02
   G04B31/004
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-547494(P2017-547494)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公表番号】特表2018-508024(P2018-508024A)
(43)【公表日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2016057582
(87)【国際公開番号】WO2016166006
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】15163809.5
(32)【優先日】2015年4月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ロシャ,ジャン−フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】レジュレ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】サルチ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】カラパティス,ポリクロニス・ナキス
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/117891(WO,A2)
【文献】 特開2012−103249(JP,A)
【文献】 特開2012−103250(JP,A)
【文献】 特開昭56−059027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00−99/00
F16C 32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計用の時計サブアセンブリ(200)であって、
前記サブアセンブリ(200)は、主構造体(100)と、前記主構造体(100)の少なくとも1つのハウジング(14;15)の内側の枢軸(DA)の周りで枢動可能なアーバ(10)とを備え、
前記アーバ(10)は、帯磁若しくは磁気伝導性材料、又は帯電若しくは静電伝導性材料からなる少なくとも1つの表面(16;18;21;22)を備え、
前記主構造体(100)は、前記アーバ(10)の軸方向及び/又は磁性保持のために、少なくとも1つの前記表面の近傍に少なくとも1つの磁場又は静電場を生成するよう配設された、少なくとも1つの極片(11;12;31;32)を備える、時計サブアセンブリ(200)において、
前記時計サブアセンブリ(200)は:
少なくとも1つの前記極片(11;12;31;32)が、少なくとも1つの前記表面(16;18;21;22)と、前記枢軸(DA)に沿って、軸方向及び径方向の引き付け又は反発によって協働することにより、径方向の衝撃を吸収し、前記衝撃の停止後に前記アーバ(10)を動作位置に戻すよう、配設されることを特徴とし;
少なくとも1つの前記極片(11;12;31;32)が、少なくとも1つの前記表面(16;18;21;22)の近傍に、前記アーバ(10)を前記ハウジング(14;15)の壁に向かって径方向に引き付ける傾向を有する少なくとも1つの前記磁場又は静電場を生成するよう、配設され
前記アーバ(10)は、磁気又は静電気ポテンシャルのみによって、前記枢軸(DA)に沿って軸方向に制動され、
前記磁気又は静電気ポテンシャルは、前記枢軸(DA)に沿って変化し、少なくとも1つの前記極片(11;12;31;32)と少なくとも1つの前記表面(16;18;21;22)との間の引き付け又は反発による協働に由来する抵抗性応力を生成する
ことを特徴とする、時計サブアセンブリ(200)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記場は、前記アーバ(10)の軸方向の前記引き付け又は反発を保証し、前記枢軸(DA)の周りで実質的に回転するものであり、磁場であること;及び
少なくとも1つの前記場の、前記枢軸(DA)に沿った軸方向成分の強度は、0.55テスラ超であること
を特徴とする、請求項1に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項3】
前記ポテンシャルのプロファイルは、前記抵抗性応力が、前記枢軸(DA)に沿った前記アーバ(10)の移動中に連続的に増大又は減少するようなプロファイルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項4】
前記アーバ(10)は、少なくとも1つの磁場又は静電場障壁を形成する前記ポテンシャルプロファイルのみによって、前記枢軸(DA)に沿って軸方向に制動され、
前記障壁は、前記枢軸(DA)に沿った前記アーバ(10)の移動を制動又は停止するよう配設される仮想的な環状のキャッチを形成する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項5】
前記アーバ(10)は、複数の前記障壁のみによって、前記枢軸(DA)に沿って軸方向に制動され、
各前記障壁と交差することにより、衝撃の動力学的エネルギの一部が吸収され、各前記障壁は、ポテンシャルレベルの境界を形成する
ことを特徴とする、請求項に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項6】
前記障壁は連続しており、前記枢軸(DA)に沿って、前記アーバ(10)の動作位置から前記主構造体(100)が備える機械的停止部材に向かって、磁場又は静電場強度が増大するものであることを特徴とする、請求項に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項7】
前記機械的停止部材は、磁性停止部材と対になっているか、又は磁性停止部材を形成することを特徴とする、請求項に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項8】
腕時計用の時計サブアセンブリ(200)であって、
前記サブアセンブリ(200)は、主構造体(100)と、前記主構造体(100)の少なくとも1つのハウジング(14;15)の内側の枢軸(DA)の周りで枢動可能なアーバ(10)とを備え、
前記アーバ(10)は、帯磁若しくは磁気伝導性材料、又は帯電若しくは静電伝導性材料からなる少なくとも1つの表面(16;18;21;22)を備え、
前記主構造体(100)は、前記アーバ(10)の軸方向及び/又は磁性保持のために、少なくとも1つの前記表面の近傍に少なくとも1つの磁場又は静電場を生成するよう配設された、少なくとも1つの極片(11;12;31;32)を備える、時計サブアセンブリ(200)において、
前記時計サブアセンブリ(200)は:
少なくとも1つの前記極片(11;12;31;32)が、少なくとも1つの前記表面(16;18;21;22)と、前記枢軸(DA)に沿って、軸方向及び径方向の引き付け又は反発によって協働することにより、径方向の衝撃を吸収し、前記衝撃の停止後に前記アーバ(10)を動作位置に戻すよう、配設されることを特徴とし;
少なくとも1つの前記極片(11;12;31;32)が、少なくとも1つの前記表面(16;18;21;22)の近傍に、前記アーバ(10)を前記ハウジング(14;15)の壁に向かって径方向に引き付ける傾向を有する少なくとも1つの前記磁場又は静電場を生成するよう、配設され、
前記主構造体(100)は、少なくとも1つの第1のハウジング(14)を備える前記少なくとも1つの極片を含む第1の構造体(11)を備え、前記アーバ(10)は少なくとも、前記第1のハウジング(14)の内側で枢動可能であり、前記第1の構造体(11)は、前記第1のハウジング(14)内に、前記枢軸(DA)の周りで実質的に回転する前記磁場又は静電場を生成し、これによって前記アーバ(10)に、前記アーバ(10)を前記枢軸(DA)に沿って整列させる傾向を有する応力を与えること;及び
前記主構造体(100)は、前記第1の構造体(11)上又は前記主構造体(100)が備える第2の構造体(12)上に配設された第2のハウジング(15)内に、帯磁又は帯電した塞止表面(120)を備え、前記塞止表面(120)は、前記アーバ(10)が備える帯磁又は帯電した前面(18)に対して、前記枢軸(DA)に沿って軸方向に引き付ける又は反発するよう配設されること
を特徴とする、時計サブアセンブリ(200)。
【請求項9】
前記場は磁場であること;及び
前記前面(18)と前記塞止表面(120)との間の前記磁場の強度は、0.55テスラ超であること
を特徴とする、請求項に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項10】
前記アーバ(10)は第1の上側肩部(16)を備え、前記第1の上側肩部(16)は前記第1のハウジング(14)の内側に格納され、また少なくとも前記第1の上側肩部(16)の表面に帯磁若しくは強磁性材料を備えるか、又は少なくとも前記第1の上側肩部(16)の表面に静電伝導性材料を備え、前記少なくとも1つの第1の上側肩部(16)は、前記第1のハウジング(14)内において、前記第1の構造体(11)が生成する前記磁場又は静電場に曝露されること;及び
前記アーバ(10)は、前記構造体(11)が備える、又は前記時計サブアセンブリ(200)の第3の構造体(13)が備える、第2のハウジング(15)の内側に格納された少なくとも1つの第2の下側肩部(17)を備え、前記第2のハウジング(15)は、停止部材を形成すること
を特徴とする、請求項に記載の時計サブアセンブリ。
【請求項11】
前記第2のハウジング(15)は、前記塞止表面(120)を備える前記第2の構造体(12)を取り囲むことを特徴とする、請求項10に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項12】
前記アーバ(10)は、前記アーバ(10)のアーバ軸(AA)の周りで回転するものであり、前記アーバ軸(AA)は、前記アーバ(10)が前記第1のハウジング(14)内にある場合に前記枢軸(DA)と整列すること;及び
前記アーバ(10)は、前記第1のハウジング(14)を形成する回転式の穿孔と協働する、少なくとも1つの第1の円筒形上側肩部(16)を備えること
を特徴とする、請求項に記載の時計サブアセンブリ(200)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの時計サブアセンブリ(200)を含む、ムーブメント(500)。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの時計サブアセンブリ(200)を含む、腕時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計用の時計サブアセンブリに関し、上記サブアセンブリは、主構造体と、上記主構造体の少なくとも1つのハウジングの内側の枢軸の周りで枢動可能なアーバとを備え、上記アーバは、帯磁若しくは強磁性材料、又は帯電若しくは静電伝導性材料からなる少なくとも1つの表面を備え、上記主構造体は、上記アーバを軸方向及び径方向に保持するために、少なくとも1つの上記表面の近傍に磁場又は静電場を生成するよう配設された、少なくとも1つの極片を備える。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つの上記サブアセンブリを含むムーブメントに関する。
【0003】
本発明はまた、少なくとも1つの上記サブアセンブリを含む腕時計に関する。
【0004】
本発明は、枢動する機械的構成部品を備える腕時計ムーブメントの分野に関する。
【背景技術】
【0005】
時計学において、より詳細には腕時計に関して、構成部品、特にアーバを特定の位置に保持するために、機械的技術が一般に使用される。上記構成部品は、特に衝撃時に一定程度の運動が必要である場合、停止部材に対して、弾性システムによって保持できる。例えばばねがアーバを停止部材に対して保持する。
【0006】
予備応力を印加されたばねによる保持は、長期間に亘って安定しない。このようなばねは、腕時計が受ける衝撃による応力の変動に対処しなければならないが、上記ばねは、停止部材に対する衝突の応力を受ける全ての構成部品と同様に、疲労及び摩耗を受ける。
【0007】
更に、このようなばねの、再現性のある製造は困難である。一連の公差により、予備応力に大きな多様性がもたらされる場合がある。その結果性能が長期間に亘って安定せず、また耐衝撃効果も腕時計の寿命に亘って低下する。
【0008】
要するに、弾性の機械的保持システムが遭遇する主要な問題は、繰り返される機械的応力によって引き起こされる構成部品の摩耗、及び厳密な公差を達成する必要であり、従ってこれらはコストがかかる。
【0009】
従って、耐久性を有する耐衝撃機構を用いて、時計アーバの軸方向保持を保証することは、困難なままである。
【0010】
MONTRES BREGUET SAによる特許文献1は、2つの端部を備える透磁性又は磁性材料製の時計構成部品の配向のための方法を開示しており、上記端部の両側には2つの磁場が生成され、各磁場は上記構成部品を、上記構成部品の周囲において上記磁場の強度に不均衡がある状態で、極片に引き付けることにより、上記極片上の力の差異を生成し、上記端部のうちの一方を上記極片のうちの一方の接触表面に対して押圧し、またもう一方の端部をもう一方の極片からある距離に保持する。この出願はまた、同一の原理による静電気性変形例も開示する。この出願はまた、このような時計構成部品を備える磁性ほぞ(又は静電気性変形例)にも関し、これはガイドデバイスを含み、このガイドデバイスは、端部間の中心距離より大きい空隙を有して2つの極片の表面を有し、上記表面は、端部のうちの一方が伝達する磁場によって引き付けられるよう、又は端部のうちの一方を引き付ける磁場を生成するよう、それぞれ配設され、これにより、上記2つの端部に印加される磁力は異なる強度のものとなり、これにより、上記端部のうちの一方を引き付けて、上記極片表面のうちの一方のみと接触させることができる。この特許では、磁石の主な機能は、上記アーバの径方向再センタリングである。その動作のためには、それぞれ上記端部のうちの一方に配置された、上記アーバの各側において磁場を生成する2つの磁石が必要である。
【0011】
MONTRES BREGUET SAによる特許文献2は、磁性ほぞと関連付けられた機械的耐衝撃デバイス、及び特に、第1の端部と第2の端部との間で枢動するように設置された時計構成部品の保護のための磁性(又は静電気性)耐衝撃デバイスを開示している。これは、これらの端部のいずれの側に、第1の端部の枢動を案内するための手段、又は第1の端部を引き付けて第1の極片上に静置された状態に保持するための手段と、第2の極片の近傍に、第2の端部の枢動を案内するための手段、又は第2の端部を第2の極片に向けて引き付けるための手段とを含み、第1の端部の枢動を案内するための手段又は第1の端部を引き付けるための手段、及び第2の端部の枢動を案内するための手段又は第2の端部を引き付けるための手段は、停止部材間において所与の方向に沿って移動可能である。
【0012】
HELDによる特許文献3は、非接触時計ほぞの磁気懸架のための磁石と、ちょうど中心に孔を開けられたディスク内の環状磁石との組み合わせを開示している。これは磁性反発を使用して懸架を達成し、従って非接触動作を達成する。第1の変形例では、この磁石は径方向に帯磁しており、一方の極を孔の内側直線母線上に、もう一方の極を外側直線母線上に有する。第2の変形例では、この磁石は軸方向に帯磁しており、2つの極性領域が、ディスクの2つの円形平坦表面に亘って分布し、磁気によって保持及び案内される可動アセンブリのアーバは、上記環状磁石の孔の中心を通過し、上記アーバは、超保磁力材料を含有する薄型被磁性壁を有するチューブで形成され、2つの端部において反対の符号の2つの極に単一片として帯磁しているか、又は空隙によって分離された2つのセグメントとして帯磁し、上記2つのセグメントの対向する端部は、同一の符号の極を有する保護チューブの内側に格納され、固定ディスク/磁石と組み立てられ、径方向極軸及び反対の符号の極は上記軸方向帯磁ディスクと組み立てられ、上記2つのセグメントを分離する上記空隙は、チューブ状アーバのコアを形成し、これは、上述のディスクの厚さと同様であり、かつ上記ディスクの中心の孔の内側に配置されており、これにより、上記軸方向磁石の末端は、上記孔のわずかに内側に延在し、2つの平面、円形表面は、円筒又は帯磁ディスクの高さの範囲を画定する。
【0013】
SIEMENSによる特許文献4、FERREIRO GARCIA RAMON による特許文献5、SEIKOによる特許文献6は、懸架状態での動作を達成するための磁性反発の使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願第2450758号
【特許文献2】欧州特許出願第2450759号
【特許文献3】仏国特許第1314364号
【特許文献4】独国特許出願第10062065A1号
【特許文献5】国際公開第2011095646A1号
【特許文献6】特開昭56‐59027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、時計アーバを所定の位置に保持するためのアーキテクチャの定義を提示する。上記時計アーバは、安定した耐衝撃効果を長期間に亘って保証でき、また再現性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、請求項1に記載の、腕時計用の時計サブアセンブリに関する。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの上記サブアセンブリを含むムーブメントに関する。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1つの上記サブアセンブリを含む腕時計に関する。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の「発明を実施するための形態」を読めば、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明による時計サブアセンブリの概略斜視図である。上記時計サブアセンブリは、略チューブ状のセクタを形成する第1の極片によって、第1の穿孔の内側に、磁性引き付け又は反発によって径方向に保持されるアーバを備える。このアーバの軸は、第1の穿孔の軸に略対応する枢軸上に保持される。このアーバは、ここでは略チューブ状の制限スリーブが備える第2の穿孔によって画定されるチャンバの内側に、第2の前方極片によって軸方向に保持される。このサブアセンブリは、存在し得る位置決め停止部材を省いて図示されている。
図2図2は、図1のサブアセンブリの概略断面図である。
図3図3は、図1のサブアセンブリの概略上面図である。
図4図4は、第1の極片がアーバの周りで回転する、別の同様のサブアセンブリの、断面図である。
図5図5は、第1の極片がアーバの周りで回転する、別の同様のサブアセンブリの、上面図である。
図6図6は、本発明による腕時計外装又はムーブメント用のサブアセンブリの、第1の変形例の概略断面図である。上記第1の変形例は、径方向機械的案内システムと、アーバの軸方向保持を保証する少なくとも1つの磁石とを含む。このサブアセンブリは、ハウジングの底部に磁石を備える下側ウイングを有する構造体を備える。このハウジングはアーバを受承し、このアーバは、軸方向に平行な場方向に引き付ける磁力を受ける。この構造体は、インサートの変位を制限して上記アーバの上方の安全停止部材を形成する、上側ウイングを備える。
図7図7は、図1と同様の様式で、反転した構成を示し、ここでは安全停止部材は上記アーバの下方にあり、摩擦表面が停止部材に追加されている。
図8図8は、磁石と、磁気によって引き付けられる部品との概略断面図であり、これらは構造体及びアーバを形成し、構造体及びアーバはそれぞれ、各接触表面上に摩擦又は耐摩耗層を備える。
図9図9は、頭部が平坦な爪の形状の磁石を受承する帯磁ハウジングを有する構造体の概略図であり、これは、アーバの一部を形成するスペーサを押圧し、また上記磁石によって上記構造体上に留められて上記構造体に対して押圧され、上記磁石の上記頭部と固定要素との間でクランプ留めされる。
図10図10は、複数の磁石を備えるアーバの、軸に沿った概略部分断面図であり、上記磁石の極性は、斜線又は格子模様で示され、また上記磁石は、上記アーバがその中で移動できる構造体に備えられた他の固定磁石の間で可動である。
図11図11は、上記構造体の他の固定磁石の間に磁石を支承するアーバの、別の構成を示す。
図12図12は、方向zに固定された線状構造体の概略部分断面図であり、これは、交互に配設された常磁性又は強磁性部品と反磁性部品とを含み、これらはそれぞれ斜線又は格子模様で示され、不動化されているこの構造体に沿って、永久磁石(図示せず)を備える円筒形アーバを整列させることができる。
図13図13は、上述のようなサブアセンブリを備えるムーブメントを備える腕時計の概略正面図を示す。
図14図14は、本発明による時計アセンブリの、アーバの枢軸を通る概略部分断面図である。これは、構造体の内側で枢動可能なアーバを備え、上記アーバは、軸方向の場を下端において生成し、また枢軸の周りに、枢軸の方向に第1の強度を有する略円錐形の場を生成する。上記アーバがその中で移動できる上記構造体は、円錐形の場を生成する連続する複数の領域を備え、上記場は、アーバが生成する場に対向する傾向を有し、また図14Aに示すアーバの動作位置から、アーバの移動の下部に近づくにつれて強度が漸増する。上記構造体のこれらの場の領域はそれぞれ、アーバの下方への移動を制動する仮想キャッチを形成する。 図14Bは、衝撃又は高い加速の後の、図14Aのサブアセンブリを示す。上記アーバは移動の下端(図示せず)に向かう移動を開始しており、また、上記アーバが、単線矢印で表される第1の場の障壁(略対称であり、また上記アーバ自体の円錐形の場に対向する)と交差する位置、かつ上記アーバが、第1の障壁より高い軸方向強度を有する、二重線矢印で表される第2の場の障壁に到達する位置にある。 図14Cは、上記アーバに付与される動力学的エネルギが高く、上記アーバを第2の場の障壁と交差させることができ、また上記アーバが、第2の障壁より高い軸方向強度を有する、三重線矢印で表される第3の場の障壁に到達する場合の、同一のサブアセンブリを示し、この例では上記第3の場の障壁は、上記アーバの軸方向移動を停止させるために十分なものである。 図14Dは、これに続く、アーバが受ける反発性の場の作用下での、図14Aの動作位置へのアーバの上昇を示す。
図15図15は、アーバが軸方向端部の場のみを生成し、移動の下端の第3の円錐形の場の障壁が、同様の強度の軸方向の場の障壁に置き換えられていることを除いて、図14と同様の様式で同様の構成を示し、また図14と同様の、アーバの軸上でのアーバの下降及び上昇のシーケンスを示す。
図16図16は、アーバがその中で移動できるハウジングを備える構造体を示し、上記アーバの及び上記ハウジングの下端及び上端において、図15の変形例に対応する対称な構成を有する。
図16A図16Aは、場が反発応力ではなく引き付け応力を生成する変形例を図16と同様の様式で示す。
図16B図16Bは、径方向の場が反発力ではなく引き付け力を生成する一方で、構造体の軸方向の場が反発力を生成する変形例を、図16と同様の様式で示す。
図17図17は、図16によるサブアセンブリを、斜視図17A及び上面図17Bで示し、アーバの枢軸に対して平行な、アーバの挿入及び除去を可能とする側方切り欠きを備える。
図18A-18C】図18Aは、図12のシステムを利用した機構の概略斜視図である。アーバはその中心位置に、直線状構造体の近傍に配置された暗色の永久磁石を有し、これはここでは、反磁性領域と常磁性/強磁性領域とが交互に配設された凹状シェルの形態である。 図18Bは、図18Aのアセンブリの断面図である。 図18Cは、アーバに固定された永久磁石の存在によって、及びシェル上の複数の領域の磁気特性によって生成される、極性を示し、永久磁石を備えるアーバはその後、図10〜12のバージョンと同様の、ただし反磁性領域と常磁性/強磁性領域によって生成された、力を受ける。
図19A-19B】図19A、19Bは、図18B、18Cと同様の図ではあるが、機械的接触の保持を利用したシステムに関して、格子模様で表される部分は静止している。
図20図20は、同一の力及び直径を有する2つの円筒状磁石の間に印加される磁力(縦軸)を、これらの相対的な高さ(横軸)の関数として示す曲線である。値0.5は、これらの磁石が同一の高さを有する場合に対応する。
図21図21は、同一直径を有する円筒形磁石と円筒形強磁性部品との間に印加される磁力(縦軸)を、これらの相対的な高さ(横軸)の関数として示す曲線である。値0.25は、上記強磁性部品が上記磁石の3倍小さい場合に対応する。
図22図22は、本発明によるサブアセンブリを備える時計ムーブメントの概略部分断面図であり、アーバは、極片によって軸方向に引き付けられ、またアーバの端部は、極片の前部と摩擦接触する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ある構成部品における機械的応力の影響は、幅広い公差を有することが多い多数のパラメータに依存する。摩擦及び摩耗の結果は特に制御が困難である。というのは、これらは、使用される材料の表面の状態及び物理的特性に大きく依存するためである。
【0022】
これらの特性は、使用される合金及び実装される方法、特に熱、表面及びイオン注入処理に依存する。本方法及び材料の異なる複数のパラメータの累積公差により、これらの物理的特性を知ること、及び上記物理的特性を正確に制御することが不可能となる。従って、このような公差の結果として、再現性が保証されなくなる。更に、公差の範囲を低減することにより、より良好な現象の再現性を得ることができるが、これは、大量生産のためには高過ぎるコストをもたらす。
【0023】
磁性相互作用を決定する理論は、マクスウェル方程式によって完全に記述され、残りの未知数は、使用される磁性材料(これらはますます良好に制御されるようになっている)、及び近似を最小にして分析的かつ数値的にこれらの方程式を解くことの困難さから生じる。しかしながら、巨視的視点からすると、これらの不正確さは、磁性システムを本質的に信頼できるものとするために十分に低い。
【0024】
本発明は、磁場及び/又は静電場の影響下で長期間に亘って安定した、時計アーバ用の耐衝撃保持システムを提案する。
【0025】
本発明を、磁気による非限定的な応用例を用いてより詳細に説明する。本発明は、静電場を採用して、特にエレクトレットを使用して実装することもでき、あるいは磁場と静電場とを組み合わせることによっても、実装できる。
【0026】
本明細書における「アーバ(arbor)」は、理論的な枢軸の周りで枢動するよう配設された、いずれの時計構成部品を意味する。本明細書では本質的に、本発明を、このような構成部品又はホイールセット等のシャフト状部分に関して説明する。例えば天輪の場合、天輪のシャフト状部分の両端部に特に重点が置かれる。本発明は、1つ又は複数の円筒状肩部を備える回転アーバを用いて、簡略化して図示されている。しかしながらこの図示は非限定的なものであり、本発明は、アンクルレバー、ガンギ車、ホイール、カナ又は他の要素といったいずれのタイプの構成部品に適用できる。
【0027】
これらの例では、磁力を用いてアーバ保持システムを構成することが提案され、これは、磁場の中に置かれた帯磁材料の片において誘発される上記力を利用する。この力は、(磁石と磁性部品との間の相互作用に関して)以下の法則によって与えられる:
【0028】
【数1】
【0029】
ここでMは材料の磁化であり、Bは外部磁場であり、(1)中の全ての量はベクトルである。
【0030】
原理は、固定部品上に1つ又は複数の磁石を位置決めすること、及び固定されていなければならない強磁性(引き付け)、反磁性(反発)又は常磁性(引き付け)構成部品が受ける磁力を利用することである。従ってこの構成部品は引き付け又は反発の力を受け、これを利用して上記構成部品を所定の位置に保持できる。
【0031】
図1〜3の第1の変形例は、例えばアーバを、アーバを位置決めする三角形(位置決め用停止部材)の内側に接触した状態で保持することによって、磁力を用いてアーバに3方向の応力を印加することからなる。上記接触は、永久磁石に対して直接行うこともできる。
【0032】
径方向機械的案内要素と、軸方向の保持を保証する磁石とを有する、図4の第2の変形例は、磁力を用いて、アーバに、上記3方向のうちの1方向又は2方向の応力を印加し、その一方で上記機械的案内要素を用いて上記アーバが他の方向に移動するのを制限する場合に関する。典型的には、上記径方向案内要素はスリーブによって達成でき、上記アーバは磁石によって軸方向に保持される。
【0033】
当然のことながら、使用される磁石の数は、変形例毎に変更してよい。例えば、図1〜4のzにおける軸方向保持のための単一の磁石の代わりに、複数の磁石のクラウンを使用する設計も考えられる。これは、複数の構成部品の欠陥を平均化するという利点、及びより大きい半径に亘って応力、特に上記力を印加するという利点を有する。
【0034】
以下に記載する磁気による応用例では、磁場の中に置かれた帯磁材料又は強磁性材料の片において誘発される幅広い意味での応力、即ち力又はトルクを利用する保持システムが得られる。この応力は、上記材料の磁化、又は上記材料の透磁性、及び局所的な磁場の強度に依存する。ある特定の実施形態では、1つ又は複数の磁石を、構造体と呼ばれる固定部品及び/又はアーバ上に位置決めする。このアーバは、上記アーバを所定の位置に保持するために使用できる引き付け又は反発の力を受ける(又は上記アーバが帯磁しており、帯磁若しくは非帯磁若しくは強磁性環境と協働する場合には、上記力を生成する)。
【0035】
軽量な要素に関して、また十分な磁場を生成できる1つ又は複数の磁石の存在が、利用可能な空間によって許容されている場合、衝撃時に要素を保持するためには、磁力のみで十分である場合がある。
【0036】
しかしながらほとんどの場合、この力は小さすぎる。磁力が衝撃に耐えるには小さすぎる場合、図6、7に示すように、過剰な変位を制限するための安全停止部材を導入できる。図6、7は、図4のタイプの2つの構成を示しており、安全停止部材を、一方は上記構成部品の上方に、他方は上記構成部品の下方に有し、また潜在的な接触領域が5で表されている。従ってこの磁気による保持を用いて、ある振幅限界を有する小さい衝撃に対抗する(上記構成部品は、上記振幅限界の後、移動して上記停止部材に至る)。この動作モードは、ばねを用いた保持システムの利点を有し、その一方で元の位置への復帰に際して比較的小さい衝撃しか引き起こさない。実際には、磁性システムはばねシステムとは異なり、部品がその保持位置から移動するに従って減少する力を印加する。従って、偶発的な衝撃中に保存されるエネルギ(これは構成部品が元の位置に復帰すると解放される)は、比較的小さくなる。
【0037】
上記力は、2つの磁石によって生成することもできる。図20、21は、2つの磁性体、即ち図20の2つの磁石、又は図21の1つの磁石及び1つの強磁性部品をそれぞれ有するシステムが生成できる磁力Fm(ニュートン)を、これらの2つの磁性体の相対サイズの比h1/h2に従って示す。
【0038】
更なる変形例では、磁性システムは、保持機能を有するだけでなく、図10、11に示すように位置決め/再位置決め機能を促進する。図10の第1のケースでは、磁石の磁性反発に打ち勝つために更なる力を印加しなければならず、上記システムが所定の位置となると、上記システムは軸方向zにおいてその位置に保持される。このようなシステムは、径方向接触からの摩擦を最小化するための、宝石又は他のいずれの摩擦表面の導入と組み合わされる場合に、特に有利である。図11の第2のケースは、磁性再センタリングシステムであり、ここでは、永久磁石を含むアーバが、磁性引き付け部品及び反発部品で構成される直線状構造体に対して保持される。これらの部品は、永久磁石から作製してもよい。このシステムの径方向保持は、(上で提示されている可能な変形例を有する)上記引き付け部品を用いた磁気的なものであり、上記構成部品は、各衝撃の後に、磁気によって再センタリングされる。このシステムは、角度に関するある自由度に対して容易に適合させることができる。
【0039】
磁性引き付け及び反発領域を有する、図12の上記直線状構造体は、ムーブメントの固定部品上の永久磁石を用いて、上記アーバ上に直接存在させることもできる。
【0040】
従って、異なる複数の幾何学的構成を使用できる。
【0041】
また、上記磁力を用いて、腕時計外装又はムーブメントの要素に対して、例えば上記要素を位置決めするメス型三面体(これは位置決め用停止部材のセットも形成する)に接触した状態で上記要素を保持することにより、3方向に応力を印加することもできる。磁性要素は、接触表面に対して後退していてよい。磁性構成部品の表面に直接接触することもできる。
【0042】
ある変形例は、磁力を用いて、ある要素に、上記3方向のうちの1方向又は2方向の応力を印加し、その一方で機械的案内要素を用いて、上記要素の他の方向への変位を制限する。
【0043】
従って本発明について、アーバの軸方向減衰に関してより正確に説明する。アーバの枢動は、宝石若しくは軸受が案内する従来のもの、又は磁性タイプ若しくは他のタイプ、特にこれらのタイプの組み合わせであってよい。
【0044】
これらの変形例それぞれに関して、衝撃に耐えるには磁力が小さすぎる場合、アーバの変位を制限して過剰な移動を回避するために、安全停止部材を導入できる。従ってこの磁気による保持を用いて、ある振幅限界を有する小さい衝撃に対抗する(上記磁性的に保持されたアーバは、上記振幅限界から移動して上記機械的安全停止部材に至る)。この動作モードは、ばねを用いた保持システムの利点を有し、その一方で元の位置への復帰に際して比較的小さい衝撃しか引き起こさない。実際には、磁性システムはばねシステムとは異なり、上記アーバが、上記アーバが保持される動作位置から移動するに従って減少する力を印加する。従って、偶発的な衝撃中に保存されるエネルギ(これは上記要素が元の位置に復帰すると解放される)は、比較的小さくなる。
【0045】
本発明のある有利な実施形態では、構造体及び/又はアーバ内に存在する磁場及び/又は静電場感の協働が繰り返され、これは、上記アーバ及び上記構造体の相対位置に左右される電磁障壁を含み、また上記電磁障壁の交差は、衝撃時の上記アーバの動力学的エネルギの全て又は一部を使用する。
【0046】
2つの磁石によって、又は強磁性(引き付け)、反磁性(反発)若しくは常磁性(引き付け)部品と近接した1つの磁石によって、相対的な応力が生成され得る。
【0047】
所定の位置に保持されるべきアーバは、実際には強磁性、反磁性若しくは常磁性であってよく、かつ磁石の近傍に配置してよいか、又は実際には、1つ若しくは複数の磁石若しくは帯磁領域、あるいは帯電領域を備えてよい。
【0048】
2つの磁石によって応力が生成される場合、2つの磁石は引き付け又は反発して作用でき、引き付けによる作用は理論的には、磁性システムの比較的遅い経年劣化をもたらす。しかしながら反発モードは、アーバの端部の減衰のための実装がより容易であり、この非限定的なモードについて、図示されている例において説明する。
【0049】
本発明の、磁性又は静電気性手段による減衰という特徴は、小さい又は中程度の振幅の衝撃に対して良好である。この技術を用いて、衝撃時のアーバの余剰の動力学的エネルギを完全に吸収することを考える場合、これがスペースに関して損失となることは明らかである。従って本発明は、従来の機械的停止部材と併用することが好ましく、これは単純な停止部材、又は小さい若しくは中程度の振幅の衝撃時にアーバと接触しないばねの軸受表面であってよい。好ましくは、全ての磁石の表面は脆性であるため、場合によってアーバ又は関連する構造的要素が備える別の表面によって保護される。従って、主構造体100、アーバ10等の対向する構成部品間の接触は、必ずしも磁性でなくてよい位置決め用停止部材に対して保持されることになるアーバの一部の接触であってよい。
【0050】
本発明の好ましい応用例では、アーバ用の軸方向耐衝撃システムを形成するために実装される磁性又は静電気性手段は、アーバの、動作位置における軸方向保持を保証するためにも使用される。図16に示すような磁性反発を用いる構成においてのみ、接触が完全に回避されることは、明らかである。他のほとんどの場合においては、磁性反発によって作用する場合であっても、アーバに対する接触は不可避である。周囲の摩擦は、前部における摩擦よりも多くのエネルギを散逸させる。
【0051】
本発明は特に、アーバを軸方向及び径方向の両方に接触させて保持するために好適である。摩擦に関して有利な、遠位におけるアーバの軸方向及び/径方向保持を用いる構成は、常に実施できるわけではない。
【0052】
これに関して、アーバと受承用構造体との間の磁性又は静電気性協働は、必ずしも軸方向のみではないことに留意されたい。
【0053】
有利には、この協働により、径方向保持が保証され、これによりアーバ10をその理論的な枢軸DA上に恒常的に整列させる傾向を有することができる。その結果、アーバ10の枢動の従来の案内が完璧で無い場合であっても、アーバ10をその軸DA上に恒常的に整列させる傾向を有する磁場又は静電場の影響によって、この案内が最適化される。
【0054】
図1〜4では上記接触は示されていない。この接触は、図8に示すように磁石がアーバに直接接触するもの(若しくは適切な場合には、固定された磁石が、接触して保持される部品の磁石に接触するもの)、又は図9に示すように、保持される構成部品の一部が位置合わせ用停止部材(これは必ずしも磁性を有しない)に接触するものであってよい。接触が維持される表面は、その摩擦特性及び機械的特性を最適化するように適合できる。
【0055】
接触表面を用いた、構造体内でのアーバの従来の案内の代替例として、これらの表面を、その摩擦特性及び/又は機械的特性及び/又は耐摩擦特性を最適化するように適合できる。図8に示すような表面層は、図9の変形例又はその他によっても達成可能であるが、これは例えば、コランダム、ダイヤモンド又は保護コーティングからなってよい。この表面層はまた、特にコバルトバインダを用いて、炭化タングステン等の、特定の摩擦及び磁気特性が組み合わされた材料から作製してよい。
【0056】
軽量な要素に関して、また十分な磁場を生成できる1つ又は複数の磁石の存在が、利用可能な空間によって許容されている場合、衝撃時に要素を保持するためには、磁力のみで十分である場合がある。
【0057】
異なる複数の幾何学的構成を使用できる。図示されている例では、磁場の中に置かれた帯磁材料の片において誘発された応力を利用して、磁性応力(力及び/又はトルク)を用いてアーバ保持システムを構成する。これを達成するために、1つ又は複数の磁石を、好ましくは固定部品上に位置決めし、固定されていなければならない強磁性(引き付け)、反磁性(反発)又は常磁性(引き付け)部品が受ける磁性応力を使用する。従ってこの構成部品は、上記構成部品を所定の位置に保持するために使用できる反発又は引き付けの力を受けることになる。これと反対の相対的位置決めも可能である。
【0058】
図1〜3に示す変形例は、例えばアーバ10を、アーバ10を位置決めする三面体の内側に保持すること、若しくは位置決め用停止部材(図示せず)と接触した状態に保持することによって、及び/又は永久磁石による磁性相互作用によって、磁力を使用してアーバ10に3方向の応力を印加することからなる。例えばいずれのアーバ10は、アーバの第1の上側肩部16を径方向に取り囲む第1の構造体11、及び第2の構造体12と、枢軸DA上で軸方向に整列して協働する。ある特定の例では、この第1の構造体11及び第2の構造体12は磁石である。第3の構造体13は、アーバ10の下側肩部17の径方向運動を制限する穿孔15を含む。
【0059】
図4、5に示す別の変形例は、磁力を用いて、上記3方向のうちの1方向又は2方向、ここでは枢軸DAに対応する軸方向の応力をアーバ10に印加しながら、その一方で機械的案内要素を用いて、アーバ10の他の方向への変位を制限する場合を示す。典型的には、径方向案内は、第1の構造体11の穿孔14内のスリーブによって実現でき、その一方でアーバ10は、第2の構造体12が備える磁石によって軸方向に保持される。
【0060】
当然のことながら、使用される磁石の数は、変形例毎に変更してよい。よって、図1〜5の例における軸方向保持のための単一の磁石の代わりに、複数の磁石のクラウンを含む設計は、複数の構成部品の欠陥を平均化するという利点、及びより大きい半径に亘って応力を印加するという利点を有する。これは、この機構が、磁気による摩擦ばねの均等物の摩擦性能の増大を達成するために渦電流散逸を利用するよう配設されている場合に、有利となり得る。
【0061】
好ましい、ただし非限定的な解決策は、2つの磁石の間、又は1つの磁石と、磁気伝導性、特に強磁性の部品との間の、引き付ける磁力を使用する。これは、より良好な安定性及びより良好な部品の位置制御を提供する。
【0062】
方程式(1)は、磁石と磁性部品との間の力の決定のみに有効である(2つの磁石の間の力の決定には有効でない)こと、及びほとんどの場合、磁性部品は強磁性であり、従って磁石に合わせて磁化されることになり、このような場合、上記力は引き付ける力であることを理解されたい。磁性部品が反磁性である場合のみ、磁石と構成部品との間に反発力が存在するが、この力は、引き付けによって得られる力の10〜100倍小さい。
【0063】
図1〜4に示す解決策は引き付ける力のみを使用し、上記力の方向は、複数の片を互いに接近するように移動させる傾向を有し、上記力は、磁石‐強磁性部品タイプの変形例及び2つの磁石を用いる変形例の両方において負である。
【0064】
図5のみが、引き付ける力及び反発力を組み合わせて構成部品の位置を安定させる解決策に対応する。
【0065】
反発力を用いる解決法は、衝撃によるエネルギの全て又は一部を、機械的衝撃ではなく磁性反発力によって散逸させることができる。
【0066】
軽量な要素に関して、また十分な磁場を生成できる1つ又は複数の磁石の存在が、利用可能な空間によって許容されている場合、衝撃時にアーバを保持するためには、磁力のみで十分である場合がある。しかしながらほとんどの場合、空間的な制約によって制限されるこの応力は小さすぎる。磁性応力が衝撃に耐えるには小さすぎる場合、図6又は7に示すように、過剰な変位を制限するための安全停止部材を導入できる。これらの2つの構成は、安全停止部材を、図6では上記構成部品の上方に、図7では上記構成部品の下方に示す。従って好ましくは、この磁気による保持を用いて、ある振幅限界を有する小さい衝撃に対抗する(上記構成部品は、上記振幅限界の後、磁気の影響から解放されて、その動力学的エネルギの残りの影響によって上記停止部材に至る)。この動作モードは、ばねを用いた保持システムの利点を有し、その一方で正常な動作位置への復帰に際して比較的小さい衝撃しか引き起こさない。実際には、磁性システムはばねシステムとは異なり、上記アーバが、上記アーバが保持される動作位置から移動するに従って、減少する応力を印加する。従って、偶発的な衝撃中に保存されるエネルギ(これは構成部品が元の位置に復帰すると解放される)は、比較的小さくなる。
【0067】
図1〜5では上記接触は示されていない。この接触は、図8に示すような磁石とアーバとの直接の接触、又は図9に示すような、保持されるアーバの一部と、必ずしも磁性を有しない位置合わせ用停止部材との接触であってよい。接触が保持される表面は、その摩擦特性及び機械的特性を最適化するように適合できる。上記表面は例えばコランダム、ダイヤモンド、サファイア又は保護コーティングであってよい。この表面はまた、特にコバルトバインダを用いて、炭化タングステン等の、有利な摩擦及び磁気特性が組み合わされた材料であってもよい。
【0068】
別の変形例では、上記磁性システムはこの保持機能を有し、また図10〜12に示すように、位置決め/再位置決め機能も促進する。
【0069】
図10、11の第1のケースでは、アーバを構造体の穿孔に軸方向に挿入すると、上記磁石の反発に打ち勝つための追加の応力を印加しなければならないが、上記システムが所定の位置となると、上記システムは軸方向DAにおいてその位置に保持される。このようなシステムは、摩擦が利用されない場合において、径方向接触からの摩擦を最小化するための宝石(又は他のいずれの摩擦表面)の導入と組み合わされる場合に、特に有利である。
【0070】
図12の第2のケースは、磁性再センタリングシステムであり、ここでは、アーバ10は永久磁石を含み、上記アーバは、磁性引き付け部品及び反発部品で構成される直線状構造体に対して保持される。これらの部品は、永久磁石から作製してもよい。このシステムの径方向保持は、(上で提示されている可能な変形例を有する)上記引き付け部品を用いた磁気的なものであり、上記アーバは、各衝撃の後に、磁気によって再センタリングされる。このシステムは、角度に関するある自由度に対して容易に適合させることができる。磁性引き付け及び反発領域を有するこのような直線状構造体は、時計ムーブメントの固定部品に接続された構造体上の永久磁石を用いて、アーバ10上に直接存在させることもできる。
【0071】
図18A、18B、18Cは、図12のシステムを利用する機構を示す。図18A、18Bは、ここではシェルの形態(回転体でなくてもよい)の直線状構造体に近接して配置された永久磁石を有するアーバを示し、上記構造体は、反磁性部分と常磁性/強磁性部分との交互配置を含む。図18Cは、(アーバに固定された)永久磁石の存在によって、及び上記シェル上の領域の磁気特性によって生成される、極性を示す。永久磁石を備えたアーバは、図10図12の変形例と同様の力を受けるが、この力はここでは、反磁性及び常磁性/強磁性領域によって生成される。
【0072】
図19A、19Bは図18B、18Cと同様であるが、機械的接触の保持を利用するシステムに関して、格子模様で示された部品は固定されている。
【0073】
図10に戻ると、2つの構成部品のうちの1つ(アーバ又はスリーブ)の磁石は好ましくは、回転時のアーバの適切な動作を保証するために、回転式である。耐衝撃機能に関して、このシステムの応答は、上記磁石が回転式でない場合には等方性でない。これは単なる遷移段階であるため、必ずしも不都合であるとは限らず、以下の他の構成も考えることができる:
‐(スリーブの磁石ではなく)アーバの磁石が回転式であり、従って耐衝撃機能が最大となる方向はムーブメント上で固定され、この方向は、例えば統計的により多くの衝撃を受ける方向に対応してよい;
‐(アーバの磁石ではなく)スリーブの磁石が回転式であり、従って耐衝撃機能が最大となる方向はアーバに対して固定され、この方向は、(例えばアーバ上に、回転対称ではない固定構成部品が存在し、これがムーブメントの別の構成部品と衝突することにより)アーバの径方向位置が他の方向よりも多くの応力を受けることになる方向に対応してよい;
‐上記の2つの構成のうちの1つであるものの、回転式でない磁石がいずれの側にも配置されておらず、従って一方の側に対する機械的接触の保持により、アーバの径方向位置決めが保証される。
【0074】
これらの解決策により、径方向位置決めよりも(径方向部品の機械的案内による)軸方向位置決めがより可能となる。というのは、これらの解決策が引き付けによって作用するためである。この特性により、これらを径方向センタリングに使用した場合、これらの解決策は不安定となる。
【0075】
図14〜17の変形例は、磁力を用いた径方向の停止位置決めによる、反発を用いた径方向再センタリングのために提供される。軸方向端部の磁性引き付けを用いた変形例(図示せず)が特に有利である。
【0076】
磁性引き付けを用いて動作する変形例は、径方向センタリングが不正確であるという欠点を有する。アーバは、スリーブの壁のうちの1つ(動作中に変化し得る壁)と機械的に接触するが、この変形例により、アーバを、スリーブ内でのアーバの位置に依存する戻り力によって停止部材に対して軸方向に押圧することもできる。図1と同様、回転式でない磁石を有する変形例により、アーバを同一の面に対して常に径方向に押圧でき、従ってアーバの位置はあまり変化しなくなる。
【0077】
別の変形例は、前部磁石を固定構造体上に追加することによって、端部のうちの一方におけるアーバの軸方向保持を支援することからなる。
【0078】
スリーブ内でのアーバの変位によって力が増大するのではなく減少する、別の変形例により、強力な保持力を得ることができ、磁力の寄与は、比較的振幅が大きい衝撃によって低下する(停止部材がこれを引き継ぐ)。
【0079】
様々な異なるタイプの磁気ポテンシャルプロファイルが考えられ、特に、アーバがその停止部材に向かって移動するに従ってますます多くのエネルギが吸収される、ステップ式の変形例が考えられる。別の変形例は実障壁を備えるが、エネルギはアーバが障壁領域から離れるとすぐに復元されるため、これは技術的には一時的にしかエネルギを吸収しない。
【0080】
図14に示されている変形例は、アーバが内側で移動できる構造体に関連しており、これは、円錐形の場を生成する一連の領域を含み、上記円錐形の場は、アーバが生成する場に対向する傾向を有し、かつアーバの動作位置からアーバの移動の下部に近づくにつれて強度が漸増するものであるが、以下の他の変形例も考えられることを理解されたい:
‐アーバが生成する場と整列する傾向を有する場を生成する一連の領域;及び/又は
‐アーバの移動の下部に向かって強度が低下する場。
【0081】
磁力がスリーブ内でのアーバの位置に依存する(大きな衝撃時に強度が増大する)構成が有利である。この変形例では、(アーバが平衡位置から移動するに従って力が増大する)機械的なばねと同様の、磁力の依存性を生成することもできる。
【0082】
図22は、アーバが極片によって軸方向に引き付けられ、かつアーバの端部が上記極片の前部と摩擦接触している場合を示す。
【0083】
図1〜3の側方保持は、部分的なものとなるよう、機械的接触を保持するよう、そして耐衝撃コンセプトを利用できるよう、選択される。低振幅の衝撃に関して、アーバ、典型的には天真はその位置を離れず(好ましい角度方向に保持され)、特定の閾値を超えなければ移動しない。この側方バージョンの欠点は、(減少する摩擦半径に対してではなくアーバの半径に対して)摩擦が増大することである。しかしながらこの摩擦は、エネルギの散逸、典型的には針の浮動の減衰に利用できる。
【0084】
当然のことながら、これらの例ではアーバ及び磁石は磁気によって引き付けられるものとして図示されているが、反発によって同一のシステムを形成することも完全に可能であり、これは反対側に接触を生成する。
【0085】
腕時計の外装、特にユーザ及び特定の感受性デバイスを、このようなシステムからの磁場から保護するために、及び上記保持システムの効率を向上するために、強磁性シールドを挿入すること、又はそのようなミドルケースを使用することが可能であり、有利である。
【0086】
より詳細には、本発明は、主構造体100及びアーバ10を備える、腕時計用の時計サブアセンブリ200に関する。このアーバ10は、主構造体100の少なくとも1つのハウジング14、15内において、枢軸DAの周りで枢動可能である。
【0087】
アーバ10は、帯磁若しくは磁気伝導性材料、又は帯電若しくは静電伝導性材料からなる少なくとも1つの表面16、18、21、22を備える。「磁気伝導性(magnetic conductive)」は、本明細書では強磁性又は反磁性又は常磁性材料を意味する。
【0088】
このアーバ10と協働するために、主構造体100は、枢軸DAに関するアーバ10の軸方向及び/又は磁性保持のために、少なくとも1つの上記表面16、18、21、22の近傍に少なくとも1つの磁場又は静電場を生成するよう配設された、少なくとも1つの極片11、12、31、32を含む。
【0089】
アーバ10の軸方向保持の場合、上記場は、枢軸DAの周りで実質的に回転するものである。
【0090】
ある変形例では、主構造体100は、アーバ10の径方向保持のために、少なくとも1つの上記表面16、18、21、22の近傍に、アーバ10の軸方向保持を目的とする上記場に加えて、少なくとも1つの磁場又は静電場を生成するよう配設された、少なくとも1つの極片11、12、31、32を備える。
【0091】
より詳細には、これらの場は、アーバ10の軸方向保持及び径方向保持の両方を保証する。
【0092】
本発明によると、少なくとも1つの上記極片11、12、31、32は、少なくとも1つの上記表面16、18、21、22と、枢軸DAに沿って、軸方向及び/又は径方向の引き付け又は反発によって協働することにより、衝撃を吸収し、衝撃の停止後にアーバ10を動作位置に戻すよう、配設される。
【0093】
本発明によると、少なくとも1つの上記極片11、12、31、32は、少なくとも1つの上記表面16、18、21、22の近傍に、アーバ10をハウジング14、15の壁に向かって径方向に引き付ける傾向を有する少なくとも1つの上記磁場又は静電場を生成するよう、配設される。
【0094】
別の変形例では、このように生成される場は、枢軸DAに沿って変化し、また上記場は、アーバ10に対して、少なくとも1つの極片11、12、31、32と少なくとも1つの表面16、18、21、22との間の磁性引き付け又は反発による協働に由来する抵抗性応力を印加するよう、配設される。
【0095】
より詳細には、少なくとも1つの上記極片11、12、31、32は、少なくとも1つの上記表面16、18、21、22と、枢軸DAに沿って、軸方向及び/又は径方向の引き付け又は反発によって協働することにより、いずれの衝撃又は外乱が存在しない場合にアーバ10を軸方向動作位置に保持するよう、配設される。
【0096】
より詳細には、少なくとも2つの極片11、12、31、32は、少なくとも2つの対応する表面16、18、21、22と、幾何学的に対向して協働することにより、アーバ10に、反対方向の等しい軸方向応力を印加する。正常な動作位置において、アーバ10の表面すべてが、主構造体100の極片全てと必ずしも協働しないことを理解されたい。実際には、主構造体100に対するアーバ10のある特定の相対軸方向位置において、特定の表面と特定の極片との間の相対的な協働のみが存在する。
【0097】
当然のことながら、上記構造体の特定の極片が帯磁若しくは磁気伝導性材料、又は帯電若しくは静電伝導性材料からなる表面を備えてよいのと同様に、上記アーバの表面は、このような磁場又はこのような静電場を生成するよう配設された極片であってよい。アーバ10及び主構造体100の両方が、場を生成する領域、並びに/又は磁場及び/若しくは静電場に応答する受動領域を備えてよい。
【0098】
本発明のある変形例では、磁気による応用例において、軸方向耐衝撃性引き付け又は反発を保証する、得られる磁場の枢軸DAに沿った軸方向成分は、質量60mgの鋼鉄製アーバ場合、0.55テスラ超の強度を有することが好ましい。
【0099】
静電気による応用例では、60mgよりはるかに小さい、特に10mg未満の、極めて小さい質量のアーバに対する応用を限定する場が必要とされる。
【0100】
摩擦を最小化する、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの磁場又は静電場は、ハウジング14、15の壁からある距離においてアーバ10を径方向に引き付ける、又はアーバ10に対して径方向に反発する傾向を有し、またアーバ10を枢軸DA上に整列させる傾向を有する。より詳細には、上述の極片11、12、31、32のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの上記表面16、18、21、22の近傍にこのような場を生成するよう配設される。
【0101】
別の変形例では、少なくとも1つの磁場又は静電場は、アーバ10をハウジング14、15の一方の壁に向かって径方向に引き付ける傾向を有する。より詳細には、上述の極片11、12、31、32のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの上記表面16、18、21、22の近傍にこのような場を生成するよう配設される。
【0102】
ある有利な実装形態では、アーバ10は、磁気又は静電気ポテンシャルのみによって、枢軸DAに沿って軸方向に制動され、上記磁気又は静電気ポテンシャルは、枢軸DAに沿って変化し、少なくとも1つの極片11、12、31、32と少なくとも1つの表面16、18、21、22との間の引き付け又は反発による協働に由来する抵抗性応力を生成する。
【0103】
より詳細には、このポテンシャルのプロファイルは、上記抵抗性応力が、枢軸DAに沿ったアーバ10の移動中に連続的に増大又は減少するようなプロファイルである。
【0104】
より詳細には、加速又は衝撃時にアーバ10に伝達される動力学的エネルギの変換を保証するために、アーバ10は、少なくとも1つの極片11、12、31、32と少なくとも1つの上記表面16、18、21、22との間の引き付け又は反発による協働に由来する少なくとも1つの磁場又は静電場障壁を形成するこのポテンシャルプロファイルのみによって、枢軸DAに沿って軸方向に制動される。この障壁は、枢軸DAに沿ったアーバ10の移動を制動又は停止するよう配設される仮想的な環状のキャッチを形成する。このような障壁と交差することにより、衝撃時のアーバ10の動力学的エネルギの一部が吸収される。ポテンシャルプロファイルの構成に応じて、このエネルギは、上記障壁が上昇ポテンシャル傾斜と低下ポテンシャル傾斜との間にポテンシャルピークを形成する場合には復元され、又は上記ポテンシャルプロファイルが段階的であるか若しくは鋸刃状である(各ステージが1つの上記ポテンシャル障壁によってそれぞれ制限されている)場合には蓄積される。
【0105】
より詳細には、アーバ10は、複数のこのような障壁のみによって、枢軸DAに沿って軸方向に制動される。各障壁と交差することにより、衝撃の動力学的エネルギの一部が吸収され、従って各障壁は、ポテンシャルレベルの境界を形成する。
【0106】
更に詳細には、これらの障壁は連続しており、枢軸DAに沿って、アーバ10の動作位置から主構造体100が備える機械的停止部材(これは問題となるアーバ10の端部の移動終点を形成する)に向かって増大する磁場又は静電場強度を有する。
【0107】
ある変形例では、この機械的停止部材は、磁性停止部材と対になっているか、又はこれ自体が磁性停止部材を形成する。
【0108】
ある特定の実施形態では、アーバ10は円筒形である。
【0109】
ある特定の実施形態では、主構造体100の少なくとも1つのハウジング14、15は円筒形である。より詳細には、主構造体100は、ハウジングアーバ10のための単一の穿孔を備える。
【0110】
アーバ10を側方に挿入するためのある変形例では、主構造体100は、枢軸DAに対して平行に延在する側方切り欠き19を備え、この側方切り欠き19は、アーバ10を側方に挿入及び取り外しできるように寸法設定される。
【0111】
アーバ10を軸方向に挿入するためのある変形例では、主構造体100は、アーバ10を枢軸DAに沿って挿入及び取り外しできるように寸法設定された、端部切り欠き190を含む。
【0112】
ある特定の変形例では、主構造体100は、少なくとも1つの第1のハウジング14を備える第1の構造体11を備える。アーバ10は少なくとも、第1のハウジング14の内側で枢動可能である。この第1の構造体11は、第1のハウジング14の内側において、枢軸DAの周りで実質的に回転する上述のような磁場又は静電場を生成し、これによってアーバ10に、アーバ10を枢軸DAに沿って整列させる傾向を有する応力を与える。主構造体100は、第1の構造体11上又は主構造体100が備える第2の構造体12上に配設された第2のハウジング15内に、帯磁又は帯電した塞止表面120を備え、これは、アーバ10が備える帯磁又は帯電した前面18に対して、枢軸DAに沿って軸方向に引き付ける又は反発するよう配設される。磁気による変形例では、前面18と塞止表面120との間の磁場の強度は、質量60mgの鋼鉄製アーバに関して0.55テスラ超である。
【0113】
より詳細には、この少なくとも1つの前面18は、アーバ10のアーバ軸AAの周りで回転するものであり、このアーバ軸AAは、アーバ10が第1のハウジング14内にある場合に枢軸DAと整列する。
【0114】
より詳細には、アーバ10は、互いに対向する2つの上記前面18を備え、また時計サブアセンブリ200は、上記前面18のうちの1つに対して引き付けるか又は反発するようにそれぞれ配設された2つの上記塞止表面120を備える。
【0115】
より詳細には、アーバ10は、アーバ10のアーバ軸AAに沿って、遠位端に少なくとも1つの上記前面18を備え、アーバ軸AAは、アーバ10が第1のハウジング14内にある場合に枢軸DAと整列する。
【0116】
より詳細には、アーバ10は、アーバ軸AAに沿って、その各遠位端に1つの上記前面18を備える。
【0117】
ある特定の変形例では、アーバ10は第1の上側肩部16を備え、この第1の上側肩部16は第1のハウジング14の内側に格納され、また少なくともその表面に帯磁若しくは強磁性材料を備えるか、又は少なくともその表面に静電伝導性材料を備える。この少なくとも1つの第1の上側肩部16は、第1のハウジング14内において、第1の構造体11が生成する磁場又は静電場に曝露される。アーバ10は、構造体11が備える、又は時計サブアセンブリ200の第3の構造体13が備える、第2のハウジング15の内側に格納された少なくとも1つの第2の下側肩部17を備え、上記第2のハウジング15は、停止部材、特に径方向停止部材を形成する。
【0118】
より詳細には、第2のハウジング15は、1つの上記塞止表面120を備える第2の構造体12を取り囲む。
【0119】
より詳細には、アーバ10は、アーバ10のアーバ軸AAの周りで回転するものであり、アーバ軸AAは、アーバ10が第1のハウジング14内にある場合に枢軸DAと整列する。アーバ10は、第1のハウジング14を形成する回転式の穿孔と協働する、少なくとも1つの第1の円筒形上側肩部16を備える。
【0120】
本発明はまた、少なくとも1つの上記時計サブアセンブリ200を含むムーブメント500に関する。
【0121】
本発明はまた、少なくとも1つの上記時計サブアセンブリ200を含む腕時計1000に関する。
【0122】
ある特定の実施形態では、上記構造体はセラミック製であり、また少なくとも、少なくとも1つのハウジング3の表面の近傍において、磁石及び/若しくはエレクトレットの象嵌構成物、並びに/又は帯磁可能な強磁性粒子を備える。
【0123】
特にハウジング3は平滑である。
【0124】
特に構造体1は、強磁性シールドを備えるか、又は強磁性シールドを形成する。
【0125】
本発明を、案内部材に磁性要素を組み込んだ従来技術の実施形態と比較した場合、ETA2894キャリバーから、浮動を除去するための摩擦の形態での小型の秒針用ホイールセットの制動のための磁石の使用が知られている。この場合、磁性相互作用は、ホイールセットのエネルギの散逸のためにのみ使用され、回転するホイールセットのセンタリングは保証されない。本発明による耐衝撃構成は、これとは以下の点で異なる:
‐回転するホイールセットの磁石及び強磁性部品の相対位置は回転によって変化しないため、この非対称に由来するトルクの変動が回避される;
‐純粋に機械的な接触の接触表面が最小であり、上記接触によって有効な摩擦がもたらされるため、エネルギの散逸、従って吸収されるトルクが最小化される;
‐いくつかの変形例では、機械的停止部材は衝撃時にのみ使用され、その一方で、衝撃の振幅にかかわらず、衝撃後のホイールセットの再センタリングは磁場によって保証されるため、機械的な力と磁力とは別個に作用する。
【0126】
別のETAキャリバーは、タイムゾーンシステムを角度的に位置決めするために磁石を使用する。この場合、磁性構成は、角度変位に対抗する有限保持トルクを付与する(閾値効果)。本発明は、正反対の機能を目的としたものであり、磁性構成は、径方向及び/又は軸方向保持/再センタリング力を、保持トルク又は角度的制動トルクを導入することなく付与するように定義される。これによりホイールセットは自由に回転しながら、そのセンタリングが保証される。図12を参照すると、軸方向保持の場合の本発明の基本的な特徴は、磁性システムの円筒対称性である。
【0127】
磁性引き付けの存在は、その代わりに反発する磁石を組み込んだシステムに対する、本発明の特徴的な態様の1つである。
【0128】
例えば、磁性懸架を生成するために磁性反発のみにおいて作用する帯磁部品を利用するシステムでは、構成部品の正確な位置は経時的に正確に分かるものではなく、構成部品が平衡点付近で発振して、機械的接触が存在する場合に摩擦を生成し、発振の振幅が大きすぎる場合には動作に関する問題を引き起こすことがあり得、更には不可避である。その一方で、本発明の範囲内においては、ほとんどの応用例において、磁力は、機械的停止部材に対してアーバを一定の予備応力で押圧するために使用される。従って正常動作時、構成部品は機械的に固定された定常位置にある。
【0129】
公知の機構は、磁性引き付け構成物が常に回避されるため、磁性部品が単に付属物である構成部品の磁性を利用しない。
【0130】
本発明による、耐衝撃機能における磁性の使用は、浮動又は位置決め、センタリングを目的とする、位置決めが公差(磁石の幾何学的形状及び残留磁場)に対して極めて敏感な公知の磁気による応用例とは異なる。
【0131】
実際、衝撃からのエネルギの散逸は、機械的停止部材の使用を必要とする極めて保守的な磁性システムを用いると最適ではない。本発明では、再センタリング(例えば図9の場合の径方向再センタリング)は、(軸方向)耐衝撃システムの副次的効果である。
【0132】
図10、11は、存在する異なる複数の磁場が同軸でなく、構成部品間の相互作用が特に斜め方向であってよい、変形例を示す。
【0133】
磁石によって機械的接触が維持される本発明によるシステムの動作により、(位置決めに関する)磁石の公差に対する非感受性が実現される。
【0134】
アーバ用の上記磁性耐衝撃システムの主な利点は、戻り力が例えばアーバの軸方向の変位に依存していることである。従来の耐衝撃システムと全く同様に、予備応力、又は磁性耐衝撃システムの場合の接触維持力は、低レベルの衝撃時に構成部品が移動しないようにする。この衝撃振幅を超えると、従来の耐衝撃システムの戻り力は、構成部品が離れるにつれて、ばねの負荷によって増大するが、本発明による磁性耐衝撃システムの戻り力は、構成部品が離れるにつれて減少する。この特徴は実際に、衝撃が低振幅のものである第1のレジメン、及び衝撃がより大きい振幅のものである第2のレジメンという2つのレジメンを可能とし、ここで、それを超えると例えば停止部材によってエネルギが機械的に保存されるか又は散逸される、衝撃レベルの値が存在する。
【0135】
実際には、公差によって大幅に変化する予備応力が観察される場合が多い。この予備応力を磁力に付与することにより、所与の衝撃振幅を超えた(大きな衝撃)減衰時に、機械的ばねの剛性のみに依存できるようになる。
【0136】
本発明は、以下の様々な利点を特徴とする:
‐いずれの非対称性によってトルクの変動を回避すること;アーバの磁石及び強磁性部品の相対位置は、回転によって変化しないよう設計できる;
‐磁性又は静電気性の軸方向保持の結果として、純粋に機械的な接触の接触表面を最小化でき、また特に磁性反発を使用し停止部材を使用しない構成において、これらの機械的接触が保持される場合、これらの機械的接触の表面接触は最小であり、上記接触によって有効な摩擦がもたらされるため、エネルギの散逸、従って吸収されるトルクが最小化される;
‐これらの接触は、従来の摩擦ばねと同等であるか又は従来の摩擦ばねより大きくてもよく、従って針等の浮動の減衰のためにエネルギの散逸を利用できる;
‐本発明のいくつかの変形例では、機械的停止部材は衝撃時にのみ使用され、その一方で、衝撃の振幅にかかわらず、衝撃後のアーバの再センタリングは磁場によって保証され、また低レベルの衝撃時にアーバは磁場によって所定の位置に保持され;従って機械的応力と磁性応力とは別個に作用する;
‐磁性及び/又は静電気性構成は、径方向及び/又は軸方向保持/再センタリング応力を、保持トルク又は角度的制動トルクをシステムに導入することなく付与するように定義される。これによりアーバは自由に回転し、そのセンタリングが保証される。本発明のいくつかの変形例の有利な特徴は、枢軸DAの周りでの、磁性システムの円筒対称性である;
‐公差に対する依存性は、従来技術においてよりも小さい;
‐腕時計が被る衝撃による摩耗に関連する問題は、最大の衝撃時にアーバが機械的停止部材に接触するという稀なケースにしか関連しないため、極めて大幅に低減される;
‐複数の場の間の協働により、衝撃後の微細な再センタリングが保証される;
‐磁場の高弾性応答により、より良好な摩擦の制御が可能となる;
‐提示されている変形例により、軸方向応力と径方向応力とを分離して別個に対処できる;
‐磁性又は静電気性応力を用いて、ムーブメント内のいずれのアーバを固定できるようになる;
‐異なる複数の構成部品(又は構成部品の部品)を利用してエネルギを散逸させることにより、異なる振幅の衝撃に異なる方法で対処できる。それ未満では磁力を使用し、それを超えると散逸を機械的なものとするような閾値を想定できる。
【0137】
時計の実施形態の磁気を用いた変形例は、0.55テスラの軸方向磁場を用いて正確に動作する。
【0138】
ある特定の実施形態例は、0.55テスラの軸方向磁場を有し、磁石により、磁性引き付けによって接触状態に保持された、質量60mgの鋼鉄製アーバに関し、上記アーバは(磁石に近接した部分に関して)直径0.15mmであり、残留磁気1.47TのNeFeB磁石を有し、また上記磁石が高さ0.8mm、半径0.45mmである場合に75g未満の、加速による衝撃に耐えるために十分な保持力で押圧される。この計算は、アーバと磁石との間の厚さ60μmの摩擦層の存在を考慮したものである。機械的停止部材と動作位置接点との間の典型的な磁気ポテンシャル変動は、特にこの例の場合、変位0.1mmに対して6μJである。変動が2倍大きくなる(0.12J/m)と、例えば2つの異なる衝撃レジメン(0〜100g及び100〜200g)において利用される2つのレベルのポテンシャルを生成できる。
【0139】
同様の用途のための静電気性の変形例に関して、0.5〜50mC/m^2(約0.01〜1MV/mの場)が提案される。
【0140】
従って、本発明によるシステムを用いて、機械的摩擦ばねを置換できる。このシステムによって生成されるいずれの機械的摩擦は必ずしも欠点ではなく、スリーブに対する有意な摩擦が存在する場合の径方向保持の場合等に利用できる。従って摩擦は、針等の浮動する可動要素からエネルギを散逸させるために利用できる。
【0141】
また、接触の維持による機械的摩擦を、渦電流タイプの制動システムと組み合わせることもできる。
【0142】
要するに、本発明により、衝撃の振幅に応じて、衝撃時に以下の機能を分離させることができる:
‐例えば非平衡状態の磁石を用いて、アーバが停止部材に対して保持されているシステムに関して、磁力は、小さい衝撃時にはアーバを接触状態に維持するが、衝撃がアーバを移動させるために十分な大きさとなると急速に減少する。続いてこれを機械的停止部材が引き継ぐ;
‐磁化が軸方向に沿って変動するシステムに関して、衝撃の強度によって、この方向の変位に関して、アーバが停止部材上に残留するエネルギを散逸させる最大値までの、複数の値が画定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A-14D】
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A-18B】
図18C
図19A
図19B
図20
図21
図22